説明

超音波溶着機

【課題】一つの工具ホーンを手に持ったまま複数の異なる溶着条件の溶着作業を順次行い、作業良否判定結果を示すようにした超音波溶着機を提供する。
【解決手段】一つの工具ホーンに複数の加工部を形成する一方で、各加工部に対応した溶着条件と動作順序をワンセットとして制御部に記憶しておき、溶着作業動作が開始すると、制御部が一つの工具ホーンに対してワンセットとして記憶した動作順序と対応する溶着条件を順次読み出して動作させる。各加工部に対応した溶着条件の管理情報として、各加工部が溶着対象物を押圧し始めたときからの振動エネルギー量を用い、各加工部による振動エネルギー量が各加工部に対応した溶着条件である所定のエネルギー量、時間、ピークパワーを満たしたときは適切な溶着作業が行われたと判定し、判定結果を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着機に関し、特に手動型超音波溶着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波溶着機は、一つの工具ホーンで一つの溶着作業を行うように構成している。そのため、複数の溶着作業を行うためには、複数の工具ホーンを配置して動作させている(例えば、特許文献1参照)。
このことはプレス型超音波溶着機だけでなく、工具ホーンを人が手で持って押し付ける手動型超音波溶着機でも同じで、一台の手動型超音波溶着機には一つの工具ホーンを接続するのが一般的であった。そのため、複数の溶着作業を行うには、複数の手動型超音波溶着機を並べて、複数の工具ホーンを順次持ち替え、その工具ホーンにつながっている手動型超音波溶着機を順次駆動していくことになる。
【0003】
従来の手動型超音波溶着機の中には、図14に示したように、超音波溶着機100の一つの制御部101に二つの工具ホーン102、103を接続して、制御部101によってそれぞれの工具ホーン102、103を順次動作させるようにしたものがある。しかし、制御部101が一つになったとはいえ、工具ホーン102、103を順次持ち替えるのは作業者には負担であった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−156907号公報
【特許文献2】特開平7−323478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手動型超音波溶着機では、溶着作業工程が増えると持ち替える工具ホーンの数が増える。そこで、一つの工具ホーンを手に持ったまま、2以上の溶着作業等を順次行うことが出来れば便利であり、作業効率が向上する。本発明は、一台の手動型超音波溶着機に接続した一つの工具ホーンを複数の溶着作業に共用して用いるようにした手動型超音波溶着機等の超音波溶着機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波溶着機は、一つの工具ホーンに複数の加工部を形成し、各加工部に対応した溶着条件と動作順序、そして同じ動作の繰り返し回数をワンセットの溶着パターンとして制御部に記憶しておき、溶着作業動作が開始すると、制御部がワンセットとして記憶した一つの工具ホーンについての動作順序と対応する溶着条件、そして同じ動作の繰り返し回数を順次読み出して動作させるように構成している。
【0007】
特に、溶着条件の管理情報として、一つの工具ホーンの加工部が溶着対象物を押圧し始めたときからの振動エネルギー量について、工具ホーンの押圧力がばらついたとしても、一定量の振動エネルギーを供給するようにしている。
また本発明は、工具ホーンの加工部で溶着対象物の押圧を開始したときに所定の溶着条件で溶着作業を行い、新たに工具ホーンの加工部が溶着対象物の押圧を開始したときは、次の溶着条件に切り替えて溶着作業するよう構成している。
【0008】
また本発明は、工具ホーンの加工部による振動エネルギー量が所定のエネルギー量に適合したときは溶着動作を停止し、正しい溶着作業が行われていると判定してそのことを通知するようにしている。一方、所定のエネルギー量を満たさずに当該溶着作業を終えたときは、その溶着状態を通知する。
また本発明は、上記構成に加え、作業終了検出手段を設け、作業終了検出手段が溶着作業全体の終了を検出したときに、実施した溶着作業回数と予め定めた実施予定回数が一致しないときは、警告を発するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一台の超音波溶着機に接続した一つの工具ホーンで、2以上の溶着作業等を順次行うことができるので便利である。特に、複数の工具ホーンを準備しないですむ。複数の工具ホーンを持ち替えなくてすむ。また、各加工部に対応した溶着条件と動作順序をワンセットの溶着パターンとして記憶しておくことで、各加工部に応じた溶着作業を簡単かつ確実に実行することができる。さらに溶着パターンとして同じ動作の繰り返し回数を含めると同じ動作が連続するような溶着パターンの情報を簡略化することができる。これらのことから、溶着の作業効率を向上させることができる。
【0010】
また本発明は、溶着対象に応じて所定量の振動エネルギーを自動的に切り替えて供給する管理機能を持たせているため、必要なエネルギー量が異なる複数の溶着対象の溶着作業等を連続的に順次行うことが出来る。
また本発明は、工具ホーンの加工部で溶着対象物の押圧を開始したときに所定の溶着条件で溶着作業を行い、新たに工具ホーンの加工部が溶着対象物の押圧を開始したときは、次の溶着条件に切り替えて溶着作業するので、押圧動作を繰り返すだけで溶着条件を順次切り替える溶着作業を連続して行うことができる。
【0011】
また本発明は、溶着作業ごとに作業良否を判定し、判定結果を提示することができる。これにより溶着の作業品質向上させることができる。
また本発明は、作業終了検出手段により溶着作業全体の終了を検出したときに、実施した溶着作業回数と予定していた実施予定回数が不一致の場合に通知することで、作業者に対して溶着作業回数を間違がえたことを知らせることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の概略構成を示す外観図。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機で溶着する溶着対象物の外観斜視図。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の工具ホーン先端部の外観斜視図。
【図4】(a)本発明の実施の形態1にかかる溶着対象物を分解して示した断面図(b)本発明の実施の形態1にかかる溶着対象物と工具ホーンの位置関係を示した断面図(c)本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の溶着工程を示した図(d)本発明の実施の形態1にかかる溶着対象物の溶着後の状態を示した断面図。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の主要部のブロック図。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の工具ホーンの一部を断面とした側面図。
【図7】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の制御手順を示したフロー図。
【図8】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機で標準的な圧力で押圧して溶着する際のタイミング図。
【図9】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の通知部の表示内容を示す図。
【図10】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機でむらのある圧力で押圧して溶着する際のタイミング図。
【図11】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機で溶着する他の溶着対象物の外観斜視図。
【図12】本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着機の主要部のブロック図。
【図13】(a)本発明の実施の形態2にかかる溶着対象物の溶着手順を示した断面図(b)本発明の実施の形態2にかかる溶着対象物の溶着後の状態を示した断面図。
【図14】従来の超音波溶着機の概略構成を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機である手動型超音波溶着機を図面とともに説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の概略構成を示す外観図である。1は超音波溶着機の本体部であり、超音波電源部、エネルギー制御部、全体制御部などの超音波振動を作り出すための電子制御手段を内蔵している。本体部1からはケーブル2で超音波信号を送り、ケーブル2に接続したコンバータ3で超音波信号を機械的な超音波振動に変換し、コンバータ3に接続した工具ホーン4を超音波振動させるよう構成している。なお、コンバータ3と工具ホーン4の間には、振幅を調整するブースタ等を組み込むことが行われるが、ここでは説明を省略する。
【0014】
図1に示した工具ホーン4は略円柱形をしていて根元が太く先端を細く尖らせた形をしている。工具ホーン4の端面の中央に、かしめ溶着用の円錐型をした突起部4aと、端面の外周縁にスポット溶着用の環状をなした連続突起部4bを設けている。これらの突起部4aと連続突起部4bをそれぞれ溶着対象物に順次押圧して、かしめ溶着とスポット溶着という2つの溶着作業を別個独立した作業として行うようにしている。工具ホーン4の突起部4aと連続突起部4bがよく分かるように、工具ホーン4の先端部の斜視図を図3に示す。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機で溶着する溶着対象物(ワーク)の一つを例示した外観斜視図である。図2は、2つの棒状突起5a、5bを上方に突出したプラスチック板5に、孔開きの不織布6を被せた状態を示している。
図4に、本発明の実施の形態1にかかる溶着対象物、溶着対象物と工具ホーンの位置関係、溶着工程、そして溶着対象物の溶着後の断面などを示す。図4(a)に溶着対象物を上下に分解して示したとおり、プラスチック板5に設けた2つの棒状突起5a、5bに、不織布6に開けた2つの孔6a、6bをはめ込んで重ねる。工具ホーン4は、図4(b)のように、溶着対象物の上方から下方に1ケ所ずつ押圧して溶着する。
【0016】
実施の形態1の溶着工程は、図4(c)で示すように、溶着対象物に対して工具ホーン4を押し付け、上方に上げ、水平方向に移動して再び押し付ける動作を繰り返して行う。例えば工具ホーン4で溶着する順序を1から5の番号を付けて示すと、「1:右側かしめ溶着」、「2:左側かしめ溶着」、「3:スポット溶着」、「4:スポット溶着」、「5:スポット溶着」というような順で5つの溶着作業を順次行う。このことは、超音波溶着機の本体部1としては、かしめ溶着を2回、スポット溶着を3回行うというように、所定内容の溶着作業を、所定の溶着条件で所定回数繰り返すことを意味する。
【0017】
図4(d)に溶着対象物の溶着後の断面を示す。図4(d)で、Aは棒状突起5aの上端をかしめ溶着した状態を示し、Bは棒状突起5bの上端をかしめ溶着した状態を示し、Cは不織布6をプラスチック板5にスポット溶着した状態を示している。
図5は、本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の主要部をブロック図として示したもので、本体部1と本体部1から出したケーブル2の先にコンバータ3と工具ホーン4を接続している。本体部1の中には、超音波電源部10、エネルギー制御部11、全体制御部12などの超音波振動を作り出すための電源手段と制御手段を持ち、多数の溶着作業を選択して行えるように各種の溶着作業パターンを記憶した溶着パターン記憶部13を全体制御部12に接続している。全体制御部12は超音波溶着機の全体的な制御を行うもので、マン・マシン・インターフェイスである入出力部(I/O部)14と液晶表示装置やブザーなどからなる通知部15に接続している。
【0018】
なお、超音波電源部10は、工具ホーン4の振幅が一定になるように押圧力の大きさに応じて大きな電力を、あるいは小さな電力を供給するようにしている。これは、工具ホーン4を溶着対象物に対して小さい圧力で押圧しているときは小さな電力供給でも所定の振幅で超音波振動するのであるが、大きい圧力で押圧したときは工具ホーン4の振動動作に対する抵抗が増して振動動作が鈍るからである。そのため、小さい圧力で押圧しているときは小さな電力を供給するが、大きい圧力で押圧したときは、大きな電力を供給して所定の振幅で超音波振動するようにしている。
【0019】
一方、エネルギー制御部11は、全体制御部12の制御のもと超音波電源部10を直接的に制御する。エネルギー制御部11は、押圧開始時点から工具ホーン4に供給される電力を積算し、積算した総量が所定値になったときに、溶着対象物に所定の振動エネルギーが供給されたとして工具ホーン4への電力供給を停止する。なお、本明細書で「エネルギー制御」とは、工具ホーン4に供給される電力を積算し、積算した総量が所定値になったときに、所定の振動エネルギーが供給されたとして工具ホーン4への電力供給を停止する制御のことをいうとして、説明を続ける。
【0020】
既に説明したように、超音波電源部10は、工具ホーン4の溶着対象物に対する押圧力が小さいと、小さい電力を供給するため、電力の積算値は比較的長時間で所定値に達する。また超音波電源部10は、工具ホーン4の溶着対象物に対する押圧力が大きいと、大きい電力を供給するため、電力の積算値は短時間で所定値に達する。
また、エネルギー制御部11は、工具ホーン4の溶着対象物に対する押圧力や、供給した電力の積算値などの制御情報をもとに溶着状態の良否を判定する溶着良否判定部16に接続していて、溶着良否判定部16の判定結果に基づいてエネルギー制御部11が超音波電源部10の制御を行うようにしている。
【0021】
図5では、工具ホーン4が溶着対象物を押圧したことを検出する工具ホーン動作検出手段17を工具ホーン4の近傍に取り付け、工具ホーン動作検出手段17の信号を全体制御部12に送るようにしている。なお、工具ホーン動作検出手段17はマイクロスイッチや圧力センサ、あるいは他の近接感知センサや近接感知スイッチを用いてもよい。
図6に、工具ホーン動作検出手段17として、マイクロスイッチ18を工具ホーン4等と一体的に設けたときの構成図を示す。図6では、振動手段としての工具ホーン4、固定ホーン40、そしてコンバータ3を一体に連結し、コンバータ3の外周にスライド可能なスリーブ19を設けている。スリーブ19は、コンバータ3の外周に沿って軸方向にスライドする。なお、スリーブ19の内側の底部にはストッパ19aを突設してある。スリーブ19は、ストッパ19aの先端がコンバータ3に突き当たるまでスライド動作する。また、スリーブ19の内側にマイクロスイッチ18を一体に固定している。コンバータ3とスリーブ19の間には、バネ20を入れている。
【0022】
作業者がスリーブ19を手で持って工具ホーン4を図示しない溶着対象物の表面に押圧すると、スリーブ19によりバネ20が圧縮される。スリーブ19を押す押圧力が所定値以上になるとスリーブ19とコンバータ3が接近してマイクロスイッチ18がオンする。マイクロスイッチ18がオンすると、溶着するための振動動作を開始する。
スリーブ19とマイクロスイッチ18とバネ20は、溶着作業を自動的に開始させる、いわゆる「オートトリガー」として機能し、工具ホーン4で溶着対象物をプッシュすると溶着作業を開始する、いわゆる「プッシュスタート」を行う。
【0023】
本発明は上記の構成を採用しているため、作業者によってスリーブ19を押し下げる力が違っていたとしても、所定以上の押圧力が加わったときにマイクロスイッチ18がオンするので、作業者がスリーブ19を強い力で押し下げても、弱い力で押し下げてもマイクロスイッチ18がオンしたときに、振動エネルギーの供給を開始する。
なお、バネ20のバネ定数を小さくしておくと、小さい力を加えたときにマイクロスイッチ18がオンし、バネ20のバネ定数を大きくしておくと、大きい力を加えたときにマイクロスイッチ18がオンする。バネ20を交換することで最低押圧力の変更と確保ができる。
【0024】
次に、図7のフロー図を用いて、本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の動作を説明する。最初に、入出力部14の図示しない起動ボタンにより超音波溶着機の起動を指示する。このことにより、本体部1の全体制御部12が起動する(ステップS1)。次いで、同じく入出力部14を用いて、溶着作業の溶着パターンを設定する(ステップS2)。溶着パターンの設定は、入出力部14を用いて溶着作業内容と順番を例えば「1:かしめ溶着」、「2:かしめ溶着」、「3:スポット溶着」、「4:スポット溶着」、「5:スポット溶着」というように、かしめ溶着2回、スポット溶着3回の溶着作業内容と順番、そして繰り返し回数を設定する。また各溶着作業ごとに供給する電力の総量、すなわち振動エネルギーの量も設定する。これらの条件は溶着パターン記憶部13に記憶する。
【0025】
作業者が工具ホーン4にスライド可能に取り付けたスリーブ19を手に持ち、溶着対象物に向けて押圧すると、スリーブ19がスライドしてマイクロスイッチ18がオンする(ステップS3)。溶着作業は、設定した溶着作業内容を順番どおり行うので、ステップS2で設定した溶着作業内容と順番に対応した溶着パターンに切り替えて(ステップS4)、超音波電源部10から該当する溶着パターンの振動エネルギーを送出する。図7では、最初に、かしめ溶着である溶着パターンAを選択し(ステップS5)、工具ホーン4にかしめ溶着用の振動エネルギーを送出して溶着動作を開始する(ステップS8)。溶着良否判定部16は、溶着動作を監視する。溶着良否判定部16は、溶着動作の開始後に供給した振動エネルギー量が所定量に達したか否かを判定する。エネルギー制御部11は、一つの溶着動作の開始後に供給した振動エネルギー量が所定量に達したときに、電力供給を停止して振動エネルギー送出を停止する(ステップS9)。全体制御部12は、振動エネルギー送出を停止した溶着動作が、溶着パターンの最終作業でないことを確認し(ステップS10)、全動作が終了していない場合には(ステップS10のN)、通知部15で一つの溶着動作が終了したことを画面表示やブザー等の音声で通知する(ステップS11)。
【0026】
なお、溶着良否判定部16は、ステップS9で説明した溶着動作の開始後に供給した振動エネルギー量だけでなく、工具ホーン4の溶着対象物に対する押圧力などの制御情報も加えて溶着状態の良否を判定するようにしてもよい。
そして、作業者が工具ホーン4を上方に持ち上げて溶着対象物から離し、水平方向に工具ホーン4をずらした後、再び溶着対象物を押圧すると、マイクロスイッチ18がオンになり(ステップS3)、次の溶着動作(ステップS4〜ステップS9)を行う。以上の動作を繰り返し、かしめ溶着の動作として溶着パターンAを2回、そしてスポット溶着の動作として溶着パターンBを3回行った後、最終作業の溶着パターンが終了したことを確認すると(ステップS10)、全体制御部12は、作業終了通知部15で画面表示やブザー等の音声による通知を行い、超音波電源部10をはじめ全ての機能ブロックの動作を終了する(ステップS12)。なお、本実施の形態1では、溶着パターンA及びBのみを行う溶着作業としたが、その他の溶着パターンとして、例えば溶着パターンCを有している場合は、溶着パターンCも実行する(ステップS7)。
【0027】
以上が、本発明の実施の形態1の超音波溶着機の動作である。
なおステップS9で溶着動作の開始後に供給した振動エネルギー量が所定量に達したか否かを判定するが、振動エネルギー量だけでなく、振動エネルギー量および時間、ピークパワー値についても所定量に達したか否かを判定し、全ての値が満たされたときに、電力供給を停止して振動エネルギー送出を停止するとともに、該当する溶着パターンの溶着作業が良好に行われたことを通知部15で通知する。
【0028】
次に、図8のタイミング図を用いて溶着動作の工具ホーン4の押圧状態と超音波電源部10の駆動状態、そして溶着対象物に供給した振動エネルギー量の関係を説明する。図8は、作業者が、工具ホーン4を溶着対象物に標準的な力で押圧したときのタイミング図を示している。図8中、「P」は工具ホーン4が溶着対象物を押圧する圧力の変化を時系列に示している。すなわち、1回目は長めの時間、一定圧力(P1)をかけ、2回目から4回目までは比較的短めの時間、一定圧力(P1)をかけ、5回目に長めの時間、一定圧力(P1)をかけている。図8中、「W」は、工具ホーン4に与えたパワー(電力)を示している。また図8中、「J」はパワーを積算した値をエネルギーとして示している。
【0029】
図8で、工具ホーン4に圧力(P1)がかかると(図中(a))、超音波電源部10が工具ホーン4に電力を与え、工具ホーン4を介して振動エネルギーを溶着対象物に供給(ステップS10)することで溶着作業が始まる(図中(b))。溶着対象物に供給された振動エネルギーが一番目の溶着作業に応じた所定量に達すると、超音波電源部10の振動エネルギー供給を停止する(図中(c))。そして例えば図9に示したように、一番目の溶着作業が終了したことを通知部15で通知する(図中(d))。なお、通知部15では表示とともに、ブザー等の音声により溶着作業が終了したことを提示する。
【0030】
その後、作業者が工具ホーン4を溶着対象物から離して再び押圧すると(図中(e))、超音波電源部10が二番目の溶着作業のための電力を工具ホーン4に与え、工具ホーン4を介して振動エネルギーを溶着対象物に供給し、二番目の溶着作業が始まる(図中(f))。溶着対象物に供給された振動エネルギーが二番目の溶着作業に応じた所定量に達すると、超音波電源部10の電力供給を停止して振動エネルギー供給を停止する(図中(g))。そして二番目の溶着作業が終了したことを通知部15で通知する(図中(h))。以下、同様に三番目から五番目の溶着作業を順次行う。溶着作業ごとにどれだけの振動エネルギー供給を行うかは、全体制御部12が、溶着パターン記憶部13に登録した溶着内容と順番、繰り返し回数、溶着内容に応じた振動エネルギー量を読み出してエネルギー制御部11に制御させる。図8では、一番目と五番目のかしめ溶着は大きな振動エネルギー量を要し、二番目から四番目のスポット溶着は小さな振動エネルギー量で済むことを示している。
【0031】
図10は、他の作業者が工具ホーン4を押圧の初めと終わりに大きい力を加えるという時間的にうねりのあるばらついた押圧力(P2)で、且つ、ばらついたタイミングで押圧したときのタイミング図を示す。図10を図8と比べてみると、工具ホーン4の押圧力(P2)が標準的な押圧力(P1)と違って、押圧力の値が一定でなく、押すタイミングもばらついている。しかし、工具ホーン4で溶着対象物が押圧されると所定圧力(P1)が加わった時点で(図中(a))、工具ホーン動作検出手段17がオンし、溶着パターン記憶部13に登録した溶着内容と順番、繰り返し回数、溶着内容に応じた所定の振動エネルギー量を供給する溶着作業が始まる(図中(b))。そして溶着対象物に供給された振動エネルギーが所定量に達すると超音波電源部10が電力供給を停止する(図中(c))。
【0032】
なお既に超音波電源部10について説明したように、超音波電源部10は、工具ホーン4の振幅が一定になるように、工具ホーン4の溶着対象物に対する押圧力が大きいと大きい電力を工具ホーン4に供給する。図10の押圧力(P2)は、図8の押圧力(P1)に比べて大きいため、大きい電力が供給され、短い時間で電力の積算値が所定の値に達する。そのため、図10のW(電力)とJ(エネルギー)のカーブは図8のときに比べて、急峻に立ち上がり、短時間で供給を停止していることを示している。
【0033】
結局、工具ホーン4の押圧力とタイミングがばらついたとしても、所定圧力に達したときにマイクロスイッチ18がオンして電力供給が始まる。また、電力の積算値が所定の値に達したときに電力供給を停止する。そのため、供給される振動エネルギーがばらつかず、安定した溶着強度が得られる。
以上説明したとおり、本発明の実施の形態1の超音波溶着機によれば、複数の溶着動作の溶着内容と作業順番、繰り返し回数等を予め溶着パターン記憶部13に登録しておき、全体制御部12で読み出して溶着動作を行わせると同時に、各溶着動作の振動エネルギー供給を工具ホーン4で溶着対象物を所定圧力で押圧したときに開始して、所定のエネルギー量に達したときに電力供給を停止し、振動エネルギーの供給を停止している。また、溶着作業ごとに作業良否を判定している。そのため、作業者が工具ホーン4を手に持ったまま、溶着対象物の押圧を順次繰り返せば、複数の溶着作業ごとにそれぞれ必要な量の振動エネルギーを順番に安定的に供給して、溶着作業を行うことができる。各加工部に対応した溶着条件と動作順序をワンセットの溶着パターンとして記憶しておくことで、各加工部に応じた溶着作業を簡単かつ確実に実行することができる。さらに溶着パターンとして同じ動作の繰り返し回数を含めていることで同じ動作が連続するような溶着パターンの情報を簡略化することができる。これらのことから、溶着作業の作業効率を向上させることができるとともに、溶着作業品質を一定に保つことができる。
【0034】
なお、以上の説明では、図2に示した一枚のプラスチック板5上に不織布6を載せて、カシメ溶着作業とスポット溶着作業を行う例を説明したが、本発明は、図11に示したように、一枚のプラスチック板50上に不織布60とプラスチック部品7を異なる場所に配置して、異なる溶着作業を所定の順番で行うときにも適用できる。図11の場合は、棒状突起50aを有するプラスチック板50上に孔開きプラスチック部品7を載せた状態で、2箇所の棒状突起50aをかしめ溶着し、その後、不織布60の3箇所をスポット溶着する溶着作業を行う。本体部1としては、かしめ溶着を2回繰り返し、その後、スポット溶着を3回繰り返す溶着作業であり、図2で行った溶着作業と同じ溶着内容、順番、繰り返し回数であることから、溶着パターン記憶部13に記憶してある溶着条件を読み出して、そのまま使うこともできる。
【0035】
(実施の形態2)
次に、本発明の超音波溶着機の実施の形態2を説明する。実施の形態2にかかる超音波溶着機の基本的な構成は、実施の形態1と同じであるが、実施の形態1の構成に、作業終了センサ22を追加して全体制御部12に接続している点、全体制御部12で実施した溶着作業回数を計数(カウント)し、作業終了センサ22から信号を得た時点で計数した溶着作業回数と実施を予定していた作業回数を照合し、不一致のときに警告を発するよう構成した点に特徴がある。なお、溶着実施回数が予定回数よりも多くなることもあり得る。その場合も作業終了時に警告することとしている。
【0036】
以下、既に図2で示したプラスチック板5に孔開きの不織布6を被せた溶着対象物について、作業終了センサ22を追加した場合を説明する。なお、予定している溶着作業として、図4(c)で説明したように「1:右側かしめ溶着」、「2:左側かしめ溶着」、「3:スポット溶着」、「4:スポット溶着」、「5:スポット溶着」というような順で5つの溶着作業を順次行う、言い換えると、かしめ溶着を2回、スポット溶着を3回行うとして説明する。
【0037】
作業終了センサ22は、図13(a)に示したように、プラスチック板5を載せる作業台であるベンチ21に埋め込んである。作業終了センサ22は、押下式のスイッチであり、ベンチ21上に溶着対象が載っていないときはベンチ21上面より突出し、溶着対象がベンチ21上に載せられると、溶着対象により押下されるものである。図13(a)で「1:かしめ溶着」、「2:かしめ溶着」、「3:スポット溶着」、「4:スポット溶着」というように、かしめ溶着を2回、スポット溶着を2回実施し、溶着作業回数を計数した時点で、残っているあと1回分のスポット溶着をしないで、図13(b)のように、ベンチ21上に置かれたプラスチック板5を取り外した場合、作業終了センサ22は、プラスチック板5が取り外されたことを検出する。全体制御部12は、作業終了センサ22からの信号を得ると、計数した実施済の溶着作業回数と予定していた溶着作業回数を照合する。この場合、溶着作業回数が足りず一致しないため、通知部15で表示やブザー音等の音声により警告する。
【0038】
手動型超音波溶着機で作業する場合は、溶着作業回数を間違えることがある。本発明は、このような手動型超音波溶着機に特有な作業回数忘れに起因する作業ミスが起きたことを異常として検出し、警告することができる。作業回数忘れに起因する作業ミスは、上記したように作業回数が少ない場合だけでなく、作業回数が多い場合も作業ミスとして警告する。本発明は、いわゆるポカよけ機能を持つ超音波溶着機を実現している。
【0039】
上記では、作業終了センサ22をベンチ21に埋め込み、ベンチ21から溶着対象が取り外されたことを検出するようにしていたが、作業者が溶着作業終了後に工具ホーンを所定位置に戻すようにして、工具ホーンを戻す場所に作業終了センサ22であるマイクロスイッチや近接センサ等を配置して、作業終了状態を検出するようにしてもよい。
また、上記工具ホーン4は、加工部として突起部4aと連続突起部4bを備えた構成であるが、当該工具ホーン4の加工部の構成はこれに限られるものではない。例えば、上記連続突起部4bの外側にさらに環状の連続突起部を形成する等して、加工部を3つ以上備えた構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、一つ又は複数の溶着作業を所定の順番で順次行う超音波溶着機に適用することが出来、特に押圧力や押圧タイミングが異なるいろいろな作業者によって操作される手動型超音波溶着機に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 本体部
2 ケーブル
3 コンバータ
4 工具ホーン
10 超音波電源部
11 エネルギー制御部
12 全体制御部
13 溶着パターン記憶部
14 入出力部
15 通知部
16 溶着良否判定部
17 工具ホーン動作検出手段
18 マイクロスイッチ
19 スリーブ
22 作業終了センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給に応じて超音波振動する複数の加工部が形成された工具ホーンと、
前記工具ホーンへ電力を供給する超音波電源部と、
前記超音波電源部から前記工具ホーンへの電力供給を制御するエネルギー制御手段と、
前記工具ホーンによる溶着対象への溶着動作を検出する工具ホーン動作検出手段と、
前記工具ホーンの各加工部に対応した、少なくとも溶着条件、動作順序を有した情報からなる溶着パターンを複数記憶する溶着パターン記憶手段と、
前記工具ホーン動作検出手段により溶着動作が検出されるごとに、前記溶着パターン記憶手段から前記動作順序に応じた溶着パターンを選択し、選択した溶着パターンの溶着条件に応じた振動エネルギーを溶着対象物に供給するよう前記エネルギー制御部を制御する全体制御部と、を備えることを特徴とする超音波溶着機。
【請求項2】
更に、前記エネルギー制御部に溶着良否判定部を接続し、
前記溶着良否判定部で、前記工具ホーンの加工部が溶着対象物を押圧し始めてから当該溶着対象物に供給した振動エネルギー量が、前記溶着パターンに応じた所定のエネルギー量に達したか否かを判定し、所定のエネルギー量に達したときにときには、前記エネルギー制御部が、当該溶着パターンにおける溶着動作を停止することを特徴とする請求項1に記載の超音波溶着機。
【請求項3】
更に、前記全体制御部に、溶着作業者に溶着状態を通知する通知部を接続し、
前記エネルギー制御部は、前記工具ホーンの加工部が溶着対象物を押圧し始めてから当該溶着対象物に供給した振動エネルギー量が、前記溶着パターンに応じた所定のエネルギー量を満たして当該溶着作業を終えたときは、前記通知部により溶着状態を通知することを特徴とする請求項2記載の超音波溶着機。
【請求項4】
更に、前記全体制御部に、溶着作業者に溶着状態を通知する通知部を接続し、
前記エネルギー制御部は、前記工具ホーンの加工部が溶着対象物を押圧し始めてから当該溶着対象物に供給した振動エネルギー量が、前記溶着パターンに応じた所定のエネルギー量を満たさずに当該溶着作業を終えたときは、前記通知部により溶着状態を通知することを特徴とする請求項2記載の超音波溶着機。
【請求項5】
更に、前記全体制御部に、溶着対象物全体に対する溶着作業を終了させたことを検出する作業終了検出手段を接続し、
前記全体制御部は、溶着作業の実施回数を計数するとともに、前記溶着対象物全体に対する溶着作業の実施予定回数が予め設定されており、前記作業終了検出手段により溶着作業を終了させたことを検出した時に溶着作業の実施回数が前記実施予定回数に一致しないときには、そのことを前記通知部により通知することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の超音波溶着機。
【請求項6】
前記溶着パターン記憶手段は、前記溶着パターンの情報として、前記工具ホーンの各加工部に対応した同じ動作の繰り返し回数を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の超音波溶着機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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