超音波撮像装置
【課題】被検体内における超音波の音圧分布を考慮して、照射される超音波の音圧を決定できる超音波撮像装置を実現する。
【解決手段】MI値分布関数62または白黒階調スケール63を、断層画像情報41と並べるかまたは重ねて表示部106に表示することとしているので、オペレータは、撮像以前に、撮像領域における音圧が造影剤の破壊音圧となる領域を把握し、ひいてはスキャンパラメータ値の再設定により、造影剤が破壊される領域を、撮像領域の中で造影剤が描出される位置と一致させ、無駄なく間違いのない、確実な造影剤破壊を行うことを実現させる。
【解決手段】MI値分布関数62または白黒階調スケール63を、断層画像情報41と並べるかまたは重ねて表示部106に表示することとしているので、オペレータは、撮像以前に、撮像領域における音圧が造影剤の破壊音圧となる領域を把握し、ひいてはスキャンパラメータ値の再設定により、造影剤が破壊される領域を、撮像領域の中で造影剤が描出される位置と一致させ、無駄なく間違いのない、確実な造影剤破壊を行うことを実現させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、造影剤が投与された被検体の断層画像情報を取得する超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波撮像装置においても、造影剤検査が行われている。これら造影剤検査では、血流あるいは組織部に浸潤した造影剤が、被検体内に照射された超音波に対して、高強度の超音波を発生したり、高調波成分を含む超音波を反射したりする。これら造影剤は、照射される超音波の音圧により、破壊されたり高調波を発生したりする。
【0003】
例えば、造影剤A(Levovist)では、高い音圧の超音波が照射され、造影剤の殻を破壊し、この破壊の際発生する超音波を観察する。また、造影剤B(Sonazoid)では、低い音圧の超音波が照射され、この際反射される送信超音波の高調波成分を観察する。この造影剤Bでは、高い音圧の超音波を照射することは、造影剤の破壊に繋がり撮影上好ましいことではない。
【0004】
オペレータ(operator)は、造影剤を用いた撮像を行う場合に、用いる造影剤の種類および撮像目的等を考慮し、送信超音波の音圧を調整する。この音圧の調整は、画面上に表示されるMI(Mechanical
Index)値を参考にして行われる。このMI値は、WFUMB(世界超音波医学生理学連合)で制定された超音波装置の生体に対する安全確保に関する報告案に基づいたものであり、超音波の負音圧により生体内に発生するキャビテーション(cavitation)の機械的作用を防止するための指標である。
【0005】
MI値は、被検体の組織中における負音圧Pr3および周波数fにより定義される指標であり、水中における超音波の音圧を反映したパラメータ(parameter)である。超音波撮像装置に表示されるMI値は、被検体内における最大のMI値を表示したもので、被検体造影剤の撮像を行う際に、被検体内における超音波の最大音圧を示す指標として用いられる。例えば、造影剤Aを用いる場合には、高いMI値を有するスキャンパラメータ(scan
parameter)値を設定し、造影剤を破壊する。造影剤Bを用いる場合には、低いMI値を有するスキャンパラメータ値を設定し、反射超音波の高調波成分を用いた撮像を行う(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本電子機械工業会編、「改訂 医用超音波機器ハンドブック」、コロナ社、1997年1月20日、p.53〜54、p.212〜213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記背景技術によれば、被検体内における超音波の音圧分布を考慮した音圧の設定を行うことが出来ない。すなわち、探触子部から照射された超音波は、減衰を行いつつ、被検体内を伝播して行く。この際、被検体内の各部における音圧は、探触子部の超音波指向性、被検体内の減衰、焦点位置等に影響され、場所ごとに異なるものとなる。
【0008】
特に、超音波の送受信が行われる深さ方向の音圧分布は、焦点深度位置から外れた位置では、音圧が減少する。例えば、造影剤を破壊して撮像を行う場合には、造影剤が存在する位置によって、破壊音圧に達しない場合も生じる。この場合、MI値を高くすることにより、造影剤を破壊することができる。しかし、むやみに高いMI値を用いることは、MI値の制定趣旨である安全性の面から好ましいものではない。従って、MI値の設定は、造影剤の撮像位置および焦点深度位置等のスキャンパラメータ値で決まる音圧分布を考慮しつつ、適切な値に最適化されることが好ましい。
【0009】
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、被検体内における超音波の音圧分布を考慮して、照射される超音波の音圧を決定できる超音波撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体の撮像領域に超音波を照射し、前記撮像領域を描出する断層画像情報を取得する画像取得部と、前記撮像領域における前記超音波の音圧分布情報を算定する音圧分布算定部と、前記音圧分布情報を、前記断層画像情報と共に表示する表示部とを備える。
【0011】
この第1の観点による発明では、表示部に音圧分布情報を、断層画像情報と共に表示する。
【0012】
また、第2の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1の観点に記載の超音波撮像装置において、前記画像取得部が、前記超音波の照射を行う圧電素子の最大駆動電圧を変化させる駆動電圧可変手段を備えることを特徴とする。
【0013】
この第2の観点の発明では、駆動電圧可変手段により、音圧分布を変化させる。
【0014】
また、第3の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1または2の観点に記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布情報が、前記撮像領域のMI値分布情報またはPr3値分布情報であることを特徴とする。
【0015】
この第3の観点の発明では、音圧分布の指標として、安全規格で用いられているMI値分布またはPr3値分布を用いる。
【0016】
また、第4の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第3の観点に記載の超音波撮像装置において、前記MI値分布情報または前記Pr3値分布情報が、前記照射が行われる深さ方向の音圧分布の情報であることを特徴とする。
【0017】
この第4の観点の発明では、MI値分布情報またはPr3値分布情報は、主要な音圧分布のみを含む。
【0018】
また、第5の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第4の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記断層画像情報の深さ方向の表示を行う方向と、前記MI値分布情報または前記Pr3値分布情報の深さ方向の表示を行う方向とを一致させることを特徴とする。
【0019】
この第5の観点の発明では、MI値分布情報またはPr3値分布情報と、断層画像情報との比較を容易にする。
【0020】
また、第6の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第5の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記MI値分布情報のMI値または前記Pr3値分布情報のPr3値の大きさを、前記深さ方向と直交する方向の座標軸の値で表示することを特徴とする。
【0021】
この第6の観点の発明では、音圧分布情報を、MI値分布の関数またはPr3値分布の関数として表示する。
【0022】
また、第7の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第5の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記MI値分布情報のMI値または前記Pr3値分布情報のPr3値の大きさを、前記大きさに対応する白黒階調を有する白黒階調スケールまたは前記大きさに対応する色相を有する色相スケールで表示することを特徴とする。
【0023】
この第7の観点の発明では、音圧分布情報を、白黒階調スケールまたは色相スケールとして表現する。
【0024】
また、第8の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第5の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記MI値分布情報のMI値または前記Pr3値分布情報のPr3値の大きさを、前記大きさに対応する色相を有し、前記深さ方向と直交する方向に一様な前記色相の領域を有する、前記断層画像情報に重ねられる背景画像情報で表示することを特徴とする。
【0025】
この第8の観点の発明では、断層画像情報の背景色により、音圧分布を表現する。
【0026】
また、第9の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1ないし8の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記超音波撮像装置が、前記被検体中の造影剤を破壊する超音波音圧の下限値を示す破壊音圧情報を設定する破壊音圧設定手段を有し、前記音圧分布算定部は、前記破壊音圧情報の音圧以上の音圧を有する、前記撮像領域の深さ方向の造影剤破壊領域を求め、前記表示部は、前記断層画像情報の前記造影剤破壊領域に、前記断層画像情報と異なる色相の一様な背景画像情報を重ねて表示することを特徴とする。
【0027】
この第9の観点の発明では、造影剤が破壊される領域を、表示される断層画像情報の中に、異なる色相の領域として明示する。
【0028】
また、第10の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体の撮像領域に超音波を照射し、前記撮像領域を描出する断層画像情報を取得する画像取得部と、前記断層画像情報を表示する表示部と、前記表示された断層画像情報の撮像領域に関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記被検体中の造影剤を破壊する超音波音圧の下限値を示す破壊音圧情報を設定する破壊音圧設定手段と、前記破壊音圧情報に基づいて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布を最適化する音圧分布最適化手段とを備える。
【0029】
この第10の観点の発明では、音圧分布最適化手段により、関心領域における超音波の音圧分布を最適化する。
【0030】
また、第11の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第10の観点に記載の超音波撮像装置において、前記破壊音圧情報が、MI値情報またはPr3値情報であることを特徴とする。
【0031】
この第11の観点の発明では、破壊音圧情報として、安全規格で用いられているMI値またはPr3値を用いる。
【0032】
また、第12の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第10または11の観点に記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布情報が、前記照射を行う深さ方向の音圧分布を含むことを特徴とする。
【0033】
この第12の観点の発明では、音圧分布情報は、主要な音圧分布のみを含む。
【0034】
また、第13の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第10ないし12の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布最適化手段が、前記断層画像情報を取得する際のスキャンパラメータ値を用いて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布情報を算定する音圧分布算定部を備えることを特徴とする。
【0035】
この第13の観点の発明では、スキャンパラメータ値から音圧分布情報を求める。
【0036】
また、第14の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第13の観点に記載の超音波撮像装置において、前記スキャンパラメータ値が、開口幅情報、アポダイゼーション情報、焦点深度情報、パワー値情報の値を含むことを特徴とする。
【0037】
また、第15の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第13または14の観点に記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布最適化手段が、前記スキャンパラメータ値を変化させ、前記スキャンパラメータ値ごとの音圧分布情報を求める最適化演算部を備えることを特徴とする。
【0038】
この第15の観点の発明では、最適化演算部は、スキャンパラメータ値を変化させて、種々の音圧分布情報を求める。
【0039】
また、第16の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15の観点に記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記関心領域に最大音圧を含むように最適化することを特徴とする。
【0040】
この第16の観点の発明では、関心領域が最も高い感度を有する様にする。
【0041】
また、第17の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15または16の観点に記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧以上になるように最適化することを特徴とする。
【0042】
この第17の観点の発明では、造影剤を破壊して、この破壊の際に発生する超音波を撮像する。
【0043】
また、第18の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15または16の観点に記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧未満となるように最適化することを特徴とする。
【0044】
この第18の観点の発明では、造影剤に繰り返し超音波を照射し、反射波に含まれる高調波を観察する。
【0045】
また、第19の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15ないし18の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が有する分散を最小にするように最適化することを特徴とする。
【0046】
この第19の観点の発明では、関心領域の音圧分布を、なるだけ一様なものにする。
【0047】
また、第20の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15ないし19の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布最適化手段が、前記スキャンパラメータ値を、前記画像取得部に設定するスキャンパラメータ値設定部を備えることを特徴とする。
【0048】
この第20の観点の発明では、最適化されたスキャンパラメータ値を用いて、撮像を行う。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、関心領域の音圧分布情報を考慮して、スキャンパラメータ値を決定するので、造影剤の撮像を、オペレータの意図する通りに確実に実行することができ、ひいては高品質の造影剤画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、入力部の構成を示す外観図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、送信される超音波の深さ方向の音圧分布を示す説明図である。
【図5】図5は、色相対応手段の色相対応テーブルの一例を示す説明図である。
【図6】図6は、実施の形態1の画像表示制御部が有する構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、表示部に表示される断層画像情報および音圧分布情報の一例を示す説明図である(その1)。
【図8】図8は、表示部に表示される断層画像情報および音圧分布情報の一例を示す説明図である(その2)。
【図9】図9は、実施の形態1にかかる超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、造影剤破壊領域を、断層画像情報に重ねて表示する表示形態の一例を示す説明図である。
【図11】図11は、実施の形態2にかかる制御部の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、実施の形態2にかかる制御部の動作を示すフローチャートである(その1)。
【図13】図13は、実施の形態2にかかる制御部の動作を示すフローチャートである(その2)。
【図14】図14は、Bモード画像に設定された関心領域の一例を示す説明図である。
【図15】図15は、関心領域に最大音圧を有する音圧分布情報の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる超音波撮像装置を実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
<実施の形態1>
【0052】
まず、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の全体構成を示すブロック(block)図である。この超音波撮像装置100は、探触子部101、画像取得部109、シネメモリ部(cine
memory)部104、画像表示制御部105、表示部106、入力部107および制御部108を含み、画像取得部109は、さらに送受信部102および画像処理部103を含む。
【0053】
探触子部101は、超音波を送受信するための部分、つまり被検体1の撮像断面の特定方向に超音波を繰り返し照射し、被検体1の内部から反射される超音波信号を、時系列的な音線として受信する。また、探触子部101は、超音波の照射方向を順次切り替えながら電子走査を行う。探触子部101の内部には、図示しない圧電素子が、アレイ(array)状に配列されている。
【0054】
送受信部102は、探触子部101と同軸ケーブル(cable)によって接続され、探触子部101の圧電素子を駆動するための電気信号および受信した超音波信号の初段増幅を行う。送受信部102は、超音波の送信の場合に、送信信号を遅延させ焦点位置に焦点を結ばせる。送受信部102は、駆動電圧可変手段12を含み、駆動電圧可変手段12は、制御部108からの制御信号に応じて、圧電素子を駆動する最大電圧を変化させる。従って、駆動電圧可変手段12は、被検体に照射される超音波の最大音圧を変化させる。なお、制御部108は、入力部107から設定されるパワーレベルPLの値に基づいて、この最大電圧を決定する。
【0055】
画像処理部103は、送受信部102を駆動する電気信号の形成および送受信部102で増幅された超音波信号から、Bモード画像情報等の断層画像情報を形成する。特に、被検体1に造影剤が投与される場合には、スキャンパラメータ値が造影剤の撮像に最適化された造影モード処理を行い、造影モード画像情報の取得を行う。
【0056】
画像処理部103は、超音波を受信した場合に、受信した超音波信号の遅延加算処理、A/D(analog/digital)変換処理およびフィルター処理等を行い、これらデジタル(digital)情報を、一枚の断層画像情報とする。
【0057】
シネメモリ部104は、造影モード処理で生成される断層画像情報等を蓄積するためのシネメモリ(memory)である。特に、シネメモリ部104は、時間的に変化する断層画像情報を、撮像領域の一枚の断層画像情報であるフレーム(frame)を最小単位として、取得が行われた時間情報と共に保存する。
【0058】
画像表示制御部105は、画像処理部103で生成された断層画像情報等の表示フレームレート(frame rate)変換、カラー表示制御、並びに、断層画像情報の表示画像の形状や位置制御を行う。また、画像表示制御部105は、断層画像情報等の表示画像上での関心領域を示すROI(Region
Of Interest)等の表示も行う。
【0059】
表示部106は、CRT(cathode ray tube)あるいはLCD(liquid crystal display)等を用いて、画像表示制御部105から出力された画像情報を、オペレータに対して可視表示する。なお、表示部106は、画像表示制御部105からの指示により、カラー(colour)表示を行うこともできる。
【0060】
制御部108は、入力部107から与えられた操作入力信号および予め記憶したプログラム(program)やデータ(data)に基づいて、上述した超音波撮像装置100各部の動作を制御し、表示部106に断層画像情報であるBモード画像等を表示する。
【0061】
入力部107は、キーボード(keyboard)およびポインティングデバイス(pointing device)等からなり、オペレータにより、撮像モードを選択する操作入力信号および撮像を行う際のスキャンパラメータ値等が入力され、制御部108に伝えられる。
【0062】
図2は、入力部107の一例を示す説明図である。入力部107は、キーボード70、TGC(Time Gain Controller)71、ニューペイシェントキー(New
Patient Key)等を含む患者指定部72、トラックボール(track ball)等を含み、ROI等の関心領域設定手段でもある計測入力部73および造影モード設定手段74を含む。
【0063】
TGC71は、表示される断層画像情報の深さ方向の利得を調整し、患者指定部72は、新たな被検体の撮像を行う場合に選択されるキーを含み、計測入力部73は、表示部106に関心領域を設定する際の、関心領域の形状、位置および大きさ等を設定するキー、並びに設定された関心領域の画素値等の計測を行う機能を有し、造影モード設定手段74は、造影剤を用いた撮像を行う場合に、造影剤が破壊される破壊音圧情報を入力する。
【0064】
造影モード設定手段74は、造影剤破壊選択キー75および破壊音圧設定手段76からなり、造影剤破壊選択キー75のオンオフにより、造影剤の破壊および非破棄の選択を行い、破壊音圧設定手段76のボリュームで指定された値を、破壊音圧情報として制御部108に入力する。
【0065】
図3は、制御部108の構成を示すブロック図である。制御部108は、画像取得制御部88および音圧分布算定部85を含む。
【0066】
画像取得制御部88は、入力部107からの撮像モード指定情報、駆動電圧情報、焦点位置情報、駆動周波数情報等のスキャンパラメータ値情報に基づいて、超音波スキャンを行い、断層画像情報を取得する。特に、画像取得制御部88は、入力部107からの指定により、駆動電圧可変手段12を用いて、照射する超音波パルスの最大音圧を制御する。
【0067】
音圧分布算定部85は、音圧分布情報設定部87および色相対応手段86を含む。
【0068】
音圧分布情報設定部87は、画像取得制御部88からのスキャンパラメータ値情報および入力部107等から予め設定される音圧分布情報に基づいて、被検体1中の音圧パラメータ値の分布を形成する。ここで、音圧パラメータとしては、MIおよびPr3等が用いられる。MIは、被検体1の組織部における負音圧Pr3(Mpa;メガパスカル)とは、
【0069】
MI=Pr3/f1/2
の関係を有する。ここで、f(MHz;メガヘルツ)は、超音波の中心周波数である。この関係から、Pr3の値を用いてMIの値が算出される。
【0070】
組織中の負音圧Pr3は、水中における負音圧Prと定数kとを用いて、
【0071】
Pr3=k×Pr
の関係で現される。この関係から、水中の負音圧Prの値を用いてPr3の値が算出される。
【0072】
水中の負音圧Prは、水中で正弦的に変化する音圧のピーク(peak)値Pmとは、
【0073】
Pr=Pm−Ps
の関係を有する。ここで、Psは、静圧(通常1気圧)である。この関係から、水中の音圧Pmを用いて、水中の負音圧Psの値が算出される。
【0074】
水中の音圧のピーク値Pmは、スキャンパラメータ値および実験的に計測される水中の音圧分布から求められる。所定のスキャンパラメータ値のもとでの水中の音圧Pmの分布は、例えば水中に設置されたハイドロフォン(hydrophone)の移動等により、予め実験的に求められる。これら音圧Pmの分布情報は、入力部107からの手入力またはROM等に書き込まれた不揮発性の情報として、音圧分布情報設定部87に設定される。
【0075】
図4は、取得される音圧分布関数の一例を示す説明図である。探触子部101から被検体1内に向かう深さ方向を横軸(z軸)とし、照射される超音波が示す音圧Pmを縦軸としている。ここで、横軸をなすz軸は、被検体1と接触する探触子部101の表面を原点とする。深さ方向の音圧分布は、焦点深度FDの近傍位置において、最大の音圧を示し、その後は徐々に音圧を下げていく。
【0076】
図4に示した様な音圧分布情報Pm(Z)は、スキャンパラメータ値の変化により変化させられる。音圧分布を変化させるスキャンパラメータ値としては、探触子部101の共振周波数等を含む種別情報Ty、走査方向に行われる電子フォーカスの焦点深度FD、走査方向に同時駆動される圧電素子数を示す開口幅AW、アポダイゼーション(apodization)情報AP、圧電素子を駆動する最大駆動電圧を設定するパワーレベル(Power
Level)PL等が存在する。これらスキャンパラメータの値により、音圧分布情報Pm(Z)は補正される。この補正関数をgとすると、
【0077】
Pm(Z)= g(Z、Ty、FD、AW、AP、PL、・・・)
と現せる。音圧分布情報設定部87は、スキャンパラメータ値が入力されると同時に補正関数gを用いてPm(Z)を算出し、さらに上述した換算式を用いてMI値を算出し、音圧分布情報であるMI値分布関数を求める。
【0078】
色相対応手段86は、MI値および色相を対応させる色相対応テーブルを有し、MI値と表示部106に表示する際の色相を対応付ける。図5は、色相対応テーブル20の一例である。色相対応テーブルは、MI値の零〜最大値を、可視光の青紫〜赤色に対応させる。なお、色相は、RGB表現等のコード(code)を用いて指定され、画像表示制御部105から表示部106に指示する色相のコードと一致させられる。
【0079】
色相対応手段86は、入力部107からの指示信号により、音圧分布情報設定部87で求められたMI値分布関数のMI値を、色相対応テーブル20を用いて色相に対応させ、色相分布関数の音圧分布情報として画像表示制御部105に出力する。
【0080】
図6は、画像表示制御部105の構成を示すブロック図である。画像表示制御部105は、書き込み部31、画像メモリ32、読み出し部33を有する。
【0081】
画像メモリ32は、表示部106の表示画面に表示される画像情報と一対一に対応する情報を含むメモリである。書き込み部31は、画像処理部103、シネメモリ部104および制御部108からの断層画像情報41および音圧分布情報42を、制御部108から指定された画像メモリ32のアドレス(address)位置に書き込む。読み出し部33は、制御部108からの表示画面上の表示位置を指定する信号に基づいて、この表示位置に対応する画像メモリ32の画素値情報を、ディスプレイ(display)に出力する。
【0082】
ここで、画像表示制御部105の表示動作について説明する。画像表示制御部105は、表示部106に、図4に示したような音圧分布情報42の内容およびBモード画像情報等の断層画像情報41を共に表示する。ここで、画像表示制御部105により、断層画像情報41および音圧分布情報42を共に表示する例を、図7〜8に示した。なお、断層画像情報41を構成する、走査方向に並ぶ各音線は、同一の音線分布情報42を有する。
【0083】
図7(A)は、音圧分布情報42として、図4に示した様な深さ方向(Z方向)のMI値分布関数62を含む場合に、表示部106に表示される画像を示す図である。表示部106の左側には、断層画像情報41が表示され、右側には、MI値分布関数62が表示される。左側に位置する断層画像情報41は、表示部106の上から下にかけて、被検体1の浅部から深部に至る断層画像が表示されている。右側に位置するMI値分布関数62は、深度を現す横軸が上下方向を向き、深度位置が、左側に表示される断層画像情報41の深さ位置と一致させられる。また、MI値分布関数62は、MI値を現す軸が左右方向を向き、MI値の深さ方向の分布が線グラフ(graph)として表現されている。
【0084】
図7(B)は、音圧分布情報42として、白黒階調スケール63を含む場合に、表示部106に表示される画像を示す図である。表示部106の左側には、断層画像情報41が表示され、右側には、白黒階調スケール63が表示される。左側に位置する断層画像情報41は、表示部106の上から下にかけて、被検体1の浅部から深部に至る断層画像が表示されている。右側に位置する白黒階調スケール63は、断層画像情報41と同様の上下方向を向く深さ方向に、明るさが変化する階調スケール(scale)である。図7(B)に示した白黒階調スケールでは、高MI値を低い輝度に対応させ、低MI値を高い輝度に対応させているが、MI値と輝度の対応を逆にし、高MI値を高い輝度に対応させ、低MI値を低い輝度に対応させることもできる。
【0085】
図8( A)は、音圧分布情報42として、色相スケール64が含まれる場合に、表示部106に表示される画像を示す図である。表示部106の左側には、断層画像情報41が表示され、右側には、色相スケール64が表示される。左側に位置する断層画像情報41は、表示部106の上から下にかけて、被検体1の浅部から深部に至る断層画像が表示されている。右側に位置する色相スケール64は、断層画像情報41と同様の上下方向を向く深さ方向に、色相が変化するスケール(scale)を有する。図8(A)に示した色相スケールは、図5に示した色相対応テーブルに基づいたもので、高MI値が赤に近い色相を有し、低MI値が青紫に近い色相を有する。
【0086】
図8(B)は、色相スケール64に代わって、断層画像情報41に重ねて表示される背景画像情報45を、表示部106に表示した場合の画像を模式的に示す図である。この場合、背景画像情報45は、左右方向の幅が断層画像情報41と同じ幅とされ、断層画像情報41と同一位置に表示される。また、背景画像情報45を構成する各色相は、輝度が低いものとされる。これにより重ねて表示される断層画像情報41は、重ねられた半透明の色相スケールを背景画像として、観察可能なものとなる。なお、図8(A)に示した色相スケール64が有する色相境界に当たる部分は、図8( B)に示す背景画像情報45においては、一点鎖線で示されている。
【0087】
つぎに、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の動作について、図9を用いて説明する。まず、オペレータは、入力部107から、焦点深度、送信超音波を発生させる際のパワーレベル等のスキャンパラメータ値を設定する(ステップS701)。ここで、制御部108の音圧分布情報設定部87は、このスキャンパラメータ値に基づいて、音圧分布情報42を生成する。
【0088】
その後、オペレータは、入力部107のキーボード等から、音圧分布情報42の表示を指定し、音圧分布情報42を表示する(ステップS702)。そして、オペレータは、被検体1の目的とする撮像領域に探触子部101を密着させ、この撮像領域の撮像を行う(ステップS703)。
【0089】
その後、オペレータは、図7〜8に示した表示部106の表示画像のいずれかを観察し、音圧分布が、適当かどうかを判定する(ステップS704)。例えば、オペレータは、撮像領域の造影剤が流入する経路に当たる位置で破壊音圧となっているかどうか、またその破壊音圧となっている領域は充分な広さを有しているか、また必要以上に破壊音圧の領域が拡大されていないか等を判定する。そして、オペレータは、音圧分布が適当でない場合には(ステップS704否定)、ステップS701に移行し、焦点深度位置、あるいはパワーレベル等のスキャンパラメータ値を変更し、再度撮像を行う。焦点深度位置の変更により、深さ方向の破壊音圧の領域位置が変わり、パワーレベルの変更により、破壊音圧の領域の広さが変わる。
【0090】
また、オペレータは、音圧分布が適当である場合には(ステップS704肯定)、被検体1に造影剤を投与し(ステップS705)、被検体1の撮像領域における造影剤の撮像を行い(ステップS706)、本処理を終了する。なお、ここで取得された造影モード画像情報等の断層画像情報は、造影剤の破壊が、目的とする位置で適切に行われたものとなる。
【0091】
上述してきたように、本実施の形態1では、音圧分布情報42を、断層画像情報41と並べるかまたは重ねて表示することとしているので、オペレータは、撮像以前に、撮像領域における音圧が造影剤の破壊音圧となる領域を把握し、ひいてはスキャンパラメータ値の再設定により、造影剤が破壊される領域を、撮像領域の中で造影剤が描出される位置と一致させ、無駄なく間違いのない、確実な造影剤破壊を行うことができる。
【0092】
また、本実施の形態1では、MI値分布関数を表示する例を示したが、同様にPr3値、音圧Pmまたは負音圧Pr等の音圧と関連する音圧パラメータ値の分布を求め表示することもできる。
【0093】
また、本実施の形態1では、造影剤を破壊する場合について例示したが、造影剤から反射される高調波成分を用いて撮像を行う場合にも全く同様に用いることができる。この場合には、造影剤を破壊しない低い音圧の領域で撮像が行われるので、オペレータは、音圧分布情報42を参照し、高調波成分が適正に発生される低い音圧の領域を把握し、この領域を造影剤の描出が行われる領域に一致させる。
【0094】
また、本実施の形態1では、表示部106に断層画像情報41と共に音圧分布情報42を表示することとしたが、さらに最小の破壊音圧を示す破壊音圧情報を入力し、断層画像情報41の造影剤が破壊される領域を、色分け等により一層明確に示すこともできる。
【0095】
図10は、図7( A)に示したと同様の断層画像情報41およびMI値分布関数62のグラフを並べて表示した図である。MI値分布関数のグラフには、入力部107から入力された破壊音圧情報である破壊MI値91が図示されている。破壊MI値91は、MI値で示された最小の破壊音圧を示す指標である。破壊MI値91以上のMI値では、造影剤が破壊され、高強度の超音波が発せられる。一方、破壊MI値91未満のMI値では、造影剤が破壊されず、高強度の超音波が生じない。
【0096】
ここで、音圧分布算定部85は、MI値分布関数62のグラフを用いて、破壊MI値91以上のMI値の領域である造影剤破壊領域93を求める。画像表示制御部105は、断層画像情報41の造影剤破壊領域93に対応する深度領域を、例えば赤色の一様な背景画像を有する破壊領域画像情報94が重ねられたものとする。破壊領域画像情報94は、図8(B)に示した背景画像情報45と同様のものであり、赤色の低い輝度の背景領域が断層画像情報41に重ねて表示されたものである。これにより、オペレータは、白黒の階調表現がなされる断層画像情報41の中で、造影剤が破壊される領域を赤色領域として、容易に把握することができる。
<実施の形態2>
【0097】
ところで、上記実施の形態1では、深さ方向の音圧分布情報を表示部106に表示し、オペレータは、この音圧分布情報を参照して、設定されたスキャンパラメータ値が適当か否かを判断したが、制御部に音圧分布最適化手段を設け、自動的にスキャンパラメータ値を最適化することもできる。そこで、本実施の形態2では、音圧分布最適化手段を設け、音圧分布情報を、オペレータが目標とする最適の分布とする場合を示すことにする。
【0098】
ここで、本実施の形態2にかかる超音波撮像装置は、制御部108を除いて、図1に示した超音波撮像装置100と全く同様である。従って、本実施の形態2では、制御部108に対応する制御部118についてのみ説明し、その他の構成につては説明を省略する。
【0099】
制御部118は、画像取得制御部88および音圧分布最適化手段51を含む。画像取得制御部88は、図2に示した超音波撮像装置100の画像取得制御部88と全く同様であるので説明を省略する。
【0100】
音圧分布最適化手段51は、最適化演算部52、音圧分布算定部85およびスキャンパラメータ値設定部54を含む。音圧分布算定部85は、図3に示す制御部108の音圧分布算定部85と全く同様である。
【0101】
音圧分布算定部85は、最適化演算部52からのスキャンパラメータ値情報、例えば、探触子部101の共振周波数等を含む種別情報Ty、走査方向に行われる電子フォーカスの焦点深度FD、走査方向に同時駆動される圧電素子数を示す開口幅AW、アポダイゼーション情報AP、圧電素子を駆動するパワーレベルPL等に基づいて、深さ方向Zの音圧分布情報Pm(Z)を、補正関数gを用いて、
【0102】
Pm(Z)= g(Z、Ty、FD、AW、AP、PL、・・・)
により求める。
【0103】
最適化演算部52は、入力部107から設定された関心領域の深さ方向の音圧分布情報Pm(Z)を、スキャンパラメータ値を変化させつつ音圧分布算定部85を用いて求める。ここで、変化させられるスキャンパラメータ値としては、音圧分布に影響を与える、焦点深度FD、開口幅AW、アポダイゼーション情報AP、パワーレベルPL等を含む。例えば、送信超音波の焦点深度の値として、FD=5cm、10cm、15cmの設定が可能な場合には、他のスキャンパラメータ値情報とこれら3つのスキャンパラメータ値のすべての組み合わせについての音圧分布情報Pm(Z)を求める。なお、音圧分布情報Pm(Z)を求める際に、パワーレベルPLは、所定の値に固定される。パワーレベルPLは、最大駆動電圧を変化させるので、深さ方向の音圧分布形状を変化させることなく、音圧の大きさのみを変化させる。パワーレベルPLは、破壊音圧と比較の後に、最終的に音圧を決定する際に変化させるパラメータとして用いられる。
【0104】
最適化演算部52は、さらにこれら音圧分布情報Pm(Z)から、撮像に見合った最適な音圧分布情報を選別する。なお、この音圧分布情報の選別については、後述する制御部118の音圧分布最適化手段51の動作において詳述する。
【0105】
スキャンパラメータ値設定部54は、最適な音圧分布情報のスキャンパラメータ値を、画像取得制御部88に送信し、画像取得制御部88は、このスキャンパラメータ値に基づいて、画像取得部109各部の設定を行う。
【0106】
つぎに、本実施の形態2にかかる制御部118の動作について、図12および13を用いて説明する。図12および13は、制御部118の動作を示すフローチャートである。まず、オペレータは、入力部107の造影モード設定手段74から、被検体1に投与される造影剤の破壊、非破壊の選択および破壊音圧情報の設定を行う(ステップS801)。破壊音圧情報は、被検体1内で造影剤が破壊される音圧の下限値の情報で、この音圧を越える超音波は、被検体1内で造影剤を破壊する。なお、設定の際には、造影剤が破壊される音圧のMI値、Pr3値、Pr値またはPm値等を用いて設定することができる。
【0107】
その後、オペレータは、表示部106に表示されるBモード画像等を参照しつつ、関心領域を入力部107から設定する(ステップS802)。図14は、Bモード画像14に設定された関心領域15の一例を示す説明図である。関心領域15は、オペレータが目的とする造影剤の観測位置を含むように、深さ方向の位置がaからbまでに設定されている。
【0108】
その後、図12に戻り、音圧分布最適化手段51は、音圧分布最適化処理を行う(ステップS803)。図13は、音圧分布最適化処理の動作を示すフローチャートである。音圧分布最適化手段51の最適化演算部52は、スキャンパラメータ値を変化させ、スキャンパラメータ値ごとの音圧分布情報Pm(Z)を求める(ステップS901)。なお、音圧分布情報Pm(Z)は、図4に示すような形状のものである。
【0109】
その後、最適化演算部52は、音圧分布情報Pm(Z)ごとに最大音圧および最大音圧の深さ方向位置を求め、この深さ方向位置が関心領域15に含まれる音圧分布情報Pm(Z)を選択する(ステップS902)。図15(A)〜(D)は、ここで選択された音圧分布情報Pm(Z)のいくつかの例を示す説明図である。
【0110】
図15(A)〜(D)に示された音圧分布情報Pm(Z)は、関心領域15の範囲である深さ方向の位置a〜b間に最大音圧を有する。また、図15(A)〜(D)に示された音圧分布情報Pm(Z)は、焦点深度FD、開口幅AWおよびアポダイゼーションAP等が異なり、すべて異なる音圧分布を有する。
【0111】
図13に戻り、最適化演算部52は、関心領域15に含まれる音圧分布情報Pm(Z)の統計上の分散を求め、分散の最も小さい音圧分布情報Pm(Z)を選択する(ステップS903)。例えば、図15(A)〜(D)に示した音圧分布情報Pm(Z)の中から、分散の最も小さい音圧分布情報を選択する場合には、深さ方向の区間a〜bで最も変動の少ない、図5(B)に示した音圧分布情報Pm(Z)が選択される。
【0112】
その後、最適化演算部52は、造影剤破壊選択キー75からの指示情報に基づいて、被検体1に投与される造影剤を破壊するかどうかを判定する(ステップS904)。最適化演算部52は、造影剤を破壊する場合には(ステップS904肯定)、ステップS903で選択された分散が最小の音圧分布情報Pm(Z)を用いて、区間a〜bの音圧が、ステップS801で設定された破壊音圧情報の破壊音圧以上の音圧となるようにパワーレベルPLを設定する(ステップS905)。ここで、最適化演算部52は、例えば、区間a〜bにおいて音圧分布情報Pm(Z)が有する音圧の最小値を求め、この最小値を破壊音圧と一致させるようにパワーレベルPLを設定する。なお、図15(B)には、このパワーレベルの一例が、PL破壊値として図示されている。
【0113】
又、最適化演算部52は、造影剤を破壊しない場合には(ステップS904否定)、ステップS903で選択(Z)が有する音圧の最大値を求め、この最大値が破壊音圧未満となるようにパワーレベルPLを設定する。なお、図15(B)には、このパワーレベルの一例が、PL非破壊値として図示されている。
【0114】
その後、スキャンパラメータ値設定部54は、最適化演算部52から送信されたパワーレベルPLを含むスキャンパラメータ値を、画像取得制御部88に送信し、音圧分布最適化処理を終了する。
【0115】
その後、図12に戻り、オペレータは、このスキャンパラメータ値を用いた造影剤の撮像を行い(ステップS804)、本処理を終了する。
【0116】
上述してきたように、本実施の形態2では、音圧分布最適化手段51により、予め設定された関心領域15の音圧分布情報の音圧を、分散が小さく、しかも関心領域15の音圧を確実に破壊音圧以上または破壊音圧未満にするので、関心領域15において、目的とする造影剤の撮像を間違いなく行うことができる。
【0117】
また、本実施の形態2では、最適化演算部52は、パワーレベルPLを除いたすべてのスキャンパラメータの値を変化させて音圧分布情報Pm(Z)を求めることとしたが、演算時間の短縮のために、限定されたスキャンパラメータのみを用いて音圧分布情報Pm(Z)を求めることもできる。
【0118】
また、本実施の形態2では、最適化演算部52は、最適な音圧分布情報Pm(Z)が唯一存在することとしたが、例えば、関心領域15の深さ方向の大きさ、最大駆動電圧の上限値によるパワーレベルPLの制限値等により、最適な音圧分布情報Pm(Z)が存在しない場合も存在する。この場合には、例えば、最適化演算部52は、分散値の最小値ではなく、順次最小値より大きな分散値の音圧分布情報Pm(Z)を選択し、ステップS904〜S907を行い最適な音圧分布情報を求めることができる。
【0119】
また、本実施の形態2では、音圧分布最適化手段51は、音圧分布情報として、水中で正弦的に変化する音圧のピーク値である音圧Pmの値を用いることとしたが、全く同様にPmから求められるPr、Pr3、MI等の指標を用いた音圧分布情報により、最適化を行うこともできる。
【符号の説明】
【0120】
1:被検体
12:駆動電圧可変手段
14:Bモード画像
15:関心領域
20:色相対応テーブル
31:書き込み部
32:画像メモリ
33:読み出し部
41:断層画像情報
42:音圧分布情報
45:背景画像情報
51:音圧分布最適化手段
52:最適化演算部
54:スキャンパラメータ値設定部
62:MI値分布関数
63:白黒階調スケール
64:色相スケール
70:キーボード
72:患者指定部
73:計測入力部
74:破壊音圧設定手段
75:ボリューム選択キー
76:破壊音圧設定手段
85:音圧分布算定部
86:色相対応手段
87:音圧分布情報設定部
88:画像取得制御部
91:破壊MI値
93:造影剤破壊領域
94:破壊領域画像情報
100:超音波撮像装置
101:探触子部
102:送受信部
103:画像処理部
104:シネメモリ部
105:画像表示制御部
106:表示部
107:入力部
108、118:制御部
109:画像取得部
【技術分野】
【0001】
この発明は、造影剤が投与された被検体の断層画像情報を取得する超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波撮像装置においても、造影剤検査が行われている。これら造影剤検査では、血流あるいは組織部に浸潤した造影剤が、被検体内に照射された超音波に対して、高強度の超音波を発生したり、高調波成分を含む超音波を反射したりする。これら造影剤は、照射される超音波の音圧により、破壊されたり高調波を発生したりする。
【0003】
例えば、造影剤A(Levovist)では、高い音圧の超音波が照射され、造影剤の殻を破壊し、この破壊の際発生する超音波を観察する。また、造影剤B(Sonazoid)では、低い音圧の超音波が照射され、この際反射される送信超音波の高調波成分を観察する。この造影剤Bでは、高い音圧の超音波を照射することは、造影剤の破壊に繋がり撮影上好ましいことではない。
【0004】
オペレータ(operator)は、造影剤を用いた撮像を行う場合に、用いる造影剤の種類および撮像目的等を考慮し、送信超音波の音圧を調整する。この音圧の調整は、画面上に表示されるMI(Mechanical
Index)値を参考にして行われる。このMI値は、WFUMB(世界超音波医学生理学連合)で制定された超音波装置の生体に対する安全確保に関する報告案に基づいたものであり、超音波の負音圧により生体内に発生するキャビテーション(cavitation)の機械的作用を防止するための指標である。
【0005】
MI値は、被検体の組織中における負音圧Pr3および周波数fにより定義される指標であり、水中における超音波の音圧を反映したパラメータ(parameter)である。超音波撮像装置に表示されるMI値は、被検体内における最大のMI値を表示したもので、被検体造影剤の撮像を行う際に、被検体内における超音波の最大音圧を示す指標として用いられる。例えば、造影剤Aを用いる場合には、高いMI値を有するスキャンパラメータ(scan
parameter)値を設定し、造影剤を破壊する。造影剤Bを用いる場合には、低いMI値を有するスキャンパラメータ値を設定し、反射超音波の高調波成分を用いた撮像を行う(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本電子機械工業会編、「改訂 医用超音波機器ハンドブック」、コロナ社、1997年1月20日、p.53〜54、p.212〜213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記背景技術によれば、被検体内における超音波の音圧分布を考慮した音圧の設定を行うことが出来ない。すなわち、探触子部から照射された超音波は、減衰を行いつつ、被検体内を伝播して行く。この際、被検体内の各部における音圧は、探触子部の超音波指向性、被検体内の減衰、焦点位置等に影響され、場所ごとに異なるものとなる。
【0008】
特に、超音波の送受信が行われる深さ方向の音圧分布は、焦点深度位置から外れた位置では、音圧が減少する。例えば、造影剤を破壊して撮像を行う場合には、造影剤が存在する位置によって、破壊音圧に達しない場合も生じる。この場合、MI値を高くすることにより、造影剤を破壊することができる。しかし、むやみに高いMI値を用いることは、MI値の制定趣旨である安全性の面から好ましいものではない。従って、MI値の設定は、造影剤の撮像位置および焦点深度位置等のスキャンパラメータ値で決まる音圧分布を考慮しつつ、適切な値に最適化されることが好ましい。
【0009】
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、被検体内における超音波の音圧分布を考慮して、照射される超音波の音圧を決定できる超音波撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体の撮像領域に超音波を照射し、前記撮像領域を描出する断層画像情報を取得する画像取得部と、前記撮像領域における前記超音波の音圧分布情報を算定する音圧分布算定部と、前記音圧分布情報を、前記断層画像情報と共に表示する表示部とを備える。
【0011】
この第1の観点による発明では、表示部に音圧分布情報を、断層画像情報と共に表示する。
【0012】
また、第2の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1の観点に記載の超音波撮像装置において、前記画像取得部が、前記超音波の照射を行う圧電素子の最大駆動電圧を変化させる駆動電圧可変手段を備えることを特徴とする。
【0013】
この第2の観点の発明では、駆動電圧可変手段により、音圧分布を変化させる。
【0014】
また、第3の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1または2の観点に記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布情報が、前記撮像領域のMI値分布情報またはPr3値分布情報であることを特徴とする。
【0015】
この第3の観点の発明では、音圧分布の指標として、安全規格で用いられているMI値分布またはPr3値分布を用いる。
【0016】
また、第4の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第3の観点に記載の超音波撮像装置において、前記MI値分布情報または前記Pr3値分布情報が、前記照射が行われる深さ方向の音圧分布の情報であることを特徴とする。
【0017】
この第4の観点の発明では、MI値分布情報またはPr3値分布情報は、主要な音圧分布のみを含む。
【0018】
また、第5の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第4の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記断層画像情報の深さ方向の表示を行う方向と、前記MI値分布情報または前記Pr3値分布情報の深さ方向の表示を行う方向とを一致させることを特徴とする。
【0019】
この第5の観点の発明では、MI値分布情報またはPr3値分布情報と、断層画像情報との比較を容易にする。
【0020】
また、第6の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第5の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記MI値分布情報のMI値または前記Pr3値分布情報のPr3値の大きさを、前記深さ方向と直交する方向の座標軸の値で表示することを特徴とする。
【0021】
この第6の観点の発明では、音圧分布情報を、MI値分布の関数またはPr3値分布の関数として表示する。
【0022】
また、第7の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第5の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記MI値分布情報のMI値または前記Pr3値分布情報のPr3値の大きさを、前記大きさに対応する白黒階調を有する白黒階調スケールまたは前記大きさに対応する色相を有する色相スケールで表示することを特徴とする。
【0023】
この第7の観点の発明では、音圧分布情報を、白黒階調スケールまたは色相スケールとして表現する。
【0024】
また、第8の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第5の観点に記載の超音波撮像装置において、前記表示部が、前記MI値分布情報のMI値または前記Pr3値分布情報のPr3値の大きさを、前記大きさに対応する色相を有し、前記深さ方向と直交する方向に一様な前記色相の領域を有する、前記断層画像情報に重ねられる背景画像情報で表示することを特徴とする。
【0025】
この第8の観点の発明では、断層画像情報の背景色により、音圧分布を表現する。
【0026】
また、第9の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1ないし8の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記超音波撮像装置が、前記被検体中の造影剤を破壊する超音波音圧の下限値を示す破壊音圧情報を設定する破壊音圧設定手段を有し、前記音圧分布算定部は、前記破壊音圧情報の音圧以上の音圧を有する、前記撮像領域の深さ方向の造影剤破壊領域を求め、前記表示部は、前記断層画像情報の前記造影剤破壊領域に、前記断層画像情報と異なる色相の一様な背景画像情報を重ねて表示することを特徴とする。
【0027】
この第9の観点の発明では、造影剤が破壊される領域を、表示される断層画像情報の中に、異なる色相の領域として明示する。
【0028】
また、第10の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体の撮像領域に超音波を照射し、前記撮像領域を描出する断層画像情報を取得する画像取得部と、前記断層画像情報を表示する表示部と、前記表示された断層画像情報の撮像領域に関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記被検体中の造影剤を破壊する超音波音圧の下限値を示す破壊音圧情報を設定する破壊音圧設定手段と、前記破壊音圧情報に基づいて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布を最適化する音圧分布最適化手段とを備える。
【0029】
この第10の観点の発明では、音圧分布最適化手段により、関心領域における超音波の音圧分布を最適化する。
【0030】
また、第11の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第10の観点に記載の超音波撮像装置において、前記破壊音圧情報が、MI値情報またはPr3値情報であることを特徴とする。
【0031】
この第11の観点の発明では、破壊音圧情報として、安全規格で用いられているMI値またはPr3値を用いる。
【0032】
また、第12の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第10または11の観点に記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布情報が、前記照射を行う深さ方向の音圧分布を含むことを特徴とする。
【0033】
この第12の観点の発明では、音圧分布情報は、主要な音圧分布のみを含む。
【0034】
また、第13の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第10ないし12の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布最適化手段が、前記断層画像情報を取得する際のスキャンパラメータ値を用いて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布情報を算定する音圧分布算定部を備えることを特徴とする。
【0035】
この第13の観点の発明では、スキャンパラメータ値から音圧分布情報を求める。
【0036】
また、第14の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第13の観点に記載の超音波撮像装置において、前記スキャンパラメータ値が、開口幅情報、アポダイゼーション情報、焦点深度情報、パワー値情報の値を含むことを特徴とする。
【0037】
また、第15の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第13または14の観点に記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布最適化手段が、前記スキャンパラメータ値を変化させ、前記スキャンパラメータ値ごとの音圧分布情報を求める最適化演算部を備えることを特徴とする。
【0038】
この第15の観点の発明では、最適化演算部は、スキャンパラメータ値を変化させて、種々の音圧分布情報を求める。
【0039】
また、第16の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15の観点に記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記関心領域に最大音圧を含むように最適化することを特徴とする。
【0040】
この第16の観点の発明では、関心領域が最も高い感度を有する様にする。
【0041】
また、第17の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15または16の観点に記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧以上になるように最適化することを特徴とする。
【0042】
この第17の観点の発明では、造影剤を破壊して、この破壊の際に発生する超音波を撮像する。
【0043】
また、第18の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15または16の観点に記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧未満となるように最適化することを特徴とする。
【0044】
この第18の観点の発明では、造影剤に繰り返し超音波を照射し、反射波に含まれる高調波を観察する。
【0045】
また、第19の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15ないし18の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記最適化演算部が、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が有する分散を最小にするように最適化することを特徴とする。
【0046】
この第19の観点の発明では、関心領域の音圧分布を、なるだけ一様なものにする。
【0047】
また、第20の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第15ないし19の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記音圧分布最適化手段が、前記スキャンパラメータ値を、前記画像取得部に設定するスキャンパラメータ値設定部を備えることを特徴とする。
【0048】
この第20の観点の発明では、最適化されたスキャンパラメータ値を用いて、撮像を行う。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、関心領域の音圧分布情報を考慮して、スキャンパラメータ値を決定するので、造影剤の撮像を、オペレータの意図する通りに確実に実行することができ、ひいては高品質の造影剤画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、入力部の構成を示す外観図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、送信される超音波の深さ方向の音圧分布を示す説明図である。
【図5】図5は、色相対応手段の色相対応テーブルの一例を示す説明図である。
【図6】図6は、実施の形態1の画像表示制御部が有する構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、表示部に表示される断層画像情報および音圧分布情報の一例を示す説明図である(その1)。
【図8】図8は、表示部に表示される断層画像情報および音圧分布情報の一例を示す説明図である(その2)。
【図9】図9は、実施の形態1にかかる超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、造影剤破壊領域を、断層画像情報に重ねて表示する表示形態の一例を示す説明図である。
【図11】図11は、実施の形態2にかかる制御部の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、実施の形態2にかかる制御部の動作を示すフローチャートである(その1)。
【図13】図13は、実施の形態2にかかる制御部の動作を示すフローチャートである(その2)。
【図14】図14は、Bモード画像に設定された関心領域の一例を示す説明図である。
【図15】図15は、関心領域に最大音圧を有する音圧分布情報の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる超音波撮像装置を実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
<実施の形態1>
【0052】
まず、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の全体構成を示すブロック(block)図である。この超音波撮像装置100は、探触子部101、画像取得部109、シネメモリ部(cine
memory)部104、画像表示制御部105、表示部106、入力部107および制御部108を含み、画像取得部109は、さらに送受信部102および画像処理部103を含む。
【0053】
探触子部101は、超音波を送受信するための部分、つまり被検体1の撮像断面の特定方向に超音波を繰り返し照射し、被検体1の内部から反射される超音波信号を、時系列的な音線として受信する。また、探触子部101は、超音波の照射方向を順次切り替えながら電子走査を行う。探触子部101の内部には、図示しない圧電素子が、アレイ(array)状に配列されている。
【0054】
送受信部102は、探触子部101と同軸ケーブル(cable)によって接続され、探触子部101の圧電素子を駆動するための電気信号および受信した超音波信号の初段増幅を行う。送受信部102は、超音波の送信の場合に、送信信号を遅延させ焦点位置に焦点を結ばせる。送受信部102は、駆動電圧可変手段12を含み、駆動電圧可変手段12は、制御部108からの制御信号に応じて、圧電素子を駆動する最大電圧を変化させる。従って、駆動電圧可変手段12は、被検体に照射される超音波の最大音圧を変化させる。なお、制御部108は、入力部107から設定されるパワーレベルPLの値に基づいて、この最大電圧を決定する。
【0055】
画像処理部103は、送受信部102を駆動する電気信号の形成および送受信部102で増幅された超音波信号から、Bモード画像情報等の断層画像情報を形成する。特に、被検体1に造影剤が投与される場合には、スキャンパラメータ値が造影剤の撮像に最適化された造影モード処理を行い、造影モード画像情報の取得を行う。
【0056】
画像処理部103は、超音波を受信した場合に、受信した超音波信号の遅延加算処理、A/D(analog/digital)変換処理およびフィルター処理等を行い、これらデジタル(digital)情報を、一枚の断層画像情報とする。
【0057】
シネメモリ部104は、造影モード処理で生成される断層画像情報等を蓄積するためのシネメモリ(memory)である。特に、シネメモリ部104は、時間的に変化する断層画像情報を、撮像領域の一枚の断層画像情報であるフレーム(frame)を最小単位として、取得が行われた時間情報と共に保存する。
【0058】
画像表示制御部105は、画像処理部103で生成された断層画像情報等の表示フレームレート(frame rate)変換、カラー表示制御、並びに、断層画像情報の表示画像の形状や位置制御を行う。また、画像表示制御部105は、断層画像情報等の表示画像上での関心領域を示すROI(Region
Of Interest)等の表示も行う。
【0059】
表示部106は、CRT(cathode ray tube)あるいはLCD(liquid crystal display)等を用いて、画像表示制御部105から出力された画像情報を、オペレータに対して可視表示する。なお、表示部106は、画像表示制御部105からの指示により、カラー(colour)表示を行うこともできる。
【0060】
制御部108は、入力部107から与えられた操作入力信号および予め記憶したプログラム(program)やデータ(data)に基づいて、上述した超音波撮像装置100各部の動作を制御し、表示部106に断層画像情報であるBモード画像等を表示する。
【0061】
入力部107は、キーボード(keyboard)およびポインティングデバイス(pointing device)等からなり、オペレータにより、撮像モードを選択する操作入力信号および撮像を行う際のスキャンパラメータ値等が入力され、制御部108に伝えられる。
【0062】
図2は、入力部107の一例を示す説明図である。入力部107は、キーボード70、TGC(Time Gain Controller)71、ニューペイシェントキー(New
Patient Key)等を含む患者指定部72、トラックボール(track ball)等を含み、ROI等の関心領域設定手段でもある計測入力部73および造影モード設定手段74を含む。
【0063】
TGC71は、表示される断層画像情報の深さ方向の利得を調整し、患者指定部72は、新たな被検体の撮像を行う場合に選択されるキーを含み、計測入力部73は、表示部106に関心領域を設定する際の、関心領域の形状、位置および大きさ等を設定するキー、並びに設定された関心領域の画素値等の計測を行う機能を有し、造影モード設定手段74は、造影剤を用いた撮像を行う場合に、造影剤が破壊される破壊音圧情報を入力する。
【0064】
造影モード設定手段74は、造影剤破壊選択キー75および破壊音圧設定手段76からなり、造影剤破壊選択キー75のオンオフにより、造影剤の破壊および非破棄の選択を行い、破壊音圧設定手段76のボリュームで指定された値を、破壊音圧情報として制御部108に入力する。
【0065】
図3は、制御部108の構成を示すブロック図である。制御部108は、画像取得制御部88および音圧分布算定部85を含む。
【0066】
画像取得制御部88は、入力部107からの撮像モード指定情報、駆動電圧情報、焦点位置情報、駆動周波数情報等のスキャンパラメータ値情報に基づいて、超音波スキャンを行い、断層画像情報を取得する。特に、画像取得制御部88は、入力部107からの指定により、駆動電圧可変手段12を用いて、照射する超音波パルスの最大音圧を制御する。
【0067】
音圧分布算定部85は、音圧分布情報設定部87および色相対応手段86を含む。
【0068】
音圧分布情報設定部87は、画像取得制御部88からのスキャンパラメータ値情報および入力部107等から予め設定される音圧分布情報に基づいて、被検体1中の音圧パラメータ値の分布を形成する。ここで、音圧パラメータとしては、MIおよびPr3等が用いられる。MIは、被検体1の組織部における負音圧Pr3(Mpa;メガパスカル)とは、
【0069】
MI=Pr3/f1/2
の関係を有する。ここで、f(MHz;メガヘルツ)は、超音波の中心周波数である。この関係から、Pr3の値を用いてMIの値が算出される。
【0070】
組織中の負音圧Pr3は、水中における負音圧Prと定数kとを用いて、
【0071】
Pr3=k×Pr
の関係で現される。この関係から、水中の負音圧Prの値を用いてPr3の値が算出される。
【0072】
水中の負音圧Prは、水中で正弦的に変化する音圧のピーク(peak)値Pmとは、
【0073】
Pr=Pm−Ps
の関係を有する。ここで、Psは、静圧(通常1気圧)である。この関係から、水中の音圧Pmを用いて、水中の負音圧Psの値が算出される。
【0074】
水中の音圧のピーク値Pmは、スキャンパラメータ値および実験的に計測される水中の音圧分布から求められる。所定のスキャンパラメータ値のもとでの水中の音圧Pmの分布は、例えば水中に設置されたハイドロフォン(hydrophone)の移動等により、予め実験的に求められる。これら音圧Pmの分布情報は、入力部107からの手入力またはROM等に書き込まれた不揮発性の情報として、音圧分布情報設定部87に設定される。
【0075】
図4は、取得される音圧分布関数の一例を示す説明図である。探触子部101から被検体1内に向かう深さ方向を横軸(z軸)とし、照射される超音波が示す音圧Pmを縦軸としている。ここで、横軸をなすz軸は、被検体1と接触する探触子部101の表面を原点とする。深さ方向の音圧分布は、焦点深度FDの近傍位置において、最大の音圧を示し、その後は徐々に音圧を下げていく。
【0076】
図4に示した様な音圧分布情報Pm(Z)は、スキャンパラメータ値の変化により変化させられる。音圧分布を変化させるスキャンパラメータ値としては、探触子部101の共振周波数等を含む種別情報Ty、走査方向に行われる電子フォーカスの焦点深度FD、走査方向に同時駆動される圧電素子数を示す開口幅AW、アポダイゼーション(apodization)情報AP、圧電素子を駆動する最大駆動電圧を設定するパワーレベル(Power
Level)PL等が存在する。これらスキャンパラメータの値により、音圧分布情報Pm(Z)は補正される。この補正関数をgとすると、
【0077】
Pm(Z)= g(Z、Ty、FD、AW、AP、PL、・・・)
と現せる。音圧分布情報設定部87は、スキャンパラメータ値が入力されると同時に補正関数gを用いてPm(Z)を算出し、さらに上述した換算式を用いてMI値を算出し、音圧分布情報であるMI値分布関数を求める。
【0078】
色相対応手段86は、MI値および色相を対応させる色相対応テーブルを有し、MI値と表示部106に表示する際の色相を対応付ける。図5は、色相対応テーブル20の一例である。色相対応テーブルは、MI値の零〜最大値を、可視光の青紫〜赤色に対応させる。なお、色相は、RGB表現等のコード(code)を用いて指定され、画像表示制御部105から表示部106に指示する色相のコードと一致させられる。
【0079】
色相対応手段86は、入力部107からの指示信号により、音圧分布情報設定部87で求められたMI値分布関数のMI値を、色相対応テーブル20を用いて色相に対応させ、色相分布関数の音圧分布情報として画像表示制御部105に出力する。
【0080】
図6は、画像表示制御部105の構成を示すブロック図である。画像表示制御部105は、書き込み部31、画像メモリ32、読み出し部33を有する。
【0081】
画像メモリ32は、表示部106の表示画面に表示される画像情報と一対一に対応する情報を含むメモリである。書き込み部31は、画像処理部103、シネメモリ部104および制御部108からの断層画像情報41および音圧分布情報42を、制御部108から指定された画像メモリ32のアドレス(address)位置に書き込む。読み出し部33は、制御部108からの表示画面上の表示位置を指定する信号に基づいて、この表示位置に対応する画像メモリ32の画素値情報を、ディスプレイ(display)に出力する。
【0082】
ここで、画像表示制御部105の表示動作について説明する。画像表示制御部105は、表示部106に、図4に示したような音圧分布情報42の内容およびBモード画像情報等の断層画像情報41を共に表示する。ここで、画像表示制御部105により、断層画像情報41および音圧分布情報42を共に表示する例を、図7〜8に示した。なお、断層画像情報41を構成する、走査方向に並ぶ各音線は、同一の音線分布情報42を有する。
【0083】
図7(A)は、音圧分布情報42として、図4に示した様な深さ方向(Z方向)のMI値分布関数62を含む場合に、表示部106に表示される画像を示す図である。表示部106の左側には、断層画像情報41が表示され、右側には、MI値分布関数62が表示される。左側に位置する断層画像情報41は、表示部106の上から下にかけて、被検体1の浅部から深部に至る断層画像が表示されている。右側に位置するMI値分布関数62は、深度を現す横軸が上下方向を向き、深度位置が、左側に表示される断層画像情報41の深さ位置と一致させられる。また、MI値分布関数62は、MI値を現す軸が左右方向を向き、MI値の深さ方向の分布が線グラフ(graph)として表現されている。
【0084】
図7(B)は、音圧分布情報42として、白黒階調スケール63を含む場合に、表示部106に表示される画像を示す図である。表示部106の左側には、断層画像情報41が表示され、右側には、白黒階調スケール63が表示される。左側に位置する断層画像情報41は、表示部106の上から下にかけて、被検体1の浅部から深部に至る断層画像が表示されている。右側に位置する白黒階調スケール63は、断層画像情報41と同様の上下方向を向く深さ方向に、明るさが変化する階調スケール(scale)である。図7(B)に示した白黒階調スケールでは、高MI値を低い輝度に対応させ、低MI値を高い輝度に対応させているが、MI値と輝度の対応を逆にし、高MI値を高い輝度に対応させ、低MI値を低い輝度に対応させることもできる。
【0085】
図8( A)は、音圧分布情報42として、色相スケール64が含まれる場合に、表示部106に表示される画像を示す図である。表示部106の左側には、断層画像情報41が表示され、右側には、色相スケール64が表示される。左側に位置する断層画像情報41は、表示部106の上から下にかけて、被検体1の浅部から深部に至る断層画像が表示されている。右側に位置する色相スケール64は、断層画像情報41と同様の上下方向を向く深さ方向に、色相が変化するスケール(scale)を有する。図8(A)に示した色相スケールは、図5に示した色相対応テーブルに基づいたもので、高MI値が赤に近い色相を有し、低MI値が青紫に近い色相を有する。
【0086】
図8(B)は、色相スケール64に代わって、断層画像情報41に重ねて表示される背景画像情報45を、表示部106に表示した場合の画像を模式的に示す図である。この場合、背景画像情報45は、左右方向の幅が断層画像情報41と同じ幅とされ、断層画像情報41と同一位置に表示される。また、背景画像情報45を構成する各色相は、輝度が低いものとされる。これにより重ねて表示される断層画像情報41は、重ねられた半透明の色相スケールを背景画像として、観察可能なものとなる。なお、図8(A)に示した色相スケール64が有する色相境界に当たる部分は、図8( B)に示す背景画像情報45においては、一点鎖線で示されている。
【0087】
つぎに、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の動作について、図9を用いて説明する。まず、オペレータは、入力部107から、焦点深度、送信超音波を発生させる際のパワーレベル等のスキャンパラメータ値を設定する(ステップS701)。ここで、制御部108の音圧分布情報設定部87は、このスキャンパラメータ値に基づいて、音圧分布情報42を生成する。
【0088】
その後、オペレータは、入力部107のキーボード等から、音圧分布情報42の表示を指定し、音圧分布情報42を表示する(ステップS702)。そして、オペレータは、被検体1の目的とする撮像領域に探触子部101を密着させ、この撮像領域の撮像を行う(ステップS703)。
【0089】
その後、オペレータは、図7〜8に示した表示部106の表示画像のいずれかを観察し、音圧分布が、適当かどうかを判定する(ステップS704)。例えば、オペレータは、撮像領域の造影剤が流入する経路に当たる位置で破壊音圧となっているかどうか、またその破壊音圧となっている領域は充分な広さを有しているか、また必要以上に破壊音圧の領域が拡大されていないか等を判定する。そして、オペレータは、音圧分布が適当でない場合には(ステップS704否定)、ステップS701に移行し、焦点深度位置、あるいはパワーレベル等のスキャンパラメータ値を変更し、再度撮像を行う。焦点深度位置の変更により、深さ方向の破壊音圧の領域位置が変わり、パワーレベルの変更により、破壊音圧の領域の広さが変わる。
【0090】
また、オペレータは、音圧分布が適当である場合には(ステップS704肯定)、被検体1に造影剤を投与し(ステップS705)、被検体1の撮像領域における造影剤の撮像を行い(ステップS706)、本処理を終了する。なお、ここで取得された造影モード画像情報等の断層画像情報は、造影剤の破壊が、目的とする位置で適切に行われたものとなる。
【0091】
上述してきたように、本実施の形態1では、音圧分布情報42を、断層画像情報41と並べるかまたは重ねて表示することとしているので、オペレータは、撮像以前に、撮像領域における音圧が造影剤の破壊音圧となる領域を把握し、ひいてはスキャンパラメータ値の再設定により、造影剤が破壊される領域を、撮像領域の中で造影剤が描出される位置と一致させ、無駄なく間違いのない、確実な造影剤破壊を行うことができる。
【0092】
また、本実施の形態1では、MI値分布関数を表示する例を示したが、同様にPr3値、音圧Pmまたは負音圧Pr等の音圧と関連する音圧パラメータ値の分布を求め表示することもできる。
【0093】
また、本実施の形態1では、造影剤を破壊する場合について例示したが、造影剤から反射される高調波成分を用いて撮像を行う場合にも全く同様に用いることができる。この場合には、造影剤を破壊しない低い音圧の領域で撮像が行われるので、オペレータは、音圧分布情報42を参照し、高調波成分が適正に発生される低い音圧の領域を把握し、この領域を造影剤の描出が行われる領域に一致させる。
【0094】
また、本実施の形態1では、表示部106に断層画像情報41と共に音圧分布情報42を表示することとしたが、さらに最小の破壊音圧を示す破壊音圧情報を入力し、断層画像情報41の造影剤が破壊される領域を、色分け等により一層明確に示すこともできる。
【0095】
図10は、図7( A)に示したと同様の断層画像情報41およびMI値分布関数62のグラフを並べて表示した図である。MI値分布関数のグラフには、入力部107から入力された破壊音圧情報である破壊MI値91が図示されている。破壊MI値91は、MI値で示された最小の破壊音圧を示す指標である。破壊MI値91以上のMI値では、造影剤が破壊され、高強度の超音波が発せられる。一方、破壊MI値91未満のMI値では、造影剤が破壊されず、高強度の超音波が生じない。
【0096】
ここで、音圧分布算定部85は、MI値分布関数62のグラフを用いて、破壊MI値91以上のMI値の領域である造影剤破壊領域93を求める。画像表示制御部105は、断層画像情報41の造影剤破壊領域93に対応する深度領域を、例えば赤色の一様な背景画像を有する破壊領域画像情報94が重ねられたものとする。破壊領域画像情報94は、図8(B)に示した背景画像情報45と同様のものであり、赤色の低い輝度の背景領域が断層画像情報41に重ねて表示されたものである。これにより、オペレータは、白黒の階調表現がなされる断層画像情報41の中で、造影剤が破壊される領域を赤色領域として、容易に把握することができる。
<実施の形態2>
【0097】
ところで、上記実施の形態1では、深さ方向の音圧分布情報を表示部106に表示し、オペレータは、この音圧分布情報を参照して、設定されたスキャンパラメータ値が適当か否かを判断したが、制御部に音圧分布最適化手段を設け、自動的にスキャンパラメータ値を最適化することもできる。そこで、本実施の形態2では、音圧分布最適化手段を設け、音圧分布情報を、オペレータが目標とする最適の分布とする場合を示すことにする。
【0098】
ここで、本実施の形態2にかかる超音波撮像装置は、制御部108を除いて、図1に示した超音波撮像装置100と全く同様である。従って、本実施の形態2では、制御部108に対応する制御部118についてのみ説明し、その他の構成につては説明を省略する。
【0099】
制御部118は、画像取得制御部88および音圧分布最適化手段51を含む。画像取得制御部88は、図2に示した超音波撮像装置100の画像取得制御部88と全く同様であるので説明を省略する。
【0100】
音圧分布最適化手段51は、最適化演算部52、音圧分布算定部85およびスキャンパラメータ値設定部54を含む。音圧分布算定部85は、図3に示す制御部108の音圧分布算定部85と全く同様である。
【0101】
音圧分布算定部85は、最適化演算部52からのスキャンパラメータ値情報、例えば、探触子部101の共振周波数等を含む種別情報Ty、走査方向に行われる電子フォーカスの焦点深度FD、走査方向に同時駆動される圧電素子数を示す開口幅AW、アポダイゼーション情報AP、圧電素子を駆動するパワーレベルPL等に基づいて、深さ方向Zの音圧分布情報Pm(Z)を、補正関数gを用いて、
【0102】
Pm(Z)= g(Z、Ty、FD、AW、AP、PL、・・・)
により求める。
【0103】
最適化演算部52は、入力部107から設定された関心領域の深さ方向の音圧分布情報Pm(Z)を、スキャンパラメータ値を変化させつつ音圧分布算定部85を用いて求める。ここで、変化させられるスキャンパラメータ値としては、音圧分布に影響を与える、焦点深度FD、開口幅AW、アポダイゼーション情報AP、パワーレベルPL等を含む。例えば、送信超音波の焦点深度の値として、FD=5cm、10cm、15cmの設定が可能な場合には、他のスキャンパラメータ値情報とこれら3つのスキャンパラメータ値のすべての組み合わせについての音圧分布情報Pm(Z)を求める。なお、音圧分布情報Pm(Z)を求める際に、パワーレベルPLは、所定の値に固定される。パワーレベルPLは、最大駆動電圧を変化させるので、深さ方向の音圧分布形状を変化させることなく、音圧の大きさのみを変化させる。パワーレベルPLは、破壊音圧と比較の後に、最終的に音圧を決定する際に変化させるパラメータとして用いられる。
【0104】
最適化演算部52は、さらにこれら音圧分布情報Pm(Z)から、撮像に見合った最適な音圧分布情報を選別する。なお、この音圧分布情報の選別については、後述する制御部118の音圧分布最適化手段51の動作において詳述する。
【0105】
スキャンパラメータ値設定部54は、最適な音圧分布情報のスキャンパラメータ値を、画像取得制御部88に送信し、画像取得制御部88は、このスキャンパラメータ値に基づいて、画像取得部109各部の設定を行う。
【0106】
つぎに、本実施の形態2にかかる制御部118の動作について、図12および13を用いて説明する。図12および13は、制御部118の動作を示すフローチャートである。まず、オペレータは、入力部107の造影モード設定手段74から、被検体1に投与される造影剤の破壊、非破壊の選択および破壊音圧情報の設定を行う(ステップS801)。破壊音圧情報は、被検体1内で造影剤が破壊される音圧の下限値の情報で、この音圧を越える超音波は、被検体1内で造影剤を破壊する。なお、設定の際には、造影剤が破壊される音圧のMI値、Pr3値、Pr値またはPm値等を用いて設定することができる。
【0107】
その後、オペレータは、表示部106に表示されるBモード画像等を参照しつつ、関心領域を入力部107から設定する(ステップS802)。図14は、Bモード画像14に設定された関心領域15の一例を示す説明図である。関心領域15は、オペレータが目的とする造影剤の観測位置を含むように、深さ方向の位置がaからbまでに設定されている。
【0108】
その後、図12に戻り、音圧分布最適化手段51は、音圧分布最適化処理を行う(ステップS803)。図13は、音圧分布最適化処理の動作を示すフローチャートである。音圧分布最適化手段51の最適化演算部52は、スキャンパラメータ値を変化させ、スキャンパラメータ値ごとの音圧分布情報Pm(Z)を求める(ステップS901)。なお、音圧分布情報Pm(Z)は、図4に示すような形状のものである。
【0109】
その後、最適化演算部52は、音圧分布情報Pm(Z)ごとに最大音圧および最大音圧の深さ方向位置を求め、この深さ方向位置が関心領域15に含まれる音圧分布情報Pm(Z)を選択する(ステップS902)。図15(A)〜(D)は、ここで選択された音圧分布情報Pm(Z)のいくつかの例を示す説明図である。
【0110】
図15(A)〜(D)に示された音圧分布情報Pm(Z)は、関心領域15の範囲である深さ方向の位置a〜b間に最大音圧を有する。また、図15(A)〜(D)に示された音圧分布情報Pm(Z)は、焦点深度FD、開口幅AWおよびアポダイゼーションAP等が異なり、すべて異なる音圧分布を有する。
【0111】
図13に戻り、最適化演算部52は、関心領域15に含まれる音圧分布情報Pm(Z)の統計上の分散を求め、分散の最も小さい音圧分布情報Pm(Z)を選択する(ステップS903)。例えば、図15(A)〜(D)に示した音圧分布情報Pm(Z)の中から、分散の最も小さい音圧分布情報を選択する場合には、深さ方向の区間a〜bで最も変動の少ない、図5(B)に示した音圧分布情報Pm(Z)が選択される。
【0112】
その後、最適化演算部52は、造影剤破壊選択キー75からの指示情報に基づいて、被検体1に投与される造影剤を破壊するかどうかを判定する(ステップS904)。最適化演算部52は、造影剤を破壊する場合には(ステップS904肯定)、ステップS903で選択された分散が最小の音圧分布情報Pm(Z)を用いて、区間a〜bの音圧が、ステップS801で設定された破壊音圧情報の破壊音圧以上の音圧となるようにパワーレベルPLを設定する(ステップS905)。ここで、最適化演算部52は、例えば、区間a〜bにおいて音圧分布情報Pm(Z)が有する音圧の最小値を求め、この最小値を破壊音圧と一致させるようにパワーレベルPLを設定する。なお、図15(B)には、このパワーレベルの一例が、PL破壊値として図示されている。
【0113】
又、最適化演算部52は、造影剤を破壊しない場合には(ステップS904否定)、ステップS903で選択(Z)が有する音圧の最大値を求め、この最大値が破壊音圧未満となるようにパワーレベルPLを設定する。なお、図15(B)には、このパワーレベルの一例が、PL非破壊値として図示されている。
【0114】
その後、スキャンパラメータ値設定部54は、最適化演算部52から送信されたパワーレベルPLを含むスキャンパラメータ値を、画像取得制御部88に送信し、音圧分布最適化処理を終了する。
【0115】
その後、図12に戻り、オペレータは、このスキャンパラメータ値を用いた造影剤の撮像を行い(ステップS804)、本処理を終了する。
【0116】
上述してきたように、本実施の形態2では、音圧分布最適化手段51により、予め設定された関心領域15の音圧分布情報の音圧を、分散が小さく、しかも関心領域15の音圧を確実に破壊音圧以上または破壊音圧未満にするので、関心領域15において、目的とする造影剤の撮像を間違いなく行うことができる。
【0117】
また、本実施の形態2では、最適化演算部52は、パワーレベルPLを除いたすべてのスキャンパラメータの値を変化させて音圧分布情報Pm(Z)を求めることとしたが、演算時間の短縮のために、限定されたスキャンパラメータのみを用いて音圧分布情報Pm(Z)を求めることもできる。
【0118】
また、本実施の形態2では、最適化演算部52は、最適な音圧分布情報Pm(Z)が唯一存在することとしたが、例えば、関心領域15の深さ方向の大きさ、最大駆動電圧の上限値によるパワーレベルPLの制限値等により、最適な音圧分布情報Pm(Z)が存在しない場合も存在する。この場合には、例えば、最適化演算部52は、分散値の最小値ではなく、順次最小値より大きな分散値の音圧分布情報Pm(Z)を選択し、ステップS904〜S907を行い最適な音圧分布情報を求めることができる。
【0119】
また、本実施の形態2では、音圧分布最適化手段51は、音圧分布情報として、水中で正弦的に変化する音圧のピーク値である音圧Pmの値を用いることとしたが、全く同様にPmから求められるPr、Pr3、MI等の指標を用いた音圧分布情報により、最適化を行うこともできる。
【符号の説明】
【0120】
1:被検体
12:駆動電圧可変手段
14:Bモード画像
15:関心領域
20:色相対応テーブル
31:書き込み部
32:画像メモリ
33:読み出し部
41:断層画像情報
42:音圧分布情報
45:背景画像情報
51:音圧分布最適化手段
52:最適化演算部
54:スキャンパラメータ値設定部
62:MI値分布関数
63:白黒階調スケール
64:色相スケール
70:キーボード
72:患者指定部
73:計測入力部
74:破壊音圧設定手段
75:ボリューム選択キー
76:破壊音圧設定手段
85:音圧分布算定部
86:色相対応手段
87:音圧分布情報設定部
88:画像取得制御部
91:破壊MI値
93:造影剤破壊領域
94:破壊領域画像情報
100:超音波撮像装置
101:探触子部
102:送受信部
103:画像処理部
104:シネメモリ部
105:画像表示制御部
106:表示部
107:入力部
108、118:制御部
109:画像取得部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮像領域に超音波を照射し、前記撮像領域を描出する断層画像情報を取得する画像取得部と、
前記断層画像情報を表示する表示部と、
前記表示された断層画像情報の撮像領域に関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記被検体中の造影剤を破壊する超音波音圧の下限値を示す破壊音圧情報を設定する破壊音圧設定手段と、
前記破壊音圧情報に基づいて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布情報を最適化する音圧分布最適化手段とを備える超音波撮像装置。
【請求項2】
前記破壊音圧情報は、MI値情報またはPr3値情報であることを特徴とする請求項1に記載の超音波撮像装置。
【請求項3】
前記音圧分布情報は、前記照射を行う深さ方向の音圧分布を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波撮像装置。
【請求項4】
前記音圧分布最適化手段は、前記断層画像情報を取得する際のスキャンパラメータ値を用いて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布情報を算定する音圧分布算定部を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の超音波撮像装置。
【請求項5】
前記スキャンパラメータ値は、開口幅情報、アポダイゼーション情報、焦点深度情報、パワー値情報の値を含むことを特徴とする請求項4に記載の超音波撮像装置。
【請求項6】
前記音圧分布最適化手段は、前記スキャンパラメータ値を変化させ、前記スキャンパラメータ値ごとの音圧分布情報を求める最適化演算部を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の超音波撮像装置。
【請求項7】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記関心領域で最大音圧を含むように最適化することを特徴とする請求項6に記載の超音波撮像装置。
【請求項8】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧以上になるように最適化することを特徴とする請求項6または7に記載の超音波撮像装置。
【請求項9】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧未満となるように最適化することを特徴とする請求項6または7に記載の超音波撮像装置。
【請求項10】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が有する分散を最小にするように最適化することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1つに記載の超音波撮像装置。
【請求項11】
前記音圧分布最適化手段は、前記スキャンパラメータ値を、前記画像取得部に設定するスキャンパラメータ値設定部を備えることを特徴とする請求項6ないし10のいずれか1つに記載の超音波撮像装置。
【請求項1】
被検体の撮像領域に超音波を照射し、前記撮像領域を描出する断層画像情報を取得する画像取得部と、
前記断層画像情報を表示する表示部と、
前記表示された断層画像情報の撮像領域に関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記被検体中の造影剤を破壊する超音波音圧の下限値を示す破壊音圧情報を設定する破壊音圧設定手段と、
前記破壊音圧情報に基づいて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布情報を最適化する音圧分布最適化手段とを備える超音波撮像装置。
【請求項2】
前記破壊音圧情報は、MI値情報またはPr3値情報であることを特徴とする請求項1に記載の超音波撮像装置。
【請求項3】
前記音圧分布情報は、前記照射を行う深さ方向の音圧分布を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波撮像装置。
【請求項4】
前記音圧分布最適化手段は、前記断層画像情報を取得する際のスキャンパラメータ値を用いて、前記関心領域における前記超音波の音圧分布情報を算定する音圧分布算定部を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の超音波撮像装置。
【請求項5】
前記スキャンパラメータ値は、開口幅情報、アポダイゼーション情報、焦点深度情報、パワー値情報の値を含むことを特徴とする請求項4に記載の超音波撮像装置。
【請求項6】
前記音圧分布最適化手段は、前記スキャンパラメータ値を変化させ、前記スキャンパラメータ値ごとの音圧分布情報を求める最適化演算部を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の超音波撮像装置。
【請求項7】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記関心領域で最大音圧を含むように最適化することを特徴とする請求項6に記載の超音波撮像装置。
【請求項8】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧以上になるように最適化することを特徴とする請求項6または7に記載の超音波撮像装置。
【請求項9】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が前記破壊音圧情報の破壊音圧未満となるように最適化することを特徴とする請求項6または7に記載の超音波撮像装置。
【請求項10】
前記最適化演算部は、前記スキャンパラメータ値を、前記音圧分布情報の音圧分布が有する分散を最小にするように最適化することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1つに記載の超音波撮像装置。
【請求項11】
前記音圧分布最適化手段は、前記スキャンパラメータ値を、前記画像取得部に設定するスキャンパラメータ値設定部を備えることを特徴とする請求項6ないし10のいずれか1つに記載の超音波撮像装置。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図1】
【図3】
【図7】
【図8】
【図13】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図1】
【図3】
【図7】
【図8】
【図13】
【図15】
【公開番号】特開2013−31753(P2013−31753A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252819(P2012−252819)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2007−323244(P2007−323244)の分割
【原出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2007−323244(P2007−323244)の分割
【原出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
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