超音波画像診断装置
【課題】広帯域特性を有する超音波探触子を安価にて効率よく活用して、良質な超音波画像を取得することができる超音波画像診断装置を提供する。
【解決手段】送信部12は、矩形波のパルス信号を出力することにより振動子に送信超音波を生成させる。送信部12は、パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる振動子のステップ応答の振幅に、パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる振動子のステップ応答の振幅が重畳されるように、パルス信号のデューティー比を設定する。
【解決手段】送信部12は、矩形波のパルス信号を出力することにより振動子に送信超音波を生成させる。送信部12は、パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる振動子のステップ応答の振幅に、パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる振動子のステップ応答の振幅が重畳されるように、パルス信号のデューティー比を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波画像診断装置は、超音波探触子によって、生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信し、受信した超音波(反射超音波)から受信信号に変換し、これに基づいて超音波画像を表示する。反射超音波は被検体内の状態を示す情報を含んでいるため、良質な反射超音波を得ることが良質な超音波画像を得るために重要となっている。受信信号に対する信号処理等によって超音波画像の画質を向上させるはできるが、本質的には、送信超音波が良質であることが望ましい。
【0003】
良質である送信超音波とは、空間分解能及び深達度(ペネトレーション)に優れたものであるといわれている。高い空間分解能を得るためには送信超音波のパルス幅が短いことが要求される。すなわち、送信超音波の周波数帯域を広帯域とするか、送信超音波の周波数を高周波とすることにより短パルス化を実現することができる。一方、優れた深達度を得るためには、被検体内を往復する超音波が減衰に負けないようにする必要があり、これは、超音波の振幅が大きいこと、もしくは、送信超音波の周波数を低周波とすることにより、要求を満たすことが可能である。すなわち、低周波成分及び高周波成分の両成分を含む広帯域の送信超音波であって、振幅が大きく、パルス幅が短いものを出力できることが望ましい。
【0004】
このような状況に鑑み、従来の超音波画像診断装置において、所望とする送信超音波の波形とするために、任意波形生成方式によって、トランスデューサーの特性に適切な駆動信号を与えるものがある(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、矩形波による駆動信号のデューティー比を変更して広帯域な送信超音波を出力するようにした超音波画像診断装置もある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−536309号公報
【特許文献2】米国特許第5833614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、広帯域特性を有する超音波探触子が知られており、この超音波探触子によれば、超音波の送受信を広帯域にて行うことができるので、利用価値が高い。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のように任意波形生成方式によれば、広帯域な波形である送信超音波を出力することができるため、広帯域特性を有する超音波探触子を効率よく活用することが可能であるが、回路規模及び装置が大型化し、コストがかかるものである。
【0009】
また、上記特許文献2の技術によれば、広帯域である送信超音波の出力を行うことができるが、超音波探触子の特性は考慮されておらず、超音波探触子の特性を効率よく利用できるようなものではない。
【0010】
本発明の課題は、広帯域特性を有する超音波探触子を安価にて効率よく活用して、良質な超音波画像を取得することができる超音波画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、パルス信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する振動子を有する超音波探触子と、
矩形波のパルス信号を出力することにより前記振動子によって前記送信超音波を生成させる送信部と、
を備えた超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅に、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅が重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークに、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークが重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記振動子によって生成される前記送信超音波の周波数帯域特性が、前記振動子の周波数帯域特性よりも広くなるような前記パルス信号を出力することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号のデューティー比を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の振幅が正極性及び負極性で同一となるように前記パルス信号の電圧を変位させることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記受信信号に対して所定の周波数成分のフィルターを行うフィルター部と、
受信信号の取得タイミングから特定される取得深度に応じて、前記フィルター部によってフィルターする周波数成分を変更する帯域設定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記振動子は、前記送信超音波が被検体内を伝播することにより生じるベースバンド成分を受信可能な周波数帯域特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広帯域特性を有する超音波探触子を安価にて効率よく活用して、良質な超音波画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】超音波画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波画像診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】送信部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】画像生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】パルス信号の駆動波形について説明する図である。
【図6】パルス印加に対する振動子のステップ応答について説明する図である。
【図7】パルス印加に対する振動子のステップ応答について説明する図である。
【図8】パルス信号の駆動波形に対する振動子の応答について説明する図である。
【図9】パルス信号の駆動波形に対する振動子の応答の一例について説明する図である。
【図10】従来の送信超音波のスペクトルを示す図である。
【図11】本実施の形態による送信超音波及び反射超音波のスペクトルを示す図である。
【図12】本実施の形態の他の態様による送信超音波によって得られる反射超音波のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0021】
本実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、図1及び図2に示すように、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0022】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。また、本実施の形態では、広帯域での超音波の送受信を良好な感度にて行うことのできる超音波探触子を適用するのが効果が高く、より良質な超音波画像を取得することができる。超音波探触子における帯域幅は任意に設定してもよいが、好ましくは、比帯域(−20dB)が100%以上であり、反射超音波の基本周波数成分とともに、後述するベースバンド成分を受信することのできる振動子を有する超音波探触子を適用するのがよい。より好ましい超音波探触子としては、比帯域が120%以上である振動子を有するものとするのがよく、また、さらに好ましくは、比帯域が130%以上である振動子を有するものとするのがよい。
【0023】
超音波画像診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリー部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0024】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0025】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、デューティー設定部123及び遅延回路124を備えている。
【0026】
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。
パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、図5に示すように、3値の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波によるパルス信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。なお、2値の電圧を切り替えてパルス信号を発生させる構成であってもよい。
デューティー設定部123は、パルス発生回路122から出力されるパルス信号のデューティー比を設定する。すなわち、パルス発生回路122は、デューティー設定部123によって設定されたデューティー比に従ったパルス波形によるパルス信号を出力する。デューティー比は、例えば、操作入力部11による入力操作により可変することができる。また、超音波画像診断装置本体1に接続された超音波探触子2を識別することにより、識別した超音波探触子2に対応するデューディー比が設定されるように構成してもよい。
【0027】
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
【0028】
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。
【0029】
ここで、パルス信号が振動子2aに与えられたときの振動子2aの応答について説明する。
パルス発生回路122により、振動子2aに対して図6(a)に示すようなパルス印加Paが与えられると、振動子2aは、図6(b)に示すようなステップ応答SR−Aを返す。このステップ応答は、広帯域インパルス応答の積分値として求められる。例えば、パルス印加Paの電圧印加時を時刻0とし、時刻0からステップ応答SR−Aの第1のピークA1までの時間をt0、第1のピークA1から第2のピークA2までの時間をt1、第2のピークA2から第3のピークA3までの時間をt2、第3のピークA3から第4のピークA4までの時間t3とする。図6(b)に示すように、振動子2aに対して一極の電圧が印加されると、振動子2aは、複数のピークを持つ振幅を応答として返す。
【0030】
このような応答特性を持つ振動子2aによれば、以下のようにしてパルス信号の駆動波形を選定することにより、良質な送信超音波を送信可能な応答を行わせることができるようになる。
例えば、図7に示すように、ある時刻0において図7(a)に示すようなパルス印加P1を与えた場合を考える。振動子2aは、図7(a)に示すように、ステップ応答SR1を返す。
【0031】
次に、パルス印加P1とは極性の反転した図7(b)に示すようなパルス印加P2を与える場合には、パルス印加P2の応答であるステップ応答SR2の第1のピークC1と、ステップ応答SR1の第2のピークB1とが重なって振幅が大きくなるようにされるのが好ましい。そのため、パルス印加P2の印加タイミングをパルス印加P1が与えられてから時間t1だけ遅延させるようにする。すなわち、パルス信号の第1のデューティーを時間t1に設定する。時間t1は、図7(a)に示すように、ステップ応答SR1の第1のピークから第2のピークまでの時間である。
【0032】
次に、パルス印加P2とは異なる極性、すなわち、パルス印加P1と同じ極性であるパルス印加P3を与える場合には、パルス印加P3の応答であるステップ応答SR3の第1のピークD2と、ステップ応答SR1の第3のピークB2とが重なって振幅が大きくなるようにされるのが好ましい。そのため、パルス印加P3の印加タイミングを、パルス印加P2が与えられてから時間t2だけ遅延させるようにする。すなわち、パルス信号の第2のデューティーを時間t2に設定する。時間t2は、図7(a)に示すように、ステップ応答SR1の第2のピークから第3のピークまでの時間である。
【0033】
以上のようにして、パルス信号の駆動波形を生成することで、振動子2aのステップ応答の振幅を大きくすることができ、また、パルス幅を短くすることができる。なお、上述した要領にて、第4、第5のパルス印加を与えて振動子2aのステップ応答の振幅をより大きくすることも可能であるが、これにより出力される送信超音波のパルス幅はそれだけ大きくなるため、空間分解能が低下してくる。したがって、適切なパルス印加回数やステップ応答のピーク数を考慮してパルス信号の駆動波形を設定するのが好ましい。
【0034】
また、振動子2aは、パルス印加が与えられた後は、複数回のピークを経た後、リンギング(尾引き)が生じるような応答を行うが、パルス信号の信号レベルをGND値に戻すために最後に与えられるパルス印加を、第1及び第2のパルス印加によって生じる振動子2aの応答の振幅の周波数よりも十分に低い周波数、又は、十分に高い周波数に相当する時間(デューティー)を持たせると、リンギングの低周波成分が抑圧され、パルス幅のより短い送信超音波を生成することができる。なお、リンギングの高周波成分は、超音波探触子2から送信超音波が出力される過程で減衰される。
【0035】
このようにしてパルス印加P1,P2,P3・・・が、それぞれ上述したようなタイミングで与えられるようにパルス信号のデューティー比が設定されると、例えば、図8(a)に示すような正負非対称である駆動波形のパルス信号が生成される。このようにして生成されたパルス信号が振動子2aに与えられると、図8(b)に示すように、ステップ応答SR1,SR2,SR3・・・がそれぞれ上述したタイミングで加算されるため、振幅が大きく増幅されるとともに、パルス幅の短い応答SR(P1+P2+P3・・・)が得られる。
【0036】
ここで、本実施の形態において用いられる超音波探触子2の振動子2aに対して与えられる、好ましいパルス信号の一例について図9を参照しながら説明する。
【0037】
例えば、図9(a)に示すように、出力するパルス信号PEにおけるデューティー比を、t1:t2:t3=2:7:13の整数倍比率にて徐々に大きくなるように設定する。ここでは、例えば、デューティーとしてのt1,t2,t3の各時間をそれぞれ、16ns,56ns,104nsに設定する。なお、ここで設定されるデューティー比はあくまで一例であって、これに限定されず、振動子の特性に応じて適宜適正な比率が設定されることはいうまでもない。また、デューティー比が徐々に小さくなるように設定してもよい。
【0038】
上述したような比率でデューティー比の設定されたパルス信号PEが振動子2aに与えられると、図9(b)に示すように、短パルス幅で振幅が非常に大きく増幅されたステップ応答SR−Eが得られるようになる。
【0039】
従来、深部における超音波画像を良好にするため、反射超音波の被検体内における非線形性により生じる2次高調波等の高次高調波成分を利用し、THI(Tissue Harmonic Imaging)による超音波画像データーの生成が行われている。
そのため、例えば、図10(a)に示すように、周波数帯域Pを有する広帯域な振動子を用いたとしても、中心周波数f0である基本波成分の2倍の中心周波数f1である2次高調波成分ATHを取得する必要がある。そのため、中心周波数f0である送信超音波を出力する必要がある。ところが、送信する超音波が低周波数であるほど、パルス幅は長くなり、したがって、送信する超音波の周波数帯域Aは図10(a)に図示するように狭小化される。また、送信する超音波の周波数も低周波数化されるので、深達度は向上するものの、空間分解能は低下する。
さらに、振動子にパルス信号が与えられたとしても、送信する超音波の周波数帯域Aのうち、振動子の周波数帯域Pから外れてしまう部分については通過が制限されてしまうため、通過周波数帯域は、図10(b)のBで示される部分に制限される。
これらの要因によって、従来では、広帯域な振動子を用いても、その周波数帯域のうちの一部分でしか使用されないため、十分に振動子の特性が活用されているものではなかった。
【0040】
これに対し、振動子の特性を考慮し、例えば、図9に示すようなデューティー比に設定することにより、広帯域な振動子2aの周波数帯域Pに対し、図11(a)に示すような振動子2aの周波数帯域Pよりも広い帯域特性(周波数帯域C)を有する送信超音波を発生させる駆動波形であるパルス信号を与えることができるようになる。ここで、振動子の周波数帯域よりも広い帯域特性を有する送信超音波とは、振動子の帯域幅よりも送信超音波の帯域幅が広いことをいう。帯域幅は、例えば、ピークから強度が20dB減衰した位置において占める周波数の範囲であり、帯域幅の比較は、上述のようにして規定された振動子の帯域幅と送信超音波の帯域幅とを比較することによって行われる。このようにして、振動子2aの帯域幅よりも送信超音波の帯域幅を広くした結果、図11(b)に示すように、送信超音波の周波数帯域Cのうち、振動子2aの帯域特性を通過した送信超音波はDに示されるようになり、振動子の周波数帯域が広範囲で利用され、広帯域の送信超音波を出力することができるようになる。なお、本実施の形態では、好ましい態様として、送信周波数の周波数帯域が振動子2aの周波数帯域の100%をカバーするように構成したが、必ずしも100%カバーされたものでなくてもよい。
【0041】
上述したようにして超音波が出力されると、送信超音波から得られる広帯域な基本波成分とともに、同様に広帯域な高次高調波成分が含まれた反射超音波を取得することができる。図11(b)に示すように、このときの反射超音波の基本波成分の周波数帯域特性はRによって表され、高次高調波成分の周波数帯域はTHによって表される。このとき、高次高調波成分THは、振動子2aの周波数帯域Pに含まれる部分のみ通過する。
【0042】
このように、本実施の形態では、送信超音波を広帯域で出力することができるので、従来よりも振動子の周波数帯域を広く利用することができるようになる。これにより、低周波成分と高周波成分とが含まれるようになり、空間分解能の向上と深達度の向上を両立させることが可能となって、良好な超音波画像を取得することができるようになる。
【0043】
また、反射超音波の被検体内における非線形性により、ベースバンド成分が生じることが知られている。ベースバンド成分の周波数帯域は、送信超音波の周波数に関係なく、反射超音波のパルス幅に依存するため、パルス幅が短いほど、ベースバンド成分の周波数は高くなる。すなわち、反射超音波のパルス幅や振動子の帯域特性によっては、ベースバンド成分を振動子の周波数帯域に含めることが可能となるので、このベースバンド成分を利用して超音波画像データーを生成することができれば、低周波成分であるベースバンド成分を利用し、深部においても優れた超音波画像を取得することができるようになる。
【0044】
本実施の形態では、広帯域特性を有する振動子2aによってパルス幅の短い送信超音波を出力することができるので、図11(b)に示すようにベースバンド成分BBが振動子2aの周波数帯域Pに含まれるようになり、ベースバンド成分BBの少なくとも一部を通過させることができるようになる。
【0045】
図2に示すように、受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をA/D変換するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データーを生成するための回路である。
【0046】
画像生成部14は、図4に示すように、例えば、フィルター部141、帯域設定部142、包絡線検波部143、対数増幅部144及び輝度変換部145を備えている。
【0047】
フィルター部141は、例えば、帯域制限フィルターを備えており、受信部13から入力された音線データーに対してフィルタリングを行う。
帯域設定部142は、音線データーの取得タイミングから取得深度を特定し、取得深度に応じたフィルター特性情報をフィルター部141に出力する。
【0048】
例えば、帯域設定部142は、取得深度の浅い部分についてフィルタリングする場合には、基本波成分を強調するためのフィルター特性情報をフィルター部141に与える。フィルター部141は、基本波成分を強調するためのフィルター情報を入力すると、音線データーに含まれる高調波成分やノイズ成分等を抑圧し、基本波成分を強調する。これにより、被検体の浅い部分については、高周波数の基本波成分によって空間分解能の高い超音波画像データーを生成することができる。
また、帯域設定部142は、取得深度の深い部分についてフィルタリングする場合には、基本波成分を抑圧するためのフィルター情報をフィルター部141に与える。フィルター部141は、基本波成分を抑圧するためのフィルター情報を入力すると、音線データーに含まれる基本波成分を抑圧し、2次高調波成分等の高次高調波成分やベースバンド成分を強調する。これにより、被検体の深い部分についても、ベースバンド成分や高次高調波成分により、空間分解能の高い超音波画像データーを生成することができる。
なお、ベースバンド成分以外の成分を抑圧し、ベースバンド成分を強調して超音波画像データーを生成するようにしてもよい。また、フィルタリングを行わず、基本波成分、高次高調波成分及びベースバンド成分によって超音波画像データーを生成するようにしてもよい。
【0049】
包絡線検波部143は、フィルター部141から出力された音線データーに対して全波整流を行い、包絡線データーを得る。
対数増幅部144は、包絡線データーに対して対数増幅を行う。
輝度変換部145は、対数増幅された包絡線データーの示す信号の大きさを256階調に量子化する振幅/輝度変換を行ってBモード画像データーを得る。すなわち、Bモード画像データーは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。また、輝度変換部145は、振幅/輝度変換が行われた包絡線データーに対し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行う。画像生成部14にて生成されたBモード画像データーは、メモリー部15に送信される。
【0050】
図2に示すように、メモリー部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データーをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリー部15は、フレーム単位により構成された超音波診断画像データーとして記憶することができる。メモリー部15に記憶された超音波診断画像データーは、制御部18の制御に従って読み出され、DSC16に送信される。
【0051】
DSC16は、メモリー部15より受信した超音波診断画像データーをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0052】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波診断画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンター等の印刷装置等を適用してもよい。
【0053】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データー等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデーターを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態によれば、超音波探触子2は、パルス信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する振動子2aを有する。送信部12は、矩形波のパルス信号を出力することにより振動子2aに送信超音波を生成させる。送信部12は、パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅に、パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅が重畳されるように、パルス信号のデューティー比を設定する。その結果、送信超音波の振幅を効率よく増幅できるとともに、パルス幅を短くすることができるので、送信超音波を広帯域とすることができ、空間分解能及び深達度の優れた送信超音波を出力することができるようになる。また、広帯域の超音波探触子を用いた場合には、その帯域を効率よく利用することができるようになるため、送信超音波から得られる反射超音波の基本波成分や、送信超音波が被検体内を伝播することにより発生する2次高調波成分やベースバンド成分といった、非線形による高調波成分を効率よく受信することができるようになり、空間分解能及び深達度の優れた、良質な超音波画像の取得が可能となる。また、矩形波のパルス信号にて実現できるので、任意波形を生成して広帯域で振幅の大きい駆動信号を生成する任意波形生成方式や、駆動信号の電圧を多値に切り替えて広帯域で振幅の大きい駆動信号を生成する多値駆動方式等の複雑な回路構成を必要とせず、安価にて実現可能となる。また、エネルギーコストも少ないので、省電力にも優れる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅のピークに、パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅のピークが重畳されるように、パルス信号のデューティー比を設定する。その結果、送信超音波を効率よく増幅させることができるようになる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、振動子2aによって生成される送信超音波の周波数帯域特性が、振動子2aの周波数帯域特性よりも広くなるようなパルス信号を出力する。その結果、振動子の周波数帯域を最大限で利用することができるようになる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、パルス信号のデューティー比を変更可能に構成したので、使用する超音波探触子の特性に応じて、パルス信号のディーティー比を最適なものに設定することができるようになる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、パルス信号の振幅が正極性及び負極性で同一となるようにパルス信号の電圧を変位させるので、回路構成が簡素となり、コストの上昇を抑制することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、フィルター部141は、受信信号に対して所定の周波数成分のフィルターを行う。帯域設定部142は、受信信号の取得タイミングから特定される取得深度に応じて、フィルター部141によってフィルターする周波数成分を変更する。その結果、広範な周波数帯域にて得られた受信信号から、深度に応じて適切な周波数成分を抽出することができる。例えば、広帯域で送信した送信超音波は、ごく浅い1cm程度深さでは、10MHz以上の高い周波数を主成分とするように低周波成分を除去して、より高い分解能の超音波画像が得られるようにし、中程度からさらに深い4cm以上の深さでは、高周波成分は減衰されるので、フィルターする周波数成分の上限を反射超音波の周波数成分に合わせて設定することで、よりS/Nの高い信号を取得することができ、良質な超音波画像を取得することができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、振動子2aは、送信超音波が被検体内を伝播することにより生じるベースバンド成分を受信可能な周波数帯域特性を有しているので、深部においても空間分解能に優れた超音波画像を取得することができるようになる。
【0061】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0062】
また、本実施の形態において、送信超音波の波形を、送信超音波の中心周波数(キャリア周波数)Fcがベースバンド周波数Fbよりも高周波数であって、ベースバンド周波数Fbにキャリア周波数Fcを乗じて得た形状とし、図12に示すように、振動子の周波数帯域Pの範囲内に、「Fc−Fb」によって求められる周波数と、「Fc+Fb」によって求められる周波数とが含まれるようにすると、送信超音波の中心周波数の両側にそれぞれベースバンド成分BB(L),BB(H)が含まれるようになり、より良質な超音波診断画像を取得することができるようになる。なお、図12において、送信超音波の周波数帯域特性についてはEにて示している。
【符号の説明】
【0063】
S 超音波画像診断装置
1 超音波画像診断装置本体
2 超音波探触子
2a 振動子
12 送信部
14 画像生成部
122 パルス発生回路
123 デューティー設定部
141 フィルター部
142 帯域設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波画像診断装置は、超音波探触子によって、生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信し、受信した超音波(反射超音波)から受信信号に変換し、これに基づいて超音波画像を表示する。反射超音波は被検体内の状態を示す情報を含んでいるため、良質な反射超音波を得ることが良質な超音波画像を得るために重要となっている。受信信号に対する信号処理等によって超音波画像の画質を向上させるはできるが、本質的には、送信超音波が良質であることが望ましい。
【0003】
良質である送信超音波とは、空間分解能及び深達度(ペネトレーション)に優れたものであるといわれている。高い空間分解能を得るためには送信超音波のパルス幅が短いことが要求される。すなわち、送信超音波の周波数帯域を広帯域とするか、送信超音波の周波数を高周波とすることにより短パルス化を実現することができる。一方、優れた深達度を得るためには、被検体内を往復する超音波が減衰に負けないようにする必要があり、これは、超音波の振幅が大きいこと、もしくは、送信超音波の周波数を低周波とすることにより、要求を満たすことが可能である。すなわち、低周波成分及び高周波成分の両成分を含む広帯域の送信超音波であって、振幅が大きく、パルス幅が短いものを出力できることが望ましい。
【0004】
このような状況に鑑み、従来の超音波画像診断装置において、所望とする送信超音波の波形とするために、任意波形生成方式によって、トランスデューサーの特性に適切な駆動信号を与えるものがある(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、矩形波による駆動信号のデューティー比を変更して広帯域な送信超音波を出力するようにした超音波画像診断装置もある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−536309号公報
【特許文献2】米国特許第5833614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、広帯域特性を有する超音波探触子が知られており、この超音波探触子によれば、超音波の送受信を広帯域にて行うことができるので、利用価値が高い。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のように任意波形生成方式によれば、広帯域な波形である送信超音波を出力することができるため、広帯域特性を有する超音波探触子を効率よく活用することが可能であるが、回路規模及び装置が大型化し、コストがかかるものである。
【0009】
また、上記特許文献2の技術によれば、広帯域である送信超音波の出力を行うことができるが、超音波探触子の特性は考慮されておらず、超音波探触子の特性を効率よく利用できるようなものではない。
【0010】
本発明の課題は、広帯域特性を有する超音波探触子を安価にて効率よく活用して、良質な超音波画像を取得することができる超音波画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、パルス信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する振動子を有する超音波探触子と、
矩形波のパルス信号を出力することにより前記振動子によって前記送信超音波を生成させる送信部と、
を備えた超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅に、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅が重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークに、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークが重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記振動子によって生成される前記送信超音波の周波数帯域特性が、前記振動子の周波数帯域特性よりも広くなるような前記パルス信号を出力することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号のデューティー比を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の振幅が正極性及び負極性で同一となるように前記パルス信号の電圧を変位させることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記受信信号に対して所定の周波数成分のフィルターを行うフィルター部と、
受信信号の取得タイミングから特定される取得深度に応じて、前記フィルター部によってフィルターする周波数成分を変更する帯域設定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記振動子は、前記送信超音波が被検体内を伝播することにより生じるベースバンド成分を受信可能な周波数帯域特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広帯域特性を有する超音波探触子を安価にて効率よく活用して、良質な超音波画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】超音波画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波画像診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】送信部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】画像生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】パルス信号の駆動波形について説明する図である。
【図6】パルス印加に対する振動子のステップ応答について説明する図である。
【図7】パルス印加に対する振動子のステップ応答について説明する図である。
【図8】パルス信号の駆動波形に対する振動子の応答について説明する図である。
【図9】パルス信号の駆動波形に対する振動子の応答の一例について説明する図である。
【図10】従来の送信超音波のスペクトルを示す図である。
【図11】本実施の形態による送信超音波及び反射超音波のスペクトルを示す図である。
【図12】本実施の形態の他の態様による送信超音波によって得られる反射超音波のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0021】
本実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、図1及び図2に示すように、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0022】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。また、本実施の形態では、広帯域での超音波の送受信を良好な感度にて行うことのできる超音波探触子を適用するのが効果が高く、より良質な超音波画像を取得することができる。超音波探触子における帯域幅は任意に設定してもよいが、好ましくは、比帯域(−20dB)が100%以上であり、反射超音波の基本周波数成分とともに、後述するベースバンド成分を受信することのできる振動子を有する超音波探触子を適用するのがよい。より好ましい超音波探触子としては、比帯域が120%以上である振動子を有するものとするのがよく、また、さらに好ましくは、比帯域が130%以上である振動子を有するものとするのがよい。
【0023】
超音波画像診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリー部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0024】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0025】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、デューティー設定部123及び遅延回路124を備えている。
【0026】
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。
パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、図5に示すように、3値の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波によるパルス信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。なお、2値の電圧を切り替えてパルス信号を発生させる構成であってもよい。
デューティー設定部123は、パルス発生回路122から出力されるパルス信号のデューティー比を設定する。すなわち、パルス発生回路122は、デューティー設定部123によって設定されたデューティー比に従ったパルス波形によるパルス信号を出力する。デューティー比は、例えば、操作入力部11による入力操作により可変することができる。また、超音波画像診断装置本体1に接続された超音波探触子2を識別することにより、識別した超音波探触子2に対応するデューディー比が設定されるように構成してもよい。
【0027】
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
【0028】
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。
【0029】
ここで、パルス信号が振動子2aに与えられたときの振動子2aの応答について説明する。
パルス発生回路122により、振動子2aに対して図6(a)に示すようなパルス印加Paが与えられると、振動子2aは、図6(b)に示すようなステップ応答SR−Aを返す。このステップ応答は、広帯域インパルス応答の積分値として求められる。例えば、パルス印加Paの電圧印加時を時刻0とし、時刻0からステップ応答SR−Aの第1のピークA1までの時間をt0、第1のピークA1から第2のピークA2までの時間をt1、第2のピークA2から第3のピークA3までの時間をt2、第3のピークA3から第4のピークA4までの時間t3とする。図6(b)に示すように、振動子2aに対して一極の電圧が印加されると、振動子2aは、複数のピークを持つ振幅を応答として返す。
【0030】
このような応答特性を持つ振動子2aによれば、以下のようにしてパルス信号の駆動波形を選定することにより、良質な送信超音波を送信可能な応答を行わせることができるようになる。
例えば、図7に示すように、ある時刻0において図7(a)に示すようなパルス印加P1を与えた場合を考える。振動子2aは、図7(a)に示すように、ステップ応答SR1を返す。
【0031】
次に、パルス印加P1とは極性の反転した図7(b)に示すようなパルス印加P2を与える場合には、パルス印加P2の応答であるステップ応答SR2の第1のピークC1と、ステップ応答SR1の第2のピークB1とが重なって振幅が大きくなるようにされるのが好ましい。そのため、パルス印加P2の印加タイミングをパルス印加P1が与えられてから時間t1だけ遅延させるようにする。すなわち、パルス信号の第1のデューティーを時間t1に設定する。時間t1は、図7(a)に示すように、ステップ応答SR1の第1のピークから第2のピークまでの時間である。
【0032】
次に、パルス印加P2とは異なる極性、すなわち、パルス印加P1と同じ極性であるパルス印加P3を与える場合には、パルス印加P3の応答であるステップ応答SR3の第1のピークD2と、ステップ応答SR1の第3のピークB2とが重なって振幅が大きくなるようにされるのが好ましい。そのため、パルス印加P3の印加タイミングを、パルス印加P2が与えられてから時間t2だけ遅延させるようにする。すなわち、パルス信号の第2のデューティーを時間t2に設定する。時間t2は、図7(a)に示すように、ステップ応答SR1の第2のピークから第3のピークまでの時間である。
【0033】
以上のようにして、パルス信号の駆動波形を生成することで、振動子2aのステップ応答の振幅を大きくすることができ、また、パルス幅を短くすることができる。なお、上述した要領にて、第4、第5のパルス印加を与えて振動子2aのステップ応答の振幅をより大きくすることも可能であるが、これにより出力される送信超音波のパルス幅はそれだけ大きくなるため、空間分解能が低下してくる。したがって、適切なパルス印加回数やステップ応答のピーク数を考慮してパルス信号の駆動波形を設定するのが好ましい。
【0034】
また、振動子2aは、パルス印加が与えられた後は、複数回のピークを経た後、リンギング(尾引き)が生じるような応答を行うが、パルス信号の信号レベルをGND値に戻すために最後に与えられるパルス印加を、第1及び第2のパルス印加によって生じる振動子2aの応答の振幅の周波数よりも十分に低い周波数、又は、十分に高い周波数に相当する時間(デューティー)を持たせると、リンギングの低周波成分が抑圧され、パルス幅のより短い送信超音波を生成することができる。なお、リンギングの高周波成分は、超音波探触子2から送信超音波が出力される過程で減衰される。
【0035】
このようにしてパルス印加P1,P2,P3・・・が、それぞれ上述したようなタイミングで与えられるようにパルス信号のデューティー比が設定されると、例えば、図8(a)に示すような正負非対称である駆動波形のパルス信号が生成される。このようにして生成されたパルス信号が振動子2aに与えられると、図8(b)に示すように、ステップ応答SR1,SR2,SR3・・・がそれぞれ上述したタイミングで加算されるため、振幅が大きく増幅されるとともに、パルス幅の短い応答SR(P1+P2+P3・・・)が得られる。
【0036】
ここで、本実施の形態において用いられる超音波探触子2の振動子2aに対して与えられる、好ましいパルス信号の一例について図9を参照しながら説明する。
【0037】
例えば、図9(a)に示すように、出力するパルス信号PEにおけるデューティー比を、t1:t2:t3=2:7:13の整数倍比率にて徐々に大きくなるように設定する。ここでは、例えば、デューティーとしてのt1,t2,t3の各時間をそれぞれ、16ns,56ns,104nsに設定する。なお、ここで設定されるデューティー比はあくまで一例であって、これに限定されず、振動子の特性に応じて適宜適正な比率が設定されることはいうまでもない。また、デューティー比が徐々に小さくなるように設定してもよい。
【0038】
上述したような比率でデューティー比の設定されたパルス信号PEが振動子2aに与えられると、図9(b)に示すように、短パルス幅で振幅が非常に大きく増幅されたステップ応答SR−Eが得られるようになる。
【0039】
従来、深部における超音波画像を良好にするため、反射超音波の被検体内における非線形性により生じる2次高調波等の高次高調波成分を利用し、THI(Tissue Harmonic Imaging)による超音波画像データーの生成が行われている。
そのため、例えば、図10(a)に示すように、周波数帯域Pを有する広帯域な振動子を用いたとしても、中心周波数f0である基本波成分の2倍の中心周波数f1である2次高調波成分ATHを取得する必要がある。そのため、中心周波数f0である送信超音波を出力する必要がある。ところが、送信する超音波が低周波数であるほど、パルス幅は長くなり、したがって、送信する超音波の周波数帯域Aは図10(a)に図示するように狭小化される。また、送信する超音波の周波数も低周波数化されるので、深達度は向上するものの、空間分解能は低下する。
さらに、振動子にパルス信号が与えられたとしても、送信する超音波の周波数帯域Aのうち、振動子の周波数帯域Pから外れてしまう部分については通過が制限されてしまうため、通過周波数帯域は、図10(b)のBで示される部分に制限される。
これらの要因によって、従来では、広帯域な振動子を用いても、その周波数帯域のうちの一部分でしか使用されないため、十分に振動子の特性が活用されているものではなかった。
【0040】
これに対し、振動子の特性を考慮し、例えば、図9に示すようなデューティー比に設定することにより、広帯域な振動子2aの周波数帯域Pに対し、図11(a)に示すような振動子2aの周波数帯域Pよりも広い帯域特性(周波数帯域C)を有する送信超音波を発生させる駆動波形であるパルス信号を与えることができるようになる。ここで、振動子の周波数帯域よりも広い帯域特性を有する送信超音波とは、振動子の帯域幅よりも送信超音波の帯域幅が広いことをいう。帯域幅は、例えば、ピークから強度が20dB減衰した位置において占める周波数の範囲であり、帯域幅の比較は、上述のようにして規定された振動子の帯域幅と送信超音波の帯域幅とを比較することによって行われる。このようにして、振動子2aの帯域幅よりも送信超音波の帯域幅を広くした結果、図11(b)に示すように、送信超音波の周波数帯域Cのうち、振動子2aの帯域特性を通過した送信超音波はDに示されるようになり、振動子の周波数帯域が広範囲で利用され、広帯域の送信超音波を出力することができるようになる。なお、本実施の形態では、好ましい態様として、送信周波数の周波数帯域が振動子2aの周波数帯域の100%をカバーするように構成したが、必ずしも100%カバーされたものでなくてもよい。
【0041】
上述したようにして超音波が出力されると、送信超音波から得られる広帯域な基本波成分とともに、同様に広帯域な高次高調波成分が含まれた反射超音波を取得することができる。図11(b)に示すように、このときの反射超音波の基本波成分の周波数帯域特性はRによって表され、高次高調波成分の周波数帯域はTHによって表される。このとき、高次高調波成分THは、振動子2aの周波数帯域Pに含まれる部分のみ通過する。
【0042】
このように、本実施の形態では、送信超音波を広帯域で出力することができるので、従来よりも振動子の周波数帯域を広く利用することができるようになる。これにより、低周波成分と高周波成分とが含まれるようになり、空間分解能の向上と深達度の向上を両立させることが可能となって、良好な超音波画像を取得することができるようになる。
【0043】
また、反射超音波の被検体内における非線形性により、ベースバンド成分が生じることが知られている。ベースバンド成分の周波数帯域は、送信超音波の周波数に関係なく、反射超音波のパルス幅に依存するため、パルス幅が短いほど、ベースバンド成分の周波数は高くなる。すなわち、反射超音波のパルス幅や振動子の帯域特性によっては、ベースバンド成分を振動子の周波数帯域に含めることが可能となるので、このベースバンド成分を利用して超音波画像データーを生成することができれば、低周波成分であるベースバンド成分を利用し、深部においても優れた超音波画像を取得することができるようになる。
【0044】
本実施の形態では、広帯域特性を有する振動子2aによってパルス幅の短い送信超音波を出力することができるので、図11(b)に示すようにベースバンド成分BBが振動子2aの周波数帯域Pに含まれるようになり、ベースバンド成分BBの少なくとも一部を通過させることができるようになる。
【0045】
図2に示すように、受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をA/D変換するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データーを生成するための回路である。
【0046】
画像生成部14は、図4に示すように、例えば、フィルター部141、帯域設定部142、包絡線検波部143、対数増幅部144及び輝度変換部145を備えている。
【0047】
フィルター部141は、例えば、帯域制限フィルターを備えており、受信部13から入力された音線データーに対してフィルタリングを行う。
帯域設定部142は、音線データーの取得タイミングから取得深度を特定し、取得深度に応じたフィルター特性情報をフィルター部141に出力する。
【0048】
例えば、帯域設定部142は、取得深度の浅い部分についてフィルタリングする場合には、基本波成分を強調するためのフィルター特性情報をフィルター部141に与える。フィルター部141は、基本波成分を強調するためのフィルター情報を入力すると、音線データーに含まれる高調波成分やノイズ成分等を抑圧し、基本波成分を強調する。これにより、被検体の浅い部分については、高周波数の基本波成分によって空間分解能の高い超音波画像データーを生成することができる。
また、帯域設定部142は、取得深度の深い部分についてフィルタリングする場合には、基本波成分を抑圧するためのフィルター情報をフィルター部141に与える。フィルター部141は、基本波成分を抑圧するためのフィルター情報を入力すると、音線データーに含まれる基本波成分を抑圧し、2次高調波成分等の高次高調波成分やベースバンド成分を強調する。これにより、被検体の深い部分についても、ベースバンド成分や高次高調波成分により、空間分解能の高い超音波画像データーを生成することができる。
なお、ベースバンド成分以外の成分を抑圧し、ベースバンド成分を強調して超音波画像データーを生成するようにしてもよい。また、フィルタリングを行わず、基本波成分、高次高調波成分及びベースバンド成分によって超音波画像データーを生成するようにしてもよい。
【0049】
包絡線検波部143は、フィルター部141から出力された音線データーに対して全波整流を行い、包絡線データーを得る。
対数増幅部144は、包絡線データーに対して対数増幅を行う。
輝度変換部145は、対数増幅された包絡線データーの示す信号の大きさを256階調に量子化する振幅/輝度変換を行ってBモード画像データーを得る。すなわち、Bモード画像データーは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。また、輝度変換部145は、振幅/輝度変換が行われた包絡線データーに対し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行う。画像生成部14にて生成されたBモード画像データーは、メモリー部15に送信される。
【0050】
図2に示すように、メモリー部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データーをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリー部15は、フレーム単位により構成された超音波診断画像データーとして記憶することができる。メモリー部15に記憶された超音波診断画像データーは、制御部18の制御に従って読み出され、DSC16に送信される。
【0051】
DSC16は、メモリー部15より受信した超音波診断画像データーをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0052】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波診断画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンター等の印刷装置等を適用してもよい。
【0053】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データー等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデーターを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態によれば、超音波探触子2は、パルス信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する振動子2aを有する。送信部12は、矩形波のパルス信号を出力することにより振動子2aに送信超音波を生成させる。送信部12は、パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅に、パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅が重畳されるように、パルス信号のデューティー比を設定する。その結果、送信超音波の振幅を効率よく増幅できるとともに、パルス幅を短くすることができるので、送信超音波を広帯域とすることができ、空間分解能及び深達度の優れた送信超音波を出力することができるようになる。また、広帯域の超音波探触子を用いた場合には、その帯域を効率よく利用することができるようになるため、送信超音波から得られる反射超音波の基本波成分や、送信超音波が被検体内を伝播することにより発生する2次高調波成分やベースバンド成分といった、非線形による高調波成分を効率よく受信することができるようになり、空間分解能及び深達度の優れた、良質な超音波画像の取得が可能となる。また、矩形波のパルス信号にて実現できるので、任意波形を生成して広帯域で振幅の大きい駆動信号を生成する任意波形生成方式や、駆動信号の電圧を多値に切り替えて広帯域で振幅の大きい駆動信号を生成する多値駆動方式等の複雑な回路構成を必要とせず、安価にて実現可能となる。また、エネルギーコストも少ないので、省電力にも優れる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅のピークに、パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる振動子2aのステップ応答の振幅のピークが重畳されるように、パルス信号のデューティー比を設定する。その結果、送信超音波を効率よく増幅させることができるようになる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、振動子2aによって生成される送信超音波の周波数帯域特性が、振動子2aの周波数帯域特性よりも広くなるようなパルス信号を出力する。その結果、振動子の周波数帯域を最大限で利用することができるようになる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、パルス信号のデューティー比を変更可能に構成したので、使用する超音波探触子の特性に応じて、パルス信号のディーティー比を最適なものに設定することができるようになる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、パルス信号の振幅が正極性及び負極性で同一となるようにパルス信号の電圧を変位させるので、回路構成が簡素となり、コストの上昇を抑制することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、フィルター部141は、受信信号に対して所定の周波数成分のフィルターを行う。帯域設定部142は、受信信号の取得タイミングから特定される取得深度に応じて、フィルター部141によってフィルターする周波数成分を変更する。その結果、広範な周波数帯域にて得られた受信信号から、深度に応じて適切な周波数成分を抽出することができる。例えば、広帯域で送信した送信超音波は、ごく浅い1cm程度深さでは、10MHz以上の高い周波数を主成分とするように低周波成分を除去して、より高い分解能の超音波画像が得られるようにし、中程度からさらに深い4cm以上の深さでは、高周波成分は減衰されるので、フィルターする周波数成分の上限を反射超音波の周波数成分に合わせて設定することで、よりS/Nの高い信号を取得することができ、良質な超音波画像を取得することができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、振動子2aは、送信超音波が被検体内を伝播することにより生じるベースバンド成分を受信可能な周波数帯域特性を有しているので、深部においても空間分解能に優れた超音波画像を取得することができるようになる。
【0061】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0062】
また、本実施の形態において、送信超音波の波形を、送信超音波の中心周波数(キャリア周波数)Fcがベースバンド周波数Fbよりも高周波数であって、ベースバンド周波数Fbにキャリア周波数Fcを乗じて得た形状とし、図12に示すように、振動子の周波数帯域Pの範囲内に、「Fc−Fb」によって求められる周波数と、「Fc+Fb」によって求められる周波数とが含まれるようにすると、送信超音波の中心周波数の両側にそれぞれベースバンド成分BB(L),BB(H)が含まれるようになり、より良質な超音波診断画像を取得することができるようになる。なお、図12において、送信超音波の周波数帯域特性についてはEにて示している。
【符号の説明】
【0063】
S 超音波画像診断装置
1 超音波画像診断装置本体
2 超音波探触子
2a 振動子
12 送信部
14 画像生成部
122 パルス発生回路
123 デューティー設定部
141 フィルター部
142 帯域設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する振動子を有する超音波探触子と、
矩形波のパルス信号を出力することにより前記振動子によって前記送信超音波を生成させる送信部と、
を備えた超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅に、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅が重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定したことを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークに、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークが重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定することを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記振動子によって生成される前記送信超音波の周波数帯域特性が、前記振動子の周波数帯域特性よりも広くなるような前記パルス信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
前記送信部は、前記パルス信号のデューティー比を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記パルス信号の振幅が正極性及び負極性で同一となるように前記パルス信号の電圧を変位させることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
前記受信信号に対して所定の周波数成分のフィルターを行うフィルター部と、
受信信号の取得タイミングから特定される取得深度に応じて、前記フィルター部によってフィルターする周波数成分を変更する帯域設定部と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項7】
前記振動子は、前記送信超音波が被検体内を伝播することにより生じるベースバンド成分を受信可能な周波数帯域特性を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項1】
パルス信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する振動子を有する超音波探触子と、
矩形波のパルス信号を出力することにより前記振動子によって前記送信超音波を生成させる送信部と、
を備えた超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅に、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅が重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定したことを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記パルス信号の電圧を変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークに、前記パルス信号の電圧をさらに変位させたときに生ずる前記振動子のステップ応答の振幅のピークが重畳されるように、前記パルス信号のデューティー比を設定することを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記振動子によって生成される前記送信超音波の周波数帯域特性が、前記振動子の周波数帯域特性よりも広くなるような前記パルス信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
前記送信部は、前記パルス信号のデューティー比を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記パルス信号の振幅が正極性及び負極性で同一となるように前記パルス信号の電圧を変位させることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
前記受信信号に対して所定の周波数成分のフィルターを行うフィルター部と、
受信信号の取得タイミングから特定される取得深度に応じて、前記フィルター部によってフィルターする周波数成分を変更する帯域設定部と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項7】
前記振動子は、前記送信超音波が被検体内を伝播することにより生じるベースバンド成分を受信可能な周波数帯域特性を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−245307(P2012−245307A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121438(P2011−121438)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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