説明

超音波探触子及び超音波探触子の作製方法

【課題】超音波探触子の大きさを保ったままでコストアップとならずに、圧電素子アレイの圧電素子間での音響的クロストークの発生を防止した信号線を有する超音波探触子を提供する。
【解決手段】両面に電極を有する第1圧電素子が2次元状に配列された第1圧電素子アレイと、前記第1圧電素子アレイに積層して配置され、前記第1圧電素子アレイと反対側の面に第1電極を有し、第1圧電素子アレイ側の面に第2電極を有する第2圧電素子が2次元状に配列された第2圧電素子アレイと、を有する超音波探触子において、前記第1圧電素子アレイに配列された第1圧電素子の間に音響分離部を設け、前記音響分離部を貫通して前記第2電極に接続される信号線を、前記音響分離部の音響インピーダンスに略等しい音響インピーダンスを有する導電性部材を用いて作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置等の超音波機器に用いるに好適な超音波探触子及びその作製方法に関し、特に超音波素子を2次元状に配列して形成する超音波探触子の信号線を簡便に作製することを可能とした超音波探触子及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、体内の血流や体組織の断面形状の画像化に広く使われている。超音波診断装置は、超音波プローブを用いて生体組織に超音波を送信し、超音波を細いビームに絞り込み、組織界面のインピーダンス差によって生じる反射エコーを受信し、体内組織の画像形成を行い、超音波画像を得る。
【0003】
超音波診断装置は、通常、1次元状に圧電素子を配列したアレイ型探触子を超音波プローブ内に配置し、超音波を2次元状にスキャンし、体内断面画像の形成を行っている。
【0004】
最近、圧電素子を2次元状に配列した圧電素子アレイを搭載した2Dアレイ型探触子が登場してきている。特に、受信帯域を広くするために、被検体内からの反射波のうちの基本波を受信する第1圧電素子アレイと、高調波を受信する第2圧電素子アレイとを設けた超音波プローブが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
第1圧電素子アレイと第2圧電素子アレイの二つの圧電素子アレイを設けることで、各圧電素子アレイを構成する圧電素子への信号線の接続が難しくなる。これに対し、圧電素子の背面に配設された音響制動部材内に、信号線が占める空間を減少させる目的で、信号線を貫通させて配線する技術が提案されている。(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−276478号公報
【特許文献2】特開2000−166923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の技術を用いた場合、音響制動部材の音響インピーダンスに対して信号線の音響インピーダンスが大きいことから、音響制動部材と信号線の間で超音波が反射し、圧電素子に音響的クロストークが発生してしまう。
【0007】
特に、特許文献1に記載の技術において、第2の圧電素子アレイを構成する圧電素子からの信号線を、第1の圧電素子アレイの圧電素子同士の間を貫通させて配線する構成とすると、第1の圧電素子アレイを構成する圧電素子同士の間の音響分離材の間に高音響インピーダンスの信号線が存在することになり、第1圧電素子にクロストークが発生し、超音波探触子の性能を悪化させることになる。
【0008】
本発明の目的は、圧電素子アレイを構成する圧電素子同士の音響的クロストークの発生を防止した信号線を有する超音波探触子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0010】
1.両面に電極を有する第1圧電素子が2次元状に配列された第1圧電素子アレイと、
前記第1圧電素子アレイに積層して配置され、前記第1圧電素子アレイと反対側の面に第1電極を有し、第1圧電素子アレイ側の面に第2電極を有する第2圧電素子が2次元状に配列された第2圧電素子アレイと、
前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子の間に備えられた音響分離部と、
を有し、
前記音響分離部を貫通して前記第2電極に接続され、前記音響分離部の音響インピーダンスに略等しい音響インピーダンスを有する導電性部材からなる信号線と、
を有することを特徴とする超音波探触子。
【0011】
2.前記第1圧電素子に電圧が印加される面積と、前記第2圧電素子に電圧が印加される面積とは異なることを特徴とする前記1記載の超音波探触子。
【0012】
3.前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子の個数と、前記第2圧電素子アレイに配列された前記第2圧電素子の個数とは異なることを特徴とする前記1記載の超音波探触子。
【0013】
4.前記1から3に記載の超音波探触子の作製方法であって、前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間に音響分離部を作製する工程と、前記音響分離部に貫通孔を作製する工程と、前記貫通孔に熱膨張性樹脂と導電部形成材の混合物を注入し固化する工程と、からなる前記信号線を作製する工程を有することを特徴とする超音波探触子の作製方法。
【0014】
5.前記熱膨張性樹脂は、熱膨張性マイクロカプセルまたは含気泡フィラーの一方であり、
前記導電性部材は、金属ナノインクまたは導電部形成材の一方であることを特徴とする前記4記載の超音波探触子の作製方法。
【0015】
6.前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間に音響分離部を作製する工程と、前記音響分離部に貫通孔を作製する工程と、前記貫通孔に金属ナノインクと硬質の含気泡マイクロビーズの混合物を注入し固化する工程と、からなる前記信号線を作製する工程を有することを特徴とする前記5に記載の超音波探触子の作製方法。
【発明の効果】
【0016】
超音波探触子の大きさを保ったままでコストアップとならずに、圧電素子アレイの圧電素子間での音響的クロストークの発生を防止した信号線を有する超音波探触子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて以下に説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0018】
(超音波診断装置および超音波探触子の各構成および動作)
図1は、実施形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。図2は、実施形態における超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。図3は、実施形態の超音波診断装置における超音波探触子の構成を示す図である。
【0019】
超音波診断装置Hは、図1に示すように、図略の生体等の被検体に対して超音波(超音波信号)を送信すると共に、被検体で反射した超音波の反射波(エコー、超音波信号)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して超音波を送信させると共に、超音波探触子2で受信された被検体内からの超音波の反射波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成される。
【0020】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータを入力する操作入力部11と、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を供給して超音波探触子2に超音波を発生させる送信回路12と、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する受信回路13と、受信回路13で受信した受信信号に基づいて被検体内の内部状態の画像(超音波画像)を生成する画像処理部14と、画像処理部14で生成された被検体内の内部状態の画像を表示する表示部15と、これら操作入力部11、送信回路12、受信回路13、画像処理部14および表示部15を当該機能に応じて制御することによって超音波診断装置Hの全体制御を行う制御部16と、を備えて構成される。
【0021】
超音波探触子(超音波プローブ)2は、無機圧電素子と有機圧電素子とを備えている。無機圧電素子は無機圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる。有機圧電素子は有機圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる。
【0022】
このような構成の超音波探触子2は、例えば、図3に示す構成の超音波探触子2を例示することができる。
【0023】
この超音波探触子2は、平板状の音響制動部材23と、この音響制動部材23の上に積層された音響整合層31と、この音響制動部材23の一方主面上に支持されて積層された複数の無機圧電素子22(第1圧電素子)を備えた無機圧電素子アレイ(第1圧電素子アレイ)4と、これら複数の無機圧電素子22同士の隙間に音響分離材を充填して作製される音響分離部24と、これら複数の無機圧電素子22上に積層された共通接地電極25と、この共通接地電極25上に積層される音響整合層26と、この音響整合層26上に積層される有機圧電素子21(第2圧電素子)を備えた有機圧電素子アレイ(第2圧電素子アレイ)5と、この有機圧電素子21上に積層される音響整合層27と、外部からの電気信号を受ける導電パッド28と無機圧電素子22の電極とを接続する第1信号線29と、外部からの電気信号を受ける導電パッド28と有機圧電素子の電極とを接続する低音響インピーダンス導電性部材からなる第2信号線30などから構成される。
【0024】
音響制動部材23は、超音波を吸収する材料から構成され、複数の無機圧電素子22から音響制動部材23方向へ放射される超音波を吸収するものである。
【0025】
音響整合層31は、音響制動部材23と無機圧電素子22の各々の音響インピーダンスの中間の音響インピーダンスを有し、音響制動部材23と無機圧電素子22の音響インピーダンスの整合を図る。
【0026】
各無機圧電素子22は、無機圧電材料から構成される圧電素子101における互いに対向する両面にそれぞれ電極102、103を備えて構成される。複数の無機圧電素子22は、互いに所定の間隔を空けて平面視にて2次元状に配列され、第1圧電素子アレイとして音響制動部材23上に配置されている。
【0027】
複数の無機圧電素子22は、超音波の反射波を受信するように構成されてもよいが、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hでは、超音波を送信するように構成されている。より具体的には、複数の無機圧電素子22には、送信回路12からケーブル3と導電パッド28、第1信号線29を介して電気信号が入力される。この電気信号は、無機圧電素子22の電極102と電極103との間に入力される。複数の無機圧電素子22は、この電気信号を超音波信号に変換することによって超音波信号を送信する。
【0028】
音響分離部24は、無機圧電素子22の音響的インピーダンスと値が大きく異なる低音響インピーダンス樹脂から構成され、音響的インピーダンスが大きく異なることにより、音響分離材として働き、これら複数の無機圧電素子22の相互干渉を低減する機能を有する。音響分離部24によって各無機圧電素子22間におけるクロストークの低減が可能となる。
【0029】
共通接地電極25は、導電性の材料から構成され、図略の配線によって接地されており、そして、複数の無機圧電素子22上にまたがって直線状に積層されることによってこれら無機圧電素子22における各電極103を電気的に接地している。
【0030】
音響整合層26は、後工程で積層する有機圧電素子21と無機圧電素子22の各々の音響インピーダンスの中間の音響インピーダンスを有し、有機圧電素子21と無機圧電素子22の音響インピーダンスの整合を図る。
【0031】
有機圧電素子21は、所定の厚さを持った平板状の有機圧電材料から成る圧電素子105と、この圧電素子105の一方主面に形成された互いに分離した複数の電極106と、この圧電素子105の他方主面に略全面に亘って一様に形成された電極107とを備えて構成されたシート状の圧電素子である。
【0032】
このように複数の電極106が圧電素子105の一方主面に形成されることによって、有機圧電素子21は、1個の電極107と圧電素子105と電極106とから成る圧電素子を2次元状に第2圧電素子アレイとして備えることができ、これら各圧電素子が個別に動作することができる。
【0033】
有機圧電素子21における複数の圧電素子は、個別に機能させるために無機圧電素子22のように個々に分離する必要がなく、一体的なシート状で構成することが可能である。従って、有機圧電素子21の作製方法において、有機圧電材料から成るシート状の板状体に溝を形成する工程が必要なく、有機圧電素子21の作製方法がより単純化され、より少ない工数で有機圧電素子21を形成することができる。なお、有機圧電素子21は、複数の圧電素子を備えると看做せるために、電極107に代え、複数の電極106とそれぞれ一対となる複数の電極で構成されてもよい。以上のように本実施形態にかかる超音波探触子は、2次元状の第1圧電素子アレイと第2圧電素子アレイを有するアレイ型超音波探触子である。
【0034】
有機圧電素子21は、図3に示す例では、複数の無機圧電素子22の全体に亘って、共通接地電極25および音響整合層26を介して間接的に複数の無機圧電素子22に積層されている。なお、有機圧電素子21は、複数の無機圧電素子22の一部に亘って積層されてもよい。
【0035】
また、有機圧電素子21の電極106の個数(有機圧電素子21の個数)と無機圧電素子22の個数とは、同一でもよいが、本実施形態では、有機圧電素子21の電極106の個数と無機圧電素子22の個数とは、異なっている。すなわち、有機圧電素子21が備える圧電素子の個数と無機圧電素子22の個数とは、異なっている。このため、複数の無機圧電素子22の合計の面積と複数の圧電素子を備える有機圧電素子21の合計の面積とが同一であっても、1個の無機圧電素子22が占有する面積と有機圧電素子21における1個の圧電素子が占有する面積とをそれぞれ独立に設定することが可能となる。従って、無機圧電素子22をその無機圧電素子22に要求される仕様に応じて設計することができると共に、有機圧電素子21をその有機圧電素子21に要求される仕様に応じて設計することが可能となる。
【0036】
また、有機圧電素子21の電極106の面積と無機圧電素子22の電極102、103面積とを異ならせることで、無機圧電素子22と有機圧電素子21に要求される仕様に応じて、有機圧電素子21の電極106の面積と無機圧電素子22の電極102、103の面積とを設計することが可能となる。
【0037】
有機圧電素子21は、超音波を送信するように構成されてもよいが、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hでは、超音波の反射波を受信するように構成されている。より具体的には、有機圧電素子21は、反射波の超音波信号が受信され、この超音波信号を電気信号に変換することによってこの電気信号を出力する。この電気信号は、有機圧電素子21における電極106と電極107とから出力される。この電気信号は、ケーブル3を介して受信回路13へ出力される。
【0038】
第2信号線30は、外部からの電気信号を受ける導電パッド28と有機圧電素子21の電極106とを接続する。すなわち第2信号線30は有機圧電素子21の電極106から、音響整合層26、音響分離部24、音響整合層31、音響制動部材23を貫通して導電パッド28に接続されている。導電パッド28から音響制動部材23、音響整合層31を貫通する部分は、無機圧電素子22に外部から電気信号を供給する第1信号線29と同じ構造を有す。音響分離部24と音響整合層26を貫通する信号線部分は、音響分離部24と音響インピーダンスが近い値を有する導電性部材からなる。このように第2信号線30における音響分離部24と音響整合層26を貫通する信号線部分を、音響分離部24と近い音響インピーダンスを有する導電性部材で形成することで、音響的クロストークの発生を防ぐことが出来る。
【0039】
音響整合層27は、有機圧電素子21の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとの整合をとる部材である。そして、音響整合層27は、円弧状に膨出した形状とされ、被検体に向けて送信される超音波を収束する音響レンズの機能を有する。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、音響分離部24を貫通する第2信号線30を、音響分離部24と同等の音響インピーダンスを有する導電性部材を用いて作製することで、超音波探触子の大きさを保ったままでコストアップとならずに、音響的クロストークの発生を防ぐことが出来る。
【0041】
このような構成の超音波診断装置Hでは、例えば、操作入力部11から診断開始の指示が入力されると、制御部16の制御によって送信回路12で電気信号の送信信号が生成される。この生成された電気信号の送信信号は、ケーブル3を介して超音波探触子2へ供給される。より具体的には、この電気信号の送信信号は、超音波探触子2における複数の無機圧電素子22へそれぞれ供給される。この電気信号の送信信号は、例えば、所定の周期で繰り返される電圧パルスである。複数の無機圧電素子22は、それぞれ、この電気信号の送信信号が供給されることによってその厚み方向に伸縮し、この電気信号の送信信号に応じて超音波振動する。この超音波振動によって、複数の無機圧電素子22は、共通接地電極25、音響整合層26、有機圧電素子21および音響整合層27を介して超音波を放射する。超音波探触子2が被検体に例えば当接されていると、これによって超音波探触子2から被検体に対して超音波が送信される。
【0042】
なお、超音波探触子2は、被検体の表面上に当接して用いられてもよいし、被検体の内部に挿入して、例えば、生体の体腔内に挿入して用いられてもよい。
【0043】
この被検体に対して送信された超音波は、被検体内部における音響インピーダンスが異なる1または複数の境界面で反射され、超音波の反射波となる。この反射波には、送信された超音波の周波数(基本波の基本周波数)成分だけでなく、基本周波数の整数倍の高調波の周波数成分も含まれる。例えば、基本周波数の2倍、3倍および4倍などの第2高調波成分、第3高調波成分および第4高調波成分なども含まれる。この反射波の超音波は、超音波探触子2で受信される。より具体的には、この反射波の超音波は、音響整合層27を介して有機圧電素子21で受信され、有機圧電素子21で機械的な振動が電気信号に変換されて受信信号として取り出される。この取り出された電気信号の受信信号は、ケーブル3を介して制御部16で制御される受信回路13で受信される。
【0044】
ここで、上述において、各無機圧電素子22から順次に超音波が被検体に向けて送信され、被検体で反射した超音波が有機圧電素子21で受信される。
【0045】
そして、画像処理部14は、制御部16の制御によって、受信回路13で受信した受信信号に基づいて、送信から受信までの時間や受信強度などから被検体内の内部状態の画像(超音波画像)を生成し、表示部15は、制御部16の制御によって、画像処理部14で生成された被検体内の内部状態の画像を表示する。本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hでは、上述したように基本波の高調波が受信されるので、ハーモニックイメージング技術によって超音波画像を形成することが可能となる。このため、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hは、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。そして、比較的パワーの大きい第2および第3高調波が受信されるので、より鮮明な超音波画像の提供が可能となる。
【0046】
また、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hでは、複数の無機圧電素子22が超音波を送信するように構成されているので、超音波探触子2および超音波診断装置Hは、比較的簡単な構造で送信パワーを大きくすることができる。従って、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hは、高調波のエコーを得るために比較的大きなパワーで基本波を送信することが必要なハーモニックイメージング技術に好適であり、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。
【0047】
また、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hでは、有機圧電素子21は、超音波の反射波を受信するように構成されている。一般に、無機圧電材料の圧電素子は、基本波の周波数に対する2倍程度の周波数の超音波しか受信することができないが、有機圧電材料の圧電素子は、基本波の周波数に対する例えば4〜5倍程度の周波数の超音波を受信することができ、受信周波数帯域の広帯域化に適している。このような超音波を広い周波数に亘って受信可能な特性を持つ有機圧電素子21によって超音波信号が受信されるので、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hは、比較的簡単な構造で周波数帯域を広帯域にすることができる。このため、本実施形態における超音波探触子2および超音波診断装置Hは、基本波の高調波を受信することが必要なハーモニックイメージング技術に好適であり、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。
【0048】
また、以上の説明では、無機圧電素子22と有機圧電素子21とは2次元状に配列されている場合を示したが、用途に応じて1次元状であってもよい。
【0049】
(超音波探触子2の作製方法)
超音波探触子2の作製方法について、図4から図16を用いて説明する。
【0050】
図4は、超音波探触子2の作製方法についての作製フロー図である。図5は有機圧電素子アレイ5の作製方法の概要図である。図6は、音響制動部材23の概要図である。図7は、音響整合層31の概要図である。図8は、平板状の両面電極付無機圧電素子50を搭載したワークの概要図である。図9は、無機圧電素子22をアレイ化されたワークの概要図である。図10は、音響分離部24を形成したワークの概要図である。図11は、共通接地電極25を形成したワークの概要図である。図12は、音響整合層26を形成したワークの概要図である。図13は、穿孔されたワークの概要図である。図14は、導電性部材52を注入されたワークの概要図である。図15は、有機圧電素子アレイを積層したワークの概要図である。図16は、音響整合層27を積層したワークの概要図である。
【0051】
なお、図6から図16においては、各図(a)は各工程において作製された結果物を横から観察した図であり、各図(b)は斜めから観察した図である。各図(a)は各図(b)中の矢印Yの方向へ観察した図である。
【0052】
以下、図4の作製フロー図を基に超音波探触子2の作製方法を説明する。
【0053】
最初に、ステップS10にて、有機圧電素子アレイ(第2圧電素子アレイ)5を作製する。図5(a)に示すように、所定の厚さを持った平板状の有機圧電材料から成る圧電素子105が用意される。圧電素子105の厚さは、受信すべき超音波の周波数や有機圧電材料の種類等によって適宜に設定されるが、例えば、中心周波数8MHzの超音波を受信する場合では、圧電素子105の厚さは、約50μmである。
【0054】
有機圧電材料は、例えば、フッ化ビニリデンの重合体を用いることができる。また例えば、有機圧電材料は、フッ化ビニリデン(VDF)系コポリマを用いることができる。このフッ化ビニリデン系コポリマは、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体(コポリマ)であり、他の単量体としては、3フッ化エチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレン等を用いることができる。フッ化ビニリデン系コポリマは、その共重合比によって厚み方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化するので、例えば、超音波探触子の仕様等に応じて適宜な共重合比が採用される。例えば、フッ化ビニリデン/3フッ化エチレンのコポリマの場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が60mol%〜99mol%が好ましく、有機圧電素子を無機圧電素子に積層する複合素子の場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が85mol%〜99mol%がより好ましい。また、このような複合素子の場合では、他の単量体は、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレンが好ましい。また例えば、有機圧電材料は、ポリ尿素を用いることができる。このポリ尿素の場合では、蒸着重合法で圧電素子105を作成することが好ましい。ポリ尿素用のモノマとして、一般式、HN−R−NH構造を挙げることができる。ここで、Rは、任意の置換基で置換されてもよいアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基、ヘテロ環基を含んでもよい。ポリ尿素は、尿素誘導体と他の単量体との共重合体であってもよい。好ましいポリ尿素として、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)と4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を用いる芳香族ポリ尿素を挙げることができる。
【0055】
次に、図5(b)に示すように、この有機圧電材料から成る圧電素子105の一方主面に互いに分離した複数の電極106(106−11と106−12)が例えばスクリーン印刷、蒸着あるいはスパッタ等によって形成される。これら複数の電極106は、平面視にて線形独立な2方向に、例えば互いに直交する2方向にm行×n列の2次元アレイ状に配列するように形成されてもよい(m、nは、正の整数である)。電極106は、例えば、平面視にて矩形状とされ、そのサイズは、例えば分解能等によって適宜に設定されるが、例えば、約0.1mm×0.1mmとされる。
【0056】
なお、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0057】
そして、図5(c)および図5(d)に示すように、この有機圧電材料から成る圧電素子105の他方主面に電極107が例えばスクリーン印刷、蒸着あるいはスパッタ等によって形成される。これによってm行×n列の2次元アレイ状に配列された複数の電極106を一方主面に備えると共に他方主面に電極107を備える有機圧電素子アレイ(第2圧電素子アレイ)5が形成される。
【0058】
このような構成の有機圧電素子21は、電極106と、これに対向する電極107と、これら電極106と電極107との間に介在する有機圧電材料の圧電素子105とから1個の圧電素子が構成されることから、複数の圧電素子を含むと言える。
【0059】
このように本実施形態における超音波探触子2の作製方法では、有機圧電材料から成るシート状の圧電素子105に、分離した複数の電極106をその表面に形成することによって複数の圧電素子が形成される。このため、複数の圧電素子を形成するためにシート状の圧電素子105に溝を形成する工程が必要ない。従って、このような構成の超音波探触子2では、有機圧電素子21に対して溝を形成する工程が必要ではないため、有機圧電素子21の作製方法がより単純化され、より少ない工数で超音波探触子2を作製することが可能となる。
【0060】
なお、上述では、圧電素子105の一方主面に複数の電極106を形成した後に、圧電素子105の他方主面に電極107を形成したが、圧電素子105の他方主面に電極106を形成した後に、圧電素子105の一方主面に電極106の形状に対応した複数の電極107を形成してもよい。
【0061】
次に、ステップS11にて、図6(a)、(b)に示すように有機圧電素子21の大きさに応じた音響制動部材23を用意する。音響制動部材23は、超音波を吸収する平板状の超音波吸収体を備えて構成され、無機圧電素子22の音響制動部材23に接する面から放射される超音波を吸収するものである。
【0062】
音響制動部材23は後述する信号線Sに近い音響インピーダンスを有し、音響制動部材23と信号線Sとの界面における超音波の反射を抑制し、無機圧電素子22への音響的クロストークの発生を防止する。音響制動部材23は、例えばシリコンゴムで形成されている。
【0063】
次に、ステップS12にて、図7(a)、(b)に示すように音響制動部材23の主面上に音響整合層31を形成し、音響制動部材23と音響整合層31を貫通させる形で、信号線S(S1〜S5等)を形成し、信号線Sの音響制動部材23の反対側の面に導電パッド28を形成する。この信号線Sは、後工程で積層する無機圧電素子22と有機圧電素子21の電極に接続する。
【0064】
次に、ステップS13にて、無機圧電素子22をアレイにして作製する。最初に、図8(a)、(b)に示すように、平板状の両面電極付無機圧電素子50が音響整合層31上に積層される。両面電極付無機圧電素子50は、無機圧電板の両面に電極を形成したものである。電極の形成法は、有機圧電素子の電極の形成法と同様の方法を採用する。例えばスクリーン印刷、蒸着あるいはスパッタ等によって形成される。
【0065】
両面電極付無機圧電素子50を音響整合層31に積層する際には、信号線S1からS5は、両面電極付無機圧電素子50の一方主面に形成された電極に電気的に接続される。
【0066】
無機圧電板の材料は、例えば、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO)等である。
【0067】
次に、図9(a)、(b)に示すように、音響整合層31が露出するまで積層方向に溝41が両面電極付無機圧電素子50に、例えばダイシングソー等によって形成され、アレイ化する。溝41は、平面視にて線形独立な2方向に、例えば互いに直交する2方向にp行×q列で配列する2次元アレイ状の複数の無機圧電素子22(22−1〜22−3等)である第1圧電素子アレイ4を構成するように、これら2方向に複数形成される(p、qは、正の整数である)。
【0068】
溝41が形成されることによって、両面電極付無機圧電素子50における各面の電極が分割される。上面の電極は電極103に分割され、下面の電極は電極102に分割される。そのサイズは、例えば分解能等によって適宜に設定されるが、例えば、約0.4mm×0.4mmとされる。各電極102は信号線S1、S3、S5と接続され、導電パッド28を通じて外部から電気信号を供給される。
【0069】
次に、ステップS14にて、図10(a)、(b)に示すように、溝41に、各無機圧電素子の音響的クロストークや共振を回避するために、各無機圧電素子22と音響インピーダンスが異なる部材、例えば低音響インピーダンス樹脂等の音響分離材が充填されて、音響分離部24が形成される。このような樹脂は、例えば、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が用いられる。
【0070】
次に、ステップS15にて、図11(a)、(b)に示すように、第1圧電素子アレイ4の上面に、共通して接地させる電極となる共通接地電極25が、例えばスクリーン印刷、蒸着あるいはスパッタ等によって層状に形成される。この共通接地電極25は図示しない配線によって接地される。
【0071】
次に、ステップS16にて、図12(a)、(b)に示すように、共通接地電極25の上から音響整合層26を形成する。
【0072】
次に、ステップS17にて、図13(a)、(b)に示すように、音響整合層26の上に上記のように作製した有機圧電素子21を積載する前に、有機圧電素子21と接続する第2信号線30を形成するための孔を穿つ穿孔作業を実施する。前述のように第2信号線30は、音響整合層31の上面にまで形成されており、第2信号線30の断面が露出する状態となっている。音響整合層26の上面から信号線Sまでの音響整合層26と音響分離部24を除去して穿孔する。
【0073】
音響整合層26と音響分離部24を除去する穿孔作業には、例えば、レーザやドリルを用いる。レーザを用いる場合、エキシマレーザなどの紫外レーザを採用すれば、アブレーション加工により音響整合層26と音響分離部24を切れよく除去し、レーザ加工孔51を得ることができる。レーザ加工孔51の深さはレーザ照射時間で制御でき、適切な深さのレーザ加工孔51を開けることができる。なお、炭酸ガスレーザなどのハイパワーレーザを用いた熱加工により、音響整合層26と音響分離部24を昇華させて除去することもできる。
【0074】
また、ドリルを用いた場合、ドリルと信号線Sとが導通するかどうかを監視しつつ穿孔する。信号線Sにドリルの先端が到達することを検知でき、余分な穿孔を防ぐことができる。
【0075】
次に、ステップS18にて、図14(a)、(b)に示すように、穿孔したレーザ加工孔51に導電性部材52を注入して固化することで、穿孔したレーザ加工孔51の形状の導電性部材52からなり、音響整合層26と音響分離部24を貫通して信号線Sに到達する第2信号線30の部分を形成する。導電性部材52には、音響分離部24と近い音響的インピーダンスを有する低音響インピーダンス導電性部材を採用し、音響的クロストークを防ぐ。
【0076】
具体的には、音響分離部24の音響インピーダンスと導電性部材52の音響インピーダンスとが条件式(1)を満足するように、それぞれの材料を選択する。
|Z1−Z2|≦0.5・10kg/m・s (1)
ここで、Z1は音響分離部24の音響インピーダンス、Z2は導電性部材52の音響インピーダンスである。条件式(1)を満足する材料を選択することで、音響分離部24と導電性部材52の間における超音波の反射を非常に少なくできる。
【0077】
無機圧電材料には通常PZTが採用され、PZTの音響インピーダンスは29〜38(×10kg/m・s)程度である。無機圧電素子22同士の間の音響分離部24には、PZTとの界面において超音波を透過させないように、PZTに比べて音響インピーダンスの値が大きく異なる材料、例えばシリコンゴムを採用する。シリコンゴムの音響インピーダンスは、0.99〜1.46(×10kg/m・s)程度であり、PZTの音響インピーダンスと大きく異なる。従って、PZT内で発生した超音波はPZTとシリコンゴムとの界面で殆ど反射する。
【0078】
導電性部材52の例としては、導電部形成材と熱膨張性樹脂の混合物がある。導電部形成材の例としては導電性樹脂がある。一方、熱膨張性樹脂の例としては、熱膨張性マイクロカプセルや含気泡フィラーなどがある。
【0079】
熱膨張性マイクロカプセルや含気泡フィラーに液体の導電性樹脂と合わせて混濁した後に固化することで、微小な空間領域に固形物を形成できる。従って、微細な信号線の形成に好適である。導電性樹脂と熱膨張性樹脂の混合比や固化する条件などを最適化することで、音響整合層26と音響分離部24を貫通して信号線Sに到達する第2信号線30の部分を形成する導電性部材52の音響インピーダンスの値と、音響分離部24を形成するシリコンゴムの音響インピーダンスの値とを条件式(1)を満たすように設定できる。
【0080】
導電性部材52の他の例としては、金属ナノインクと熱膨張性マイクロカプセルの混合物や、金属ナノインクと硬質の含気泡マイクロビーズの混合物などがある。
【0081】
金属ナノインクは微小な導電性インクであり、熱膨張性マイクロカプセルと含気泡マイクロビーズは微小な空間領域に固形物を形成できる。従って、これらの混合物は微細な信号線の形成に好適である。
【0082】
これらの場合も上記と同様に、導電性部材52を形成する金属ナノインクと熱膨張性マイクロカプセルの混合比や固化する条件などを最適化し、または、金属ナノインクと硬質の含気泡マイクロビーズの混合比や固化する条件などを最適化することで、導電性部材52の音響インピーダンスの値と、音響分離部24を形成するシリコンゴムの音響インピーダンスの値とを条件式(1)を満たすように設定できる。
【0083】
穿孔したレーザ加工孔51にこれらの混合物のいずれかを充填する。該混合物を加熱することで、後工程で積層する有機圧電素子の電極と、導電パッド28との導通をとる信号線が形成される。混合物の注入は、例えば、混合物を充填したディスペンサのニードルを穿孔した孔に近づけ、混合物を空気圧と押し出して出射して注入する。
【0084】
例えば、導電性部材の例として、金属ナノインクと熱膨張性マイクロカプセルの混合物を採用した場合、金属ナノインクを加熱、焼成することで、金属ナノインクが発泡し、金属化して導電性を発揮する多孔質金属層が形成される。熱膨張性マイクロカプセルの具体例としては、EXPANCEL社製「EXPANCEL(DU)」が挙げられる。
【0085】
次に、ステップS19にて、図15(a)、(b)に示すように、音響整合層26の上に、上述したように別工程で作製したシート状の有機圧電素子アレイ(第2圧電素子アレイ)5が積層される。例えば、有機圧電素子アレイ5は、接着で無機圧電素子22上に固定される。
【0086】
有機圧電素子21に設けた電極106が、第2信号線30に対応するように積層する。有機圧電素子21の電極107は共通電極であり、図示しない配線により接地される。
【0087】
次に、ステップS20にて、図16(a)、(b)に示すように、有機圧電素子21上に、音響整合層27が形成される。音響整合層27は、必要に応じて単層または複数層で構成される。例えば、受信周波数帯域を広帯域化する場合では、音響整合層27は、複数層で構成されることが好ましい。以上で図3に示す構成の超音波探触子2が作製され、超音波探触子2の作製フローが終了する。
【0088】
本実施形態では、無機圧電素子22は、両面に各電極102、103が形成された圧電素子101の単層で構成されたが、両面に各電極102、103が形成された圧電素子101が積層した複数層で構成されてもよい。
【0089】
また、本実施形態では、有機圧電素子21は、両面に電極106および電極107が形成された圧電素子105の単層で構成されたが、両面に電極106および電極107が形成された圧電素子105が複数層で構成されてもよい。複数層とすることによって、超音波を送信する場合には、そのパワーを大きくすることが可能となり、超音波を受信する場合には、受信感度を向上させることが可能となる。
【0090】
以上のように本実施形態によれば、前記第1圧電素子アレイに配列された第1圧電素子の間に音響分離部を設け、前記音響分離部を貫通して前記第2電極に接続される信号線を、前記音響分離部の音響インピーダンスに略等しい音響インピーダンスを有する導電性部材を用いて作製することで、複数の無機圧電素子22の間における音響的クロストークの発生を防止することができる。
【0091】
また、有機圧電素子21の電極106の個数(有機圧電素子21の個数)と無機圧電素子22の個数とは異ならせることで、無機圧電素子22と有機圧電素子21に要求される仕様に応じて、有機圧電素子21の電極106の個数と無機圧電素子22の個数とを設計することが可能となる。
【0092】
また、有機圧電素子21の電極106の面積と無機圧電素子22の電極102、103面積とを異ならせることで、無機圧電素子22と有機圧電素子21に要求される仕様に応じて、有機圧電素子21の電極106の面積と無機圧電素子22の電極102、103の面積とを設計することが可能となる。
【0093】
また、前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間に音響分離部を作製する工程と、前記音響分離部に貫通孔を作製する工程と、前記貫通孔に熱膨張性樹脂と導電部形成材の混合物を注入し固化する工程と、からなる前記信号線を作製する工程を超音波探触子の作製方法に採用することで、前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間における音響的クロストークの発生を防止することができる。
【0094】
また、前記熱膨張性樹脂に、熱膨張性マイクロカプセルまたは含気泡フィラーの一方を採用し、前記導電性部材に、金属ナノインクまたは導電部形成材の一方を採用することで、音響的クロストークの発生を防止する信号線を作製することができる。
【0095】
また、前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間に音響分離部を作製する工程と、前記音響分離部に貫通孔を作製する工程と、前記貫通孔に金属ナノインクと硬質の含気泡マイクロビーズの混合物を注入し固化する工程と、からなる前記信号線を作製する工程を超音波探触子の作製方法に採用することで、前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間における音響的クロストークの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施形態における超音波診断装置Hの外観構成を示す図である。
【図2】実施形態における超音波診断装置Hの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態の超音波診断装置における超音波探触子2の構成を示す断面図である。
【図4】超音波探触子2の作製方法についての作製フロー図である。
【図5】有機圧電素子アレイ5の作製方法の概要図である。
【図6】音響制動部材23の概要図である。
【図7】音響整合層31の概要図である。
【図8】平板状の両面電極付無機圧電素子50を搭載したワークの概要図である。
【図9】無機圧電素子22をアレイ化されたワークの概要図である。
【図10】音響分離部24を形成したワークの概要図である。
【図11】共通接地電極25を形成したワークの概要図である。
【図12】音響整合層26を形成したワークの概要図である。
【図13】穿孔されたワークの概要図である。
【図14】導電性部材52を注入されたワークの概要図である。
【図15】有機圧電素子アレイを積層したワークの概要図である。
【図16】音響整合層27を積層したワークの概要図である。
【符号の説明】
【0097】
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
3 ケーブル
4 無機圧電素子アレイ
5 有機圧電素子アレイ
11 操作入力部
12 送信回路
13 受信回路
14 画像処理部
15 表示部
16 制御部
21 有機圧電素子
22 無機圧電素子
23 音響制動部材
24 音響分離部
25 共通接地電極
26、27、31 音響整合層
28 導電パッド
29 第1信号線
30 第2信号線
41 溝
50 両面電極付無機圧電素子
51 レーザ加工孔
52 導電性部材
101、105 圧電素子
102、103,107 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に電極を有する第1圧電素子が2次元状に配列された第1圧電素子アレイと、
前記第1圧電素子アレイに積層して配置され、前記第1圧電素子アレイと反対側の面に第1電極を有し、第1圧電素子アレイ側の面に第2電極を有する第2圧電素子が2次元状に配列された第2圧電素子アレイと、
前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子の間に備えられた音響分離部と、
を有し、
前記音響分離部を貫通して前記第2電極に接続され、前記音響分離部の音響インピーダンスに略等しい音響インピーダンスを有する導電性部材からなる信号線と、
を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記第1圧電素子に電圧が印加される面積と、前記第2圧電素子に電圧が印加される面積とは異なることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子の個数と、前記第2圧電素子アレイに配列された前記第2圧電素子の個数とは異なることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項4】
請求項1から3に記載の超音波探触子の作製方法であって、前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間に音響分離部を作製する工程と、前記音響分離部に貫通孔を作製する工程と、前記貫通孔に熱膨張性樹脂と導電部形成材の混合物を注入し固化する工程と、からなる前記信号線を作製する工程を有することを特徴とする超音波探触子の作製方法。
【請求項5】
前記熱膨張性樹脂は、熱膨張性マイクロカプセルまたは含気泡フィラーの一方であり、
前記導電性部材は、金属ナノインクまたは導電部形成材の一方であることを特徴とする請求項4記載の超音波探触子の作製方法。
【請求項6】
前記第1圧電素子アレイに配列された前記第1圧電素子間に音響分離部を作製する工程と、前記音響分離部に貫通孔を作製する工程と、前記貫通孔に金属ナノインクと硬質の含気泡マイクロビーズの混合物を注入し固化する工程と、からなる前記信号線を作製する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の超音波探触子の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−136807(P2010−136807A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314323(P2008−314323)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】