説明

超音波探触子

【課題】超音波探触子1を高感度化することにより、機械部品や機械部品用の素材である試験片4に存在する小さな欠陥5を検出できる超音波探触子を提供する。
【解決手段】本発明に係る超音波探傷装置用の振動子2を有する超音波探触子1は、前記振動子2の先端3が凹形状となっており、前記凹形状部の表面の粗さが0.125μmRa以下となっている。また、前記凹形状が、球面の場合には、前記球面の真球度が、1.5μm以下が好ましい。また、前記の超音波探傷装置は、機械部品や機械部品用素材を超音波を利用して探傷するためのものであり、前記の表面粗さ、または真円度を有する超音波探触子を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、機械部品や機械部品の素材に対する超音波探傷に用いる超音波探触子に関する。特に、本発明の超音波探触子は、転動装置や転動装置用素材に対して好適に用いることが出来る。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受等の転動装置の寿命向上の為には、欠陥の少ない素材、すなわち清浄度の良い素材が必要とされる。欠陥の検出には、非破壊検査である等の理由により超音波探傷装置が用いられることがある。近年、素材に対する清浄度の要求は、厳しくなっており、より小さな欠陥を検出することが求められている。超音波探傷装置において、より小さな欠陥を検出する為には、超音波の周波数を上げることが考えられる。しかし、周波数を上げると、素材中での減衰が大きく探傷深さも浅くなる為、深さ方向の測定範囲が狭くなる。深さ方向の測定範囲を狭くしない為には、不感帯を狭くする必要がある。不感帯を狭くする為には、振動子径を小さくすることが考えられる。しかし、振動子径を小さくすると、感度が低下する。従って、より小さな欠陥を検出する為には、単に超音波の周波数を上げるだけではなく、振動子径を小さくした時の感度低下への対応が必要となる。
【0003】
この部分の改善の先行技術としては、例えば特許文献1がある。これは、超音波探触子の振動子の背面に位置する背面材の素材と成形法を工夫して、均一な混合とすることにより、高感度化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−293899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の超音波探触子は、より小さな欠陥を検出する為には、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波探触子を高感度化することにより、機械部品や機械部品用の素材である試験片に存在する小さな欠陥を検出できる超音波探触子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る超音波探傷装置用の振動子を有する超音波探触子は、前記振動子の先端が凹形状となっており、前記凹形状部の表面の粗さが0.125μmRa以下となっている。また、前記凹形状部が、球面の場合には、前記球面の真球度が、1.5μm以下が好ましい。また、前記の超音波探傷装置は、機械部品や機械部品用素材を超音波を利用して探傷するためのものであり、前記の表面粗さ、または真円度を有する超音波探触子を用いることが好ましい。なお、本願の表面の粗さは、表面の平均粗さを意味し、真球度は、理想的な球面からの絶対的なずれ量を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超音波探触子を高感度化し、より小さな欠陥を検出できるので、転がり軸受等の転動装置の寿命向上の為に、欠陥が少ない部品または素材、すなわち清浄度の良い部品または素材を選別することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る超音波探触子と測定例
【図2】振動子先端凹形状部の表面粗さと感度比のグラフ
【図3】振動子先端凹形状部の真球度と感度比のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る超音波探触子の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1において、本発明に係る超音波探触子1は、図示しない超音波探傷装置用であり、振動子2の先端3が凹形状となっている。振動子2の先端3の凹形状部は、凹形状部が球面の場合は、鋼球等の表面が球面形状のものを押し付けることにより形成できる。凹形状部の表面粗さや真球度は、表面が球面形状のものの表面の粗さや真球度から影響を受ける。本発明に係る超音波探触子は、超音波探傷装置用であり、振動子の先端が凹形状となっており、前記凹形状部の表面の粗さが0.125μmRa以下となっている。これにより、超音波探触子を高感度化し、より小さな欠陥を検出できるので、転がり軸受等の転動装置の寿命向上の為に、欠陥が少ない素材、すなわち清浄度の良い素材を選別することが出来る。また、前記凹形状が、球面の場合には、前記凹形状部表面の真球度が、1.5μm以下が好ましい。これにより、超音波探触子を高感度化し、より小さな欠陥を検出できるので、転がり軸受等の転動装置の寿命向上の為に、欠陥が少ない素材、すなわち清浄度の良い素材を選別することが出来る。
【0011】
(実施例1)本実施例に於いては、超音波探触子1の振動子2の先端3の凹形状部の表面粗さが異なる8種類の探触子を準備し、直径Ф50mmの円柱形状の試験片4に形成した直径Ф50μmの欠陥5から反射されるエコーの強度を測定することにより、感度の確認を行った。また、試験片4の素材としては、高炭素クロム軸受鋼のSUJ2を用いた。先端3の凹形状部の表面粗さは、押し付ける鋼球の粗さを変更することにより、調整した。振動子2の先端3の凹形状部の真球度は、0.50μmとした。振動子2の焦点距離/振動子径は、4.2とし、不感帯は0.59mmとした。なお、焦点距離とは、超音波探触子の先端から、焦点までの距離のことであり、振動子径は振動子の直径のことである。また、不感帯は、試験片表面付近の反射波により探傷ができない範囲のことである。表1と図2に振動子2の先端3の凹部の表面粗さと、表面粗さ0.5μmRaの時のエコー強度を1とした時の各粗さのエコー強度を感度比とし、表1と図2に示した。
【0012】
【表1】

【0013】
表1と図2より、超音波探触子を高感度化する為には、超音波探触子の振動子の先端の凹形状部の表面の粗さが0.125μmRa以下であることが好ましく、0.100μmRa以下がより好ましく、0.05μmRa以下が更に好ましい。超音波探触子の振動子の先端の凹形状部の表面の粗さが本発明の範囲であると、高感度化出来るので、不感帯を小さくする為に振動子径を小さくしても、感度を維持することが可能となる。
【0014】
(実施例2)本実施例に於いては、超音波探触子1の振動子2の先端3の凹形状部の真球度が異なる8種類の探触子を準備し、直径Ф50mmの試験片4に形成した直径Ф50μmの欠陥5から反射されるエコーの強度を測定することにより、感度の確認を行った。先端3の凹形状部の真球度は、押し付ける鋼球の真球度を変更することにより、調整した。振動子2の先端3の凹形状部の表面粗さは、0.05μmRaとした。振動子2の焦点距離/振動子径は、4.2とし、不感帯は0.59mmとした。表1に振動子2の先端3の凹形状部の真球度と、真球度5.00μmの時のエコー強度を1とした時の各真球度のエコー強度を感度比とし、表2と図3に示した。
【0015】
【表2】

【0016】
表2と図3より、超音波探触子を高感度化する為には、超音波探触子の振動子の先端の凹形状部の真球度が1.50μm以下であることが好ましく、1.00μm以下がより好ましく、0.50μm以下が更に好ましい。超音波探触子の振動子の先端の凹形状部の真球度が本発明の範囲であると、より高感度化出来るので、不感帯を小さくする為に振動子径を小さくしても感度を維持することが可能となる。
なお、本実施例は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施例に限定されるものではない。本発明の主旨を外れない限り、他の実施例にも適用出来る。
【符号の説明】
【0017】
1 超音波探触子
2 振動子
3 振動子の先端
4 試験片
5 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探傷装置用の振動子を有する超音波探触子において、前記振動子の先端が凹形状となっており、前記凹形状部の表面の粗さが0.125μmRa以下であることを特徴とした超音波探触子。
【請求項2】
前記凹形状が球面であり、前記球面の真球度が、1.5μm以下であることを特徴とした請求項1の超音波探触子。
【請求項3】
機械部品や機械部品用素材を超音波を利用して探傷するための超音波探傷装置において、請求項1または請求項2の超音波探触子を用いたことを特徴とした超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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