超音波照射装置
【課題】超音波照射目標位置に対する超音波発生源の位置を固定する。
【解決手段】挿入部260に設置された音源270は、焦点Fに集束する集束超音波を射出する。挿入部260の先端部に配置された第1のバルーン210には、液体タンク190に蓄えられた液体が、第1のポンプ170及び第2のポンプ175によって、第1のチューブ230を介して、注入及び排出される。これにより、第1のバルーン210は、膨張及び収縮する。同様に、挿入部260の先端部に配置された第2のバルーン220は、第2のチューブ235を介して、その内部に液体が注入及び排出され、膨張及び収縮する。壁面910と接する第1のバルーン210は、音源270と壁面910との距離を規定する。第1のバルーン210と異なる位置で壁面910と接する第2のバルーン220は、第1のバルーン210とともに、壁面910に対する挿入部260の位置を固定する。
【解決手段】挿入部260に設置された音源270は、焦点Fに集束する集束超音波を射出する。挿入部260の先端部に配置された第1のバルーン210には、液体タンク190に蓄えられた液体が、第1のポンプ170及び第2のポンプ175によって、第1のチューブ230を介して、注入及び排出される。これにより、第1のバルーン210は、膨張及び収縮する。同様に、挿入部260の先端部に配置された第2のバルーン220は、第2のチューブ235を介して、その内部に液体が注入及び排出され、膨張及び収縮する。壁面910と接する第1のバルーン210は、音源270と壁面910との距離を規定する。第1のバルーン210と異なる位置で壁面910と接する第2のバルーン220は、第1のバルーン210とともに、壁面910に対する挿入部260の位置を固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波照射装置、特に内視鏡の挿入部に超音波発生源を配置する超音波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織に集束超音波を照射し、例えば癌細胞等の病変部を焼灼する処置が知られている。このような処置を体内で行うため、集束超音波発生源を内視鏡の体内に挿入する部分に配置した超音波照射装置が知られている。このような超音波照射装置に関する技術として、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。この技術では、集束超音波発生源を内視鏡に配置した超音波照射装置において、超音波発生源近傍にバルーンが取り付けられている。このバルーンの大きさによって、集束超音波発生源と超音波照射の対象である壁面との距離を規定する。即ち、集束超音波の焦点位置と、例えば病変部等、超音波を照射したい目標位置との距離を規定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3850094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した集束超音波によって病変部を焼灼するような処置においては、超音波を照射したい目標位置に集束超音波の焦点位置を一致させることが求められる。しかしながら、例えば特許文献1に開示されている技術を用いても、胃の内部等、比較的広い空間においては、超音波発生源が設置されている内視鏡の挿入部の位置を固定することが困難である。即ち、集束超音波を照射したい目標位置と、集束超音波の焦点位置とを一致させた状態で、集束超音波源の位置を維持することが困難である。
【0005】
そこで本発明は、目標位置に対する超音波発生源の相対位置を固定できる超音波照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすため、本発明の超音波照射装置の一態様は、少なくとも一部を壁面が覆う空間において、対象領域に向けて超音波を射出する、保持部材に保持された音源と、前記壁面の第1の領域と接して前記音源と前記対象領域との距離を設定値に保つ、前記保持部材に設けられた第1の支持部材と、前記壁面のうち前記第1の領域以外の第2の領域と接して、前記第1の支持部材と共に前記音源を該壁面に対して固定する、前記保持部材に設けられた第2の支持部材と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目標位置と超音波発生源との距離を保つ第1の支持部材と、第1の支持部材と別の場所で、超音波発生源を支持する第2の支持部材とを有するので、目標位置に対する超音波発生源の相対位置を固定できる超音波照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波照射装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の別の構成例を示す図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図12】本発明の第6の実施形態に係る超音波照射装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波照射装置は、集束超音波を照射できる内視鏡型の超音波照射装置である。例えば、本超音波照射装置は、体内に挿入され、標的位置の組織(例えば腫瘍等)に集束超音波を照射し、当該組織を焼灼する。図1に第1の実施形態に係る超音波照射装置の構成を示すブロック図を示す。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波照射装置は、被検体の外部から本超音波照射装置の各部を制御するコントロール部100と被検体内に挿入されるプローブ部200とを有する。プローブ部200は、例えば胃に挿入される細長い形状をした挿入部260を有している。挿入部260の、被検体内に挿入される側を先端側と、コントロール部100側を基端側と称することにする。挿入部260の先端付近の周面には、超音波を射出する音源270が配置されている。音源270は、例えばチタン・ジルコン酸塩(PZT)等の圧電素子で構成されている。音源270の超音波を射出する面は、例えば凹面形状をしており、音源270から射出される超音波は、焦点Fに集束する集束超音波となる。
【0011】
また、挿入部260の音源270付近には、挿入部260の先端部を例えば胃内に固定するための、第1のバルーン210と第2のバルーン220とが配置されている。本実施形態では、第1のバルーン210は、音源270の超音波を射出する面側に膨張及び収縮するように配置されている。一方、第2のバルーン220は、第1のバルーン210と挿入部260を挟んで対峙する位置に、膨張及び収縮するように配置されている。第1のバルーン210と第2のバルーン220とは、例えばラテックスゴムやその他のゴム等の膨張や収縮が可能な材料で構成されている。
【0012】
第1のバルーン210は、第1のチューブ230と接続している。第1のチューブ230は、挿入部260の内部を挿通しコントロール部100に接続されている。第1のバルーン210の内部には、第1のチューブ230を介して、液体が注入及び排出される。この液体の注入及び排出によって、第1のバルーン210は、膨張及び収縮する。ここで、液体は、例えば生理食塩水や脱気水である。同様に、第2のバルーン220は、挿入部260の内部を挿通し、コントロール部100と接続する第2のチューブ235と接続している。第2のバルーン220の内部には、第2のチューブ235を介して、液体が注入及び排出され、第2のバルーン220は、膨張及び収縮する。また、第1のバルーン210内には、第1のバルーン210内の液体の圧力を計測するための、第1の圧力センサ240が設置されている。同様に、第2のバルーン220内には、第2のバルーン220内の液体の圧力を計測するための、第2の圧力センサ245が設置されている。
【0013】
コントロール部100は、制御部110と、入力部120と、記憶部130と、音源制御部140と、音源駆動部150と、ポンプ制御部160と、第1のポンプ170と、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185と、液体タンク190とを備える。制御部110は、入力部120と、記憶部130と、音源制御部140と、ポンプ制御部160と接続している。制御部110は、本超音波照射装置全体の制御を行う。入力部120は、例えばキーボード等であり、使用者からの指示を入力する。記憶部130は、本超音波照射装置の制御等に関わる情報を記憶しており、制御部110の求めに応じて、適宜情報を制御部110に出力する。音源制御部140は、音源270の出力等の制御を行う。音源駆動部150は、音源制御部140の制御の下、音源270を駆動する。
【0014】
ポンプ制御部160は、第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、及び第2の三方弁185の動作を制御する。また、ポンプ制御部160は、第1の圧力センサ240と接続しており、第1の圧力センサ240の出力値を入力し、第1のバルーン210内の液体の圧力を取得する。同様に、ポンプ制御部160は、第2の圧力センサ245と接続しており、第2の圧力センサ245の出力値を入力し、第2のバルーン220内の液体の圧力を取得する。
【0015】
液体を蓄える液体タンク190は、第1のポンプ170に接続されている。液体タンク190には、図示しない液体温度調整器及び脱気装置が含まれている。第1の三方弁180は、第1のチューブ230、第1のポンプ170、及び第2のポンプ175に接続されている。第2の三方弁185は、第2のチューブ235、第1のポンプ170、及び第2のポンプ175に接続されている。
【0016】
第1のポンプ170は、液体を、液体タンク190から第1の三方弁180及び第2の三方弁185の方へ送出したり、逆に、第1の三方弁180及び第2の三方弁185から液体タンク190の方へ送出したりする。したがって、第1の三方弁180を、第1のポンプ170と第1のチューブ230とを接続するようにし、第2の三方弁185を、第1のポンプ170と第2のチューブ235とを接続するようにすると、第1のポンプ170は、液体を液体タンク190から第1のチューブ230及び第2のチューブ235の方へ送出したり、逆に、液体を第1のチューブ230及び第2のチューブ235から液体タンク190の方へ送出したりすることができる。その結果、液体の移動により、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積を変化させることができる。
【0017】
第2のポンプ175は、液体を第1の三方弁180の方から第2の三方弁185の方へ、及びその逆の方へ、送出することができる。したがって、第1の三方弁180を第2のポンプ175と第1のチューブ230とを接続するようにし、第2の三方弁185を第2のポンプ175と第2のチューブ235とを接続するようにすると、第2のポンプ175は、液体を第1のチューブ230の方から第2のチューブ235の方へ、及びその逆の方へ、送出することができる。その結果、第1のバルーン210と第2のバルーン220との間で、液体を移動させることができる。即ち、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることができる。このように、第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、及び第2の三方弁185の動作を制御することで、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とを自在に調整することができる。このように、本実施形態では、第1のバルーン210に充填されている液体と第2のバルーン220に充填されている液体とは、同一の液体である。
【0018】
このように、例えば挿入部260は、保持部材として機能し、例えば音源270は、音源として機能し、例えば第1のバルーン210は、第1の支持部材として機能し、例えば第2のバルーン220は、第2の支持部材として機能し、例えば第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、及び第2の三方弁185は、流体調節手段として機能し、例えばポンプ制御部160は、制御手段として機能する。
【0019】
次に本実施形態に係る超音波照射装置の動作を説明する。使用者は、本超音波照射装置の挿入部260を、例えば、被検者の口から食道を通じて胃に挿入する。このとき、第1のバルーン210及び第2のバルーン220には、液体は注入されておらず、第1のバルーン210及び第2のバルーン220は、収縮し、挿入部260内に収まっている。したがって、プローブ部200は、例えば、食道を通るほど十分細い形態となる。使用者は、集束超音波を照射したい部分に対して、音源270の超音波を射出する面を対向させる。その状態で、本超音波照射装置に対して、プローブ部200を固定するように、入力部120から指示を入力する。
【0020】
入力部120は、使用者のプローブ部200を固定することの指示を入力し、それを制御部110に出力する。制御部110は、ポンプ制御部160に、プローブ部200を固定するための制御を開始する指示を出力する。ポンプ制御部160は、制御部110から、指示を入力する。ポンプ制御部160は、第1のポンプ170と、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185との動作を制御し、第1のバルーン210及び第2のバルーン220に液体を注入して、第1のバルーン210及び第2のバルーン220を膨張させる。
【0021】
第1のポンプ170は、ポンプ制御部160の制御の下、液体タンク190に貯蓄されている適度に加温もしくは冷却、及び良く脱気された液体を、第1のチューブ230及び第2のチューブ235の方へ送出する。また、このとき、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185とを調整することによって、第1のバルーン210の大きさと、第2のバルーン220の大きさとはそれぞれ調整される。その結果、挿入部260の先端部の位置が維持されたまま、第1のバルーン210及び第2のバルーン220は、例えば胃壁等の、壁面910に接する。これらの動作において、ポンプ制御部160は、第1の圧力センサ240及び第2の圧力センサ245の出力値に基づいて、第1のバルーン210内の液体の圧力と、第2のバルーン220内の液体の圧力とを取得する。そして、焦点Fが目標位置に一致かつ固定されたことを確認した後、第1のバルーン210内の液体の圧力と、第2のバルーン220内の液体の圧力とを取得し、以後、これらの値が維持されるように、第2のポンプ175の動作を制御し、液体の送出を行う。
【0022】
第1のバルーン210及び第2のバルーン220が、所定の力で壁面910を押すことで、第1のバルーン210及び第2のバルーン220が配置されている挿入部260は、壁面910に対して固定される。この際、第1のバルーン210により挿入部260を押す力と第2のバルーン220により挿入部260を押す力とが等しいので、挿入部260の先端部の位置は、第1のバルーン210側に偏ったり、第2のバルーン220側に偏ったりしない。なお、第1のバルーン210が挿入部260に接触する面積と第2のバルーン220が挿入部260に接触する面積が常に等しくなるように構成すれば、第1のバルーン210内の液体の圧力と第2のバルーン220の液体の圧力は常に等しくなる。
【0023】
使用者は、集束超音波を照射したい位置と、焦点Fの位置とが重なり合うことを確認したら、超音波を照射する指示を、入力部120に入力する。なお、使用者は、挿入部260が壁面910に対して固定されている様子などを、体外から超音波を照射して体内を観察する超音波診断装置等を用いて、確認することができる。
【0024】
超音波照射の指示を入力された入力部120は、当該指示を制御部110に出力する。制御部110は、音源制御部140に、音源に超音波の射出を開始させる指示を出力する。音源制御部140は、制御部110の指示を入力し、この指示に基づいて超音波照射の時間、強度等を決定し、音源駆動部150を制御する。音源駆動部150は、音源制御部140の制御の下、音源270を駆動する。音源270は、音源駆動部150に駆動され、集束超音波を射出する。
【0025】
また、例えば超音波の照射位置を奥から手前へ又は手前から奥へ移動させる場合等は、使用者はその旨を入力部120を用いて本超音波照射装置に入力する。超音波の照射位置を変化させる指示を入力した入力部120は、その指示を制御部110に出力する。制御部110は、入力した超音波の照射位置を変化させる指示に基づいて、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とをどのように変化させるか決定する。即ち、第1のバルーン210の体積の増加量又は減少量と、第2のバルーン220の体積の増加量又は減少量とを決定する。例えば、挿入部260の位置を第1のバルーン210側から第2のバルーン220側へ移動させる指示が入力されたら、図2に模式図を示すように、第1のバルーン210の体積を大きくし、第2のバルーン220の体積を小さくする。制御部110は、決定した第1のバルーン210の体積変化量と第2のバルーン220の体積変化量とを、ポンプ制御部160に出力する。
【0026】
ポンプ制御部160は、入力された第1のバルーン210の体積変化量と第2のバルーン220の体積変化量とに基づいて、第1のポンプ170と、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185との動作を制御する。例えば、挿入部260の位置を、第1のバルーン210側から第2のバルーン220側へ移動させるには、第1のポンプ170は動作させず、第2のポンプ175のみを動作させて、第2のバルーン220内の液体を、第1のバルーン210内へ移動させればよい。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との大きさが大きく異なる場合、或いは、挿入部260の移動量が大きい場合であって、第1のバルーン210に含まれる液体と、第2のバルーン220に含まれる液体との体積の合計が変化するような場合には、必要に応じて、第1のポンプによって、第1のバルーン210と第2のバルーン220とに含まれる液体の一部を液体タンク190に移動させたり、液体タンク190から液体を、第1のバルーン210と第2のバルーン220とに補充したりすればよい。これらの動作において、第1のバルーン210内の液体により挿入部260を押す力と、第2のバルーン220内の液体により挿入部260を押す力とが互いに等しくなるように、第2のポンプ175の動作を制御し、液体の送出を行う。
【0027】
ポンプ制御部160の制御の下、第1のポンプ170と、第2のポンプ175とは、液体を移動させ、第1のバルーン210と、第2のバルーン220との体積を変化させる。
その際、図示しない観察用超音波プローブや位置センサにより、挿入部260から壁面910までの距離を、第1のバルーン210側と、第2のバルーン220側のそれぞれにて計測し、これらの位置情報を制御部110もしくはポンプ制御部160にフィードバックし、設定した位置に挿入部260が設置されるようフィードバック制御を行うようにしても良い。
【0028】
また、例えば処置が終了し、プローブ部200を例えば胃から取り出すときには、使用者は、処置終了の指示を入力部120から入力する。入力部120は、入力した処置終了の指示を制御部110に出力する。制御部110は、処置終了の指示に基づいて、ポンプ制御部160に、第1のバルーン210及び第2のバルーン220を収縮させる指示を出力する。第1のバルーン210及び第2のバルーン220を収縮させる指示を入力したポンプ制御部160は、第1のポンプを動作させ、第1のバルーン210及び第2のバルーン220内の液体を、液体タンク190に移動させる。その結果、第1のバルーン210及び第2のバルーン220は収縮し、挿入部260の固定は解除される。その後使用者は、プローブ部200を被検体の体外に取り出すことができる。
【0029】
上記の通り、本実施形態によれば、挿入部260を、壁面910に覆われた空間内に固定することができる。その結果、集束超音波を標的位置に確実に照射することができる。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、音源270の位置を超音波の照射方向に沿って、移動させることができる。即ち、超音波の進行方向に集束超音波の焦点サイズよりも広い部分を焼灼する場合には、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、正確に照射位置を変化させながら、超音波を照射することができる。
【0030】
なお、第1の圧力センサ240は、第1のバルーン210内になくてもよく、例えば、第1のチューブ230の第1の三方弁180付近に設置してもよい。同様に、第2の圧力センサ245は、例えば、第2のチューブ235の第2の三方弁185付近に設置してもよい。
【0031】
また、本実施形態の説明では、第1のバルーン210に充填する液体と、第2のバルーン220に充填する液体とを同一の液体とし、互いに移動できるように構成したが、それぞれ別の液体を充填するように構成してもよい。この場合、図示はしないが、例えば、第1のバルーン210には、液体タンクAに貯蔵された液体を、ポンプAによって注入及び排出するようにし、第2のバルーン220には、液体タンクBに貯蔵された液体を、ポンプBによって、注入及び排出するように構成してもよい。また、第1のバルーン210と、第2のバルーン220とに充填するものは、液体に限らず、気体でもよいし、ゲル状の物質でもよい。ただし、第1のバルーン210は、超音波伝播媒体として機能するので、第1のバルーン210に充填する物質は、例えば生理食塩水や脱気水等、超音波を照射する対象である組織の音響インピーダンスと近い音響インピーダンスを有し超音波の減衰率が小さい物質であることが望ましい。また、本超音波照射装置を生体に対して用いる際には、充填する物質として、生体に対して無害なものが用いられる。
【0032】
また、音源270は、集束超音波を射出するために、超音波の射出面が凹面形状をしていなくてもよく、フェーズドアレイによって、超音波を集束させてもよい。即ち、音源270が一つの圧電素子で構成されているのではなく、例えば同心円状に組み合わされる等、複数の圧電素子を組み合わせた構成とし、各々の圧電素子が射出する超音波の位相を適切に調整することによって、射出する超音波を集束させてもよい。フェーズドアレイを利用すると、音源270の位置を変えずに超音波の集束位置を変化させることができるので、第1のバルーン210及び第2のバルーン220の大きさを変化させて音源270を大よその位置に変化させた後に、更にフェーズドアレイにより集束超音波の焦点位置を正確に調整することもできる。または、フェーズドアレイにより集束超音波の焦点位置を大よその位置に変化させた後に、更に第1のバルーン210及び第2のバルーン220の大きさを変化させて音源270位置を正確に調整することもできる。なお、音源270は、圧電素子に限らず、超音波を射出できる素子であればどのようなものでもよい。
【0033】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここで第2の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、プローブ部200の挿入部260と、第1のバルーン210と、第2のバルーン220との位置関係が、第1の実施形態に係る超音波照射装置と異なる。本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図3に示す。図3においては、簡単のため、第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、それらとポンプ制御部160とを接続する配線、音源270と音源駆動部150とを接続する配線等は、省略され図示されていないが、これらは第1の実施形態の場合と同様に配置されている。
【0034】
図3に示すように、本実施形態では、挿入部260を取り囲むように、第1のバルーン210が設置されている。更に、第1のバルーン210の挿入部260に対して音源270と反対側に位置する部分の、挿入部260と反対側には、第2のバルーン220が配置されている。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0035】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210と第2のバルーン220とを、膨張させたり収縮させたりすることができる。本実施形態においても、コントロール部100内の第1のポンプ170、第1のポンプ175、第1の三方弁180、第2の三方弁185及び液体タンク190等の構成を第1の実施形態の場合と同様に構成することができる。第1の実施形態と同様の構成であれば、第1のバルーン210に充填される液体と第2のバルーン220に充填される液体とは、同一の液体となる。
【0036】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積を調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を固定することができる。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、図4にその概略を示すように、音源270の位置を超音波の照射方向に沿って、移動させることができる。
【0037】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。ここで第3の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、プローブ部200の挿入部260と、第1のバルーン210と、第2のバルーン220との位置関係が、第1の実施形態に係る超音波照射装置と異なる。本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図5に示す。図3の場合と同様に図5においては、簡単のため、第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、それらとポンプ制御部160とを接続する配線、音源270と音源駆動部150とを接続する配線等は、省略され図示されていないが、これらは第1の実施形態の場合と同様に配置されている。
【0038】
図5に示すように、本実施形態では、挿入部260の先端の音源270側に、第1のバルーン210が設置されている。更に、挿入部260の先端と第1のバルーン210とを覆うように第2のバルーン220が配置されている。ここで、第1のバルーン210の外面と第2のバルーン220の内面とは、第1のバルーン210が壁面910と接する部分で、接着されている。また、挿入部260は、第2のバルーン220を貫通する形状となっている。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0039】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210と第2のバルーン220とを膨張させたり収縮させたりすることができる。本実施形態においても、コントロール部100内の第1のポンプ170、第1のポンプ175、第1の三方弁180、第2の三方弁185及び液体タンク190等の構成を第1の実施形態の場合と同様に構成することができる。第1の実施形態と同様の構成であれば、第1のバルーン210に充填される液体と第2のバルーン220に充填される液体とは、同一の液体となる。
【0040】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とを調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を固定することができる。即ち、第2のバルーン220を膨張させて、壁面910に対して挿入部260と第1のバルーン210とを含む全体を固定する。そして、第1のバルーン210の大きさを調整することで音源270と壁面910との距離を調節する。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、図6にその概略を示すように、音源270の位置を超音波の照射方向に沿って、移動させることができる。
【0041】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。ここで第4の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、第1の実施形態に係る超音波照射装置と、プローブ部200の構成が異なる。本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図7に示す。図3の場合と同様に図7においては、簡単のため、第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、それらとポンプ制御部160とを接続する配線、音源270と音源駆動部150とを接続する配線等は、省略され図示されていないが、第1の実施形態の場合と同様に配置されている。
【0042】
図7に示すように、本実施形態では、プローブ部200は、挿入部260の先端付近であり、音源270よりも基端側に、関節部250を有する。関節部250の更に基端側には、第2のバルーン220が配置されており、この部分で挿入部260は、第2のバルーン220を貫通している。第2のバルーン220は、壁面910に接することができ、壁面に対して挿入部260の関節部250よりも基端側を固定する。関節部250を支点として、挿入部260の関節部250よりも先端側には、関節部250が有するばね機構によって、音源270が配置されている側に力が加わっている。挿入部260の先端の音源270側には、第1のバルーン210が設置されている。この第1のバルーン210は、前記した関節部250が有するばね機構による付勢力のため、壁面910に押し付けられる。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0043】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210及び第2のバルーン220を膨張させたり収縮させたりすることができる。超音波照射時には、第2のバルーン220の体積を調整することで、挿入部260の関節部250よりも基端側を壁面910に対して固定する。関節部250のばね機構によって、挿入部260は、音源270側に押し付けられるので、第1のバルーン210の大きさを調節することによって音源270と壁面910との間隔を変化させることができる。
【0044】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とを調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を固定することができる。即ち、第2のバルーン220を膨張させて、壁面910に対して関節部250よりも基端側を固定することができ、第1のバルーン210によって、音源270と壁面910との間隔を規定することができる。また、第1のバルーン210の体積を変化させることで、図8にその概略を示すように、音源270の位置を移動させることができる。
【0045】
なお、図9に示すように、第2のバルーン220を挿入部260の先端側に配置し、それと関節部250を挟んで基端側に音源270及び第1のバルーン210を配置してもよい。この場合、関節部250のばね機構による付勢力によって第1のバルーン210が壁面910に押し付けられるように、挿入部260の関節部250から音源270が配置されている位置までは、剛性を有しているが、挿入部260の音源270が配置されている位置よりも基端側は、軟性体で構成されている。この場合も図7を参照して説明した構成と同様の効果が得られる。
【0046】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。ここで第5の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、第1のバルーン210及び第2のバルーン220に加えて、第3のバルーン225を有する。
【0047】
本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図10に示す。図10は、挿入部260を、その先端側から見た図である。図10に示すように、挿入部260の先端部には、挿入部260の先端側から見て互いに120度の角度をなすように、第1のバルーン210と、第2のバルーン220と、第3のバルーン225とが設置されている。ここで、第1のバルーン210は、挿入部260の音源270側に設置されている。第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210には、第1のチューブ230が接続されており、第2のバルーン220には、第2のチューブ235が接続されている。これらと同様に、第3のバルーン225には、第3のチューブ237が接続されている。第1のチューブ230、第2のチューブ235、第3のチューブ237は、三方弁を介して第1のポンプ170及び第2のポンプ175に接続されている。
【0048】
また、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210内には、第1の圧力センサ240が配置されており、第2のバルーン220内には、第2の圧力センサ245が配置されている。これらと同様に、第3のバルーン225内には、第3の圧力センサ247が配置されている。第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、第3の圧力センサ247は、それぞれ、ポンプ制御部160に接続されている。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0049】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出し、第3のチューブ237を介して、第3のバルーン225内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210、第2のバルーン220及び第3のバルーン225を、それぞれ膨張させたり収縮させたりすることができる。
【0050】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210、第2のバルーン220及び第3のバルーン225の体積を調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を壁面910に対して固定することができる。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220と第3のバルーン225との体積比を変化させることで、図11にその概略を示すように、音源270の位置を自在に移動させることができる。即ち、超音波の進行方向に集束超音波の焦点サイズよりも広い部分を焼灼する場合には、第1のバルーン210と第2のバルーン220と第3のバルーン225との体積比を変化させることで、正確に照射位置を変化させることができる。また、本実施形態と同様に、バルーンの数は、4つ以上に増やすこともできる。
【0051】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。ここで第6の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態に係る超音波照射装置では、挿入部260を壁面に固定するために、バルーンを用いている。これに対して、本実施形態では、バルーンの代わりに、アクチュエータを利用した突っ張り部材を用いている。
【0052】
本実施形態の構成の概略を図12に示す。本実施形態に係る超音波照射装置は、第1の実施形態における第1のバルーン210の代わりに、第1の突っ張り部材310を有し、第2のバルーン220の代わりに、第2の突っ張り部材320を有する。第1の突っ張り部材310は、挿入部260の音源270側であって、音源270から射出される超音波を遮らない位置に配置されている。また、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、挿入部260を挟んで対向するように配置されている。ここで、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、それぞれ一つずつでなくてもよく、例えば図12に示すように、複数個ずつ配置されていてもよい。
【0053】
本超音波照射装置は、第1の実施形態のポンプ制御部160、第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、第2の三方弁185、及び液体タンク190の代わりに、突っ張り部材駆動部330及び突っ張り部材制御部340を有する。
【0054】
第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、突っ張り部材駆動部330に接続しており、突っ張り部材駆動部330によって駆動され、伸縮する。突っ張り部材駆動部330は、突っ張り部材制御部340に接続している。突っ張り部材駆動部330によって駆動される第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、突っ張り部材制御部340によって制御される。また、突っ張り部材制御部340は、制御部110に接続している。
【0055】
このように、例えば第1の突っ張り部材310は、第1の支持部材として機能し、第2の突っ張り部材320は、第2の支持部材として機能し、例えば突っ張り部材制御部340は、音源と対象領域との距離を変化させる制御手段として機能する。
【0056】
次に本実施形態に係る超音波照射装置の動作を説明する。使用者は、本超音波照射装置の挿入部260を、例えば、被検者の口から食道を通じて胃に挿入する。このとき、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320は収縮し挿入部260に収まっている。したがって、プローブ部200は、例えば食道を通るほど十分細い形態となる。使用者は、集束超音波を照射したい部分に対して、音源270の超音波を射出する面を対向させる。その状態で、本超音波照射装置に対して、プローブ部200を固定するように、入力部120から指示を入力する。
【0057】
入力部120は、使用者のプローブ部200を固定することの指示を入力し、それを制御部110に出力する。制御部110は、突っ張り部材制御部340に、プローブ部200を固定するための制御を開始する指示を出力する。突っ張り部材制御部340は、制御部110から、指示を入力する。突っ張り部材制御部340は、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とを駆動する突っ張り部材駆動部330を制御する。突っ張り部材駆動部330によって駆動された第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320は、伸張する。第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320は、壁面910を所定の圧力で押圧すると、伸張動作を停止する。ここで、第1の突っ張り部材310は、音源270と壁面910との距離を規定する。第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、壁面910に対して挿入部260を固定する。その結果、使用者が挿入した挿入部260の位置が維持されたまま、挿入部260は、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とによって、壁面910に対して固定される。
【0058】
使用者は、集束超音波を照射したい位置と、焦点Fの位置とが重なり合うことを確認したら、超音波を照射する指示を、入力部120に入力する。その後は、第1の実施形態と同様に、本超音波照射装置の音源270は、集束超音波を射出する。なお、本実施形態に係る超音波照射装置を用いる際には、超音波の伝搬効率を高めるため、音源270と壁面910との間に、別途超音波伝播媒体920を挿入することが望ましい。
【0059】
また、例えば超音波の照射位置を移動させる場合等は、使用者はその旨を入力部120を用いて入力する。このとき、使用者の超音波の照射位置を変化させる指示を入力した入力部120は、その指示を制御部110に出力する。制御部110は、入力した超音波の照射位置を変化させる指示に基づいて、突っ張り部材制御部340に、挿入部260を移動させるように指示する。突っ張り部材制御部340は、突っ張り部材駆動部330を制御して、第1の突っ張り部材310及び第2の突っ張り部材320を、伸張させたり収縮させたりする。例えば、集束超音波の焦点Fの位置を、奥から手前の壁面側に移動させたいときは、第1の突っ張り部材310を伸張させ、第2の突っ張り部材320を収縮させる。その結果、壁面910に対する挿入部260の位置は、変化する。
【0060】
また、例えば処置が終了し、プローブ部200を例えば胃から取り出すときには、使用者は、処置終了の指示を入力部120から入力する。入力部120は、入力した処置終了の指示を制御部110に出力する。制御部110は、処置終了の指示に基づいて、突っ張り部材制御部340に、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とを収縮させる指示を出力する。突っ張り部材制御部340は、突っ張り部材駆動部330を制御して、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とを収縮させる。第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とが収縮する結果、挿入部260の固定は解除される。その後使用者は、プローブ部200を被検体の体外に取り出すことができる。
【0061】
上記の通り、本実施形態によれば、挿入部260を、壁面910に囲まれた空間内に固定することができる。その結果、集束超音波を標的位置に確実に照射することができる。また、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320との長さを変化させることで、音源270の位置を移動させることができる。
【0062】
図12に示した第1の突っ張り部材310及び第2の突っ張り部材320の形状は、本実施形態を説明する一例であって、挿入部260を壁面910に対して固定できる形状であれば、どのような形状でもよい。例えば、第1の突っ張り部材310及び第2の突っ張り部材320は、ステントのような形状をしていてもよい。
【0063】
また、本実施形態は、第1の実施形態における第1のバルーン210の代わりに第1の突っ張り部材310を配置し、第2のバルーン220の代わりに第2の突っ張り部材320を配置しているが、第4の実施形態における第1のバルーン210の代わりに第1の突っ張り部材310を配置し、第2のバルーン220の代わりに第2の突っ張り部材320を配置してもよい。この場合、第4の実施形態と同様に動作し、同様の効果が得られる。
また、第5の実施形態におけるバルーンの代わりに突っ張り部材を配置するようにしても同様である。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。例えば、第1の支持部材として、第1の実施形態に係る第1のバルーン210を用い、第2の支持部材として、第7の実施形態に係る突っ張り部材310を用いてもよい。また、何れの実施形態においても、音源270に、フェーズドアレイによって超音波を集束させることができる超音波発生源を用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
100…コントロール部、110…制御部、120…入力部、130…記憶部、140…音源制御部、150…音源駆動部、160…ポンプ制御部、170…第1のポンプ、175…第2のポンプ、180…第1の三方弁、185…第2の三方弁、190…液体タンク、200…プローブ部、210…第1のバルーン、220…第2のバルーン、225…第3のバルーン、230…第1のチューブ、235…第2のチューブ、237…第3のチューブ、240…第1の圧力センサ、245…第2の圧力センサ、247…第3の圧力センサ、250…関節部、260…挿入部、270…音源、310…第1の突っ張り部材、320…第2の突っ張り部材、330…突っ張り部材駆動部、340…突っ張り部材制御部、910…壁面、920…超音波伝播媒体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波照射装置、特に内視鏡の挿入部に超音波発生源を配置する超音波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織に集束超音波を照射し、例えば癌細胞等の病変部を焼灼する処置が知られている。このような処置を体内で行うため、集束超音波発生源を内視鏡の体内に挿入する部分に配置した超音波照射装置が知られている。このような超音波照射装置に関する技術として、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。この技術では、集束超音波発生源を内視鏡に配置した超音波照射装置において、超音波発生源近傍にバルーンが取り付けられている。このバルーンの大きさによって、集束超音波発生源と超音波照射の対象である壁面との距離を規定する。即ち、集束超音波の焦点位置と、例えば病変部等、超音波を照射したい目標位置との距離を規定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3850094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した集束超音波によって病変部を焼灼するような処置においては、超音波を照射したい目標位置に集束超音波の焦点位置を一致させることが求められる。しかしながら、例えば特許文献1に開示されている技術を用いても、胃の内部等、比較的広い空間においては、超音波発生源が設置されている内視鏡の挿入部の位置を固定することが困難である。即ち、集束超音波を照射したい目標位置と、集束超音波の焦点位置とを一致させた状態で、集束超音波源の位置を維持することが困難である。
【0005】
そこで本発明は、目標位置に対する超音波発生源の相対位置を固定できる超音波照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすため、本発明の超音波照射装置の一態様は、少なくとも一部を壁面が覆う空間において、対象領域に向けて超音波を射出する、保持部材に保持された音源と、前記壁面の第1の領域と接して前記音源と前記対象領域との距離を設定値に保つ、前記保持部材に設けられた第1の支持部材と、前記壁面のうち前記第1の領域以外の第2の領域と接して、前記第1の支持部材と共に前記音源を該壁面に対して固定する、前記保持部材に設けられた第2の支持部材と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目標位置と超音波発生源との距離を保つ第1の支持部材と、第1の支持部材と別の場所で、超音波発生源を支持する第2の支持部材とを有するので、目標位置に対する超音波発生源の相対位置を固定できる超音波照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波照射装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の別の構成例を示す図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る超音波照射装置のプローブ部の構成例を示す図。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る超音波照射装置の挿入部の移動を説明する為の概略図。
【図12】本発明の第6の実施形態に係る超音波照射装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波照射装置は、集束超音波を照射できる内視鏡型の超音波照射装置である。例えば、本超音波照射装置は、体内に挿入され、標的位置の組織(例えば腫瘍等)に集束超音波を照射し、当該組織を焼灼する。図1に第1の実施形態に係る超音波照射装置の構成を示すブロック図を示す。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波照射装置は、被検体の外部から本超音波照射装置の各部を制御するコントロール部100と被検体内に挿入されるプローブ部200とを有する。プローブ部200は、例えば胃に挿入される細長い形状をした挿入部260を有している。挿入部260の、被検体内に挿入される側を先端側と、コントロール部100側を基端側と称することにする。挿入部260の先端付近の周面には、超音波を射出する音源270が配置されている。音源270は、例えばチタン・ジルコン酸塩(PZT)等の圧電素子で構成されている。音源270の超音波を射出する面は、例えば凹面形状をしており、音源270から射出される超音波は、焦点Fに集束する集束超音波となる。
【0011】
また、挿入部260の音源270付近には、挿入部260の先端部を例えば胃内に固定するための、第1のバルーン210と第2のバルーン220とが配置されている。本実施形態では、第1のバルーン210は、音源270の超音波を射出する面側に膨張及び収縮するように配置されている。一方、第2のバルーン220は、第1のバルーン210と挿入部260を挟んで対峙する位置に、膨張及び収縮するように配置されている。第1のバルーン210と第2のバルーン220とは、例えばラテックスゴムやその他のゴム等の膨張や収縮が可能な材料で構成されている。
【0012】
第1のバルーン210は、第1のチューブ230と接続している。第1のチューブ230は、挿入部260の内部を挿通しコントロール部100に接続されている。第1のバルーン210の内部には、第1のチューブ230を介して、液体が注入及び排出される。この液体の注入及び排出によって、第1のバルーン210は、膨張及び収縮する。ここで、液体は、例えば生理食塩水や脱気水である。同様に、第2のバルーン220は、挿入部260の内部を挿通し、コントロール部100と接続する第2のチューブ235と接続している。第2のバルーン220の内部には、第2のチューブ235を介して、液体が注入及び排出され、第2のバルーン220は、膨張及び収縮する。また、第1のバルーン210内には、第1のバルーン210内の液体の圧力を計測するための、第1の圧力センサ240が設置されている。同様に、第2のバルーン220内には、第2のバルーン220内の液体の圧力を計測するための、第2の圧力センサ245が設置されている。
【0013】
コントロール部100は、制御部110と、入力部120と、記憶部130と、音源制御部140と、音源駆動部150と、ポンプ制御部160と、第1のポンプ170と、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185と、液体タンク190とを備える。制御部110は、入力部120と、記憶部130と、音源制御部140と、ポンプ制御部160と接続している。制御部110は、本超音波照射装置全体の制御を行う。入力部120は、例えばキーボード等であり、使用者からの指示を入力する。記憶部130は、本超音波照射装置の制御等に関わる情報を記憶しており、制御部110の求めに応じて、適宜情報を制御部110に出力する。音源制御部140は、音源270の出力等の制御を行う。音源駆動部150は、音源制御部140の制御の下、音源270を駆動する。
【0014】
ポンプ制御部160は、第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、及び第2の三方弁185の動作を制御する。また、ポンプ制御部160は、第1の圧力センサ240と接続しており、第1の圧力センサ240の出力値を入力し、第1のバルーン210内の液体の圧力を取得する。同様に、ポンプ制御部160は、第2の圧力センサ245と接続しており、第2の圧力センサ245の出力値を入力し、第2のバルーン220内の液体の圧力を取得する。
【0015】
液体を蓄える液体タンク190は、第1のポンプ170に接続されている。液体タンク190には、図示しない液体温度調整器及び脱気装置が含まれている。第1の三方弁180は、第1のチューブ230、第1のポンプ170、及び第2のポンプ175に接続されている。第2の三方弁185は、第2のチューブ235、第1のポンプ170、及び第2のポンプ175に接続されている。
【0016】
第1のポンプ170は、液体を、液体タンク190から第1の三方弁180及び第2の三方弁185の方へ送出したり、逆に、第1の三方弁180及び第2の三方弁185から液体タンク190の方へ送出したりする。したがって、第1の三方弁180を、第1のポンプ170と第1のチューブ230とを接続するようにし、第2の三方弁185を、第1のポンプ170と第2のチューブ235とを接続するようにすると、第1のポンプ170は、液体を液体タンク190から第1のチューブ230及び第2のチューブ235の方へ送出したり、逆に、液体を第1のチューブ230及び第2のチューブ235から液体タンク190の方へ送出したりすることができる。その結果、液体の移動により、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積を変化させることができる。
【0017】
第2のポンプ175は、液体を第1の三方弁180の方から第2の三方弁185の方へ、及びその逆の方へ、送出することができる。したがって、第1の三方弁180を第2のポンプ175と第1のチューブ230とを接続するようにし、第2の三方弁185を第2のポンプ175と第2のチューブ235とを接続するようにすると、第2のポンプ175は、液体を第1のチューブ230の方から第2のチューブ235の方へ、及びその逆の方へ、送出することができる。その結果、第1のバルーン210と第2のバルーン220との間で、液体を移動させることができる。即ち、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることができる。このように、第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、及び第2の三方弁185の動作を制御することで、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とを自在に調整することができる。このように、本実施形態では、第1のバルーン210に充填されている液体と第2のバルーン220に充填されている液体とは、同一の液体である。
【0018】
このように、例えば挿入部260は、保持部材として機能し、例えば音源270は、音源として機能し、例えば第1のバルーン210は、第1の支持部材として機能し、例えば第2のバルーン220は、第2の支持部材として機能し、例えば第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、及び第2の三方弁185は、流体調節手段として機能し、例えばポンプ制御部160は、制御手段として機能する。
【0019】
次に本実施形態に係る超音波照射装置の動作を説明する。使用者は、本超音波照射装置の挿入部260を、例えば、被検者の口から食道を通じて胃に挿入する。このとき、第1のバルーン210及び第2のバルーン220には、液体は注入されておらず、第1のバルーン210及び第2のバルーン220は、収縮し、挿入部260内に収まっている。したがって、プローブ部200は、例えば、食道を通るほど十分細い形態となる。使用者は、集束超音波を照射したい部分に対して、音源270の超音波を射出する面を対向させる。その状態で、本超音波照射装置に対して、プローブ部200を固定するように、入力部120から指示を入力する。
【0020】
入力部120は、使用者のプローブ部200を固定することの指示を入力し、それを制御部110に出力する。制御部110は、ポンプ制御部160に、プローブ部200を固定するための制御を開始する指示を出力する。ポンプ制御部160は、制御部110から、指示を入力する。ポンプ制御部160は、第1のポンプ170と、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185との動作を制御し、第1のバルーン210及び第2のバルーン220に液体を注入して、第1のバルーン210及び第2のバルーン220を膨張させる。
【0021】
第1のポンプ170は、ポンプ制御部160の制御の下、液体タンク190に貯蓄されている適度に加温もしくは冷却、及び良く脱気された液体を、第1のチューブ230及び第2のチューブ235の方へ送出する。また、このとき、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185とを調整することによって、第1のバルーン210の大きさと、第2のバルーン220の大きさとはそれぞれ調整される。その結果、挿入部260の先端部の位置が維持されたまま、第1のバルーン210及び第2のバルーン220は、例えば胃壁等の、壁面910に接する。これらの動作において、ポンプ制御部160は、第1の圧力センサ240及び第2の圧力センサ245の出力値に基づいて、第1のバルーン210内の液体の圧力と、第2のバルーン220内の液体の圧力とを取得する。そして、焦点Fが目標位置に一致かつ固定されたことを確認した後、第1のバルーン210内の液体の圧力と、第2のバルーン220内の液体の圧力とを取得し、以後、これらの値が維持されるように、第2のポンプ175の動作を制御し、液体の送出を行う。
【0022】
第1のバルーン210及び第2のバルーン220が、所定の力で壁面910を押すことで、第1のバルーン210及び第2のバルーン220が配置されている挿入部260は、壁面910に対して固定される。この際、第1のバルーン210により挿入部260を押す力と第2のバルーン220により挿入部260を押す力とが等しいので、挿入部260の先端部の位置は、第1のバルーン210側に偏ったり、第2のバルーン220側に偏ったりしない。なお、第1のバルーン210が挿入部260に接触する面積と第2のバルーン220が挿入部260に接触する面積が常に等しくなるように構成すれば、第1のバルーン210内の液体の圧力と第2のバルーン220の液体の圧力は常に等しくなる。
【0023】
使用者は、集束超音波を照射したい位置と、焦点Fの位置とが重なり合うことを確認したら、超音波を照射する指示を、入力部120に入力する。なお、使用者は、挿入部260が壁面910に対して固定されている様子などを、体外から超音波を照射して体内を観察する超音波診断装置等を用いて、確認することができる。
【0024】
超音波照射の指示を入力された入力部120は、当該指示を制御部110に出力する。制御部110は、音源制御部140に、音源に超音波の射出を開始させる指示を出力する。音源制御部140は、制御部110の指示を入力し、この指示に基づいて超音波照射の時間、強度等を決定し、音源駆動部150を制御する。音源駆動部150は、音源制御部140の制御の下、音源270を駆動する。音源270は、音源駆動部150に駆動され、集束超音波を射出する。
【0025】
また、例えば超音波の照射位置を奥から手前へ又は手前から奥へ移動させる場合等は、使用者はその旨を入力部120を用いて本超音波照射装置に入力する。超音波の照射位置を変化させる指示を入力した入力部120は、その指示を制御部110に出力する。制御部110は、入力した超音波の照射位置を変化させる指示に基づいて、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とをどのように変化させるか決定する。即ち、第1のバルーン210の体積の増加量又は減少量と、第2のバルーン220の体積の増加量又は減少量とを決定する。例えば、挿入部260の位置を第1のバルーン210側から第2のバルーン220側へ移動させる指示が入力されたら、図2に模式図を示すように、第1のバルーン210の体積を大きくし、第2のバルーン220の体積を小さくする。制御部110は、決定した第1のバルーン210の体積変化量と第2のバルーン220の体積変化量とを、ポンプ制御部160に出力する。
【0026】
ポンプ制御部160は、入力された第1のバルーン210の体積変化量と第2のバルーン220の体積変化量とに基づいて、第1のポンプ170と、第2のポンプ175と、第1の三方弁180と、第2の三方弁185との動作を制御する。例えば、挿入部260の位置を、第1のバルーン210側から第2のバルーン220側へ移動させるには、第1のポンプ170は動作させず、第2のポンプ175のみを動作させて、第2のバルーン220内の液体を、第1のバルーン210内へ移動させればよい。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との大きさが大きく異なる場合、或いは、挿入部260の移動量が大きい場合であって、第1のバルーン210に含まれる液体と、第2のバルーン220に含まれる液体との体積の合計が変化するような場合には、必要に応じて、第1のポンプによって、第1のバルーン210と第2のバルーン220とに含まれる液体の一部を液体タンク190に移動させたり、液体タンク190から液体を、第1のバルーン210と第2のバルーン220とに補充したりすればよい。これらの動作において、第1のバルーン210内の液体により挿入部260を押す力と、第2のバルーン220内の液体により挿入部260を押す力とが互いに等しくなるように、第2のポンプ175の動作を制御し、液体の送出を行う。
【0027】
ポンプ制御部160の制御の下、第1のポンプ170と、第2のポンプ175とは、液体を移動させ、第1のバルーン210と、第2のバルーン220との体積を変化させる。
その際、図示しない観察用超音波プローブや位置センサにより、挿入部260から壁面910までの距離を、第1のバルーン210側と、第2のバルーン220側のそれぞれにて計測し、これらの位置情報を制御部110もしくはポンプ制御部160にフィードバックし、設定した位置に挿入部260が設置されるようフィードバック制御を行うようにしても良い。
【0028】
また、例えば処置が終了し、プローブ部200を例えば胃から取り出すときには、使用者は、処置終了の指示を入力部120から入力する。入力部120は、入力した処置終了の指示を制御部110に出力する。制御部110は、処置終了の指示に基づいて、ポンプ制御部160に、第1のバルーン210及び第2のバルーン220を収縮させる指示を出力する。第1のバルーン210及び第2のバルーン220を収縮させる指示を入力したポンプ制御部160は、第1のポンプを動作させ、第1のバルーン210及び第2のバルーン220内の液体を、液体タンク190に移動させる。その結果、第1のバルーン210及び第2のバルーン220は収縮し、挿入部260の固定は解除される。その後使用者は、プローブ部200を被検体の体外に取り出すことができる。
【0029】
上記の通り、本実施形態によれば、挿入部260を、壁面910に覆われた空間内に固定することができる。その結果、集束超音波を標的位置に確実に照射することができる。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、音源270の位置を超音波の照射方向に沿って、移動させることができる。即ち、超音波の進行方向に集束超音波の焦点サイズよりも広い部分を焼灼する場合には、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、正確に照射位置を変化させながら、超音波を照射することができる。
【0030】
なお、第1の圧力センサ240は、第1のバルーン210内になくてもよく、例えば、第1のチューブ230の第1の三方弁180付近に設置してもよい。同様に、第2の圧力センサ245は、例えば、第2のチューブ235の第2の三方弁185付近に設置してもよい。
【0031】
また、本実施形態の説明では、第1のバルーン210に充填する液体と、第2のバルーン220に充填する液体とを同一の液体とし、互いに移動できるように構成したが、それぞれ別の液体を充填するように構成してもよい。この場合、図示はしないが、例えば、第1のバルーン210には、液体タンクAに貯蔵された液体を、ポンプAによって注入及び排出するようにし、第2のバルーン220には、液体タンクBに貯蔵された液体を、ポンプBによって、注入及び排出するように構成してもよい。また、第1のバルーン210と、第2のバルーン220とに充填するものは、液体に限らず、気体でもよいし、ゲル状の物質でもよい。ただし、第1のバルーン210は、超音波伝播媒体として機能するので、第1のバルーン210に充填する物質は、例えば生理食塩水や脱気水等、超音波を照射する対象である組織の音響インピーダンスと近い音響インピーダンスを有し超音波の減衰率が小さい物質であることが望ましい。また、本超音波照射装置を生体に対して用いる際には、充填する物質として、生体に対して無害なものが用いられる。
【0032】
また、音源270は、集束超音波を射出するために、超音波の射出面が凹面形状をしていなくてもよく、フェーズドアレイによって、超音波を集束させてもよい。即ち、音源270が一つの圧電素子で構成されているのではなく、例えば同心円状に組み合わされる等、複数の圧電素子を組み合わせた構成とし、各々の圧電素子が射出する超音波の位相を適切に調整することによって、射出する超音波を集束させてもよい。フェーズドアレイを利用すると、音源270の位置を変えずに超音波の集束位置を変化させることができるので、第1のバルーン210及び第2のバルーン220の大きさを変化させて音源270を大よその位置に変化させた後に、更にフェーズドアレイにより集束超音波の焦点位置を正確に調整することもできる。または、フェーズドアレイにより集束超音波の焦点位置を大よその位置に変化させた後に、更に第1のバルーン210及び第2のバルーン220の大きさを変化させて音源270位置を正確に調整することもできる。なお、音源270は、圧電素子に限らず、超音波を射出できる素子であればどのようなものでもよい。
【0033】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここで第2の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、プローブ部200の挿入部260と、第1のバルーン210と、第2のバルーン220との位置関係が、第1の実施形態に係る超音波照射装置と異なる。本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図3に示す。図3においては、簡単のため、第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、それらとポンプ制御部160とを接続する配線、音源270と音源駆動部150とを接続する配線等は、省略され図示されていないが、これらは第1の実施形態の場合と同様に配置されている。
【0034】
図3に示すように、本実施形態では、挿入部260を取り囲むように、第1のバルーン210が設置されている。更に、第1のバルーン210の挿入部260に対して音源270と反対側に位置する部分の、挿入部260と反対側には、第2のバルーン220が配置されている。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0035】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210と第2のバルーン220とを、膨張させたり収縮させたりすることができる。本実施形態においても、コントロール部100内の第1のポンプ170、第1のポンプ175、第1の三方弁180、第2の三方弁185及び液体タンク190等の構成を第1の実施形態の場合と同様に構成することができる。第1の実施形態と同様の構成であれば、第1のバルーン210に充填される液体と第2のバルーン220に充填される液体とは、同一の液体となる。
【0036】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積を調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を固定することができる。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、図4にその概略を示すように、音源270の位置を超音波の照射方向に沿って、移動させることができる。
【0037】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。ここで第3の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、プローブ部200の挿入部260と、第1のバルーン210と、第2のバルーン220との位置関係が、第1の実施形態に係る超音波照射装置と異なる。本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図5に示す。図3の場合と同様に図5においては、簡単のため、第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、それらとポンプ制御部160とを接続する配線、音源270と音源駆動部150とを接続する配線等は、省略され図示されていないが、これらは第1の実施形態の場合と同様に配置されている。
【0038】
図5に示すように、本実施形態では、挿入部260の先端の音源270側に、第1のバルーン210が設置されている。更に、挿入部260の先端と第1のバルーン210とを覆うように第2のバルーン220が配置されている。ここで、第1のバルーン210の外面と第2のバルーン220の内面とは、第1のバルーン210が壁面910と接する部分で、接着されている。また、挿入部260は、第2のバルーン220を貫通する形状となっている。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0039】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210と第2のバルーン220とを膨張させたり収縮させたりすることができる。本実施形態においても、コントロール部100内の第1のポンプ170、第1のポンプ175、第1の三方弁180、第2の三方弁185及び液体タンク190等の構成を第1の実施形態の場合と同様に構成することができる。第1の実施形態と同様の構成であれば、第1のバルーン210に充填される液体と第2のバルーン220に充填される液体とは、同一の液体となる。
【0040】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とを調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を固定することができる。即ち、第2のバルーン220を膨張させて、壁面910に対して挿入部260と第1のバルーン210とを含む全体を固定する。そして、第1のバルーン210の大きさを調整することで音源270と壁面910との距離を調節する。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220との体積比を変化させることで、図6にその概略を示すように、音源270の位置を超音波の照射方向に沿って、移動させることができる。
【0041】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。ここで第4の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、第1の実施形態に係る超音波照射装置と、プローブ部200の構成が異なる。本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図7に示す。図3の場合と同様に図7においては、簡単のため、第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、それらとポンプ制御部160とを接続する配線、音源270と音源駆動部150とを接続する配線等は、省略され図示されていないが、第1の実施形態の場合と同様に配置されている。
【0042】
図7に示すように、本実施形態では、プローブ部200は、挿入部260の先端付近であり、音源270よりも基端側に、関節部250を有する。関節部250の更に基端側には、第2のバルーン220が配置されており、この部分で挿入部260は、第2のバルーン220を貫通している。第2のバルーン220は、壁面910に接することができ、壁面に対して挿入部260の関節部250よりも基端側を固定する。関節部250を支点として、挿入部260の関節部250よりも先端側には、関節部250が有するばね機構によって、音源270が配置されている側に力が加わっている。挿入部260の先端の音源270側には、第1のバルーン210が設置されている。この第1のバルーン210は、前記した関節部250が有するばね機構による付勢力のため、壁面910に押し付けられる。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0043】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210及び第2のバルーン220を膨張させたり収縮させたりすることができる。超音波照射時には、第2のバルーン220の体積を調整することで、挿入部260の関節部250よりも基端側を壁面910に対して固定する。関節部250のばね機構によって、挿入部260は、音源270側に押し付けられるので、第1のバルーン210の大きさを調節することによって音源270と壁面910との間隔を変化させることができる。
【0044】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210の体積と第2のバルーン220の体積とを調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を固定することができる。即ち、第2のバルーン220を膨張させて、壁面910に対して関節部250よりも基端側を固定することができ、第1のバルーン210によって、音源270と壁面910との間隔を規定することができる。また、第1のバルーン210の体積を変化させることで、図8にその概略を示すように、音源270の位置を移動させることができる。
【0045】
なお、図9に示すように、第2のバルーン220を挿入部260の先端側に配置し、それと関節部250を挟んで基端側に音源270及び第1のバルーン210を配置してもよい。この場合、関節部250のばね機構による付勢力によって第1のバルーン210が壁面910に押し付けられるように、挿入部260の関節部250から音源270が配置されている位置までは、剛性を有しているが、挿入部260の音源270が配置されている位置よりも基端側は、軟性体で構成されている。この場合も図7を参照して説明した構成と同様の効果が得られる。
【0046】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。ここで第5の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。本実施形態に係る超音波照射装置は、第1のバルーン210及び第2のバルーン220に加えて、第3のバルーン225を有する。
【0047】
本実施形態に係るプローブ部200の構成の概略を図10に示す。図10は、挿入部260を、その先端側から見た図である。図10に示すように、挿入部260の先端部には、挿入部260の先端側から見て互いに120度の角度をなすように、第1のバルーン210と、第2のバルーン220と、第3のバルーン225とが設置されている。ここで、第1のバルーン210は、挿入部260の音源270側に設置されている。第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210には、第1のチューブ230が接続されており、第2のバルーン220には、第2のチューブ235が接続されている。これらと同様に、第3のバルーン225には、第3のチューブ237が接続されている。第1のチューブ230、第2のチューブ235、第3のチューブ237は、三方弁を介して第1のポンプ170及び第2のポンプ175に接続されている。
【0048】
また、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210内には、第1の圧力センサ240が配置されており、第2のバルーン220内には、第2の圧力センサ245が配置されている。これらと同様に、第3のバルーン225内には、第3の圧力センサ247が配置されている。第1の圧力センサ240、第2の圧力センサ245、第3の圧力センサ247は、それぞれ、ポンプ制御部160に接続されている。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0049】
本実施形態においても、第1のチューブ230を介して、第1のバルーン210内に液体を注入及び排出し、第2のチューブ235を介して、第2のバルーン220内に液体を注入及び排出し、第3のチューブ237を介して、第3のバルーン225内に液体を注入及び排出する。このようにして第1のバルーン210、第2のバルーン220及び第3のバルーン225を、それぞれ膨張させたり収縮させたりすることができる。
【0050】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、第1のバルーン210、第2のバルーン220及び第3のバルーン225の体積を調整することで、使用者が意図する位置に挿入部260の先端を壁面910に対して固定することができる。また、第1のバルーン210と第2のバルーン220と第3のバルーン225との体積比を変化させることで、図11にその概略を示すように、音源270の位置を自在に移動させることができる。即ち、超音波の進行方向に集束超音波の焦点サイズよりも広い部分を焼灼する場合には、第1のバルーン210と第2のバルーン220と第3のバルーン225との体積比を変化させることで、正確に照射位置を変化させることができる。また、本実施形態と同様に、バルーンの数は、4つ以上に増やすこともできる。
【0051】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。ここで第6の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態に係る超音波照射装置では、挿入部260を壁面に固定するために、バルーンを用いている。これに対して、本実施形態では、バルーンの代わりに、アクチュエータを利用した突っ張り部材を用いている。
【0052】
本実施形態の構成の概略を図12に示す。本実施形態に係る超音波照射装置は、第1の実施形態における第1のバルーン210の代わりに、第1の突っ張り部材310を有し、第2のバルーン220の代わりに、第2の突っ張り部材320を有する。第1の突っ張り部材310は、挿入部260の音源270側であって、音源270から射出される超音波を遮らない位置に配置されている。また、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、挿入部260を挟んで対向するように配置されている。ここで、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、それぞれ一つずつでなくてもよく、例えば図12に示すように、複数個ずつ配置されていてもよい。
【0053】
本超音波照射装置は、第1の実施形態のポンプ制御部160、第1のポンプ170、第2のポンプ175、第1の三方弁180、第2の三方弁185、及び液体タンク190の代わりに、突っ張り部材駆動部330及び突っ張り部材制御部340を有する。
【0054】
第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、突っ張り部材駆動部330に接続しており、突っ張り部材駆動部330によって駆動され、伸縮する。突っ張り部材駆動部330は、突っ張り部材制御部340に接続している。突っ張り部材駆動部330によって駆動される第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、突っ張り部材制御部340によって制御される。また、突っ張り部材制御部340は、制御部110に接続している。
【0055】
このように、例えば第1の突っ張り部材310は、第1の支持部材として機能し、第2の突っ張り部材320は、第2の支持部材として機能し、例えば突っ張り部材制御部340は、音源と対象領域との距離を変化させる制御手段として機能する。
【0056】
次に本実施形態に係る超音波照射装置の動作を説明する。使用者は、本超音波照射装置の挿入部260を、例えば、被検者の口から食道を通じて胃に挿入する。このとき、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320は収縮し挿入部260に収まっている。したがって、プローブ部200は、例えば食道を通るほど十分細い形態となる。使用者は、集束超音波を照射したい部分に対して、音源270の超音波を射出する面を対向させる。その状態で、本超音波照射装置に対して、プローブ部200を固定するように、入力部120から指示を入力する。
【0057】
入力部120は、使用者のプローブ部200を固定することの指示を入力し、それを制御部110に出力する。制御部110は、突っ張り部材制御部340に、プローブ部200を固定するための制御を開始する指示を出力する。突っ張り部材制御部340は、制御部110から、指示を入力する。突っ張り部材制御部340は、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とを駆動する突っ張り部材駆動部330を制御する。突っ張り部材駆動部330によって駆動された第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320は、伸張する。第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320は、壁面910を所定の圧力で押圧すると、伸張動作を停止する。ここで、第1の突っ張り部材310は、音源270と壁面910との距離を規定する。第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とは、壁面910に対して挿入部260を固定する。その結果、使用者が挿入した挿入部260の位置が維持されたまま、挿入部260は、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とによって、壁面910に対して固定される。
【0058】
使用者は、集束超音波を照射したい位置と、焦点Fの位置とが重なり合うことを確認したら、超音波を照射する指示を、入力部120に入力する。その後は、第1の実施形態と同様に、本超音波照射装置の音源270は、集束超音波を射出する。なお、本実施形態に係る超音波照射装置を用いる際には、超音波の伝搬効率を高めるため、音源270と壁面910との間に、別途超音波伝播媒体920を挿入することが望ましい。
【0059】
また、例えば超音波の照射位置を移動させる場合等は、使用者はその旨を入力部120を用いて入力する。このとき、使用者の超音波の照射位置を変化させる指示を入力した入力部120は、その指示を制御部110に出力する。制御部110は、入力した超音波の照射位置を変化させる指示に基づいて、突っ張り部材制御部340に、挿入部260を移動させるように指示する。突っ張り部材制御部340は、突っ張り部材駆動部330を制御して、第1の突っ張り部材310及び第2の突っ張り部材320を、伸張させたり収縮させたりする。例えば、集束超音波の焦点Fの位置を、奥から手前の壁面側に移動させたいときは、第1の突っ張り部材310を伸張させ、第2の突っ張り部材320を収縮させる。その結果、壁面910に対する挿入部260の位置は、変化する。
【0060】
また、例えば処置が終了し、プローブ部200を例えば胃から取り出すときには、使用者は、処置終了の指示を入力部120から入力する。入力部120は、入力した処置終了の指示を制御部110に出力する。制御部110は、処置終了の指示に基づいて、突っ張り部材制御部340に、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とを収縮させる指示を出力する。突っ張り部材制御部340は、突っ張り部材駆動部330を制御して、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とを収縮させる。第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320とが収縮する結果、挿入部260の固定は解除される。その後使用者は、プローブ部200を被検体の体外に取り出すことができる。
【0061】
上記の通り、本実施形態によれば、挿入部260を、壁面910に囲まれた空間内に固定することができる。その結果、集束超音波を標的位置に確実に照射することができる。また、第1の突っ張り部材310と第2の突っ張り部材320との長さを変化させることで、音源270の位置を移動させることができる。
【0062】
図12に示した第1の突っ張り部材310及び第2の突っ張り部材320の形状は、本実施形態を説明する一例であって、挿入部260を壁面910に対して固定できる形状であれば、どのような形状でもよい。例えば、第1の突っ張り部材310及び第2の突っ張り部材320は、ステントのような形状をしていてもよい。
【0063】
また、本実施形態は、第1の実施形態における第1のバルーン210の代わりに第1の突っ張り部材310を配置し、第2のバルーン220の代わりに第2の突っ張り部材320を配置しているが、第4の実施形態における第1のバルーン210の代わりに第1の突っ張り部材310を配置し、第2のバルーン220の代わりに第2の突っ張り部材320を配置してもよい。この場合、第4の実施形態と同様に動作し、同様の効果が得られる。
また、第5の実施形態におけるバルーンの代わりに突っ張り部材を配置するようにしても同様である。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。例えば、第1の支持部材として、第1の実施形態に係る第1のバルーン210を用い、第2の支持部材として、第7の実施形態に係る突っ張り部材310を用いてもよい。また、何れの実施形態においても、音源270に、フェーズドアレイによって超音波を集束させることができる超音波発生源を用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
100…コントロール部、110…制御部、120…入力部、130…記憶部、140…音源制御部、150…音源駆動部、160…ポンプ制御部、170…第1のポンプ、175…第2のポンプ、180…第1の三方弁、185…第2の三方弁、190…液体タンク、200…プローブ部、210…第1のバルーン、220…第2のバルーン、225…第3のバルーン、230…第1のチューブ、235…第2のチューブ、237…第3のチューブ、240…第1の圧力センサ、245…第2の圧力センサ、247…第3の圧力センサ、250…関節部、260…挿入部、270…音源、310…第1の突っ張り部材、320…第2の突っ張り部材、330…突っ張り部材駆動部、340…突っ張り部材制御部、910…壁面、920…超音波伝播媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部を壁面が覆う空間において、対象領域に向けて超音波を射出する、保持部材に保持された音源と、
前記壁面の第1の領域において該壁面を押圧して前記音源と前記対象領域との距離を設定値に保つ、前記保持部材に設けられた第1の支持部材と、
前記壁面のうち前記第1の領域以外の領域を含む第2の領域において該壁面を押圧して、前記第1の支持部材と共に前記音源を該壁面に対して固定する、前記保持部材に設けられた第2の支持部材と、
を具備することを特徴とする超音波照射装置。
【請求項2】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とは、前記保持部材を挟んで対設されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項3】
前記第1の支持部材は、前記音源の前記対象領域の側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の超音波照射装置。
【請求項4】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とのうち少なくとも一方は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化するバルーンを含むことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項5】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記第2の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第2のバルーンを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項6】
前記第1のバルーンの内部に充填する前記流体の組成と、前記第2のバルーンの内部に充填する前記流体の組成とは、同一であることを特徴とする請求項5に記載の超音波照射装置。
【請求項7】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記第2の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第2のバルーンを含み、
前記第1のバルーンと前記音源とは、前記第2のバルーン内に配置されており、
前記第1の領域を押圧する部分において、前記第1のバルーンの外面と前記第2のバルーンの内面とは接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項8】
前記第1のバルーンの内部に充填する前記流体の組成と、前記第2のバルーンの内部に充填する前記流体の組成とは、同一であることを特徴とする請求項7に記載の超音波照射装置。
【請求項9】
前記保持部材は、棒形状であり、ばね機構を有し屈曲する関節部を備え、
前記音源は、前記棒形状の保持部材の周面の一部に配置されており、
前記第1の支持部材は、前記音源の前記対象領域の側に設けられており、
前記第2の支持部材は、前記保持部材の長手方向について前記関節部よりも前記音源が配置されている側と反対側に配置されており、
前記ばね機構は、前記保持部材の前記関節部よりも前記音源が配置された側が前記対象領域の方向に変位するように力を加える、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項10】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを連動して変形させ、前記音源と前記対象領域との距離を変化させる制御手段を更に具備する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項11】
前記第1のバルーン内に充填する流体量と、前記第2のバルーン内に充填する流体量とを変化させる流体調節手段と、
前記流体調節手段を制御して、前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとの大きさを変化させ、前記音源と前記対象領域との距離を変化させる制御手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項12】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記第2の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第2のバルーンを含み、
前記第1のバルーン内に充填する流体量を変化させる流体調節手段と、
前記流体調節手段を制御して、前記第1のバルーンの大きさを変化させ、前記音源と前記対象領域との距離を変化させる制御手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項9に記載の超音波照射装置。
【請求項13】
複数の前記第2の支持部材を具備することを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項14】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記複数の第2の支持部材は、それぞれ内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する複数の第2のバルーンを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の超音波照射装置。
【請求項15】
前記音源は、フェーズドアレイにより、焦点位置を変化させられるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至14のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項16】
前記第1のバルーンは、前記音源の前記対象領域の側に設けられており、
前記第1のバルーン内部に前記音源と前記対象領域との音響インピーダンスをマッチングさせるための超音波伝播媒体を充填する、
ことを特徴とする請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項1】
少なくとも一部を壁面が覆う空間において、対象領域に向けて超音波を射出する、保持部材に保持された音源と、
前記壁面の第1の領域において該壁面を押圧して前記音源と前記対象領域との距離を設定値に保つ、前記保持部材に設けられた第1の支持部材と、
前記壁面のうち前記第1の領域以外の領域を含む第2の領域において該壁面を押圧して、前記第1の支持部材と共に前記音源を該壁面に対して固定する、前記保持部材に設けられた第2の支持部材と、
を具備することを特徴とする超音波照射装置。
【請求項2】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とは、前記保持部材を挟んで対設されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項3】
前記第1の支持部材は、前記音源の前記対象領域の側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の超音波照射装置。
【請求項4】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とのうち少なくとも一方は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化するバルーンを含むことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項5】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記第2の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第2のバルーンを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項6】
前記第1のバルーンの内部に充填する前記流体の組成と、前記第2のバルーンの内部に充填する前記流体の組成とは、同一であることを特徴とする請求項5に記載の超音波照射装置。
【請求項7】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記第2の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第2のバルーンを含み、
前記第1のバルーンと前記音源とは、前記第2のバルーン内に配置されており、
前記第1の領域を押圧する部分において、前記第1のバルーンの外面と前記第2のバルーンの内面とは接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項8】
前記第1のバルーンの内部に充填する前記流体の組成と、前記第2のバルーンの内部に充填する前記流体の組成とは、同一であることを特徴とする請求項7に記載の超音波照射装置。
【請求項9】
前記保持部材は、棒形状であり、ばね機構を有し屈曲する関節部を備え、
前記音源は、前記棒形状の保持部材の周面の一部に配置されており、
前記第1の支持部材は、前記音源の前記対象領域の側に設けられており、
前記第2の支持部材は、前記保持部材の長手方向について前記関節部よりも前記音源が配置されている側と反対側に配置されており、
前記ばね機構は、前記保持部材の前記関節部よりも前記音源が配置された側が前記対象領域の方向に変位するように力を加える、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項10】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを連動して変形させ、前記音源と前記対象領域との距離を変化させる制御手段を更に具備する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項11】
前記第1のバルーン内に充填する流体量と、前記第2のバルーン内に充填する流体量とを変化させる流体調節手段と、
前記流体調節手段を制御して、前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとの大きさを変化させ、前記音源と前記対象領域との距離を変化させる制御手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項12】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記第2の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第2のバルーンを含み、
前記第1のバルーン内に充填する流体量を変化させる流体調節手段と、
前記流体調節手段を制御して、前記第1のバルーンの大きさを変化させ、前記音源と前記対象領域との距離を変化させる制御手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項9に記載の超音波照射装置。
【請求項13】
複数の前記第2の支持部材を具備することを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項14】
前記第1の支持部材は、内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する第1のバルーンを含み、
前記複数の第2の支持部材は、それぞれ内部に充填する流体の量に応じて大きさが変化する複数の第2のバルーンを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の超音波照射装置。
【請求項15】
前記音源は、フェーズドアレイにより、焦点位置を変化させられるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至14のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【請求項16】
前記第1のバルーンは、前記音源の前記対象領域の側に設けられており、
前記第1のバルーン内部に前記音源と前記対象領域との音響インピーダンスをマッチングさせるための超音波伝播媒体を充填する、
ことを特徴とする請求項5乃至8のうち何れか1項に記載の超音波照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−90779(P2012−90779A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240789(P2010−240789)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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