説明

超音波探傷装置及び超音波探傷方法

【課題】装置コストを抑制しつつ、検査信頼性を向上させ得る超音波探傷装置及び超音波探傷方法を提供する。
【解決手段】走査部21により、スペーサ9を介して探傷プローブ5の振動子6の配置列を被検体3の探傷面と接触させ、探傷プローブ5を一方向に移動可能に支持することとし、走査部21(走査ステップ)の移動走査における各段階(各探傷プローブ位置)で、探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率別、並びに探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき電子スキャンを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷装置及び超音波探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、配管や圧力容器或いは材料内部の固体または液体中の欠陥等を検査する非破壊検査の一手法として、フェーズドアレイ式の超音波探傷装置及び超音波探傷方法が注目されている。このフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷技術の特徴として、超音波ビームを任意方向に送出できる点、超音波ビームを任意位置に集束できる点、ビーム走査を電子的に高速に切り替えできる点、等がある。ここで、フェーズドアレイ超音波探傷プローブは、一般的に、複数個の振動子が列状または面状に並べて配置された構成を備えるが、被検体の探傷面が平面である場合は限定的で、探傷面が曲面である場合や、また管の溶接部など複雑な形状を持つ場合が多い。
【0003】
そこで、探傷面が曲面であっても振動子の下端が該探傷面に当接するように、振動子の配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブが提案されている。例えば、特許文献1には、医用超音波診断装置に用いられるフレキシブル超音波プローブとして、複数のアレイ状微少振動子集合体を連結して板状に形成したものが記載されている。
【0004】
また、管の溶接部など複雑な部位の探傷を正確に行うために、被検体表面形状の情報を予め取得し、この表面形状情報を参照して探傷を行う超音波探傷技術も提案されている。例えば、特許文献2には、フェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いて被検体表面形状の情報を予め取得し、取得した表面形状情報に基づき、被検体内部の所定位置が超音波集束位置となるように探傷プローブの各振動子から発せられる超音波の遅延時間を制御する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−246959号公報
【特許文献2】特開2007−170877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた従来の超音波探傷技法では、被検体の探傷面が曲面であって、探傷プローブの移動走査と共に探傷面の曲率が変化する場合には、探傷面の曲率変化と共に探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔も変化するため、被検体へ入射する超音波分布が変化して超音波集束位置が定まらない、或いは想定する位置から外れた位置となって欠陥等の検出性能が低下してしまう。そして、探傷不良と判断されると、その都度、探傷プローブの押し付け状態や探傷条件(遅延時間分布等)などを変えて行う再探傷が必要となり、結果として検査時間が長くなるという事情があった。
【0007】
また、予め取得した被検体表面形状の情報を参照して探傷を行う超音波探傷技術を適用して、探傷面の曲率変化に対応した遅延時間分布をリアルタイムに設定するようにすれば、検出性能の低下を抑制することができるが、探傷プローブの位置に応じて被検体表面形状の情報を参照し、遅延時間分布をリアルタイムに設定するには高速な演算手段(プロセッサ等のハードウェア)を必要とし、装置コストの増大を招くという事情があった。なお、この手法によっても、探傷面の曲率変化と共に探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔も変化することから、検出性能が低下して探傷プローブの押し付け状態を変えて行う再探傷が必要となるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、フレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷において、装置コストを抑制しつつ、検査信頼性を向上させ得る超音波探傷装置及び超音波探傷方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の超音波探傷装置は以下の手段を採用する。
【0010】
本発明に係る超音波探傷装置は、複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置であって、スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に移動可能に支持する走査手段と、前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率別、並びに前記探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別に保持する記憶手段と、を有し、前記曲率別及び前記間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、走査手段による移動走査における各段階(各探傷プローブ位置)で、探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率別、並びに探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき電子スキャンを行うので、遅延時間パターンを適切に設定することにより、何れかの遅延時間パターンに基づく電子スキャンで得られるエコーデータは、探傷面の曲率変化と、探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔変化との双方に的確に対応したものとなっており、検査信頼性を向上させ、また再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。また、高速な演算手段(プロセッサ等のハードウェア)を必要とせず、装置コストの増大を招くこともない。
【0012】
また、本発明は、上記記載の超音波探傷装置において、前記電子スキャンで用いる複数の遅延時間パターンは、被検体の設計データに基づき選別されることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、被検体の設計データに基づく遅延時間パターンの選別により、遅延時間パターンを適切に設定することができ、検査信頼性をより向上させることができる。
【0014】
また、本発明は、上記記載の超音波探傷装置において、前記走査手段による前記探傷プローブの移動方向に複数の探傷区間が設定され、前記電子スキャンで用いる複数の遅延時間パターンは該探傷区間毎に選別されることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、電子スキャンで用いる複数の遅延時間パターンを探傷区間毎に選別することにより、遅延時間パターンをより少ないパターン数でより適切に設定することができ、検査信頼性をより向上させると共に、1回の探傷処理時間をより短くすることができる。
【0016】
また、本発明は、上記記載の超音波探傷装置において、前記探傷プローブは、振動子配置列または配置面の曲率を検知する曲率検出手段を有し、前記曲率検出手段による振動子配置列または配置面の曲率に応じた前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、例えば歪ゲージ等の簡単な曲率検出手段により、実際の探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率に応じた適切な遅延時間パターンを用いることができ、装置コストを抑制しつつ、検査信頼性をより向上させることができる。また、間隔別の複数の遅延時間パターンに基づく電子スキャンにより、探傷面の曲率変化と共に発生する探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔変化にも対応して、再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。
【0018】
また、本発明に係る超音波探傷装置は、複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置であって、前記探傷プローブに設置され、振動子配置列または配置面の曲率を検知する曲率検出手段と、スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に移動可能に支持する走査手段と、前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを、前記曲率検出手段による振動子配置列または配置面の曲率に応じて、前記探傷プローブの振動子配置列または面と被検体の探傷面との間隔別に算出する遅延時間パターン演算手段と、を有し、前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、例えば歪ゲージ等の簡単な曲率検出手段により、実際の探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率に応じた適切な遅延時間パターンを用いることができ、装置コストを抑制しつつ、検査信頼性をより向上させることができる。また、間隔別の複数の遅延時間パターンに基づく電子スキャンにより、探傷面の曲率変化と共に発生する探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔変化にも対応して、再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。
【0020】
また、本発明に係る超音波探傷方法は、複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置の超音波探傷方法であって、スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に段階的に移動させる走査ステップと、前記走査ステップにおける各段階において、前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンについて、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率別、並びに前記探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別に予め用意された遅延時間パターンから、前記探傷プローブの位置情報に応じて前記曲率別及び前記間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンを選別し、該複数の遅延時間パターンに基づき前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンする電子スキャンステップと、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、走査ステップによる移動走査における各段階(各探傷プローブ位置)で、探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率別、並びに探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき電子スキャンを行うので、遅延時間パターンを適切に設定することにより、何れかの遅延時間パターンに基づく電子スキャンで得られるエコーデータは、探傷面の曲率変化と、探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔変化との双方に的確に対応したものとなっており、検査信頼性を向上させ、また再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。
【0022】
また、本発明は、上記記載の超音波探傷方法において、前記電子スキャンステップは、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率を検知する曲率検出ステップを有し、振動子配置列または配置面の曲率に応じた前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、実際の探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率に応じた適切な遅延時間パターンを用いることができ、検査信頼性をより向上させることができる。また、間隔別の複数の遅延時間パターンに基づく電子スキャンにより、探傷面の曲率変化と共に発生する探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔変化にも対応して、再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。
【0024】
また、本発明に係る超音波探傷方法は、複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置の超音波探傷方法であって、スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に段階的に移動させる走査ステップと、前記走査ステップにおける各段階において、前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを、前記探傷プローブに設置された曲率検出手段による振動子配置列または配置面の曲率に応じて、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別に算出する遅延時間パターン演算ステップと、前記走査ステップにおける各段階において、前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンする電子スキャンステップと、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、実際の探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率に応じた適切な遅延時間パターンを用いることができ、検査信頼性をより向上させることができる。また、間隔別の複数の遅延時間パターンに基づく電子スキャンにより、探傷面の曲率変化と共に発生する探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔変化にも対応して、再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、移動走査における各段階(各探傷プローブ位置)で、探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率別、並びに探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき電子スキャンを行うので、装置コストを抑制しつつ、検査信頼性を向上させることができ、また、再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波探傷装置の構成図である。
【図2】フェーズドアレイ超音波探傷プローブによるビームフォーカシングを説明する説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る超音波探傷方法を説明するフローチャートである。
【図4】第1実施形態の超音波探傷を説明する説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る超音波探傷装置の構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る超音波探傷方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の超音波探傷装置及び超音波探傷方法の実施形態について、第1実施形態、第2実施形態の順に図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係る超音波探傷装置の構成図である。
【0030】
同図において、本実施形態の超音波探傷装置1は、フレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブ5、信号生成部11、信号送受信部12、信号処理部13、評価部14、記憶部15、及び走査部21を備えて構成されている。
【0031】
フレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブ5(以下、「探傷プローブ5」という。)は、複数個(ここではn個とする;nは正整数)の振動子6を列状に並べて配置し、該振動子6の連結構造により該配置列が任意の曲率を持つように変形させることが可能である。
【0032】
また、走査部21は、スペーサ9を介して探傷プローブ5の振動子6の配置列を被検体3の探傷面と接触させ、該探傷プローブ5を一方向に移動可能に支持する。なお、走査部21は、探傷プローブ5の振動子6の配置列を対向する被検体3の探傷面に倣うように該配置列の曲率を変形させる押し付け機構を備えており、スペーサ9の介在により、探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間には間隔dが存在する。また、走査部21により探傷プローブ5は一方向にメカニカルスキャンされるが、探傷プローブ5の位置情報はエンコーダ(図示せず)によって検出される。
【0033】
次に、信号生成部11、信号送受信部12、信号処理部13、及び評価部14は、MPU(Micro Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサで具現され、各構成要素は該プロセッサ上で実行されるプログラムの機能的まとまりである。また、記憶部15は該プロセッサ内の内蔵メモリか、或いは外部メモリで具現される。
【0034】
まず、信号生成部11は、被検体3の超音波探傷を行う前に、被検体3の設計データ(少なくとも探傷面の形状データを含む)に基づいて、探傷プローブ5の各振動子6から超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを、探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率別、並びに探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔別に演算して求め、記憶部15の遅延時間パターン保存領域16に保存する。
【0035】
保持される遅延時間パターンは、被検体3の探傷面におけるメカニカルスキャン方向の曲率変化状況から探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率候補を設定し、また、被検体3の設計データ(材質等を含む)、走査部21、及び探傷プローブ5の仕様などから探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔候補を設定し、該曲率別及び該間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンとなる。
【0036】
また、信号生成部11は、電子スキャン時には、走査部21からの探傷プローブ5の位置情報に応じて、曲率別及び間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンを選別し、該選別した複数の遅延時間パターンに基づき、順次、探傷プローブ5の各振動子6の駆動信号を生成する。
【0037】
なお、間隔別の遅延時間パターンを、曲率別の遅延時間パターンを補正する補正データとして扱うようにしても良い。この場合、曲率別及び間隔別にそれぞれ複数の遅延時間パターンが独立して遅延時間パターン保存領域16に保持され、駆動信号生成時には、選別した曲率別遅延時間パターンに選別した間隔別遅延時間パターンを加減算等して遅延時間パターンが生成されることとなる。
【0038】
また、信号送受信部12は、信号生成部11で生成された駆動信号を探傷プローブ5に出力し、また、探傷プローブ5の各振動子6が受信した反射波の信号を入力して信号処理部13に渡す。なお、電子スキャンでは、探傷プローブ5のn個の振動子6をm個(mはm<nの正整数)のグループに分け、グループ毎に振動子6から超音波を発振させて反射波を受信することとし、例えば図に向かって左側から右側へ順次走査するようにしている。
【0039】
また、信号処理部13は、電子スキャンで得られる各反射波の信号を合成し、該合成波形からエコーデータ(例えばエコー映像データ)を生成して、曲率別及び間隔別の組み合わせに応じて、記憶部15のエコーデータ保存領域17に保存する。
【0040】
また、評価部14は、記憶部15の複数の曲率別及び間隔別の組み合わせに応じたエコーデータを参照して探傷結果の評価を行う。この評価は、一通りのメカニカルスキャンが終了した時点で行われ、各探傷プローブ5位置における複数のエコーデータから、まず任意のエコーデータに基づいて探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔dを検出し、該検出された間隔dに最も近い間隔に関する曲率別エコーデータ群についてのみ残し、それ以外は評価対象外とする。次に、曲率別エコーデータ群の中から最も鮮明な(最も信号振幅の大きい)エコーデータを選別し、その探傷プローブ5位置におけるエコーデータとして残す。
【0041】
次に、図2を参照して、フレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブ5によるビームフォーカシングについて説明する。ここでは原理的な説明を行うため、図2では、被検体3並びに探傷プローブ5の振動子6の配置列に曲率が無く、平面である場合のビームフォーカシングを例示しており、図2(a)には遅延時間パターンを、図2(b)には超音波の伝播及び集束を、それぞれ例示している。
【0042】
図2では、探傷プローブ5の(図に対して水平方向に)中心位置の直下に超音波集束位置が位置する場合を示している。この場合、信号生成部11で生成される遅延時間は、探傷プローブ5の両端に位置する振動子に与えられるものが最も短く、中心に位置する振動子に与えられるものが最も長い。つまり、探傷プローブ5の両端に位置する振動子からの超音波が最も早く発振され、中心に位置する振動子からの超音波が最も遅く発振されることになる。
【0043】
このように超音波の発振タイミングをずらすことにより、各振動子から発振される超音波で合成される合成波面は徐々に絞られて所定深さの位置で集束することになる。なお、集束位置の深さは最長遅延時間と最短遅延時間の差に応じて決まる。また、両端位置から中心位置までの間の遅延時間を直線的に増加させる遅延時間パターンとしているが、左端位置から中心位置に向かって指数関数的に増大させ、中心位置から右端に向かって指数関数の逆数的に減少させる遅延時間パターンとしても良い。
【0044】
また、超音波集束位置を探傷プローブ5の左端の直下に位置させるには、遅延時間パターンを、探傷プローブ5の右端に位置する振動子に与えられるものを最も短く、左端に位置する振動子に与えられるものを最も長くし、例えば、右端位置から左端位置に向かって指数関数的に増大するようにすれば良い。また逆に、超音波集束位置を探傷プローブ5の右端の直下に位置させるには、遅延時間パターンを、探傷プローブ5の左端に位置する振動子に与えられるものを最も短く、右端に位置する振動子に与えられるものを最も長くし、例えば、左端位置から右端位置に向かって指数関数的に増大するようにすれば良い。このように、遅延時間パターンを変えることにより、図に対して水平方向に超音波集束位置を走査することができる。
【0045】
なお、本実施形態の電子スキャンでは、探傷プローブ5のn個の振動子6をm個(mはm<nの正整数)のグループに分け、グループ毎に振動子6から超音波を発振させて反射波を受信することとし、図に向かって左側から右側へ順次グループ毎に駆動して走査することとしている。
【0046】
また、被検体3並びに探傷プローブ5の振動子6の配置列に、図に対して凹状の曲率がある場合に図2と同じ深さの位置に集束させるには、最長遅延時間と最短遅延時間の差をより大きくすると共に、両端位置から中心位置に向かって指数関数的に増大する遅延時間パターンを用いることになる。また逆に、被検体3並びに探傷プローブ5の振動子6の配置列に、図に対して凸状の曲率がある場合に図2と同じ深さの位置に集束させるには、最長遅延時間と最短遅延時間の差をより小さくすると共に、両端位置から中心位置に向かって指数関数的に増大する遅延時間パターンを用いれば良い。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態に係る超音波探傷方法について、図3及び図4を参照して説明する。ここで、図3は本実施形態の超音波探傷方法を説明するフローチャートであり、図4は被検体3の探傷面に凹状の曲率がある場合の超音波探傷を説明する説明図である。
【0048】
まずステップ101では、被検体3の超音波探傷を行う前に、信号生成部11により、被検体3の設計データに基づき、遅延時間パターンを、探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率別、並びに探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔別に演算して求め、記憶部15の遅延時間パターン保存領域16に保存する。
【0049】
ここでは、図4(a)に示すように、被検体3の探傷面に凹状の曲率がある場合を想定し、メカニカルスキャン方向(走査部21による探傷プローブ5の移動方向)に、区分け線A−A’及び区分け線B−B’で区分けされる領域1、並びに区分け線B−B’及び区分け線C−C’で区分けされる領域2の2つの探傷区間が設定されるものとする。この場合、各探傷区間で最大曲率及び最小曲率を調べ、例えば最大曲率から最小曲率の範囲で複数の曲率を設定し、また探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔として、例えば1[mm]、2[mm]、及び3[mm]の3種の間隔を設定し、各探傷区間について曲率別及び間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンを演算して求め、記憶部15の遅延時間パターン保存領域16に保持する。
【0050】
次に、被検体3の超音波探傷が開始され、まずメカニカルスキャン(ステップ102)の第1段階として、探傷プローブ5が初期位置に設置され、走査部21の押し付け機構により、探傷プローブ5の振動子6の配置列が対向する被検体3の探傷面に倣うように該配置列の曲率を変形させる。このメカニカルスキャンは、特許請求の範囲にいう走査ステップに該当し、探傷プローブをメカニカルスキャン方向に所定刻みで段階的に移動させ、各段階で次の電子スキャン(ステップ103)が行われる。
【0051】
次に、電子スキャン(ステップ103)では、まず、信号生成部11により、走査部21からの探傷プローブ5の位置情報に応じて現在の探傷区間を認識し、該当探傷区間の曲率別及び間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき、順次、探傷プローブ5の各振動子6の駆動信号を生成する(ステップ104)。信号生成部11により生成された駆動信号は、信号送受信部12を介して探傷プローブ5に供給され、探傷プローブ5のグループ毎の振動子から順次超音波を発振させ、その反射波を受信する。
【0052】
次に、ステップ105では、信号送受信部12を介して入力される各反射波の信号を合成し、該合成波形からエコーデータ(例えばエコー映像データ)を生成して、曲率別及び間隔別の組み合わせに応じて、記憶部15のエコーデータ保存領域17に保存する。以上のステップ104及びステップ105の処理を該当探傷区間の曲率別及び間隔別の組み合わせによる全ての遅延時間パターンについて行った後、メカニカルスキャン(ステップ102)における現段階の電子スキャン(ステップ103)を終了する。
【0053】
メカニカルスキャン(ステップ102)の各段階における電子スキャン(ステップ103)が全て終了した後、ステップ106に進んで、評価部14により、記憶部15の複数の曲率別及び間隔別の組み合わせに応じたエコーデータを参照して、探傷結果の評価を行う。具体的には、メカニカルスキャンの各探傷プローブ5位置における複数のエコーデータから、まず任意のエコーデータに基づいて探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔dを検出し、該検出された間隔dに最も近い間隔に関する曲率別エコーデータ群についてのみ残し、それ以外は評価対象外とする。次に、曲率別エコーデータ群の中から最も鮮明な(最も信号振幅の大きい)エコーデータを選別し、その探傷プローブ5位置におけるエコーデータとして残す。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の超音波探傷装置及び超音波探傷方法では、走査部21(走査ステップ)により、スペーサ9を介して探傷プローブ5の振動子6の配置列を被検体3の探傷面と接触させ、探傷プローブ5を一方向に移動可能に支持することとし、走査部21(走査ステップ)の移動走査における各段階(各探傷プローブ位置)で、探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率別、並びに探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき電子スキャンを行うので、遅延時間パターンを適切に設定することにより、何れかの遅延時間パターンに基づく電子スキャンで得られるエコーデータは、探傷面の曲率変化と、探傷プローブの振動子配置面と探傷面との間隔変化との双方に的確に対応したものとなっており、検査信頼性を向上させることができる。
【0055】
つまり、図4(b)に示すように、領域1及び領域2の間で、探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率は大きく変化するが、その曲率に近い曲率別の遅延時間パターンを複数の遅延時間パターン中に設定しておくことにより、超音波集束位置の変化を極めて小さいものとすることができ、検出性能を低下させることなく、再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。
【0056】
また、本実施形態の超音波探傷装置及び超音波探傷方法では、電子スキャンで用いる複数の遅延時間パターンを、被検体3の設計データに基づいて選別することとしたので、遅延時間パターンを適切に設定することができ、検査信頼性をより向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態の超音波探傷装置及び超音波探傷方法では、走査部21(走査ステップ)による探傷プローブ5の移動方向に複数の探傷区間が設定され、電子スキャンで用いる複数の遅延時間パターンを該探傷区間毎に選別することとしたので、遅延時間パターンをより少ないパターン数でより適切に設定することができ、検査信頼性をより向上させると共に、1回の探傷処理時間をより短くすることができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る超音波探傷装置及び超音波探傷方法について説明する。図5は第2実施形態に係る超音波探傷装置及び超音波探傷方法の構成図である。
【0059】
同図において、本実施形態の超音波探傷装置31は、フレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブ5、曲率算出部32、信号生成部11、信号送受信部12、信号処理部13、評価部14、記憶部15、及び走査部21を備えて構成されている。
【0060】
探傷プローブ5は、第1実施形態と同様に、複数個(n個)の振動子6を列状に並べて配置し、該振動子6の連結構造により該配置列が任意の曲率を持つように変形させることが可能であるが、振動子6の配置列と反対側の面(背面)に歪ゲージ33が貼り付けられている点が第1実施形態とは異なる。
【0061】
また、走査部21は、第1実施形態と同様に、スペーサ9を介して探傷プローブ5の振動子6の配置列を被検体3の探傷面と接触させ、該探傷プローブ5を一方向に移動可能に支持する。なお、第1実施形態では、エンコーダ(図示せず)によって検出された探傷プローブ5の位置情報を信号生成部11に供給したが、本実施形態では供給が不要である点が異なる。
【0062】
次に、曲率算出部32、信号生成部11、信号送受信部12、信号処理部13、及び評価部14は、MPUまたはDSP等のプロセッサで具現され、各構成要素は該プロセッサ上で実行されるプログラムの機能的まとまりである。また、記憶部15は該プロセッサ内の内蔵メモリか、或いは外部メモリで具現される。
【0063】
まず、曲率算出部32は、探傷プローブ5の歪ゲージ33から探傷プローブ5背面の曲率情報を受け取り、探傷プローブ5の仕様を参考にして、該曲率情報に基づき探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率を算出する。
【0064】
また、信号生成部11は、被検体3の超音波探傷を行う前に、被検体3の設計データ(材質等を含む)、走査部21、及び探傷プローブ5の仕様などから探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔候補を複数設定し、探傷プローブ5の各振動子6から超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを補正する補正パターンを間隔別に演算して求め、記憶部15の遅延時間パターン保存領域16に保存する。
【0065】
また、信号生成部11は、電子スキャン時には、曲率算出部32で算出した探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率に応じた遅延時間パターンを演算して求め、これに間隔別の補正パターンを加減算等して遅延時間パターンを生成し、該生成した遅延時間パターンに基づき、順次、探傷プローブ5の各振動子6の駆動信号を生成する。
【0066】
また、信号送受信部12、信号処理部13、及び評価部14については、第1実施形態と同等の機能を持つ。
【0067】
次に、本発明の第2実施形態に係る超音波探傷方法について、図6を参照して説明する。ここで、図6は本実施形態の超音波探傷方法を説明するフローチャートである。
【0068】
まずステップ201では、被検体3の超音波探傷を行う前に、信号生成部11により、被検体3の設計データ、走査部21、及び探傷プローブ5の仕様などから探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔候補を複数設定し、探傷プローブ5の各振動子6から超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを補正する補正パターンを間隔別に演算して求め、記憶部15の遅延時間パターン保存領域16に保存する。
【0069】
次に、被検体3の超音波探傷が開始され、まずメカニカルスキャン(ステップ202)の第1段階として、探傷プローブ5が初期位置に設置され、走査部21の押し付け機構により、探傷プローブ5の振動子6の配置列が対向する被検体3の探傷面に倣うように該配置列の曲率を変形させる。このメカニカルスキャンは、特許請求の範囲にいう走査ステップに該当し、探傷プローブをメカニカルスキャン方向に所定刻みで段階的に移動させ、各段階で次の電子スキャン(ステップ204)が行われる。
【0070】
なお、メカニカルスキャン(ステップ202)では、曲率算出部32により、探傷プローブ5の歪ゲージ33で検出した探傷プローブ5背面の曲率情報に基づき、探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率を算出する(ステップ203)。
【0071】
次に、電子スキャン(ステップ204)では、まず、信号生成部11により、曲率算出部32で算出した探傷プローブ5の振動子6の配置列の曲率に応じた遅延時間パターンを演算して求め、これに間隔別の補正パターンを加減算等して遅延時間パターンを生成し、該生成した遅延時間パターンに基づき、順次、探傷プローブ5の各振動子6の駆動信号を生成する(ステップ205)。信号生成部11により生成された駆動信号は、信号送受信部12を介して探傷プローブ5に供給され、探傷プローブ5のグループ毎の振動子から順次超音波を発振させ、その反射波を受信する。
【0072】
次に、ステップ206では、信号送受信部12を介して入力される各反射波の信号を合成し、該合成波形からエコーデータ(例えばエコー映像データ)を生成して、間隔別に記憶部15のエコーデータ保存領域17に保存する。以上のステップ205及びステップ206の処理を間隔別の補正パターンで補正した全ての遅延時間パターンについて行った後、メカニカルスキャン(ステップ202)における現段階の電子スキャン(ステップ204)を終了する。
【0073】
メカニカルスキャン(ステップ202)の各段階における電子スキャン(ステップ204)が全て終了した後、ステップ207に進んで、評価部14により、記憶部15の間隔別のエコーデータを参照して、探傷結果の評価を行う。具体的には、メカニカルスキャンの各探傷プローブ5位置における複数のエコーデータから、まず任意のエコーデータに基づいて探傷プローブ5の振動子6の配置列と被検体3の探傷面との間隔dを検出し、該検出された間隔dに最も近い間隔に関する曲率別エコーデータ群についてのみ残し、それ以外は評価対象外とする。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の超音波探傷装置及び超音波探傷方法では、走査部21(走査ステップ)により、スペーサ9を介して探傷プローブ5の振動子6の配置列を被検体3の探傷面と接触させ、探傷プローブ5を一方向に移動可能に支持することとし、走査部21(走査ステップ)の移動走査における各段階(各探傷プローブ位置)で、曲率検出手段(歪みゲージ33及び曲率算出部32)による振動子6の配置列の曲率に応じて、前記探傷プローブの振動子配置列または面と被検体の探傷面との間隔別に算出した遅延時間パターンに基づき電子スキャンを行う。
【0075】
このように、歪みゲージ33等の簡単な構成の曲率検出手段により、実際の探傷プローブの振動子6の配置列の曲率に応じた適切な遅延時間パターンを用いることができ、装置コストを抑制しつつ、検査信頼性をより向上させることができる。また、間隔別の複数の遅延時間パターンに基づく電子スキャンにより、探傷面の曲率変化と共に発生する探傷プローブ5の振動子6の配置列と探傷面との間隔変化にも対応して、再探傷が必要となる確率を激減させることができ、結果として検査時間をより短くすることができる。
【0076】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、曲率及び間隔に応じた複数の遅延時間パターンを用意しておき、電子スキャンにおいて、信号生成部11により、複数の遅延時間パターンの内、曲率算出部32で算出した曲率に対応する遅延時間パターンを使用して駆動信号を生成するようにしても良い。このような構成により、信号生成部11における算出した曲率に基づく遅延時間パターンの演算処理を省くことができるが、設定した曲率別の複数の遅延時間パターンに基づいて電子スキャンが行われることとなり、検査信頼性はやや劣ってしまうこととなる。
【0077】
また、以上説明した第1実施形態及び第2実施形態の超音波探傷装置及び超音波探傷方法では、フレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブ5として、振動子6を列状に並べて配置したリニアアレイを例示したが、振動子を同心円状に配置したアニュラアレイや、振動子を格子状または同心円状に2次元配置したマトリクスアレイなどを用いることも可能である。この場合、第1実施形態及び第2実施形態の説明中、遅延時間パターンは1次元データから2次元データに置き換わり、語句「振動子6の配置列」は語句「振動子6の配置面」に置き換わることとなる。
【符号の説明】
【0078】
1,31 超音波探傷装置
3 被検体
5 フレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブ(探傷プローブ)
6 振動子
9 スペーサ
11 信号生成部
12 信号送受信部
13 信号処理部
14 評価部
15 記憶部(記憶手段)
16 遅延時間パターン保存領域
17 エコーデータ保存領域
21 走査部(走査手段)
32 曲率算出部(曲率検出手段)
33 歪ゲージ(曲率検出手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置であって、
スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に移動可能に支持する走査手段と、
前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率別、並びに前記探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別に保持する記憶手段と、を有し、
前記曲率別及び前記間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
前記電子スキャンで用いる複数の遅延時間パターンは、被検体の設計データに基づき選別されることを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
前記走査手段による前記探傷プローブの移動方向に複数の探傷区間が設定され、前記電子スキャンで用いる複数の遅延時間パターンは該探傷区間毎に選別されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波探傷装置。
【請求項4】
前記探傷プローブは、振動子配置列または配置面の曲率を検知する曲率検出手段を有し、
前記曲率検出手段による振動子配置列または配置面の曲率に応じた前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項5】
複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置であって、
前記探傷プローブに設置され、振動子配置列または配置面の曲率を検知する曲率検出手段と、
スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に移動可能に支持する走査手段と、
前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを、前記曲率検出手段による振動子配置列または配置面の曲率に応じて、前記探傷プローブの振動子配置列または面と被検体の探傷面との間隔別に算出する遅延時間パターン演算手段と、を有し、
前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項6】
複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置の超音波探傷方法であって、
スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に段階的に移動させる走査ステップと、
前記走査ステップにおける各段階において、前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンについて、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率別、並びに前記探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別に予め用意された遅延時間パターンから、前記探傷プローブの位置情報に応じて前記曲率別及び前記間隔別の組み合わせによる複数の遅延時間パターンを選別し、該複数の遅延時間パターンに基づき前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンする電子スキャンステップと、
を有することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項7】
前記電子スキャンステップは、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面の曲率を検知する曲率検出ステップを有し、振動子配置列または配置面の曲率に応じた前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンすることを特徴とする請求項6に記載の超音波探傷方法。
【請求項8】
複数個の振動子を列状または面状に並べて配置し、該配置列または配置面が任意の曲率を持つことが可能なフレキシブルフェーズドアレイ超音波探傷プローブを用いた超音波探傷装置の超音波探傷方法であって、
スペーサを介して前記探傷プローブの振動子配置列または配置面を被検体の探傷面と接触させ、該探傷プローブを一方向に段階的に移動させる走査ステップと、
前記走査ステップにおける各段階において、前記複数個の振動子のそれぞれから超音波を発振するタイミングを規定する遅延時間パターンを、前記探傷プローブに設置された曲率検出手段による振動子配置列または配置面の曲率に応じて、前記探傷プローブの振動子配置列または配置面と被検体の探傷面との間隔別に算出する遅延時間パターン演算ステップと、
前記走査ステップにおける各段階において、前記間隔別の複数の遅延時間パターンに基づき、前記探傷プローブの移動方向と直交する方向に電子スキャンする電子スキャンステップと、
を有することを特徴とする超音波探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−2781(P2012−2781A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140705(P2010−140705)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】