説明

超音波診断装置および超音波画像生成方法

【課題】被検体の肝臓に対して高精度の診断を行うことができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】操作者が操作部15を操作することによりBモード画像における肝臓の領域内に第1の関心領域が設定されると、制御部14により第1の関心領域内および近傍に複数の格子点が設定され、送信回路2および受信回路3により格子点のそれぞれに送信焦点を形成して順次超音波ビームの送受信が行われ、音速マップ生成部12により第1の関心領域内の音速マップが生成されると共に、腎臓認識部10で腎皮質が自動認識され、腎皮質の領域に第2の関心領域が設定され、肝腎コントラスト算出部13で第1の関心領域内の平均輝度値と第2の関心領域内の平均輝度値から肝腎コントラストが算出され、音速マップ画像と肝腎コントラストがBモード画像と共に表示部8に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置および超音波画像生成方法に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することによりBモード画像の生成を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体内に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
また、脂肪肝等の疾患に関しては、腎臓の平均輝度値に対する肝臓の平均輝度値の比で表される、いわゆる肝腎コントラストが超音波所見の1つとして用いられることが多く、脂肪肝になると、肝腎コントラストの値が上昇する傾向にある。
そこで、例えば、特許文献1には、Bモード画像に含まれる肝臓像に基づき肝腎コントラストを測定して肝臓機能の検査を行う超音波診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−5026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、Bモード画像だけでなく、測定された肝腎コントラストをも用いて診断を行うことが可能となる。
しかしながら、肝腎コントラストは、例えば、脂肪肝においても慢性肝炎においても同様に上昇することが知られており、Bモード画像と肝腎コントラストのみでは、精度のよい診断を行うことが難しい場合がある。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、被検体の肝臓に対して高精度の診断を行うことができる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る超音波診断装置は、送信回路から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づきBモード画像を生成して表示部に表示する超音波診断装置であって、Bモード画像上で被検体の肝臓の少なくとも一部と腎臓の少なくとも一部を含む関心領域を設定するための関心領域設定部と、関心領域内の少なくとも肝臓の領域内に複数の格子点を設定し、複数の格子点に送信焦点を形成してそれぞれ超音波ビームの送受信を行うことにより少なくとも関心領域内の肝臓の領域に関する音速測定用の受信データを取得するように送信回路および受信回路を制御する制御部と、音速測定用の受信データに基づいて関心領域内の肝臓の領域における音速マップを生成する音速マップ生成部と、関心領域内の肝臓の領域における平均輝度値と腎臓の領域における平均輝度値を算出すると共に算出された平均輝度値に基づいて肝腎コントラストを算出する肝腎コントラスト算出部とを備え、制御部は、音速マップ生成部で生成された音速マップと肝腎コントラスト算出部で算出された肝腎コントラストを表示部に表示するものである。
【0008】
関心領域が、Bモード画像上で操作者からの入力により肝臓内に設定される第1の関心領域と、Bモード画像から自動認識された腎臓内に設定される第2の関心領域とを含み、制御部は、第1の関心領域内に複数の格子点を設定し、複数の格子点に送信焦点を形成してそれぞれ超音波ビームの送受信を行うことにより第1の関心領域に関する音速測定用の受信データを取得するように送信回路および受信回路を制御し、音速マップ生成部は、第1の関心領域に関する音速測定用の受信データに基づいて第1の関心領域内の音速マップを生成し、肝腎コントラスト算出部は、Bモード画像生成のために得られたBモード画像用受信データに基づいて第1の関心領域内の平均輝度値と第2の関心領域内の平均輝度値を算出するように構成することができる。この場合、第2の関心領域は、Bモード画像から自動認識された腎皮質内に設定されることが好ましい。
【0009】
あるいは、関心領域が、Bモード画像上で操作者からの入力により肝臓と腎臓をまたぐように設定され、制御部は、関心領域内の肝臓の領域と腎臓の領域の双方に分散配置されるように複数の格子点を設定し、肝臓の領域内の格子点に送信焦点を形成して超音波ビームの送受信を行うことにより肝臓の領域に関する音速および輝度測定用の受信データを取得すると共に腎臓の領域内の格子点に送信焦点を形成して超音波ビームの送受信を行うことにより腎臓の領域に関する輝度測定用の受信データを取得するように送信回路および受信回路を制御し、音速マップ生成部は、肝臓の領域に関する音速および輝度測定用の受信データに基づいて関心領域内の肝臓の領域における音速マップを生成し、肝腎コントラスト算出部は、肝臓の領域に関する音速および輝度測定用の受信データに基づいて関心領域内の肝臓の領域における平均輝度値を算出すると共に腎臓の領域に関する輝度測定用の受信データに基づいて関心領域内の腎臓の領域における平均輝度値を算出するように構成することもできる。この場合、腎臓の領域内の格子点は、腎皮質内に設定されることが好ましい。
【0010】
この発明に係る超音波画像生成方法は、送信回路から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づきBモード画像を生成して表示部に表示する超音波画像生成方法であって、Bモード画像上で被検体の肝臓の少なくとも一部と腎臓の少なくとも一部を含む関心領域を設定し、関心領域内の少なくとも肝臓の領域内に複数の格子点を設定し、複数の格子点に送信焦点を形成してそれぞれ超音波ビームの送受信を行うことにより少なくとも関心領域内の肝臓の領域に関する音速測定用の受信データを取得し、音速測定用の受信データに基づいて関心領域内の肝臓の領域における音速マップを生成し、関心領域内の肝臓の領域における平均輝度値と腎臓の領域における平均輝度値を算出すると共に算出された平均輝度値に基づいて肝腎コントラストを算出し、生成された音速マップと算出された肝腎コントラストを表示部に表示する方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、関心領域内の少なくとも肝臓の領域内に設定された複数の格子点に送信焦点を形成して超音波ビームの送受信を行うことにより音速マップを生成すると共に肝臓の領域における平均輝度値と腎臓の領域における平均輝度値から肝腎コントラストを算出し、音速マップと肝腎コントラストを表示部に表示するので、被検体の肝臓に対して高精度の診断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における音速演算の原理を模式的に示す図である。
【図3】実施の形態1において関心領域と格子点が設定されたBモード画像を示す図である。
【図4】実施の形態1における表示部の表示内容を示す図である。
【図5】実施の形態2において関心領域と格子点が設定されたBモード画像を示す図である。
【図6】実施の形態2においてBモード画像上に設定された格子点がその領域に応じて分類される様子を示す図である。
【図7】実施の形態2の変形例において関心領域と格子点が設定されたBモード画像を示す図である。
【図8】実施の形態2の他の変形例において関心領域と格子点が設定されたBモード画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、振動子アレイ1を備え、この振動子アレイ1に送信回路2および受信回路3が接続されている。受信回路3には、信号処理部4、DSC(Digital Scan Converter)5、画像処理部6、表示制御部7および表示部8が順次接続され、画像処理部6に画像メモリ9が接続されると共に腎臓認識部10が接続されている。
また、受信回路3にシネメモリ11、音速マップ生成部12および肝腎コントラスト算出部13がそれぞれ接続され、送信回路2、受信回路3、信号処理部4、DSC5、表示制御部7、腎臓認識部10、シネメモリ11、音速マップ生成部12および肝腎コントラスト算出部13に制御部14が接続されている。さらに、制御部14には、操作部15と格納部16がそれぞれ接続されている。
【0014】
振動子アレイ1は、1次元又は2次元に配列された複数の超音波トランスデューサを有している。これらの超音波トランスデューサは、それぞれ送信回路2から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0015】
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0016】
送信回路2は、例えば、複数のパルサを含んでおり、制御部14からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ1の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサに供給する。
【0017】
受信回路3は、振動子アレイ1の各超音波トランスデューサから送信される受信信号を増幅してA/D変換した後、制御部14からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、各受信信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データ(音線信号)が生成される。
【0018】
信号処理部4は、受信回路3で生成された受信データに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
DSC5は、信号処理部4で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部6は、DSC5から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部7に出力する、あるいは画像メモリ9に格納する。
これら信号処理部4、DSC5、画像処理部6および画像メモリ9により画像生成部17が形成されている。
【0019】
表示制御部7は、画像処理部6によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、表示部8に超音波診断画像を表示させる。
表示部8は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部7の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0020】
腎臓認識部10は、画像処理部6によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、パターンマッチング等により腎臓の腎皮質を検出する。
シネメモリ11は、受信回路3から出力される受信データを順次格納する。また、シネメモリ11は、制御部14から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を上記の受信データに関連付けて格納する。
音速マップ生成部12は、制御部14による制御の下で、シネメモリ11に格納されている受信データに基づいて、診断対象となる被検体内の組織における局所音速値を演算し、音速マップを生成する。
肝腎コントラスト算出部13は、受信回路3で生成されたBモード画像生成のための受信データに基づいて肝臓の領域における平均輝度値と腎臓の領域における平均輝度値を算出すると共にこれら平均輝度値に基づいて肝腎コントラストを算出する。
制御部14は、操作者により操作部15から入力された指令に基づいて超音波診断装置各部の制御を行う。
【0021】
操作部15は、操作者が入力操作を行うためのもので、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。この操作部15と腎臓認識部10によって、この発明の関心領域設定部が構成されている。
格納部16は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。
なお、信号処理部4、DSC5、画像処理部6、表示制御部7、腎臓認識部10、音速マップ生成部12および肝腎コントラスト算出部13は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0022】
Bモード画像を表示する際には、まず、送信回路2から供給される駆動信号に従って振動子アレイ1の複数の超音波トランスデューサから超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各超音波トランスデューサから受信信号が受信回路3に出力され、受信回路3で受信データが生成される。さらに、この受信データを入力した信号処理部4でBモード画像信号が生成され、DSC5でBモード画像信号がラスター変換されると共に画像処理部6でBモード画像信号に各種の画像処理が施された後、このBモード画像信号に基づいて表示制御部7により超音波診断画像が表示部8に表示される。
【0023】
一方、局所音速値の演算は、例えば本願の出願人により出願された特開2010−99452号公報に記載の方法により行うことができる。
この方法は、図2(A)に示されるように、被検体内に超音波を送信した際に、被検体の反射点となる格子点Xから振動子アレイ1に到達する受信波Wxに着目したとき、図2(B)に示されるように、格子点Xよりも浅い位置、すなわち振動子アレイ1に近い位置に複数の格子点A1、A2、・・・を等間隔に配列し、格子点Xからの受信波を受けた複数の格子点A1、A2、・・・からのそれぞれの受信波W1、W2、・・・の合成波Wsumが、ホイヘンスの原理により、格子点Xからの受信波Wxに一致することを利用して、格子点Xにおける局所音速値を求める方法である。
【0024】
まず、すべての格子点X、A1、A2、・・・に対する最適音速値をそれぞれ求める。ここで、最適音速値とは、各格子点に対し、設定音速に基づきフォーカス計算をして撮影を行うことにより超音波画像を形成し、設定音速を種々変化させたときに画像のコントラスト、シャープネスが最も高くなる音速値であり、例えば特開平8−317926号公報に記載のように、画像のコントラスト、スキャン方向の空間周波数、分散等に基づいて最適音速値の判定を行うことができる。
【0025】
次に、格子点Xに対する最適音速値を用いて、格子点Xから発せられる仮想的な受信波Wxの波形を算出する。
さらに、格子点Xにおける仮定的な局所音速値Vを種々変化させて、それぞれ格子点A1、A2、・・・からの受信波W1、W2、・・・の仮想的な合成波Wsumを算出する。このとき、格子点Xと各格子点A1、A2、・・・との間の領域Rxaにおける音速は一様で、格子点Xにおける局所音速値Vに等しいものと仮定する。格子点Xから伝播した超音波が格子点A1、A2、・・・に到達するまでの時間はXA1/V、XA2/V、・・・となる。ここで、XA1、XA2、・・・は、それぞれ格子点A1、A2、・・・と格子点Xとの間の距離である。そこで、格子点A1、A2、・・・からそれぞれ時間XA1/V、XA2/V、・・・だけ遅延して発した反射波を合成することにより、仮想的な合成波Wsumを求めることができる。
【0026】
次に、このように格子点Xにおける仮定的な局所音速値Vを種々変化させて算出された複数の仮想的な合成波Wsumと格子点Xからの仮想的な受信波Wxとの誤差をそれぞれ算出し、誤差が最小になる仮定的な局所音速値Vを格子点Xにおける局所音速値と判定する。ここで、仮想的な合成波Wsumと格子点Xからの仮想的な受信波Wxとの誤差の算出方法としては、互いの相互相関をとる方法、受信波Wxに合成波Wsumから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法、合成波Wsumに受信波Wxから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法等を採用することができる。
以上のようにして、受信回路3で生成された受信データに基づき、被検体内の局所音速値を高精度に演算することができる。さらに、同様にして、設定された関心領域内の局所音速値の分布を示す音速マップを生成することができる。
【0027】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
まず、操作者により超音波プローブが被検体の肝臓と腎臓の近傍で被検体の体表に当接された状態で、送信回路2からの駆動信号に従って振動子アレイ1の複数の超音波トランスデューサから超音波ビームが観察領域の全領域に走査されつつ送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各超音波トランスデューサから受信信号が受信回路3に出力されてBモード画像用の受信データが生成される。この受信データは、順次シネメモリ11に格納されると共に画像生成部17に出力されてBモード画像信号が生成され、このBモード画像信号に基づいて表示制御部7によりBモード画像が表示部8に表示される。
これにより、例えば、図3に示されるように、肝臓21の少なくとも一部と腎臓22の少なくとも一部とを含むBモード画像が得られる。
また、このとき、画像生成部17で生成されたBモード画像信号に基づき、腎臓認識部10により腎臓22の腎皮質23が自動認識され、その認識データが制御部14に出力される。
【0028】
ここで、操作者が操作部15を操作することにより、表示部8に表示されているBモード画像における肝臓21の領域内に第1の関心領域R1が設定されると、制御部14によって、第1の関心領域R1の内部および近傍に、それぞれ「△」で示される音速測定用の複数の格子点Eが設定される。なお、図3では、コンベックス表示に伴って、第1の関心領域R1は扇形に表されている。
【0029】
次に、これら格子点Eのそれぞれに送信焦点を形成して順次超音波ビームの送受信が行われるように、制御部14により送信回路2および受信回路3が制御され、超音波ビームを受信する毎に受信回路3で生成される音速測定用の受信データは順次シネメモリ11に格納される。
このようにして、すべての格子点Eに関して音速測定用の受信データが取得されると、制御部14から音速マップ生成部12に音速マップ形成の指令が出力され、音速マップ生成部12は、シネメモリ11に格納されている音速測定用の受信データを用いて、各格子点Eにおける局所音速値を演算し、第1の関心領域R1内の音速マップを生成する。
【0030】
また、図3に示されるように、制御部14により、腎臓認識部10で自動認識された腎臓22の腎皮質23の領域に第2の関心領域R2が設定される。そして、制御部14からの肝腎コントラスト算出の指令を受けて、肝腎コントラスト算出部13は、シネメモリ11に格納されているBモード画像用の受信データに基づき、肝臓21内に設定された第1の関心領域R1における平均輝度値B1と腎皮質23の領域に設定された第2の関心領域R2における平均輝度値B2をそれぞれ算出し、さらに、第2の関心領域R2の平均輝度値B2に対する第1の関心領域R1の平均輝度値B1の比r=B1/B2で表される肝腎コントラストを算出する。
【0031】
このようにして音速マップ生成部12で生成された第1の関心領域R1内の音速マップに関するデータと肝腎コントラスト算出部13で算出された肝腎コントラストに関するデータは、制御部14の制御の下でDSC5に送られ、DSC5でラスター変換され、画像処理部6で各種の画像処理が施された後、表示制御部7に送られる。そして、操作者により操作部15から入力された表示モードに従って、例えば図4に示されるように、表示部8の画面31にBモード画像32と音速マップ画像33が並べて表示されると共に、肝腎コントラスト34の値が表示される。
【0032】
このように、操作者によりBモード画像における肝臓21の領域内に第1の関心領域R1が設定されると、音速マップ生成部12により第1の関心領域R1内の音速マップがされると共に、腎臓認識部10で腎皮質23が自動認識され、肝腎コントラスト算出部13で肝腎コントラストが算出され、音速マップ画像33と肝腎コントラスト34がBモード画像32と共に表示部8の画面31に表示されるので、被検体の肝臓に対して高精度の診断を行うことが可能となる。
【0033】
なお、肝腎コントラスト算出部13は、シネメモリ11に格納されているBモード画像用の受信データに基づいて第1の関心領域R1における平均輝度値B1と第2の関心領域R2における平均輝度値B2をそれぞれ算出したが、これに限るものではなく、画像生成部17で生成されたBモード画像信号に基づいて、これらの平均輝度値B1およびB2を求めることもできる、
また、表示部8の画面31にBモード画像32と音速マップ画像33を並べて表示する代わりに。Bモード画像に音速マップを重畳した状態で表示することもできる。
さらに、肝腎コントラスト34の値だけでなく、肝臓21内に設定された第1の関心領域R1における平均輝度値B1の値と腎皮質23の領域に設定された第2の関心領域R2における平均輝度値B2の値、第1の関心領域R1内の平均音速値等も併せて表示してもよい。過去の診断における肝腎コントラスト34の値、第1の関心領域R1内の平均音速値等をグラフ、表等の形式で表示することもできる。
【0034】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、第1の関心領域R1が操作者の操作によりBモード画像における肝臓21の領域内に設定されると共に第2の関心領域R2が腎臓認識部10で自動認識された腎皮質23の領域に設定されたが、例えば図5に示されるように、Bモード画像上において、肝臓21と腎臓22をまたぐように1つの関心領域Rを設定することもできる。この関心領域Rの設定は、操作者が操作部15を操作することにより行われる。
【0035】
このような関心領域Rが設定されると、制御部14によって、関心領域Rの内部および近傍に、それぞれ「△」で示される複数の格子点Eが設定される。このとき、関心領域Rが肝臓21と腎臓22をまたぐように位置しているので、複数の格子点Eは、関心領域R内の肝臓の領域RLと腎臓の領域RKの双方に分散配置される。そこで、図6に示されるように、操作者は、操作部15を操作することにより、複数の格子点Eのうち、肝臓の領域RL内に配置された「○」で示される格子点を肝臓21に関する情報を得るための格子点E1として選択し、腎臓の領域RK内に配置された「●」で示される格子点を腎臓22に関する情報を得るための格子点E2として選択する。
【0036】
次に、肝臓の領域RL内に配置された格子点E1のそれぞれに送信焦点を形成して順次超音波ビームの送受信が行われるように、制御部14により送信回路2および受信回路3が制御され、超音波ビームを受信する毎に受信回路3で生成される受信データが、肝臓の領域RLに関する音速および輝度測定用の受信データとして順次シネメモリ11に格納される。
同様にして、腎臓の領域RK内に配置された格子点E2のそれぞれに送信焦点を形成して順次超音波ビームの送受信が行われるように、制御部14により送信回路2および受信回路3が制御され、超音波ビームを受信する毎に受信回路3で生成される受信データが、腎臓の領域RKに関する輝度測定用の受信データとして順次シネメモリ11に格納される。
【0037】
このようにして、肝臓の領域RL内のすべての格子点E1に関して音速および輝度測定用の受信データが取得されると、制御部14から音速マップ生成部12に音速マップ形成の指令が出力され、音速マップ生成部12は、シネメモリ11に格納されている格子点E1に関する受信データを用いて、各格子点E1における局所音速値を演算し、肝臓の領域RL内の音速マップを生成する。
さらに、腎臓の領域RK内のすべての格子点E2に関して輝度測定用の受信データが取得されると、制御部14から肝腎コントラスト算出部13に肝腎コントラスト算出の指令が出力され、肝腎コントラスト算出部13は、シネメモリ11に格納されている格子点E1に関する受信データを用いて肝臓の領域RL内における平均輝度値B1を算出すると共にシネメモリ11に格納されている格子点E2に関する受信データを用いて腎臓の領域RK内における平均輝度値B2を算出した後、腎臓の領域RK内の平均輝度値B2に対する肝臓の領域RL内の平均輝度値B1の比r=B1/B2で表される肝腎コントラストを算出する。
【0038】
このようにして音速マップ生成部12で生成された肝臓の領域RL内の音速マップに関するデータと肝腎コントラスト算出部13で算出された肝腎コントラストに関するデータは、制御部14の制御の下でDSC5に送られ、DSC5でラスター変換され、画像処理部6で各種の画像処理が施された後、表示制御部7に送られる。そして、操作者により操作部15から入力された表示モードに従い、実施の形態1と同様にして、図4に示したように、表示部8の画面31にBモード画像32と音速マップ画像33が並べて表示されると共に、肝腎コントラスト34の値が表示される。
【0039】
このように、操作者によりBモード画像における肝臓21と腎臓22にまたがる関心領域Rが設定され、肝臓21に関する情報を得るための格子点E1と腎臓22に関する情報を得るための格子点E2が選択されると、音速マップ生成部12により関心領域R内の肝臓の領域RLにおける音速マップがされると共に、肝腎コントラスト算出部13で肝腎コントラストが算出され、音速マップ画像と肝腎コントラストがBモード画像と共に表示部8に表示されるので、実施の形態2においても、被検体の肝臓に対して高精度の診断を行うことが可能となる。
【0040】
なお、肝腎コントラストは、肝臓の平均輝度値と腎皮質における平均輝度値の比で表されることが好ましい。このため、例えば図7に示されるように、制御部14によって設定された複数の格子点Eの中に、腎臓22の腎盂・腎杯の領域24内に位置する「×」で示される格子点E3が存在する場合には、これらの格子点E3を腎臓22に関する情報を得るための格子点から除外することが望まれる。すなわち、腎盂・腎杯の領域24内に位置する格子点E3に対しては、超音波ビームの送受信を行わないように制御部14により送信回路2および受信回路3が制御される。
【0041】
また、図8に示されるように、深度方向に長い関心領域Rが設定された場合は、深度方向に複数段にわたって複数の格子点が設定され、これらの格子点から、肝臓の領域RL内に配置された格子点E1と腎臓の領域RK内に配置された格子点E2を選択することが好ましい。このようにすれば、肝臓の領域RL内のより正確な音速マップを生成することができる。
【0042】
なお、この実施の形態2においては、操作者が操作部15を操作することにより、肝臓21と腎臓22をまたぐ関心領域Rを設定すると共に、肝臓の領域RL内の格子点E1の選択と腎臓の領域RK内の格子点E2の選択も、操作部15の操作によって行うので、図1に示した腎臓認識部10は不要となる。
ただし、腎臓認識部10で腎臓22、特に腎皮質23を自動認識すれば、認識の結果に基づいて、複数の格子点Eの中から肝臓の領域RL内に位置する格子点E1と腎臓の領域RK内に位置する格子点E2を自動的に選択することができ、操作性が向上する。さらに、図7に示した格子点E3のように、腎盂・腎杯の領域24内に位置する格子点を自動的に識別して腎臓の領域RK内の平均輝度値B2の算出から除外することもできる。
【0043】
また、格子点E1に関する受信データを用いて算出される平均輝度値B1は、最適音速値となる設定音速における平均輝度値であってもよい。
さらに、格子点E1およびE2に関する受信データがシネメモリ11に格納されたが、このとき、格子点E1およびE2だけでなく、格子点E1およびE2の周囲の点に関する受信データもシネメモリ11に格納し、格子点E1およびE2とそれらの周囲の点の受信データに基づいて、最適音速値および平均輝度値を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 振動子アレイ、2 送信回路、3 受信回路、4 信号処理部、5 DSC、6 画像処理部、7 表示制御部、8 表示部、9 画像メモリ、10 腎臓認識部、11 シネメモリ、12 音速マップ生成部、13 肝腎コントラスト算出部、14 制御部、15 操作部、16 格納部、17 画像生成部、21 肝臓、22 腎臓、23 腎皮質、24 腎盂・腎杯の領域、31 画面、32 Bモード画像、33 音速マップ画像、34 肝腎コントラスト、X,A1,A2 格子点、W1,W2,Wx 受信波、Wsum 合成波、R 関心領域、R1 第1の関心領域、R2 第2の関心領域、E,E1,E2,E3 格子点、RL 肝臓の領域、RK 腎臓の領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信回路から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づきBモード画像を生成して表示部に表示する超音波診断装置であって、
前記Bモード画像上で被検体の肝臓の少なくとも一部と腎臓の少なくとも一部を含む関心領域を設定するための関心領域設定部と、
前記関心領域内の少なくとも肝臓の領域内に複数の格子点を設定し、前記複数の格子点に送信焦点を形成してそれぞれ超音波ビームの送受信を行うことにより少なくとも前記関心領域内の肝臓の領域に関する音速測定用の受信データを取得するように前記送信回路および前記受信回路を制御する制御部と、
音速測定用の前記受信データに基づいて前記関心領域内の肝臓の領域における音速マップを生成する音速マップ生成部と、
前記関心領域内の肝臓の領域における平均輝度値と腎臓の領域における平均輝度値を算出すると共に算出された平均輝度値に基づいて肝腎コントラストを算出する肝腎コントラスト算出部と
を備え、前記制御部は、前記音速マップ生成部で生成された音速マップと前記肝腎コントラスト算出部で算出された肝腎コントラストを前記表示部に表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記関心領域は、前記Bモード画像上で操作者からの入力により肝臓内に設定される第1の関心領域と、前記Bモード画像から自動認識された腎臓内に設定される第2の関心領域とを含み、
前記制御部は、前記第1の関心領域内に前記複数の格子点を設定し、前記複数の格子点に送信焦点を形成してそれぞれ超音波ビームの送受信を行うことにより前記第1の関心領域に関する音速測定用の受信データを取得するように前記送信回路および前記受信回路を制御し、
前記音速マップ生成部は、前記第1の関心領域に関する音速測定用の前記受信データに基づいて前記第1の関心領域内の音速マップを生成し、
前記肝腎コントラスト算出部は、前記Bモード画像生成のために得られたBモード画像用受信データに基づいて前記第1の関心領域内の平均輝度値と前記第2の関心領域内の平均輝度値を算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記第2の関心領域は、前記Bモード画像から自動認識された腎皮質内に設定される請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記関心領域は、前記Bモード画像上で操作者からの入力により肝臓と腎臓をまたぐように設定され、
前記制御部は、前記関心領域内の肝臓の領域と腎臓の領域の双方に分散配置されるように前記複数の格子点を設定し、肝臓の領域内の格子点に送信焦点を形成して超音波ビームの送受信を行うことにより肝臓の領域に関する音速および輝度測定用の受信データを取得すると共に腎臓の領域内の格子点に送信焦点を形成して超音波ビームの送受信を行うことにより腎臓の領域に関する輝度測定用の受信データを取得するように前記送信回路および前記受信回路を制御し、
前記音速マップ生成部は、肝臓の領域に関する音速および輝度測定用の前記受信データに基づいて前記関心領域内の肝臓の領域における音速マップを生成し、
前記肝腎コントラスト算出部は、肝臓の領域に関する音速および輝度測定用の前記受信データに基づいて前記関心領域内の肝臓の領域における平均輝度値を算出すると共に腎臓の領域に関する輝度測定用の前記受信データに基づいて前記関心領域内の腎臓の領域における平均輝度値を算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
腎臓の領域内の前記格子点は、腎皮質内に設定される請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
送信回路から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力される受信信号を受信回路で処理することで得られる受信データに基づきBモード画像を生成して表示部に表示する超音波画像生成方法であって、
前記Bモード画像上で被検体の肝臓の少なくとも一部と腎臓の少なくとも一部を含む関心領域を設定し、
前記関心領域内の少なくとも肝臓の領域内に複数の格子点を設定し、前記複数の格子点に送信焦点を形成してそれぞれ超音波ビームの送受信を行うことにより少なくとも前記関心領域内の肝臓の領域に関する音速測定用の受信データを取得し、
音速測定用の前記受信データに基づいて前記関心領域内の肝臓の領域における音速マップを生成し、
前記関心領域内の肝臓の領域における平均輝度値と腎臓の領域における平均輝度値を算出すると共に算出された平均輝度値に基づいて肝腎コントラストを算出し、
生成された音速マップと算出された肝腎コントラストを表示部に表示する
ことを特徴とする超音波画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−217611(P2012−217611A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86198(P2011−86198)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】