説明

超音波組織治療の方法と装置

開示されるのは柔らかい組織の治療方法であって、少なくとも2つの超音波トランスデューサーを組織突起に適用して、パルスまたは連続動作モードで動作させて超音波放射を突起に放出する。トランスデューサーの少なくとも一つは他のトランスデューサーによって送出され突起を通して送信された超音波パワーの一部を受信する。コントローラは、超音波の受信した部分を分析して、組織カップリングをもった超音波放射をアクティブに監視するためのデータを採用する。開示されるのはまた、方法の実装を可能とする装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置は、超音波組織治療、特に、美容整形の目的のための脂肪組織治療、の分野のものである。
【背景技術】
【0002】
皮下脂肪層または脂肪組織の削減は、増え続ける需要のある美容治療である。利用可能な異なる物理的療法の中で、超音波の適用が、主導的な脂肪組織除去およびボディシェーピング技術として現れてきている。この技術に関連する方法は、受療者の皮膚を通して皮下脂肪組織中へ治療すべき組織の容積まで電磁または超音波エネルギーの線量を配送することに基づいている。本願の譲渡人の米国特許第5,143,063号、第5,507,790号、第6,071,239号、第6,113,558号、米国特許出願公開第2004/0106867号、および米国特許出願第11/335,181号は、この技術の現状を反映しているものと思われる。
【0003】
超音波の線量を受療者に配送するためには、治療奉仕者は、超音波トランスデューサーを含んだアプリケータを受療者の皮膚に装着し、望ましい線量のエネルギーを送信する。治療奉仕者はしかし、組織を通した超音波のカップリングと送信の品質の表示を持っておらず、超音波エネルギーの組織との相互作用についての情報を持たない。脂肪組織の集合状態(組成)の変化において治療がどれ程成功であったか、またはいつ目標容積中への超音波の導入を停止しても良く次の容量の治療を開始しても良いか、についての情報がない。治療制御のための既知の技術は、超音波反射の測定に基づいている。これらの反射から、それらは超音波エネルギーの組織との相互作用についての情報を導き出している。しかしながら、反射エネルギーは、目標組織容量中で起こっているプロセスについての十分な情報を含んでいない。
【0004】
目標容量中に集中された超音波パワーを増加するためには、多数のトランスデューサーが同じ容量にフォーカスされ、同時に連続的に動作されられる。他のものの方向へ放出しているものであるこれらのトランスデューサーによって放出された超音波のパワーの間の相互作用は、放出パワーの限界を設定する現象である。各トランスデューサーは、パワー密度の上限を有し、トランスデューサーにおけるパワー密度は、トランスデューサーによって放出されたパワーと、他のトランスデューサーからそれの上に当てられたパワーの和である。
【0005】
超音波適用技術のより迅速な発展のためには、これらおよびその他の問題を解決して、超音波治療プロセスに渡るより良い制御を可能とする必要がある。
【0006】
開示された方法と装置が、非限定的な例としてのみ、添付された図面を参照してここに提示されるが、そこでは明細書の文章を通じて同様の符号が同一の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、一例示的実施形態による組織治療のための装置の概略図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、組織治療のためのアプリケータのいくつかの例示的実施形態の概略図である。
【図3】図3は、方法の例示的実施形態によって動作するトランスデューサーにおいて監視された典型的な送信され誘起された信号の概略図である。
【図4】図4は、方法の追加の例示的実施形態による組織治療のための装置の概略図である。
【図5】図5は、組織治療のためのアプリケータの追加の例示的実施形態の概略図である。
【図6】図6は、方法の更なる例示的実施形態による組織治療のためのアプリケータの概略図である。
【図7】図7は、図6の組織治療のためのアプリケータの断面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、例示的実施形態に従った組織治療のための装置の概略図である図1を参照する。装置100は、アプリケータ104の超音波エネルギーの助けを借りて受療者組織108に適用される。ここで使用されるように、「組織治療」という用語には、表皮、真皮、脂肪質組織治療、および脂肪組織破壊、脂肪ネクロシス(壊死)誘起、脂肪アポプトシス(枯死)誘起、脂肪再分配、アディポサイト(脂肪セル)サイズ削減、セルライト(脂肪沈着)治療のような手順を含む。制御部112は、ハーネス116を介してアプリケータ104の動作を司る。制御部112はとりわけ、アプリケータ104中に位置する超音波トランスデューサーを電気的に駆動する超音波ドライバー120と、装置100の各種機能を監視して制御するためのプロセッサ124を含む。制御部112は、治療奉仕者または装置オペレータが異なるコマンドや望ましい治療パラメータをプロセッサ124に入力することを許容するキーパッド128のような入力デバイスを有していても良い。そのようなパラメータは、超音波の周波数、パルス持続時間、パルス繰り返しレート、治療組織に向けられることになる超音波エネルギーの強度、RF強度、真空時間、および真空強度であり得る。
【0009】
制御部112はオプションで、治療中にアプリケータ104と皮膚表面のセクションを冷却するための冷却手段132を含んでいても良い。冷却手段132は、冷却液を冷却する冷蔵部であっても良い。冷却された液体は、冷却手段132からアプリケータ104に、ハーネス116の一部であり得るチュービングを介して流れる。真空ポンプ136は、空気圧より低い圧力を発生して、組織の一領域が周囲の表面より上にアプリケータ104の内部セクション中へ突き出ることを引き起こす。ハーネス116に埋め込まれた真空ホースは、ポンプ136をアプリケータ104に繋ぐ。治療プロセスパラメータの視覚的表現のためのディスプレイ142が制御部120に含まれても良い。オプションの高周波(RF)発生器114が制御部112中に位置していても良い。発生器144は必要があればアプリケータ104にRFエネルギーを提供する。制御部112に含まれるのは、アプリケータ104からフィードバックを受け取り、フィードバックを処理して分析し、アプリケータ104に更新された命令を通信するためのハードウェアおよび/またはソフトウェアにより実装され得る信号処理および分析部140である。図2は、組織治療のためのアプリケータの一例示的実施形態の概略図である。アプリケータ104は、超音波パワーを放出することが可能な少なくとも一つの超音波トランスデューサー160と、放出され突起した組織を通して送信された超音波パワーを受信することができる少なくとも一つの超音波トランスデューサー164を含む。殆ど全てのタイプの超音波トランスデューサーを超音波エネルギーの送信と受信の両方に使うことができることは、業界では良く知られていることである。従って、トランスデューサー160と164は同様または同一であることができ、それらの両方が放出または受信モードのどちらかで動作しても良い。超音波ドライバー120は超音波トランスデューサー160と164に電気パワーを提供する。ここで使われるように、「トランスデューサー」という用語は、超音波放出器と超音波受信器を含む。
【0010】
アプリケータ104は、治療されるべき組織の領域において受療者108の組織に適用されるように適応されている。アプリケータ104は、トランスデューサー160と164に加えてオプションで、発生器144によって供給されたRF電流を治療された組織中に向けるRF電極の一つ以上のペアを含んでいても良い。(アプリケータ要素のいくつかは説明の明瞭さのために省略されている。)アプリケータ104にRF電極が含まれている時、プロセッサ124は電極間の電気インピーダンスを監視し、RFカップリング品質を決定しても良い。プロセッサ124はまた、組織の電気伝導率が温度依存性であるので、組織中の温度の変動を監視することによって治療の実効性を監視しても良い。
【0011】
図2Aと2Bは、超音波トランスデューサー160と164を平面トランスデューサーのペアとして描いているが、それらは湾曲したフェーズアレイ型のものであっても良いことは明らかであるはずである。図6に描かれているように、湾曲したトランスデューサーは、治療された組織を取り囲むような形状を有するかまたはそのように配列されていても良い。トランスデューサーの個数は2つには限られず、組織突起176と接触していて超音波が一つのトランスデューサーからもう一つへ突起した組織を通して伝播するように超音波を放出する追加の超音波トランスデューサー(または受信器)が、アプリケータに追加されていても良い。
【0012】
第11/335,181号出願は、組織の高い柔軟性をとりわけ利用して、体表面から突起176を生成する。これは目標組織容積中にエネルギーを配送する皮膚/組織の面積を増加させ、治療の効率を向上させる。ポンプ136(図1)によってアプリケータ104に提供された負圧(真空)は、組織172突起176をアプリケータ104の内部セクション中に作り出す。代替的に、組織172の機械的な操作が突起を作り出しても良い。超音波トランスデューサー160と164のペアはその突起に取り付けられ、トランスデューサーは典型的には乱されていない皮膚表面に平行な方向に、または少なくともその最適な角度に可能な限り近くで、放射する。これは目標容積168中により多くの量のエネルギーが集中する一方で、はるかに少ない放射がより深い体組織に到達することを許容する。オプションとして、柔らかい組織のものと同様な音響的特性を有する楔形超音波カップリング手段180が使われて超音波から柔らかい組織へのカップリング効率を向上しても良い。数字184は、表皮または真皮のような上部組織層を示す。
【0013】
アプリケータ104は、所望の治療効果を作り出すのに十分なエネルギー集中を生成するように、治療されるべき皮下組織の一領域に超音波エネルギーを配送するよう構成されている。但し、単一のトランスデューサーは、ここで超音波エネルギーの定格量と呼ばれる超音波エネルギーの制限された量を配送することができる。超音波エネルギーのフォーカシングの程度およびフォーカシング容積のサイズにも制限がある。本願の譲渡人の米国特許出願第11/335,181号は、治療された組織172の同一目標容積168にフォーカスされた、トランスデューサー160と164のような少なくともペアのトランスデューサーを使用することを教示している。
【0014】
トランスデューサー160と164は、容積に結合されたエネルギー量を増加するように、同一目標組織容積168にエネルギーを配送するよう同時に動作させられることができる。一実施形態では、両トランスデューサーが同一周波数で固定された相対的位相をもって超音波を放出している。そのような場合、超音波速度場は組み合わされる。超音波パワー密度は、音速の絶対値の二乗に比例する。従って、同じパワー密度を放射している2つのトランスデューサーについては、目標組織におけるパワー密度は単一のトランスデューサーによって放出されたパワーの4倍までとなることが期待できる。実際には、各トランスデューサーは制限されたパワー定格出力を有するので、この理論的限界には到達できない。第一のトランスデューサーによって放出され、突起176中の組織を通して送信された超音波が第二のトランスデューサーに到達した時、それは第二のトランスデューサーによって放出された超音波と干渉する。第二のトランスデューサーは、それが放出するパワー密度と第一のトランスデューサーから到着する追加のパワー密度を扱うことができない。上で気付かれたように、各トランスデューサーは制限されたパワー定格出力を有する。この定格出力は、第二のトランスデューサーによって放出されることができる超音波パワーを低減し、その逆もしかりである。
【0015】
装置と方法の一例示的実施形態によると、パルスモードでのトランスデューサーの動作はこの問題を緩和する。パルスの持続時間は、第一のトランスデューサーによって放出された超音波波面が第二のトランスデューサーに到着する時に第二のトランスデューサーが既に超音波を放出して送信することを終了しているようなものとされるべきである。パルスと特に短パルスは、決して理想的な正方形パルスであることはない。それらは常に立ち上がり時間と落ち下がり時間を有し、最大パワーと組織中のパルス当りの最大エネルギーを得るようにパルス長の更なる最適化を行うことができる。パルス長またはパルス持続時間の教科書的定義は、半パワーポイントあるいは所謂−3dBポイントの間の幅である。従って、最適な状況のために、パルスの半パワー(−3dB)幅を、一つのトランスデューサーから他への超音波の遷移時間に等しいかそれよりも小さく設定することが可能である。
【0016】
本方法の著者は、短パルスがより長いものと少なくとも同じ位組織治療について良好であり、同一の超音波エネルギーと組織の相互作用結果、特に脂肪組織セル破壊、を作り出すことを実験的に証明した。異なるパルス持続時間の影響を比較するために、同一の平均超音波パワー([ピークパワー]×[デューティーサイクル])が全てのテストにおいて維持された。
【0017】
短い超音波パルスを使用することの重要な利点は、外側層184におけるパワー密度が、脂肪組織におけるパワー密度と比較して小さいことである。一実施形態によると、組織172中に突起の両側から同一周波数の放射を放出している2つ以上の超音波トランスデューサー160が、同一容積168においてフォーカスされる。もしパルス(半パワー幅)が、トランスデューサー間の遷移時間よりも短ければ、超音波は、単一送信トランスデューサーのパワーの4倍まで焦点容積において組み合わされることができる。よって、脂肪組織が所在している突起の焦点容積においてのみ高パワー密度が存在する。外側層184における超音波パワー密度は、超音波パルスの到着時間の差のために、焦点容積中のパワー密度よりも実質的に低い。パルスのパワーのピークは、他のトランスデューサーから到着するパワーのピークの前に、最も近いトランスデューサーからその層に到着する。これは、外側層184へのあらゆる潜在的損傷を回避する。
【0018】
もし送信されたパルスの持続時間が、第一のトランスデューサーによって放出された超音波が組織を通して第二のトランスデューサーまで移動するのに要する時間よりも短ければ、放出され組織を通して送信されたパルスの殆ど全てが第二のトランスデューサーに、それが超音波を放出し終わって受信器としての役割を果たし得る後に、到着するであろう。もしパルスが遷移時間の2倍に等しければ、パルスの半分は送信の終了後に受信される。第二のトランスデューサー中に誘起された信号は、例えば、他のトランスデューサーによって放出された超音波によって一つのトランスデューサー中に誘起された電圧であり得る。信号は、業界でよく知られた手段によってサンプリングされ分析されても良い。よって、短パルスの使用は、組織中へのパワー送信のために使用されたのと同じトランスデューサーに基づいて、追加の特定の受信器トランスデューサーを必要とすることなく、組織を通しての超音波送信のリアルタイム診断と超音波の治療された組織との相互作用の分析を可能とする。
【0019】
数値例は、議論されたパルス持続時間のよりよい感触を提供する。例えば、トランスデューサー間の距離は40〜50mmであっても良い。組織中の平均音速は約1500m/secである。パルス遷移時間はおよそ27〜33マイクロ秒であろう。従って、もしパルス持続時間がこの時間よりも短く、一つのトランスデューサーによって送信された超音波の始まりが第二のものに到着する時にパルスが両トランスデューサーによって同時に送信されるならば、これは既に送信することを停止しており受信器として機能することができる。実用上は、超音波パルスは理想的な長方形ではなく、最適パルス長を選択する時に考慮されなければならない立ち上がりおよび落ち下がり時間を有する。送信時間と等しいかそれより短いパルスを使用することが最善のやり方ではあるが、より長いパルスを使用して送信の終了後に到着するパルスの立ち下がり部分のみをサンプリングすることもできる。
【0020】
同一のトランスデューサーを使用する必要はない。受信トランスデューサーは、送信トランスデューサーによって送信された周波数スペクトルの少なくとも一部を受信することが可能であるべきである。図3は、トランスデューサー160または164の各々における信号の典型的イメージの例を示す。数字190は、トランスデューサー駆動電圧を印している。それは数字194で印された一定時間の間継続する。送信時間198の完了の際に、他のトランスデューサーからの超音波が到着し、サンプリングされて信号処理および分析モジュール140に通信されるトランスデューサー信号202を誘起する。典型的には、誘起された信号202の振幅は、超音波伝播損失および制限されたトランスデューサー効率のために、送信された信号のそれよりも低い。両信号の処理は、送信されて受信された超音波についての貴重なデータを与える。トランスデューサー上での信号サンプリングは、容量結合、磁気結合、または抵抗結合のようなあらゆる標準的技術によって行うことができる。
【0021】
突起した組織を通して送信された超音波は、超音波の組織との相互作用、特にトランスデューサーからの組織への超音波のカップリングの品質と組織を通した送信についての情報をそれと共に搬送する。送信トランスデューサーによって放出された超音波パルスにより受信トランスデューサーにおいて誘起された信号の分析は、以下のパラメータの少なくとも一つを含み得る:信号送信時間、または第一のトランスデューサーによって放出された信号が第二のトランスデューサーに到着するのにかかった時間と呼ばれ得るもの;受信パルスの前面におけるピーク信号強度、およびパルスの前面に続く強度変動。
【0022】
到着の時間は、組織内部の平均音速の直接的な測度である。平均音速は、治療された組織の集合状態についての指標を与える。例えば、皮膚上の音速は脂肪中よりも高いので、より分厚い皮膚は平均音速を増加させ、パルス到着時間を低減させる。組織中の音速は、温度依存性であることが知られている。このため、音速の測定は組織温度の変化とそれに関連する治療の効率についてのデータを与えることができる。組織温度を監視することは、治療を制御して組織への望まれない損傷を回避するために重要である。組織の加熱は、超音波エネルギーおよび/または同一譲渡人の米国特許出願第11/335,181号に開示されているように治療された組織に適用されるオプションのRFエネルギーの導入によって発生する。名目上の既知の値からの超音波移動時間の非常に大きな変動は、超音波伝播の望ましくない経路を示すであろう。
【0023】
パルスの前面におけるピーク強度は、送信トランスデューサーが適正に作動していることと超音波の組織へのカップリングが正しいこと、従って組織を通した送信が良好であること、の直接的な指標である。
【0024】
推奨された方法の著者によって行われた実験は、超音波が連続モードで適用され脂肪破壊の閾値に達した時に、誘起された信号強度が変動し始めることを示した。超音波がパルスモードで組織に適用された時には、変動はパルスの前面の後に始まる。このため、受信したパルス前面に続く強度変動の測定は、治療の実効性の指標である。加えて、脂肪組織破壊プロセスが完了した時には、送信信号変動が止まり、組織を通した送信が高くて安定になったことが観察された。この受信パルス挙動は、脂肪組織破壊プロセスの開始および終了における良好なリアルタイム情報を提供する。
【0025】
この情報は、誘起された信号の処理から抽出された追加の情報と共に、プロセッサ124(図1)に通信され、超音波放射の組織とのカップリングプロセスのリアルタイムでアクティブな監視のために採用されるべきデータを提供し得る。補正的アクションは、送信された超音波の動作パラメータ、または突起を作り出す真空吸引(このパラメータはカップリング上に影響を有する)、またはもしアプリケータに含まれていればRFエネルギー(RFエネルギーは組織温度を変更し、それは超音波伝播および組織中の相互作用効果に影響することができる。)、の変更を含み得る。送信された超音波の動作パラメータは少なくとも:パルスピークパワー、パルス長、パルス繰り返しレート、トランスデューサー間の相対的位相、およびもしフェーズドアレイが使われていればフォーカシング方式、である。ピーク超音波強度は、望ましい組織治療効果のための閾値パワーを超えるように設定されても良いが、付随的損傷の危険を低減するように高くなりすぎるべきではない。
【0026】
処理部140によってプロセッサ124に通信された監視信号分析に基づいて、プロセッサ124(図1)は補正的アクションに着手し、上掲した動作パラメータの一つ以上を自動的に変更しても良い。そのような装置は、閉ループモードで動作され、治療奉仕者または装置オペレータの介入は必要ではない。代替的に、誘起された信号の処理から抽出された情報は、治療奉仕者または装置オペレータに装置の手動操作の可能性を提供しているディスプレイ142(図1)上に表示されても良い。超音波動作パラメータの手動変更は、それらをキーパッド128を介して入力することにより行われる。
【0027】
組織カップリング(または相互作用)をもった超音波放射のリアルタイム監視プロセスは、長パルスまたは連続的放射トランスデューサーに適用可能である。そのような場合、一つのトランスデューサーが治療のために要求される超音波を放出し、他のトランスデューサーは少なくとも一部の時間についてのみ受信器としての役割を果たす。制御システム124は、送信されたエネルギーの誘起信号分析なしで、両トランスデューサーが殆どの時間について送信しているように、タスクの時分割のために設定されることができる。トランスデューサーの一つが超音波を放出するように駆動されていない時間においては、それは受信器として機能し得る。誘起された信号の処理と分析は、同様のやり方で行われる。しかしながら、パートタイムの信号監視は、一つのトランスデューサーが監視時間において送信していないので、目標組織容積における全パワー密度についての情報を提供しない。フェーズドアレイトランスデューサーの適用は、この問題を緩和して組織の治療について追加の利点を供することができる。
【0028】
図4は、方法の一例示的実施形態に従った組織治療のための装置の別の実施形態の概略図である。装置200は、装置100とは区別された数々の特徴を有する。アプリケータ204は、フェーズドアレイ超音波トランスデューサー210を含む。コントローラ212のドライバー部220中に位置する独立ドライバーチャネル250は、トランスデューサー210の各個別素子260−1〜260−4(図5)を駆動する。位相発生器264は、各素子260の位相を制御する。制御部212は、素子260の位相調整プログラムを制御する。位相調整プログラムは、組織272内部の望ましい位置における焦点容積268(図5)を得るように構成されている。
【0029】
図5は、組織治療のためのアプリケータの追加の例示的実施形態の概略図である。アプリケータ204は、相対して置かれたフェーズドアレイ超音波トランスデューサー210を含む。トランスデューサー210は、組織272中に超音波を配送する。オプションで、カップリング手段280を採用して、超音波の組織へのカップリングを向上しても良い。組織突起226は、真空吸引または機械的操作によって生成される。各トランスデューサー210は、複数の素子260から構築されている。各トランスデューサー中には4つの素子だけが示されているが、それらの数とサイズは、フェーズドアレイデザインの既知の慣習に従って選ばれても良い。独立ドライバーチャネル250は、各素子260を駆動する。位相発生器264は各素子260の位相を制御する。制御部212は、それらが目標容積268中にフォーカスされるように、素子260の位相調整プログラムを制御する。
【0030】
各トランスデューサーの2つの素子、例えば素子2と3がサンプリングされる。あらゆる数の素子がサンプリングと誘起信号分析のために選ばれることができる。より多くの素子が選ばれると、送信データがより正確になる。サンプリングはあらゆる既知のカップリング手段によって行われることができる。カップリング手段によって生成された信号は、処理および分析モジュール140とプロセッサ124に供給される。前に説明したように、プロセッサ124は治療パラメータを自動的に変更し、貧弱なカップリングの場合には治療を停止し、および/または治療奉仕者またはオペレータの決定のための情報を表示することができる。上述した全ての誘起信号分析は、必要に応じて変更を加えてフェーズドアレイトランスデューサーに適用可能である。
【0031】
更に、フェーズドアレイトランスデューサーの適用は、受信されたデータの精巧な分析とより良い治療制御を可能とする。例えば、オペレータは焦点容積のスキャニングを行うことを制御システムに命令し得る。制御システムは、要求された位置において焦点容積を得るように位相を計算する。もし超音波送信が各焦点容積について十分であれば、アレイのサンプリングされた素子において電圧の特定の組が期待される。適正な送信からのあらゆる逸脱は検知され、送信についてのデータを得るように分析されることができる。例えば、焦点がそれらの間に向けられている時には素子2と3は等しい電圧を生成する。焦点容積の不定期なシフトは、素子2と3によって生成される電圧の差によって検出することができる。短パルスが、均一位相トランスデューサーと同様のやり方で、フェーズドアレイトランスデューサーに使用される。フェーズドアレイは、長パルスまたは連続送信での送信のより容易な監視を可能とする。制御システム240は、所望の時間について特定の素子を選択してサンプリングすることができる。その時間中には、選択された素子は送信のために駆動はされずに、受信器として使用される。もしアレイ中の素子数が十分に大きければ、焦点組織容積におけるパワー損失は小さい。例えば、32素子アレイでは、放出していない一つの素子は、放出された放射を1/32だけ減少させる。より精巧な制御方式は、時間および位置プログラムに従って素子をサンプリングすることができる。
【0032】
本方法の著者は、超音波パルスが脂肪組織セルを分解する時に覆われていない耳が音を聞くことを実験的に見つけた。信号は、各超音波パルスに付随する一種の「ノッキング」ノイズである。図6は、方法の更なる例示的実施形態に従った組織治療のためのアプリケータの概略図である。アプリケータ300は、音響的マイクロホン304を含む。マイクロホンは、治療された組織容積からの可聴音を収集し、超音波パルスに付随しているそれらの音だけをフィルタリングする。トランスデューサー270は図7に示されるように、治療された組織172を取り囲むような形状を有するかまたはそのように配列され得る、湾曲した、正規の、またはフェーズドアレイトランスデューサーであることができる。図6の組織治療のためのアプリケータの断面である、図7に示されたフェーズドアレイトランスデューサー270の異なる動作セクションは、共通の目標焦点容積168中に超音波場を集中させるように動作させられ得る。数字280(実線)と数字290(破線)は、トランスデューサー270によって作成され焦点容積168中に集中させられるべき、異なる方向から向けられた超音波場を示す。
【0033】
開示された方法と装置は、組織を通した超音波のカップリングと送信の品質の明確な指標を治療奉仕者に与え、超音波エネルギーの組織との相互作用についての情報を提供し、治療の品質を向上する。
【0034】
誘起信号パワー変動は、脂肪組織の集合状態の変化において治療がどれ程成功であったか、いつ目標容積中への超音波の導入を停止しても良いか、次の容積の治療を開始しても良いかについての情報を提供する。
【0035】
短パルスを使用することによって、トランスデューサーのパワー定格出力を超えることなく、治療されるべき組織中に高パワー密度を得ることができる。
【0036】
短パルスの別の利点は、外側組織層における超音波パワー密度が焦点容積中のパワー密度よりも実質的に低いことである。これは外側組織層へのあらゆる潜在的損傷を回避する。
【0037】
短パルスは、トランスデューサーによってそれらを送信および受信することと、それらの伝播時間遅延によって受信信号から送信信号を分離することを可能とする。
【0038】
フェーズドアレイの適用は、無視できるパワーの損失でもって送信と受信のタスクの間のタイムシェアリングを可能とする。
【0039】
焦点容積の不定期なシフトまたは超音波伝播の他の妨害は、フェーズドアレイトランスデューサーの受信素子によって生成される電圧の差によって検出することができる。
【0040】
本方法および装置の例示的実施形態が図示され記載されたが、装置および方法の精神と範囲に影響することなくそこに様々な変更を行うことができることは理解されるであろう。方法の範囲は従って以下の請求項を参照することによって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔らかい組織の治療方法であって、
a)少なくとも2つの超音波トランスデューサーを組織突起に適用して、前記トランスデューサーをパルスまたは連続動作モードで動作させることと、
b)他のトランスデューサーによって前記突起を通して放出され送信された超音波パワーの少なくとも一部を、前記トランスデューサーの少なくとも一つによって受信することと、
c)前記受信した部分を分析して、超音波の治療された組織へのカップリング、前記組織容積の集合状態、前記組織中の音速、脂肪組織破壊の開始、の少なくとも一つのリアルタイム監視のためのデータを提供することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記超音波パルスの持続時間は、前記トランスデューサー間のクロストークを排除する、請求項1による方法。
【請求項3】
前記パルスの半パワー幅が、前記トランスデューザーの一つによって放出された前記超音波が第二のトランスデューサーに到達する時間よりも短くなるように、パルスモードで前記トランスデューサーを動作させて前記パルスの持続時間を選択することを更に含む、請求項1による方法。
【請求項4】
前記トランスデューサーの各々は、前記突起中に位置する共通目標組織容積中へ放出する、請求項1による方法。
【請求項5】
前記突起は、それを通して超音波エネルギーが目標組織容積中に配送される組織の面積を増加させる、請求項1による方法。
【請求項6】
トランスデューサーは、乱されていない皮膚表面に平行な方向に超音波エネルギーを放射する、請求項1による方法。
【請求項7】
前記超音波放射放出モードでの動作を完了すると前記トランスデューサーの各々は、前記超音波放射受信モードで動作する、請求項1による方法。
【請求項8】
前記受信超音波パルスのパラメータが、信号遷移時間、パルスの前面におけるピーク受信強度、パルスの前面に続く強度変動および位相シフトの少なくとも一つを含む、請求項1による方法。
【請求項9】
前記超音波放射が連続モードで放出され、前記超音波送信データのパラメータがピーク信号強度、強度変動および位相シフトの少なくとも一つを含む、請求項1による方法。
【請求項10】
前記突起を通して送信された放射を受信して分析することは、超音波動作パラメータを設定するために採用され、前記パラメータ設定は自動または手動モードで行われる、請求項1による方法。
【請求項11】
前記受信信号強度の変動は前記脂肪組織の破壊を示し、受信信号パワー変動の不在は脂肪組織破壊プロセスの完了を示す、請求項1による方法。
【請求項12】
前記受信パワーの強度は治療の実効性を示す、請求項1による方法。
【請求項13】
可聴信号が脂肪組織セルの分解を示す、請求項1による方法。
【請求項14】
前記超音波エネルギーと同時にRFパワーを適用することを更に含む、請求項1による方法。
【請求項15】
柔らかい組織の治療方法であって、
a)組織突起に前記突起中の共通の組織容積に放出する少なくとも2つの超音波トランスデューサーを適用して、前記トランスデューサーを少なくとも一部の時間は超音波放射を放出し少なくとも一部の時間は放出された超音波放射を受信するように動作させることと、
b)前記突起を通して送信されたところの放射を受信して処理し、それを組織カップリングをもった前記超音波放射をアクティブに監視するために採用することと、
を含む方法。
【請求項16】
前記超音波放射は連続またはパルスモードのどちらかで放出される、請求項15による方法。
【請求項17】
前記突起を通して送信された放射の前記処理は、前記超音波信号の動作パラメータを設定することを可能とし、設定は自動または手動モードで行われる、請求項15による方法。
【請求項18】
前記受信信号の強度変動は前記脂肪組織破壊の閾値を示す、請求項15による方法。
【請求項19】
前記超音波信号の動作パラメータは、パルスピークパワー、パルス長、パルス繰り返しレート、トランスデューサー間の相対的位相、フォーカシング方式、の少なくとも一つである、請求項15および18による方法。
【請求項20】
覆われていない耳で可聴な信号が前記脂肪組織セル分解を示す、請求項15による方法。
【請求項21】
柔らかい組織の治療のために使われるアプリケータを動作させる方法であって、
a)少なくとも2つの超音波トランスデューサーをアプリケータに設けることと、
b)前記パルスの持続時間が、一つのトランスデューザーによって放出された超音波波面が第二のトランスデューサーに到達するのに要する時間よりも短くなるように、前記トランスデューサーをパルスモードで動作させることと、
を含む方法。
【請求項22】
前記超音波は、前記アプリケータによって形成された皮膚突起に適用される、請求項21による方法。
【請求項23】
少なくとも超音波と重複する期間において突起にRFエネルギーを適用することを更に含む、請求項21による方法。
【請求項24】
超音波組織治療中に柔らかい組織への損傷を回避する方法であって、
a)柔らかい組織突起を形成することと、
b)少なくとも2つのトランスデューザーを適用して、前記トランスデューサーによって前記突起中の共通の目標容積に超音波を放出することと、
c)高い超音波放射密度が前記容量中に生成されるように、前記トランスデューサーを動作させて超音波パルスを前記容量に配送することと、
d)一つのトランスデューサーによって放出された超音波が外側組織のセクションを通して一つずつだけ通過するように、前記トランスデューサーの動作期間を配列することと、
を含む方法。
【請求項25】
柔らかい組織の超音波治療のための装置であって、
a)前記柔らかい組織の突起を生成するためのアプリケータであって、前記アプリケータは少なくとも一つの送信トランスデューサーと少なくとも一つの超音波エネルギー受信トランスデューサーを有するものと、
b)超音波エネルギーの前記受信器によって受信された信号を処理するための信号処理および分析部を有する、前記アプリケータを駆動するためのコントローラと、
を含む装置。
【請求項26】
アプリケータは真空または機械的手段によって組織突起を生成する、請求項25による装置。
【請求項27】
前記信号処理および分析部がソフトウェアまたはハードウェアの少なくとも一つであり、前記受信超音波パルス信号のパラメータが、信号遷移時間、パルスの前面におけるピーク受信強度、パルスの前面に続く強度変動および位相シフトの少なくとも一つを含む、請求項25による装置。
【請求項28】
前記トランスデューサーが、均一位相トランスデューサー、湾曲トランスデューサー、またはフェーズドアレイトランスデューサーの一つであり、前記フェーズドアレイトランスデューサーの少なくとも一セクションが受信器として動作する、請求項25による装置。
【請求項29】
前記トランスデューサーの受信セクションが、前記治療プロセス上のフィードバックを前記コントローラに提供し、前記フィードバックに基づいてコントローラが超音波信号動作パラメータの少なくとも一つを設定する、請求項25および28による装置。
【請求項30】
前記超音波信号の前記動作パラメータが、パルスピークパワー、パルス長、パルス繰り返しレート、トランスデューサー間の相対的位相、フォーカシング方式、の少なくとも一つである、請求項25および29による方法。
【請求項31】
前記アプリケータが、超音波から組織へのカップリング効果を感知して可聴信号を作成するためのマイクを含み、前記マイクは前記制御部と通信する、請求項25による装置。
【請求項32】
マイク信号に基づいてコントローラが前記超音波の動作パラメータを設定する、請求項25および31による装置。
【請求項33】
前記アプリケータが更に、少なくとも一つのRF電極ペアを含む、請求項25による装置。
【請求項34】
柔らかい組織の超音波治療のための装置であって、
a)前記柔らかい組織の突起を形成するためのアプリケータであって、
i)超音波放射を前記突起に適用する少なくとも一つの超音波トランスデューサーと、前記突起を通して送信された超音波放射を受信するための少なくとも一つの超音波放射受信器と、を含むアプリケータと、
b)前記アプリケータの動作と制御するためのコントローラであって、
i)前記トランスデューサーを駆動するための超音波ドライバーと、
ii)前記受信器によって受信された信号を処理し、前記超音波ドライバーの動作パラメータを設定するための処理および分析部と、を含むコントローラと、
を含む装置。
【請求項35】
前記アプリケータは更に、RF電極のペアとマイクを含む、請求項34による装置。
【請求項36】
前記コントローラは更に、前記RF電極と通信しているRF発生器を含む、請求項34による装置。
【請求項37】
柔らかい組織の超音波治療のための装置であって、
a)前記柔らかい組織の突起を形成するためのアプリケータであって、
i)超音波放射を前記突起に適用する少なくとも2つの超音波トランスデューサーであって、前記トランスデューサーの各々の少なくとも一セクションが受信器として動作するものと、
ii)RF電極のペアと、
iii)超音波から組織へのカップリングの可聴効果を監視するためのマイクロホンと、を含むアプリケータと、
b)前記アプリケータの動作と制御するためのコントローラと、
を含む装置。
【請求項38】
a)前記柔らかい組織の突起を形成するための真空源への接続と、
b)前記受信器によって受信された超音波信号を処理するための信号処理および分析部への接続と、
を更に含む請求項37によるアプリケータ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534505(P2010−534505A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517538(P2010−517538)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000827
【国際公開番号】WO2009/013729
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(504359488)シネロン メディカル リミテッド (25)
【Fターム(参考)】