説明

超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波画像処理方法、及び超音波画像処理プログラム

【課題】胎盤の超音波検査における画像診断精度の向上を実現する。
【解決手段】 画像生成部50は、前記カラードプラモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関する第1カラードプラモード画像のデータを生成する。また、画像生成部50は、前記Bモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関するBモード画像のデータを生成する。領域特定部60は、Bモード画像の輝度分布に基づいて羊水領域と胎児領域との少なくとも一方の阻害領域を特定する。画像生成部50は、第1カラードプラモード画像から阻害領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモード画像のデータを生成する。表示部70は、第2カラードプラモード画像とBモード画像とを重ねて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波画像処理方法、及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査時において、Bモード画像にカラードプラモード画像が重ねて表示されている。カラードプラモード画像は、カラードプラ法により血流等の流動物の速度成分、パワー成分、分散成分等の流速情報がカラーで表されたものである。
【0003】
これら技術を用いて妊婦の胎内の超音波検査が行なわれている。体内の超音波検査方法の応用の一つとして、胎内の胎児を3次元画像表示する技術がある。
【0004】
胎内の超音波検査においては、胎盤内血流を検出したり、胎児発育や胎盤の状態を診断したり、動静脈シャント(arteriovenous shunt)等の疾患の有無を確認したりしている。胎内の超音波検査時において、胎児等の動きにより羊水が動く場合がある。この場合、動いている羊水の流速情報が、画像上、胎盤表層部等に重なってしまう。このため、胎盤表層部の血管の観察が困難になる。また、胎児が胎盤に接近している場合、胎盤の観察が非常に困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―145631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、例えば、胎盤及び胎盤内の血流を抽出することで、胎盤の超音波検査における画像診断精度の向上を実現する超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波画像処理方法、及び超音波画像処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る超音波診断装置は、妊婦の胎内に関する走査領域に超音波プローブを介してBモード走査とカラードプラモード走査とを実行する超音波診断装置において、前記カラードプラモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関する第1カラードプラモードデータを生成し、前記Bモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関する第1Bモードデータを生成する第1生成部と、前記第1Bモードデータの信号強度分布又は輝度分布に基づいて羊水領域と胎児領域との少なくとも一方を含む特定領域を特定する特定部と、前記第1カラードプラモードデータのうちの前記特定領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成する第2生成部と、前記第2カラードプラモードデータに対応するカラードプラモード画像と前記第1Bモードデータに対応するBモード画像とを重ねて表示する表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図2】図1の画像生成部により生成される、胎内に関するBモード画像の一例を示す図。
【図3】図1の領域特定部により行なわれる、特定方法1を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図。
【図4】図1の画像生成部により生成される、胎内に関するBモード画像の走査線(ラスタ)上の深さ位置と輝度値との関係を示すグラフ。
【図5】図1の領域特定部により行なわれる、特定方法2を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図。
【図6】図1の領域特定部により行なわれる、特定方法4を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図。
【図7】図1の領域特定部により行なわれる、特定方法5を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図。
【図8】図1のシステム制御部の制御のもとに行なわれる胎盤領域の強調表示処理の典型的な流れを示す図。
【図9】図8のステップS3における表示レイアウトの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波画像処理方法、及び超音波画像処理プログラムを説明する。
【0010】
本実施形態に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波画像処理方法、及び超音波画像処理プログラムは、出産前の妊婦の超音波検査に供されるものである。従って本実施形態に係る被検体は、妊婦であるとする。一般的に、胎児は、胎内(子宮)に含まれ、羊膜に包まれている。羊膜内は、羊水で満たされている。子宮内壁には胎盤が形成されている。本実施形態に係る超音波の走査領域は、胎児や羊水、胎盤等を含む胎内であるとする。
【0011】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ10、送受信部20、走査制御部30、信号処理部40、画像生成部50、領域特定部60、表示部70、操作部80、記憶部90、及びシステム制御部100を備える。なお、画像生成部50、領域特定部60、表示部70、操作部80、記憶部90、及びシステム制御部100は、本実施形態に関わる超音波画像処理装置200を構成する。
【0012】
超音波プローブ10は、送受信部20からの駆動パルスを受け、超音波を被検体内の走査領域に向けて送信する。送信された超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続点(エコー源)で次々と反射される。反射された超音波は、超音波プローブ10に受信される。受信された超音波は、超音波プローブ10によりエコー信号(電気信号)に変換される。エコー信号は、送受信部20に供給される。
【0013】
送受信部20は、走査制御部30による制御に従って、超音波プローブ10を介して走査領域に超音波を繰り返し送受信する。具体的には、送受信部20は、送信部22と受信部24とを有する。
【0014】
送信部22は、走査制御部30による制御に従って、超音波プローブ10内の各振動子に割り当てられた遅延時間で各振動子に駆動パルスを繰り返し供給する。駆動パルスの供給により送信部22は、超音波プローブ10を介して所定の送信方向に超音波ビームを送信する。より詳細には、送信部22は、所定のレート周波数frHz(周期;1/fr秒)で、レートパルスを振動子毎に繰り返し発生する。送信部22は、発生された各レートパルスに対して、所定の送信方向及び送信フォーカス位置に関する送信ビームを形成するのに必要な遅延時間を与える。そして送信部22は、各遅延されたレートパルスに基づくタイミングで駆動パルスを発生し、発生された駆動パルスを各振動子に供給する。駆動パルスの供給を受けた各振動子は、超音波を発生する。これにより超音波プローブ10は、所定の送信フォーカス位置に集束された超音波ビームを所定の送信方向に送信する。
【0015】
受信部24は、走査制御部30による制御に従って、走査領域内で反射された超音波をエコー信号として超音波プローブ10を介して繰り返し受信する。超音波が受信されると受信部24は、受信ビームを形成する。より詳細には受信部24は、超音波プローブ10からのエコー信号を受信し、受信されたエコー信号を増幅する。次に受信部24は、増幅されたエコー信号をアナログからデジタルに変換する。次に受信部24は、デジタルに変換されたエコー信号を、デジタルメモリに記憶する。デジタルメモリは、例えば、振動子毎に設けられている。エコー信号は、受信した振動子に対応するデジタルメモリであって、そのエコー信号の受信時刻に応じたアドレスに記憶される。受信部24は、所定方向からの受信ビームに対応するエコー信号(以下、受信信号と呼ぶことにする)を形成するために、デジタルメモリに記憶されたエコー信号を遅延加算する。具体的には、所定の受信フォーカス位置に対応するアドレスからエコー信号を読み出して加算する。受信フォーカス位置を超音波走査線上に沿って変更しながらこの遅延加算処理が繰り返されることにより、所定方向からの受信ビームに対応する受信信号が生成される。受信信号は、信号処理部40に供給される。なおエコー信号をアナログからデジタルに変換する段は、上述の例に限定されず、既存のどの段において行なわれてもよい。
【0016】
走査制御部30は、走査領域にBモード走査とカラードプラモード走査とを実行するように、所定のスキャンシーケンスに従って送信部22と受信部24とを制御する。例えば、走査制御部30は、Bモード走査とカラードプラモード走査とを走査面毎に交互に行わせる。なお走査領域は、2次元空間領域であっても3次元空間領域であってもよい。3次元空間領域の走査は、2次元状に配列された振動子で超音波ビームを送受信する方法や、1次元状に配列された振動子を機械的に揺動させながら超音波ビームを送受信する方法が用いられる。しかしながら、以下、説明を具体的に行なうため、走査領域は3次元空間領域であるとする。
【0017】
信号処理部40は、受信部24からの受信信号に基づいてBモード走査に対応するBモード処理とカラードプラモード走査に対応するカラードプラモード処理とを行う。具体的には、信号処理部40は、Bモード処理部42とカラードプラモード処理部44とを有する。
【0018】
Bモード処理部42は、Bモード走査時における受信部24からの受信信号をBモード処理し、走査領域に関するBモード信号のデータを生成する。具体的には、Bモード処理部42は、受信信号を包絡線検波し、包絡線検波された受信信号を対数圧縮する。これにより、受信信号の強度を輝度(諧調)で表現するBモード信号のデータを生成する。生成されたBモード信号のデータは、画像生成部50や記憶部90に供給される。
【0019】
カラードプラモード処理部44は、カラードプラモード走査時における受信部24からの受信信号をカラードプラモード処理し、走査領域に関するカラードプラモード信号のデータを生成する。具体的には、カラードプラモード処理部44は、受信信号を直交検波し、直交検波された受信信号を周波数解析し、走査領域内の各点において血液や羊水等の流動物に関する平均速度値や分散値、パワー値等の流速情報を算出する。そしてカラードプラモード処理部44は、算出された流速情報をカラーで表現するカラードプラモード信号のデータを生成する。生成されたカラードプラモード信号のデータは、画像生成部50や記憶部90に供給される。
【0020】
画像生成部50は、Bモード処理部42や記憶部90からのBモード信号に基づいて走査領域に関するBモード画像のデータを生成する。例えば、画像生成部50は、Bモード信号に基づいて走査領域内の1つの走査面に関する2次元のBモード画像のデータを生成する。また、画像生成部50は、走査領域内の複数の走査面に関する3次元のBモード画像のデータ(以下、Bモードボリュームデータと呼ぶことにする)を生成したりする。この場合、画像生成部50は、生成されたBモードボリュームデータをMPR処理して任意断面に関する2次元のBモード画像のデータを生成する。あるいは画像生成部50は、Bモードボリュームデータに画素値投影処理やボリュームレンダリング等の3次元画像処理をして任意の視点位置及び視線方向の2次元のBモード画像(いわゆる3次元画像)のデータを生成したりする。Bモード画像は、走査領域内のBモード信号の信号強度分布を輝度で表現する画像である。生成されたBモード画像のデータは、領域特定部60や記憶部90に供給される。
【0021】
同様に、画像生成部50は、カラードプラモード処理部44や記憶部90からのカラードプラモード信号に基づいて走査領域に関するカラードプラモード画像のデータを生成する。例えば、画像生成部50は、カラードプラモード信号に基づいて走査領域内の1つの走査面に関する2次元のカラードプラモード画像のデータを生成する。また、画像生成部50は、カラードプラモード信号に基づいて走査領域内の複数の走査面に関する3次元のカラードプラモード画像のデータ(以下、カラードプラモードボリュームデータと呼ぶことにする)を生成する。この場合、画像生成部50は、生成されたカラードプラモードボリュームデータをMPR処理して任意断面に関する2次元のカラードプラモード画像のデータを生成する。あるいは画像生成部50は、カラードプラモードボリュームデータに画素値投影処理やボリュームレンダリング等の3次元画像処理をして任意の視点位置及び視線方向の2次元のカラードプラモード画像(いわゆる3次元画像)のデータを生成したりしてもよい。カラードプラモード画像は、走査領域内の流速情報をカラーで表現する画像である。生成されたカラードプラモード画像のデータは、領域特定部60や記憶部90に供給される。
【0022】
なお、画像生成部50より前段のデータは、生データと呼ばれ、画像生成部50より後段のデータは、画像データと呼ばれている。また、Bモード走査時における受信信号のデータとBモード信号のデータとBモード画像のデータとをまとめてBモードデータと呼び、カラードプラモード走査時における受信信号とカラードプラモード信号のデータとカラードプラモード画像のデータとをまとめてカラードプラモードデータと呼ぶことにする。
【0023】
領域特定部60は、Bモードデータの信号強度分布又は輝度分布に基づいて、Bモードデータの中から羊水に対応する信号強度分布又は輝度分布を有するデータ領域(以下、羊水領域と呼ぶことにする)や胎児に対応する信号強度分布又は輝度分布を有するデータ領域(以下、胎児領域と呼ぶことにする)を特定する。羊水領域や胎児領域は、胎盤、特に胎盤表層部の血流の観察を画像上において視覚的に阻害する領域である。従って、羊水領域と胎児領域とを特に区別しない場合、羊水領域と胎児領域とを含む領域を阻害領域と呼ぶことにする。特定された阻害領域の位置のデータは、画像生成部50に供給される。領域特定部60による阻害領域の特定処理についての詳細は後述する。
【0024】
さらに、画像生成部50は、カラードプラモード画像のデータのうちの阻害領域に対応するカラードプラモード画像のデータが削除されたカラードプラモード画像(以下、削除カラードプラモード画像と呼ぶことにする)のデータを生成する。生成された削除カラードプラモード画像のデータは、表示部70に供給される。また、画像生成部50は、Bモード画像のデータのうちの阻害領域に対応するBモード画像のデータが削除されたBモード画像(以下、削除Bモード画像と呼ぶことにする)のデータを生成する。生成された削除Bモード画像のデータは、表示部70に供給される。以下、阻害領域に対応するカラードプラモード画像のデータが削除されていない通常のカラードプラモード画像のデータを単にカラードプラモード画像のデータと呼び、阻害領域に対応するBモードデータ画像のデータが削除されていない通常のBモード画像のデータを単にBモード画像のデータと呼ぶことにする。
【0025】
表示部70は、削除カラードプラモード画像のデータに対応する削除カラードプラモード画像を表示デバイスに表示する。典型的には、表示部70は、削除カラードプラモード画像を、Bモード画像のデータに対応するBモード画像に重ねて表示する。また、表示部70は、削除カラードプラモード画像を削除Bモード画像のデータに対応する削除Bモード画像に重ねて表示してもよい。このように表示部70は、羊水領域や胎児領域等の阻害領域が除去された削除カラードプラモード画像や削除Bモード画像を表示する。結果的に、表示部70は、胎盤に対応する画素領域(以下、胎盤領域と呼ぶことにする)が強調された削除カラードプラモード画像や削除Bモード画像を表示する。なお、重ねて表示される削除カラードプラモード画像とBモード画像(削除Bモード画像も同様)の断面の位置及び方向は、あるいは視点位置及び視線方向は、略同一である。表示デバイスとしては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が利用可能である。
【0026】
操作部80は、ユーザからの入力デバイスを介して入力された指示や情報を受け付ける。入力デバイスとしては、キーボードやマウス、各種スイッチ、タッチパネル等が利用可能である。
【0027】
記憶部90は、信号処理部40からのBモード信号やカラードプラモード信号、画像生成部50からのBモード画像のデータ、カラードプラモード画像のデータを記憶する。Bモード信号、Bモード画像、カラードプラモード信号、及びカラードプラモード画像は、走査時刻に関連付けて記憶される。また、記憶部90は、胎盤領域の強調表示処理のための超音波画像処理プログラムを記憶する。
【0028】
システム制御部100は、超音波診断装置1の中枢として機能する。システム制御部100は、記憶部90から超音波画像処理プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開した超音波画像処理プログラムに従って各部を制御することにより、胎盤領域の強調表示処理を行う。
【0029】
以下、本実施形態の動作例について説明する。なお以下の説明においては、輝度値に応じた画素値を有する画素により構成される画像データ(Bモード画像とカラードプラモード画像)に対して処理をする例について説明する。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、輝度値に応じた信号強度を有する生データ(Bモード信号とカラードプラモード信号)に対して処理がなされてもよい。
【0030】
まず、領域特定部60による阻害領域の特定処理について詳述する。図2は、胎内に関するBモード画像の一例を示す図である。図2に示すように、胎内に関するBモード画像は、腹部表面に近い方から順番に、胎盤に関する胎盤領域RP、羊水に関する羊水領域RA、及び胎児に関する胎児領域RFを含む。羊水領域RAは、胎盤領域RPと胎児領域RFとの間にあり、一般的に胎児領域RFは、胎盤領域RPに近接している。胎盤は、均一な実質である。そのため、胎盤領域RPは、羊水領域RAと胎児領域RFとに比して輝度変化が小さい。羊水により反射された超音波に由来する受信信号の強度は、胎盤と胎児とに比して弱い。そのため、羊水領域RAは、胎盤領域RPと胎児領域RFとに比して輝度値が小さい。胎児は様々な組織からなるので胎児により反射された超音波に由来する受信信号の強度は、胎盤と羊水とに比してばらつきがある。そのため、胎児領域RFは、羊水領域RAと胎盤領域RPとに比して、大きな輝度変化を有する。
【0031】
このような羊水、胎盤、及び胎児の各々の輝度分布を利用して領域特定部60は、Bモード画像上において羊水領域や胎児領域等の阻害領域を特定する。本実施形態では、以下の典型的な5つの特定方法について説明する。上述のように阻害領域の特定処理は、Bモード画像に対して行なわれる。特定処理は、2次元のBモード画像にも、3次元のBモード画像(すなわちBモードボリュームデータ)にも適用可能である。しかしながら、以下の説明を具体的に行なうため、阻害領域の特定処理は、2次元のBモード画像に対して行なわれるものとする。
【0032】
(特定方法1)
1番目の方法は、Bモード画像上における輝度値のばらつき度合を示す統計指標に基づいて阻害領域を特定する方法である。統計指標は、例えば、所定領域内における輝度のばらつき度合を示す分散値や標準偏差が適当である。以下、説明を具体的に行なうため、ばらつき度合を示す統計指標は、分散値であるとする。
【0033】
上述のように胎盤領域は、羊水領域と胎児領域とに比して輝度変化が小さい。従って、胎盤領域の分散値は、羊水領域と胎児領域とに比して小さくなる。特定方法1において領域特定部60は、この性質を利用して、Bモード画像の中から阻害領域(羊水領域と胎児領域との両方)を特定する。以下、特定方法1を利用した阻害領域の特定処理の典型的な流れを説明する。
【0034】
図3は、特定方法1を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図である。まず領域特定部60は、Bモード画像上の複数の位置に複数の局所領域Kをそれぞれ設定する。例えば、図3においては、第1局所領域K1が胎盤領域RPに、第2局所領域K2が胎盤領域RAに、第3局所領域K3が胎盤領域RFに設定されるものとする。局所領域K1、K2、K3は、標準的なBモード画像のマトリクスサイズ(matrix size)に比して小さいマトリクスサイズ、例えば、16×16のマトリクスサイズを有する。局所領域K1、K2、K3の設定位置や設定数は、予め自動的に又は操作部80を介してユーザにより任意に設定される。なお、図3には3つの局所領域K1、K2、K3が図示されているが、典型的には、局所領域は、Bモード画像上に隙間無く設定される。
【0035】
局所領域を設定すると領域特定部60は、各局所領域内で輝度値の分散値を算出する。各局所領域で分散値が算出されると、領域特定部60は、閾値以上の分散値を有する局所領域を阻害領域として特定する。閾値は、阻害領域の分散値(より詳細には、羊水領域の分散値と胎児領域の分散値とのうちの小さい方)と胎盤領域の分散値との境に予め設定される。従って閾値以上の分散値を有する局所領域は、阻害領域に属することとなる。例えば、図3の場合を例に挙げると、第1局所領域K1の分散値は、閾値以下である、第2局所領域K2の分散値と第3局所領域K3の分散値とは、閾値以上である。従って、第2局所領域K2と第3局所領域K3とが阻害領域として特定される。阻害領域の座標位置のデータは、画像生成部50に供給される。このように特定方法1によれば、羊水領域と胎児領域との両方が阻害領域として特定される。
【0036】
(特定方法2)
2番目の方法は、Bモード画像上における解剖学的な位置と輝度値とに基づいて阻害領域を特定する方法である。
【0037】
上述のように胎内に関するBモード画像上においては、妊婦の腹部表面から始めて胎盤領域、羊水領域、胎児領域の順番に配置されている。すなわち、羊水領域と胎児領域とは、胎盤領域に比して深い位置に分布される。また、胎盤領域、羊水領域、及び胎児領域は、それぞれ異なる輝度帯域に属している。
【0038】
図4は、胎内に関するBモード画像の走査線(ラスタ)上の深さ位置と輝度値との関係を示すグラフである。図4に示すように、Bモード画像上においては、妊婦の腹部表面から順番に胎盤領域、羊水領域、及び胎児領域が分布している。胎盤領域は、深さ位置に応じた輝度変化が少なく、羊水領域と胎盤領域とは、深さ位置に応じた輝度変化が大きい。また、胎盤領域の輝度帯域と胎児領域の輝度帯域とは、羊水領域の輝度帯域より高い。特定方法2において領域特定部60は、この性質を利用して、Bモード画像の中から阻害領域(羊水領域と胎児領域との両方)を特定する。以下、特定方法2を利用した阻害領域の特定処理の典型的な流れを説明する。
【0039】
図5は、特定方法2を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図である。まず、領域特定部60は、走査線L上に沿って腹部体表から体内へ向けて画素を探索し、初めに閾値Th以下の輝度値を有する画素(以下、境界画素と呼ぶことにする)を特定する。閾値Thはこの輝度範囲内の値に自動的あるいは、ユーザにより操作部80を介して任意に設定される。このように閾値Thを設定することで例えば、走査線L1の場合、胎盤領域RPと羊水領域RAとの境界に位置する画素A1が境界画素として特定される。このようにして領域特定部60は、Bモード画像上の全ての走査線について画素を探索し、境界画素を特定する。全ての走査線について探索が行なわれると、領域特定部60は、境界画素よりも深い位置にあるBモード画像上の画素領域を阻害領域として特定する。阻害領域の座標位置のデータは、画像生成部50に供給される。このように特定方法2によれば、羊水領域と胎児領域との両方が阻害領域として特定される。
【0040】
(特定方法3)
3番目の方法は、Bモード画像上における大きさと輝度値とに基づいて阻害領域を特定する方法である。
【0041】
羊水領域と血管に対応する画素領域(以下、血管領域と呼ぶことにする)とは、両方とも液体であるので、輝度値だけでは互いを識別するのは難しい。一般的に羊水領域は、Bモード画像上において血管領域に比して面積(Bモードボリュームデータの場合は体積)が大きく、幅が広い。特定方法3において領域特定部60は、この性質を利用して、Bモード画像の中から阻害領域(羊水領域のみ)を特定する。以下、特定方法3を利用した阻害領域の特定処理の典型的な流れを説明する。
【0042】
まず、領域特定部60は、Bモード画像の中から低輝度値を有する画素領域を特定する。ここで、低輝度値とは、例えば、画像内の平均輝度値より低い輝度値である。次に領域特定部60は、特定された画素領域の面積を算出する。大きさは、例えば、画素領域に含まれる画素の数を計数することにより得られる。面積を算出すると、領域特定部60は、算出された面積が閾値(大きさの閾値)よりも大きい場合、この画素領域を羊水領域として特定する。一方、領域特定部60は、算出された面積が閾値(大きさの閾値)よりも小さい場合、この画素領域を羊水領域として特定しない。羊水領域の座標位置のデータは、画像生成部50に供給される。このように特定方法3によれば、羊水領域が阻害領域として特定される。
【0043】
(特定方法4)
4番目の方法は、ユーザにより操作部80を介して阻害領域内に設定された画素(始点)の輝度値との類似性に基づいて、阻害領域を特定する方法である。
【0044】
上述のように、羊水領域は、胎盤領域と胎児領域とに比して小さい輝度値を有している。特定方法4において領域特定部60は、この性質を利用して、Bモード画像の中から羊水領域を特定する。以下、特定方法4を利用した阻害領域の特定処理の流れを説明する。
【0045】
図6は、特定方法4を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図である。まず、領域特定部60は、ユーザにより操作部80を介してBモード画像上の羊水領域RA内に指定された画素SPを始点に設定する。始点SPを設定すると領域特定部60は、始点SPから周囲の画素を探索し、所定の統合条件を満たす画素を統合していく。統合条件の一例は、閾値以下であることである。この閾値は、胎盤領域RAが取り得る最低輝度値と羊水領域RAが取り得る最高輝度値との間に設定される。統合可能な画素が無くなると領域特定部60は、統合された画素領域を羊水領域RAとして特定する。羊水領域RAは、統合された画素領域の境界BLに挟まれた画素領域である。羊水領域RAの座標位置のデータは、画像生成部50に供給される。このように特定方法4によれば、羊水領域が阻害領域として特定される。
【0046】
(特定方法5)
5番目の方法は、ユーザにより操作部80を介して阻害領域内に設定された画素(始点)と阻害領域に特有な輝度分布とに基づいて胎児領域を特定する方法である。
【0047】
図7は、特定方法5を利用した阻害領域の特定処理を説明するための図である。図7に示すように、胎児領域RFは、輝度値に応じて胎児領域境界部RFKと胎児領域内部RFTとに分類できる。胎児領域境界部RFKは、胎児領域内部RFTに比して高輝度を有している。胎児領域境界部RFKは、胎児の骨等の超音波の強反射体に由来する。この性質を利用して、Bモード画像の中から阻害領域(胎児領域のみ)を特定する。以下、特定方法5における処理の典型的な流れを説明する。
【0048】
まず、領域特定部60は、ユーザにより操作部80を介してBモード画像上の胎児領域内部RFTに指定された画素SPを始点に設定する。始点SPを設定すると領域特定部60は、始点SPから周囲の画素を探索し、予め設定された閾値以上の輝度値を有する画素(以下、高輝度画素と呼ぶことにする)を特定する。この閾値は、例えば、胎児領域境界部RFKが取り得る最低輝度値に設定される。すなわち高輝度画素は、胎児領域境界部RFK上の画素である。領域特定部60は、始点SPから全方位方向に沿ってこの探索処理を行ない、胎児領域境界部RFKを特定する。胎児領域境界部RFKを特定すると、領域特定部60は、胎児領域境界部RFKに囲まれた画素領域(胎児領域境界部RFKも含む)を胎児領域RFとして特定する。胎児領域RFの座標位置のデータは、画像生成部50に供給される。このように特定方法5によれば、胎児領域が阻害領域として特定される。
【0049】
以上で領域特定部60による阻害領域の特定処理の説明を終了する。
【0050】
次に、システム制御部100の制御のもとに行われる胎盤領域の強調表示処理を胎内の超音波検査を例に挙げて説明する。図8は、胎盤領域の強調表示処理の典型的な流れを示す図である。なお、図8のステップS1の開始時点においては、すでに互いに同一断面あるいは同一視線位置及び視線方向のBモード画像のデータとカラードプラモード画像のデータとが画像生成部50により生成され、記憶部90に記憶されているものとする。
【0051】
図8に示すように、胎内の超音波検査においてシステム制御部100は、ユーザにより操作部80を介して胎盤領域の強調表示処理の開始指示が入力されることを待機している(ステップS1)。開始指示がなされると(ステップS1:YES)、システム制御部100は、画像処理装置200内の各部を制御して胎盤領域の強調表示処理を開始する。
【0052】
まずシステム制御部100は、領域特定部60を制御して領域特定部60に上述の阻害領域の特定処理を行なわせる(ステップS2)。ステップS2において領域特定部60は、上述の特定方法1、特定方法2、特定方法3、特定方法4、及び特定方法5の中の何れかの方法を用いて、Bモード画像上の阻害領域(羊水領域と胎児領域との少なくとも一方)を特定する。特定された阻害領域の座標位置のデータは、画像生成部50に供給される。
【0053】
なお、上述のように特定方法1と特定方法2との少なくとも一方を用いれば、領域特定部60は、羊水領域と胎児領域との両方を特定することができる。また、特定方法3と特定方法4との少なくとも一方が用いれば、領域特定部60は、羊水領域を特定することができる。また、特定方法5が用いれば、領域特定部60は、胎児領域を特定することができる。従って、羊水領域と胎児領域との両方を表示画像から削除したい場合、ステップS2において特定方法1又は特定方法2が実行される。羊水領域と胎児領域との両方を表示画像から削除したい場合、ステップS2において特定方法3と特定方法4との少なくとも一方と特定方法5とが実行される。また、羊水領域のみを表示画像から削除したい場合、ステップS2において特定方法3又は特定方法4が実行される。また、胎児領域のみを表示画像から削除したい場合、ステップS2において特定方法5が実行される。領域特定部60に実行させる特定処理の方法は、自動的に又はユーザにより操作部80を介して任意に選択可能である。
【0054】
ステップS2が行なわれるとシステム制御部100は、画像生成部50に生成処理を行なわせる(ステップS3)。ステップS3において画像生成部50は、領域特定部60から供給された阻害領域の座標位置のデータに従って阻害領域に対応するカラードプラモード画像のデータが削除された削除カラードプラモード画像のデータを生成する。より詳細には、まず画像生成部50は、領域特定部60から供給された阻害領域の座標位置と同一のカラードプラモード画像上の画素領域を特定する。そして画像生成部50は、特定された画素領域に割り当てられたカラードプラモード画像のデータを削除して削除カラードプラモード画像のデータを生成する。生成された削除カラードプラモード画像のデータは、表示部70に供給される。
【0055】
また、必要に応じて画像生成部50は、領域特定部60から供給された阻害領域の座標位置のデータに従って阻害領域に対応するBモード画像のデータが削除された削除Bモード画像のデータを生成する。より詳細には、まず画像生成部50は、領域特定部60から供給された阻害領域の座標位置と同一のBモード画像上の画素領域を特定する。そして画像生成部50は、特定された画素領域に割り当てられたBモード画像のデータを削除して削除Bモード画像のデータを生成する。生成された削除Bモード画像のデータは、表示部70に供給される。削除Bモード画像のデータを生成するか否かは、予めユーザにより操作部80を介して設定されている。
【0056】
ステップS3が行なわれるとシステム制御部100は、表示部70に表示処理を行なわせる(ステップS4)。ステップS4において表示部70は、画像生成部50から供給された削除カラードプラモード画像のデータに対応する削除カラードプラモード画像を表示する。典型的には、表示部70は、削除カラードプラモード画像に、Bモード画像のデータに対応するBモード画像を重ね合わせて表示する。ステップS3において削除Bモード画像のデータが生成される場合、表示部70は、削除カラードプラモード画像に削除Bモード画像を重ね合わせて表示してもよい。なお、ステップS4における削除カラードプラモード画像とステップS2におけるBモード画像との断面位置及び断面方向は、同一である。
【0057】
図9は、ステップS3における表示レイアウトの一例を示す図である。図9に示すように、ステップS3においては、互いに直交する3断面に関する3つのMPR画像(削除Bモード画像)I1、I2、I3と、所定の視点位置及び視線方向に関する3次元画像(削除Bモード画像)が一画面に表示される。各画像には、阻害領域上のカラーが削除された削除カラードプラモード画像が重ねて表示される。このように、阻害領域上のカラーが削除されるので、阻害領域に関する流速情報が削除カラードプラモード画像上に表示されない。すなわち、胎盤領域に関する流速情報の観察を視覚的に妨げる要因が削除される。結果的に、阻害領域に関するカラーが削除して表示されることで、胎盤領域が強調して表示される。
【0058】
例えば、胎盤表層部の血流を胎盤内部から3次元画像上で観察する場合、視点位置は胎盤内部に関する画素領域に設定され、視線方向は視点位置から胎盤表層部に関する画素領域に向けて設定される。画像生成部60は、設定された視点位置と視線方向とに基づいて削除カラードプラモード画像のデータとBモードボリューム画像のデータとを生成する。これにより胎盤内部から胎盤表層部への視線方向に関する3次元画像のデータが生成される。
【0059】
カラードプラモード画像が3次元画像の場合、阻害領域に関するデータの削除は、ボリュームレンダリングの前であっても後であってもよい。阻害領域データの削除がボリュームレンダリング前の場合、画像生成部50は、カラードプラモードボリュームデータの中から阻害領域データを削除する。そして画像生成部50は、阻害領域データが削除されたカラードプラモードボリュームデータをボリュームレンダリングし、削除カラードプラモード画像のデータを生成する。
【0060】
阻害領域データの削除をボリュームレンダリング後に実行する場合は、例えば、視線位置や視線方向が再設定された場合に適用される。この削除方法はボリュームレンダリングをし直さない第1の方法とし直す第2の方法とがある。第1の方法において画像生成部50は、再設定された視線位置と視線方向とに基づいてカラードプラモードボリュームデータをボリュームレンダリングしカラードプラモード画像のデータを生成する。画像生成部50は、生成されたカラードプラモード画像の中から阻害領域データを削除し、削除カラードプラモード画像のデータを生成する。
【0061】
第2の方法において画像生成部50は、再設定された視線位置と視線方向とに基づいて阻害領域データが削除されたカラードプラモードボリュームデータをボリュームレンダリングし、削除カラードプラモード画像のデータを生成する。
【0062】
また、ステップS3における応用として表示部70は、阻害領域が特定された場合、胎盤領域を観察しやすいBモードの3次元画像を自動的に表示する機能を有する。より詳細には、まず、画像生成部60は、Bモードボリュームデータに含まれる胎盤領域の表面を特定し、特定された表面に基づいて視線方向を特定する。例えば、胎盤領域の表面の垂直方向に視線方向が特定される。そして画像生成部60は、特定された視線方向に基づいてBモードボリュームデータをボリュームレンダリングし、特定された視線方向に関するBモードの3次元画像のデータを生成する。次に画像生成部60は、阻害領域に対応する輝度が削除された3次元画像のデータを生成する。そして表示部70は、阻害領域に対応する輝度が削除された3次元画像を表示する。これにより、胎盤表面が画面表面を向いて表示されるので、ユーザは、阻害領域に隠れていた胎盤表面の形態や流速情報を確認しやすくなる。
【0063】
ステップS3が終了するとシステム制御部100は、胎盤領域の強調表示処理を終了する。
【0064】
上述のように本実施形態に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波画像処理方法、及び超音波画像処理プログラムは、胎盤領域をカラードプラモード画像で表示する際、羊水領域や胎児領域等の阻害領域に生じる流速情報を削除する。従って、カラードプラモード画像上で胎盤領域に生じる流速情報を視覚的に阻害する流速情報を削除できるので、結果的に、胎盤領域に生じる流速情報が強調して表示される。このように胎盤領域が相対的に強調されることで、臨床的には、胎児内の血流、胎児の動きに伴う羊水の動き等に依らず、胎盤内血流や胎盤表層部血流、動静脈シャント等の疾患の有無の確認が容易となる。カラードプラモード画像上で胎盤に関する流速情報と羊水や胎児内に関する流速情報とを混在することがなくなるので、医師等のユーザによる胎内の超音波検査に関する画像診断精度が向上する。
【0065】
また、本実施形態は、Bモード画像上の羊水領域や胎児領域等の阻害領域を削除することも可能である。従って、Bモード画像上で胎盤領域を視覚的に阻害する胎児領域が削除されるので、胎児が胎盤に近接している場合であっても、胎盤領域の観察が容易である。Bモード画像上において阻害領域を削除することで、臨床的には、胎盤表面の形態を容易に観察することができる。従って胎盤の形態観察が容易になるので、ユーザによる胎内の超音波検査に関する画像診断精度が向上する。また、医師等のユーザは、従来のように断面や視線の変更に煩わされることなく、胎内の超音波検査を行うことができる。
【0066】
かくして本実施形態に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波画像処理方法、及び超音波画像処理プログラムは、胎盤の超音波検査における画像診断精度の向上を実現する。また、これに伴い、画像診断時間の短縮が実現する。
【0067】
なお、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行する超音波画像処理プログラムをワークステーション等のコンピュータにインストール(install)し、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできる画像処理プログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0068】
(変形例)
本実施形態においては、阻害領域をBモード画像上で特定するとした。本実施形態に係る変形例は、カラードプラモード画像上において阻害領域を特定する。具体的には、変形例に係る領域特定部60は、カラードプラモード画像の中から動作中の胎児に関する領域(クラッタ(clutter)成分に関する画素領域)を胎児領域として特定する。特定された胎児領域の座標位置のデータは、表示部50に供給される。画像生成部50は、胎児領域に対応するカラーが削除された削除カラードプラモード画像のデータをカラードプラモード画像のデータから生成する。また、画像生成部50は、胎児領域に対応する輝度が削除された削除Bモード画像のデータをBモード画像のデータから生成する。生成された削除カラードプラモード画像や削除Bモード画像のデータは、表示部70に供給される。表示部70は、供給された削除カラードプラモード画像をそのまま表示したり、Bモード画像や削除Bモード画像に重ね合わせて表示したりする。これにより、胎児領域のうちの動作中の領域をカラードプラモード画像やBモード画像から除去することができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
1…超音波診断装置、10…超音波プローブ、20…送受信部、22…送信部、24…受信部、30…走査制御部、40…信号処理部、42…Bモード処理部、44…カラードプラモード処理部、50…画像生成部、60…領域特定部、70…表示部、80…操作部、90…記憶部、100…システム制御部、200…超音波画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊婦の胎内に関する走査領域に超音波プローブを介してBモード走査とカラードプラモード走査とを実行する超音波診断装置において、
前記カラードプラモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関する第1カラードプラモードデータを生成し、前記Bモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関する第1Bモードデータを生成する第1生成部と、
前記第1Bモードデータの信号強度分布又は輝度分布に基づいて羊水領域と胎児領域との少なくとも一方を含む特定領域を特定する特定部と、
前記第1カラードプラモードデータのうちの前記特定領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成する第2生成部と、
前記第2カラードプラモードデータに対応するカラードプラモード画像と前記第1Bモードデータに対応するBモード画像とを重ねて表示する表示部と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記第2生成部は、前記特定領域に対応するデータが削除された第2Bモードデータを生成し、
前記表示部は、前記第2Bモードデータに対応するBモード画像と前記カラードプラモード画像とを重ねて表示する、
請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記特定領域に特有の信号強度分布又は輝度分布に基づいて前記第1Bモードデータの中から前記特定領域を特定する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記第1Bモードデータ上の複数の局所領域の各々について、前記局所領域内の信号強度分布又は輝度分布を表す指標を計算し、前記指標に基づいて前記特定領域を特定する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記第1Bモードデータ上における位置と、信号強度又は輝度値とに基づいて前記特定領域を特定する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記第1Bモードデータ上における信号強度又は輝度値と領域の大きさとに基づいて前記特定領域を特定する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記特定部は、ユーザからの指示に従って前記第1Bモードデータ上の前記特定領域に設定された特定画素の信号強度又は輝度値の類似性に基づいて、前記特定領域を特定する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記特定部は、ユーザからの指示に従って前記第1Bモードデータ上の前記特定領域に設定された特定画素と前記特定領域に特有の信号強度分布又は輝度分布とに基づいて、前記特定領域を特定する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記カラードプラモード画像と前記Bモード画像との視点位置は、前記胎内に関する画素領域に設定され、前記カラードプラモード画像と前記Bモード画像との視線方向は、前記視点位置から前記妊婦の胎盤表層部に関する画素領域を向く、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
妊婦の胎内に関する第1Bモードデータと第1カラードプラモードデータとを記憶する記憶部と、
前記第1Bモードデータの信号強度分布又は輝度分布に基づいて羊水領域と胎児領域との少なくとも一方を含む特定領域を特定する特定部と、
前記第1カラードプラモードデータのうちの前記特定領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成する第2生成部と、
前記第2カラードプラモードデータに対応するカラードプラモード画像と前記第1Bモードデータに対応するBモード画像とを重ねて表示する表示部と、
を具備する超音波画像処理装置。
【請求項11】
前記第2生成部は、前記特定領域に対応するデータが削除された第2Bモードデータを生成し、
前記表示部は、前記第2Bモードデータに対応するBモード画像と前記カラードプラモード画像とを重ねて表示する、
請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項12】
前記カラードプラモード画像と前記Bモード画像との視点位置は、前記胎内に関する画素領域に設定され、前記カラードプラモード画像と前記Bモード画像との視線方向は、前記視点位置から前記妊婦の胎盤表層部に関する画素領域を向く、請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項13】
妊婦の胎内に関する第1Bモードデータの信号強度分布又は輝度分布に基づいて羊水領域と胎児領域との少なくとも一方を含む特定領域を特定し、
前記胎内に関する第1カラードプラモードデータのうちの前記特定領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成し、
前記第2カラードプラモードデータに対応するカラードプラモード画像と前記第1Bモードデータに対応するBモード画像とを重ねて表示する、
ことを具備する超音波画像処理方法。
【請求項14】
前記特定領域に対応するデータが削除された第2Bモードデータを生成し、
前記第2Bモードデータに対応するBモード画像と前記カラードプラモード画像とを重ねて表示する、
ことをさらに具備する請求項13記載の超音波画像処理方法。
【請求項15】
前記カラードプラモード画像と前記Bモード画像との視点位置は、前記胎内に関する画素領域に設定され、前記カラードプラモード画像と前記Bモード画像との視線方向は、前記視点位置から前記妊婦の胎盤表層部に関する画素領域を向く、請求項13記載の超音波画像処理方法。
【請求項16】
Bモード走査により生成されたBモード画像上の複数の位置に複数の局所領域を設定し、
前記複数の局所領域の各々の輝度値の分散値を算出し、
前記算出された分散値と予め設定された閾値とを比較し、前記閾値よりも大きい分散値を有する局所領域を前記複数の局所領域の中から特定し、
前記特定された局所領域の画素領域を前記Bモード画像から削除する、
ことを具備する超音波画像処理方法。
【請求項17】
Bモード走査により生成されたBモード画像に含まれる複数の画素の中から、予め設定した閾値より小さい輝度値を有する画素を特定し、
前記特定された画素よりも、走査線の深さ方向に沿って深い位置にある画素領域を前記Bモード画像から削除する、
ことを具備する超音波画像処理方法。
【請求項18】
Bモード走査により生成されたBモード画像の中から、前記Bモード画像の平均輝度値より低い輝度値を有する画素領域を特定し、
前記特定された画素領域の大きさを算出し、
前記算出された大きさと予め設定された閾値とを比較し、前記算出された大きさが前記閾値よりも大きい場合、前記画素領域を前記Bモード画像から削除する、
ことを具備する超音波画像処理方法。
【請求項19】
Bモード走査により生成されたBモード画像の羊水領域上にユーザからの指示に従って始点を設定し、
前記設定された始点から周囲の画素を探索して、胎盤領域が取り得る最低輝度値と前記羊水領域が取り得る最高輝度値との間の閾値よりも小さい画素を統合し、
前記統合された画素を含む画素領域を前記Bモード画像から削除する、
ことを具備する超音波画像処理方法。
【請求項20】
Bモード走査により生成されたBモード画像の胎児領域上にユーザからの指示に従って始点を設定し、
前記設定された始点から周囲の画素を探索し、前記胎児領域が取り得る最低輝度値よりも大きい輝度値を有する画素を特定し、
前記特定された画素を含む画素領域を前記Bモード画像から削除する、
ことを具備する超音波画像処理方法。
【請求項21】
コンピュータに、
被検体の胎内に関するBモードデータの信号強度分布又は輝度分布に基づいて羊水領域と胎児領域との少なくとも一方を含む特定領域を特定する機能と、
前記胎内に関する第1カラードプラモードデータのうちの前記特定領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成する機能と、
前記第2カラードプラモードデータに対応する画像と前記Bモードデータに対応する画像とを重ねて表示する機能と、
を実現させるための超音波画像処理プログラム。
【請求項22】
妊婦の胎内に関する走査領域に超音波プローブを介してBモード走査とカラードプラモード走査とを実行する超音波診断装置において、
前記カラードプラモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関する第1カラードプラモードデータを生成し、前記Bモード走査時における前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記走査領域に関するBモードデータを生成する第1生成部と、
前記第1カラードプラモードデータを利用して胎児領域を特定する特定部と、
前記第1カラードプラモードデータのうちの前記胎児領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成する第2生成部と、
前記第2カラードプラモードに対応する画像と前記Bモードデータに対応する画像とを重ねて表示する表示部と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項23】
妊婦の胎内に関するBモードデータと第1カラードプラモードデータとを記憶する記憶部と、
前記第1カラードプラモードデータを利用して胎児領域を特定する特定部と、
前記第1カラードプラモードデータのうちの前記胎児領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成する生成部と、
前記第2カラードプラモードデータに対応する画像と前記Bモードデータに対応する画像とを重ねて表示する表示部と、
を具備する超音波画像処理装置。
【請求項24】
コンピュータに、
妊婦の胎内に関する第1カラードプラモードデータを利用して胎児領域を特定する機能と、
前記第1カラードプラモードデータのうちの前記胎児領域に対応するデータが削除された第2カラードプラモードデータを生成する機能と、
前記第2カラードプラモードに対応する画像と前記胎内に関するBモードデータに対応する画像とを重ねて表示する機能と、
を実現させるための超音波画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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