超音波画像処理装置
【課題】超音波診断装置によって取得された画像について、血管の内膜を容易に特定することを目的とする。
【解決手段】 超音波診断装置は、断層画像上における血管の内膜を特定する機能を有する。内膜の特定に際しては、フレームデータに対し、血管の内腔領域を特定する処理が実行される(S103)。その後、内腔領域の輪郭を表す輪郭線を用いて、内腔領域から血管壁にかけての領域が特定され、その領域における画素値の修正が行われる。これによって、内膜が強調され、内膜が強調されたフレームデータに基づいて内膜が特定される(S108)。内膜特定処理には、各処理を容易にするための補間処理(S102)、フィルタ処理(S104、S106)等の補助的な処理が含まれる。
【解決手段】 超音波診断装置は、断層画像上における血管の内膜を特定する機能を有する。内膜の特定に際しては、フレームデータに対し、血管の内腔領域を特定する処理が実行される(S103)。その後、内腔領域の輪郭を表す輪郭線を用いて、内腔領域から血管壁にかけての領域が特定され、その領域における画素値の修正が行われる。これによって、内膜が強調され、内膜が強調されたフレームデータに基づいて内膜が特定される(S108)。内膜特定処理には、各処理を容易にするための補間処理(S102)、フィルタ処理(S104、S106)等の補助的な処理が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理装置に関し、特に、画像上において血管の内膜を特定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の循環器、血管等を診断する装置として超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置は、超音波を被検体に向けて送信し、被検体内で反射した超音波に基づいて断層画像をディスプレイに表示する。血管の診断に際しては血管断面が断層画像に表示され、ユーザは、動脈硬化の有無等を把握する。
【0003】
また、超音波診断装置には、下記の特許文献1に記載されているように、血管断面を表す断層画像データに対する数値演算に基づいて、IMT(Intima-Media Thickness)等の診断数値を取得するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−75306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断層画像に基づく血管の診断においては、血管壁を構成する内膜、中膜および外膜のうち、内膜の画像が重要となることが多い。しかし、内膜において反射する超音波の強度は、血管中の他の部位で反射する超音波の強度よりも弱い。したがって、超音波診断装置において取得された画像から、血管の内膜を特定することは困難を伴う。
【0006】
本発明は、超音波診断装置によって取得された画像について、血管の内膜を容易に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検体内における血管で反射した超音波を受信する受信部と、前記受信部によって受信された超音波に基づいて画像データを生成する画像生成部と、前記画像データが示す画像について、前記血管の内腔に含まれる領域を内腔領域として特定する内腔特定部と、前記画像データが示す画像について、前記内腔領域から血管壁にかけての画素値の変化に基づいて、前記血管の内膜を特定する内膜特定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
内腔領域は、反射する超音波の強度が弱い領域であるため、血管壁の領域よりも特定が容易であることが多い。本発明においては、内腔領域が特定された上で、内腔領域を基準として血管の内膜が特定される。したがって、内膜において反射する超音波の強度が弱い場合であっても、容易に内膜が特定される。
【0009】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記画像データは、線状に画素が配列されたライン画像をそれぞれが示す複数のラインデータを含み、前記複数のラインデータが示す複数のライン画像を方向を揃えて配列した画像を示し、前記内腔特定部は、各ライン画像を横切る方向に前記内腔領域の輪郭を探索する輪郭探索手段を備える。
【0010】
本発明によれば、各ライン画像が個別に取得された後、各ライン画像を横切る方向に内腔領域の輪郭が探索される。これによって、各ライン画像を取得する処理と、内腔領域を特定する処理とが独立に行われ、各ライン画像ごとに施される処理が容易となる。
【0011】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記輪郭探索手段は、各ライン画像について、前記内腔領域をなす区間の候補となる候補区間を特定する候補区間特定手段と、特定された複数の候補区間のうち所定の閾値以上の長さを有する候補区間の端の位置に基づいて、前記内腔領域の輪郭を探索する探索手段と、を備える。
【0012】
本発明によれば、各ライン画像について、内腔領域をなす区間の候補となる候補区間が特定され、特定された複数の候補区間のうち所定の閾値以上の長さを有する候補区間の端の位置に基づいて内腔領域の輪郭が探索される。したがって、所定の長さより短い候補区間は、内腔領域の輪郭を探索する処理から除外される。これによって、ライン画像に含まれるノイズ等の影響が抑制され、内腔領域の輪郭が確実に探索される。
【0013】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記内膜特定部は、前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、前記血管壁内点の位置に基づいて前記内腔領域から前記血管壁にかけての領域を特定して当該領域における画素値の修正を行い、前記内膜の画素値を強調する画素値修正手段と、を備え、修正後の画素値に基づいて、内膜を特定する。
【0014】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記内膜特定部は、前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、対向する2つの前記血管壁内点間の中点の位置を求め、当該中点から修正対象の画素までの距離に応じて、当該修正対象の画素の画素値の修正を行い、前記内膜を強調する画素値修正手段と、を備え、修正後の画素値に基づいて、内膜を特定する。
【0015】
本発明によれば、例えば、画素の位置に対してその画素の修正値が与えられる関数を定義し、その関数によって、内膜を強調する処理を実行することが可能となる。したがって、本発明によれば、幾何学的な処理によって、内腔領域から血管壁にかけての画素値の修正を行い、内膜を強調する処理を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、超音波診断装置によって取得された画像について、血管の内膜を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】フレームデータが示す画像の例を示す図である。
【図3】内膜特定処理において画像解析部が実行する処理を示す図である。
【図4】1つのライン画像における画素値の分布を概念的に示す図である。
【図5】内膜点を探索する処理を説明する概念図である。
【図6】内腔特定処理のフローチャートである。
【図7】1つのフレームデータが示す画素群を概念的に示す図である。
【図8】マスク処理が施されたフレームデータ画像を概念的に示す図である。
【図9】マスク上端画素およびマスク下端画素を示す図である。
【図10】内腔領域の前壁の輪郭線を求める処理を説明するための概念図である。
【図11】内腔領域の前壁の輪郭線を求める処理を示すフローチャートである。
【図12】前壁輪郭線画素群および後壁輪郭線画素群を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)超音波診断装置の基本的な構成および動作
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成が示されている。超音波診断装置は、被検体の組織の断面を画像の輝度の強弱によって示す断層画像を表示する。この超音波診断装置は、断層画像上に血管断面を表した場合には、断層画像上における血管の内膜を特定する機能を有する。内膜の特定は、断層画像を示すフレームデータに基づいて、内膜を表す内膜線を求めることによって行われる。内膜線は断層画像に重ねて表示される。また、求められた内膜線に基づいて、IMT等の診断数値が計算される。
【0019】
超音波診断装置は、超音波プローブ10、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18、操作パネル20、メモリ22、画像表示部24、およびコントローラ26を備える。コントローラ26は、操作パネル20における動作設定に応じて、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18および画像表示部24を制御する。
【0020】
また、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18、および画像表示部24は、演算処理を実行するプロセッサを備え、それぞれ、演算の過程で得られた情報を記憶する局所的メモリを有する。これらの構成要素は、自らの局所的メモリに情報を記憶させる他、コントローラ26の制御を介してメモリ22に情報を記憶させ、コントローラ26の制御を介して必要に応じてメモリ22からその情報を読み込んでもよい。
【0021】
断層画像を示すフレームデータを取得するための構成および処理につき説明する。超音波プローブ10には、例えば、複数の振動子が配列されたアレイ振動子プローブが用いられる。超音波診断装置においては、超音波プローブ10による送受信ビーム30の二次元走査面28が観測面とされ、その観測面における断層画像が画像表示部24に表示される。そのため、超音波プローブ10は、超音波が送受信される面が被検体に向けられ、二次元走査面が診断対象の血管の軸断面と一致する姿勢で支持される。
【0022】
送信部12は、パルス変調された電気信号(パルス変調信号)を超音波プローブ10の各振動子に出力する。各振動子は、送信部12から出力されたパルス変調信号に基づいて、超音波パルスを発生する。この際、送信部12は、送信される超音波パルスのビームフォーマとして機能する。すなわち、送信部12は、各振動子に出力する信号の遅延時間を制御して送信ビームを形成し、送信ビームを二次元走査する。この二次元走査には、超音波プローブ10側を軸として扇状に送信ビームを走査するセクタ走査を採用してもよい。
【0023】
超音波プローブ10の各振動子は、被検体内において反射した超音波パルスを受信する。各振動子は、受信した超音波パルスに基づいて電気信号を発生し、その電気信号を受信部14に出力する。受信部14は、受信される超音波パルスのビームフォーマとして機能する。すなわち、受信部14は、複数の振動子から出力された複数の電気信号を整相加算して受信ビームを形成し、送信ビームと方向を同じくして、受信ビームを二次元走査する。
【0024】
受信部14は、受信された超音波パルスに対応するビームデータを生成する。このビームデータは、特定の送受信ビーム方向(送信ビームおよびそれに対応する受信ビームの方向)について、超音波プローブ10からの各距離上で生じた反射波の強度を時間軸上に表したデータである。受信部14は、このように生成したビームデータを断層画像生成部16に出力する。
【0025】
送信部12および受信部14は、被検体に対し送受信ビームの二次元走査を複数回に亘って繰り返し行う。断層画像生成部16は、一断面ごとに得られるビームデータ群に基づいてフレームデータを生成し、コントローラ26の制御を介してフレームデータをメモリ22に記憶させる。
【0026】
フレームデータは、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)に従うフォーマットでメモリ22に保存される。この場合、コントローラ26は、一断面ごとに得られるビームデータ群を、DICOMに従うフォーマットに変換してフレームデータを生成する。
【0027】
コントローラ26は、繰り返し行われる二次元走査によってメモリ22に記憶されたフレームデータを、順次、画像表示部24に出力する。画像表示部24は、ディジタルスキャンコンバータ、ディスプレイ等を備え、フレームデータをビデオ信号に変換してディスプレイに出力する。ディスプレイは、ビデオ信号に基づいて画像を表示する。
【0028】
なお、ここでは、超音波プローブ10として、アレイ振動子プローブについて説明したが、超音波が送受信される面に複数の振動子が配列され、複数の振動子のうち超音波ビームの形成に寄与させるものを選択して電子走査を行うコンベックスプローブ等を採用してもよい。また、送受信ビームを二次元走査面でセクタ走査する構成の他、リニア走査を行う構成を採用してもよい。リニア走査を行う構成としては、複数の振動子が直線状に配列され、超音波を送受信する振動子を配列の一端から他端へと切り替えていく構成や、振動子を直線状に移動させる構成を採用してもよい。
【0029】
図2には、フレームデータが示す画像(以下、フレームデータ画像とする。)の例が示されている。フレームデータ画像においては、図2の拡大部分に示されているように、縦方向(被検体に対する深さ方向)に複数の画素34が配列されたライン画像32が、横方向に並べて配列されている。
【0030】
血管壁は、内膜36、中膜38および外膜40から構成される。内膜36に囲まれた領域は、内腔領域42と称される。一般に、内膜において反射する超音波の強度は、血管中の他の部位で反射する超音波の強度よりも弱い。そのため、図2に示されるように、内膜36の像は、その多くの部分が薄く表示されたり、欠落したりすることが多い。IMT等の診断数値を計算する場合には、内膜が重要である。そこで、本実施形態に係る超音波診断装置は、以下に説明する内膜特定処理によって、断層画像において内膜を特定する。
【0031】
(2)内膜特定処理
内膜特定処理において、画像解析部18が実行する処理について説明する。図3にはそのフローチャートが示されている。この処理においては、フレームデータに対し、血管の内腔領域を特定する処理が実行される。その後、内腔領域の輪郭を表す輪郭線を用いて、内腔領域から血管壁にかけての領域が特定され、その領域における輝度、すなわち画素値の修正が行われる。これによって、内膜が強調され、内膜が強調されたフレームデータに基づいて内膜が特定される。内膜特定処理には、各処理を容易にするための補間処理、フィルタ処理等の補助的な処理が含まれる。以下、内膜特定処理の各ステップについて順に説明する。
【0032】
画像解析部18は、コントローラ26による制御を介して、内膜特定処理の対象とするフレームデータをメモリ22から読み込む(S101)。画像解析部18は、フレームデータにおいて隣り合う画素に補間処理を施し、フレームデータ画像の画素数を増加させる(S102)。これによって、表示される画像の分解能を向上させ視認性を向上させることができる。
【0033】
画像解析部18は、補間処理が施されたフレームデータについて、後述する内腔特定処理を施し、フレームデータ画像について内腔領域を特定する(S103)。内腔領域の特定は、内腔領域を示す画素群の各座標値を求めることで行われる。
【0034】
画像解析部18は、内腔領域が特定されたフレームデータに対し、内腔ノイズフィルタ処理を施す(S104)。この処理は、内腔領域の各画素について、画素値が所定の閾値以下である場合に、その画素値を0に置き換える処理である。これによって、超音波診断装置を構成する各回路で生じる電気的なノイズ、超音波の多重反射等によって血管内腔等に生じるノイズを低減することができる。
【0035】
画像解析部18は、内腔ノイズフィルタ処理が施されたフレームデータに基づいて、血管壁内点設定処理を実行する(S105)。この処理は、フレームデータが示す各ライン画像について、血管壁上に演算用の血管壁内点を設定する処理である。血管壁内点は、後述の内膜強調処理(S107)における演算に用いられる。
【0036】
図4には、1つのライン画像における画素値の分布が概念的に示されている。図中におけるLE、MB、PC、AvBおよびEMの符号は、それぞれ、Lumen Estimation,Max of Brightness,Point of Center,AVerage Brightness,およびEstimate Mediaを示す。x軸は超音波の深さ方向の位置を示し、y軸は画素値を示す。ここでx軸の正方向は深さが深い方向を示すものとする。点LEantは内腔特定処理によって特定された内腔領域の前壁側の輪郭を示し、点LEpostは、内腔特定処理によって特定された内腔領域の後壁側の輪郭を示す。
【0037】
画像解析部18は、点LEantよりも血管中心から離れる側の領域において画素値が最大となる、x軸上の点MBantを特定する。そして、点LEantから点MBantまでの区間における画素平均値AvBantを求め、さらに、画素値が画素平均値AvBantとなるx軸上の点のうち血管中心に最も近い点を血管壁内点EMantとして設定する。
【0038】
同様に、画像解析部18は、図4に示されるように点LEpostよりも血管中心から離れる側の領域において画素値が最大となる、x軸上の点MBpostを特定する。そして、点LEpostから点MBpostまでの区間における画素平均値AvBpostを求め、さらに、画素値が画素平均値AvBpostとなるx軸上の点のうち血管中心に最も近い点を血管壁内点EMpostとして設定する。一般に、内膜は、中膜および外膜に比べて薄いため、このようにして求められた血管壁内点EMantおよびEMpostは、中膜から外膜にかけての領域に位置することが多い。
【0039】
画像解析部18は、このような処理により、内腔領域フィルタ処理が施されたフレームデータが示す各ライン画像について、血管壁内点EMantおよびEMpostを設定する。
【0040】
画像解析部18は、内腔領域フィルタ処理が施されたフレームデータに対し、平均化フィルタ処理を施す(S106)。平均化フィルタ処理は、処理対象の画素と、その画素の周辺の画素とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、処理対象の画素の画素値を、その求められた平均値に置き換えるものである。このような平均化フィルタ処理には、例えば、処理対象の画素と、その上方向のk個の画素(上方向にある画素の個数がk未満であるときは、上方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理、あるいは、処理対象の画素と、その下方向のk個の画素(下方向にある画素の個数がk未満であるときは、下方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理がある。この処理は、一般にkタップ移動平均フィルタ処理と称される。
【0041】
また、処理対象の画素と、その右方向のk個の画素(右方向にある画素の個数がk未満であるときは、右方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理、あるいは、処理対象の画素と、その左方向のk個の画素(左方向にある画素の個数がk未満であるときは、左方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理を実行してもよい。
【0042】
さらに、処理対象の画素と、その画素を囲む画素とを平均値計算の母集団に含めて平均値(処理対象の画素を囲む画素の総てが存在しない場合には、存在する画素の限りにおける平均値)を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理を実行してもよい。
【0043】
フレームデータに対して、平均化フィルタ処理を施すことで、フレームデータ画像が平滑化され、内膜の欠落部分を減少させることができる。
【0044】
画像解析部18は、平均化フィルタ処理が施されたフレームデータに対し、内膜を強調する内膜強調処理を施す(S107)。内膜強調処理において、画像解析部18は、フレームデータが示す各ライン画像について次のような処理を実行する。
【0045】
画像解析部18は、処理対象のライン画像について、血管壁内点EMantおよびEMpostの中点PC(血管中心点)のx座標値を血管中心点座標xcとして求める。さらに、血管中心点PCおよび血管壁内点EMantの中点のx座標値を前壁側血管内座標xaとして求め、血管中心点PCおよび血管壁内点EMpostの中点のx座標値を後壁側血管内座標xpとして求める。そして、ライン画像に含まれる各画素の画素値D(x)を、次の(数1)〜(数3)に基づいて修正し、最適化する。
【0046】
(数1)D(x)=D(x)+G・W(x)
ここで、Gは所定の定数であり、例えば、処理対象のライン画像における画素平均値である。また、x≧xcのときは、
【0047】
(数2)W(x)=γ・(x−xp)
x<xcのときは、
【0048】
(数3)W(x)=−γ・(x−xa)
γは規格化定数であり、例えば、1/(xp−xa)である。このようにγを決定することで、xc−2(xc−xa)≦x≦xcのxの範囲、および、xc≦x≦xc+2(xp−xc)の範囲のそれぞれにおいて、−0.5以上0.5以下の範囲でW(x)の値が規格化される。(数1)は、画素値D(x)を、x座標値に依存する修正値G・W(x)を加算して修正することを意味する。(数2)および(数3)に示されるW(x)は、血管中心点から内膜に近づくにつれて値が増加する関数である。すなわち、定数Gは一定値であるため、血管中心点から内膜に近づくにつれて関数W(x)の値が増加し、内膜が強調される。より具体的には、血管中心点より前壁側の領域においては、前壁側血管内座標点(x=xa)で値が0となる増加関数がW(x)とされ、血管中心点より後壁側の領域においては、後壁側血管内座標点(x=xp)で値が0となる減少関数がW(x)とされる。
【0049】
なお、(数2)および(数3)に示されるように、一次関数によって直線的にW(x)を規定する他、2次以上の関数、指数関数等によって曲線的にW(x)を規定してもよい。この場合においても、xc−2(xc−xa)≦x≦xcのxの範囲、および、xc≦x≦xc+2(xp−xc)の範囲のそれぞれにおいて、−0.5以上0.5以下の範囲でW(x)の値を規格化してもよい。
【0050】
画像解析部18は、このような処理により、平滑化フィルタ処理が施されたフレームデータが示す各ライン画像について、(数1)〜(数3)を適用して内膜を強調する処理を実行する。
【0051】
画像解析部18は、内膜強調処理が施されたフレームデータに基づいて、内膜線を求める処理を実行する(S108)。この処理は、各ライン画像について内膜点を探索することで行われる。図5には、内膜点を探索する処理を説明する概念図として、1つのライン画像における画素値の分布が示されている。図中におけるIPの符号は、Intima Pointを示す。
【0052】
画像解析部18は、点LEantよりも血管中心から離れる側の領域における、点LEantに最も近い変曲点のx座標値を前壁側内膜点IPantの座標値xIantとして求める。この座標値xIantは、点LEantからx軸の負方向に向かって傾きの絶対値を順次求めていったときに、傾きの絶対値が最初に最大値をとる点のx座標値である。
【0053】
同様に、画像解析部18は、点LEpostよりも血管中心から離れる側の領域における、点LEpostに最も近い変曲点のx座標値を後壁側内膜点IPpostの座標値xIpostとして求める。この座標値xIpostは、点LEpostからx軸の正方向に向かって傾きの絶対値を順次求めていったときに、傾きの絶対値が最初に最大値をとる点のx座標値である。
【0054】
画像解析部18は、このような処理により、フレームデータが示す各ライン画像について前壁側内膜点IPantの座標値xIantおよび後壁側内膜点IPpostの座標値xIpostを求める。画像解析部18は、各ライン画像について求められた前壁側内膜点IPantを補間し、前壁側の内膜の断面形状を示す内膜線(内膜線を表す画素群の各座標値)を求める(S108)。さらに、各ライン画像について求められた後壁側内膜点IPpostを補間し、後壁側の内膜を示す内膜線(内膜線を表す画素群の各座標値)を求める(S108)。
【0055】
画像解析部18は、前壁側および後壁側の内膜線を表す画素群の各座標値に基づいて、IMT等の診断数値を計算する。そして、診断数値をコントローラ26の制御を介して画像表示部24に出力する。画像表示部24は、診断数値をディスプレイに表示する。また、画像解析部18は、前壁側および後壁側の内膜線を表す画素群の各座標値を、コントローラ26の制御を介して画像表示部24に出力する。画像表示部24は、フレームデータが示す断層画像に重ねて、前壁側および後壁側の内膜線の画像をディスプレイに表示する。
【0056】
このような処理によれば、フレームデータに基づいて内膜線が求められ、内膜が特定される。これによって、フレームデータが示す断層画像において、内膜が薄く表示されていたり欠落していたりしたとしても、診断数値を高精度で求めることができる。また、フレームデータが示す断層画像に重ねて、前壁側および後壁側の内膜線の画像をディスプレイに表示することで、ユーザは、血管の状態を把握することができる。
【0057】
(3)内腔特定処理
次に、画像解析部18がステップS103において実行する内腔特定処理の具体例について説明する。図6には、内腔特定処理のフローチャートが示されている。この処理においては、初めに、画素値調整処理が実行され、次に、フレームデータに対して画素値の平均化および2値化を施すマスク処理が実行される。そして、内腔領域の画素群の候補となる1つの画素または複数の画素の集合であるマスクが各ライン画像から検出され、各マスクの上端の画素および下端の画素が、それぞれ、マスク上端画素およびマスク下端画素として検出される。さらに、各ライン画像から検出されたマスク上端画素およびマスク下端画素に基づいて、内腔領域の前壁側の輪郭線および内腔領域の後壁側の輪郭線が求められ、これらの輪郭線に基づいて内腔領域が特定される。以下、各ステップについて順に説明する。
【0058】
(3−1)画素値調整処理
画像解析部18は、処理対象のフレームデータに対し画素値調整処理を施す(S201)。この画素値調整処理は、画素値の大小を強調する処理である。すなわち、この処理においては、処理対象のフレームデータに対し、画素値の基準値Stが指定される。そして、基準値Stよりも大きい画素値を有する画素については画素値がそれよりも大きい値に変更され、基準値Stよりも小さい画素値を有する画素については画素値がそれよりも小さい値に変更される。また、基準値Stと同一の画素値を有する画素については画素値が維持される。基準値Stは、例えば、操作パネル20からコントローラ26を介して指定される値、フレームデータにおける画素値の最大値と最小値との中間の値(中央値)、あるいはフレームデータにおける画素値の平均値である。1つの処理例として、画像解析部18は、フレームデータに含まれる各画素値Dについて、以下の(数4)に従って、画素値Dを変更する。
【0059】
(数4) D=tanθ・(D−St)+St
θは、例えば、画像解析部18において予め設定される値、あるいは操作パネル20からコントローラ26を介して指定される値である。θは(数4)で表される直線の傾き角度を示し、好ましくは45°以上の値である。θが大きい程、画素値の大小の強調の程度が大きくなる。
【0060】
(3−2)マスク処理
画像解析部18は、画素値調整処理が施されたフレームデータについてマスク処理(S202)を施す。マスク処理は、フレームデータ画像の各画素について平均化を行い、さらに、平均化された各画素について2値化を行う処理である。
【0061】
図7には、1つのフレームデータが示す画素群が概念的に示されている。フレームデータ画像は、横方向に並べられた複数のライン画像によって構成される。このフレームデータ画像は、縦方向が被検体の深さ方向と一致し、横方向に伸びる血管断面を表すものとする。フレームデータにおいては、縦方向にM個の画素が配列され、横方向にN個の画素が配列されている。また、縦方向にはH1〜HMのアドレスが割り当てられ、横方向にはL1〜LNのアドレスが割り当てられている。
【0062】
画像解析部18は、アドレス(Li,Hj)の画素について、次のような処理によってマスク処理を行う。画像解析部18は、アドレス(Li,H1)〜アドレス(Li,HM)の画素値の平均値をマスク判定値Kとして求める。そして、アドレス(Li,Hj-p)〜アドレス(Li,Hj+p)の画素値の平均値を区間平均値ITVmean(Interval mean)として求める。ただし、j≦pである場合には、アドレス(Li,H1)〜アドレス(Li,Hj+p)の画素値の平均値を区間平均値ITVmeanとし、j≧M−p+1である場合には、アドレス(Li,Hj-p)〜アドレス(Li,HM)の画素値の平均値を区間平均値ITVmeanとする。すなわち、j≦pまたはj≧M−p+1である場合には、アドレス(Li,Hj)の画素の前壁側または後壁側にある画素の数がp個より少ないため、前壁側または後壁側にある画素の限りにおいて区間平均値ITVmeanを求める。
【0063】
画像解析部18は、求められた区間平均値ITVmeanがマスク判定値Kを超える場合には、アドレス(Li,Hj)の新たな画素値として0を設定し、求められた区間平均値ITVmeanがマスク判定値K以下である場合には、アドレス(Li,Hj)の新たな画素値として1を設定する。
【0064】
例えば、アドレス(L3,H7)に対し、p=5のマスク処理を施す場合には、図7に示されるアドレス(L3,H2)〜アドレス(L3,H12)の画素群に基づいて区間平均値Avが求められ、区間平均値ITVmeanとマスク判定値Kとの比較に基づく2値化が行われる。また、アドレス(L7,H3)に対し、p=5のマスク処理を施す場合には、図7に示されるアドレス(L7,H1)〜アドレス(L3,H8)の画素群に基づいて区間平均値ITVmeanが求められ、区間平均値ITVmeanとマスク判定値Kとの比較に基づく2値化が行われる。
【0065】
図8には、マスク処理が施されたフレームデータ画像が概念的に示されている。図8において網掛けが施された画素は、画素値が1に設定された画素であり、網掛けが施されていない画素は、画素値が0に設定された画素である。以下、画素値が1である画素を有効画素と称する。このようなマスク処理によれば、フレームデータ画素が平滑化された上で、内腔領域を示す候補となる画素が有効画素として求められる。
【0066】
(3−3)マスクの検出、ならびにマスク上端画素およびマスク下端画素の検出
画像解析部18は、次に説明する処理に従って、マスク処理が施されたフレームデータについて血管の内腔領域の上下の輪郭線を求め、内腔領域を特定する。ここでは、横方向のアドレスがLi(i=1〜N)である画素群によって示されるライン画像を符号「Li」を以て表すこととする。
【0067】
画像解析部18は、図6でフレームデータが示す複数のライン画像のそれぞれについて、有効画素からなるマスクを検出する(S203)。マスクは、内腔領域を構成する候補となる区間であり、1つの画素または複数の画素の集合である。画像解析部18は、有効画素の各座標値に基づき、ライン画像L1〜LNのそれぞれからマスクを検出する。
【0068】
例えば、図8に示されるフレームデータについて、画像解析部18は、ライン画像L1から12画素の長さを有するマスクを検出し、ライン画像L2から1画素の長さを有するマスクおよび4画素の長さを有するマスクを検出する。また、ライン画像L3から13画素の長さを有するマスクを検出し、ライン画像L4から6画素の長さを有するマスクを検出する。画像解析部18は、ライン画像L5〜LNのそれぞれについても、同様にしてマスクを検出する。
【0069】
マスクを検出した後、画像解析部18は、マスクの長さが所定の閾値TH以上であるマスクについて、マスクの上端の画素をマスク上端画素として検出し、マスクの下端の画素をマスク下端画素として検出する(S204)。マスク上端画素およびマスク下端画素の検出は、それぞれの座標値を取得することで行われる。なお、マスクの長さが所定の閾値TH未満であるマスクについては、マスク上端画素およびマスク下端画素の検出から除外される。
【0070】
図9には、閾値THを6画素長とした場合について検出されたマスク上端画素およびマスク下端画素が点「●」を付された画素として示されている。ライン画像L2、L7、L8およびL19における画素長が6画素未満のマスクについては、マスク上端画素およびマスク下端画素の検出対象から除外されている。
【0071】
ここでは、説明の便宜上、閾値THを6画素長としているが、実際の画素は図9に示されている画素より微細であるため、画素長換算による閾値THは、実際にはこれより大きい値となる。好ましくは、被検体における血管径よりも短い長さに相当する画素長とする。一般に、被検体の頸動脈は、5mm〜9mmであり、診断対象が頸動脈である場合には、閾値THは5mmに相当する画素長より短い画素長とすることが好ましい。
【0072】
(3−4)輪郭線および内腔領域の特定
マスク上端画素およびマスク下端画素を検出した後、画像解析部18は、マスク上端画素およびマスク下端画素の各座標値に基づいて、内腔領域の前壁側および後壁側の各輪郭線を求め、内腔領域を特定する(S205)。内腔領域の各輪郭線は、次のようにして求められる。
【0073】
画像解析部18は、フレームデータ画像を横切る方向にマスク上端画素を探索し、内腔領域の前壁側の輪郭線を求める元となり得る複数のマスク上端画素を検出する。この探索においては、先に検出されたマスク上端画素の位置を基準として、深さの差異が所定値以下であるという条件の下で、マスク上端画素の右側方向に次のマスク上端画素を探索する。画像解析部18は、内腔領域の前壁側の輪郭線を求める元となり得る画素として検出された複数のマスク上端画素の各位置に基づいて前壁側の輪郭線を求める。また、画像解析部18は、前壁側の輪郭線を求める処理と同様の処理によって、後壁側の輪郭線を求める。画像解析部18は、前壁側の輪郭線と後壁側の輪郭線との間に挟まれる領域を内腔領域として特定する。
【0074】
(3−5)内腔領域を特定する処理の具体例
マスク上端画素およびマスク下端画素を検出し、内腔領域の輪郭線を求め、内腔領域を特定する処理の具体例について、図10および図11を参照して説明する。図10および図11には、内腔領域の前壁側の輪郭線を求める処理を説明するための概念図およびフローチャートが、それぞれ示されている。
【0075】
画像解析部18は、図11のフローチャートに示される処理において、マスク上端画素を前壁側の輪郭線を求める元となり得る複数のグループに分類する。そして、前壁側の輪郭線を求めるのに最も適したグループを選択し、そのグループに属する複数のマスク上端画素の各位置に基づいて前壁側の輪郭線を求める。以下、詳細について図11のフローチャートに沿って説明する。
【0076】
画像解析部18は、縦方向に伸びる検索開始線SPをライン画像L1の左側に設定し、検索開始線SP上に間隔δで検索開始点SPA〜SPEを設定する(S301)。ここで間隔δは、例えば、診断対象とする血管の内径の最小値とする。また、検索開始点は、説明の便宜上、SPA〜SPEの5個としているが、フレームデータ画像の縦方向の長さに応じた個数の検索開始点が設定される。画像解析部18は、検索開始線SPの右側に隣接するライン画像L1を、マスク前壁側画素を探索する探索ライン画像とする(S302)。
【0077】
画像解析部18は、探索ライン画像上においてマスク上端画素を探索する(S303)。すなわち、探索ライン画像に沿って、マスク上端画素が検出されるか否かを判定する(S304)。そして、探索ライン画像上にマスク上端側画素を検出したときは、そのマスク上端画素と、探索開始点SPZ、すなわち探索開始点SPA〜SPEのうち処理対象として選択している探索開始点との間の深さの差異dが間隔δ以下であるか否かを判定する(S305)。
【0078】
画像解析部18は、この差異dが間隔δ以下である場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZ、すなわち探索開始点SPZに対応するグループに含める(S306)。なお、探索ライン画像にこのようなマスク上端画素が複数ある場合には、探索開始点SPZとの深さの差異が最小のものをグループGrZに含める。画像解析部18は、探索ライン画像としていたライン画像L1を、後述の処理において基準とする基準ライン画像とし(S307)、ライン画像L1の右側に隣接するライン画像L2を新たな探索ライン画像とする(S308)。
【0079】
他方、画像解析部18は、探索ライン画像のマスク上端画素と、探索開始点SPZとの深さの差異dが間隔δを超える場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZに含めずにステップS308に移行する(S305)。
【0080】
画像解析部18は、ステップS304において探索ライン画像のマスク上端画素が検出されなかった場合、または、ステップS305において、探索ライン画像のマスク上端画素と、探索開始点SPZとの深さの差異dが間隔δを超えると判定した場合には、探索ライン画像としていたライン画像L1の右側に隣接するライン画像L2を新たな探索ライン画像とする(S308)。
【0081】
画像解析部18は、新たな探索ライン画像上においてマスク上端側画素を探索する(S309)すなわち、探索ライン画像に沿って、マスク上端画素が検出されるか否かを判定する(S310)。そして、探索ライン画像上にマスク上端側画素を検出したときは、そのマスク上端画素と、基準ライン画像のマスク上端画素(ステップS307を迂回し、ステップS308からステップS309に移行した場合には探索開始点SPZ、以下、同様とする。)との深さの差異dが間隔δ以下であるか否かを判定する(S311)。
【0082】
画像解析部18は、この差異dが間隔δ以下である場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZに含める(S312)。なお、探索ライン画像にこのようなマスク上端画素が複数ある場合には、基準ライン画像のマスク上端画素との深さの差異が最小のものをグループGrZに含める。画像解析部18は、探索ライン画像が、最も右側のライン画像LNであるか否かを判定する(S313)。そして、探索ライン画像がライン画像LNであるときは処理を終了し、ライン画像LNでないときは、探索ライン画像としていたライン画像を新たな基準ライン画像とする(S314)。画像解析部18は、さらに、探索ライン画像としていたライン画像の右側に隣接するライン画像を新たな探索ライン画像として(S315)、ステップS309に戻る。
【0083】
他方、画像解析部18は、探索ライン画像のマスク上端画素と、基準ライン画像のマスク上端画素との深さの差異dが間隔δを超える場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZに含めずにステップS316に移行する(S311)。
【0084】
画像解析部18は、ステップS310において探索ライン画像のマスク上端画素が検出されなかった場合、または、ステップS311において、探索ライン画像のマスク上端画素と、基準ライン画像のマスク上端画素との深さの差異dが間隔δを超えると判定した場合は、探索ライン画像が、最も右側のライン画像LNであるか否かを判定する(S316)。そして、探索ライン画像がライン画像LNであるときは処理を終了し、ライン画像LNでないときは、探索ライン画像の右側に隣接するライン画像を新たな探索ライン画像とし(S315)、ステップS309に戻る。
【0085】
例として、図10の探索開始点SPCに対応するグループGrCについて説明する。ライン画像L1を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α1、α7およびα11は、探索開始点SPCとの深さの差異が間隔δを超えるため、グループGrCに含めない。ライン画像L2を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α8は、探索開始点SPCとの深さの差異が間隔δ以下であるため、グループGrCに含める。ライン画像L3を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α3は、マスク上端画素α8との深さの差異が間隔δを超えるため、グループGrCに含めない。ライン画像L4を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α4およびα13は、マスク上端画素α8との深さの差異が間隔δを超えるため、グループGrCに含めない。ライン画像L5を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α9は、マスク上端画素α8との深さの差異が間隔δ以下であるため、グループGrCに含める。ライン画像L6を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α10は、マスク上端画素α9との深さの差異が間隔δ以下であるため、グループGrCに含める。このようにして、マスク上端画素α7〜α10をグループGrCに含める。
【0086】
同様にして、検索開始点SPAに対応するグループGrAにマスク上端画素α1〜α6を含め、検索開始点SPBに対応するグループGrBにマスク上端画素α2〜α6を含める。また、検索開始点SPDに対応するグループGrDにマスク上端画素α7〜α10を含め、検索開始点SPEに対応するグループGrEにマスク上端画素α11〜α15を含める。
【0087】
各グループについては、図11のステップS306およびS307、または、S311〜S314が迂回された回数、すなわち、ライン画像L1〜LNのうち、マスク上端画素がグループGrZに含められなかったものの数がペナルティとしてカウントされる。ペナルティは、輪郭線を求めるのに適さないグループである度合いを示す。例えば、図10に示されるライン画像L1〜L6に着目すると、グループGrAについては、ライン画像L1〜L6のそれぞれから1つのマスク上端画素をグループGrAに含めたためペナルティは0となる。グループGrBについては、ライン画像L1のマスク上端画素をグループGrBに含めなかったためペナルティは1となる。グループGrCについては、ライン画像L1、L3およびL4のマスク上端画素をグループGrCに含めなかったためペナルティは3となる。グループGrDについては、ライン画像L3およびL4のマスク上端画素をグループGrDに含めなかったためペナルティは2となる。そして、グループGrEについては、ライン画像L3のマスク上端画素をグループGrEに含めなかったためペナルティは1となる。
【0088】
画像解析部18は、グループGrA〜GrEのうち、ペナルティが最も小さいグループに属するマスク上端画素の集合を抽出する。図10に示される例では、グループGrAに属するマスク上端画素の集合を抽出することとなる。画像解析部18は、抽出された画素の集合を補間して得られる画素の集合を、内腔領域の前壁側の輪郭線を示す前壁側輪郭線画素群とし各座標値を求める。図12には前壁側輪郭線画素群44を、太線で示している。
【0089】
画像解析部18は、各ライン画像におけるマスク下端画素についても同様の処理を実行し、内腔領域の後壁側の輪郭線を示す後壁側輪郭線画素群の各座標値を求める。図12には後壁側輪郭線画素群46を、太線で示している。
【0090】
画像解析部18は、フレームデータ画像に含まれる画素のうち、前壁側輪郭線画素群、後壁側輪郭線画素群、および、前壁側輪郭線画素群と後壁側輪郭線画素群との間に挟まれる画素群を内腔領域を示す画素群として特定し、各画素の座標値を取得する。
【0091】
このような処理によれば、ペナルティが最も小さいグループに属するマスク上端画素に基づいて、前壁側輪郭線画素群および後壁側輪郭線画素群が特定される。これによって、最も確かな内腔領域の画素群の座標値が求められる。内腔領域の画素群の各座標値は、上述のように、内膜特定処理に用いる。
【符号の説明】
【0092】
10 超音波プローブ、12 送信部、14 受信部、16 断層画像生成部、18 画像解析部、20 操作パネル、22 メモリ、24 画像表示部、26 コントローラ、28 二次元走査面、30 送受信ビーム、32 ライン画像、34 画素、36 内膜、38 中膜、40 外膜、42 内腔領域、44 前壁側輪郭線画素群、46 後壁側輪郭線画素群。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理装置に関し、特に、画像上において血管の内膜を特定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の循環器、血管等を診断する装置として超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置は、超音波を被検体に向けて送信し、被検体内で反射した超音波に基づいて断層画像をディスプレイに表示する。血管の診断に際しては血管断面が断層画像に表示され、ユーザは、動脈硬化の有無等を把握する。
【0003】
また、超音波診断装置には、下記の特許文献1に記載されているように、血管断面を表す断層画像データに対する数値演算に基づいて、IMT(Intima-Media Thickness)等の診断数値を取得するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−75306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断層画像に基づく血管の診断においては、血管壁を構成する内膜、中膜および外膜のうち、内膜の画像が重要となることが多い。しかし、内膜において反射する超音波の強度は、血管中の他の部位で反射する超音波の強度よりも弱い。したがって、超音波診断装置において取得された画像から、血管の内膜を特定することは困難を伴う。
【0006】
本発明は、超音波診断装置によって取得された画像について、血管の内膜を容易に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検体内における血管で反射した超音波を受信する受信部と、前記受信部によって受信された超音波に基づいて画像データを生成する画像生成部と、前記画像データが示す画像について、前記血管の内腔に含まれる領域を内腔領域として特定する内腔特定部と、前記画像データが示す画像について、前記内腔領域から血管壁にかけての画素値の変化に基づいて、前記血管の内膜を特定する内膜特定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
内腔領域は、反射する超音波の強度が弱い領域であるため、血管壁の領域よりも特定が容易であることが多い。本発明においては、内腔領域が特定された上で、内腔領域を基準として血管の内膜が特定される。したがって、内膜において反射する超音波の強度が弱い場合であっても、容易に内膜が特定される。
【0009】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記画像データは、線状に画素が配列されたライン画像をそれぞれが示す複数のラインデータを含み、前記複数のラインデータが示す複数のライン画像を方向を揃えて配列した画像を示し、前記内腔特定部は、各ライン画像を横切る方向に前記内腔領域の輪郭を探索する輪郭探索手段を備える。
【0010】
本発明によれば、各ライン画像が個別に取得された後、各ライン画像を横切る方向に内腔領域の輪郭が探索される。これによって、各ライン画像を取得する処理と、内腔領域を特定する処理とが独立に行われ、各ライン画像ごとに施される処理が容易となる。
【0011】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記輪郭探索手段は、各ライン画像について、前記内腔領域をなす区間の候補となる候補区間を特定する候補区間特定手段と、特定された複数の候補区間のうち所定の閾値以上の長さを有する候補区間の端の位置に基づいて、前記内腔領域の輪郭を探索する探索手段と、を備える。
【0012】
本発明によれば、各ライン画像について、内腔領域をなす区間の候補となる候補区間が特定され、特定された複数の候補区間のうち所定の閾値以上の長さを有する候補区間の端の位置に基づいて内腔領域の輪郭が探索される。したがって、所定の長さより短い候補区間は、内腔領域の輪郭を探索する処理から除外される。これによって、ライン画像に含まれるノイズ等の影響が抑制され、内腔領域の輪郭が確実に探索される。
【0013】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記内膜特定部は、前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、前記血管壁内点の位置に基づいて前記内腔領域から前記血管壁にかけての領域を特定して当該領域における画素値の修正を行い、前記内膜の画素値を強調する画素値修正手段と、を備え、修正後の画素値に基づいて、内膜を特定する。
【0014】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記内膜特定部は、前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、対向する2つの前記血管壁内点間の中点の位置を求め、当該中点から修正対象の画素までの距離に応じて、当該修正対象の画素の画素値の修正を行い、前記内膜を強調する画素値修正手段と、を備え、修正後の画素値に基づいて、内膜を特定する。
【0015】
本発明によれば、例えば、画素の位置に対してその画素の修正値が与えられる関数を定義し、その関数によって、内膜を強調する処理を実行することが可能となる。したがって、本発明によれば、幾何学的な処理によって、内腔領域から血管壁にかけての画素値の修正を行い、内膜を強調する処理を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、超音波診断装置によって取得された画像について、血管の内膜を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】フレームデータが示す画像の例を示す図である。
【図3】内膜特定処理において画像解析部が実行する処理を示す図である。
【図4】1つのライン画像における画素値の分布を概念的に示す図である。
【図5】内膜点を探索する処理を説明する概念図である。
【図6】内腔特定処理のフローチャートである。
【図7】1つのフレームデータが示す画素群を概念的に示す図である。
【図8】マスク処理が施されたフレームデータ画像を概念的に示す図である。
【図9】マスク上端画素およびマスク下端画素を示す図である。
【図10】内腔領域の前壁の輪郭線を求める処理を説明するための概念図である。
【図11】内腔領域の前壁の輪郭線を求める処理を示すフローチャートである。
【図12】前壁輪郭線画素群および後壁輪郭線画素群を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)超音波診断装置の基本的な構成および動作
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成が示されている。超音波診断装置は、被検体の組織の断面を画像の輝度の強弱によって示す断層画像を表示する。この超音波診断装置は、断層画像上に血管断面を表した場合には、断層画像上における血管の内膜を特定する機能を有する。内膜の特定は、断層画像を示すフレームデータに基づいて、内膜を表す内膜線を求めることによって行われる。内膜線は断層画像に重ねて表示される。また、求められた内膜線に基づいて、IMT等の診断数値が計算される。
【0019】
超音波診断装置は、超音波プローブ10、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18、操作パネル20、メモリ22、画像表示部24、およびコントローラ26を備える。コントローラ26は、操作パネル20における動作設定に応じて、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18および画像表示部24を制御する。
【0020】
また、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18、および画像表示部24は、演算処理を実行するプロセッサを備え、それぞれ、演算の過程で得られた情報を記憶する局所的メモリを有する。これらの構成要素は、自らの局所的メモリに情報を記憶させる他、コントローラ26の制御を介してメモリ22に情報を記憶させ、コントローラ26の制御を介して必要に応じてメモリ22からその情報を読み込んでもよい。
【0021】
断層画像を示すフレームデータを取得するための構成および処理につき説明する。超音波プローブ10には、例えば、複数の振動子が配列されたアレイ振動子プローブが用いられる。超音波診断装置においては、超音波プローブ10による送受信ビーム30の二次元走査面28が観測面とされ、その観測面における断層画像が画像表示部24に表示される。そのため、超音波プローブ10は、超音波が送受信される面が被検体に向けられ、二次元走査面が診断対象の血管の軸断面と一致する姿勢で支持される。
【0022】
送信部12は、パルス変調された電気信号(パルス変調信号)を超音波プローブ10の各振動子に出力する。各振動子は、送信部12から出力されたパルス変調信号に基づいて、超音波パルスを発生する。この際、送信部12は、送信される超音波パルスのビームフォーマとして機能する。すなわち、送信部12は、各振動子に出力する信号の遅延時間を制御して送信ビームを形成し、送信ビームを二次元走査する。この二次元走査には、超音波プローブ10側を軸として扇状に送信ビームを走査するセクタ走査を採用してもよい。
【0023】
超音波プローブ10の各振動子は、被検体内において反射した超音波パルスを受信する。各振動子は、受信した超音波パルスに基づいて電気信号を発生し、その電気信号を受信部14に出力する。受信部14は、受信される超音波パルスのビームフォーマとして機能する。すなわち、受信部14は、複数の振動子から出力された複数の電気信号を整相加算して受信ビームを形成し、送信ビームと方向を同じくして、受信ビームを二次元走査する。
【0024】
受信部14は、受信された超音波パルスに対応するビームデータを生成する。このビームデータは、特定の送受信ビーム方向(送信ビームおよびそれに対応する受信ビームの方向)について、超音波プローブ10からの各距離上で生じた反射波の強度を時間軸上に表したデータである。受信部14は、このように生成したビームデータを断層画像生成部16に出力する。
【0025】
送信部12および受信部14は、被検体に対し送受信ビームの二次元走査を複数回に亘って繰り返し行う。断層画像生成部16は、一断面ごとに得られるビームデータ群に基づいてフレームデータを生成し、コントローラ26の制御を介してフレームデータをメモリ22に記憶させる。
【0026】
フレームデータは、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)に従うフォーマットでメモリ22に保存される。この場合、コントローラ26は、一断面ごとに得られるビームデータ群を、DICOMに従うフォーマットに変換してフレームデータを生成する。
【0027】
コントローラ26は、繰り返し行われる二次元走査によってメモリ22に記憶されたフレームデータを、順次、画像表示部24に出力する。画像表示部24は、ディジタルスキャンコンバータ、ディスプレイ等を備え、フレームデータをビデオ信号に変換してディスプレイに出力する。ディスプレイは、ビデオ信号に基づいて画像を表示する。
【0028】
なお、ここでは、超音波プローブ10として、アレイ振動子プローブについて説明したが、超音波が送受信される面に複数の振動子が配列され、複数の振動子のうち超音波ビームの形成に寄与させるものを選択して電子走査を行うコンベックスプローブ等を採用してもよい。また、送受信ビームを二次元走査面でセクタ走査する構成の他、リニア走査を行う構成を採用してもよい。リニア走査を行う構成としては、複数の振動子が直線状に配列され、超音波を送受信する振動子を配列の一端から他端へと切り替えていく構成や、振動子を直線状に移動させる構成を採用してもよい。
【0029】
図2には、フレームデータが示す画像(以下、フレームデータ画像とする。)の例が示されている。フレームデータ画像においては、図2の拡大部分に示されているように、縦方向(被検体に対する深さ方向)に複数の画素34が配列されたライン画像32が、横方向に並べて配列されている。
【0030】
血管壁は、内膜36、中膜38および外膜40から構成される。内膜36に囲まれた領域は、内腔領域42と称される。一般に、内膜において反射する超音波の強度は、血管中の他の部位で反射する超音波の強度よりも弱い。そのため、図2に示されるように、内膜36の像は、その多くの部分が薄く表示されたり、欠落したりすることが多い。IMT等の診断数値を計算する場合には、内膜が重要である。そこで、本実施形態に係る超音波診断装置は、以下に説明する内膜特定処理によって、断層画像において内膜を特定する。
【0031】
(2)内膜特定処理
内膜特定処理において、画像解析部18が実行する処理について説明する。図3にはそのフローチャートが示されている。この処理においては、フレームデータに対し、血管の内腔領域を特定する処理が実行される。その後、内腔領域の輪郭を表す輪郭線を用いて、内腔領域から血管壁にかけての領域が特定され、その領域における輝度、すなわち画素値の修正が行われる。これによって、内膜が強調され、内膜が強調されたフレームデータに基づいて内膜が特定される。内膜特定処理には、各処理を容易にするための補間処理、フィルタ処理等の補助的な処理が含まれる。以下、内膜特定処理の各ステップについて順に説明する。
【0032】
画像解析部18は、コントローラ26による制御を介して、内膜特定処理の対象とするフレームデータをメモリ22から読み込む(S101)。画像解析部18は、フレームデータにおいて隣り合う画素に補間処理を施し、フレームデータ画像の画素数を増加させる(S102)。これによって、表示される画像の分解能を向上させ視認性を向上させることができる。
【0033】
画像解析部18は、補間処理が施されたフレームデータについて、後述する内腔特定処理を施し、フレームデータ画像について内腔領域を特定する(S103)。内腔領域の特定は、内腔領域を示す画素群の各座標値を求めることで行われる。
【0034】
画像解析部18は、内腔領域が特定されたフレームデータに対し、内腔ノイズフィルタ処理を施す(S104)。この処理は、内腔領域の各画素について、画素値が所定の閾値以下である場合に、その画素値を0に置き換える処理である。これによって、超音波診断装置を構成する各回路で生じる電気的なノイズ、超音波の多重反射等によって血管内腔等に生じるノイズを低減することができる。
【0035】
画像解析部18は、内腔ノイズフィルタ処理が施されたフレームデータに基づいて、血管壁内点設定処理を実行する(S105)。この処理は、フレームデータが示す各ライン画像について、血管壁上に演算用の血管壁内点を設定する処理である。血管壁内点は、後述の内膜強調処理(S107)における演算に用いられる。
【0036】
図4には、1つのライン画像における画素値の分布が概念的に示されている。図中におけるLE、MB、PC、AvBおよびEMの符号は、それぞれ、Lumen Estimation,Max of Brightness,Point of Center,AVerage Brightness,およびEstimate Mediaを示す。x軸は超音波の深さ方向の位置を示し、y軸は画素値を示す。ここでx軸の正方向は深さが深い方向を示すものとする。点LEantは内腔特定処理によって特定された内腔領域の前壁側の輪郭を示し、点LEpostは、内腔特定処理によって特定された内腔領域の後壁側の輪郭を示す。
【0037】
画像解析部18は、点LEantよりも血管中心から離れる側の領域において画素値が最大となる、x軸上の点MBantを特定する。そして、点LEantから点MBantまでの区間における画素平均値AvBantを求め、さらに、画素値が画素平均値AvBantとなるx軸上の点のうち血管中心に最も近い点を血管壁内点EMantとして設定する。
【0038】
同様に、画像解析部18は、図4に示されるように点LEpostよりも血管中心から離れる側の領域において画素値が最大となる、x軸上の点MBpostを特定する。そして、点LEpostから点MBpostまでの区間における画素平均値AvBpostを求め、さらに、画素値が画素平均値AvBpostとなるx軸上の点のうち血管中心に最も近い点を血管壁内点EMpostとして設定する。一般に、内膜は、中膜および外膜に比べて薄いため、このようにして求められた血管壁内点EMantおよびEMpostは、中膜から外膜にかけての領域に位置することが多い。
【0039】
画像解析部18は、このような処理により、内腔領域フィルタ処理が施されたフレームデータが示す各ライン画像について、血管壁内点EMantおよびEMpostを設定する。
【0040】
画像解析部18は、内腔領域フィルタ処理が施されたフレームデータに対し、平均化フィルタ処理を施す(S106)。平均化フィルタ処理は、処理対象の画素と、その画素の周辺の画素とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、処理対象の画素の画素値を、その求められた平均値に置き換えるものである。このような平均化フィルタ処理には、例えば、処理対象の画素と、その上方向のk個の画素(上方向にある画素の個数がk未満であるときは、上方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理、あるいは、処理対象の画素と、その下方向のk個の画素(下方向にある画素の個数がk未満であるときは、下方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理がある。この処理は、一般にkタップ移動平均フィルタ処理と称される。
【0041】
また、処理対象の画素と、その右方向のk個の画素(右方向にある画素の個数がk未満であるときは、右方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理、あるいは、処理対象の画素と、その左方向のk個の画素(左方向にある画素の個数がk未満であるときは、左方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理を実行してもよい。
【0042】
さらに、処理対象の画素と、その画素を囲む画素とを平均値計算の母集団に含めて平均値(処理対象の画素を囲む画素の総てが存在しない場合には、存在する画素の限りにおける平均値)を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理を実行してもよい。
【0043】
フレームデータに対して、平均化フィルタ処理を施すことで、フレームデータ画像が平滑化され、内膜の欠落部分を減少させることができる。
【0044】
画像解析部18は、平均化フィルタ処理が施されたフレームデータに対し、内膜を強調する内膜強調処理を施す(S107)。内膜強調処理において、画像解析部18は、フレームデータが示す各ライン画像について次のような処理を実行する。
【0045】
画像解析部18は、処理対象のライン画像について、血管壁内点EMantおよびEMpostの中点PC(血管中心点)のx座標値を血管中心点座標xcとして求める。さらに、血管中心点PCおよび血管壁内点EMantの中点のx座標値を前壁側血管内座標xaとして求め、血管中心点PCおよび血管壁内点EMpostの中点のx座標値を後壁側血管内座標xpとして求める。そして、ライン画像に含まれる各画素の画素値D(x)を、次の(数1)〜(数3)に基づいて修正し、最適化する。
【0046】
(数1)D(x)=D(x)+G・W(x)
ここで、Gは所定の定数であり、例えば、処理対象のライン画像における画素平均値である。また、x≧xcのときは、
【0047】
(数2)W(x)=γ・(x−xp)
x<xcのときは、
【0048】
(数3)W(x)=−γ・(x−xa)
γは規格化定数であり、例えば、1/(xp−xa)である。このようにγを決定することで、xc−2(xc−xa)≦x≦xcのxの範囲、および、xc≦x≦xc+2(xp−xc)の範囲のそれぞれにおいて、−0.5以上0.5以下の範囲でW(x)の値が規格化される。(数1)は、画素値D(x)を、x座標値に依存する修正値G・W(x)を加算して修正することを意味する。(数2)および(数3)に示されるW(x)は、血管中心点から内膜に近づくにつれて値が増加する関数である。すなわち、定数Gは一定値であるため、血管中心点から内膜に近づくにつれて関数W(x)の値が増加し、内膜が強調される。より具体的には、血管中心点より前壁側の領域においては、前壁側血管内座標点(x=xa)で値が0となる増加関数がW(x)とされ、血管中心点より後壁側の領域においては、後壁側血管内座標点(x=xp)で値が0となる減少関数がW(x)とされる。
【0049】
なお、(数2)および(数3)に示されるように、一次関数によって直線的にW(x)を規定する他、2次以上の関数、指数関数等によって曲線的にW(x)を規定してもよい。この場合においても、xc−2(xc−xa)≦x≦xcのxの範囲、および、xc≦x≦xc+2(xp−xc)の範囲のそれぞれにおいて、−0.5以上0.5以下の範囲でW(x)の値を規格化してもよい。
【0050】
画像解析部18は、このような処理により、平滑化フィルタ処理が施されたフレームデータが示す各ライン画像について、(数1)〜(数3)を適用して内膜を強調する処理を実行する。
【0051】
画像解析部18は、内膜強調処理が施されたフレームデータに基づいて、内膜線を求める処理を実行する(S108)。この処理は、各ライン画像について内膜点を探索することで行われる。図5には、内膜点を探索する処理を説明する概念図として、1つのライン画像における画素値の分布が示されている。図中におけるIPの符号は、Intima Pointを示す。
【0052】
画像解析部18は、点LEantよりも血管中心から離れる側の領域における、点LEantに最も近い変曲点のx座標値を前壁側内膜点IPantの座標値xIantとして求める。この座標値xIantは、点LEantからx軸の負方向に向かって傾きの絶対値を順次求めていったときに、傾きの絶対値が最初に最大値をとる点のx座標値である。
【0053】
同様に、画像解析部18は、点LEpostよりも血管中心から離れる側の領域における、点LEpostに最も近い変曲点のx座標値を後壁側内膜点IPpostの座標値xIpostとして求める。この座標値xIpostは、点LEpostからx軸の正方向に向かって傾きの絶対値を順次求めていったときに、傾きの絶対値が最初に最大値をとる点のx座標値である。
【0054】
画像解析部18は、このような処理により、フレームデータが示す各ライン画像について前壁側内膜点IPantの座標値xIantおよび後壁側内膜点IPpostの座標値xIpostを求める。画像解析部18は、各ライン画像について求められた前壁側内膜点IPantを補間し、前壁側の内膜の断面形状を示す内膜線(内膜線を表す画素群の各座標値)を求める(S108)。さらに、各ライン画像について求められた後壁側内膜点IPpostを補間し、後壁側の内膜を示す内膜線(内膜線を表す画素群の各座標値)を求める(S108)。
【0055】
画像解析部18は、前壁側および後壁側の内膜線を表す画素群の各座標値に基づいて、IMT等の診断数値を計算する。そして、診断数値をコントローラ26の制御を介して画像表示部24に出力する。画像表示部24は、診断数値をディスプレイに表示する。また、画像解析部18は、前壁側および後壁側の内膜線を表す画素群の各座標値を、コントローラ26の制御を介して画像表示部24に出力する。画像表示部24は、フレームデータが示す断層画像に重ねて、前壁側および後壁側の内膜線の画像をディスプレイに表示する。
【0056】
このような処理によれば、フレームデータに基づいて内膜線が求められ、内膜が特定される。これによって、フレームデータが示す断層画像において、内膜が薄く表示されていたり欠落していたりしたとしても、診断数値を高精度で求めることができる。また、フレームデータが示す断層画像に重ねて、前壁側および後壁側の内膜線の画像をディスプレイに表示することで、ユーザは、血管の状態を把握することができる。
【0057】
(3)内腔特定処理
次に、画像解析部18がステップS103において実行する内腔特定処理の具体例について説明する。図6には、内腔特定処理のフローチャートが示されている。この処理においては、初めに、画素値調整処理が実行され、次に、フレームデータに対して画素値の平均化および2値化を施すマスク処理が実行される。そして、内腔領域の画素群の候補となる1つの画素または複数の画素の集合であるマスクが各ライン画像から検出され、各マスクの上端の画素および下端の画素が、それぞれ、マスク上端画素およびマスク下端画素として検出される。さらに、各ライン画像から検出されたマスク上端画素およびマスク下端画素に基づいて、内腔領域の前壁側の輪郭線および内腔領域の後壁側の輪郭線が求められ、これらの輪郭線に基づいて内腔領域が特定される。以下、各ステップについて順に説明する。
【0058】
(3−1)画素値調整処理
画像解析部18は、処理対象のフレームデータに対し画素値調整処理を施す(S201)。この画素値調整処理は、画素値の大小を強調する処理である。すなわち、この処理においては、処理対象のフレームデータに対し、画素値の基準値Stが指定される。そして、基準値Stよりも大きい画素値を有する画素については画素値がそれよりも大きい値に変更され、基準値Stよりも小さい画素値を有する画素については画素値がそれよりも小さい値に変更される。また、基準値Stと同一の画素値を有する画素については画素値が維持される。基準値Stは、例えば、操作パネル20からコントローラ26を介して指定される値、フレームデータにおける画素値の最大値と最小値との中間の値(中央値)、あるいはフレームデータにおける画素値の平均値である。1つの処理例として、画像解析部18は、フレームデータに含まれる各画素値Dについて、以下の(数4)に従って、画素値Dを変更する。
【0059】
(数4) D=tanθ・(D−St)+St
θは、例えば、画像解析部18において予め設定される値、あるいは操作パネル20からコントローラ26を介して指定される値である。θは(数4)で表される直線の傾き角度を示し、好ましくは45°以上の値である。θが大きい程、画素値の大小の強調の程度が大きくなる。
【0060】
(3−2)マスク処理
画像解析部18は、画素値調整処理が施されたフレームデータについてマスク処理(S202)を施す。マスク処理は、フレームデータ画像の各画素について平均化を行い、さらに、平均化された各画素について2値化を行う処理である。
【0061】
図7には、1つのフレームデータが示す画素群が概念的に示されている。フレームデータ画像は、横方向に並べられた複数のライン画像によって構成される。このフレームデータ画像は、縦方向が被検体の深さ方向と一致し、横方向に伸びる血管断面を表すものとする。フレームデータにおいては、縦方向にM個の画素が配列され、横方向にN個の画素が配列されている。また、縦方向にはH1〜HMのアドレスが割り当てられ、横方向にはL1〜LNのアドレスが割り当てられている。
【0062】
画像解析部18は、アドレス(Li,Hj)の画素について、次のような処理によってマスク処理を行う。画像解析部18は、アドレス(Li,H1)〜アドレス(Li,HM)の画素値の平均値をマスク判定値Kとして求める。そして、アドレス(Li,Hj-p)〜アドレス(Li,Hj+p)の画素値の平均値を区間平均値ITVmean(Interval mean)として求める。ただし、j≦pである場合には、アドレス(Li,H1)〜アドレス(Li,Hj+p)の画素値の平均値を区間平均値ITVmeanとし、j≧M−p+1である場合には、アドレス(Li,Hj-p)〜アドレス(Li,HM)の画素値の平均値を区間平均値ITVmeanとする。すなわち、j≦pまたはj≧M−p+1である場合には、アドレス(Li,Hj)の画素の前壁側または後壁側にある画素の数がp個より少ないため、前壁側または後壁側にある画素の限りにおいて区間平均値ITVmeanを求める。
【0063】
画像解析部18は、求められた区間平均値ITVmeanがマスク判定値Kを超える場合には、アドレス(Li,Hj)の新たな画素値として0を設定し、求められた区間平均値ITVmeanがマスク判定値K以下である場合には、アドレス(Li,Hj)の新たな画素値として1を設定する。
【0064】
例えば、アドレス(L3,H7)に対し、p=5のマスク処理を施す場合には、図7に示されるアドレス(L3,H2)〜アドレス(L3,H12)の画素群に基づいて区間平均値Avが求められ、区間平均値ITVmeanとマスク判定値Kとの比較に基づく2値化が行われる。また、アドレス(L7,H3)に対し、p=5のマスク処理を施す場合には、図7に示されるアドレス(L7,H1)〜アドレス(L3,H8)の画素群に基づいて区間平均値ITVmeanが求められ、区間平均値ITVmeanとマスク判定値Kとの比較に基づく2値化が行われる。
【0065】
図8には、マスク処理が施されたフレームデータ画像が概念的に示されている。図8において網掛けが施された画素は、画素値が1に設定された画素であり、網掛けが施されていない画素は、画素値が0に設定された画素である。以下、画素値が1である画素を有効画素と称する。このようなマスク処理によれば、フレームデータ画素が平滑化された上で、内腔領域を示す候補となる画素が有効画素として求められる。
【0066】
(3−3)マスクの検出、ならびにマスク上端画素およびマスク下端画素の検出
画像解析部18は、次に説明する処理に従って、マスク処理が施されたフレームデータについて血管の内腔領域の上下の輪郭線を求め、内腔領域を特定する。ここでは、横方向のアドレスがLi(i=1〜N)である画素群によって示されるライン画像を符号「Li」を以て表すこととする。
【0067】
画像解析部18は、図6でフレームデータが示す複数のライン画像のそれぞれについて、有効画素からなるマスクを検出する(S203)。マスクは、内腔領域を構成する候補となる区間であり、1つの画素または複数の画素の集合である。画像解析部18は、有効画素の各座標値に基づき、ライン画像L1〜LNのそれぞれからマスクを検出する。
【0068】
例えば、図8に示されるフレームデータについて、画像解析部18は、ライン画像L1から12画素の長さを有するマスクを検出し、ライン画像L2から1画素の長さを有するマスクおよび4画素の長さを有するマスクを検出する。また、ライン画像L3から13画素の長さを有するマスクを検出し、ライン画像L4から6画素の長さを有するマスクを検出する。画像解析部18は、ライン画像L5〜LNのそれぞれについても、同様にしてマスクを検出する。
【0069】
マスクを検出した後、画像解析部18は、マスクの長さが所定の閾値TH以上であるマスクについて、マスクの上端の画素をマスク上端画素として検出し、マスクの下端の画素をマスク下端画素として検出する(S204)。マスク上端画素およびマスク下端画素の検出は、それぞれの座標値を取得することで行われる。なお、マスクの長さが所定の閾値TH未満であるマスクについては、マスク上端画素およびマスク下端画素の検出から除外される。
【0070】
図9には、閾値THを6画素長とした場合について検出されたマスク上端画素およびマスク下端画素が点「●」を付された画素として示されている。ライン画像L2、L7、L8およびL19における画素長が6画素未満のマスクについては、マスク上端画素およびマスク下端画素の検出対象から除外されている。
【0071】
ここでは、説明の便宜上、閾値THを6画素長としているが、実際の画素は図9に示されている画素より微細であるため、画素長換算による閾値THは、実際にはこれより大きい値となる。好ましくは、被検体における血管径よりも短い長さに相当する画素長とする。一般に、被検体の頸動脈は、5mm〜9mmであり、診断対象が頸動脈である場合には、閾値THは5mmに相当する画素長より短い画素長とすることが好ましい。
【0072】
(3−4)輪郭線および内腔領域の特定
マスク上端画素およびマスク下端画素を検出した後、画像解析部18は、マスク上端画素およびマスク下端画素の各座標値に基づいて、内腔領域の前壁側および後壁側の各輪郭線を求め、内腔領域を特定する(S205)。内腔領域の各輪郭線は、次のようにして求められる。
【0073】
画像解析部18は、フレームデータ画像を横切る方向にマスク上端画素を探索し、内腔領域の前壁側の輪郭線を求める元となり得る複数のマスク上端画素を検出する。この探索においては、先に検出されたマスク上端画素の位置を基準として、深さの差異が所定値以下であるという条件の下で、マスク上端画素の右側方向に次のマスク上端画素を探索する。画像解析部18は、内腔領域の前壁側の輪郭線を求める元となり得る画素として検出された複数のマスク上端画素の各位置に基づいて前壁側の輪郭線を求める。また、画像解析部18は、前壁側の輪郭線を求める処理と同様の処理によって、後壁側の輪郭線を求める。画像解析部18は、前壁側の輪郭線と後壁側の輪郭線との間に挟まれる領域を内腔領域として特定する。
【0074】
(3−5)内腔領域を特定する処理の具体例
マスク上端画素およびマスク下端画素を検出し、内腔領域の輪郭線を求め、内腔領域を特定する処理の具体例について、図10および図11を参照して説明する。図10および図11には、内腔領域の前壁側の輪郭線を求める処理を説明するための概念図およびフローチャートが、それぞれ示されている。
【0075】
画像解析部18は、図11のフローチャートに示される処理において、マスク上端画素を前壁側の輪郭線を求める元となり得る複数のグループに分類する。そして、前壁側の輪郭線を求めるのに最も適したグループを選択し、そのグループに属する複数のマスク上端画素の各位置に基づいて前壁側の輪郭線を求める。以下、詳細について図11のフローチャートに沿って説明する。
【0076】
画像解析部18は、縦方向に伸びる検索開始線SPをライン画像L1の左側に設定し、検索開始線SP上に間隔δで検索開始点SPA〜SPEを設定する(S301)。ここで間隔δは、例えば、診断対象とする血管の内径の最小値とする。また、検索開始点は、説明の便宜上、SPA〜SPEの5個としているが、フレームデータ画像の縦方向の長さに応じた個数の検索開始点が設定される。画像解析部18は、検索開始線SPの右側に隣接するライン画像L1を、マスク前壁側画素を探索する探索ライン画像とする(S302)。
【0077】
画像解析部18は、探索ライン画像上においてマスク上端画素を探索する(S303)。すなわち、探索ライン画像に沿って、マスク上端画素が検出されるか否かを判定する(S304)。そして、探索ライン画像上にマスク上端側画素を検出したときは、そのマスク上端画素と、探索開始点SPZ、すなわち探索開始点SPA〜SPEのうち処理対象として選択している探索開始点との間の深さの差異dが間隔δ以下であるか否かを判定する(S305)。
【0078】
画像解析部18は、この差異dが間隔δ以下である場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZ、すなわち探索開始点SPZに対応するグループに含める(S306)。なお、探索ライン画像にこのようなマスク上端画素が複数ある場合には、探索開始点SPZとの深さの差異が最小のものをグループGrZに含める。画像解析部18は、探索ライン画像としていたライン画像L1を、後述の処理において基準とする基準ライン画像とし(S307)、ライン画像L1の右側に隣接するライン画像L2を新たな探索ライン画像とする(S308)。
【0079】
他方、画像解析部18は、探索ライン画像のマスク上端画素と、探索開始点SPZとの深さの差異dが間隔δを超える場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZに含めずにステップS308に移行する(S305)。
【0080】
画像解析部18は、ステップS304において探索ライン画像のマスク上端画素が検出されなかった場合、または、ステップS305において、探索ライン画像のマスク上端画素と、探索開始点SPZとの深さの差異dが間隔δを超えると判定した場合には、探索ライン画像としていたライン画像L1の右側に隣接するライン画像L2を新たな探索ライン画像とする(S308)。
【0081】
画像解析部18は、新たな探索ライン画像上においてマスク上端側画素を探索する(S309)すなわち、探索ライン画像に沿って、マスク上端画素が検出されるか否かを判定する(S310)。そして、探索ライン画像上にマスク上端側画素を検出したときは、そのマスク上端画素と、基準ライン画像のマスク上端画素(ステップS307を迂回し、ステップS308からステップS309に移行した場合には探索開始点SPZ、以下、同様とする。)との深さの差異dが間隔δ以下であるか否かを判定する(S311)。
【0082】
画像解析部18は、この差異dが間隔δ以下である場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZに含める(S312)。なお、探索ライン画像にこのようなマスク上端画素が複数ある場合には、基準ライン画像のマスク上端画素との深さの差異が最小のものをグループGrZに含める。画像解析部18は、探索ライン画像が、最も右側のライン画像LNであるか否かを判定する(S313)。そして、探索ライン画像がライン画像LNであるときは処理を終了し、ライン画像LNでないときは、探索ライン画像としていたライン画像を新たな基準ライン画像とする(S314)。画像解析部18は、さらに、探索ライン画像としていたライン画像の右側に隣接するライン画像を新たな探索ライン画像として(S315)、ステップS309に戻る。
【0083】
他方、画像解析部18は、探索ライン画像のマスク上端画素と、基準ライン画像のマスク上端画素との深さの差異dが間隔δを超える場合には、探索ライン画像のマスク上端画素をグループGrZに含めずにステップS316に移行する(S311)。
【0084】
画像解析部18は、ステップS310において探索ライン画像のマスク上端画素が検出されなかった場合、または、ステップS311において、探索ライン画像のマスク上端画素と、基準ライン画像のマスク上端画素との深さの差異dが間隔δを超えると判定した場合は、探索ライン画像が、最も右側のライン画像LNであるか否かを判定する(S316)。そして、探索ライン画像がライン画像LNであるときは処理を終了し、ライン画像LNでないときは、探索ライン画像の右側に隣接するライン画像を新たな探索ライン画像とし(S315)、ステップS309に戻る。
【0085】
例として、図10の探索開始点SPCに対応するグループGrCについて説明する。ライン画像L1を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α1、α7およびα11は、探索開始点SPCとの深さの差異が間隔δを超えるため、グループGrCに含めない。ライン画像L2を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α8は、探索開始点SPCとの深さの差異が間隔δ以下であるため、グループGrCに含める。ライン画像L3を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α3は、マスク上端画素α8との深さの差異が間隔δを超えるため、グループGrCに含めない。ライン画像L4を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α4およびα13は、マスク上端画素α8との深さの差異が間隔δを超えるため、グループGrCに含めない。ライン画像L5を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α9は、マスク上端画素α8との深さの差異が間隔δ以下であるため、グループGrCに含める。ライン画像L6を探索ライン画像として検出されるマスク上端画素α10は、マスク上端画素α9との深さの差異が間隔δ以下であるため、グループGrCに含める。このようにして、マスク上端画素α7〜α10をグループGrCに含める。
【0086】
同様にして、検索開始点SPAに対応するグループGrAにマスク上端画素α1〜α6を含め、検索開始点SPBに対応するグループGrBにマスク上端画素α2〜α6を含める。また、検索開始点SPDに対応するグループGrDにマスク上端画素α7〜α10を含め、検索開始点SPEに対応するグループGrEにマスク上端画素α11〜α15を含める。
【0087】
各グループについては、図11のステップS306およびS307、または、S311〜S314が迂回された回数、すなわち、ライン画像L1〜LNのうち、マスク上端画素がグループGrZに含められなかったものの数がペナルティとしてカウントされる。ペナルティは、輪郭線を求めるのに適さないグループである度合いを示す。例えば、図10に示されるライン画像L1〜L6に着目すると、グループGrAについては、ライン画像L1〜L6のそれぞれから1つのマスク上端画素をグループGrAに含めたためペナルティは0となる。グループGrBについては、ライン画像L1のマスク上端画素をグループGrBに含めなかったためペナルティは1となる。グループGrCについては、ライン画像L1、L3およびL4のマスク上端画素をグループGrCに含めなかったためペナルティは3となる。グループGrDについては、ライン画像L3およびL4のマスク上端画素をグループGrDに含めなかったためペナルティは2となる。そして、グループGrEについては、ライン画像L3のマスク上端画素をグループGrEに含めなかったためペナルティは1となる。
【0088】
画像解析部18は、グループGrA〜GrEのうち、ペナルティが最も小さいグループに属するマスク上端画素の集合を抽出する。図10に示される例では、グループGrAに属するマスク上端画素の集合を抽出することとなる。画像解析部18は、抽出された画素の集合を補間して得られる画素の集合を、内腔領域の前壁側の輪郭線を示す前壁側輪郭線画素群とし各座標値を求める。図12には前壁側輪郭線画素群44を、太線で示している。
【0089】
画像解析部18は、各ライン画像におけるマスク下端画素についても同様の処理を実行し、内腔領域の後壁側の輪郭線を示す後壁側輪郭線画素群の各座標値を求める。図12には後壁側輪郭線画素群46を、太線で示している。
【0090】
画像解析部18は、フレームデータ画像に含まれる画素のうち、前壁側輪郭線画素群、後壁側輪郭線画素群、および、前壁側輪郭線画素群と後壁側輪郭線画素群との間に挟まれる画素群を内腔領域を示す画素群として特定し、各画素の座標値を取得する。
【0091】
このような処理によれば、ペナルティが最も小さいグループに属するマスク上端画素に基づいて、前壁側輪郭線画素群および後壁側輪郭線画素群が特定される。これによって、最も確かな内腔領域の画素群の座標値が求められる。内腔領域の画素群の各座標値は、上述のように、内膜特定処理に用いる。
【符号の説明】
【0092】
10 超音波プローブ、12 送信部、14 受信部、16 断層画像生成部、18 画像解析部、20 操作パネル、22 メモリ、24 画像表示部、26 コントローラ、28 二次元走査面、30 送受信ビーム、32 ライン画像、34 画素、36 内膜、38 中膜、40 外膜、42 内腔領域、44 前壁側輪郭線画素群、46 後壁側輪郭線画素群。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内における血管で反射した超音波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された超音波に基づいて画像データを生成する画像生成部と、
前記画像データが示す画像について、前記血管の内腔に含まれる領域を内腔領域として特定する内腔特定部と、
前記画像データが示す画像について、前記内腔領域から血管壁にかけての画素値の変化に基づいて、前記血管の内膜を特定する内膜特定部と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記画像データは、線状に画素が配列されたライン画像をそれぞれが示す複数のラインデータを含み、前記複数のラインデータが示す複数のライン画像を方向を揃えて配列した画像を示し、
前記内腔特定部は、
各ライン画像を横切る方向に前記内腔領域の輪郭を探索する輪郭探索手段を備える、 ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波画像処理装置において、
前記輪郭探索手段は、
各ライン画像について、前記内腔領域をなす区間の候補となる候補区間を特定する候補区間特定手段と、
特定された複数の候補区間のうち所定の閾値以上の長さを有する候補区間の端の位置に基づいて、前記内腔領域の輪郭を探索する探索手段と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置において、
前記内膜特定部は、
前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、
前記血管壁内点の位置に基づいて前記内腔領域から前記血管壁にかけての領域を特定して当該領域における画素値の修正を行い、前記内膜の画素値を強調する画素値修正手段と、を備え、
修正後の画素値に基づいて、内膜を特定することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置において、
前記内膜特定部は、
前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、
対向する2つの前記血管壁内点間の中点の位置を求め、当該中点から修正対象の画素までの距離に応じて、当該修正対象の画素の画素値の修正を行い、前記内膜を強調する画素値修正手段と、を備え、
修正後の画素値に基づいて、内膜を特定することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項1】
被検体内における血管で反射した超音波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された超音波に基づいて画像データを生成する画像生成部と、
前記画像データが示す画像について、前記血管の内腔に含まれる領域を内腔領域として特定する内腔特定部と、
前記画像データが示す画像について、前記内腔領域から血管壁にかけての画素値の変化に基づいて、前記血管の内膜を特定する内膜特定部と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記画像データは、線状に画素が配列されたライン画像をそれぞれが示す複数のラインデータを含み、前記複数のラインデータが示す複数のライン画像を方向を揃えて配列した画像を示し、
前記内腔特定部は、
各ライン画像を横切る方向に前記内腔領域の輪郭を探索する輪郭探索手段を備える、 ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波画像処理装置において、
前記輪郭探索手段は、
各ライン画像について、前記内腔領域をなす区間の候補となる候補区間を特定する候補区間特定手段と、
特定された複数の候補区間のうち所定の閾値以上の長さを有する候補区間の端の位置に基づいて、前記内腔領域の輪郭を探索する探索手段と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置において、
前記内膜特定部は、
前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、
前記血管壁内点の位置に基づいて前記内腔領域から前記血管壁にかけての領域を特定して当該領域における画素値の修正を行い、前記内膜の画素値を強調する画素値修正手段と、を備え、
修正後の画素値に基づいて、内膜を特定することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置において、
前記内膜特定部は、
前記内腔領域から前記血管壁にかけての画素値に基づいて、前記血管壁内の領域に血管壁内点を設定する壁内点設定手段と、
対向する2つの前記血管壁内点間の中点の位置を求め、当該中点から修正対象の画素までの距離に応じて、当該修正対象の画素の画素値の修正を行い、前記内膜を強調する画素値修正手段と、を備え、
修正後の画素値に基づいて、内膜を特定することを特徴とする超音波画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−85694(P2013−85694A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228688(P2011−228688)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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