超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像取得プログラム
【課題】 画質性能とリアルタイム性を両立させつつ、三次元画像収集及びリアルタイム表示を実現することができる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】 被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得するデータ取得ユニットと、心時相が対応し且つ心拍が異なる複数の受信データを用いた合成処理を実行し、複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、複数のボリュームデータを用いて、各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、を具備する。
【解決手段】 被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得するデータ取得ユニットと、心時相が対応し且つ心拍が異なる複数の受信データを用いた合成処理を実行し、複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、複数のボリュームデータを用いて、各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波により生体内を画像化し診断を行う医用超音波診断装置に関するものであり、超音波画像を立体的に表示する超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに設けられた振動素子から発生する超音波パルスを被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる超音波反射波を前記振動素子により受信して生体情報を収集するものである。超音波診断装置は、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作で画像データのリアルタイム表示が可能となるため、各種臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
近年、超音波診断装置は三次元画像の高速な収集と表示が可能なシステムが急速に開発されており、三次元画像や三次元画像の動画といった、これまでと視野の異なる診断画像を提供できるようになってきている。その一方で、超音波診断装置は生体内を伝播する超音波を利用した画像診断であるため、三次元画像対応となっても、単位時間あたりに送受信できる走査線の数には制限がある。このため、高分解能で広範囲の三次元領域を走査するために様々な手法が試みられている。超音波診断装置を用いて広範囲領域を映像化する場合、基本的には、小領域の三次元空間を走査した画像データを繋ぎ合わせて広範囲の三次元画像にしていくものとなる。しかしながら、生体の画像を収集する場合、部位によっては呼吸による動きや心臓の鼓動による動きなどがあり、そのような場合、動きに同期した三次元画像の収集が必要となる。
【0004】
そこで、近年採用されているものとして、心臓の動きに同期して複数の小領域三次元動画像を収集し、それらを組み合わせて心臓全体の三次元動画像を作成する方法等がある(例えば、特許文献1参照)。当該手法では、心臓の動きに同期して複数の小領域三次元動画像を収集、合成する。このとき、例えばECG信号などの生体信号を利用して心臓の動きと同期させる場合が多い。より具体的には、例えば図15、図16に示すように、超音波診断装置で観察したい心臓の三次元領域全体を複数のセグメント(図の例では4つのセグメント)に分割し、各セグメントについてECG信号の一心拍分収集する。このとき、一心拍分のデータは、例えば図16に示すように、R波が発生する拡張末期付近を基準に心拍周期において同時相のデータとして収集する。そして、取得したセグメント毎のデータを、図15、図16に示すように同一時相のデータが空間的に連続するようにつなぎ合わせることで、三次元領域に対応するデータを生成する。これにより、各セグメントは三次元空間的を分割したものであるが、空間的に連続した三次元領域に対応するデータを再構成するため、結果的にあたかも観察したい心臓の三次元領域全体の動画像を一度に収集、表示したような三次元画像を提供することができる。
【0005】
上記方法においては、各セグメントを合成した全体の三次元動画像が一つの三次元動画像として見えるためには、各セグメントが空間的に完全に連続し、時相的には全く同一の心拍間隔の同一時相を収集する必要がある。しかしながら、現実には、人体の場合呼吸による動きや超音波探触子の動きなど空間的な連続性を阻害する要因がある。また、拍動には一般にばらつきがあるため時間的な連続性を阻害する要因もある。従って、上記手法により完全な三次元動画全体像を収集表示することは、現実的には非常に困難であると言える。
【0006】
上述のような問題を解決するために、超音波診断装置が同時に受信する受信ビーム数を増加させ、心拍による同期を用いなくても必要な三次元空間領域を一度に走査するシステム(すなわち、真のリアルタイム三次元超音波画像の生成・表示を実現するためのシステム)の開発が進んでいる。当該システムでは、単純に送信超音波ビームの領域を拡大し、同時に受信する走査線数を増加させる。このため、原理的には画質性能やリアルタイム性能に関して二次元超音波システムに近づいていくことが可能であるが、実際には同時に処理する受信ビーム数をこれまので十倍から数十倍に増加させる必要がある。また、この場合、受信ビーム間の感度ムラなど無くし均一にする等、実用化のための解決すべき課題が多いのが現実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6544175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、超音波診断装置を用いて、特に心臓領域において三次元画像の収集と表示をリアルタイムに行おうとする場合、画質性能(走査線密度)とリアルタイム性(フレームレート)を両立することが技術的な課題の一つである。しかしながら、上述した従来の超音波診断装置においては、次のような問題がある。
【0009】
心拍同期による部分的な領域の走査を複数組み合わせる手法の場合、実際にリアルタイムの三次元像を観察出来るのは一つのセグメントに限られ、また収集を開始してから所望の三次元領域全体を観察出来るのは全セグメントの収集が終了した後になってしまう。また、一部のセグメント画像の収集が不全の場合、全体が利用できなくなってしまう。さらに、各セグメント収集時の心拍のバラツキによりセグメント間に画像の段差が発生したり、心拍のバラツキに依存して1心拍内の収集ボリューム数に差違が生じるためにデータを収集出来ない時間(ブランクタイム)が発生する等の問題点も存在する。
【0010】
一方で、並列に受信する走査線数を増大させる場合、上記のような問題は発生しない。しかしながら、受信走査線数に応じて回路規模が増大し、コストが増大するばかりでなく、同時受信走査線数を増大させる場合に、送信音場に依存した走査線間の感度バラツキを抑制する手段など別の問題が発生してしまう。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、画質性能(走査線密度)とリアルタイム性(フレームレート)を両立させつつ、三次元画像収集及びリアルタイム表示を実現することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像取得プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0013】
請求項1に記載の発明は、被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得するデータ取得ユニットと、心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、前記各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上本発明によれば、画質性能とリアルタイム性を両立させつつ、三次元画像収集及びリアルタイム表示を実現することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像取得プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、本高解像度データ取得機能に従う処理(高解像度データ取得処理)の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、映像化対象領域内に含まれる第1〜第4の走査線群を説明するための図である。
【図4】図4は、第1〜第4の走査線群によって定義される第1〜第4走査線群の一例を示した図である。
【図5】図5は、ECG波形のR波を基準として心拍毎に走査線群を第1〜第4走査線群の間で切り換えながら連続的に実行される超音波走査のシーケンスを説明するための図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図である。
【図7】図7は、第3の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、ECG波形と高解像度データ取得処理のON/OFF制御の対応関係を示した図である。
【図9】図9は、第5の実施形態に係る高解像度データ取得処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、第5の実施形態に係る高解像度データ取得処理において実行される超音波走査のシーケンスを説明するための図である。
【図11】図11は、第5の実施形態に係る高解像度データ取得処理において実行される補間処理を説明するための図である。
【図12】図12(a)、(b)、(c)は、第6の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図である。
【図13】図13は、第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た場合の走査線の分布を示した図である。
【図14】図14は、第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理の他の適用例を説明するための図である。
【図15】図15は、三次元超音波走査の従来の手法を説明するための図である。
【図16】図16は、三次元超音波走査の従来の手法を説明するための図である。
【図17】図17は、三次元超音波走査の従来の手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0017】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、血流検出ユニット24、RAWデータメモリ25、高解像度データ生成ユニット26、ボリュームデータ生成ユニット27、画像処理ユニット28、制御プロセッサ(CPU)29、表示処理ユニット30、記憶ユニット31、インタフェースユニット32を具備している。また、超音波診断装置1には、被検体のECG波形を計測するためのECGユニット35が接続されている。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0018】
超音波プローブ12は、被検体に対して超音波を送信し、当該送信した超音波に基づく被検体からの反射波を受信するデバイス(探触子)であり、その先端に複数に配列された圧電振動子、整合層、バッキング材等を有している。圧電振動子は、超音波送信ユニット21からの駆動信号に基づきスキャン領域内の所望の方向に超音波を送信し、当該被検体からの反射波を電気信号に変換する。整合層は、当該圧電振動子に設けられ、超音波エネルギーを効率良く伝播させるための中間層である。バッキング材は、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止する。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送受信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0019】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ12は、ボリュームデータを取得可能なものとして、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)であるとする。しかしながら、当該例に拘泥されず、超音波プローブ12として例えばメカニカル4Dプローブ(超音波振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なプローブ)を取得することも可能である。
【0020】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。また、入力装置13は、後述する高解像度データ取得機能において、診断部位を入力するための専用スイッチ、映像化に用いるカラーデータの範囲を制御するための専用ツマミ、ボクセルの透明度(不透明度)を制御するための専用ツマミ等を有している。
【0021】
モニター14は、表示処理ユニット30からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0022】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。トリガ発生回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのトリガパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各トリガパルスに与えられる。パルサ回路は、このトリガパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0023】
なお、超音波送信ユニット21は、制御プロセッサ29の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0024】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、遅延回路、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたアナログのエコー信号をデジタルエコー信号に変換する。遅延回路では、デジタル変換されたたエコー信号に対し受信指向性を決定し、受信ダイナミックフォーカスを行うのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0025】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0026】
血流検出ユニット24は、受信ユニット22から受け取ったエコー信号から血流信号を抽出し、血流データを生成する。血流の抽出は、通常CFM(Color Flow Mapping)で行われる。この場合、血流信号を解析し、血流データとして平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0027】
RAWデータメモリ25は、Bモード処理ユニット23から受け取った複数のBモードデータを用いて、三次元的な超音波走査線上のBモードデータであるBモードRAWデータを生成する。また、RAWデータメモリ25は、血流検出ユニット24から受け取った複数の血流データを用いて、三次元的な超音波走査線上の血流データである血流RAWデータを生成する。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、RAWデータメモリ25の後に三次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0028】
高解像度データ生成ユニット26は、制御プロセッサ29からの制御に従って、後述する高解像度データ取得機能を実行する。
【0029】
ボリュームデータ生成ユニット27は、RAWデータをボリューム単位へのデータ配置に変換することにより、RAWデータメモリ25或いは高解像度データ生成ユニット26から受け取ったBモードRAWデータからBモードボリュームデータを生成する。この変換は、空間的な位置情報を加味した処理により、画像生成処理において用いられる視体積内の各視線上のBモードボリュームデータを生成するものである。なお、本実施形態においては、上記変換処理によって生成されたBモードボリュームデータを用いて、後述する高解像度データ取得機能に従う処理を実行する場合を例とする。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば、RAW−ボクセル変換を実行することで生成されるBモードボクセルボリュームデータを用いて、高解像度データ取得機能に従う処理を実行するようにしてもよい。
【0030】
画像処理ユニット28は、ボリュームデータ生成ユニット27から受け取るボリュームデータに対して、ボリュームレンダリング、多断面変換表示(MPR:multi planar reconstruction)、最大値投影表示(MIP:maximum intensity projection)等の所定の画像処理を行う。
【0031】
なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、画像処理ユニット28の後に二次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0032】
制御プロセッサ29は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ29は、記憶ユニット31から後述する高解像度データ取得機能を実現するための専用プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0033】
表示処理ユニット30は、画像処理ユニット28において生成・処理された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。
【0034】
記憶ユニット31は、後述する高解像度データ取得機能を実現するための専用プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、図示しない画像メモリ中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット31のデータは、インタフェースユニット32を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0035】
インタフェースユニット32は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェースユニット32よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0036】
(高解像度データ取得機能)
次に、本超音波診断装置1が有する高解像度データ取得機能について説明する。本機能では、心臓の少なくとも一部を含む三次元領域である映像化対象領域について、生体信号(例えばECG波形)と同期してリアルタイムでの三次元データ収集(いわゆる四次元データ収集)を実行する。このデータ収集は、映像化対象領域内において、心拍間隔毎に走査線の位置を変更しながら実行される。この様なデータ収集によってリアルタイムで得られる同一心時相ボリュームデータ(ライブボリュームデータ)と、過去の心拍において取得された同一心時相のボリュームデータとを用いて、映像化対象領域内の全走査線に対応するボリュームデータを生成し、これを用いて超音波画像を生成し表示するものである。
【0037】
図2は、本高解像度データ取得機能に従う処理(高解像度データ取得処理)の流れを示したフローチャートである。同図に従って、高解像度データ取得処理の各内容の内容について説明する。
【0038】
[患者情報、送受信条件、走査線群数等の入力]
まず、入力装置13を介して患者情報の入力、送受信条件(被走査領域の大きさを決めるための画角、焦点位置、送信電圧等)、被検体の所定領域を超音波走査するための撮像モード、スキャンシーケンス、走査線群数n等の入力・選択が実行される(ステップSA1)。入力、選択された各種情報・条件等は、自動的に記憶ユニット31に記憶される。ここで、走査線群とは、映像化対象領域を映像化するために、当該領域に含まれる(定義される)全走査線を、異なる走査線の組み合わせで分類(グルーピング)した走査線の集合である。本実施形態では、説明を具体的にするため、n=4の場合を例とする。
【0039】
図3は、走査線群を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た図である。同図に示すように、映像化対象領域内に含まれる全走査線を所望の組み合わせによって分類し、第1〜第4の走査線群を形成するものとする。また、この分類に対応して、第1〜第4の走査線群によって定義される第1〜第4走査線群は、例えば図4に示すような錐状の領域となる。なお、走査線群数nは、自然数であればいくつであってもよい。また、各走査線群を構成する複数の走査線は、どのような組み合わせでグルーピングされても良い。例えば、各走査線群に含まれる複数の走査線を、(偏在することなく)映像化対象領域内に均等に分配されように(映像化対象領域内において空間的に分散するように)分類することが好ましい。
【0040】
[第1〜第4走査線群に対応する第1〜第4の受信ビーム群の取得]
次に、超音波プローブ12が被検体表面の所望の位置に当接され、ECGユニット35からのECG波形のR波を基準として、第1走査線群から第4走査線群までの4つのパターンによって走査線群(被走査領域)を心拍毎に僅かにずらしなから(順次切り換えながら)、Bモードによる超音波走査が実行される(ステップSA2、SA3、SA4、・・・・)。すなわち、制御プロセッサ28は、図5に示すように、最初のECG波形(第1心拍)のR波を検出すると、第1走査線群を連続的に超音波走査し、各心時相における第1走査線群に対応する第1の受信ビーム群を取得するように、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御する。また、制御プロセッサ28は、次のECG波形(第2心拍)のR波を検出すると、図3、図4に示すように、第1走査線群から第2走査線群に切り換え、第2走査線群を連続的に超音波走査し、各心時相における第2走査線群に対応する第2の受信ビーム群を取得するように、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御する。
【0041】
以降、ECG波形のR波を基準として、被走査領域が順次切り換えられ、各心時相における第3走査線群に対応する第3の受信ビーム群、第4走査線群に対応する第4の受信ビーム群が取得される。また、第5心拍のECG波形の最初のR波を基準として、第1走査線群について二巡目の各心時相における第1の受信ビーム群が取得される。取得された各時相に対応する各受信ビーム群は、逐次超音波受信ユニット22を経由してBモード処理ユニット23に送られる。Bモード処理ユニット23は、各受信ビーム群に対して、対数増幅処理、包絡線検波処理等を実行する。
【0042】
なお、被走査領域の切り換えは、制御プロセッサ29において、予め記憶ユニット30から読み出し自身のメモリに予め記憶した走査線群毎の各走査線の情報を用いて、或いはリアルタイム(すなわち、一つの走査線群を走査する時間内)で計算した走査線群毎の各走査線の情報を用いて、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御することによって実行される。
【0043】
また、本ステップにおける各走査線群についての三次元走査は、図5に示した様にブランクタイムなく実行される。従って、三次元超音波走査を時間的に連続に実行することができ、従来に比して時間分解能を向上させることができる。
【0044】
[第1〜第4走査線群に対応する第1〜第4のRAWデータ群の生成]
次に、RAWデータメモリ25は、図5に示す第1心拍において取得された各心時相に対応する第1の受信ビーム群をBモード処理ユニット23より取得し、各心時相に対応する第1RAWデータを取得する。同じくRAWデータメモリ25は、図5に示す第2心拍において取得された各心時相に対応する第2の受信ビーム群をBモード処理ユニット23より取得し、各心時相に対応する第2RAWデータを取得する。以降、同様にして、第3心拍の各心時相に対応する第3RAWデータ、第4心拍の各心時相に対応する第4RAWデータ、第5心拍の各心時相に対応する二巡目の第1RAWデータ等が逐次取得される。なお、本ステップにおけるRAWデータの生成は、図2に示すように、他走査線群に対応する受信ビーム群の取得と並行して逐次実行することが可能である。
【0045】
[全RAWデータの生成処理]
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25において生成され
るRAWデータを用いて、映像化対象領域全体に対応する全RAWデータを生成する(ステップSC1、SC2、・・・・・)。
【0046】
すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第1RAWデータを受け取ると、当該第1RAWデータを用いた補間処理により、第2、第3、第4走査線群の各走査線に対応するRAWデータを補間することで、全RAWデータを生成する。この補間処理による全RAWデータの生成は、例えば図3において、(走査線1に対応する受信データ1と走査線2に対応する受信データ2とから走査線5に対応する受信データ5を作り、受信データ1と受信データ3から走査線6に対応する受信データ6を作り、受信データ1、2、3、4から走査線7に対応する受信データ7を作るなどの手法により生成される。なお、例えば外周の走査線10に対応する受信データは、上記の様な補間を行うことができない。係る走査線については、例えば隣接する走査線と同一の受信データ(例えば走査線11の受信データ11)を用いるか、或いは隣接する走査線の平均(例えば走査線11、12の受信データの平均)を用いて補間することが可能である。高解像度データ生成ユニット26は、第1心拍の各心時相に対応する第1のRAWデータを用いた補間処理を逐次実行することで、各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第1心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、ボリュームデータ生成ユニット27に逐次送り出される。
【0047】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第2RAWデータを受け取ると、第1、第2RAWデータを用いた補間処理により、全RAWデータを生成する。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、第2心拍の最初のR波を基準として、RAWデータメモリ25から受け取った第2心拍における最初の第2RAWデータの心時相を判定し、当該判定された心時相に最も近い心時相を有する第1RAWデータ(例えば、第1心拍の最初の第1RAWデータ或いは2番目の第1RAWデータ)を選択する。高解像度データ生成ユニット26は、選択された第1RAWデータとRAWデータメモリ25からの第2RAWデータとを用いて第3、第4走査線群の各走査線に対応するRAWデータを補間することで、全RAWデータを生成する。同様にして、高解像度データ生成ユニット26は、第2心拍の各心時相に対応する第2のRAWデータと、心時相が対応する第1RAWデータとを用いた補間処理を逐次実行することで、第2心拍の各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第2心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、逐次ボリュームデータ生成ユニット27に送り出される。
【0048】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第3RAWデータを受け取ると、第1、第2、第3RAWデータを用いた補間処理により、全RAWデータを生成する。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、第3心拍の最初のR波を基準として、RAWデータメモリ25から受け取った第3心拍における最初の第3RAWデータの心時相を判定し、当該判定された心時相に最も近い心時相を有する第1、第2RAWデータを選択する。高解像度データ生成ユニット26は、選択された第1、第2RAWデータとRAWデータメモリ25からの第3RAWデータとを用いて、第4走査線群の各走査線に対応するRAWデータを補間することで、全RAWデータを生成する。同様にして、高解像度データ生成ユニット26は、第3心拍の各心時相に対応する第3のRAWデータと、心時相が対応する第1、第2RAWデータとを用いた補間処理を逐次実行することで、第3心拍の各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第3心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、逐次ボリュームデータ生成ユニット27に送り出される。
【0049】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第4RAWデータを受け取ると、第1、第2、第3、第4RAWデータを用いて、全RAWデータを生成する。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、第4心拍の最初のR波を基準として、RAWデータメモリ25から受け取った第4心拍における最初の第4RAWデータの心時相を判定し、当該判定された心時相に最も近い心時相を有する第1、第2、第3RAWデータを選択する。高解像度データ生成ユニット26は、選択された第1、第2、第3RAWデータとRAWデータメモリ25からの第4RAWデータとを用いて、映像化対象領域の全走査線に対応する受信データを構成することで、全RAWデータを生成する。同様にして、高解像度データ生成ユニット26は、第4心拍の各心時相に対応する第4のRAWデータと、心時相が対応する第1、第2、第3RAWデータとを用いて、第4心拍の各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第4心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、ボリュームデータ生成ユニット27に逐次送り出される。
【0050】
この様に、第4心拍では、各心時相において、第1〜第4走査線群に対応する第1〜第4RAWデータの全てが得られる。従って、第4心拍からは補間処理は必要なくなり、実際に取得した全走査線から映像化領域に対応する全RAWデータを逐次生成することが可能である。5心拍目以降(すなわち、二巡目以降)においては、高解像度データ生成ユニット26は、それぞれ走査線群に対応するRAWデータを最新のものに置き換えることで、各心拍の各心時相に対応する全RAWデータを逐次生成していく。
【0051】
なお、本ステップにおける全RAWデータの生成は、図2に示すように、他走査線群に対応する受信ビーム群の取得、RAWデータの生成と並行して逐次実行することが可能である。
【0052】
[全RAWデータを用いたボリュームデータの生成]
ボリュームデータ生成ユニット27は、高解像度データ生成ユニット26において生成された、各心拍の各心時相に対応する全RAWデータから、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを生成する(ステップSD1、SD2、・・・・・)。
【0053】
[三次元画像の生成・表示]
画像処理ユニット28は、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを用いて、ボリュームレンダリング等の所定の処理を実行し、三次元画像を生成する。表示処理ユニット29は、生成された三次元画像に対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。各種処理を受けた三次元画像は、例えば時系列で連続的にモニター14に表示される(ステップSE1、SE2、・・・)。
【0054】
(効果)
以下、本超音波診断装置による効果を、従来の超音波診断装置と対比しながら説明する。
【0055】
従来例の超音波診断装置を用いて三次元走査を行う場合、心拍信号から検出したR波信号に同期して、図15、図16に示すように(1)〜(4)の各セグメントについて、三次元走査領域を変更しながら、三次元走査をそれぞれ1心拍にわたって実施している。走査領域が(1)〜(4)のセグメント間で心拍毎に完全に変わるので、全体の三次元領域のデータを収集、表示するにはセグメント数分の心拍時間を要する(図15、図16の例の場合、4セグメントに分割しているので4心拍の時間を要することになる)。各セグメントが収集したボリュームデータは、R波を基準に同一心時相のボリュームをそれぞれ組み合わせて全体ボリュームデータとし、全体三次元画像として動画表示することになる。
【0056】
また、従来の超音波診断装置では、心拍間隔に差違がある場合、収集出来るボリューム数がセグメント毎に変化する。従って、全体ボリュームを用いて超音波画像を生成し表示するためには、4つのセグメント全ての組合せデータが必要となり、最もボリューム数の少ない心拍(R波間隔の狭い心拍)のボリューム数に合わせる必要がある。このため、よりR波間隔の長い心拍では利用できないボリュームが発生したり、或いは収集そのものを最短R波間隔に合わせて行うなどの仕組みによって、例えば図16の各心拍の末期にあるように、画像の更新が出来ないブランクタイムが発生することになる。
【0057】
以上の様に、従来の超音波診断装置では、心拍同期によるセグメント走査を組み合わせて全三次元画像を構成、表示するため、セグメント数分の心拍が経過するまで三次元領域全体の画像を観察することが出来ず、また心拍の変動に由来して観察できない空白時間が発生してしまう問題がある。また、三次元画像収集中に、呼吸やプローブの動きなどにより収集する画像位置に大きなすれが発生した場合、問題の発生したセグメントの画像は組合せしても正常な画像とならず、三次元画像全体が不適切画像となってしまうため、画像収集を最初からやり直す必要があり、更にセグメント数の心拍を要することになってしまうという問題がある。
【0058】
これに対し、本実施形態に係る超音波診断装置によれば、心臓の少なくとも一部を含む三次元領域である映像化対象領域について、生体信号と同期してリアルタイムでの三次元データ収集を実行する。このデータ収集は、映像化対象領域内において、心拍間隔毎に第1走査線群〜第4走査線群へと走査線の位置を変更しながら実行される。この様なデータ収集によってリアルタイムで得られる同一心時相のRAWデータと、過去の心拍において取得された同一心時相のRAWデータとを用いて、映像化対象領域内の全走査線に対応するボリュームデータを生成し、これを用いて超音波画像を生成し表示する。従って、リアルタイム性を低下させないで映像化対象領域内の走査線密度(空間分解能)を飛躍的に向上させることができる超音波診断装置を、比較的安価で実現することができる。
【0059】
また、本超音波診断装置によれば、第1走査線群〜第4走査線群についての超音波走査は、生体信号を基準として、心拍毎に走査線群を切り換えながらブランクタイムなく実行される。従って、従来に比して時間分解能を向上させることができ、実時間応答性の高い超音波画像診断を比較的安価で実現することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において説明した高解像度データ取得処理では、第2拍以降においては、他の走査線群との合成により映像化対象領域全体に対応する全RAWデータが生成される。しかしながら、データ収集中において、呼吸による体動が発生する場合やプローブの位置ずれ等が発生する場合等、超音波プローブと対象臓器との位置関係が撮像途中でずれてしまうことがある。係る場合において第1の実施形態に係る高解像度データ取得処理を継続して実行すると、空間的にずれのあるRAWデータ同士を用いた合成により全RAWデータを生成することになり、好ましくない。
【0061】
本第2の実施形態に係る超音波診断装置は、体動等により取得した受信データが診断画像データとしての適正を欠く場合には、高解像度データ取得処理(シーケンス)を任意のタイミングで中止し、通常の超音波画像を取得するシーケンスに切り換えるものである。
【0062】
すなわち、本実施形態に係る超音波診断装置1の入力装置13は、高解像度データ取得処理の実行をON/OFFするための専用のスイッチ等を有している。操作者は、例えば高解像度データ取得処理の実行中においてプローブの位置がずれた等の任意のタイミングにおいて、当該ON/OFFスイッチを操作することにより、高解像度データ取得処理を中止することができる。ON/OFFスイッチの操作によって高解像度データ取得処理が中止されると、図6に示すように全RAWデータの生成(合成)処理(図の例では、ステップSC12より後の全RAWデータの生成処理)は実行されず、各心拍の各心時相に対応する第1〜第4RAWデータを用いて、逐次通常の超音波画像が生成され表示される。また、ON/OFFスイッチの操作により、任意のタイミングで高解像度データ取得処理が再会されると、全RAWデータの生成(合成)処理が再度実行され、当該全RAWデータを用いた通常の超音波画像が生成され表示されることになる。
【0063】
以上述べた構成によれば、体動等が発生した場合であっても、高解像度データ取得処理から通常の超音波画像取得処理に任意のタイミングで切り換えることができる。従って、診断対象を時間的に途切れることなく観察し続けることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば、現在の心拍の走査線群に対応するRAWデータと直前の走査線群に対応するRAWデータとの相関を計算し、高解像度データ取得処理のON/OFFを自動的に制御するものである。
【0065】
図7は、第3の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た図である。
【0066】
例えば、第2心拍の最初の時相に対応する第2受信データ群を取得すると、当該第2受信データを用いて所定の断面画像(例えば、図7の(1)に対応する断面画像)が生成されると共に、第1心拍の最初の時相に対応する第1受信データを用いて、同じ位置の断面画像が生成される。制御プロセッサ29は、生成された二つの断面画像の相関を算出し、相関が所定の閾値よりも高い場合には高解像度データ取得処理を継続し(或いは高解像度データ取得処理をONにし)、所定の閾値よりも低い場合には高解像度データ取得処理をOFFにする。なお、相関計算の対象とする断面位置に限定はない。また、走査線群の切り換えタイミングに応じて、例えば図7の(1)、(2)、(3)、(4)から例えば相関計算の対象とする断面位置を任意に選択するようにしてもよい。さらに、所定断面の相関に拘泥されず、他の手法によって相関を計算し、高解像度データ取得処理のON/OFFを自動的に制御するようにしてもよい。
【0067】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば事後的に高解像度データ取得処理を行う場合に、全RAWデータの生成に用いる受信データ群を任意に選択可能とするものである。
【0068】
心拍によって全RAWデータの生成(合成)の適否が存在するのは、記述の通りである。従って、本実施形態では、高解像度データ取得処理のON/OFFを制御するためのユーザインターフェース(UI)を設け、バッファメモリに蓄積された各心拍の各心時相に対応する個々のRAWデータのうち、全RAWデータの生成に用いるRAWデータを選択することができるようにする。
【0069】
図8は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、ECG波形と高解像度データ取得処理のON/OFF制御の対応関係を示した図である。例えば、同図に示すようなECG波形が表示され、各心拍に対応する走査線群毎に選択(ON)と非選択(OFF)とを設定することができる。この場合、同一走査線位置のデータは合成に適さないので、同一走査線群のデータは1つしか選択出来ないようにすることが好ましい。本実施形態によれば、高解像度データ取得処理において超音波プローブと対象臓器との位置関係が様々な理由でずれてしまった場合においても、より鮮明な高分解能の画像を得られる組合せを選択することが可能となる。
【0070】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る超音波診断装置は、診断部位が僅かに移動した場合であっても、補間処理によって段差の抑制された画像を生成するための高解像度データ取得処理を実行するものである。なお、以下においては、説明を具体的にするため、第1走査線群及び第2走査線群の二つの走査線群を用いる場合(すなわち、走査線群の数n=2の場合)を例とする。しかしながら、本実施形態に係る高解像度データ取得処理は、走査線群数nの数に拘泥されない。
【0071】
図9は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理の流れを示したフローチャートである。まず、所定の情報が入力されると(ステップSA31)、ECGユニット35からのECG波形のR波を基準として、第1走査線群と第2走査線群との間で走査線群を僅かにずらしなから(順次切り換えながら)、Bモードによる超音波走査が実行される(ステップSA32、SA33、SA34、・・・・)。すなわち、制御プロセッサ28は、図10に示すようなECG波形において、奇数番目の心拍については第1走査線群についての超音波走査を実行し、偶数番目の心拍については第2走査線群についての超音波走査を実行ように、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御する。取得された各時相に対応する各受信ビーム群は、超音波受信ユニット22を経由してBモード処理ユニット23に逐次送られる。Bモード処理ユニット23は、各受信ビーム群に対して、対数増幅処理、包絡線検波処理等を実行する。
【0072】
次に、RAWデータメモリ25は、各心拍において取得された各心時相に対応する第1受信ビーム群、第2の受信ビーム群を順次取得し、奇数心拍の各心時相に対応する第1RAWデータ、偶数心拍の各心時相に対応する第2RAWデータを取得する(ステップSB31、SB32、・・・・)。
【0073】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25において生成され
るRAWデータを用いて、映像化対象領域に対応する全RAWデータを生成する(ステップSC31、SC32、・・・・・)。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータを受け取ると、当該各第1RAWデータを用いて、第1心拍の各時相に対応する第2RAWデータを補間処理によって生成する。この補間処理は、例えば図11の例えば第1走査線群に含まれる走査線1、2、3、4から、第2走査線群に含まれる走査線5を合成する等の手法により実行される。高解像度データ生成ユニット26は、補間処理によって生成された第1心拍の各時相に対応する第2RAWデータと、RAWデータメモリ25から受け取った第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータと、を用いて、第1心拍の各時相に対応する全RAWデータを生成する。
【0074】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第2心拍の各時相に対応する第2RAWデータを受け取ると、当該各第2RAWデータと第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータとを用いて、補間により生成された走査線群(補間走査線群)を生成する。例えば、高解像度データ生成ユニット26は、図11において第1走査線群に属する走査線4と第2走査線群に属する走査線5とから、補間走査線群に属する走査線6を生成する。高解像度データ生成ユニット26は、補間処理によって生成された各時相に対応する補間走査線群と、第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータと、RAWデータメモリ25から受け取った第2心拍の各時相に対応する第2RAWデータと、を用いて、第2心拍の各時相に対応する全RAWデータを生成する。
【0075】
第3心拍以降においては、第1RAWデータ、第2RAWデータのそれぞれを逐次更新し、補間処理によって同様に補間走査線群に対応する走査線を生成し、各心拍の各時相に対応する全RAWデータを生成する。
【0076】
ボリュームデータ生成ユニット27は、高解像度データ生成ユニット26において生成された、各心拍の各心時相に対応する全RAWデータをボリューム単位に変換し、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを生成する(ステップSD31、SD32、・・・・・)。画像処理ユニット28は、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを用いて、ボリュームレンダリング等の所定の処理を実行し、三次元画像を生成する。表示処理ユニット29は、生成された三次元画像に対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。各種処理を受けた三次元画像は、例えば時系列で連続的にモニター14に表示される(ステップSE31、SE32、・・・)。
【0077】
以上述べた構成によれば、第1走査線群を用いて、或いは第1走査線群と第2走査線群を用いて補間走査線群を生成し、第1、第2RAWデータと補間走査線群とを用いて全RAWデータを生成する。従って、第1走査線群の超音波走査と第2走査線群の超音波走査との間において対象臓器が種々の理由で僅かに動いたような場合であっても、補間走査線群によって全RAWデータ内の第1、第2RAWデータの間の段差を滑らかにすることができる。その結果、全体としてスムーズな三次元超音波画像を作成、提供することが可能となる。
【0078】
また、現実の超音波走査によって取得される受信ビーム群は、第1走査線群と第2走査線群とに対応するものである。従って、現実の走査線間隔は、例えば図11の走査線1と走査線5との間の距離である。これに対し、本実施形態においては、補間走査線群を生成し全RAWデータの合成に用いるため、全RAWデータにおける走査線間隔は、例えば図11の走査線5と走査線6との間の距離となり、現実の走査線間隔のルート2分の1となる。その結果、全体としてスムーズな三次元超音波画像を作成、提供することが可能となる。
【0079】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る超音波診断装置1は、ECG信号に基づいて心拍毎に走査線位置を変えて受信信号を収集する際に、何らかの理由で対象部位が僅かに移動した場合であっても、走査線の位置補正処理を行うことで、段差の抑制された画像を生成するための高解像度データ取得処理を実行するものである。
【0080】
図12(a)、(b)、(c)は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図である。対象部位が実質的に移動していない場合には、高解像度データ取得処理は、合成処理に十分な各走査線群が例えば図12(a)に示すような所定の配列形態を有するものとして実行される。しかしながら、何らかの理由で対象部位が僅かに移動した場合、移動後の最新時相に対応する受信データは、図12(b)に示すように、過去時相に対応する受信データに対して位置がずれることとなる。
【0081】
高解像度データ生成ユニット26は、同一時相に対応する受信データ同士及び心時相が前後に対応する受信データ同士の少なくとも一方の間で位置を比較する。高解像度データ生成ユニット26は、比較の結果、所定の値以上の位置ずれを検出した場合には、対象部位が移動したとして(対象部位と超音波プローブとの位置関係が変更されたとして)、位置ずれを検出した時相に対応する走査線群(及びこれに対応する受信データ)の空間的位置を、例えば図12(a)の状態から図12(b)の状態に補正する。高解像度データ生成ユニット26は、位置補正後の各走査線群に対応する受信データを用いて、高解像度データを生成する。
【0082】
なお、上記位置ずれは、同一時相に対応する受信データ同士、心時相が前後に対応する(時間的に隣り合う)受信データ同士、空間的に隣り合う受信データ同士の相関の少なくともいずれか一つの相関値に基づいて検出することができる。位置ずれを検出した場合には、例えば図12(c)に示す様に、比較する二つのデータの所定領域や所定位置(左室内膜位置等)を三次元的に検出し、その位置の変位ベクトルを算出し、当該走査線群の各位置に対応する各データの空間的位置を、変位ベクトルに基づいて移動させる。
【0083】
以上述べた構成によれば、撮像中に対象部位が僅かに移動し、各時相に対応する走査線群の間で僅かな位置ずれが発生した場合であっても、当該位置ずれの影響を解消し、解像度の低下を抑制することが可能である。
【0084】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る超音波診断装置は、実際の超音波走査によって取得された異なる4つの走査線に対応する受信データに基づいて、補間走査線に対応する受信データを生成するものである。
【0085】
図13は、本第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た場合の走査線の分布を示した図である。同図の例では、第1走査線群〜第4走査線群の各走査線が正方形の各頂点に位置するように走査線群を分類したものである。
【0086】
同図において、正方形の各頂点に対応する第1走査線群〜第4走査線群の各走査線に対応する各受信データを用いて、補間走査線群に含まれる一つの走査線を補間する(例えば、走査線1、2、3、4に対応する各受信データを用いて、走査線5に対応する受信データを補間する)。高解像度データ生成ユニット26は、第1走査線群〜第4走査線群の各走査線に対応する受信データ、及び補間走査線群の走査線に対応する受信データを用いて、全RAWデータを生成する。従って、第1走査線群〜第4走査線群の間で空間的な位置ずれ等が発生した場合であっても、補間データにより、空間的な位置ずれを抑制することができ、滑らかな三次元画像を生成し表示することができる。
【0087】
また、図14は、本第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理の他の適用例を説明するための図である。同図に示すように、第1〜第4走査線群を連続して超音波走査する場合、心拍の異なる第1〜第4走査線群の間で、本来対応する心時相がフレームレートの1/2程度ずれる場合がある。係る場合においても、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を実行することで、時間的なずれを抑制することができ、滑らかな三次元画像を生成し表示することができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0089】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0090】
(2)上記各実施形態においては、心臓を対象とし、心拍同期信号を利用する構成で説明している。しかしながら、診断対象(映像化対象)は心臓に限らず、他の臓器であってもよい。第1走査線群〜第4走査線群を切り換える基準としての生体信号も、ECG波形に拘泥されず、例えば臓器を腹部領域にした場合、同期信号は呼吸の周期信号を利用することも可能である。
【0091】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上本発明によれば、を実現することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…血流検出ユニット、25…RAWデータメモリ、26…高解像度データ生成ユニット26…ボリュームデータ生成ユニット、28…画像処理ユニット、29…制御プロセッサ、30…表示処理ユニット、31…記憶ユニット、32…インタフェースユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波により生体内を画像化し診断を行う医用超音波診断装置に関するものであり、超音波画像を立体的に表示する超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに設けられた振動素子から発生する超音波パルスを被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる超音波反射波を前記振動素子により受信して生体情報を収集するものである。超音波診断装置は、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作で画像データのリアルタイム表示が可能となるため、各種臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
近年、超音波診断装置は三次元画像の高速な収集と表示が可能なシステムが急速に開発されており、三次元画像や三次元画像の動画といった、これまでと視野の異なる診断画像を提供できるようになってきている。その一方で、超音波診断装置は生体内を伝播する超音波を利用した画像診断であるため、三次元画像対応となっても、単位時間あたりに送受信できる走査線の数には制限がある。このため、高分解能で広範囲の三次元領域を走査するために様々な手法が試みられている。超音波診断装置を用いて広範囲領域を映像化する場合、基本的には、小領域の三次元空間を走査した画像データを繋ぎ合わせて広範囲の三次元画像にしていくものとなる。しかしながら、生体の画像を収集する場合、部位によっては呼吸による動きや心臓の鼓動による動きなどがあり、そのような場合、動きに同期した三次元画像の収集が必要となる。
【0004】
そこで、近年採用されているものとして、心臓の動きに同期して複数の小領域三次元動画像を収集し、それらを組み合わせて心臓全体の三次元動画像を作成する方法等がある(例えば、特許文献1参照)。当該手法では、心臓の動きに同期して複数の小領域三次元動画像を収集、合成する。このとき、例えばECG信号などの生体信号を利用して心臓の動きと同期させる場合が多い。より具体的には、例えば図15、図16に示すように、超音波診断装置で観察したい心臓の三次元領域全体を複数のセグメント(図の例では4つのセグメント)に分割し、各セグメントについてECG信号の一心拍分収集する。このとき、一心拍分のデータは、例えば図16に示すように、R波が発生する拡張末期付近を基準に心拍周期において同時相のデータとして収集する。そして、取得したセグメント毎のデータを、図15、図16に示すように同一時相のデータが空間的に連続するようにつなぎ合わせることで、三次元領域に対応するデータを生成する。これにより、各セグメントは三次元空間的を分割したものであるが、空間的に連続した三次元領域に対応するデータを再構成するため、結果的にあたかも観察したい心臓の三次元領域全体の動画像を一度に収集、表示したような三次元画像を提供することができる。
【0005】
上記方法においては、各セグメントを合成した全体の三次元動画像が一つの三次元動画像として見えるためには、各セグメントが空間的に完全に連続し、時相的には全く同一の心拍間隔の同一時相を収集する必要がある。しかしながら、現実には、人体の場合呼吸による動きや超音波探触子の動きなど空間的な連続性を阻害する要因がある。また、拍動には一般にばらつきがあるため時間的な連続性を阻害する要因もある。従って、上記手法により完全な三次元動画全体像を収集表示することは、現実的には非常に困難であると言える。
【0006】
上述のような問題を解決するために、超音波診断装置が同時に受信する受信ビーム数を増加させ、心拍による同期を用いなくても必要な三次元空間領域を一度に走査するシステム(すなわち、真のリアルタイム三次元超音波画像の生成・表示を実現するためのシステム)の開発が進んでいる。当該システムでは、単純に送信超音波ビームの領域を拡大し、同時に受信する走査線数を増加させる。このため、原理的には画質性能やリアルタイム性能に関して二次元超音波システムに近づいていくことが可能であるが、実際には同時に処理する受信ビーム数をこれまので十倍から数十倍に増加させる必要がある。また、この場合、受信ビーム間の感度ムラなど無くし均一にする等、実用化のための解決すべき課題が多いのが現実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6544175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、超音波診断装置を用いて、特に心臓領域において三次元画像の収集と表示をリアルタイムに行おうとする場合、画質性能(走査線密度)とリアルタイム性(フレームレート)を両立することが技術的な課題の一つである。しかしながら、上述した従来の超音波診断装置においては、次のような問題がある。
【0009】
心拍同期による部分的な領域の走査を複数組み合わせる手法の場合、実際にリアルタイムの三次元像を観察出来るのは一つのセグメントに限られ、また収集を開始してから所望の三次元領域全体を観察出来るのは全セグメントの収集が終了した後になってしまう。また、一部のセグメント画像の収集が不全の場合、全体が利用できなくなってしまう。さらに、各セグメント収集時の心拍のバラツキによりセグメント間に画像の段差が発生したり、心拍のバラツキに依存して1心拍内の収集ボリューム数に差違が生じるためにデータを収集出来ない時間(ブランクタイム)が発生する等の問題点も存在する。
【0010】
一方で、並列に受信する走査線数を増大させる場合、上記のような問題は発生しない。しかしながら、受信走査線数に応じて回路規模が増大し、コストが増大するばかりでなく、同時受信走査線数を増大させる場合に、送信音場に依存した走査線間の感度バラツキを抑制する手段など別の問題が発生してしまう。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、画質性能(走査線密度)とリアルタイム性(フレームレート)を両立させつつ、三次元画像収集及びリアルタイム表示を実現することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像取得プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0013】
請求項1に記載の発明は、被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得するデータ取得ユニットと、心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、前記各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上本発明によれば、画質性能とリアルタイム性を両立させつつ、三次元画像収集及びリアルタイム表示を実現することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像取得プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、本高解像度データ取得機能に従う処理(高解像度データ取得処理)の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、映像化対象領域内に含まれる第1〜第4の走査線群を説明するための図である。
【図4】図4は、第1〜第4の走査線群によって定義される第1〜第4走査線群の一例を示した図である。
【図5】図5は、ECG波形のR波を基準として心拍毎に走査線群を第1〜第4走査線群の間で切り換えながら連続的に実行される超音波走査のシーケンスを説明するための図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図である。
【図7】図7は、第3の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、ECG波形と高解像度データ取得処理のON/OFF制御の対応関係を示した図である。
【図9】図9は、第5の実施形態に係る高解像度データ取得処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、第5の実施形態に係る高解像度データ取得処理において実行される超音波走査のシーケンスを説明するための図である。
【図11】図11は、第5の実施形態に係る高解像度データ取得処理において実行される補間処理を説明するための図である。
【図12】図12(a)、(b)、(c)は、第6の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図である。
【図13】図13は、第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た場合の走査線の分布を示した図である。
【図14】図14は、第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理の他の適用例を説明するための図である。
【図15】図15は、三次元超音波走査の従来の手法を説明するための図である。
【図16】図16は、三次元超音波走査の従来の手法を説明するための図である。
【図17】図17は、三次元超音波走査の従来の手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0017】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、血流検出ユニット24、RAWデータメモリ25、高解像度データ生成ユニット26、ボリュームデータ生成ユニット27、画像処理ユニット28、制御プロセッサ(CPU)29、表示処理ユニット30、記憶ユニット31、インタフェースユニット32を具備している。また、超音波診断装置1には、被検体のECG波形を計測するためのECGユニット35が接続されている。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0018】
超音波プローブ12は、被検体に対して超音波を送信し、当該送信した超音波に基づく被検体からの反射波を受信するデバイス(探触子)であり、その先端に複数に配列された圧電振動子、整合層、バッキング材等を有している。圧電振動子は、超音波送信ユニット21からの駆動信号に基づきスキャン領域内の所望の方向に超音波を送信し、当該被検体からの反射波を電気信号に変換する。整合層は、当該圧電振動子に設けられ、超音波エネルギーを効率良く伝播させるための中間層である。バッキング材は、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止する。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送受信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0019】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ12は、ボリュームデータを取得可能なものとして、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)であるとする。しかしながら、当該例に拘泥されず、超音波プローブ12として例えばメカニカル4Dプローブ(超音波振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なプローブ)を取得することも可能である。
【0020】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。また、入力装置13は、後述する高解像度データ取得機能において、診断部位を入力するための専用スイッチ、映像化に用いるカラーデータの範囲を制御するための専用ツマミ、ボクセルの透明度(不透明度)を制御するための専用ツマミ等を有している。
【0021】
モニター14は、表示処理ユニット30からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0022】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。トリガ発生回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのトリガパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各トリガパルスに与えられる。パルサ回路は、このトリガパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0023】
なお、超音波送信ユニット21は、制御プロセッサ29の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0024】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、遅延回路、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたアナログのエコー信号をデジタルエコー信号に変換する。遅延回路では、デジタル変換されたたエコー信号に対し受信指向性を決定し、受信ダイナミックフォーカスを行うのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0025】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0026】
血流検出ユニット24は、受信ユニット22から受け取ったエコー信号から血流信号を抽出し、血流データを生成する。血流の抽出は、通常CFM(Color Flow Mapping)で行われる。この場合、血流信号を解析し、血流データとして平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0027】
RAWデータメモリ25は、Bモード処理ユニット23から受け取った複数のBモードデータを用いて、三次元的な超音波走査線上のBモードデータであるBモードRAWデータを生成する。また、RAWデータメモリ25は、血流検出ユニット24から受け取った複数の血流データを用いて、三次元的な超音波走査線上の血流データである血流RAWデータを生成する。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、RAWデータメモリ25の後に三次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0028】
高解像度データ生成ユニット26は、制御プロセッサ29からの制御に従って、後述する高解像度データ取得機能を実行する。
【0029】
ボリュームデータ生成ユニット27は、RAWデータをボリューム単位へのデータ配置に変換することにより、RAWデータメモリ25或いは高解像度データ生成ユニット26から受け取ったBモードRAWデータからBモードボリュームデータを生成する。この変換は、空間的な位置情報を加味した処理により、画像生成処理において用いられる視体積内の各視線上のBモードボリュームデータを生成するものである。なお、本実施形態においては、上記変換処理によって生成されたBモードボリュームデータを用いて、後述する高解像度データ取得機能に従う処理を実行する場合を例とする。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば、RAW−ボクセル変換を実行することで生成されるBモードボクセルボリュームデータを用いて、高解像度データ取得機能に従う処理を実行するようにしてもよい。
【0030】
画像処理ユニット28は、ボリュームデータ生成ユニット27から受け取るボリュームデータに対して、ボリュームレンダリング、多断面変換表示(MPR:multi planar reconstruction)、最大値投影表示(MIP:maximum intensity projection)等の所定の画像処理を行う。
【0031】
なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、画像処理ユニット28の後に二次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0032】
制御プロセッサ29は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ29は、記憶ユニット31から後述する高解像度データ取得機能を実現するための専用プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0033】
表示処理ユニット30は、画像処理ユニット28において生成・処理された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。
【0034】
記憶ユニット31は、後述する高解像度データ取得機能を実現するための専用プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、図示しない画像メモリ中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット31のデータは、インタフェースユニット32を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0035】
インタフェースユニット32は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェースユニット32よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0036】
(高解像度データ取得機能)
次に、本超音波診断装置1が有する高解像度データ取得機能について説明する。本機能では、心臓の少なくとも一部を含む三次元領域である映像化対象領域について、生体信号(例えばECG波形)と同期してリアルタイムでの三次元データ収集(いわゆる四次元データ収集)を実行する。このデータ収集は、映像化対象領域内において、心拍間隔毎に走査線の位置を変更しながら実行される。この様なデータ収集によってリアルタイムで得られる同一心時相ボリュームデータ(ライブボリュームデータ)と、過去の心拍において取得された同一心時相のボリュームデータとを用いて、映像化対象領域内の全走査線に対応するボリュームデータを生成し、これを用いて超音波画像を生成し表示するものである。
【0037】
図2は、本高解像度データ取得機能に従う処理(高解像度データ取得処理)の流れを示したフローチャートである。同図に従って、高解像度データ取得処理の各内容の内容について説明する。
【0038】
[患者情報、送受信条件、走査線群数等の入力]
まず、入力装置13を介して患者情報の入力、送受信条件(被走査領域の大きさを決めるための画角、焦点位置、送信電圧等)、被検体の所定領域を超音波走査するための撮像モード、スキャンシーケンス、走査線群数n等の入力・選択が実行される(ステップSA1)。入力、選択された各種情報・条件等は、自動的に記憶ユニット31に記憶される。ここで、走査線群とは、映像化対象領域を映像化するために、当該領域に含まれる(定義される)全走査線を、異なる走査線の組み合わせで分類(グルーピング)した走査線の集合である。本実施形態では、説明を具体的にするため、n=4の場合を例とする。
【0039】
図3は、走査線群を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た図である。同図に示すように、映像化対象領域内に含まれる全走査線を所望の組み合わせによって分類し、第1〜第4の走査線群を形成するものとする。また、この分類に対応して、第1〜第4の走査線群によって定義される第1〜第4走査線群は、例えば図4に示すような錐状の領域となる。なお、走査線群数nは、自然数であればいくつであってもよい。また、各走査線群を構成する複数の走査線は、どのような組み合わせでグルーピングされても良い。例えば、各走査線群に含まれる複数の走査線を、(偏在することなく)映像化対象領域内に均等に分配されように(映像化対象領域内において空間的に分散するように)分類することが好ましい。
【0040】
[第1〜第4走査線群に対応する第1〜第4の受信ビーム群の取得]
次に、超音波プローブ12が被検体表面の所望の位置に当接され、ECGユニット35からのECG波形のR波を基準として、第1走査線群から第4走査線群までの4つのパターンによって走査線群(被走査領域)を心拍毎に僅かにずらしなから(順次切り換えながら)、Bモードによる超音波走査が実行される(ステップSA2、SA3、SA4、・・・・)。すなわち、制御プロセッサ28は、図5に示すように、最初のECG波形(第1心拍)のR波を検出すると、第1走査線群を連続的に超音波走査し、各心時相における第1走査線群に対応する第1の受信ビーム群を取得するように、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御する。また、制御プロセッサ28は、次のECG波形(第2心拍)のR波を検出すると、図3、図4に示すように、第1走査線群から第2走査線群に切り換え、第2走査線群を連続的に超音波走査し、各心時相における第2走査線群に対応する第2の受信ビーム群を取得するように、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御する。
【0041】
以降、ECG波形のR波を基準として、被走査領域が順次切り換えられ、各心時相における第3走査線群に対応する第3の受信ビーム群、第4走査線群に対応する第4の受信ビーム群が取得される。また、第5心拍のECG波形の最初のR波を基準として、第1走査線群について二巡目の各心時相における第1の受信ビーム群が取得される。取得された各時相に対応する各受信ビーム群は、逐次超音波受信ユニット22を経由してBモード処理ユニット23に送られる。Bモード処理ユニット23は、各受信ビーム群に対して、対数増幅処理、包絡線検波処理等を実行する。
【0042】
なお、被走査領域の切り換えは、制御プロセッサ29において、予め記憶ユニット30から読み出し自身のメモリに予め記憶した走査線群毎の各走査線の情報を用いて、或いはリアルタイム(すなわち、一つの走査線群を走査する時間内)で計算した走査線群毎の各走査線の情報を用いて、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御することによって実行される。
【0043】
また、本ステップにおける各走査線群についての三次元走査は、図5に示した様にブランクタイムなく実行される。従って、三次元超音波走査を時間的に連続に実行することができ、従来に比して時間分解能を向上させることができる。
【0044】
[第1〜第4走査線群に対応する第1〜第4のRAWデータ群の生成]
次に、RAWデータメモリ25は、図5に示す第1心拍において取得された各心時相に対応する第1の受信ビーム群をBモード処理ユニット23より取得し、各心時相に対応する第1RAWデータを取得する。同じくRAWデータメモリ25は、図5に示す第2心拍において取得された各心時相に対応する第2の受信ビーム群をBモード処理ユニット23より取得し、各心時相に対応する第2RAWデータを取得する。以降、同様にして、第3心拍の各心時相に対応する第3RAWデータ、第4心拍の各心時相に対応する第4RAWデータ、第5心拍の各心時相に対応する二巡目の第1RAWデータ等が逐次取得される。なお、本ステップにおけるRAWデータの生成は、図2に示すように、他走査線群に対応する受信ビーム群の取得と並行して逐次実行することが可能である。
【0045】
[全RAWデータの生成処理]
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25において生成され
るRAWデータを用いて、映像化対象領域全体に対応する全RAWデータを生成する(ステップSC1、SC2、・・・・・)。
【0046】
すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第1RAWデータを受け取ると、当該第1RAWデータを用いた補間処理により、第2、第3、第4走査線群の各走査線に対応するRAWデータを補間することで、全RAWデータを生成する。この補間処理による全RAWデータの生成は、例えば図3において、(走査線1に対応する受信データ1と走査線2に対応する受信データ2とから走査線5に対応する受信データ5を作り、受信データ1と受信データ3から走査線6に対応する受信データ6を作り、受信データ1、2、3、4から走査線7に対応する受信データ7を作るなどの手法により生成される。なお、例えば外周の走査線10に対応する受信データは、上記の様な補間を行うことができない。係る走査線については、例えば隣接する走査線と同一の受信データ(例えば走査線11の受信データ11)を用いるか、或いは隣接する走査線の平均(例えば走査線11、12の受信データの平均)を用いて補間することが可能である。高解像度データ生成ユニット26は、第1心拍の各心時相に対応する第1のRAWデータを用いた補間処理を逐次実行することで、各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第1心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、ボリュームデータ生成ユニット27に逐次送り出される。
【0047】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第2RAWデータを受け取ると、第1、第2RAWデータを用いた補間処理により、全RAWデータを生成する。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、第2心拍の最初のR波を基準として、RAWデータメモリ25から受け取った第2心拍における最初の第2RAWデータの心時相を判定し、当該判定された心時相に最も近い心時相を有する第1RAWデータ(例えば、第1心拍の最初の第1RAWデータ或いは2番目の第1RAWデータ)を選択する。高解像度データ生成ユニット26は、選択された第1RAWデータとRAWデータメモリ25からの第2RAWデータとを用いて第3、第4走査線群の各走査線に対応するRAWデータを補間することで、全RAWデータを生成する。同様にして、高解像度データ生成ユニット26は、第2心拍の各心時相に対応する第2のRAWデータと、心時相が対応する第1RAWデータとを用いた補間処理を逐次実行することで、第2心拍の各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第2心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、逐次ボリュームデータ生成ユニット27に送り出される。
【0048】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第3RAWデータを受け取ると、第1、第2、第3RAWデータを用いた補間処理により、全RAWデータを生成する。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、第3心拍の最初のR波を基準として、RAWデータメモリ25から受け取った第3心拍における最初の第3RAWデータの心時相を判定し、当該判定された心時相に最も近い心時相を有する第1、第2RAWデータを選択する。高解像度データ生成ユニット26は、選択された第1、第2RAWデータとRAWデータメモリ25からの第3RAWデータとを用いて、第4走査線群の各走査線に対応するRAWデータを補間することで、全RAWデータを生成する。同様にして、高解像度データ生成ユニット26は、第3心拍の各心時相に対応する第3のRAWデータと、心時相が対応する第1、第2RAWデータとを用いた補間処理を逐次実行することで、第3心拍の各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第3心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、逐次ボリュームデータ生成ユニット27に送り出される。
【0049】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第4RAWデータを受け取ると、第1、第2、第3、第4RAWデータを用いて、全RAWデータを生成する。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、第4心拍の最初のR波を基準として、RAWデータメモリ25から受け取った第4心拍における最初の第4RAWデータの心時相を判定し、当該判定された心時相に最も近い心時相を有する第1、第2、第3RAWデータを選択する。高解像度データ生成ユニット26は、選択された第1、第2、第3RAWデータとRAWデータメモリ25からの第4RAWデータとを用いて、映像化対象領域の全走査線に対応する受信データを構成することで、全RAWデータを生成する。同様にして、高解像度データ生成ユニット26は、第4心拍の各心時相に対応する第4のRAWデータと、心時相が対応する第1、第2、第3RAWデータとを用いて、第4心拍の各心時相に対応する全RAWデータを生成する。生成した第4心拍の各心時相に対応する全RAWデータは、ボリュームデータ生成ユニット27に逐次送り出される。
【0050】
この様に、第4心拍では、各心時相において、第1〜第4走査線群に対応する第1〜第4RAWデータの全てが得られる。従って、第4心拍からは補間処理は必要なくなり、実際に取得した全走査線から映像化領域に対応する全RAWデータを逐次生成することが可能である。5心拍目以降(すなわち、二巡目以降)においては、高解像度データ生成ユニット26は、それぞれ走査線群に対応するRAWデータを最新のものに置き換えることで、各心拍の各心時相に対応する全RAWデータを逐次生成していく。
【0051】
なお、本ステップにおける全RAWデータの生成は、図2に示すように、他走査線群に対応する受信ビーム群の取得、RAWデータの生成と並行して逐次実行することが可能である。
【0052】
[全RAWデータを用いたボリュームデータの生成]
ボリュームデータ生成ユニット27は、高解像度データ生成ユニット26において生成された、各心拍の各心時相に対応する全RAWデータから、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを生成する(ステップSD1、SD2、・・・・・)。
【0053】
[三次元画像の生成・表示]
画像処理ユニット28は、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを用いて、ボリュームレンダリング等の所定の処理を実行し、三次元画像を生成する。表示処理ユニット29は、生成された三次元画像に対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。各種処理を受けた三次元画像は、例えば時系列で連続的にモニター14に表示される(ステップSE1、SE2、・・・)。
【0054】
(効果)
以下、本超音波診断装置による効果を、従来の超音波診断装置と対比しながら説明する。
【0055】
従来例の超音波診断装置を用いて三次元走査を行う場合、心拍信号から検出したR波信号に同期して、図15、図16に示すように(1)〜(4)の各セグメントについて、三次元走査領域を変更しながら、三次元走査をそれぞれ1心拍にわたって実施している。走査領域が(1)〜(4)のセグメント間で心拍毎に完全に変わるので、全体の三次元領域のデータを収集、表示するにはセグメント数分の心拍時間を要する(図15、図16の例の場合、4セグメントに分割しているので4心拍の時間を要することになる)。各セグメントが収集したボリュームデータは、R波を基準に同一心時相のボリュームをそれぞれ組み合わせて全体ボリュームデータとし、全体三次元画像として動画表示することになる。
【0056】
また、従来の超音波診断装置では、心拍間隔に差違がある場合、収集出来るボリューム数がセグメント毎に変化する。従って、全体ボリュームを用いて超音波画像を生成し表示するためには、4つのセグメント全ての組合せデータが必要となり、最もボリューム数の少ない心拍(R波間隔の狭い心拍)のボリューム数に合わせる必要がある。このため、よりR波間隔の長い心拍では利用できないボリュームが発生したり、或いは収集そのものを最短R波間隔に合わせて行うなどの仕組みによって、例えば図16の各心拍の末期にあるように、画像の更新が出来ないブランクタイムが発生することになる。
【0057】
以上の様に、従来の超音波診断装置では、心拍同期によるセグメント走査を組み合わせて全三次元画像を構成、表示するため、セグメント数分の心拍が経過するまで三次元領域全体の画像を観察することが出来ず、また心拍の変動に由来して観察できない空白時間が発生してしまう問題がある。また、三次元画像収集中に、呼吸やプローブの動きなどにより収集する画像位置に大きなすれが発生した場合、問題の発生したセグメントの画像は組合せしても正常な画像とならず、三次元画像全体が不適切画像となってしまうため、画像収集を最初からやり直す必要があり、更にセグメント数の心拍を要することになってしまうという問題がある。
【0058】
これに対し、本実施形態に係る超音波診断装置によれば、心臓の少なくとも一部を含む三次元領域である映像化対象領域について、生体信号と同期してリアルタイムでの三次元データ収集を実行する。このデータ収集は、映像化対象領域内において、心拍間隔毎に第1走査線群〜第4走査線群へと走査線の位置を変更しながら実行される。この様なデータ収集によってリアルタイムで得られる同一心時相のRAWデータと、過去の心拍において取得された同一心時相のRAWデータとを用いて、映像化対象領域内の全走査線に対応するボリュームデータを生成し、これを用いて超音波画像を生成し表示する。従って、リアルタイム性を低下させないで映像化対象領域内の走査線密度(空間分解能)を飛躍的に向上させることができる超音波診断装置を、比較的安価で実現することができる。
【0059】
また、本超音波診断装置によれば、第1走査線群〜第4走査線群についての超音波走査は、生体信号を基準として、心拍毎に走査線群を切り換えながらブランクタイムなく実行される。従って、従来に比して時間分解能を向上させることができ、実時間応答性の高い超音波画像診断を比較的安価で実現することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において説明した高解像度データ取得処理では、第2拍以降においては、他の走査線群との合成により映像化対象領域全体に対応する全RAWデータが生成される。しかしながら、データ収集中において、呼吸による体動が発生する場合やプローブの位置ずれ等が発生する場合等、超音波プローブと対象臓器との位置関係が撮像途中でずれてしまうことがある。係る場合において第1の実施形態に係る高解像度データ取得処理を継続して実行すると、空間的にずれのあるRAWデータ同士を用いた合成により全RAWデータを生成することになり、好ましくない。
【0061】
本第2の実施形態に係る超音波診断装置は、体動等により取得した受信データが診断画像データとしての適正を欠く場合には、高解像度データ取得処理(シーケンス)を任意のタイミングで中止し、通常の超音波画像を取得するシーケンスに切り換えるものである。
【0062】
すなわち、本実施形態に係る超音波診断装置1の入力装置13は、高解像度データ取得処理の実行をON/OFFするための専用のスイッチ等を有している。操作者は、例えば高解像度データ取得処理の実行中においてプローブの位置がずれた等の任意のタイミングにおいて、当該ON/OFFスイッチを操作することにより、高解像度データ取得処理を中止することができる。ON/OFFスイッチの操作によって高解像度データ取得処理が中止されると、図6に示すように全RAWデータの生成(合成)処理(図の例では、ステップSC12より後の全RAWデータの生成処理)は実行されず、各心拍の各心時相に対応する第1〜第4RAWデータを用いて、逐次通常の超音波画像が生成され表示される。また、ON/OFFスイッチの操作により、任意のタイミングで高解像度データ取得処理が再会されると、全RAWデータの生成(合成)処理が再度実行され、当該全RAWデータを用いた通常の超音波画像が生成され表示されることになる。
【0063】
以上述べた構成によれば、体動等が発生した場合であっても、高解像度データ取得処理から通常の超音波画像取得処理に任意のタイミングで切り換えることができる。従って、診断対象を時間的に途切れることなく観察し続けることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば、現在の心拍の走査線群に対応するRAWデータと直前の走査線群に対応するRAWデータとの相関を計算し、高解像度データ取得処理のON/OFFを自動的に制御するものである。
【0065】
図7は、第3の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た図である。
【0066】
例えば、第2心拍の最初の時相に対応する第2受信データ群を取得すると、当該第2受信データを用いて所定の断面画像(例えば、図7の(1)に対応する断面画像)が生成されると共に、第1心拍の最初の時相に対応する第1受信データを用いて、同じ位置の断面画像が生成される。制御プロセッサ29は、生成された二つの断面画像の相関を算出し、相関が所定の閾値よりも高い場合には高解像度データ取得処理を継続し(或いは高解像度データ取得処理をONにし)、所定の閾値よりも低い場合には高解像度データ取得処理をOFFにする。なお、相関計算の対象とする断面位置に限定はない。また、走査線群の切り換えタイミングに応じて、例えば図7の(1)、(2)、(3)、(4)から例えば相関計算の対象とする断面位置を任意に選択するようにしてもよい。さらに、所定断面の相関に拘泥されず、他の手法によって相関を計算し、高解像度データ取得処理のON/OFFを自動的に制御するようにしてもよい。
【0067】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば事後的に高解像度データ取得処理を行う場合に、全RAWデータの生成に用いる受信データ群を任意に選択可能とするものである。
【0068】
心拍によって全RAWデータの生成(合成)の適否が存在するのは、記述の通りである。従って、本実施形態では、高解像度データ取得処理のON/OFFを制御するためのユーザインターフェース(UI)を設け、バッファメモリに蓄積された各心拍の各心時相に対応する個々のRAWデータのうち、全RAWデータの生成に用いるRAWデータを選択することができるようにする。
【0069】
図8は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、ECG波形と高解像度データ取得処理のON/OFF制御の対応関係を示した図である。例えば、同図に示すようなECG波形が表示され、各心拍に対応する走査線群毎に選択(ON)と非選択(OFF)とを設定することができる。この場合、同一走査線位置のデータは合成に適さないので、同一走査線群のデータは1つしか選択出来ないようにすることが好ましい。本実施形態によれば、高解像度データ取得処理において超音波プローブと対象臓器との位置関係が様々な理由でずれてしまった場合においても、より鮮明な高分解能の画像を得られる組合せを選択することが可能となる。
【0070】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る超音波診断装置は、診断部位が僅かに移動した場合であっても、補間処理によって段差の抑制された画像を生成するための高解像度データ取得処理を実行するものである。なお、以下においては、説明を具体的にするため、第1走査線群及び第2走査線群の二つの走査線群を用いる場合(すなわち、走査線群の数n=2の場合)を例とする。しかしながら、本実施形態に係る高解像度データ取得処理は、走査線群数nの数に拘泥されない。
【0071】
図9は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理の流れを示したフローチャートである。まず、所定の情報が入力されると(ステップSA31)、ECGユニット35からのECG波形のR波を基準として、第1走査線群と第2走査線群との間で走査線群を僅かにずらしなから(順次切り換えながら)、Bモードによる超音波走査が実行される(ステップSA32、SA33、SA34、・・・・)。すなわち、制御プロセッサ28は、図10に示すようなECG波形において、奇数番目の心拍については第1走査線群についての超音波走査を実行し、偶数番目の心拍については第2走査線群についての超音波走査を実行ように、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22を制御する。取得された各時相に対応する各受信ビーム群は、超音波受信ユニット22を経由してBモード処理ユニット23に逐次送られる。Bモード処理ユニット23は、各受信ビーム群に対して、対数増幅処理、包絡線検波処理等を実行する。
【0072】
次に、RAWデータメモリ25は、各心拍において取得された各心時相に対応する第1受信ビーム群、第2の受信ビーム群を順次取得し、奇数心拍の各心時相に対応する第1RAWデータ、偶数心拍の各心時相に対応する第2RAWデータを取得する(ステップSB31、SB32、・・・・)。
【0073】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25において生成され
るRAWデータを用いて、映像化対象領域に対応する全RAWデータを生成する(ステップSC31、SC32、・・・・・)。すなわち、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータを受け取ると、当該各第1RAWデータを用いて、第1心拍の各時相に対応する第2RAWデータを補間処理によって生成する。この補間処理は、例えば図11の例えば第1走査線群に含まれる走査線1、2、3、4から、第2走査線群に含まれる走査線5を合成する等の手法により実行される。高解像度データ生成ユニット26は、補間処理によって生成された第1心拍の各時相に対応する第2RAWデータと、RAWデータメモリ25から受け取った第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータと、を用いて、第1心拍の各時相に対応する全RAWデータを生成する。
【0074】
次に、高解像度データ生成ユニット26は、RAWデータメモリ25から第2心拍の各時相に対応する第2RAWデータを受け取ると、当該各第2RAWデータと第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータとを用いて、補間により生成された走査線群(補間走査線群)を生成する。例えば、高解像度データ生成ユニット26は、図11において第1走査線群に属する走査線4と第2走査線群に属する走査線5とから、補間走査線群に属する走査線6を生成する。高解像度データ生成ユニット26は、補間処理によって生成された各時相に対応する補間走査線群と、第1心拍の各時相に対応する第1RAWデータと、RAWデータメモリ25から受け取った第2心拍の各時相に対応する第2RAWデータと、を用いて、第2心拍の各時相に対応する全RAWデータを生成する。
【0075】
第3心拍以降においては、第1RAWデータ、第2RAWデータのそれぞれを逐次更新し、補間処理によって同様に補間走査線群に対応する走査線を生成し、各心拍の各時相に対応する全RAWデータを生成する。
【0076】
ボリュームデータ生成ユニット27は、高解像度データ生成ユニット26において生成された、各心拍の各心時相に対応する全RAWデータをボリューム単位に変換し、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを生成する(ステップSD31、SD32、・・・・・)。画像処理ユニット28は、各心拍の各心時相に対応するBモードボリュームデータを用いて、ボリュームレンダリング等の所定の処理を実行し、三次元画像を生成する。表示処理ユニット29は、生成された三次元画像に対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。各種処理を受けた三次元画像は、例えば時系列で連続的にモニター14に表示される(ステップSE31、SE32、・・・)。
【0077】
以上述べた構成によれば、第1走査線群を用いて、或いは第1走査線群と第2走査線群を用いて補間走査線群を生成し、第1、第2RAWデータと補間走査線群とを用いて全RAWデータを生成する。従って、第1走査線群の超音波走査と第2走査線群の超音波走査との間において対象臓器が種々の理由で僅かに動いたような場合であっても、補間走査線群によって全RAWデータ内の第1、第2RAWデータの間の段差を滑らかにすることができる。その結果、全体としてスムーズな三次元超音波画像を作成、提供することが可能となる。
【0078】
また、現実の超音波走査によって取得される受信ビーム群は、第1走査線群と第2走査線群とに対応するものである。従って、現実の走査線間隔は、例えば図11の走査線1と走査線5との間の距離である。これに対し、本実施形態においては、補間走査線群を生成し全RAWデータの合成に用いるため、全RAWデータにおける走査線間隔は、例えば図11の走査線5と走査線6との間の距離となり、現実の走査線間隔のルート2分の1となる。その結果、全体としてスムーズな三次元超音波画像を作成、提供することが可能となる。
【0079】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る超音波診断装置1は、ECG信号に基づいて心拍毎に走査線位置を変えて受信信号を収集する際に、何らかの理由で対象部位が僅かに移動した場合であっても、走査線の位置補正処理を行うことで、段差の抑制された画像を生成するための高解像度データ取得処理を実行するものである。
【0080】
図12(a)、(b)、(c)は、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図である。対象部位が実質的に移動していない場合には、高解像度データ取得処理は、合成処理に十分な各走査線群が例えば図12(a)に示すような所定の配列形態を有するものとして実行される。しかしながら、何らかの理由で対象部位が僅かに移動した場合、移動後の最新時相に対応する受信データは、図12(b)に示すように、過去時相に対応する受信データに対して位置がずれることとなる。
【0081】
高解像度データ生成ユニット26は、同一時相に対応する受信データ同士及び心時相が前後に対応する受信データ同士の少なくとも一方の間で位置を比較する。高解像度データ生成ユニット26は、比較の結果、所定の値以上の位置ずれを検出した場合には、対象部位が移動したとして(対象部位と超音波プローブとの位置関係が変更されたとして)、位置ずれを検出した時相に対応する走査線群(及びこれに対応する受信データ)の空間的位置を、例えば図12(a)の状態から図12(b)の状態に補正する。高解像度データ生成ユニット26は、位置補正後の各走査線群に対応する受信データを用いて、高解像度データを生成する。
【0082】
なお、上記位置ずれは、同一時相に対応する受信データ同士、心時相が前後に対応する(時間的に隣り合う)受信データ同士、空間的に隣り合う受信データ同士の相関の少なくともいずれか一つの相関値に基づいて検出することができる。位置ずれを検出した場合には、例えば図12(c)に示す様に、比較する二つのデータの所定領域や所定位置(左室内膜位置等)を三次元的に検出し、その位置の変位ベクトルを算出し、当該走査線群の各位置に対応する各データの空間的位置を、変位ベクトルに基づいて移動させる。
【0083】
以上述べた構成によれば、撮像中に対象部位が僅かに移動し、各時相に対応する走査線群の間で僅かな位置ずれが発生した場合であっても、当該位置ずれの影響を解消し、解像度の低下を抑制することが可能である。
【0084】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る超音波診断装置は、実際の超音波走査によって取得された異なる4つの走査線に対応する受信データに基づいて、補間走査線に対応する受信データを生成するものである。
【0085】
図13は、本第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理を説明するための図であり、映像化対象領域をC面の法線方向から見た場合の走査線の分布を示した図である。同図の例では、第1走査線群〜第4走査線群の各走査線が正方形の各頂点に位置するように走査線群を分類したものである。
【0086】
同図において、正方形の各頂点に対応する第1走査線群〜第4走査線群の各走査線に対応する各受信データを用いて、補間走査線群に含まれる一つの走査線を補間する(例えば、走査線1、2、3、4に対応する各受信データを用いて、走査線5に対応する受信データを補間する)。高解像度データ生成ユニット26は、第1走査線群〜第4走査線群の各走査線に対応する受信データ、及び補間走査線群の走査線に対応する受信データを用いて、全RAWデータを生成する。従って、第1走査線群〜第4走査線群の間で空間的な位置ずれ等が発生した場合であっても、補間データにより、空間的な位置ずれを抑制することができ、滑らかな三次元画像を生成し表示することができる。
【0087】
また、図14は、本第7の実施形態に係る高解像度データ取得処理の他の適用例を説明するための図である。同図に示すように、第1〜第4走査線群を連続して超音波走査する場合、心拍の異なる第1〜第4走査線群の間で、本来対応する心時相がフレームレートの1/2程度ずれる場合がある。係る場合においても、本実施形態に係る高解像度データ取得処理を実行することで、時間的なずれを抑制することができ、滑らかな三次元画像を生成し表示することができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0089】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0090】
(2)上記各実施形態においては、心臓を対象とし、心拍同期信号を利用する構成で説明している。しかしながら、診断対象(映像化対象)は心臓に限らず、他の臓器であってもよい。第1走査線群〜第4走査線群を切り換える基準としての生体信号も、ECG波形に拘泥されず、例えば臓器を腹部領域にした場合、同期信号は呼吸の周期信号を利用することも可能である。
【0091】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上本発明によれば、を実現することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…血流検出ユニット、25…RAWデータメモリ、26…高解像度データ生成ユニット26…ボリュームデータ生成ユニット、28…画像処理ユニット、29…制御プロセッサ、30…表示処理ユニット、31…記憶ユニット、32…インタフェースユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得するデータ取得ユニットと、
心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、
前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、
前記各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記各走査線群に含まれる複数の走査線は、前記三次元領域内に空間的に分散されていることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記データ生成ユニットは、前記複数の受信データの少なくとも一つと、前記複数の受信データの少なくとも一つを用いた補間処理により生成された補間データと、を用いて前記合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成すること、を特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記データ生成ユニットは、
前記複数の走査線群のそれぞれに対応する前記複数の受信データが取得される前においては、前記複数の受信データ少なくとも一つと前記補間データとを用いて前記合成処理を実行し、
前記複数の走査線群のそれぞれに対応する複数の受信データが取得された後においては、前記複数の走査線群のそれぞれに対応する前記複数の受信データを用いて前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記データ生成ユニットは、前記各走査線群に対応する前記受信データが複数存在する場合には、最新の時相に対応する前記受信データを用いて前記合成処理を実行することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記データ生成ユニットは、操作者から入力される指示に応答して前記合成処理を停止し、各心拍の各心時相に対応する一つの前記受信データを用いて前記合成処理を実行すること、を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記データ生成ユニットは、
前記複数の受信データを用いて、前記複数の受信データ取得において用いられる超音波プローブと前記心臓との位置関係の変化を算出し、
前記算出した位置関係の変化が所定の値より大きい場合には、前記合成処理を停止し、各心拍の各心時相に対応する一つの前記受信データを用いて前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記データ生成ユニットは、時間的に隣り合う前記受信データの相関を用いて前記位置関係の変化を算出すること、を特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記データ生成ユニットは、前記複数の受信データを用いて、前記複数の受信データ取得において用いられる超音波プローブと前記心臓との位置関係の変化を算出し、
前記算出した位置関係に基づいて、前記複数の受信データの少なくとも一つに対し位置補正処理を行い、前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記データ生成ユニットは、時間的に隣り合う前記受信データの相関及び空間的に隣り合う前記受信データ同士の相関のうちの少なくとも一方を用いて、前記位置関係の変化を算出することを特徴とする請求項9記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記複数の受信データのうち、前記合成処理に用いる前記受信データを心拍毎に選択する選択手段をさらに具備し、
前記データ生成ユニットは、前記選択手段によって選択された前記複数の受信データを用いて、前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記データ生成ユニットは、
時間的に連続する少なくとも二つの前記受信データを用いた補間処理により、補間データを生成し、
前記複数の受信データ及び前記補間データを用いて、前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項13】
被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで取得された、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを記憶する記憶ユニットと、
心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、
前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、
前記各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項14】
コンピュータに、
被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査させることで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得させるデータ取得機能と、
心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成させるデータ生成機能と、
前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成させる画像生成機能と、
前記各時相に対応する超音波画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像取得プログラム。
【請求項1】
被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得するデータ取得ユニットと、
心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、
前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、
前記各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記各走査線群に含まれる複数の走査線は、前記三次元領域内に空間的に分散されていることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記データ生成ユニットは、前記複数の受信データの少なくとも一つと、前記複数の受信データの少なくとも一つを用いた補間処理により生成された補間データと、を用いて前記合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成すること、を特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記データ生成ユニットは、
前記複数の走査線群のそれぞれに対応する前記複数の受信データが取得される前においては、前記複数の受信データ少なくとも一つと前記補間データとを用いて前記合成処理を実行し、
前記複数の走査線群のそれぞれに対応する複数の受信データが取得された後においては、前記複数の走査線群のそれぞれに対応する前記複数の受信データを用いて前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記データ生成ユニットは、前記各走査線群に対応する前記受信データが複数存在する場合には、最新の時相に対応する前記受信データを用いて前記合成処理を実行することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記データ生成ユニットは、操作者から入力される指示に応答して前記合成処理を停止し、各心拍の各心時相に対応する一つの前記受信データを用いて前記合成処理を実行すること、を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記データ生成ユニットは、
前記複数の受信データを用いて、前記複数の受信データ取得において用いられる超音波プローブと前記心臓との位置関係の変化を算出し、
前記算出した位置関係の変化が所定の値より大きい場合には、前記合成処理を停止し、各心拍の各心時相に対応する一つの前記受信データを用いて前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記データ生成ユニットは、時間的に隣り合う前記受信データの相関を用いて前記位置関係の変化を算出すること、を特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記データ生成ユニットは、前記複数の受信データを用いて、前記複数の受信データ取得において用いられる超音波プローブと前記心臓との位置関係の変化を算出し、
前記算出した位置関係に基づいて、前記複数の受信データの少なくとも一つに対し位置補正処理を行い、前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記データ生成ユニットは、時間的に隣り合う前記受信データの相関及び空間的に隣り合う前記受信データ同士の相関のうちの少なくとも一方を用いて、前記位置関係の変化を算出することを特徴とする請求項9記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記複数の受信データのうち、前記合成処理に用いる前記受信データを心拍毎に選択する選択手段をさらに具備し、
前記データ生成ユニットは、前記選択手段によって選択された前記複数の受信データを用いて、前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記データ生成ユニットは、
時間的に連続する少なくとも二つの前記受信データを用いた補間処理により、補間データを生成し、
前記複数の受信データ及び前記補間データを用いて、前記合成処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項13】
被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査することで取得された、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを記憶する記憶ユニットと、
心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成するデータ生成ユニットと、
前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成する画像生成ユニットと、
前記各時相に対応する超音波画像を表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項14】
コンピュータに、
被検体の心臓の少なくとも一部を含む三次元領域において定義される全走査線を異なる走査線の組み合わせで分類した複数の走査線群を、前記被検体の生体信号を基準として心拍毎に切り換えながら連続的に超音波走査させることで、複数心拍の各心時相に対応する複数の受信データを取得させるデータ取得機能と、
心時相が対応し且つ心拍が異なる前記複数の受信データを用いた合成処理を実行し、前記複数心拍の少なくとも一つの各心時相に対応する複数のボリュームデータを生成させるデータ生成機能と、
前記複数のボリュームデータを用いて、前記各時相に対応する超音波画像を生成させる画像生成機能と、
前記各時相に対応する超音波画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像取得プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−414(P2013−414A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135642(P2011−135642)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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