説明

超音波検査用装置

【課題】二次元化して内部表示される検査対象において、内部欠陥やボイド、剥離の検査を高精度かつ容易に実施できる超音波検査用装置を提供する。
【解決手段】超音波検査用装置において、検査対象3に超音波を照射してエコー信号を得る超音波トランスデューサ2と、検査対象3の内部における注目領域Rを定義する領域定義部16と、注目領域Rからの前記エコー信号により認定される欠陥4の像について設定軸と直交する任意断面のうち欠陥像面積が最大になる面を画像化する二次元画像化部21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電変換部により送受信される超音波を用いて、構造物や部品内の欠陥、ボイドや接合部の剥がれ等の状態を可視化する超音波検査用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査用装置を用い、検査対象である構造物や部品内の、欠陥、ボイド及び接合部の剥がれ等の状態を評価することが広く実施されている。
この検査対象に照射された超音波の反射波であるエコー波形は、検査対象の表面、欠陥、裏面の三つに由来している。そして、欠陥を検出するためにはこの欠陥に由来するエコー波形に着目し抽出する処理が必要になる。このエコー波形を抽出するために、表面由来のエコー波形の通過後を始点とし、裏面由来のエコー波形の通過前を終点とするゲートを設け、このゲートを通過するエコー波形を欠陥由来のものとして取り扱う。そして、この欠陥由来のエコー波形の強度およびタイミングを検出することにより、検査対象における欠陥の位置、大きさ等の情報を可視化している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−121426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そのようなゲートを利用する従来の超音波検査用装置では、検査対象の表面と裏面の間隔が一定でない場合は、幅の異なる複数のゲートを設定する必要がある。しかし、検査対象の形状変化に同期させて複数のうち適切なゲートを入れ替えるのは困難が伴い、特にこの形状変化が複雑である場合は誤検出等の欠陥検出の精度低下を起こす問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、二次元化して内部表示される検査対象において、内部欠陥やボイド、剥離の検査を高精度かつ容易に実施できる超音波検査用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超音波検査用装置は、検査対象に超音波を照射してエコー信号を得る超音波トランスデューサと、前記検査対象の内部における注目領域を定義する領域定義部と、前記注目領域からの前記エコー信号により認定される欠陥像について設定軸と直交する任意断面のうち、欠陥像面積が最大になる面を画像化する二次元画像化部と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複雑形状の検査対象の内部に存在する欠陥を、高精度でかつ容易に検査することが可能な超音波検査用装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る超音波検査用装置の第1実施形態を示す構成図。
【図2】(A)複雑形状の検査対象の斜視図、(B)その断面図、(C)エコー信号の波形を示す図。
【図3】(A)超音波トランスデューサが検出したエコー信号に基づく画像情報、(B)検出範囲における注目領域、(C)検出された欠陥の抽出画像、(D)検出された欠陥における欠陥像面積が最大になる部分の断面画像、をそれぞれ示す図。
【図4】超音波検査装置における基準面の補正機能の説明図。
【図5】本発明に係る超音波検査用装置の第2実施形態を示す構成図。
【図6】本発明に係る超音波検査用装置の第2実施形態の変形例を示す構成図。
【図7】(A)第2実施形態に係る超音波検査装置と検査対象との配置関係を示す縦断面図、(B)一つの静止位置で撮像された断面像、(C)検査対象を回転させて連続的に撮像された複数の断面像、をそれぞれ示す図。
【図8】(A)第2実施形態に係る超音波検査装置で撮像された検査対象に含まれる欠陥の表示方式の一例、(B)その他の表示方式の例、をそれぞれ示す図。
【図9】第2実施形態において図8(A)に示される矩形表示から図8(B)に示される円形表示への変換を実行する演算式。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように超音波検査用装置は、カップラント27及びシュー25を介して検査対象3に当接させる超音波トランスデューサ2と、この超音波トランスデューサ2にケーブルで接続される装置本体1とから構成されている。
装置本体1は、信号発生部10と、駆動素子選択部11と、信号検出部12と、増幅部13と、A/D変換部14と、信号処理部15と、領域定義部16と、注目領域データ記憶部17と、二次元化情報記憶部18と、判定閾値データ記憶部19と、検査データ生成部20と、二次元画像化部21と、欠陥判別部22と、表示装置23と、制御部24と、基準面検出部28と、修正情報記憶部30と、修正処理部31とから構成されている。
【0010】
超音波トランスデューサ2は、圧電素子からなる複数の圧電変換部26をマトリックス状または、直線状に配置したものであり、それぞれの圧電変換部26は、駆動素子選択部11の選択により駆動されるものが決定されて信号発生部10からの駆動信号が導かれる。この電気的な駆動信号を入力すると圧電変換26は、圧電体の性質として超音波を発生し、この超音波は、シュー25を介して検査対象3内の欠陥4に達する。そして、欠陥4から反射する超音波エコーUは再びシュー25を介して圧電変換部26に入力し、それぞれに発生する電気信号は信号検出部12に導かれる。
このように超音波トランスデューサ2は、検査対象3に向けて超音波を出力し、内部欠陥4、さらに表面3a、裏面3bから反射される超音波エコーを受信する。
【0011】
信号発生部10は、圧電変換部26に超音波を発生させるパルス状または連続の駆動信号を発生し、駆動素子選択部11に導く。この駆動素子選択部11は、駆動すべき一つまたは複数の圧電変換部26を選択した上で、信号発生部10から導かれた駆動信号を導くものである。
信号検出部12は、圧電変換部26で発生するアナログの微弱な電気信号を検出するもので、このアナログ信号のうち検査に適用されるものが増幅部13に導かれる。
【0012】
増幅部13は、導かれたアナログ信号を増幅し、これをA/D変換部14に供給する。このA/D変換部14は、導かれたアナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、信号処理部15に導く。
この信号処理部15は内部に並列プロセッサを備えており、A/D変換部14から導かれたデジタル信号を処理し開口合成処理により検査対象3の内部の状態を可視化する三次元画像情報Qを生成する。
【0013】
検査に際し、領域定義部16により、検査対象3の内部の注目領域Rの定義情報、検査対象3の内部を二次元表示するための座標情報T、欠陥を判定する閾値を定義する閾値情報Gが生成され、それぞれを、注目領域データ記憶部17、二次元化情報記憶部18、判定閾値データ記憶部19に保存する。
【0014】
検査データ生成部20は、信号処理部15が生成した三次元画像情報Qに対して注目領域データ記憶部17に保存された注目領域Rの定義情報を適用し、注目領域R以外の画像情報を除去した検査用三次元画像Sを生成する。
二次元画像化部21は、二次元化情報記憶部18に保存された座標情報Tを用い、設定軸と直交する検査用三次元画像Sの任意断面を検査用二次元画像Fとして変換する。
【0015】
修正処理部31は、入力した検査用二次元画像Fを画像修正して修正二次元画像Kを出力するものである。
【0016】
欠陥判別部22は、入力した検査用二次元画像Fに対して判定閾値データ記憶部19に保存された閾値情報Gを適用して、閾値以上、あるいは閾値以下の領域の有無、面積等を判定、計算し、表示装置23に表示出力する。
以上の動作は制御部24によって統括的に制御され、超音波トランスデューサ2の駆動から超音波の発信、受信、画像情報生成、注目領域抽出、判定、表示等の一連動作が実行される。
【0017】
図2を参照して、本実施形態に係る超音波検査用装置を用いて複雑形状を有する検査対象3の検査例を示す。
検査対象3は、図2(A)に示されるように、裏面3bが波打った裏面形状を持つ複雑形状であり、平坦な表面3aに超音波トランスデューサ2を接触させてX方向に動かして検査を行う。図示していないが、適切なシュー、カップラントが用いられているものとする。
【0018】
図2(B)の検査対象3の断面図に示されるように、注目領域Rは同図の波打った裏面の上部に設定されているとする。そして、超音波トランスデューサ2は、検査対象3の注目領域Rに対し表面3aから裏面3bの方向に向けて超音波を照射する。すると、表面3a、裏面3b及び注目領域Rの内部に存在する欠陥4から超音波エコーが反射される。
【0019】
図2(C)は、超音波トランスデューサ2で受信した超音波エコーを電気信号に変換したエコー信号であり、図の左から右に向かって時間が経過するように表示されている。右側の波形は表面3aに対応した表面エコー波形5であり、左側の波形は裏面3bに対応した裏面エコー波形6であり、欠陥4が存在する場合には、表面エコー波形5、裏面エコー波形6の間に欠陥エコー波形7が表示される。
【0020】
図3に基づき超音波検査装置により検出された欠陥を可視化するプロセスを説明する。 図3(A)は信号処理部15で生成される三次元画像情報Qの側面図である。図面において平面表示されているが、実際には図の奥行き方向にも画像情報が生成されている。超音波トランスデューサ2としてリニアアレイプローブ、マトリクスアレイプローブの両方が使用可能であるが、リニアアレイプローブの場合には1回の画像化で超音波トランスデューサ2の直下の断面像(プローブの開口方向をY軸とし、検査対象の深さ方向をZ軸とするとY−Z面の二次元画像)が生成される。超音波トランスデューサ2をX方向に移動(スキャン)させることにより、複数の断面像を順次生成し、これらを結合させることにより図3(A)に示す三次元画像情報Qを生成する。マトリクスアレイプローブを用いた場合には、1回でXYZの三次元構造の単位画像が生成され、この単位画像を結合することにより、同様の三次元画像情報Qを生成する。
【0021】
図3(A)の画像には検査対象3(図2)の表面エコー像Ea、裏面エコー像Ebが含まれている。図3(B)に示される注目領域Rの部分のみを抽出するために、領域定義部16(図1)で作成され注目領域データ記憶部17に保存されている定義情報を用いる。
【0022】
そして、検査データ生成部20において、信号処理部15が生成した三次元画像情報Qに対し、注目領域データ記憶部17に保存されている注目領域Rの定義情報による処理をすることにより、指定された注目領域Rのデータのみが抽出され、図3(C)に示すような表面エコー像Ea、裏面エコー像Ebが除去された検査用三次元画像Sに変換される。
【0023】
ここで、注目領域Rの定義情報は、この注目領域Rの構成画素を"1"これ以外の部分を"0"とするメッシュデータとし、このメッシュデータを信号処理部15が生成した三次元画像情報Qにメッシュ単位に掛け合わせることで、注目領域Rに該当するデータのみの抽出が実行される。なお、この例では注目領域Rとして矩形のものを示しているが、矩形に限らず任意の形の注目領域Rを設定できる。
【0024】
領域定義部16で定義された座標変換に関する座標情報Tが、二次元化情報記憶部18に保存されている。この座標情報Tは、図3(C)に例示されるxyzの3軸からなる座標系であって、検査対象3を基準に定めたXYZ座標系とは別個のものである。図3では、注目領域Rは波打った裏面3bの上部となっているために、従来ではXYZ座標系における超音波の進行方向(Z軸)との直交面(XY平面)へ欠陥像が投影される形で二次元画像化が行われる。このため、従来では、検査対象3を基準に設定されるXYZ座標系に対し、傾いた主面を有する欠陥4を撮像すると、形が歪んだ欠陥4の二次元像が生成されることになる。
【0025】
そこで本実施形態では、二次元画像化部21において、設定軸(ここではz軸)と直交する欠陥4の任意断面のうち欠陥像面積が最大になる面を画像化するようになっている。つまり、欠陥4の主面にz軸が直交するようにxyz座標系を定義し、x−y平面座標に沿う面において二次元画像化を行う。これにより、図3(D)に示すような欠陥4の主面に平行な、歪みのない二次元化された検査用二次元画像Fが生成される。
【0026】
この検査用二次元画像F(又は修正二次元画像K)に対して、領域定義部16で定義され判定閾値データ記憶部19に保存された閾値情報Gを適用し、欠陥判別部22で演算を実行する。これにより、欠陥4が画像化された表示用二次元画像Hが生成され、表示装置23によって表示される。この表示用二次元画像Hは、検査用二次元画像Fを構成する画素の画素値を判定閾値データ記憶部19に保存された閾値情報Gと比較することにより行われる。下限閾値以上、あるいは上限閾値以下にて欠陥4に由来する像であると判定されるが、この方法に限定されるわけではない。
【0027】
一方において、欠陥判別部22は、後記する基準面検出部28による基準面補正情報Pに基づいて閾値情報Gを変化させて適用する場合がある。これは、検査対象3の表面3a及び裏面3bと超音波トランスデューサ2との相対距離が変化することによって、欠陥4に由来する超音波エコーの強度が変化することによる。
【0028】
さらに、欠陥判別部22は、検査用二次元画像Fの強度を判定して、閾値情報Gを変化させて適用することができる。これは、生成された検査用二次元画像Fは、検査条件に依存して、全体として明るかったり暗かったりして、必ずしも常に同じ強度を持つものではない。このために、同じ閾値情報Gを適用すると、検査条件が異なることによっては欠陥なし、欠陥あり等の判定が分かれる場合が想定される。このような事態に対処するために、例えば生成された検査用二次元画像Fの全体の平均的な画像強度を求め、この平均値が基準値より高ければ、判定に適用する閾値を高く補正し、基準値より低ければ、適用する閾値を低く補正するようにする。これにより、検査条件を変更して撮像された、明るさ強度が相違する複数の二次元検査用画像に対しても、適切な欠陥判定が可能となる。
【0029】
図1に示される基準面検出部28は、信号処理部15が生成する三次元画像情報Qから、注目領域データ記憶部17で保存されている注目領域Rの定義情報が適用される基準面を補正する補正情報Pを出力するものである。この基準面補正情報Pは、この基準面検出部28から検査データ生成部20に転送されて、前記した基準面の補正が実行される。
【0030】
図4を参照して基準面検出部28の動作を説明する。
超音波検査の際、超音波トランスデューサ2と検査対象3の間の距離が変化することがある。このようなことが起こると、検査対象3に正しく注目領域Rを設定することが困難となるが、基準面検出部28はこのような問題に対処するためのものである。
【0031】
超音波トランスデューサ2と検査対象3の間の距離が変化した場合、図4(A)から図4(B)に示すように、三次元画像情報Q中の表面エコーEaの位置が基準面に対し変化することになる。基準面検出部28は三次元画像情報Q中の現在の表面位置Bを検出し、注目領域データ記憶部17に保存されている注目領域Rの定義情報の表面位置Aを基準面とみなして減算し、基準面補正情報Pを算出する。この基準面補正情報Pは、検査データ生成部20に出力されて、図4(C)に示すように、注目領域Rの定義情報を適用する位置を補正する。これにより、超音波トランスデューサ2と検査対象3の間の距離が変化しても正しい検査用三次元画像Sの抽出が可能となる。
【0032】
一方において、基準面検出部28で生成した基準面補正情報Pを、欠陥判別部22に適用し、検査対象3の表面3a又は裏面3bが位置変化しても、閾値情報Gを適切に変化させて適用することができる。これにより、超音波トランスデューサ2と検査対象3の間の距離が変化して、検査対象3の内部で超音波の伝搬条件が変化しても、閾値情報Tを補正して検査用二次元画像Fに対し欠陥4に関する正しい判定が可能になる。
【0033】
図1に示される修正情報記憶部30は、領域定義部16が検査用2次元画像Fを画像修正するための修正情報Jを保存する機能を有する。そして、修正処理部31は、この修正情報Jを用いて、二次元画像化部21が生成した検査用二次元画像Fの各メッシュ毎に乗算、あるいは加算、または二つの予め定義した二次元テーブルの一つを乗算、もう一つを加算することにより、修正二次元検査画像Kを生成し、欠陥判別部22に送る機能を有している。
【0034】
一般に、検査対象3の内部状態や超音波の伝搬経路等の影響により、二次元画像化部21が生成する検査用二次元画像Fは必ずしも一様にならないことがある。このような検査用二次元画像Fに対し、欠陥判別部22において閾値情報Fを適用して欠陥判定を行うと、欠陥検出の正確性を欠く場合がある。
【0035】
そこで、このような事象に対処するために、予め検査対象3の内部状態、超音波の伝搬経路等を考慮して作成した修正情報Jを修正情報記憶部30に保存しておき、この修正情報Jを修正処理部31において、検査用二次元画像Fに対し適用することにより、一様な修正二次元検査画像Kを生成できるようにしたものである。
【0036】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る超音波検査用装置の説明図である。第2の実施形態では円柱ないし円筒状の検査対象3を載置した状態で回転する回転機構(ターンテーブル33a)を具備している。そして、検査対象3の上面あるいは側面に超音波トランスデューサ2を固定して水等のカップラントを介して音響結合できるようにし、回転する検査対象3の内部を検査するようにしている。図示していないが、超音波トランスデューサ2と検査対象3の間には水等のカップラントが介在するよう、全体を水槽に入れる等して構成される。
【0037】
図6は、第2の実施形態に係る超音波検査用装置の変形例の説明図である。この変形例では、円柱ないし円筒状の検査対象3の上面あるいは側面に配置される超音波トランスデューサ2を、この検査対象3の周りに沿って回転する機構(ターンテーブル33b)に、固定させた構成となっている。
このターンテーブル33bは、回転駆動機構32によって駆動され、その下面に超音波トランスデューサ2が取り付けられている。
【0038】
また図示していないが、超音波トランスデューサ2と検査対象3は、間に水等のカップラントが介在するよう、全体を水槽に入れる等して音響結合構成されている。また、この例では超音波トランスデューサ2と装置本体1を直接ケーブルで繋いでいるので、ターンテーブル33bは連続的に回転するのではなく、−180度から+180度の範囲の往復動作を行うことを想定している。もしくは、超音波トランスデューサ2に接続されるケーブルの中間にスリップリング等の回転信号伝達機構を設けることで、ターンテーブル33bを連続的に回転させることも可能である。
【0039】
図7は、第2の実施形態に係る超音波検査用装置における画像化方法の説明図である。 第2の実施形態において、超音波トランスデューサ2は検査対象3の上面に平行に配置しても良いし、ある傾きを持って配置しても良い。図7(A)は傾きがある例であり、超音波は、その入射経路34に示すように検査対象3の上面で屈折して検査対象3の内部に入射する。尚、超音波トランスデューサ2と検査対象3の間には水が介在しているものとする。超音波トランスデューサ2により検査対象3内部の画像化される領域は、破線で示した画像化領域35であり、検査対象3のZ軸周りの回転に伴って、予め決められた角度の変位毎に、図7(B)に示されるようなY−Z平面の画像化がなされる。検査対象3の全体を検査する場合は、Z軸周りに1回転させて生成した画像を評価することになり、得られる検査画像は、図7(C)に示されるようにY−Z平面の矩形断面の束となる。
【0040】
この例では検査対象3内部の検査対象の上面と平行な領域の欠陥4を検査することを想定しており、得られた三次元画像情報Qを検査用二次元画像Fに変換する座標情報Tは図7に示されるXYZ座標系となる。そして、図7(A)による三次元画像情報Qに対しこのXYZ座標系を適用し、Z軸に直交する欠陥4の断面面積が最大値を示すX−Y二次元画像が検査用二次元画像Fとして採用されることになる。
【0041】
よって、第2の実施形態において二次元化情報記憶部18(図1)に保存される座標情報Tは、検査データ生成部20で生成された図7(C)に示されるY−Z平面の矩形断面の束から構成される検査用三次元画像Sから、図8(A)のようにY−X矩形表示される検査用二次元画像Fに変換するとともに、図8(B)のようにXc−Yc円形表示される検査用二次元画像Fに変換する機能を備える。そして、二次元画像化部21においては、このような座標情報Tの機能のうちいずれかが選択されて、検査用三次元画像Sから検査用二次元画像Fに座標の変換処理がなされる。
【0042】
図9は、第2の実施形態において図8(A)に示される矩形表示から図8(B)に示される円形表示への変換を実行する演算式の一例である。
ここで、図8(B)に示される円形表示変換後のA座標(xcA、ycA)と、これに対応する図8(A)に示される変換前の矩形表示のA座標(xA、yA)とは図9に示される演算式により関係付けられている。但し、円形表示変換後の画像の12時の方向が変換の基点であり、これを基点に矩形画像を時計方向に円形表示変換するものとする。また矩形画像の長さxeは、1回転分に相当するものとする。
【0043】
図9の演算式中のyofsは円形表示変換の一つのパラメータであり、円形表示した際の元の矩形画像の径方向表示位置を決める。Xc−Yc座標系の各点毎にY−X座標系上の座標を求め、その点の検査用二次元画像を取り出し、Xc−Yc座標系に貼り付ける処理を、Xc−Yc座標系の必要な範囲全体に対して行うことで、矩形画像を円形に変換して表示することが可能となる。なお必要に応じて右辺第1項に係数を乗じてyAを求めることで、スケールの変換等を行うことも可能である。領域定義部16に、yofs、円形変換の方向(時計方向、反時計方向)、あるいは右辺第1項に乗ずる係数等を定義させる機能を持たせ、これを二次元化情報記憶部18に保存し、二次元画像化部21で上記例のような矩形画像の円形表示変換を行わせてもよい。
【0044】
以上説明した通り、本発明の超音波検査用装置により、複雑な検査対象内部の注目領域を詳細に指定し、高精度の二次元画像により欠陥判定させることが可能となり、複雑な検査対象の内部欠陥やボイド、剥離を正確に抽出して検査することが可能となる。
本発明は前記した実施形態に限定されるものでなく、共通する技術思想の範囲内において、適宜変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…装置本体、2…超音波トランスデューサ、3…検査対象、3a…表面、3b…裏面、4…欠陥、5…表面エコー波形、6…裏面エコー波形、7…欠陥エコー波形、10…信号発生部、11…駆動素子選択部、12…信号検出部、13…増幅部、14…A/D変換部、15…信号処理部、16…領域定義部、17…注目領域データ記憶部、18…二次元化情報記憶部、19…判定閾値データ記憶部、20…検査データ生成部、21…二次元画像化部、22…欠陥判別部、23…表示装置、24…制御部、25…シュー、26…圧電変換部、27…カップラント、28…基準面検出部、30…修正情報記憶部、31…修正処理部、32…回転駆動機構、33a,33b…ターンテーブル、34…入射経路、35…画像化領域、Ea…表面エコー像、Eb…裏面エコー像、Ec…欠陥エコー像、P…基準面補正情報、Q…三次元画像情報、R…注目領域、S…検査用三次元画像、T…座標情報、G…閾値情報、H…表示用二次元画像、J…修正情報、K…修正二次元検査画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に超音波を照射してエコー信号を得る超音波トランスデューサと、
前記検査対象の内部における注目領域を定義する領域定義部と、
前記注目領域からの前記エコー信号により認定される欠陥像について設定軸と直交する任意断面のうち欠陥像面積が最大になる面を画像化する二次元画像化部と、を備えることを特徴とする超音波検査用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査用装置において、
前記画像化された二次元画像が前記検査対象に含まれる欠陥に由来するものか否かを画素値に基づき閾値で判別する欠陥判別部を、備える超音波検査用装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波検査用装置において、
前記設定された注目領域を適用する基準面の補正情報を得るために、前記超音波が入射する前記検査対象の表面又は超音波が反射する前記検査対象の裏面を検出する基準面検出部を、備える超音波検査用装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波検査用装置において、
前記画像化された二次元画像を区画するメッシュ毎に予め定義された画像修正を実行する修正処理部を、備える超音波検査用装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波検査用装置において、
前記画像修正の定義は、前記基準面検出部が出力する前記補正情報に基づいて変化することを特徴とする超音波検査用装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の超音波検査用装置において、
前記欠陥判別部は、前記基準面検出部が出力する前記補正情報に基づいて前記閾値を変化させることを特徴とする超音波検査用装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の超音波検査用装置において、
前記欠陥判別部は、前記二次元画像の画像強度に基づいて前記閾値を変化させることを特徴とする超音波検査用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−13092(P2011−13092A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157241(P2009−157241)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】