超音波診断装置、及びその制御方法
【課題】ECGトリガ信号直前の繰り返し走査に対して走査の途中で中断されることを防止し、取得データの利用効率を高めると共にECGトリガ信号直前の画像も生成することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る超音波診断装置は、超音波プローブと、心拍周期に対応するトリガ信号を外部から入力し、所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、トリガ信号毎に超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって繰り返し走査周期を制御する走査制御部と、分割領域毎に得られたデータを繰り返し走査の順序につなぎ合わせ診断領域全体の画像を生成する画像生成部と、を備え、走査制御部は、繰り返し走査周期の整数倍がトリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、パルス繰り返し周期を決定して制御する、ことを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る超音波診断装置は、超音波プローブと、心拍周期に対応するトリガ信号を外部から入力し、所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、トリガ信号毎に超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって繰り返し走査周期を制御する走査制御部と、分割領域毎に得られたデータを繰り返し走査の順序につなぎ合わせ診断領域全体の画像を生成する画像生成部と、を備え、走査制御部は、繰り返し走査周期の整数倍がトリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、パルス繰り返し周期を決定して制御する、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置、及びその制御方法に係り、特に、心電信号等から生成されるトリガ信号を用いて被検体内を超音波で3次元走査を行う超音波診断装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元画像を動画として表示することが可能な超音波診断装置の開発が急速に進められてきており、従来の2次元画像に比べると高分解能でかつ広範囲の診断画像を表示することが可能となってきている。
【0003】
しかしながら、超音波診断装置は生体内を伝播する超音波を利用して診断画像を生成するため、超音波パルスの送信後、生体内からの反射波が受信されるまでの時間は3次元超音波診断装置であっても2次元超音波診断装置と基本的には同じである。従って、生体内の3次元空間範囲を高い分解能で走査しようとすると、走査ビームのビームポジション数は多くなり、所定範囲の走査に要する時間は2次元超音波診断装置よりも3次元超音波診断装置の方が一般的には長くなる。つまり、同じ空間分解能を仮定すると、3次元超音波装置で得られる3次元画像のフレームレート(3次元画像の更新周波数)は2次元超音波診断装置で得られる2次元画像のフレームレートに比べると原理的には低くなる。
【0004】
この問題を解決するため従来から種々の手法が検討されていきている(特許文献1、特許文献2等)。基本的な考え方は、診断対象となる全範囲(以下、フルボリュームという)を複数の小領域(以下、サブボリュームという)に分割し、サブボリュームの3次元空間を高いフレームレートで走査した画像データをつなぎ合わせてフルボリュームの3次元画像を得るというものである。この方法では、サブボリュームの観測時刻はサブボリューム毎に異なるため、サブボリュームのつなぎ合わせに関しては空間的な連続性を確保することが重要となる。
【0005】
一方、診断部位によっては、呼吸や心臓の鼓動によってその診断対象部位は変動する。このため、例えば特許文献1等には、心臓の動きに同期してサブボリューム内の複数の画像データを取得する技術が開示されている。特許文献1等が開示する技術は、心臓の3次元画像を動画としてリアルタイムで生成する技術に関するものであり、概略次のような技術である。
【0006】
心臓の動きに同期した信号として、心電図の信号、即ちECG(ElectroCardioGram)信号を用いている。より具体的には、心臓の拡張末期に発生するR波信号をECGトリガ信号として用いている。
【0007】
観測したい心臓の3次元領域全体(フルボリューム)を4つのサブボリュームに分割し、サブボリューム毎に上記のECGトリガ信号に同期したタイミングで1心拍分の画像データを収集する。この1心拍分の画像データは複数のフレーム画像からなるものである。例えば、1心拍あたり(ECGトリガ信号の1周期あたり)同一のサブボリュームを20回繰り返し走査することにより、同一のサブボリュームで20枚のフレーム画像が収集される。この場合、心拍の周期を仮に1秒とすると、サブボリューム毎に得られる画像データのフレームレートは20fps(frames per second)となり、心臓の動きを動画として捉えるのにほぼ十分な値となる。
【0008】
一方、各サブボリュームで得られる画像データをつなぎ合わせてフルボリュームの画像データを合成する際には、サブボリュームで得られる複数のフレーム画像の中から同じ「時相」のフレーム画像を夫々のサブボリュームから抽出してつなぎ合わせてフルボリュームのフレーム画像を生成する。ここで、「時相」とは、ECGトリガ信号の発生時刻を基準とした遅延量のことである。通常心臓の収縮や拡張の動きはECGトリガ信号に同期して周期性をもった動きとなる。従って、同じ「時相」のフレーム画像を夫々のサブボリュームから抽出しこれらをつなぎ合わせればサブボリューム間の空間的連続性はほぼ確保される。実際には、ECGトリガ信号に近い方から繰り返し走査の順に「時相番号」を割り付け、同じ「時相番号」の走査から得られたフレーム画像をつなぎ合わせてフルボリュームの画像を合成する。例えば、フルボリュームを4つのサブボリュームA、B、C、及びDに分割し、各サブボリュームの繰り返し走査が20回行われる場合は、「時相番号0」から「時相番号19」までの20枚のフレーム画像がサブボリューム毎に得られる。そして、同じ「時相番号」のフレーム画像をサブボリュームA、B、C、及びDから抽出しつなぎ合わせることにより、その「時相番号」に対応するフルボリュームの画像が合成される。このつなぎ合わせは「時相番号」毎に行われ、「時相番号0」から「時相番号19」までのフルボリューム画像が合成される。この結果、つなぎ合わされたフルボリュームのフレーム画像の数もECGトリガ信号あたり例えば20枚となり、フルボリューム画像のフレームレートは、サブボリュームのフレームレートと同じ値となる。即ち、例えば20fpsのフレームレートを有するフルボリュームの動画を生成することができる。
【特許文献1】米国特許第6,544,175号明細書
【特許文献2】特開2007−20908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1等が開示する従来技術では、ECGトリガ信号毎に1つのサブボリューム内を複数回繰り返し走査している。この繰り返し走査では、通常送信パルス毎に超音波ビームの送信方向を変化させながらサブボリューム内を走査している。このため、一般に、各繰り返し走査に要する時間(以下、繰り返し走査周期という。この逆数が前述したサブボリュームのフレームレートに相当する)は送信パルスのパルス繰返し周期と送信超音波ビームのビームポジション数の積によって定まる。
【0010】
このうち、パルス繰返し周期は診断対象部位の最大診断距離(診断対象部位の深さ)によって制約される。パルス繰返し周期が短すぎると診断可能な部位の深さが小さくなる。逆にパルス繰り返し周期が長すぎると、サブボリューム当りの繰り返し走査周期が長くなるためフレームレートが低下し、動画としての時間分解能が粗くなってしまう。
【0011】
このため、通常は、最大診断距離を満足する範囲でなるべく高いフレームレートが得られるようなパルス繰り返し周期を予め固定値として設定しておき、設定したパルス繰り返し周期毎に送信ビームの位置を更新している。
【0012】
他方、サブボリューム内の送信ビームポジション数は、サブボリュームの広さ、即ちサブボリュームの走査範囲によって定まる。分割数が一定であるとするとサブボリュームの広さはフルボリュームの広さによって定まるため、送信ビームポジション数はフルボリュームの広さ、つまり診断対象部位の広さによってほぼ定まるということができる。
【0013】
このように診断対象部位の深さと広さとからパルス繰り返し周期と送信ビームポジション数とが夫々決定され、その結果上記の繰り返し走査周期が定まる。診断対象部位の深さと広さとが同一であれば繰り返し走査周期も一定の固定値とすることができるため、従来は予め設定された固定の繰り返し走査周期が用いられていた。
【0014】
ところで、前述したようにサブボリュームの繰り返し走査は、ECGトリガ信号によって開始され、次のECGトリガ信号が到来するまで同じサブボリュームを繰り返し走査する。次のECGトリガ信号が到来すると隣のサブボリュームに移動し、そのサブボリュームでの繰り返し走査が開始される。
【0015】
このため、ECGトリガ信号の間隔、即ち心拍周期が予め設定された固定の繰り返し走査周期の整数倍でない場合は、ECGトリガ信号到来直前の最後の繰り返し走査は途中で中断されることになる。この結果、最後の繰り返し走査での取得データは完全な画像として利用することができず、無駄なデータとして破棄せざるを得なかった。この場合、取得データの利用効率が低下するばかりでなく、ECGトリガ信号直前の状態の心臓画像が得られないことになり、画像診断を行う上でも改善が望まれるところである。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ECGトリガ信号直前の繰り返し走査に対して走査の途中で中断されることを防止し、取得データの利用効率を高めると共にECGトリガ信号直前の画像も生成することができる超音波診断装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る超音波診断装置は、請求項1に記載したように、超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集する超音波プローブと、心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御する走査制御部と、前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する画像生成部と、を備え、前記走査制御部は、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る超音波診断装置の制御方法は、請求項8に記載したように、(a)超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集し、(b)心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御し、(c)前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する、ステップを備え、ステップ(b)では、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る超音波診断装置、及びその制御方法によれば、ECGトリガ信号直前の繰り返し走査に対して走査の途中で中断されることを防止し、取得データの利用効率を高めると共にECGトリガ信号直前の画像も生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る超音波診断装置、及びその制御方法の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0021】
(1)全般及び構成
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1による超音波ビームの走査状況を模式的に示す図である。超音波診断装置1は、複数の超音波振動子11が2次元配列された超音波プローブ10によって細い超音波ビームを形成している。この超音波ビームを被検体の所望の診断領域にむけて放射し、診断領域の範囲を主走査方向及び副走査方向に電子的に走査している。診断領域の反射信号からは、主走査方向、副走査方向、及び距離方向の3次元情報が得られる。
【0022】
超音波振動子が1次元に配列されている従来の1次元超音波プローブの走査範囲が平面状の範囲となるのに対して、本実施形態のような2次元超音波プローブ10の走査範囲は3次元の立体範囲となる。また、細いビーム幅の超音波ビームを走査しているため、より広い範囲の診断領域から高い分解能の3次元情報を取得することが可能となる。取得された3次元情報から任意の方向から見た3次元画像や、任意の断面で切り取った断面画像を生成することができる。
【0023】
一方、超音波ビームを主走査方向と副走査方向に走査しているため、診断領域全体(フルボリューム)を走査するビームポジション数は平面状の走査範囲に対して非常に増加する。この結果、単純にフルボリュームの範囲を端から端まで順に走査すると、フルボリュームを1回走査する時間は増加する。このため、フルボリューム画像のフレームレートは低くなる。
【0024】
そこで、前述したように、本実施形態に係る超音波診断装置1では、フルボリュームを複数の(例えば4つの)サブボリュームに分割し、夫々のサブボリュームを高いフレームレート(例えば20fps)で走査し、夫々のサブボリュームから得られたフレーム画像を合わせてつなぎ合わせ、フルボリュームのフレーム画像を合成する方法を採用している。フルボリューム画像のフレームレートもサブボリュームのフレームレートと同じ高いフレームレート(例えば20fps)が実現できるため、心臓のような動きのある診断領域に対してもリアルタイムで3次元の動画を生成することが可能となる。
【0025】
図2は、超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。超音波診断装置1は、例えば、超音波プローブ10、送受信部20、信号処理部30、画像生成部40、表示部50、システム制御部60、走査制御部70、操作部80等を備えて構成されている。
【0026】
超音波プローブ10は、格子状に配列された複数の超音波振動子11を具備しており、送受信部20の送信部21から出力される送信パルス信号に基づいて超音波パルスを生成し、被検体に向けて送信する。また、被検体から反射されてきた超音波反射信号を電気信号に変換し、送受信部20の受信部22に出力する。さらに、走査制御部70から出力されるビーム走査制御信号に基づいて超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査する。
【0027】
送受信部20の送信部21では、走査制御部70で生成されるタイミング信号等に基づいて各超音波振動子11に供給する送信パルスを生成する。また、同じく走査制御部70で生成されたビーム走査制御信号に基づいて送信用の超音波ビームの走査方向を定めるために各送信パルスの遅延量等を設定する。
【0028】
送受信部20の受信部22では、各超音波振動子11から出力される被検体からの反射信号を増幅しアナログ信号からデジタル信号に変換する。また、走査制御部70で生成されたとビーム走査制御信号に基づき、受信用の超音波ビームの走査方向を決定するための遅延量を各超音波振動子11の反射信号に設定したのち加算し、加算された信号をビーム形成された反射信号として信号処理部30に出力する。
【0029】
信号処理部30では、受信部22から出力された反射信号に対してフィルタリング処理等の信号処理を施し、画像生成部40に出力する。
【0030】
画像生成部40では、ビーム走査位置に対応させて反射信号から3次元画像データを生成する。特に本実施形態に係る超音波診断装置1では、サブボリューム毎に画像データを生成し、各サブボリューム画像からフルボリュームの3次元画像データを合成する処理を行っている。この合成処理は走査制御部70の動作と連携した処理であり、細部については後述する。
【0031】
画像生成部40では、合成されたフルボリュームの3次元画像データに対してレンダリング処理等を行い、任意の角度から眺めた3次元画像や、任意の面で切断した断面画像等を生成し表示部70に出力する。3次元画像データは、例えば20fpsのフレームタイム毎に更新される動画を提供することが可能である。診断中に動画をリアルタイムで表示部70に出力することが可能であるが、画像データを一旦適宜のメモリに保存し、診断後にオフラインで動画を出力したり、動画の一部を切り出して静止画を出力したりすることも可能である。
【0032】
表示部70は、例えば液晶ディスプレイ装置等で構成される表示デバイスであり、画像生成部40から出力される画像や各種の診断用パラメータを表示する。
【0033】
操作部80は、所謂マンマシンインターフェースであり、超音波診断装置1に対して各種の診断モードや診断モードに付随する各種のパラメータを設定することができる。本実施形態に係る超音波診断装置1は、ECGトリガ信号に基づいて鼓動する心臓の動きを3次元の動画画像として表示することができる診断モード(以下、トリガード3次元診断モードという)を特徴とするものであるが、この他従来からある2次元診断モードでも動作可能である。これらの診断モードの設定や切り替えは操作部80を介して行われる。
【0034】
システム制御部60では、操作部80で設定された診断モードや各種パラメータに基づいて、超音波診断装置1の全体の制御を行っている。
【0035】
走査制御部70では、診断モードに応じた超音波ビームのビームマネージメントと送受信のタイムマネージメントを行っている。特に、トリガード3次元診断モードでは、心電計100から出力されるECG信号(R波)からECGトリガ信号(トリガ信号)を生成し、このトリガ信号に同期させてサブボリューム毎のビーム走査位置(主走査方向及び副走査方向)やサブボリューム内の繰り返し走査に関する諸元を決定し、送受信部20や画像生成部40に出力している。また、超音波ビームの送信パルス繰り返し周波数(prf:pulse repetition frequency)等の送信パルス諸元を決定し、送信パルス諸元に基づく各種タイミング信号も走査制御部70で生成している。
【0036】
(2)トリガード3次元診断モードの動作
上記のように構成された超音波診断装置1の動作、特にトリガード3次元診断モードの動作について説明する。
【0037】
図3は、トリガード3次元診断モードの動作原理を説明する図であり、例えば特許文献1等に開示されている技術である。トリガード3次元診断モードは、主に心臓を診断対象とするものであり、鼓動によって変化する心臓の動きを3次元の動画画像として表示する診断モードである。トリガード3次元診断モードでは、患者の心臓の鼓動に応じて変化する心電図信号(ECG信号)を心電計100から入力し、ECGトリガ信号と呼ばれるパルス信号を生成する。ECG信号としては、心臓の拡張末期近傍で出力されるパルス状のR波の信号(図3(a)参照)が多く用いられている。このECG信号を走査制御部70に入力し、適宜の閾値を適用してECGトリガ信号を生成する(図3(b)参照)。ECGトリガ信号は鼓動に同期した信号であり、心拍が1秒間に60回の場合ECGトリガ信号の周期は1秒となる。
【0038】
トリガード3次元診断モードでは、診断領域の全体(フルボリューム)を複数のサブボリューム(分割領域)に分割し、各サブボリュームをECGトリガ信号毎に走査している。例えば、図3(f)に例示したように、フルボリュームを4つのサブボリュームA、B、C、及びDに分割する。そして、ECGトリガ信号のトリガ0、1、2、3の入力に応じてサブボリュームA、B、C、及びDの順に走査していく。
【0039】
このとき、各サブボリュームに対して1回だけ走査するのではなく、複数回(N回)繰り返して走査を行う。図3は、4回(N=4)の繰り返し走査を行っている例を示している。各サブボリュームに対する1回の走査時間Tは後述するように動画のフレーム時間(フレームレートの逆数)に対応することになるため、滑らかな動きの動画を得るためには例えば50ms(=1/20fps)前後、或いはそれ以下が好ましい。ECGトリガ信号の周期を1秒、また1回の走査時間を上記の50msと仮定すると、サブボリューム毎の繰り返し走査数Nは20となる。図3は、説明の便宜上、サブボリューム毎の繰り返し走査数Nを4とした場合の例を示している。
【0040】
同じサブボリュームを繰り返し走査している場合であっても、心臓は周期的に鼓動しているため、ECGトリガからの遅延時間、即ち時相が異なれば各繰り返し走査から生成される画像データは異なったものとなる。
【0041】
図3(c)に示す時相番号は、時相を1回の走査時間の単位で区分し、ECGトリガ信号に近い方から「0」、「1」、「2」、「3」と番号付けしたものである。図3(d)は、この時相番号「0」、「1」、「2」、及び「3」と、サブボリュームA、B、C、及びDとを「A0」〜「A3」、「B0」〜「B3」、「C0」〜「C3」、「D0」〜「D3」のように関連付けて超音波ビームの走査順序を時系列に並べたものである。
【0042】
信号処理部30からは、信号処理された被検体からの反射信号がこの走査順序に応じてリアルタイムで画像生成部40に出力される。
【0043】
図3(e)は、画像生成部40で行われるフルボリュームの合成方法を示す図である。画像生成部40では、時相番号で識別された各サブボリュームのデータから同じ時相番号のデータを抽出し、サブボリュームA、B、C、及びDでつなぎ合わせて合成する。同じ時相番号のサブボリュームデータであっても、実際にはそれらが取得された時刻はECGトリガ信号の周期分ずつ夫々異なっている。しかしながら、心臓の形状の変化はECGトリガ信号の周期と同じ周期性を有していると考えられるため、同じ時相番号のサブボリュームをつなぎ合わせて得られるフルボリューム画像の空間的な連続性はほぼ確保されることになる。
【0044】
時相番号0に対応するサブボリューム「D0」のデータが取得された時刻には、既にサブボリューム「A0」、「B0」、「C0」のデータは取得済みであり、この段階で時相番号0に対応するフルボリュームの画像が生成される。
【0045】
次に、時相番号1に対応するサブボリューム「D1」のデータが取得された時刻には、既にサブボリューム「A1」、「B1」、「C1」のデータは取得済みであり、時相番号1に対応するフルボリュームの画像が生成される。以下同様にして、時相番号2及び3のフルボリュームの画像がされる。
【0046】
サブボリュームDの走査「D3」が終了すると、サブボリュームAに戻って走査が行われる。このとき、最初に得られる走査データ「A0」は、1つ前に生成されていた時相番号0のフルボリュームデータの「A0」と置換され、新たな時相番号0のフルボリューム画像が更新されることになる。
【0047】
このように、フルボリューム画像は、サブボリューム毎の1回の走査時間(以下、繰り返し走査周期TSVという)の単位で生成され、或いは更新されることになる。
【0048】
このことは、フルボリューム全体の走査時間が実際には長くても、あたかもサブボリューム1回の走査時間でフルボリューム全体を走査したかのごとく見せることができることを意味している。つまり、サブボリューム画像のフレームレートとフルボリューム画像のフレームレートとを擬似的に同一にすることができることを意味している。
【0049】
例えば、通常の方法ではフルボリューム画像のフレームレートが走査時間の制約から5fpsしか達成できないとする。この場合であっても、フルボリュームを4つのサブボリュームに分割することにより、各サブボリュームの走査時間はフルボリュームの1/4となり、サブボリューム画像のフレームレートとしては4倍の20fpsが得られる。トリガード3次元診断モードでは、サブボリューム画像のフレームレートがそのままフルボリューム画像のフレームレートとなるため、通常の方法に比べると4倍も高いフレームレートが得られることになる。
【0050】
このように、トリガード3次元診断モードは広い3次元診断領域に対しても高い分解能の画像が高いフレームレートで得られるため、心臓のような動きのある診断対象に対してもリアルタイムの動画を生成することが可能である。
【0051】
しかしながら、前述したように、従来のトリガード3次元診断モードでは、予め設定された固定の繰り返し走査周期が用いられていた。このため、ECGトリガ信号の間隔、即ち心拍周期TECGが予め設定された固定の繰り返し走査周期の整数倍でない場合は、ECGトリガ信号到来直前の最後の繰り返し走査は途中で中断されることになる。
【0052】
図4はこの問題点を具体的に説明する図である。図4(a)は、ECGトリガ信号を示しており、ECGトリガ信号の周期が心拍周期TECGである。図4(b)は、サブボリュームAを繰り返し走査する状況を示す図である。この例では、サブボリュームAを固定的な周期TSV0(以下、この周期を繰り返し走査周期(初期値)TSV0という)で、20回(時相番号0から時相番号19まで)繰り返し走査を行おうとしている図である。
【0053】
しかしながら、心拍周期TECGは繰り返し走査周期(初期値)TSV0の整数倍になるとは限らない。このため、最後の繰り返し走査(時相番号19)の走査が終了する前に、余り時間TRを残して次のECGトリガ信号(トリガ1)が到来する。ECGトリガ信号(トリガ1)の到来によってサブボリュームAの走査は打ち切られ、次のサブボリュームBの走査に移行する(図4(c)参照)。この結果、時相番号19のデータは不完全なものとなり、フルボリュームの画像合成に使用することができなくなる。
【0054】
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置1では、繰り返し走査の周期を固定的なものではなく変更可能な繰り返し走査周期TSVとしている。そして繰り返し走査周期TSVの整数倍が心拍周期TECGとなるように繰り返し走査周期TSVを求め、繰り返し走査周期(初期値)TSV0に換えて求めた繰り返し走査周期TSVによってトリガード3次元診断モードを行うように構成している。
【0055】
図5は、この基本的な考え方を説明する図であり、図5(b)が変更前の繰り返し走査周期(初期値)TSV0に基づく走査であり、図5(c)が変更後の繰り返し走査周期TSVに基づく走査を表している。
【0056】
変更後の走査では、繰り返し走査周期TSVの整数倍が心拍周期TECGとなるため、時相番号0から最後の時相番号18までの繰り返し走査が欠けることなく行われている。このため、トリガ1の直前の期間の心臓の動きに関するデータも取りこぼすことなく取得することができる。以下、繰り返し走査周期の変更方法について具体的に説明する。
【0057】
(3)繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)
図6は、繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)の処理例を示すフローチャートであり、図8はその説明図である。これらの処理は主に走査制御部70にて行われる。第1の方法では、繰り返し走査周期TSVの内部を構成する送信パルスのパルス繰り返し周期TPを総て均一に変更することによって繰り返し走査周期TSVの変更を行っている。ここで、パルス繰り返し周期TPとは、パルス繰り返し周波数PRF(Pulse Repetition Frequency)の逆数のことである。
【0058】
本実施形態に係る超音波診断装置1では、トリガード3次元診断モードに入る前に予備走査モードと呼ばれる面走査(2次元走査)を行っている(ステップST1)。
【0059】
図7(a)は、予備走査モードの一例を説明する図である。予備走査モードでは、互いに直行する2つの面を超音波ビームで交互に走査し、夫々の走査面から得られる2枚画像データを表示部50に並べて表示させる。予備走査モードの主な目的は超音波プローブ10の位置決めであり、これから行おうとしているトリガード3次元診断モードの診断対象部位に対して超音波プローブ10の位置が適切であるかどうかを予備走査モードで得られる2枚の画像から判断しようというものである。予備走査モードは2面の走査であるためトリガード3次元診断モード(立体走査)に比べると全範囲の走査時間は非常に短く、高いフレームレートが得られるため、超音波プローブ10を移動させながら診断対象部位を探すのに適している。
【0060】
予備走査モードでは、ECGトリガ信号も合わせて入力され(図6のステップST5)、ECGトリガ信号の周期(心拍周期TECG’)が検出される(ステップST6)。求めた心拍周期TECG’に対して係数K(K≦1)を乗じ、繰り返し走査周期TSV等のパラメータ変更のためのECGトリガ周期(参照値)TECG(トリガ信号の周期に基づく参照値)を求める(ステップST7)。係数Kは心拍数の変動を見込んだマージン係数として例えば0.9程度の値がとられることが多いが、本実施形態の説明上はK=1としても支障ないため、以下の説明ではK=1として、即ち心拍周期TECG’とECGトリガ周期(参照値)TECGとを区別せずに単に心拍周期TECGとして表現するものとする。
【0061】
他方、予備走査モード中にトリガード3次元診断モードへのモード遷移指示が操作部80から入力されると(ステップST2)、適宜のメモリから初期値の読み込みが行われる(ステップST3)。読み込まれる初期値は、例えば、パルス繰り返し周期(初期値)TP0(或いは初期PRF0)や、送信ビームポジション数NB等である。
【0062】
パルス繰り返し周期(初期値)T0は、診断対象部位の深さから予め設定されている初期値であり、例えば区切りの良い数値として、TP0=200μs(PRF0=5000Hz)として設定されている。
【0063】
一方、送信ビームポジション数NBは診断対象部位の広さから予め設定されている値であり、例えば、NB=261(主走査方向(AZ方向)29本、副走査方向(EL方向)9本)として予め設定されている。
【0064】
次に、繰り返し走査周期初期値TSV0、及びこの逆数の繰り返し走査レートを算出する(ステップST4)。繰り返し走査レートは実質的に動画のフレームレートとなる値であり、以下繰り返し走査周期初期値TSVの逆数をフレームレートFRSVと呼び、その初期値をフレームレート(初期値)FRSV0と呼ぶものとする。
【0065】
繰り返し走査周期の初期値TSV0は、算出式、TSV0=TP0*NB、から求めることができる(図8(b)参照)。前述の数値例を適用すると、繰り返し走査周期の初期値TSV0は、TSV0=TP0*NB=200μs*261=52.2msとなる。また、フレームレート(初期値)FRSV0は、FRSV0=1/TSV0=1/52.2ms=19.2fps(frames per second)となる。
【0066】
次に、予備走査モード中の心拍から算出された心拍周期TECGに対して、データが欠如することなく完全な形で取得しうる繰り返し走査数Nを算出する(ステップST8)。この算出式は、例えば、N=int(TECG/TSV0)、と表現することができる。ここで、int()は、切捨てによる整数化を行う演算子を表している。
【0067】
なお、図5(b)、(c)、或いは図8(a)、(c)に示した例では、上記の整数化演算により、繰り返し走査数Nは19(時相番号0から18に相当)となっている。
【0068】
さらに、次のステップST9にて、心拍周期TECGの全体に対して抜けや余りなく均等に配分される繰り返し走査周期TSVを求める。繰り返し走査周期TSVは、例えば、TSV=TECG/N、の算出式で求めることができる。ここで求められた繰り返し走査周期TSVが図5(c)、及び図8(c)における変更後の繰り返し走査周期TSVに該当する。
【0069】
ステップST10では、繰り返し走査周期TSVを送信ビームポジション数NBで除し、繰り返し走査周期TSV内に均等に配分される送信パルス繰返し周期TPを算出する。送信パルス繰返し周期TPは、TP=TSV/NB、で求めることができる(図8(d)参照)。
【0070】
最後に、ステップST8〜ステップST10で算出、決定された新たなパラメータ、即ち、繰り返し走査数N、繰り返し走査周期TSV、送信パルス繰返し周期TP等を用いてトリガード3次元診断モードによる走査を開始する(ステップST11)。
【0071】
ここで、予備走査モードで測定された心拍数が74bps(beats per second)であったとすると、心拍周期TECGはその逆数の約810msとなる(ステップST6、7)。一方、繰り返し走査周期の初期値TSV0は、前述したように、TSV0=TP0*NB=200μms*261=52.2msである。
【0072】
これらの数値をステップST8の整数化処理に適用すると、繰り返し走査数Nは、N=int(TECG/TSV0)=int(810ms/52.2ms)=15、となる。
【0073】
このとき、繰り返し走査周期(変更値)TSVは約53.8msとなり、心拍周期810msに対する余り時間は、約3ms(810ms−15*53.8ms=3ms)となる。なお、このときのフレームレートFRSVは約18.5fpsとなり、PRFは4844Hz(パルス繰り返し周期TPは約206μs)となる。
【0074】
一方、繰り返し走査周期の変更を行わず、初期値のパラメータをそのまま使用した場合には、繰り返し走査周期(変更値)TSV0は約52.2msであり、心拍周期810msに対する余り時間は、約27ms(810ms−15*52.2ms=27ms)である。なお、このときのフレームレートFRSVは約19.2fpsであり、PRFは5000Hz(パルス繰り返し周期TP0は200μs)である。
【0075】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置1では、繰り返し走査周期TSVを変更することにより、ECGトリガ信号直前のデータ取得不能期間(余り時間)を、例えば約27msから約3msのように大幅に低減することが可能である。
【0076】
ところで、ステップST8における整数化処理では、単に整数化するだけを考えれば切り上げによる整数化も可能である。しかしながら、切り上げ処理を行うと結果的に変更後の繰り返し走査周期は初期値に比べると短くなり、その結果パルス繰返し周期の変更値も初期値に比べると短くなる。パルス繰返し周期を短くすることは、診断対象部位の深さが計画値(初期値)よりも浅くなることを意味している。
【0077】
そこで、ステップST8では、切捨てによる整数化を行い、繰り返し走査周期を初期値に対して長くなるよう変更し、これに合わせてパルス繰返し周期も初期値に比べて長くなるように変更している。この結果、変更後のパルス繰返し周期では診断対象部位の深さは初期値に比べると深くなり、計画した深さのデータは確実に取得することができる。
【0078】
図9はこの様子を模式的に示した図である。図9(a)は変更前の状態であり、繰り返し走査周期TSV0は約52.2msである。この時のパルス繰り返し周期TP0は前述したように200μsである。これに対して、図9(b)は変更後の状態であり、繰り返し走査周期TSVは約53.8msであり、この時のパルス繰り返し周期TPは約206μsである。パルス繰り返し周期TPが初期値の200μsから約206μsに延びたことにより、診断可能な深さは、図9(b)のハッチング領域だけ深くなっている。
【0079】
図9(b)は、心拍数が74bpsのときの変更後の繰り返し走査周期TSVが約53.8msとなることを例示する図であるが、同様にして他の心拍数に対して繰り返し走査周期TSVを求めた結果の一例が図10である。
【0080】
図10(a)は、心拍数72bpsに対する変更後の繰り返し走査周期TSVが約55.5msになることを示している。ちなみに、このときのPRFは約4699Hzであり、パルス繰り返し周期TPは約213μsである。
【0081】
図10(b)は、心拍数が76bpsに対する変更後の繰り返し走査周期TSVが約52.6msになることを示している。このときのPRFは約4960Hzであり、パルス繰り返し周期TPは約202μsである。
【0082】
いずれの心拍数であっても、パルス繰り返し周期TPは初期値の200μsに対して長くなっている。
【0083】
(4)繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)
図11は、繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)の処理例を示すフローチャートであり、図12はその説明図である。第1の方法のフローチャート(図6)との相違点は最後の処理のステップST100、とステップST111であり、それ以外の処理は第1の方法と同じである。
【0084】
第1の方法では、パルス繰り返し周期TPを総て均一に変更することによって繰り返し走査周期TSVの変更を行っているが、第2の方法では、一部の送信パルスのみそのパルス繰り返し周期TPを変更し、残りの送信パルスのパルス繰り返し周期は初期値のままとして繰り返し走査周期TSVの変更を行っている。
【0085】
第2の方法において最も単純な方法は、繰り返し走査周期TSV内の送信パルスのうち、最後の送信パルスのパルス周期のみを調整用送信パルス周期TDとし、それ以外の送信パルスのパルス繰返し周期には初期値T0を用いる方法である。調整用送信パルス周期TDを求める処理は図11のステップ100で行っている。
【0086】
図12(c)、(d)はこの方法の説明図である。ステップST9で新たに算出された繰り返し走査周期TSVから、調整用送信パルス周期TD(=TSV−TSV0=TSV−TP0*NB)を求め、この調整用パルス周期TDを最後の送信パルスのパルス周期としている。
【0087】
第2の方法によっても、繰り返し走査周期TSVの整数倍がほぼ心拍周期TECGとなる、という関係は維持されており、ECGトリガ周期の直前の無駄な期間を低減することが可能となる。
【0088】
(5)繰り返し走査周期の変更方法(第3の方法)
図13は、繰り返し走査周期の変更方法(第3の方法)の処理例を示すフローチャートである。前述した第1、第2の方法では、モード遷移が指示されると、算出した診断用パラメータ(繰り返し走査周期TSV、パルス繰り返し周期TP等)に基づいて自動的にトリガード3次元診断モードを開始している。
【0089】
これに対して、第3の方法では、算出した診断用パラメータを一度表示部50に表示させ(ステップST201)、ユーザが新たな診断用パラメータの内容を確認した後、操作部80から入力されるモード遷移指示が入力されたか否かを判断する処理(ステップST202)を設けている。
【0090】
また、フレームレートFRSVは診断上重要なパラメータの1つであるため、フレームレートFRSVを算出する処理(ステップST200)をフローチャート中に付加している。
【0091】
第3の方法では、算出された診断用パラメータをユーザが確認した後にトリガード3次元診断モードへ移行することができるため、より確実な診断が可能となる。
【0092】
以上説明してきたように、本実施形態に係る超音波診断装置1、及びその制御方法によれば、ECGトリガ信号直前の繰り返し走査に対して走査の途中で中断されることを防止し、取得データの利用効率を高めると共にECGトリガ信号直前の画像も生成することができる。
【0093】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】3次元の超音波診断装置のビーム走査を模式的に示す図。
【図2】本発明に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図。
【図3】トリガード3次元診断モードの一般的動作概念説明図。
【図4】従来のトリガード3次元診断モードの問題点を説明する図。
【図5】本発明に係る超音波診断装置におけるトリガード3次元診断モードの動作概念を説明する図。
【図6】繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)の処理例を示すフローチャート。
【図7】予備走査モードの走査概念とトリガード3次元診断モードへのモード遷移の概念を説明する図。
【図8】繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)の動作説明図。
【図9】繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)におけるパルス繰り返し周期の変更概念を示す図。
【図10】心拍数と変更後の繰り返し走査周期との関係を数値例で説明する図。
【図11】繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)の処理例を示すフローチャート。
【図12】繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)の動作説明図。
【図13】繰り返し走査周期の変更方法(第3の方法)の処理例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0095】
1 超音波診断装置
10 超音波プローブ
11 超音波振動子
20 送受信部
30 信号処理部
40 画像生成部
50 表示部
60 システム制御部
70 走査制御部
80 操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置、及びその制御方法に係り、特に、心電信号等から生成されるトリガ信号を用いて被検体内を超音波で3次元走査を行う超音波診断装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元画像を動画として表示することが可能な超音波診断装置の開発が急速に進められてきており、従来の2次元画像に比べると高分解能でかつ広範囲の診断画像を表示することが可能となってきている。
【0003】
しかしながら、超音波診断装置は生体内を伝播する超音波を利用して診断画像を生成するため、超音波パルスの送信後、生体内からの反射波が受信されるまでの時間は3次元超音波診断装置であっても2次元超音波診断装置と基本的には同じである。従って、生体内の3次元空間範囲を高い分解能で走査しようとすると、走査ビームのビームポジション数は多くなり、所定範囲の走査に要する時間は2次元超音波診断装置よりも3次元超音波診断装置の方が一般的には長くなる。つまり、同じ空間分解能を仮定すると、3次元超音波装置で得られる3次元画像のフレームレート(3次元画像の更新周波数)は2次元超音波診断装置で得られる2次元画像のフレームレートに比べると原理的には低くなる。
【0004】
この問題を解決するため従来から種々の手法が検討されていきている(特許文献1、特許文献2等)。基本的な考え方は、診断対象となる全範囲(以下、フルボリュームという)を複数の小領域(以下、サブボリュームという)に分割し、サブボリュームの3次元空間を高いフレームレートで走査した画像データをつなぎ合わせてフルボリュームの3次元画像を得るというものである。この方法では、サブボリュームの観測時刻はサブボリューム毎に異なるため、サブボリュームのつなぎ合わせに関しては空間的な連続性を確保することが重要となる。
【0005】
一方、診断部位によっては、呼吸や心臓の鼓動によってその診断対象部位は変動する。このため、例えば特許文献1等には、心臓の動きに同期してサブボリューム内の複数の画像データを取得する技術が開示されている。特許文献1等が開示する技術は、心臓の3次元画像を動画としてリアルタイムで生成する技術に関するものであり、概略次のような技術である。
【0006】
心臓の動きに同期した信号として、心電図の信号、即ちECG(ElectroCardioGram)信号を用いている。より具体的には、心臓の拡張末期に発生するR波信号をECGトリガ信号として用いている。
【0007】
観測したい心臓の3次元領域全体(フルボリューム)を4つのサブボリュームに分割し、サブボリューム毎に上記のECGトリガ信号に同期したタイミングで1心拍分の画像データを収集する。この1心拍分の画像データは複数のフレーム画像からなるものである。例えば、1心拍あたり(ECGトリガ信号の1周期あたり)同一のサブボリュームを20回繰り返し走査することにより、同一のサブボリュームで20枚のフレーム画像が収集される。この場合、心拍の周期を仮に1秒とすると、サブボリューム毎に得られる画像データのフレームレートは20fps(frames per second)となり、心臓の動きを動画として捉えるのにほぼ十分な値となる。
【0008】
一方、各サブボリュームで得られる画像データをつなぎ合わせてフルボリュームの画像データを合成する際には、サブボリュームで得られる複数のフレーム画像の中から同じ「時相」のフレーム画像を夫々のサブボリュームから抽出してつなぎ合わせてフルボリュームのフレーム画像を生成する。ここで、「時相」とは、ECGトリガ信号の発生時刻を基準とした遅延量のことである。通常心臓の収縮や拡張の動きはECGトリガ信号に同期して周期性をもった動きとなる。従って、同じ「時相」のフレーム画像を夫々のサブボリュームから抽出しこれらをつなぎ合わせればサブボリューム間の空間的連続性はほぼ確保される。実際には、ECGトリガ信号に近い方から繰り返し走査の順に「時相番号」を割り付け、同じ「時相番号」の走査から得られたフレーム画像をつなぎ合わせてフルボリュームの画像を合成する。例えば、フルボリュームを4つのサブボリュームA、B、C、及びDに分割し、各サブボリュームの繰り返し走査が20回行われる場合は、「時相番号0」から「時相番号19」までの20枚のフレーム画像がサブボリューム毎に得られる。そして、同じ「時相番号」のフレーム画像をサブボリュームA、B、C、及びDから抽出しつなぎ合わせることにより、その「時相番号」に対応するフルボリュームの画像が合成される。このつなぎ合わせは「時相番号」毎に行われ、「時相番号0」から「時相番号19」までのフルボリューム画像が合成される。この結果、つなぎ合わされたフルボリュームのフレーム画像の数もECGトリガ信号あたり例えば20枚となり、フルボリューム画像のフレームレートは、サブボリュームのフレームレートと同じ値となる。即ち、例えば20fpsのフレームレートを有するフルボリュームの動画を生成することができる。
【特許文献1】米国特許第6,544,175号明細書
【特許文献2】特開2007−20908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1等が開示する従来技術では、ECGトリガ信号毎に1つのサブボリューム内を複数回繰り返し走査している。この繰り返し走査では、通常送信パルス毎に超音波ビームの送信方向を変化させながらサブボリューム内を走査している。このため、一般に、各繰り返し走査に要する時間(以下、繰り返し走査周期という。この逆数が前述したサブボリュームのフレームレートに相当する)は送信パルスのパルス繰返し周期と送信超音波ビームのビームポジション数の積によって定まる。
【0010】
このうち、パルス繰返し周期は診断対象部位の最大診断距離(診断対象部位の深さ)によって制約される。パルス繰返し周期が短すぎると診断可能な部位の深さが小さくなる。逆にパルス繰り返し周期が長すぎると、サブボリューム当りの繰り返し走査周期が長くなるためフレームレートが低下し、動画としての時間分解能が粗くなってしまう。
【0011】
このため、通常は、最大診断距離を満足する範囲でなるべく高いフレームレートが得られるようなパルス繰り返し周期を予め固定値として設定しておき、設定したパルス繰り返し周期毎に送信ビームの位置を更新している。
【0012】
他方、サブボリューム内の送信ビームポジション数は、サブボリュームの広さ、即ちサブボリュームの走査範囲によって定まる。分割数が一定であるとするとサブボリュームの広さはフルボリュームの広さによって定まるため、送信ビームポジション数はフルボリュームの広さ、つまり診断対象部位の広さによってほぼ定まるということができる。
【0013】
このように診断対象部位の深さと広さとからパルス繰り返し周期と送信ビームポジション数とが夫々決定され、その結果上記の繰り返し走査周期が定まる。診断対象部位の深さと広さとが同一であれば繰り返し走査周期も一定の固定値とすることができるため、従来は予め設定された固定の繰り返し走査周期が用いられていた。
【0014】
ところで、前述したようにサブボリュームの繰り返し走査は、ECGトリガ信号によって開始され、次のECGトリガ信号が到来するまで同じサブボリュームを繰り返し走査する。次のECGトリガ信号が到来すると隣のサブボリュームに移動し、そのサブボリュームでの繰り返し走査が開始される。
【0015】
このため、ECGトリガ信号の間隔、即ち心拍周期が予め設定された固定の繰り返し走査周期の整数倍でない場合は、ECGトリガ信号到来直前の最後の繰り返し走査は途中で中断されることになる。この結果、最後の繰り返し走査での取得データは完全な画像として利用することができず、無駄なデータとして破棄せざるを得なかった。この場合、取得データの利用効率が低下するばかりでなく、ECGトリガ信号直前の状態の心臓画像が得られないことになり、画像診断を行う上でも改善が望まれるところである。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ECGトリガ信号直前の繰り返し走査に対して走査の途中で中断されることを防止し、取得データの利用効率を高めると共にECGトリガ信号直前の画像も生成することができる超音波診断装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る超音波診断装置は、請求項1に記載したように、超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集する超音波プローブと、心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御する走査制御部と、前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する画像生成部と、を備え、前記走査制御部は、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る超音波診断装置の制御方法は、請求項8に記載したように、(a)超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集し、(b)心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御し、(c)前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する、ステップを備え、ステップ(b)では、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る超音波診断装置、及びその制御方法によれば、ECGトリガ信号直前の繰り返し走査に対して走査の途中で中断されることを防止し、取得データの利用効率を高めると共にECGトリガ信号直前の画像も生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る超音波診断装置、及びその制御方法の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0021】
(1)全般及び構成
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1による超音波ビームの走査状況を模式的に示す図である。超音波診断装置1は、複数の超音波振動子11が2次元配列された超音波プローブ10によって細い超音波ビームを形成している。この超音波ビームを被検体の所望の診断領域にむけて放射し、診断領域の範囲を主走査方向及び副走査方向に電子的に走査している。診断領域の反射信号からは、主走査方向、副走査方向、及び距離方向の3次元情報が得られる。
【0022】
超音波振動子が1次元に配列されている従来の1次元超音波プローブの走査範囲が平面状の範囲となるのに対して、本実施形態のような2次元超音波プローブ10の走査範囲は3次元の立体範囲となる。また、細いビーム幅の超音波ビームを走査しているため、より広い範囲の診断領域から高い分解能の3次元情報を取得することが可能となる。取得された3次元情報から任意の方向から見た3次元画像や、任意の断面で切り取った断面画像を生成することができる。
【0023】
一方、超音波ビームを主走査方向と副走査方向に走査しているため、診断領域全体(フルボリューム)を走査するビームポジション数は平面状の走査範囲に対して非常に増加する。この結果、単純にフルボリュームの範囲を端から端まで順に走査すると、フルボリュームを1回走査する時間は増加する。このため、フルボリューム画像のフレームレートは低くなる。
【0024】
そこで、前述したように、本実施形態に係る超音波診断装置1では、フルボリュームを複数の(例えば4つの)サブボリュームに分割し、夫々のサブボリュームを高いフレームレート(例えば20fps)で走査し、夫々のサブボリュームから得られたフレーム画像を合わせてつなぎ合わせ、フルボリュームのフレーム画像を合成する方法を採用している。フルボリューム画像のフレームレートもサブボリュームのフレームレートと同じ高いフレームレート(例えば20fps)が実現できるため、心臓のような動きのある診断領域に対してもリアルタイムで3次元の動画を生成することが可能となる。
【0025】
図2は、超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。超音波診断装置1は、例えば、超音波プローブ10、送受信部20、信号処理部30、画像生成部40、表示部50、システム制御部60、走査制御部70、操作部80等を備えて構成されている。
【0026】
超音波プローブ10は、格子状に配列された複数の超音波振動子11を具備しており、送受信部20の送信部21から出力される送信パルス信号に基づいて超音波パルスを生成し、被検体に向けて送信する。また、被検体から反射されてきた超音波反射信号を電気信号に変換し、送受信部20の受信部22に出力する。さらに、走査制御部70から出力されるビーム走査制御信号に基づいて超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査する。
【0027】
送受信部20の送信部21では、走査制御部70で生成されるタイミング信号等に基づいて各超音波振動子11に供給する送信パルスを生成する。また、同じく走査制御部70で生成されたビーム走査制御信号に基づいて送信用の超音波ビームの走査方向を定めるために各送信パルスの遅延量等を設定する。
【0028】
送受信部20の受信部22では、各超音波振動子11から出力される被検体からの反射信号を増幅しアナログ信号からデジタル信号に変換する。また、走査制御部70で生成されたとビーム走査制御信号に基づき、受信用の超音波ビームの走査方向を決定するための遅延量を各超音波振動子11の反射信号に設定したのち加算し、加算された信号をビーム形成された反射信号として信号処理部30に出力する。
【0029】
信号処理部30では、受信部22から出力された反射信号に対してフィルタリング処理等の信号処理を施し、画像生成部40に出力する。
【0030】
画像生成部40では、ビーム走査位置に対応させて反射信号から3次元画像データを生成する。特に本実施形態に係る超音波診断装置1では、サブボリューム毎に画像データを生成し、各サブボリューム画像からフルボリュームの3次元画像データを合成する処理を行っている。この合成処理は走査制御部70の動作と連携した処理であり、細部については後述する。
【0031】
画像生成部40では、合成されたフルボリュームの3次元画像データに対してレンダリング処理等を行い、任意の角度から眺めた3次元画像や、任意の面で切断した断面画像等を生成し表示部70に出力する。3次元画像データは、例えば20fpsのフレームタイム毎に更新される動画を提供することが可能である。診断中に動画をリアルタイムで表示部70に出力することが可能であるが、画像データを一旦適宜のメモリに保存し、診断後にオフラインで動画を出力したり、動画の一部を切り出して静止画を出力したりすることも可能である。
【0032】
表示部70は、例えば液晶ディスプレイ装置等で構成される表示デバイスであり、画像生成部40から出力される画像や各種の診断用パラメータを表示する。
【0033】
操作部80は、所謂マンマシンインターフェースであり、超音波診断装置1に対して各種の診断モードや診断モードに付随する各種のパラメータを設定することができる。本実施形態に係る超音波診断装置1は、ECGトリガ信号に基づいて鼓動する心臓の動きを3次元の動画画像として表示することができる診断モード(以下、トリガード3次元診断モードという)を特徴とするものであるが、この他従来からある2次元診断モードでも動作可能である。これらの診断モードの設定や切り替えは操作部80を介して行われる。
【0034】
システム制御部60では、操作部80で設定された診断モードや各種パラメータに基づいて、超音波診断装置1の全体の制御を行っている。
【0035】
走査制御部70では、診断モードに応じた超音波ビームのビームマネージメントと送受信のタイムマネージメントを行っている。特に、トリガード3次元診断モードでは、心電計100から出力されるECG信号(R波)からECGトリガ信号(トリガ信号)を生成し、このトリガ信号に同期させてサブボリューム毎のビーム走査位置(主走査方向及び副走査方向)やサブボリューム内の繰り返し走査に関する諸元を決定し、送受信部20や画像生成部40に出力している。また、超音波ビームの送信パルス繰り返し周波数(prf:pulse repetition frequency)等の送信パルス諸元を決定し、送信パルス諸元に基づく各種タイミング信号も走査制御部70で生成している。
【0036】
(2)トリガード3次元診断モードの動作
上記のように構成された超音波診断装置1の動作、特にトリガード3次元診断モードの動作について説明する。
【0037】
図3は、トリガード3次元診断モードの動作原理を説明する図であり、例えば特許文献1等に開示されている技術である。トリガード3次元診断モードは、主に心臓を診断対象とするものであり、鼓動によって変化する心臓の動きを3次元の動画画像として表示する診断モードである。トリガード3次元診断モードでは、患者の心臓の鼓動に応じて変化する心電図信号(ECG信号)を心電計100から入力し、ECGトリガ信号と呼ばれるパルス信号を生成する。ECG信号としては、心臓の拡張末期近傍で出力されるパルス状のR波の信号(図3(a)参照)が多く用いられている。このECG信号を走査制御部70に入力し、適宜の閾値を適用してECGトリガ信号を生成する(図3(b)参照)。ECGトリガ信号は鼓動に同期した信号であり、心拍が1秒間に60回の場合ECGトリガ信号の周期は1秒となる。
【0038】
トリガード3次元診断モードでは、診断領域の全体(フルボリューム)を複数のサブボリューム(分割領域)に分割し、各サブボリュームをECGトリガ信号毎に走査している。例えば、図3(f)に例示したように、フルボリュームを4つのサブボリュームA、B、C、及びDに分割する。そして、ECGトリガ信号のトリガ0、1、2、3の入力に応じてサブボリュームA、B、C、及びDの順に走査していく。
【0039】
このとき、各サブボリュームに対して1回だけ走査するのではなく、複数回(N回)繰り返して走査を行う。図3は、4回(N=4)の繰り返し走査を行っている例を示している。各サブボリュームに対する1回の走査時間Tは後述するように動画のフレーム時間(フレームレートの逆数)に対応することになるため、滑らかな動きの動画を得るためには例えば50ms(=1/20fps)前後、或いはそれ以下が好ましい。ECGトリガ信号の周期を1秒、また1回の走査時間を上記の50msと仮定すると、サブボリューム毎の繰り返し走査数Nは20となる。図3は、説明の便宜上、サブボリューム毎の繰り返し走査数Nを4とした場合の例を示している。
【0040】
同じサブボリュームを繰り返し走査している場合であっても、心臓は周期的に鼓動しているため、ECGトリガからの遅延時間、即ち時相が異なれば各繰り返し走査から生成される画像データは異なったものとなる。
【0041】
図3(c)に示す時相番号は、時相を1回の走査時間の単位で区分し、ECGトリガ信号に近い方から「0」、「1」、「2」、「3」と番号付けしたものである。図3(d)は、この時相番号「0」、「1」、「2」、及び「3」と、サブボリュームA、B、C、及びDとを「A0」〜「A3」、「B0」〜「B3」、「C0」〜「C3」、「D0」〜「D3」のように関連付けて超音波ビームの走査順序を時系列に並べたものである。
【0042】
信号処理部30からは、信号処理された被検体からの反射信号がこの走査順序に応じてリアルタイムで画像生成部40に出力される。
【0043】
図3(e)は、画像生成部40で行われるフルボリュームの合成方法を示す図である。画像生成部40では、時相番号で識別された各サブボリュームのデータから同じ時相番号のデータを抽出し、サブボリュームA、B、C、及びDでつなぎ合わせて合成する。同じ時相番号のサブボリュームデータであっても、実際にはそれらが取得された時刻はECGトリガ信号の周期分ずつ夫々異なっている。しかしながら、心臓の形状の変化はECGトリガ信号の周期と同じ周期性を有していると考えられるため、同じ時相番号のサブボリュームをつなぎ合わせて得られるフルボリューム画像の空間的な連続性はほぼ確保されることになる。
【0044】
時相番号0に対応するサブボリューム「D0」のデータが取得された時刻には、既にサブボリューム「A0」、「B0」、「C0」のデータは取得済みであり、この段階で時相番号0に対応するフルボリュームの画像が生成される。
【0045】
次に、時相番号1に対応するサブボリューム「D1」のデータが取得された時刻には、既にサブボリューム「A1」、「B1」、「C1」のデータは取得済みであり、時相番号1に対応するフルボリュームの画像が生成される。以下同様にして、時相番号2及び3のフルボリュームの画像がされる。
【0046】
サブボリュームDの走査「D3」が終了すると、サブボリュームAに戻って走査が行われる。このとき、最初に得られる走査データ「A0」は、1つ前に生成されていた時相番号0のフルボリュームデータの「A0」と置換され、新たな時相番号0のフルボリューム画像が更新されることになる。
【0047】
このように、フルボリューム画像は、サブボリューム毎の1回の走査時間(以下、繰り返し走査周期TSVという)の単位で生成され、或いは更新されることになる。
【0048】
このことは、フルボリューム全体の走査時間が実際には長くても、あたかもサブボリューム1回の走査時間でフルボリューム全体を走査したかのごとく見せることができることを意味している。つまり、サブボリューム画像のフレームレートとフルボリューム画像のフレームレートとを擬似的に同一にすることができることを意味している。
【0049】
例えば、通常の方法ではフルボリューム画像のフレームレートが走査時間の制約から5fpsしか達成できないとする。この場合であっても、フルボリュームを4つのサブボリュームに分割することにより、各サブボリュームの走査時間はフルボリュームの1/4となり、サブボリューム画像のフレームレートとしては4倍の20fpsが得られる。トリガード3次元診断モードでは、サブボリューム画像のフレームレートがそのままフルボリューム画像のフレームレートとなるため、通常の方法に比べると4倍も高いフレームレートが得られることになる。
【0050】
このように、トリガード3次元診断モードは広い3次元診断領域に対しても高い分解能の画像が高いフレームレートで得られるため、心臓のような動きのある診断対象に対してもリアルタイムの動画を生成することが可能である。
【0051】
しかしながら、前述したように、従来のトリガード3次元診断モードでは、予め設定された固定の繰り返し走査周期が用いられていた。このため、ECGトリガ信号の間隔、即ち心拍周期TECGが予め設定された固定の繰り返し走査周期の整数倍でない場合は、ECGトリガ信号到来直前の最後の繰り返し走査は途中で中断されることになる。
【0052】
図4はこの問題点を具体的に説明する図である。図4(a)は、ECGトリガ信号を示しており、ECGトリガ信号の周期が心拍周期TECGである。図4(b)は、サブボリュームAを繰り返し走査する状況を示す図である。この例では、サブボリュームAを固定的な周期TSV0(以下、この周期を繰り返し走査周期(初期値)TSV0という)で、20回(時相番号0から時相番号19まで)繰り返し走査を行おうとしている図である。
【0053】
しかしながら、心拍周期TECGは繰り返し走査周期(初期値)TSV0の整数倍になるとは限らない。このため、最後の繰り返し走査(時相番号19)の走査が終了する前に、余り時間TRを残して次のECGトリガ信号(トリガ1)が到来する。ECGトリガ信号(トリガ1)の到来によってサブボリュームAの走査は打ち切られ、次のサブボリュームBの走査に移行する(図4(c)参照)。この結果、時相番号19のデータは不完全なものとなり、フルボリュームの画像合成に使用することができなくなる。
【0054】
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置1では、繰り返し走査の周期を固定的なものではなく変更可能な繰り返し走査周期TSVとしている。そして繰り返し走査周期TSVの整数倍が心拍周期TECGとなるように繰り返し走査周期TSVを求め、繰り返し走査周期(初期値)TSV0に換えて求めた繰り返し走査周期TSVによってトリガード3次元診断モードを行うように構成している。
【0055】
図5は、この基本的な考え方を説明する図であり、図5(b)が変更前の繰り返し走査周期(初期値)TSV0に基づく走査であり、図5(c)が変更後の繰り返し走査周期TSVに基づく走査を表している。
【0056】
変更後の走査では、繰り返し走査周期TSVの整数倍が心拍周期TECGとなるため、時相番号0から最後の時相番号18までの繰り返し走査が欠けることなく行われている。このため、トリガ1の直前の期間の心臓の動きに関するデータも取りこぼすことなく取得することができる。以下、繰り返し走査周期の変更方法について具体的に説明する。
【0057】
(3)繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)
図6は、繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)の処理例を示すフローチャートであり、図8はその説明図である。これらの処理は主に走査制御部70にて行われる。第1の方法では、繰り返し走査周期TSVの内部を構成する送信パルスのパルス繰り返し周期TPを総て均一に変更することによって繰り返し走査周期TSVの変更を行っている。ここで、パルス繰り返し周期TPとは、パルス繰り返し周波数PRF(Pulse Repetition Frequency)の逆数のことである。
【0058】
本実施形態に係る超音波診断装置1では、トリガード3次元診断モードに入る前に予備走査モードと呼ばれる面走査(2次元走査)を行っている(ステップST1)。
【0059】
図7(a)は、予備走査モードの一例を説明する図である。予備走査モードでは、互いに直行する2つの面を超音波ビームで交互に走査し、夫々の走査面から得られる2枚画像データを表示部50に並べて表示させる。予備走査モードの主な目的は超音波プローブ10の位置決めであり、これから行おうとしているトリガード3次元診断モードの診断対象部位に対して超音波プローブ10の位置が適切であるかどうかを予備走査モードで得られる2枚の画像から判断しようというものである。予備走査モードは2面の走査であるためトリガード3次元診断モード(立体走査)に比べると全範囲の走査時間は非常に短く、高いフレームレートが得られるため、超音波プローブ10を移動させながら診断対象部位を探すのに適している。
【0060】
予備走査モードでは、ECGトリガ信号も合わせて入力され(図6のステップST5)、ECGトリガ信号の周期(心拍周期TECG’)が検出される(ステップST6)。求めた心拍周期TECG’に対して係数K(K≦1)を乗じ、繰り返し走査周期TSV等のパラメータ変更のためのECGトリガ周期(参照値)TECG(トリガ信号の周期に基づく参照値)を求める(ステップST7)。係数Kは心拍数の変動を見込んだマージン係数として例えば0.9程度の値がとられることが多いが、本実施形態の説明上はK=1としても支障ないため、以下の説明ではK=1として、即ち心拍周期TECG’とECGトリガ周期(参照値)TECGとを区別せずに単に心拍周期TECGとして表現するものとする。
【0061】
他方、予備走査モード中にトリガード3次元診断モードへのモード遷移指示が操作部80から入力されると(ステップST2)、適宜のメモリから初期値の読み込みが行われる(ステップST3)。読み込まれる初期値は、例えば、パルス繰り返し周期(初期値)TP0(或いは初期PRF0)や、送信ビームポジション数NB等である。
【0062】
パルス繰り返し周期(初期値)T0は、診断対象部位の深さから予め設定されている初期値であり、例えば区切りの良い数値として、TP0=200μs(PRF0=5000Hz)として設定されている。
【0063】
一方、送信ビームポジション数NBは診断対象部位の広さから予め設定されている値であり、例えば、NB=261(主走査方向(AZ方向)29本、副走査方向(EL方向)9本)として予め設定されている。
【0064】
次に、繰り返し走査周期初期値TSV0、及びこの逆数の繰り返し走査レートを算出する(ステップST4)。繰り返し走査レートは実質的に動画のフレームレートとなる値であり、以下繰り返し走査周期初期値TSVの逆数をフレームレートFRSVと呼び、その初期値をフレームレート(初期値)FRSV0と呼ぶものとする。
【0065】
繰り返し走査周期の初期値TSV0は、算出式、TSV0=TP0*NB、から求めることができる(図8(b)参照)。前述の数値例を適用すると、繰り返し走査周期の初期値TSV0は、TSV0=TP0*NB=200μs*261=52.2msとなる。また、フレームレート(初期値)FRSV0は、FRSV0=1/TSV0=1/52.2ms=19.2fps(frames per second)となる。
【0066】
次に、予備走査モード中の心拍から算出された心拍周期TECGに対して、データが欠如することなく完全な形で取得しうる繰り返し走査数Nを算出する(ステップST8)。この算出式は、例えば、N=int(TECG/TSV0)、と表現することができる。ここで、int()は、切捨てによる整数化を行う演算子を表している。
【0067】
なお、図5(b)、(c)、或いは図8(a)、(c)に示した例では、上記の整数化演算により、繰り返し走査数Nは19(時相番号0から18に相当)となっている。
【0068】
さらに、次のステップST9にて、心拍周期TECGの全体に対して抜けや余りなく均等に配分される繰り返し走査周期TSVを求める。繰り返し走査周期TSVは、例えば、TSV=TECG/N、の算出式で求めることができる。ここで求められた繰り返し走査周期TSVが図5(c)、及び図8(c)における変更後の繰り返し走査周期TSVに該当する。
【0069】
ステップST10では、繰り返し走査周期TSVを送信ビームポジション数NBで除し、繰り返し走査周期TSV内に均等に配分される送信パルス繰返し周期TPを算出する。送信パルス繰返し周期TPは、TP=TSV/NB、で求めることができる(図8(d)参照)。
【0070】
最後に、ステップST8〜ステップST10で算出、決定された新たなパラメータ、即ち、繰り返し走査数N、繰り返し走査周期TSV、送信パルス繰返し周期TP等を用いてトリガード3次元診断モードによる走査を開始する(ステップST11)。
【0071】
ここで、予備走査モードで測定された心拍数が74bps(beats per second)であったとすると、心拍周期TECGはその逆数の約810msとなる(ステップST6、7)。一方、繰り返し走査周期の初期値TSV0は、前述したように、TSV0=TP0*NB=200μms*261=52.2msである。
【0072】
これらの数値をステップST8の整数化処理に適用すると、繰り返し走査数Nは、N=int(TECG/TSV0)=int(810ms/52.2ms)=15、となる。
【0073】
このとき、繰り返し走査周期(変更値)TSVは約53.8msとなり、心拍周期810msに対する余り時間は、約3ms(810ms−15*53.8ms=3ms)となる。なお、このときのフレームレートFRSVは約18.5fpsとなり、PRFは4844Hz(パルス繰り返し周期TPは約206μs)となる。
【0074】
一方、繰り返し走査周期の変更を行わず、初期値のパラメータをそのまま使用した場合には、繰り返し走査周期(変更値)TSV0は約52.2msであり、心拍周期810msに対する余り時間は、約27ms(810ms−15*52.2ms=27ms)である。なお、このときのフレームレートFRSVは約19.2fpsであり、PRFは5000Hz(パルス繰り返し周期TP0は200μs)である。
【0075】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置1では、繰り返し走査周期TSVを変更することにより、ECGトリガ信号直前のデータ取得不能期間(余り時間)を、例えば約27msから約3msのように大幅に低減することが可能である。
【0076】
ところで、ステップST8における整数化処理では、単に整数化するだけを考えれば切り上げによる整数化も可能である。しかしながら、切り上げ処理を行うと結果的に変更後の繰り返し走査周期は初期値に比べると短くなり、その結果パルス繰返し周期の変更値も初期値に比べると短くなる。パルス繰返し周期を短くすることは、診断対象部位の深さが計画値(初期値)よりも浅くなることを意味している。
【0077】
そこで、ステップST8では、切捨てによる整数化を行い、繰り返し走査周期を初期値に対して長くなるよう変更し、これに合わせてパルス繰返し周期も初期値に比べて長くなるように変更している。この結果、変更後のパルス繰返し周期では診断対象部位の深さは初期値に比べると深くなり、計画した深さのデータは確実に取得することができる。
【0078】
図9はこの様子を模式的に示した図である。図9(a)は変更前の状態であり、繰り返し走査周期TSV0は約52.2msである。この時のパルス繰り返し周期TP0は前述したように200μsである。これに対して、図9(b)は変更後の状態であり、繰り返し走査周期TSVは約53.8msであり、この時のパルス繰り返し周期TPは約206μsである。パルス繰り返し周期TPが初期値の200μsから約206μsに延びたことにより、診断可能な深さは、図9(b)のハッチング領域だけ深くなっている。
【0079】
図9(b)は、心拍数が74bpsのときの変更後の繰り返し走査周期TSVが約53.8msとなることを例示する図であるが、同様にして他の心拍数に対して繰り返し走査周期TSVを求めた結果の一例が図10である。
【0080】
図10(a)は、心拍数72bpsに対する変更後の繰り返し走査周期TSVが約55.5msになることを示している。ちなみに、このときのPRFは約4699Hzであり、パルス繰り返し周期TPは約213μsである。
【0081】
図10(b)は、心拍数が76bpsに対する変更後の繰り返し走査周期TSVが約52.6msになることを示している。このときのPRFは約4960Hzであり、パルス繰り返し周期TPは約202μsである。
【0082】
いずれの心拍数であっても、パルス繰り返し周期TPは初期値の200μsに対して長くなっている。
【0083】
(4)繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)
図11は、繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)の処理例を示すフローチャートであり、図12はその説明図である。第1の方法のフローチャート(図6)との相違点は最後の処理のステップST100、とステップST111であり、それ以外の処理は第1の方法と同じである。
【0084】
第1の方法では、パルス繰り返し周期TPを総て均一に変更することによって繰り返し走査周期TSVの変更を行っているが、第2の方法では、一部の送信パルスのみそのパルス繰り返し周期TPを変更し、残りの送信パルスのパルス繰り返し周期は初期値のままとして繰り返し走査周期TSVの変更を行っている。
【0085】
第2の方法において最も単純な方法は、繰り返し走査周期TSV内の送信パルスのうち、最後の送信パルスのパルス周期のみを調整用送信パルス周期TDとし、それ以外の送信パルスのパルス繰返し周期には初期値T0を用いる方法である。調整用送信パルス周期TDを求める処理は図11のステップ100で行っている。
【0086】
図12(c)、(d)はこの方法の説明図である。ステップST9で新たに算出された繰り返し走査周期TSVから、調整用送信パルス周期TD(=TSV−TSV0=TSV−TP0*NB)を求め、この調整用パルス周期TDを最後の送信パルスのパルス周期としている。
【0087】
第2の方法によっても、繰り返し走査周期TSVの整数倍がほぼ心拍周期TECGとなる、という関係は維持されており、ECGトリガ周期の直前の無駄な期間を低減することが可能となる。
【0088】
(5)繰り返し走査周期の変更方法(第3の方法)
図13は、繰り返し走査周期の変更方法(第3の方法)の処理例を示すフローチャートである。前述した第1、第2の方法では、モード遷移が指示されると、算出した診断用パラメータ(繰り返し走査周期TSV、パルス繰り返し周期TP等)に基づいて自動的にトリガード3次元診断モードを開始している。
【0089】
これに対して、第3の方法では、算出した診断用パラメータを一度表示部50に表示させ(ステップST201)、ユーザが新たな診断用パラメータの内容を確認した後、操作部80から入力されるモード遷移指示が入力されたか否かを判断する処理(ステップST202)を設けている。
【0090】
また、フレームレートFRSVは診断上重要なパラメータの1つであるため、フレームレートFRSVを算出する処理(ステップST200)をフローチャート中に付加している。
【0091】
第3の方法では、算出された診断用パラメータをユーザが確認した後にトリガード3次元診断モードへ移行することができるため、より確実な診断が可能となる。
【0092】
以上説明してきたように、本実施形態に係る超音波診断装置1、及びその制御方法によれば、ECGトリガ信号直前の繰り返し走査に対して走査の途中で中断されることを防止し、取得データの利用効率を高めると共にECGトリガ信号直前の画像も生成することができる。
【0093】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】3次元の超音波診断装置のビーム走査を模式的に示す図。
【図2】本発明に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図。
【図3】トリガード3次元診断モードの一般的動作概念説明図。
【図4】従来のトリガード3次元診断モードの問題点を説明する図。
【図5】本発明に係る超音波診断装置におけるトリガード3次元診断モードの動作概念を説明する図。
【図6】繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)の処理例を示すフローチャート。
【図7】予備走査モードの走査概念とトリガード3次元診断モードへのモード遷移の概念を説明する図。
【図8】繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)の動作説明図。
【図9】繰り返し走査周期の変更方法(第1の方法)におけるパルス繰り返し周期の変更概念を示す図。
【図10】心拍数と変更後の繰り返し走査周期との関係を数値例で説明する図。
【図11】繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)の処理例を示すフローチャート。
【図12】繰り返し走査周期の変更方法(第2の方法)の動作説明図。
【図13】繰り返し走査周期の変更方法(第3の方法)の処理例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0095】
1 超音波診断装置
10 超音波プローブ
11 超音波振動子
20 送受信部
30 信号処理部
40 画像生成部
50 表示部
60 システム制御部
70 走査制御部
80 操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集する超音波プローブと、
心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御する走査制御部と、
前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記走査制御部は、
前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記走査制御部は、
前記パルス繰り返し周期が前記繰り返し走査周期内に均一に配分されるように、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記走査制御部は、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期は前記パルス繰り返し周期初期値と同一又は長くなるように決定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記走査制御部は、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期初期値によって求められる繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期とならない場合は、前記繰り返し走査周期の一部に調整用送信パルスを設け、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期となるように前記調整用送信パルスのパルス繰り返し周期を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記調整用送信パルスは、前記繰り返し走査周期の最後の位置に1つ設けられる送信パルスである、
ことを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づく制御をユーザの操作によって開始することができる操作部と、
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づいて求められる診断用パラメータを表示することができる表示部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記診断用パラメータは、前記繰り返し走査周期又は繰り返し走査レート、前記分割領域内の繰り返し走査数、前記診断領域の広さ、前記診断領域の深さ、及びデータ収集不能時間の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
(a)超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集し、
(b)心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御し、
(c)前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する、
ステップを備え、
ステップ(b)では、
前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置の制御方法。
【請求項9】
ステップ(b)では、
前記パルス繰り返し周期が前記繰り返し走査周期内に均一に配分されるように、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項10】
ステップ(b)では、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期を前記パルス繰り返し周期初期値と同一又は長くなるように決定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項11】
ステップ(b)では、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期初期値によって求められる繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期とならない場合は、前記繰り返し走査周期の一部に調整用送信パルスを設け、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期となるように前記調整用送信パルスのパルス繰り返し周期を決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項12】
前記調整用送信パルスは、前記繰り返し走査周期の最後の位置に1つ設けられる送信パルスである、
ことを特徴とする請求項11に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項13】
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づく制御をユーザからの操作によって開始し、
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づいて求められる診断用パラメータを表示する、
ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項14】
前記診断用パラメータは、前記繰り返し走査周期又は繰り返し走査レート、前記分割領域内の繰り返し走査数、前記診断領域の広さ、前記診断領域の深さ、及びデータ収集不能時間の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項1】
超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集する超音波プローブと、
心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御する走査制御部と、
前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記走査制御部は、
前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記走査制御部は、
前記パルス繰り返し周期が前記繰り返し走査周期内に均一に配分されるように、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記走査制御部は、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期は前記パルス繰り返し周期初期値と同一又は長くなるように決定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記走査制御部は、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期初期値によって求められる繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期とならない場合は、前記繰り返し走査周期の一部に調整用送信パルスを設け、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期となるように前記調整用送信パルスのパルス繰り返し周期を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記調整用送信パルスは、前記繰り返し走査周期の最後の位置に1つ設けられる送信パルスである、
ことを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づく制御をユーザの操作によって開始することができる操作部と、
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づいて求められる診断用パラメータを表示することができる表示部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記診断用パラメータは、前記繰り返し走査周期又は繰り返し走査レート、前記分割領域内の繰り返し走査数、前記診断領域の広さ、前記診断領域の深さ、及びデータ収集不能時間の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
(a)超音波ビームを主走査方向及び副走査方向に走査しつつ送信パルスを出力し、被検体内からの反射信号を収集し、
(b)心拍の周期ごとに出力されるトリガ信号を外部から入力し、前記被検体の所望の診断領域を所定数に分割した分割領域の夫々に対して、前記トリガ信号から次のトリガ信号までの間、前記超音波ビームを複数回繰り返し走査させると共に、前記送信パルスのパルス繰り返し周期の制御によって前記繰り返し走査周期を制御し、
(c)前記分割領域毎の繰り返し走査によって取得されるデータを前記繰り返し走査の順序に基づいて対応付けてつなぎ合わせ前記診断領域全体の画像を生成する、
ステップを備え、
ステップ(b)では、
前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期に基づく参照値となるよう、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置の制御方法。
【請求項9】
ステップ(b)では、
前記パルス繰り返し周期が前記繰り返し走査周期内に均一に配分されるように、前記パルス繰り返し周期を決定して制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項10】
ステップ(b)では、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期を前記パルス繰り返し周期初期値と同一又は長くなるように決定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項11】
ステップ(b)では、
前記被検体の診断対象の深さから予め設定されたパルス繰り返し周期初期値を保有し、
前記パルス繰り返し周期初期値によって求められる繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期とならない場合は、前記繰り返し走査周期の一部に調整用送信パルスを設け、前記繰り返し走査周期の整数倍が前記トリガ信号の周期となるように前記調整用送信パルスのパルス繰り返し周期を決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項12】
前記調整用送信パルスは、前記繰り返し走査周期の最後の位置に1つ設けられる送信パルスである、
ことを特徴とする請求項11に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項13】
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づく制御をユーザからの操作によって開始し、
前記決定されたパルス繰り返し周期に基づいて求められる診断用パラメータを表示する、
ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項14】
前記診断用パラメータは、前記繰り返し走査周期又は繰り返し走査レート、前記分割領域内の繰り返し走査数、前記診断領域の広さ、前記診断領域の深さ、及びデータ収集不能時間の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−142396(P2009−142396A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321192(P2007−321192)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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