超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラム
【課題】診断対象の全体を包含する広い視野のボリュームデータを取得し、これを用いて視野の広い超音波画像を提供することができる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】所定の診断領域に対応する複数のボリュームデータを位置合わせをしながら空間的につなぎ合わせて当該診断領域に関する大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて大視野超音波画像を生成し表示する。
【解決手段】所定の診断領域に対応する複数のボリュームデータを位置合わせをしながら空間的につなぎ合わせて当該診断領域に関する大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて大視野超音波画像を生成し表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に超音波パルスを送信し、当該被検体内で生じた超音波エコーを受信して各種処理を行なうことにより被検体内の生体情報を得る超音波診断装置に関するものであり、特に超音波ボリュームデータをリアルタイムで取得することが可能な超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された圧電振動子(超音波振動子)から被検体内に超音波パルスを照射し、被検体内で生じた超音波エコーを圧電振動子で受信して各種処理を行なうことにより被検体内の組織の断層画像や血流画像等の生体情報を得る装置である。
【0003】
この様な超音波診断装置は、近年、計測部位を立体的に可視化することができるものへと進化を遂げている。すなわち、超音波振動子が一次元的に配列された一次元アレイプローブを機械的に揺動させながら被検体内を超音波走査することにより、又は超音波振動子が二次元的に配列された二次元アレイプローブを用いて被検体内を三次元的に超音波走査することにより、超音波画像のボリュームデータを取得することができる。また、この様なボリュームデータの取得を繰り返し実行することで時系列のボリュームデータを取得し、リアルタイムで表示することが可能である。
【0004】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−51360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、超音波診断装置を用いて一度の超音波走査で取得できるボリュームデータの視野は、X線コンピュータ断層撮影蔵置、磁気共鳴イメージング装置のような他の医用画像装置に比して狭い。従って、臓器全体の情報を得ることができない場合があり、観察上の大きな制約となっている。そのため、臓器の観察できている領域及び観察できていない領域の認識は主観的となってしまい、検査の術者依存の一因にもなっている。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、診断対象の全体を包含する広い視野のボリュームデータを取得し、これを用いて視野の広い超音波画像を提供することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査し、複数のボリュームデータを逐次取得する超音波走査手段と、逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
請求項12に記載の発明は、被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータを記憶する記憶手段と、逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、を具備することを特徴とする超音波画像処理装置である。
【0011】
請求項13に記載の発明は、コンピュータに、超音波プローブを移動させながら被検体の診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結させ、大視野ボリュームデータを生成させるボリュームデータ生成機能と、前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成させる画像生成機能と、を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
以上本発明によれば、診断対象の全体を包含する広い視野のボリュームデータを取得し、これを用いて視野の広い超音波画像を提供することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図4】図4は、ボリュームデータの再構成、再構成されたボリュームデータを用いたレンダリング処理の流れを説明するための図である。
【図5】図5は、モニターに表示されたMPR像及びVR像の一例を示した図である。
【図6】図6は、位置合わせ用ROIの設定画面を説明するための図である。
【図7】図7は、超音波プローブの移動を伴う四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図8】図8は、逐次生成されるボリュームデータ同士の位置合わせ処理を説明するための図である。
【図9】図9は、大視野超音波画像の例を示した図である。
【図10】図10は、大視野超音波画像の例を示した図である。
【図11】図11は、超音波プローブの持ち替えを伴う四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第2の実施形態に係る位置合わせ用ROIの設定画面の一例を示した図である。
【図14】図14は、第2の実施形態に係る大視野超音波画像の表示形態を説明するための図である。
【図15】図15は、第2の実施形態に係る大視野超音波画像の表示形態を説明するための図である。
【図16】図16は、第3の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図17】図17は、第4の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図18】図18は、第5の実施形態に係る空間コンパウンドを説明するための図である。
【図19】図19は、第5の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図20】図20は、四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図21】図21は、診断対象に関する重複的な複数のボリュームデータの取得を説明するための図である。
【図22】図22は、空間コンパウンド処理を説明するための図である。
【図23】図23は、空間コンパウンド処理に用いるデータの選別を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態乃至第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置11は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、画像メモリ26、画像合成ユニット27、制御プロセッサ(CPU)28、内部記憶ユニット32、インターフェースユニット34、画像処理部31を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0016】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
なお、本超音波装置が具備する超音波プローブ12は、被検体の三次元領域を超音波走査可能なものである。そのため、超音波プローブ12は、振動子をその配列方向の直交方向に沿って機械的に揺動させ、三次元領域を超音波走査する構成、又は二次元的に配列された二次元振動素子を用いて電気的制御により三次元領域を超音波走査する構成等を有する。前者の構成を採用する場合、被検体の三次元的走査は揺動回路(揺動機構)によって行われるため、検査者はプローブ本体を被検体に接触させるだけで、自動的に複数の二次元断層像を取得することができる。制御された揺動速度から断面間の正確な距離も検知できる。また、後者の構成を採用する場合には、原理的には、従来の二次元断層像を取得するのと同じ時間で、三次元領域を超音波走査することができる。本実施形態では、説明を具体的にするため、超音波プローブ12は、機械的揺動によって三次元領域を超音波走査するものとする。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。例えば、操作者が入力装置13の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、当該超音波診断装置は一時停止状態となる。
【0019】
モニター14は、スキャンコンバータ25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報(通常のBモード画像)、血流情報(平均速度画像、分散画像、パワー画像等)、広域超音波画像、狭域超音波画像、任意断面超音波画像等を所定の形態で表示する。
【0020】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0021】
なお、超音波送信ユニット21は、制御プロセッサ30の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0022】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0023】
Bモード処理ユニット23は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成ユニット25においてスキャンコンバートされ、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター14に表示される。
【0024】
ドプラ処理ユニット24は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0025】
画像生成ユニット25は、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24から受け取った超音波画像データを、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示画像としての超音波画像データを生成する。また、画像生成ユニット25は、超音波画像データを用いてボリュームデータを再構成し、再構成されたボリュームデータを用いて所定のレンダリング処理を実行する。
【0026】
大視野データ生成ユニット26は、後述する大視野三次元超音波画像生成機能を実現する。この大視野データ生成ユニット26の動作については、後で詳しく説明する。
【0027】
画像メモリ28は、複数の超音波画像を例えばフレーム単位で記憶するシネメモリである。
【0028】
画像合成ユニット27は、画像生成ユニット25又は大視野データ生成ユニット26から受け取った画像を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成し、ビデオ信号としてモニター14に出力する。
【0029】
制御プロセッサ30は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ30は、内部記憶ユニット32から大視野三次元超音波画像生成機能を実現するための専用プログラム、所定のスキャンシーケンスを実行するための制御プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0030】
内部記憶ユニット32は、三次元領域を連続的に超音波走査し、時系列のボリュームデータを取得するためのスキャンシーケンス、後述する大視野三次元超音波画像生成機能を実現するための専用プログラム、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラム、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、ボディマーク生成プログラムその他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶ユニット32のデータは、インターフェース回路30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0031】
インターフェースユニット34は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインターフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェースユニット34よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0032】
(大視野三次元超音波画像生成機能)
次に、本超音波診断装置1が有する、大視野三次元超音波画像生成機能について説明する。この機能は、所定の診断領域に対応する複数のボリュームデータを位置合わせをしながら空間的につなぎ合わせて当該診断領域に関する大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて大視野超音波画像を生成し表示するものである。
【0033】
図2は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成機能に従う処理(大視野三次元超音波画像生成処理)の流れを示したフローチャートである。同図に従って、大視野三次元超音波画像生成処理において実行される各処理の内容について説明する。
【0034】
[患者情報等の入力/撮影条件等の設定:ステップS1a]
まず、入力装置13を介して、患者情報等の各種情報が入力され、ボリュームレートや画角等の4次元ボリュームスキャンに関する撮影条件が設定される。(ステップS1a)。ボリュームレートは、制御プロセッサ30において画角等の値に応じて推奨値が計算され、自動的に設定される。このとき、リアルタイム性を維持するようなボリュームレートが自動的に計算される。
【0035】
[四次元通常視野モードによる超音波画像の取得:ステップS2a]
次に、設定された撮影条件に従って、四次元通常視野モード(すなわち、ボリュームデータの空間的なつなぎ合わせを行わない通常のモード)による超音波画像の取得が実行され、表示される(ステップS2a)。また、表示された超音波画像に基づいて、超音波プローブ12の位置決めが実行され(ステップS21a)、決定された位置に対応する超音波画像に対して、位置合わせ用のROI(Region Of Interest:関心領域)が設定される(ステップS22a)。
【0036】
すなわち、図3に示すように、メカニカル四次元プローブや二次元アレイプローブである超音波プローブ12を用いて被検体内の三次元領域を超音波走査(例えば、腹部用のメカニカル四次元プローブで肝臓を、連続的に超音波走査)し、これを繰り返し実行することで、複数の断層面ビームデータを時系列で収集する。図4に示すように、収集された複数の断層面ビームデータはスタックデータであり、各々異なる座標系上にある。画像生成ユニット25は、断層面ビームデータに共通に使用できる座標系を導入し、例えば等方的なボクセルから構成される3次元データ(ボクセルボリュームデータ)を再構成(リサンプリング)する。また、この再構成処理を各時相に対応する複数の断層面ビームデータに対して実行することで、時系列なボリュームデータ(四次元データ)が生成される。
【0037】
なお、等方的なボクセルデータは、3次元データの一例であり、当該例に拘泥されない。例えば処理アルゴリズムにより、3次元データを非等方なボクセルデータや、3次元ビームデータとしてもよい。
【0038】
画像生成ユニット25は、取得された各ボリュームデータを二次元面上に投影表示するためのレンダリング処理を実行する。本発明の技術的思想は、レンダリング手法に拘泥されない。典型的なレンダリング手法として、例えば次のものを採用することができる。
【0039】
(MPR法:Multi-Planar Reconstruction/ Reformation)
任意方向の断層像を作成する手法で、指定した断層面近傍のボクセル値を補間することで画素値を求める。本手法は通常の超音波撮像では見えない断面を観測できるという点で有用である。通常、立体構造を把握するために、指定断面とその断面に直交する2断面を合わせた3断面を同時表示する(図5参照)。
【0040】
(MIP法:Maximum Intensity Projection)
視点と投影面間の直線上に存在するボクセル値を調べ、その中の最大値を投影面に投影する表示手法である。カラードプラ法による血管像や超音波造影エコー法における造影エコー像の立体描出などには有用である。ただし、本手法では奥行き情報が消えるため、角度を変えて作成した像を回転させてシネ表示する必要がある。
【0041】
(VR法:Volume Rendering)
本手法は仮想スクリーンから一様な光が発せられ、その光がボクセル値によって表現される三次元物体によって反射・減衰・吸収されるという仮想的な物理現象をシミュレーションしたもので、スタート点である仮想スクリーン上の点から、一定のステップ間隔で透過光、反射光を更新する。この更新処理時にボクセル値に応じた不透明度(Opacity)を設定することで、表面から内部構造の表現まで多様な表現ができる(図4等参照)。この手法は、特に微細構造の抽出に優れている。
【0042】
なお、本実施形態では、説明を具体的にするため、画像生成ユニット25においてMPR法、VR法により、各手法に対応する超音波画像が生成されるものとする。MPR法、VR法により生成された各超音波画像は、モニター14の画面に、例えば図5に示すような形態で表示される。
【0043】
操作者は、リアルタイムで表示される超音波画像を観察しながら、超音波プローブ12の位置決めを行い、検査のために好適な超音波画像を取得する(ステップS21)。また、超音波プローブ12の移動方向(本実施形態では、図6、図7の矢印方向)を考慮して、位置合わせ用のROIが、入力装置13を介して表示された超音波画像(本実施形態の場合、MPR像)条に例えば図6に示すように設定する(ステップS22)。この様に設定されたROIは、当該超音波画像に対応するボリュームデータ上に設定されると共に、以降取得される全てのボリュームデータについても、対応する領域に自動設定される。なお、ROIの形状は、二次元の矩形内の場合も三次元の直方体の場合もある。任意の三次元形状により、状況に応じて好適な形状を使用できるようにしてもよい。
【0044】
[四次元大視野モードによる超音波画像の取得:ステップS3a]
次に、設定された位置合わせ用のROIを用いて、四次元大視野モードによる超音波画像の取得が実行される(ステップS3a)。
【0045】
例えば、腹部用のメカニカル四次元プローブである超音波プローブ12を用いて、肝臓に関して時間的に連続的な3次元走査(すなわち、4次元走査)が実行される。モニター14には、図5又は図6に示したようなMPR法での直交3断面とVR表示(右下像)がされる。このとき、図超音波プローブ12を、図7(a)及び図7(b)に示すように揺動方向を延長するように、手動にて体表を移動させる。この移動に伴って、移動位置に対応するボリュームデータが時系列的に取得される。或いは、図7(c)に示すように、呼吸等により臓器が動き、相対的に超音波プローブ12により取得されたボリュームデータが移動する。
【0046】
大視野データ生成ユニット26は、超音波プローブ12の移動により逐次生成される各ボリュームデータの位置合わせ処理を行うことでボリュームデータ間を連結させ、大視野ボリュームデータを生成する(ステップS31a)。この位置合わせ処理は、ステップS22において設定されたROIを用いて実行される。すなわち、大視野データ生成ユニット26は、例えば図8(a)に示すような時間的に連続する(隣り合う)ボリュームデータ1及びボリュームデータ2における、ステップS22において設定されたROI内のボクセルデータを用いて、例えば、「類似度に関係する特徴量の計算」を実行する。また、大視野データ生成ユニット26は、例えば図8(b)に示すように、平行移動、回転移動によってボリュームデータ1に対するボリュームデータ2の相対的位置をずらす位置ずれ補正を実行し、位置ずれ補正されたデータ間で「位置ずれ評価関数」を計算する。大視野データ生成ユニット26は、評価関数により補正が良好であるか否かを判定し、良好であると判定し場合には、その「位置ずれ量」を採用して、ボリュームデータ同士を連結させる。一方、評価関数により補正不十分と判定した場合は、大視野データ生成ユニット26は、さらに平行移動、回転移動によってボリュームデータ1に対するボリュームデータ2の相対的位置をずらす位置ずれ補正を実行し、位置ずれ補正されたデータ間で「位置ずれ評価関数」を計算する。以降、評価関数により補正が良好と判定されるまで、位置ずれ補正の評価を繰り返す。
【0047】
なお、位置ずれ評価関数は、どの様なものであってもよい。好適な一例としては、相互情報量最大法を挙げることができる。相互情報量最大法では、位置合わせを行う二つのボリュームの中に定義された対象領域を、それぞれR(x,y,z)、F(x,y,z)とし、二つの対象領域の同じ位置の画素値から生成される二次元ヒストグラムをhistgramRF(r,f)とおく。このとき、対象領域の画素値がとる確率密度関数pR(r)、pF(r)、pRF(r,f)は、上で定義したヒストグラムから、それぞれ次の様に求められる。
【数1】
【0048】
ただし、VはR,Fが共に存在する画素位置の総数である。
【0049】
これらの確率密度関数から、相互情報量T(F;R)は以下の様に定義される。
【数2】
【0050】
対象画像に対し、最低、x方向、y方向、z方向の回転と平行移動の6つのパラメータ、必要であれば3つのせん断方向も含めた9つのパラメータで座標変換する。この座標変換をαとおくと、返還後の対象画像はα(F)と現すことができる。
【0051】
上記で定義したα(F)とRとの相互情報量T(α(F);R)を最大にするα、つまり、次の式で示されるαが求めたい座標変換である。
【数3】
【0052】
これは解析的に解くことができないため、何らかの最適化手法を用いて解く。例えば、downhill-symplex法やPowellの方法を用いる。なお、相互情報量最大法については、例えば特願2007−287846、F.Maes, "Multimodality Image Registration by Maximization of Mutual Information" IEEE Trans, Med. Img., vol. 16, pp. 187-198, Apr. 1997等に詳しい。
【0053】
以降、大視野データ生成ユニット26は、超音波プローブ12の移動に伴って時系列に取得される複数のボリュームデータに対して同様な位置合わせ処理を行うことでボリュームデータ間を逐次連結させ、大視野ボリュームデータを生成する。
【0054】
次に、画像生成ユニット25は、生成された大視野ボリュームデータを二次元面上に投影表示するために、MPR法、VR法によるレンダリング処理を実行する(ステップS32a)。レンダリング処理によって生成された大視野超音波画像は、モニター14の画面に所定の形態で表示される(ステップS33a)。
【0055】
図9、図10は、大視野超音波画像の所定の形態の例を示した図である。図9(a)に示すように、コロナル像(体表と平行面)に設定されたROIを用いて位置合わせされ連結されたボリュームデータより、図9(b)に示すような(ボリュームデータ1に対応するコロナル像とボリュームデータ2に対応するコロナル像との)大視野コロナル像が生成され、リアルタイムで表示されることにある。さらに、収集されるボリュームデータ間の位置合わせ及び連結がリアルタイムで実行され、図9(b)に示す大視野コロナル像は、超音波プローブ12の移動に伴って、例えば図10に示すように、さらに大視野のコロナル像として更新される。
【0056】
なお、本実施形態では、隣り合うボリュームデータの重複する領域にROIを設定し、これを用いて位置合わせを行うものとした。これは、ROIを設定しない場合に比してデータ量を減少させ演算負担を軽減させるためである。また、時相による臓器の移動による変形で、重ね合わない領域が発生する場合もあり、係る場合にROIを設定しないと、好適な位置合わせを達成できないこともある。ROIの設定は、リアルタイム処理の点と正確な位置合わせの点で有効であると言える。しかしながら、本発明の技術的思想は、この様なROI設定に拘泥されない。例えば、ボリュームレートが十分に高く、隣りあうボリュームデータ間において重複する領域が多い場合には、ROIを設定しなくても好適な位置合わせ処理を実現することができる。
【0057】
[フリーズ操作の受付/大視野超音波画像の保存:ステップS4a]
表示された大視野超音波画像を観察し、入力装置13を介して任意のタイミングでフリーズボタンが操作されると、表示中の大視野超音波画像(すなわち、MPR像、VR像)が内部記憶ユニット32に自動的に保存される。保存された大視野超音波画像は、事後的に、任意のタイミングで再生することが可能である。
【0058】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
本超音波診断装置によれば、所定の診断領域に対応する複数のボリュームデータを位置合わせをしながら空間的につなぎ合わせて当該診断領域に関する大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて大視野超音波画像を生成し表示することができる。従って、超音波画像診断においても、臓器全体を映像化することができると共に、臓器の観察できている領域と観察できていない領域とを主観的に判定する必要性がなくなり、検査の術者依存性を低減させることができる。その結果、超音波画像診断の質の向上に寄与することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
先の第1の実施形態では、超音波プローブ12を被検体表面に沿って連続的に移動させながら四次元スキャンを実行し、これによって得られた複数のボリュームデータを位置合わせし空間的に連結して大視野ボリュームデータを生成するものであった。これに対し、本実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば図11に示すように、肝臓右葉を足側方向に走査した後、超音波プローブ12を持ち替えてその向きを変更し、肝臓左葉方向に走査するといったような、被検体表面上での超音波プローブ12の連続的移動が一方向のみではない場合(すなわち、所定の診断対象について超音波プローブ12を複数の方向に移動させながら複数のボリュームデータを取得した場合)において、大視野ボリュームデータを生成する例である。
【0061】
図12は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。すなわち、例えば超音波プローブ12を足側方向に向けて移動させながら、既述のステップS1a〜ステップS3aと同様の手法により四次元スキャンが実行され、肝臓右葉に関する複数のボリュームデータが取得される(ステップS1b〜ステップS3b)。
【0062】
次に、超音波プローブ12をステップS3bとは異なる方向に移動(例えば肝臓左葉方向)させながら四次元スキャンを行って得られるボリュームデータとステップS3bにおいて取得されたボリュームデータとの重複領域に、位置合わせのためのROIが設定される(ステップS4b)。
【0063】
すなわち、まず、ステップS3bでの四次元大視野モード中に、所望の位置で超音波プローブ12が止められ、入力装置13から「中断」指示、及び四次元通常視野モードへの移行指示が入力装置13から入力される。制御プロセッサ30は、これらの指示入力に応答して、中断指示が入力された時点の大視野超音波画像(コロナル像)と、四次元通常視野モードによってリアルタイムで取得されるCモード像(コロナル像)を、例えば図13(a)に示すような形態でモニター14に表示する(ステップS41b)。表示された大視野超音波画像及びCモード像を規準として超音波プローブ12の向きが変更されると共に(ステップS42b)、図13(a)に示すように、視野超音波画像及びCモード像の重複領域に位置合わせ用のROIが入力装置13を介して設定される(ステップS43b)。
【0064】
次に、新たな超音波プローブ12の新たな移動方向させながら、設定された位置合わせ用のROIを用いた四次元大視野モードによる超音波画像の取得が実行される(ステップS5b)。このとき、モニター14に表示される視野超音波画像は、超音波プローブ12の新たな方向への移動に伴ってボリュームデータの位置合わせ、連結が自動的に実行される。従って、モニター14に表示される視野超音波画像は、超音波プローブ12の移動に伴って、例えば図14(a)に示す状態から図14(b)に示す様に、新たな方向についてコロナル像が連結され逐次更新される。結果、視野超音波画像は、肝臓右葉を足側方向に走査してる場合には図15(a)に示す形態でリアルタイムに表示され、その後、超音波プローブ12が持ち帰られて肝臓左葉方向に沿って走査されている場合には、図15(b)に示す形態にてリアルタイムに表示されることになる。
【0065】
次に、入力装置13を介して任意のタイミングでフリーズボタンが操作されると、表示中の大視野超音波画像(すなわち、MPR像、VR像)が内部記憶ユニット32に自動的に保存される(ステップS6b)。保存された大視野超音波画像は、事後的に、任意のタイミングで再生することが可能である。
【0066】
以上述べた構成によれば、所定の診断対象について超音波プローブ12を複数の方向に移動させながら複数のボリュームデータを取得した場合(すなわち、取得したボリュームデータが時間的に連続するものでない場合)においても、第1の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0067】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理を、超音波画像取得時に(すなわちリアルタイムで)実行するのではなく、事後的に超音波画像処理装置において実行する例である。
【0068】
図16は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。同図の処理と図2の処理とを比較した場合、時間的及び空間的に連続するボリュームデータの取得(すなわち四次元スキャン)を行う代わりに、内部記憶ユニット32に記憶されたボリュームデータを読み出して再生する点が異なる。その他の処理は、図2の例と実質的に同様である。
【0069】
以上述べた構成によっても、第1の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0070】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第2の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理を、超音波画像取得時に(すなわちリアルタイムで)実行するのではなく、事後的に超音波画像処理装置において実行する例である。
【0071】
図17は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。同図の処理と図12の処理とを比較した場合、超音波プローブ12の向きを変更する等により、時間的には連続しないが空間的には重複領域を有する複数のボリュームデータを、内部記憶ユニット32から読み出して再生する点が異なる。その他の処理は、図12の例と実質的に同様である。
【0072】
以上述べた構成によっても、第2の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0073】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置1は、大視野量音波画像生成処理を行う場合において、図18に示すように、重複して超音波走査された領域が存在する場合、当該重複領域に関する複数のボクセルデータ等を用いて空間コンパウンドを実行することにより、スペックル低減、アーチファクト低減を実現するものである。
【0074】
なお、本実施形態に係る手法は、第1乃至第4のいずれの実施形態に係る大視野量音波画像生成処理についても適用可能である。以下においては、説明を具体的にするため、本実施形態に係る手法を第1の実施形態に係る大視野量音波画像生成処理について適用した場合の例について説明する。
【0075】
図19は、第5の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。まず、第1の実施形態と同様の手法により、患者情報等の各種情報が入力され、ボリュームレートや画角等の4次元ボリュームスキャンに関する撮影条件が設定されると共に(ステップS1c)、設定された撮影条件に従って、四次元通常視野モード(すなわち、ボリュームデータの空間的なつなぎ合わせを行わない通常のモード)による超音波画像の取得が実行され、位置合わせ用のROI設定が実行される(ステップS2c)。
【0076】
次に、図20(a)、(b)に示すように超音波プローブ12を移動させながら連続走査することで、複数のボリュームデータが取得される。また、図21(a)、(b)に示すように、超音波プローブ12の位置や向きを変えて、同様に移動させながら連続走査することで、診断対象(図の例では、肝臓)に関する重複的な複数のボリュームデータが逐次取得される。大視野データ生成ユニット26は、逐次取得される複数のボリュームデータの位置合わせ処理を、ステップS2cにおいて設定されたROIを用いて実行する(ステップS31c)。
【0077】
次に、大視野データ生成ユニット26は、複数のボリュームデータ間において重複領域が存在するか否かを判定し、図22(a)に示すように重複領域が存在すると判定した場合には、図22(b)に示すような当該重複領域内の複数のボクセルデータに対して空間コンパウンド(例えば平均化)処理を行う(ステップS32c)。
【0078】
なお、平均化は単なる一例であり、空間コンパウンド処理は、当該例に拘泥されない。また、重複領域の複数のボクセルデータ中に、感度が極端に異なるデータ、もしくはシャドーやアーチファクトなどにより輝度が大きく異なるデータが存在する場合がある。この様なデータを空間コンパウンドに使用すると、画質劣化の要因となる。従って、大視野データ生成ユニット26は、例えば重複領域の平均輝度および分散より求めたある一定の閾値との関係から空間コンパウンドに好適か否かを判別し、好適でないと判定した場合には、データをボクセル単位(或いはピクセル単位)で除外し、残ったデータを用いて空間コンパウンド処理を実行するようにする(図23(a)、(b)、(c))。なお、空間コンパウンドに好適か否かを判別は、当該例に拘泥されないことは、言うまでもない。
【0079】
次に、大視野データ生成ユニット26は、空間コンパウンド処理の対象となった領域と対象となっていない領域との境界付近に対して、境界を目立たなくさせるための境界修正処理(例えば平滑化処理。しかし、平滑化処理に拘泥されない。)を実行する(ステップS33c)。これは、空間コンパウンド処理の対象となった領域と対象となっていない領域との境界付近は、画像上で段差として表れてしまい画質劣化の要因となるためである。
【0080】
次に、画像生成ユニット25は、空間コンパウンド処理等が施された大視野ボリュームデータを二次元面上に投影表示するために、MPR法、VR法によるレンダリング処理を実行する(ステップS34c)。レンダリング処理によって生成された大視野超音波画像は、モニター14の画面に所定の形態で表示される(ステップS35c)。表示された大視野超音波画像を観察し、入力装置13を介して任意のタイミングでフリーズボタンが操作されると、表示中の大視野超音波画像(すなわち、MPR像、VR像)が内部記憶ユニット32に自動的に保存される(ステップS4c)。保存された大視野超音波画像は、事後的に、任意のタイミングで再生することが可能である。
【0081】
なお、上記空間コンパウンド処理は、ボクセルデータ以外のデータ(例えば、Bモード処理ユニット23の対数増幅器を通った後のRFデータや、検波器を通った後の生データ等)に対して実行するようにしてもよい。また、コンパウンド処理を行う対象のデータ数を増やす目的で被検体の計測部位の同じ位置を何度もスキャンすることで、コンパウンド効果が増強し更なる画質の向上が達成される。これは、スキャン回数が多ければ多いほど画質向上効果がある。
【0082】
また、スキャン方式に関しては、超音波プローブ12を連続的に走査するのではなく、スキャンごとにウィンドウを変えて、複数ウィンドウからのスキャンにより得られた複数のデータに対しても同様の位置合わせ処理およびコンパウンド処理などを行うことができる。この際は、被検体表面の対象部位のある位置に超音波プローブ12をあて、スキャン中にデータ保存ボタンを押すなどの動作をして保存処理を行う必要がある。その後プローブを当てる位置を変え、別ウィンドウから同様にスキャンし、データ保存動作を行う。これを複数回繰り返すことで、広範囲のデータを得ることができる。
【0083】
以上述べた構成によれば、シャドー、スペックルパタン、アーチファクト等のノイズが低減された大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて高画質の大視野超音波画像を提供することができる。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0085】
(1)各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0086】
(2)前記各実施形態においては、位置合わせ用のROIを設定を行う場合に、コロナル像を用いた。しかしながら、ROI設定に用いる断層像に限定はなく、例えばサジタル像を用いて、所望の血管走行が含まれるような同一の深さROIを設定するようにしてもよい。
【0087】
(3)前記各実施形態においては、評価関数を用いてボリューム間の位置合わせ処理を行った。これに対し、各ボリュームデータを取得する際に、例えば超音波プローブ等の位置及びその位置を規準とする各ボリュームデータの位置情報を取得しておき、これに基づいてボリューム間位置合わせを行うようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上本発明によれば、診断対象の全体を包含する広い視野のボリュームデータを取得し、これを用いて視野の広い超音波画像を提供することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを実現することができる。
【符号の説明】
【0090】
10…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…大視野データ生成ユニット、27…画像合成ユニット、28…画像メモリ、30…制御プロセッサ、32…内部記憶ユニット、34…インタフェースユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に超音波パルスを送信し、当該被検体内で生じた超音波エコーを受信して各種処理を行なうことにより被検体内の生体情報を得る超音波診断装置に関するものであり、特に超音波ボリュームデータをリアルタイムで取得することが可能な超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された圧電振動子(超音波振動子)から被検体内に超音波パルスを照射し、被検体内で生じた超音波エコーを圧電振動子で受信して各種処理を行なうことにより被検体内の組織の断層画像や血流画像等の生体情報を得る装置である。
【0003】
この様な超音波診断装置は、近年、計測部位を立体的に可視化することができるものへと進化を遂げている。すなわち、超音波振動子が一次元的に配列された一次元アレイプローブを機械的に揺動させながら被検体内を超音波走査することにより、又は超音波振動子が二次元的に配列された二次元アレイプローブを用いて被検体内を三次元的に超音波走査することにより、超音波画像のボリュームデータを取得することができる。また、この様なボリュームデータの取得を繰り返し実行することで時系列のボリュームデータを取得し、リアルタイムで表示することが可能である。
【0004】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−51360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、超音波診断装置を用いて一度の超音波走査で取得できるボリュームデータの視野は、X線コンピュータ断層撮影蔵置、磁気共鳴イメージング装置のような他の医用画像装置に比して狭い。従って、臓器全体の情報を得ることができない場合があり、観察上の大きな制約となっている。そのため、臓器の観察できている領域及び観察できていない領域の認識は主観的となってしまい、検査の術者依存の一因にもなっている。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、診断対象の全体を包含する広い視野のボリュームデータを取得し、これを用いて視野の広い超音波画像を提供することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査し、複数のボリュームデータを逐次取得する超音波走査手段と、逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
請求項12に記載の発明は、被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータを記憶する記憶手段と、逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、を具備することを特徴とする超音波画像処理装置である。
【0011】
請求項13に記載の発明は、コンピュータに、超音波プローブを移動させながら被検体の診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結させ、大視野ボリュームデータを生成させるボリュームデータ生成機能と、前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成させる画像生成機能と、を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
以上本発明によれば、診断対象の全体を包含する広い視野のボリュームデータを取得し、これを用いて視野の広い超音波画像を提供することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図4】図4は、ボリュームデータの再構成、再構成されたボリュームデータを用いたレンダリング処理の流れを説明するための図である。
【図5】図5は、モニターに表示されたMPR像及びVR像の一例を示した図である。
【図6】図6は、位置合わせ用ROIの設定画面を説明するための図である。
【図7】図7は、超音波プローブの移動を伴う四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図8】図8は、逐次生成されるボリュームデータ同士の位置合わせ処理を説明するための図である。
【図9】図9は、大視野超音波画像の例を示した図である。
【図10】図10は、大視野超音波画像の例を示した図である。
【図11】図11は、超音波プローブの持ち替えを伴う四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第2の実施形態に係る位置合わせ用ROIの設定画面の一例を示した図である。
【図14】図14は、第2の実施形態に係る大視野超音波画像の表示形態を説明するための図である。
【図15】図15は、第2の実施形態に係る大視野超音波画像の表示形態を説明するための図である。
【図16】図16は、第3の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図17】図17は、第4の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図18】図18は、第5の実施形態に係る空間コンパウンドを説明するための図である。
【図19】図19は、第5の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図20】図20は、四次元スキャンの形態を説明するための図である。
【図21】図21は、診断対象に関する重複的な複数のボリュームデータの取得を説明するための図である。
【図22】図22は、空間コンパウンド処理を説明するための図である。
【図23】図23は、空間コンパウンド処理に用いるデータの選別を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態乃至第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置11は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、画像メモリ26、画像合成ユニット27、制御プロセッサ(CPU)28、内部記憶ユニット32、インターフェースユニット34、画像処理部31を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0016】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
なお、本超音波装置が具備する超音波プローブ12は、被検体の三次元領域を超音波走査可能なものである。そのため、超音波プローブ12は、振動子をその配列方向の直交方向に沿って機械的に揺動させ、三次元領域を超音波走査する構成、又は二次元的に配列された二次元振動素子を用いて電気的制御により三次元領域を超音波走査する構成等を有する。前者の構成を採用する場合、被検体の三次元的走査は揺動回路(揺動機構)によって行われるため、検査者はプローブ本体を被検体に接触させるだけで、自動的に複数の二次元断層像を取得することができる。制御された揺動速度から断面間の正確な距離も検知できる。また、後者の構成を採用する場合には、原理的には、従来の二次元断層像を取得するのと同じ時間で、三次元領域を超音波走査することができる。本実施形態では、説明を具体的にするため、超音波プローブ12は、機械的揺動によって三次元領域を超音波走査するものとする。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。例えば、操作者が入力装置13の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、当該超音波診断装置は一時停止状態となる。
【0019】
モニター14は、スキャンコンバータ25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報(通常のBモード画像)、血流情報(平均速度画像、分散画像、パワー画像等)、広域超音波画像、狭域超音波画像、任意断面超音波画像等を所定の形態で表示する。
【0020】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0021】
なお、超音波送信ユニット21は、制御プロセッサ30の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0022】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0023】
Bモード処理ユニット23は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成ユニット25においてスキャンコンバートされ、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター14に表示される。
【0024】
ドプラ処理ユニット24は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0025】
画像生成ユニット25は、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24から受け取った超音波画像データを、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示画像としての超音波画像データを生成する。また、画像生成ユニット25は、超音波画像データを用いてボリュームデータを再構成し、再構成されたボリュームデータを用いて所定のレンダリング処理を実行する。
【0026】
大視野データ生成ユニット26は、後述する大視野三次元超音波画像生成機能を実現する。この大視野データ生成ユニット26の動作については、後で詳しく説明する。
【0027】
画像メモリ28は、複数の超音波画像を例えばフレーム単位で記憶するシネメモリである。
【0028】
画像合成ユニット27は、画像生成ユニット25又は大視野データ生成ユニット26から受け取った画像を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成し、ビデオ信号としてモニター14に出力する。
【0029】
制御プロセッサ30は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ30は、内部記憶ユニット32から大視野三次元超音波画像生成機能を実現するための専用プログラム、所定のスキャンシーケンスを実行するための制御プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0030】
内部記憶ユニット32は、三次元領域を連続的に超音波走査し、時系列のボリュームデータを取得するためのスキャンシーケンス、後述する大視野三次元超音波画像生成機能を実現するための専用プログラム、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラム、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、ボディマーク生成プログラムその他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶ユニット32のデータは、インターフェース回路30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0031】
インターフェースユニット34は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインターフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェースユニット34よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0032】
(大視野三次元超音波画像生成機能)
次に、本超音波診断装置1が有する、大視野三次元超音波画像生成機能について説明する。この機能は、所定の診断領域に対応する複数のボリュームデータを位置合わせをしながら空間的につなぎ合わせて当該診断領域に関する大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて大視野超音波画像を生成し表示するものである。
【0033】
図2は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成機能に従う処理(大視野三次元超音波画像生成処理)の流れを示したフローチャートである。同図に従って、大視野三次元超音波画像生成処理において実行される各処理の内容について説明する。
【0034】
[患者情報等の入力/撮影条件等の設定:ステップS1a]
まず、入力装置13を介して、患者情報等の各種情報が入力され、ボリュームレートや画角等の4次元ボリュームスキャンに関する撮影条件が設定される。(ステップS1a)。ボリュームレートは、制御プロセッサ30において画角等の値に応じて推奨値が計算され、自動的に設定される。このとき、リアルタイム性を維持するようなボリュームレートが自動的に計算される。
【0035】
[四次元通常視野モードによる超音波画像の取得:ステップS2a]
次に、設定された撮影条件に従って、四次元通常視野モード(すなわち、ボリュームデータの空間的なつなぎ合わせを行わない通常のモード)による超音波画像の取得が実行され、表示される(ステップS2a)。また、表示された超音波画像に基づいて、超音波プローブ12の位置決めが実行され(ステップS21a)、決定された位置に対応する超音波画像に対して、位置合わせ用のROI(Region Of Interest:関心領域)が設定される(ステップS22a)。
【0036】
すなわち、図3に示すように、メカニカル四次元プローブや二次元アレイプローブである超音波プローブ12を用いて被検体内の三次元領域を超音波走査(例えば、腹部用のメカニカル四次元プローブで肝臓を、連続的に超音波走査)し、これを繰り返し実行することで、複数の断層面ビームデータを時系列で収集する。図4に示すように、収集された複数の断層面ビームデータはスタックデータであり、各々異なる座標系上にある。画像生成ユニット25は、断層面ビームデータに共通に使用できる座標系を導入し、例えば等方的なボクセルから構成される3次元データ(ボクセルボリュームデータ)を再構成(リサンプリング)する。また、この再構成処理を各時相に対応する複数の断層面ビームデータに対して実行することで、時系列なボリュームデータ(四次元データ)が生成される。
【0037】
なお、等方的なボクセルデータは、3次元データの一例であり、当該例に拘泥されない。例えば処理アルゴリズムにより、3次元データを非等方なボクセルデータや、3次元ビームデータとしてもよい。
【0038】
画像生成ユニット25は、取得された各ボリュームデータを二次元面上に投影表示するためのレンダリング処理を実行する。本発明の技術的思想は、レンダリング手法に拘泥されない。典型的なレンダリング手法として、例えば次のものを採用することができる。
【0039】
(MPR法:Multi-Planar Reconstruction/ Reformation)
任意方向の断層像を作成する手法で、指定した断層面近傍のボクセル値を補間することで画素値を求める。本手法は通常の超音波撮像では見えない断面を観測できるという点で有用である。通常、立体構造を把握するために、指定断面とその断面に直交する2断面を合わせた3断面を同時表示する(図5参照)。
【0040】
(MIP法:Maximum Intensity Projection)
視点と投影面間の直線上に存在するボクセル値を調べ、その中の最大値を投影面に投影する表示手法である。カラードプラ法による血管像や超音波造影エコー法における造影エコー像の立体描出などには有用である。ただし、本手法では奥行き情報が消えるため、角度を変えて作成した像を回転させてシネ表示する必要がある。
【0041】
(VR法:Volume Rendering)
本手法は仮想スクリーンから一様な光が発せられ、その光がボクセル値によって表現される三次元物体によって反射・減衰・吸収されるという仮想的な物理現象をシミュレーションしたもので、スタート点である仮想スクリーン上の点から、一定のステップ間隔で透過光、反射光を更新する。この更新処理時にボクセル値に応じた不透明度(Opacity)を設定することで、表面から内部構造の表現まで多様な表現ができる(図4等参照)。この手法は、特に微細構造の抽出に優れている。
【0042】
なお、本実施形態では、説明を具体的にするため、画像生成ユニット25においてMPR法、VR法により、各手法に対応する超音波画像が生成されるものとする。MPR法、VR法により生成された各超音波画像は、モニター14の画面に、例えば図5に示すような形態で表示される。
【0043】
操作者は、リアルタイムで表示される超音波画像を観察しながら、超音波プローブ12の位置決めを行い、検査のために好適な超音波画像を取得する(ステップS21)。また、超音波プローブ12の移動方向(本実施形態では、図6、図7の矢印方向)を考慮して、位置合わせ用のROIが、入力装置13を介して表示された超音波画像(本実施形態の場合、MPR像)条に例えば図6に示すように設定する(ステップS22)。この様に設定されたROIは、当該超音波画像に対応するボリュームデータ上に設定されると共に、以降取得される全てのボリュームデータについても、対応する領域に自動設定される。なお、ROIの形状は、二次元の矩形内の場合も三次元の直方体の場合もある。任意の三次元形状により、状況に応じて好適な形状を使用できるようにしてもよい。
【0044】
[四次元大視野モードによる超音波画像の取得:ステップS3a]
次に、設定された位置合わせ用のROIを用いて、四次元大視野モードによる超音波画像の取得が実行される(ステップS3a)。
【0045】
例えば、腹部用のメカニカル四次元プローブである超音波プローブ12を用いて、肝臓に関して時間的に連続的な3次元走査(すなわち、4次元走査)が実行される。モニター14には、図5又は図6に示したようなMPR法での直交3断面とVR表示(右下像)がされる。このとき、図超音波プローブ12を、図7(a)及び図7(b)に示すように揺動方向を延長するように、手動にて体表を移動させる。この移動に伴って、移動位置に対応するボリュームデータが時系列的に取得される。或いは、図7(c)に示すように、呼吸等により臓器が動き、相対的に超音波プローブ12により取得されたボリュームデータが移動する。
【0046】
大視野データ生成ユニット26は、超音波プローブ12の移動により逐次生成される各ボリュームデータの位置合わせ処理を行うことでボリュームデータ間を連結させ、大視野ボリュームデータを生成する(ステップS31a)。この位置合わせ処理は、ステップS22において設定されたROIを用いて実行される。すなわち、大視野データ生成ユニット26は、例えば図8(a)に示すような時間的に連続する(隣り合う)ボリュームデータ1及びボリュームデータ2における、ステップS22において設定されたROI内のボクセルデータを用いて、例えば、「類似度に関係する特徴量の計算」を実行する。また、大視野データ生成ユニット26は、例えば図8(b)に示すように、平行移動、回転移動によってボリュームデータ1に対するボリュームデータ2の相対的位置をずらす位置ずれ補正を実行し、位置ずれ補正されたデータ間で「位置ずれ評価関数」を計算する。大視野データ生成ユニット26は、評価関数により補正が良好であるか否かを判定し、良好であると判定し場合には、その「位置ずれ量」を採用して、ボリュームデータ同士を連結させる。一方、評価関数により補正不十分と判定した場合は、大視野データ生成ユニット26は、さらに平行移動、回転移動によってボリュームデータ1に対するボリュームデータ2の相対的位置をずらす位置ずれ補正を実行し、位置ずれ補正されたデータ間で「位置ずれ評価関数」を計算する。以降、評価関数により補正が良好と判定されるまで、位置ずれ補正の評価を繰り返す。
【0047】
なお、位置ずれ評価関数は、どの様なものであってもよい。好適な一例としては、相互情報量最大法を挙げることができる。相互情報量最大法では、位置合わせを行う二つのボリュームの中に定義された対象領域を、それぞれR(x,y,z)、F(x,y,z)とし、二つの対象領域の同じ位置の画素値から生成される二次元ヒストグラムをhistgramRF(r,f)とおく。このとき、対象領域の画素値がとる確率密度関数pR(r)、pF(r)、pRF(r,f)は、上で定義したヒストグラムから、それぞれ次の様に求められる。
【数1】
【0048】
ただし、VはR,Fが共に存在する画素位置の総数である。
【0049】
これらの確率密度関数から、相互情報量T(F;R)は以下の様に定義される。
【数2】
【0050】
対象画像に対し、最低、x方向、y方向、z方向の回転と平行移動の6つのパラメータ、必要であれば3つのせん断方向も含めた9つのパラメータで座標変換する。この座標変換をαとおくと、返還後の対象画像はα(F)と現すことができる。
【0051】
上記で定義したα(F)とRとの相互情報量T(α(F);R)を最大にするα、つまり、次の式で示されるαが求めたい座標変換である。
【数3】
【0052】
これは解析的に解くことができないため、何らかの最適化手法を用いて解く。例えば、downhill-symplex法やPowellの方法を用いる。なお、相互情報量最大法については、例えば特願2007−287846、F.Maes, "Multimodality Image Registration by Maximization of Mutual Information" IEEE Trans, Med. Img., vol. 16, pp. 187-198, Apr. 1997等に詳しい。
【0053】
以降、大視野データ生成ユニット26は、超音波プローブ12の移動に伴って時系列に取得される複数のボリュームデータに対して同様な位置合わせ処理を行うことでボリュームデータ間を逐次連結させ、大視野ボリュームデータを生成する。
【0054】
次に、画像生成ユニット25は、生成された大視野ボリュームデータを二次元面上に投影表示するために、MPR法、VR法によるレンダリング処理を実行する(ステップS32a)。レンダリング処理によって生成された大視野超音波画像は、モニター14の画面に所定の形態で表示される(ステップS33a)。
【0055】
図9、図10は、大視野超音波画像の所定の形態の例を示した図である。図9(a)に示すように、コロナル像(体表と平行面)に設定されたROIを用いて位置合わせされ連結されたボリュームデータより、図9(b)に示すような(ボリュームデータ1に対応するコロナル像とボリュームデータ2に対応するコロナル像との)大視野コロナル像が生成され、リアルタイムで表示されることにある。さらに、収集されるボリュームデータ間の位置合わせ及び連結がリアルタイムで実行され、図9(b)に示す大視野コロナル像は、超音波プローブ12の移動に伴って、例えば図10に示すように、さらに大視野のコロナル像として更新される。
【0056】
なお、本実施形態では、隣り合うボリュームデータの重複する領域にROIを設定し、これを用いて位置合わせを行うものとした。これは、ROIを設定しない場合に比してデータ量を減少させ演算負担を軽減させるためである。また、時相による臓器の移動による変形で、重ね合わない領域が発生する場合もあり、係る場合にROIを設定しないと、好適な位置合わせを達成できないこともある。ROIの設定は、リアルタイム処理の点と正確な位置合わせの点で有効であると言える。しかしながら、本発明の技術的思想は、この様なROI設定に拘泥されない。例えば、ボリュームレートが十分に高く、隣りあうボリュームデータ間において重複する領域が多い場合には、ROIを設定しなくても好適な位置合わせ処理を実現することができる。
【0057】
[フリーズ操作の受付/大視野超音波画像の保存:ステップS4a]
表示された大視野超音波画像を観察し、入力装置13を介して任意のタイミングでフリーズボタンが操作されると、表示中の大視野超音波画像(すなわち、MPR像、VR像)が内部記憶ユニット32に自動的に保存される。保存された大視野超音波画像は、事後的に、任意のタイミングで再生することが可能である。
【0058】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
本超音波診断装置によれば、所定の診断領域に対応する複数のボリュームデータを位置合わせをしながら空間的につなぎ合わせて当該診断領域に関する大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて大視野超音波画像を生成し表示することができる。従って、超音波画像診断においても、臓器全体を映像化することができると共に、臓器の観察できている領域と観察できていない領域とを主観的に判定する必要性がなくなり、検査の術者依存性を低減させることができる。その結果、超音波画像診断の質の向上に寄与することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
先の第1の実施形態では、超音波プローブ12を被検体表面に沿って連続的に移動させながら四次元スキャンを実行し、これによって得られた複数のボリュームデータを位置合わせし空間的に連結して大視野ボリュームデータを生成するものであった。これに対し、本実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば図11に示すように、肝臓右葉を足側方向に走査した後、超音波プローブ12を持ち替えてその向きを変更し、肝臓左葉方向に走査するといったような、被検体表面上での超音波プローブ12の連続的移動が一方向のみではない場合(すなわち、所定の診断対象について超音波プローブ12を複数の方向に移動させながら複数のボリュームデータを取得した場合)において、大視野ボリュームデータを生成する例である。
【0061】
図12は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。すなわち、例えば超音波プローブ12を足側方向に向けて移動させながら、既述のステップS1a〜ステップS3aと同様の手法により四次元スキャンが実行され、肝臓右葉に関する複数のボリュームデータが取得される(ステップS1b〜ステップS3b)。
【0062】
次に、超音波プローブ12をステップS3bとは異なる方向に移動(例えば肝臓左葉方向)させながら四次元スキャンを行って得られるボリュームデータとステップS3bにおいて取得されたボリュームデータとの重複領域に、位置合わせのためのROIが設定される(ステップS4b)。
【0063】
すなわち、まず、ステップS3bでの四次元大視野モード中に、所望の位置で超音波プローブ12が止められ、入力装置13から「中断」指示、及び四次元通常視野モードへの移行指示が入力装置13から入力される。制御プロセッサ30は、これらの指示入力に応答して、中断指示が入力された時点の大視野超音波画像(コロナル像)と、四次元通常視野モードによってリアルタイムで取得されるCモード像(コロナル像)を、例えば図13(a)に示すような形態でモニター14に表示する(ステップS41b)。表示された大視野超音波画像及びCモード像を規準として超音波プローブ12の向きが変更されると共に(ステップS42b)、図13(a)に示すように、視野超音波画像及びCモード像の重複領域に位置合わせ用のROIが入力装置13を介して設定される(ステップS43b)。
【0064】
次に、新たな超音波プローブ12の新たな移動方向させながら、設定された位置合わせ用のROIを用いた四次元大視野モードによる超音波画像の取得が実行される(ステップS5b)。このとき、モニター14に表示される視野超音波画像は、超音波プローブ12の新たな方向への移動に伴ってボリュームデータの位置合わせ、連結が自動的に実行される。従って、モニター14に表示される視野超音波画像は、超音波プローブ12の移動に伴って、例えば図14(a)に示す状態から図14(b)に示す様に、新たな方向についてコロナル像が連結され逐次更新される。結果、視野超音波画像は、肝臓右葉を足側方向に走査してる場合には図15(a)に示す形態でリアルタイムに表示され、その後、超音波プローブ12が持ち帰られて肝臓左葉方向に沿って走査されている場合には、図15(b)に示す形態にてリアルタイムに表示されることになる。
【0065】
次に、入力装置13を介して任意のタイミングでフリーズボタンが操作されると、表示中の大視野超音波画像(すなわち、MPR像、VR像)が内部記憶ユニット32に自動的に保存される(ステップS6b)。保存された大視野超音波画像は、事後的に、任意のタイミングで再生することが可能である。
【0066】
以上述べた構成によれば、所定の診断対象について超音波プローブ12を複数の方向に移動させながら複数のボリュームデータを取得した場合(すなわち、取得したボリュームデータが時間的に連続するものでない場合)においても、第1の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0067】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理を、超音波画像取得時に(すなわちリアルタイムで)実行するのではなく、事後的に超音波画像処理装置において実行する例である。
【0068】
図16は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。同図の処理と図2の処理とを比較した場合、時間的及び空間的に連続するボリュームデータの取得(すなわち四次元スキャン)を行う代わりに、内部記憶ユニット32に記憶されたボリュームデータを読み出して再生する点が異なる。その他の処理は、図2の例と実質的に同様である。
【0069】
以上述べた構成によっても、第1の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0070】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第2の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理を、超音波画像取得時に(すなわちリアルタイムで)実行するのではなく、事後的に超音波画像処理装置において実行する例である。
【0071】
図17は、本実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。同図の処理と図12の処理とを比較した場合、超音波プローブ12の向きを変更する等により、時間的には連続しないが空間的には重複領域を有する複数のボリュームデータを、内部記憶ユニット32から読み出して再生する点が異なる。その他の処理は、図12の例と実質的に同様である。
【0072】
以上述べた構成によっても、第2の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0073】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置1は、大視野量音波画像生成処理を行う場合において、図18に示すように、重複して超音波走査された領域が存在する場合、当該重複領域に関する複数のボクセルデータ等を用いて空間コンパウンドを実行することにより、スペックル低減、アーチファクト低減を実現するものである。
【0074】
なお、本実施形態に係る手法は、第1乃至第4のいずれの実施形態に係る大視野量音波画像生成処理についても適用可能である。以下においては、説明を具体的にするため、本実施形態に係る手法を第1の実施形態に係る大視野量音波画像生成処理について適用した場合の例について説明する。
【0075】
図19は、第5の実施形態に係る大視野三次元超音波画像生成処理の流れを示したフローチャートである。まず、第1の実施形態と同様の手法により、患者情報等の各種情報が入力され、ボリュームレートや画角等の4次元ボリュームスキャンに関する撮影条件が設定されると共に(ステップS1c)、設定された撮影条件に従って、四次元通常視野モード(すなわち、ボリュームデータの空間的なつなぎ合わせを行わない通常のモード)による超音波画像の取得が実行され、位置合わせ用のROI設定が実行される(ステップS2c)。
【0076】
次に、図20(a)、(b)に示すように超音波プローブ12を移動させながら連続走査することで、複数のボリュームデータが取得される。また、図21(a)、(b)に示すように、超音波プローブ12の位置や向きを変えて、同様に移動させながら連続走査することで、診断対象(図の例では、肝臓)に関する重複的な複数のボリュームデータが逐次取得される。大視野データ生成ユニット26は、逐次取得される複数のボリュームデータの位置合わせ処理を、ステップS2cにおいて設定されたROIを用いて実行する(ステップS31c)。
【0077】
次に、大視野データ生成ユニット26は、複数のボリュームデータ間において重複領域が存在するか否かを判定し、図22(a)に示すように重複領域が存在すると判定した場合には、図22(b)に示すような当該重複領域内の複数のボクセルデータに対して空間コンパウンド(例えば平均化)処理を行う(ステップS32c)。
【0078】
なお、平均化は単なる一例であり、空間コンパウンド処理は、当該例に拘泥されない。また、重複領域の複数のボクセルデータ中に、感度が極端に異なるデータ、もしくはシャドーやアーチファクトなどにより輝度が大きく異なるデータが存在する場合がある。この様なデータを空間コンパウンドに使用すると、画質劣化の要因となる。従って、大視野データ生成ユニット26は、例えば重複領域の平均輝度および分散より求めたある一定の閾値との関係から空間コンパウンドに好適か否かを判別し、好適でないと判定した場合には、データをボクセル単位(或いはピクセル単位)で除外し、残ったデータを用いて空間コンパウンド処理を実行するようにする(図23(a)、(b)、(c))。なお、空間コンパウンドに好適か否かを判別は、当該例に拘泥されないことは、言うまでもない。
【0079】
次に、大視野データ生成ユニット26は、空間コンパウンド処理の対象となった領域と対象となっていない領域との境界付近に対して、境界を目立たなくさせるための境界修正処理(例えば平滑化処理。しかし、平滑化処理に拘泥されない。)を実行する(ステップS33c)。これは、空間コンパウンド処理の対象となった領域と対象となっていない領域との境界付近は、画像上で段差として表れてしまい画質劣化の要因となるためである。
【0080】
次に、画像生成ユニット25は、空間コンパウンド処理等が施された大視野ボリュームデータを二次元面上に投影表示するために、MPR法、VR法によるレンダリング処理を実行する(ステップS34c)。レンダリング処理によって生成された大視野超音波画像は、モニター14の画面に所定の形態で表示される(ステップS35c)。表示された大視野超音波画像を観察し、入力装置13を介して任意のタイミングでフリーズボタンが操作されると、表示中の大視野超音波画像(すなわち、MPR像、VR像)が内部記憶ユニット32に自動的に保存される(ステップS4c)。保存された大視野超音波画像は、事後的に、任意のタイミングで再生することが可能である。
【0081】
なお、上記空間コンパウンド処理は、ボクセルデータ以外のデータ(例えば、Bモード処理ユニット23の対数増幅器を通った後のRFデータや、検波器を通った後の生データ等)に対して実行するようにしてもよい。また、コンパウンド処理を行う対象のデータ数を増やす目的で被検体の計測部位の同じ位置を何度もスキャンすることで、コンパウンド効果が増強し更なる画質の向上が達成される。これは、スキャン回数が多ければ多いほど画質向上効果がある。
【0082】
また、スキャン方式に関しては、超音波プローブ12を連続的に走査するのではなく、スキャンごとにウィンドウを変えて、複数ウィンドウからのスキャンにより得られた複数のデータに対しても同様の位置合わせ処理およびコンパウンド処理などを行うことができる。この際は、被検体表面の対象部位のある位置に超音波プローブ12をあて、スキャン中にデータ保存ボタンを押すなどの動作をして保存処理を行う必要がある。その後プローブを当てる位置を変え、別ウィンドウから同様にスキャンし、データ保存動作を行う。これを複数回繰り返すことで、広範囲のデータを得ることができる。
【0083】
以上述べた構成によれば、シャドー、スペックルパタン、アーチファクト等のノイズが低減された大視野ボリュームデータを生成し、これを用いて高画質の大視野超音波画像を提供することができる。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0085】
(1)各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0086】
(2)前記各実施形態においては、位置合わせ用のROIを設定を行う場合に、コロナル像を用いた。しかしながら、ROI設定に用いる断層像に限定はなく、例えばサジタル像を用いて、所望の血管走行が含まれるような同一の深さROIを設定するようにしてもよい。
【0087】
(3)前記各実施形態においては、評価関数を用いてボリューム間の位置合わせ処理を行った。これに対し、各ボリュームデータを取得する際に、例えば超音波プローブ等の位置及びその位置を規準とする各ボリュームデータの位置情報を取得しておき、これに基づいてボリューム間位置合わせを行うようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上本発明によれば、診断対象の全体を包含する広い視野のボリュームデータを取得し、これを用いて視野の広い超音波画像を提供することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを実現することができる。
【符号の説明】
【0090】
10…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…大視野データ生成ユニット、27…画像合成ユニット、28…画像メモリ、30…制御プロセッサ、32…内部記憶ユニット、34…インタフェースユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査し、複数のボリュームデータを逐次取得する超音波走査手段と、
逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波走査手段は、時間的及び空間的に連続する前記超音波走査によって前記複数のボリュームデータを取得することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波走査手段は、中断を含む前記超音波走査によって、前記複数のボリュームデータを取得することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記位置合わせ手段は、前記重複領域に設定された関心領域内のデータを用いて位置ずれ評価関数を計算し、その結果に基づいて前記前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記位置合わせ手段は、前記重複領域に設定された関心領域に関する相互情報量最大法を用いて、前記前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記関心領域を設定する設定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記設定手段は、表示された任意の断層像を用いて、前記関心領域を設定するものであることを特徴とする請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記相対的な位置を移動に対応させながら、前記大視野超音波画像をリアルタイムで表示する表示手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記診断対象において重複して超音波走査された領域が存在する場合には、当該重複領域に関する複数のボクセルデータ等を用いて空間コンパウンドを実行する空間コンパウンド手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記空間コンパウンド手段は、
前記重複領域に対応するデータに基づいて、前記空間コンパウンドに使用するボリュームデータを判定し、
使用すると判定されたボリュームデータを用いて、前記空間コンパウンド処理を実行すること、
を特徴とする請求項9記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記空間コンパウンドの対象となった領域と対象となっていない領域との境界付近に対して、境界修正処理を実行する修正手段をさらに具備することを実行する請求項9又は10記載の超音波診断装置。
【請求項12】
被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータを記憶する記憶手段と、
逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータに、
超音波プローブを移動させながら被検体の診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、
位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結させ、大視野ボリュームデータを生成させるボリュームデータ生成機能と、
前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成させる画像生成機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項1】
被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査し、複数のボリュームデータを逐次取得する超音波走査手段と、
逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波走査手段は、時間的及び空間的に連続する前記超音波走査によって前記複数のボリュームデータを取得することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波走査手段は、中断を含む前記超音波走査によって、前記複数のボリュームデータを取得することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記位置合わせ手段は、前記重複領域に設定された関心領域内のデータを用いて位置ずれ評価関数を計算し、その結果に基づいて前記前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記位置合わせ手段は、前記重複領域に設定された関心領域に関する相互情報量最大法を用いて、前記前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記関心領域を設定する設定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記設定手段は、表示された任意の断層像を用いて、前記関心領域を設定するものであることを特徴とする請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記相対的な位置を移動に対応させながら、前記大視野超音波画像をリアルタイムで表示する表示手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記診断対象において重複して超音波走査された領域が存在する場合には、当該重複領域に関する複数のボクセルデータ等を用いて空間コンパウンドを実行する空間コンパウンド手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記空間コンパウンド手段は、
前記重複領域に対応するデータに基づいて、前記空間コンパウンドに使用するボリュームデータを判定し、
使用すると判定されたボリュームデータを用いて、前記空間コンパウンド処理を実行すること、
を特徴とする請求項9記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記空間コンパウンドの対象となった領域と対象となっていない領域との境界付近に対して、境界修正処理を実行する修正手段をさらに具備することを実行する請求項9又は10記載の超音波診断装置。
【請求項12】
被検体の診断対象の少なくとも一部に対する超音波プローブの相対的な位置を移動させながら前記診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータを記憶する記憶手段と、
逐次取得される前記複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結し、大視野ボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成する画像生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータに、
超音波プローブを移動させながら被検体の診断対象の少なくとも一部を連続的に超音波走査して、逐次取得された複数のボリュームデータ間の重複領域を用いて、前記複数のボリュームデータの位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、
位置合わせされた前記複数のボリュームデータを連結させ、大視野ボリュームデータを生成させるボリュームデータ生成機能と、
前記大視野ボリュームデータを用いて、大視野超音波画像を生成させる画像生成機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−45659(P2011−45659A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198870(P2009−198870)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
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