説明

超音波接合方法およびこれを用いた装置

【課題】チップ部品を吸着保持する吸着部材の磨耗を抑制することができる超音波接合方法およびこれを用いた装置を提供することを目的とする。
【解決手段】予め設定された接合時間内において、基板にチップ部品の接合を開始して減衰時間開始時点になると、振幅制御部によって超音波発生器が操作されて、吸着部材における超音波振動による振幅が、接合終了時間になるまでの間、その経過時間に比例して小さくなるように制御されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などのチップ部品の電極を基板などのワークの電極に押圧および加熱しながら、当該接合部位に超音波振動を付与して接合する超音波接合方法およびこれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2個の被接合部材の金属からなる両接合部位を接触させ、一方の被接合部材を吸着保持した状態で他方の被接合部材に押圧しながら超音波振動を付与して接合している。具体的には、接合開始にともなって、接合部位における超音波振動の振幅を所定の振幅になるまで大きくしてゆく。所定振幅になった時点から予め設定された接合時間が終了するまでの残り時間は、超音波振動の振幅を一定に保った状態で接合部位に超音波振動を付与している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−19877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法では、次のような問題がある。
【0004】
すなわち、予め決められた接合時間内で、超音波接合が終了するまで超音波振動の振幅を一定に保った状態のまま接続部位の接合行なった場合、被接合部材を吸着保持している吸着部材の吸着面が短時間で磨耗してしまうといった問題ある。つまり、接合時間は、接合対象物の接合対象である被接合部材(チップ部品)の固体差を考慮して平均接合時間よりも長く、または最大時間に設定されている。そのため、これら設定時間よりも短時間で接合する物の場合、被接合部材の接合部位同士が接合時間内の早い時間に強固に金属結合され、吸着部材による被接合部材の吸着力を上回る。その結果、吸着部材の吸着面が、被接合部材の表面で滑り、摩擦により磨耗してしまう。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、吸着部材の磨耗を抑制することができる超音波接合方法およびこれを用いた装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するために次のような構成をとる。
【0007】
第1の発明は、吸着部材に吸着保持したチップ部品の電極をワークの電極に押圧しながら、両電極に超音波振動を付与して接合する超音波接合方法であって、
前記チップ部品の種類に応じて予め設定された接合時間のうち、所定時間経過後に前記両電極の接合部位における超音波振動の振幅を小さくしてゆく
ことを特徴とする。
【0008】
(作用・効果) 第1の発明によると、所定時間内でチップ部品と基板の両電極同士が金属結合している場合に、当該接合強度よりも吸着部材によるチップ部品の吸着強度が弱いので、吸着部材の吸着面がチップ部品の表面で滑りが発生して擦れる。しかしながら、吸着部材が擦れるときに、超音波振動の振幅が小さいので吸着部材の吸着面とチップ部品の表面での摩擦が抑制される。その結果、吸着部材の吸着面の磨耗を抑制することができる。
【0009】
また、チップ部品の電極と基板の電極の金属結合よりも弱いチップ部品側の電極取り付け部分に加わる摩擦による伝達応力が抑制される。すなわち、チップ部品側の電極取り付け部分に加わる伝達応力によって発生しがちなクラックを抑制することができる。その結果、チップ部品の接合精度の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、両電極の接合が終了するまでの間は、超音波振動の振幅が小さい状態であっても、接続部位に超音波振動が継続的に付与されるので、押圧による金属変形を促進させる。したがって、押圧だけによる接合に比べて短い時間で両電極を接合することができる。
【0011】
なお、前記超音波振動の振幅の変化としては、例えば、接合時間のうち所定時間経過後から時間に比例して小さくしたり(第2の発明)、接合時間のうち所定時間経過後から経過時間に応じて段階的に小さくしたり(第3の発明)することが好ましい。このように設定することにより、第1の発明を好適に実施することができる。
【0012】
第4の発明は、第1ないし第3の発明において、さらに、接合時間のうち、電極の接合開始から所定時間経過するまでは、時間の経過に比例して超音波振動の振幅を大きくしてゆくことが好ましい。
【0013】
(作用・効果) 第4の発明によると、接合開始と同時に所定振幅の超音波振動で終始接合させた場合に比べ、チップ部品と基板の両電極間に初期に加わる超音波振動による摩擦抵抗を低減することができる。すなわち、両電極間の摩擦が低減されることにより、吸着部材の吸着面とチップ部品の表面との間に伝わる伝達応力が抑制され、吸着部材の吸着面の摩擦による磨耗を抑制することができる。
【0014】
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明において、接合時間の経過にともなって、前記超音波振動を発生させる所定周波数帯域内で周波数を調整することが好ましい。
【0015】
(作用・効果) 第5の発明によると、超音波振動を発生させる所定周波数帯域内で周波数を調節することにより、チップ部品の電極形状などに応じた最適な超音波振動となる周波数を選択することができ、吸着部材の吸着面とチップ部品の表面での無駄な滑りを抑制することができる。
【0016】
第6の発明は、第1ないし第5のいずれかの発明において、前記ワークと前記チップ部品の両電極の接合部位に超音波振動が付与される最中に、当該接合部位を加熱することが好ましい。
【0017】
(作用・効果) 第6の発明によると、接合部位を加熱することにより、両電極の変形が促進される。したがって、超音波接合の効率を向上させることができる。
【0018】
第7の発明は、チップ部品の電極とワークの電極を押圧しながら、両電極に超音波振動を付与して接合する超音波接合装置において、
前記チップ部品を保持する第1保持手段と、
前記第1保持手段を支持する支持手段と、
前記第1保持手段に超音波振動を付与する超音波振動付与手段と、
前記ワークを保持する第2保持手段と、
前記第1保持手段を支持した支持手段と前記第2保持手段の少なくともいずれか一方を昇降させる昇降駆動機構と、
前記超音波振動付与手段から第1保持手段に超音波が付与されたときに、前記チップ部品とワークの両電極の接合部位における超音波振動の振幅が、チップ部品の種類に応じて予め設定された接合時間のうち、所定時間経過後に小さくなってゆくように制御する振幅制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(作用・効果) 第7の発明によると、第1保持手段は、チップ部品を保持する。支持手段は、第1保持手段を保持する。超音波振動付与手段は、第1保持手段に超音波振動を付与する。昇降駆動機構は、第1保持手段を支持した支持手段と第2保持手段の少なくともいずれか一方を昇降させる。振幅制御手段は、超音波振動付与手段から第1保持手段に超音波が付与されたときに、チップ部品とワークの両電極の接合部位における超音波振動の振幅が、チップ部品の種類に応じて接合開始から所定時間経過後に小さくなってゆくように制御する。
【0020】
この構成によれば、支持手段または第2保持手段のいずれかを昇降させることにより、チップ部品の電極とワークの電極が加熱した状態で押圧される。また、この押圧状態にある両電極に超音波振動が付与されるとともの、所定時間経過後からは、接続部位である両電極部分における超音波振動の振幅が小さくされてゆく。したがって、所定時間内でチップ部品と基板の両電極同士が金属結合している場合に、吸着部材の吸着面とチップ部品の表面で継続的に加わる超音波振動による滑りが抑制される、両部材の摩擦も抑制される。したがって、第1の発明を好適に実現することができる。
【0021】
第8の発明は、第7の発明において、前記振幅制御手段は、さらに、接合時間のうち、電極の接合開始から所定時間経過するまでは、時間の経過に比例して超音波振動の振幅を大きくしてゆくように制御することが好ましい。
【0022】
(作用・効果) 第8の発明によると、上述の第4の方法発明を好適に実現することができる。
【0023】
第9の発明は、第7または第8の発明において、さらに、接合時間の経過にともなって、前記超音波振動を発生させる所定周波数帯域内で周波数を調整する周波数調整手段を備えた
ことを特徴とする。
【0024】
(作用・効果) 第9の発明によると、上述の第5の方法発明を好適に実現することができる。
【0025】
第10の発明は、第7ないし第9のいずれかの発明において、さらに、前記ワークと前記チップ部品の両電極の接合部位を加熱する加熱手段を備えることが好ましい。
【0026】
(作用・効果) 第10の発明によると、上述の第6の方法発明を好適に実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る超音波接合方法およびこれを用いた装置によれば、所定時間内でチップ部品と基板の両電極同士が金属結合している場合に、当該接合強度よりも吸着部材によるチップ部品の吸着強度が弱いので、吸着部材の吸着面がチップ部品の表面で滑りが発生して擦れる。しかしながら、吸着部材が擦れるときに、超音波振動の振幅が小さいので吸着部材の吸着面とチップ部品の表面での摩擦が抑制される。その結果、吸着部材の吸着面の磨耗を抑制することができる。
【0028】
また、チップ部品の電極と基板の電極の金属結合よりも弱いチップ部品側の電極取り付け部分に加わる摩擦による伝達応力が抑制される。すなわち、チップ部品側の電極取り付け部分に加わる伝達応力によって発生しがちなクラックを抑制することができる。その結果、チップ部品の接合精度の向上を図ることができる。
【0029】
さらに、両電極の接合が終了するまでの間は、超音波振動の振幅が小さい状態であっても、接続部位に超音波振動が付与されるので、押圧による金属変形を促進させる。したがって、押圧だけによる接合に比べて短い時間で電極を接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、本実施例では、チップ部品としてバンプ付きの電子部品を基板に実装する場合を例にとって説明する。なお、チップ部品としては、その他に例えば、ICチップ、半導体チップ、光素子、表面実装部品、ウエハなどの種類や大きさに関係なく、基板と接合させる側の全ての形態を示す。
【0031】
また、基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、フィルム基板などチップ部品と接合される側の全ての形態を示す。
【0032】
図1は、本実施例に係る超音波接合装置の正面図である。
【0033】
本実施例の超音波接合装置は、図1に示すように、基板1を吸着保持する基板ホルダ2を備えた可動テーブル3と、基台4の後部に立設された縦壁5に支持フレーム6を介して取り付けられ、先端でチップ部品7を吸着保持して基板1に実装(接合)する圧着ヘッド8を備えた圧着機構9と、基板ホルダ2に保持された基板1と圧着ヘッド8によって吸着保持されるチップ部品7の位置を認識するカメラ10と、これら可動テーブル3、圧着ヘッド8、圧着機構9、およびカメラ10などの駆動を制御する主制御部11などが備えられている。なお、基板ホルダ2は、本発明の第2保持手段に相当する。
【0034】
可動テーブル3は、図中左右と前後の水平2軸(X、Y)方向に移動自在に構成されている。また、可動テーブル3に備わった基板ホルダ2は、基板1が載置される表面部分に吸着孔(図示省略)が形成されており、当該吸着孔が図示しない真空ポンプと配管を介して連通接続されている。なお、本実施例では、基板ホルダ2における基板1の保持を吸着式にしているが、吸着式に限らず、可動ツメを使った機械式保持、静電気を使った静電吸着、磁石を使った磁気吸着など、任意の保持構造を用いることができる。
【0035】
圧着機構9は、支持フレーム6に固定されたシリンダ12と、シリンダ12の垂直下方に向けられたロッド13に連結された本体14と、本体14の下方先端に設けられた圧着ヘッド8とから構成されている。つまり、シリンダ12の伸縮動作に連動して圧着ヘッド8が昇降するように構成されている。なお、シリンダ12は、本発明の昇降駆動機構に相当する。
【0036】
また、圧着ヘッド8は、図2に示すように、略U字形を上下反転させ、底面を本体14の下部に連結されたフレーム15と、当該フレーム15の両側面に形成された貫通孔を両側から貫通する1組のブースター16と、フレーム15の内側で1組のブースター16によって挟み込まれた状態で着脱可能に保持されたホーン17とから構成されている。なお、フレーム15は、本発明の支持手段に相当する。
【0037】
ブースター16は、中央部分が太い円柱状であって、その両端が先端に向かうにつれて先細になるテーパー状となっている。また、図中左側のブースター16には、当該ブースター16に超音波振動を伝達付与するための圧電素子を備えた超音発生器18を備えている。なお、超音波発生器18とブースター16、フレーム15によるブースター16の保持部分、およびブースター16とホーン17の各結節点は、超音波発生器18から付与された超音波振動によって共振するときに振動振幅がゼロとなるノーダルポイントに設定されている。なお、超音波発生器18は、本発明の超音波発生手段に相当する。
【0038】
ホーン17は、肉厚の板状の物であって、正面視して前後に格子状となるように貫通孔が形成されている。また、下面中央には、凸部からなるの吸着部材19が設けられており、図示しない真空ポンプと連通接続された貫通孔20が形成されている。また、高さ方向中間にある格子部分に穴が形成されており、当該穴にセラミックヒータ22が挿入されるようになっている。当該セラミックヒータ22の取り付け部分もノーダルポイントに設定されている。なお、吸着部材19は、本発明の第1保持手段に相当する。
【0039】
また、吸着部材19には、超音波振動が付与されて基板1にチップ部品7が接合されるときにチップ部品7の表面との摩擦を抑制するためにフッ素コーティングが施されている。なお、超音発生器18からブースター16を介して伝達された振動振幅が最大となる位置にある。
【0040】
図1に戻り、カメラ10は、水平2軸(X,Y)方向および上下(Z)方向に移動可能である。また、圧着ヘッド側に向かって進退する鏡筒23を備えている。また、カメラ10をX軸方向に前進させ、ホーン17の吸着部材19に吸着保持されたチップ部品7と基板1の間に位置させる。その状態でチップ部品7と基板1の位置を認識および観察し、観察結果を主制御部11に送信するようになっている。なお、両部材の位置を認識および観察する手段としては、カメラ以外に、例えば、赤外線カメラ、センサなどの種類に関係なく基板1とチップ部品7の位置を認識できる全ての形態が適用できる。
【0041】
主制御部11は、操作部24から設定入力された接合対象の基板1およびチップ部品7の種類に応じた接合条件を図示しないパターンテーブルから選択し、選択したパターンを振幅制御部25に送信する。また主制御部11は、可動テーブル3、シリンダ12、カメラ10などの駆動も操作部24から設定入力された情報に基づいて総括的に制御している。
【0042】
振幅制御部25は、超音波発生器18から発生する超音波振動によって共振するホーン17の吸着部材19における超音波振動の振幅を制御している。例えば、図3に示すように、チップ部品7の接合時間が1秒である場合、接合開始から0.5秒まではホーン17の吸着部材19での振幅が最大となるように維持し、接合終了時間の1秒に達した時点で振幅がゼロになるように0.5秒経過時点を減衰開始時間の起点とし、当該時点からの時間経過に比例して振幅が小さくなるように超音波発生器18を操作する。なお、超音波振動の振幅の減衰開始時間としては、チップ部品7の種類によっても異なるが、予め決められた接合開始時間のうち、接合開始から10〜50%経過した時点に設定される。なお、振幅制御部25は、本発明の振幅制御手段に相当する。
【0043】
次に、上記実施例装置を用いて基板1にチップ部品7を接合する動作を、図4示すフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
先ず、操作部24から接合対象の基板1およびチップ部品7の種類を選択入力し、接合時間など種々の初期条件が設定される(ステップS1)。
【0045】
初期設定が終了すると、基板ホルダ2に基板1が載置保持されるとともに、ホーン17の先端の吸着部材19によってチップ部品7が吸着保持されて接合処理が開始される(ステップS2)。
【0046】
接合処理が開始すると、主制御部11の制御によって、カメラ10が作動する。カメラ10は、鏡筒23を前進させて基板1とチップ部品7の画像データを取得し、主制御部11に当該データを送信する。主制御部11は、受信した画像データに基づいて、基板1とチップ部品7の相対的な位置ずれを演算により求め、当該求まる検出結果に基づいて可動テーブル3をX、Y方向に移動させて位置ずれを補正する(ステップS3)。
【0047】
位置ズレ補正が完了すると、主制御部11の制御に基づいてシリンダ12が作動し、圧着ヘッド8を所定位置まで降下させてチップ部品7を基板1に押圧する。同時に、セラミックヒータ22によってホーン17が所定温度に加温されるとともに、超音波発生器18を駆動させてホーン17に超音波振動の付与を開始する(ステップS4)。
【0048】
接合開始にともなって振幅制御部25が、予め設定された減衰開始時間に達したか否かをタイマカウントする。減衰開始時間に達すると予め選択されたパターンに基づいて、図3に示すように、超音波振動によるホーン17の振幅を小さくしてゆく(ステップS5)。
【0049】
また、振幅制御部25によるタイマカウントが所定時間になると(ステップS6)、超音波発生器18からホーン17への超音波振動の付与が停止され、圧着ヘッド8が上昇して基板1が取り出され、本接合処理が終了する。
【0050】
以上のように、ホーン17に超音波振動を付与してチップ部品7を基板1に接合するときに、チップ部品7および基板1ごとに予め設定された接合時間のうち、所定時間経過後から時間の経過に比例して振幅がゼロとなるように振幅を小さくしてゆくことにより、ホーン17の吸着部材19の表面とチップ部品7の表面との摩擦が低減される、その結果、吸着部材19の吸着面の磨耗も抑制される。つまり、チップ部品7と基板1の両電極30,31が強固に金属結合されても、振幅が小さくなってゆくので、吸着部材19とチップ部品7の間の摩擦が低減される。
【0051】
また、チップ部品7の電極31と基板1の電極30の金属結合よりも弱いチップ部品側の電極取り付け部分に加わる摩擦による伝達応力が抑制されるので、当該部分で発生しがちなクラックを抑制することができる。その結果、チップ部品7の接合精度の向上を図ることができる。
【0052】
さらに、両電極30,31の接合が終了するまでの間は、振幅が小さい状態であっても、接続部位に超音波振動が継続的に付与されるので、押圧および加熱による金属変形が促進させられる。したがって、押圧と加熱だけによる接合に比べて短い時間で両電極30,31を接合することができる。
【0053】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0054】
(1)上記実施例では、減衰開始時間から経過時間に比例してリニアに振幅を小さくしているが、この形態に限定されず、時間の経過にともなって段階的に小さくしてゆくように制御してもよい。このように振幅を制御しても、上記実施例と同様の効果を奏する。
【0055】
(2)上記実施例では、接合開始と同時に、接合部位の振幅が最大となるようにしていたが、図5に示すように、接合開始から減衰開始時間にかけて超音波振動による振幅を大きくしてゆくように制御してもよい。この構成によれば、接合開始と同時に一定の振幅で終始接合させた場合に比べ、チップ部品7と基板1の両電極間に初期に加わる超音波振動による摩擦抵抗を低減することができる。したがって、両電極間の摩擦が低減されることにより、吸着部材19の吸着面とチップ部品7の表面との間に伝わる伝達応力が抑制され、吸着部材19の吸着面の摩擦による磨耗を抑制することができる。
【0056】
(3)上記実施例では、ホーン17に超音波振動を発生させる周波数を一定に保っているが、超音波振動を発生させる所定周波数の帯域幅で周波数を調整するように構成してもよい。この構成によれば、チップ部品7の電極形状などに応じた最適な超音波振動となる周波数を選択することができ、吸着部材19の吸着面とチップ部品7の表面での無駄な滑りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例に係る超音波接合装置の全体を示す正面図である。
【図2】ホーンの要部構成を示す正面図である。
【図3】振幅の変化を示す図である。
【図4】実施例装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】変形例に係る振幅の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 … 基板
2 … 基板ホルダ
7 … チップ部品
8 … 圧着ヘッド
11 … 主制御部
17 … ホーン
18 … 超音波発生器
19 … 吸着部材
25 … 振幅制御部
30 … 電極(基板)
31 … 電極(チップ部品)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着部材に吸着保持したチップ部品の電極をワークの電極に押圧しながら、両電極に超音波振動を付与して接合する超音波接合方法であって、
前記チップ部品の種類に応じて予め設定された接合時間のうち、所定時間経過後に前記両電極の接合部位における超音波振動の振幅を小さくしてゆく
ことを特徴とする超音波接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波接合方法において、
前記超音波振動の振幅の変化は、接合時間のうち所定時間経過後に時間に比例して小さくしてゆく
ことを特徴とする超音波接合方法。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波接合方法において、
前記超音波振動の振幅の変化は、接合時間のうち所定時間経過後に経過時間に応じて段階的に小さくしてゆく
ことを特徴とする超音波接合方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の超音波接合方法において、
さらに、接合時間のうち、電極の接合開始から所定時間経過するまでは、時間の経過に比例して超音波振動の振幅を大きくしてゆく
ことを特徴とする超音波接合方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の超音波接合方法において、
接合時間の経過にともなって、前記超音波振動を発生させる所定周波数帯域内で周波数を調整する
ことを特徴とする超音波接合方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の超音波接合方法において、
前記ワークと前記チップ部品の両電極の接合部位に超音波振動が付与される最中に、当該接合部位を加熱する
ことを特徴とする超音波接合方法。
【請求項7】
チップ部品の電極とワークの電極を押圧しながら、両電極に超音波振動を付与して接合する超音波接合装置において、
前記チップ部品を保持する第1保持手段と、
前記第1保持手段を支持する支持手段と、
前記第1保持手段に超音波振動を付与する超音波振動付与手段と、
前記ワークを保持する第2保持手段と、
前記第1保持手段を支持した支持手段と前記第2保持手段の少なくともいずれか一方を昇降させる昇降駆動機構と、
前記超音波振動付与手段から第1保持手段に超音波が付与されたときに、前記チップ部品とワークの両電極の接合部位における超音波振動の振幅が、チップ部品の種類に応じて予め設定された接合時間のうち、所定時間経過後に小さくなってゆくように制御する振幅制御手段と、
を備えたことを特徴とする超音波接合装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波接合装置において、
前記振幅制御手段は、さらに、接合時間のうち、電極の接合開始から所定時間経過するまでは、時間の経過に比例して超音波振動の振幅を大きくしてゆくように制御する
ことを特徴とする超音波接合装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の超音波接合装置において、
さらに、接合時間の経過にともなって、前記超音波振動を発生させる所定周波数帯域内で周波数を調整する周波数調整手段を備えた
ことを特徴とする超音波接合装置。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の超音波接合装置において、
さらに、前記ワークと前記チップ部品の両電極の接合部位を加熱する加熱手段を備えた
ことを特徴とする超音波接合装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−263816(P2006−263816A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33979(P2006−33979)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】