説明

超音波診断装置及びその制御プログラム

【課題】従来に比してリアルタイム性の高いコントラストエコーイメージングを実行可能な超音波診断装置及び超音波診断装置制御プログラムを提供すること。
【解決手段】三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能により、状況に応じて、フラッシュスキャン優先モード又はモニタリングスキャン優先モードを選択する。フラッシュスキャン優先モードを選択した場合には、フラッシュスキャンにおいて三次元トリガードスキャンが実行され、高ボリュームレートにてフラッシュ画像を取得することができる。一方、モニタリングスキャン優先モードを選択した場合には、モニタリングスキャンにおいて三次元トリガードスキャンが実行され、高ボリュームレートにてモニタリング画像を取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤を被検体に投与し、当該被検体内の診断部位に造影剤が流入する様子等を映像化するコントラストハーモニックイメージング(Contrast Harmonic Imaging:CHI)を実行する超音波診断装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。この他、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便な診断手法であると言える。この超音波診断において用いられる超音波診断装置は、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度のものが開発されており、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
近年、静脈投与型の超音波造影剤が製品化され、造影エコー法が行われるようになってきている。この手法は、例えば、心臓および肝臓などの検査で静脈から超音波造影剤を注入して血流信号を増強し、血流動態の評価を行うことを目的としている。造影剤の多くは微小気泡(マイクロバブル)が反射源として機能するものである。気泡というデリケートな基材の性質上、通常の診断レベルの超音波照射であっても、その機械的作用によって気泡は壊れ、結果的にスキャン面からの信号強度は低下してしまう。従って、環流の動的な様子をリアルタイムに観察するためには、低音圧の超音波送信によって画像化する等、スキャンによる気泡の破壊を比較的低減させることが必要となってくる。この様な低音圧の超音波送信による画像化は信号/ノイズ比(S/N比)も低下してしまうため、それを補うための種々の信号処理法も考案されている。
【0004】
また、上記のように造影剤気泡が破壊されるという特徴を生かし、以下のような手法が考案されている。すなわち、(a)低音圧の超音波送信下でスキャン断面に充満していく造影剤の動態を観察し、(b)照射音圧を高音圧に切り替えて、断面内(厳密には照射体積内)の造影剤を破壊させ、(c)再び断面内に流入していく気泡の様子を観察する、という手法である。この手法はreplenishment(再環流)法と呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。また、(a)、(c)の低音圧の超音波による走査モードが再環流モード(或いは、モニタリングモード)、(b)の高音圧の超音波による走査モードはフラッシュモードと呼ばれる。特に近年では、診断部位を含む三次元領域を対して、モニタリングモードによる超音波走査(モニタリングスキャン)及びフラッシュモードによる超音波走査(フラッシュスキャン)を実行してボリュームデータを取得し、三次元画像を表示する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−155858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の超音波診断装置を用いたコントラストエコーイメージングにおいては、例えば次のような問題がある。
【0007】
まず、三次元領域をフラッシュスキャンによって撮影し当該領域をリアルタイム表示しようとする場合、ノーマルライブボリューム(Normal Live Volume)と呼ばれる三次元領域を、走査断面を移動させながら高音圧超音波にて走査する。このため、異なる超音波走査断面間の時間差が大きくなり、三次元領域内に存在する瞬時に造影剤を破壊することができず、リアルタイム性に欠ける可能性がある。また、三次元領域をモニタリングスキャンによって撮影し当該領域をリアルタイム表示しようとする場合においても、ノーマルライブボリュームを走査断面を移動させながら低音圧超音波にて走査する。従って、異なる超音波走査断面間の時間差が大きくなり、また、ボリュームレートにも限界がある。その結果、モニタリングモードにおいても、リアルタイム性に欠けることになる。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、従来に比してリアルタイム性の高いコントラストエコーイメージングを実行可能な超音波診断装置及び超音波診断装置制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、被検体の周期的運動を行う診断部位に対して、造影剤を実質的に破壊しない程度の音圧を有する超音波を用いる第1の超音波走査と、造影剤を実質的に破壊する程度の音圧を用いる第2の超音波走査と、を実行する超音波診断装置であって、前記診断部位の少なくとも一部を含み空間的に連続するm個(mは2以上の整数)のサブ領域のそれぞれにつき、前記第1の超音波走査又は前記第2の超音波走査をn回(nは2以上の整数)行うことで、前記各サブ領域に関する経時的なn個のサブボリュームデータを、前記周期的運動の時相を示す時相情報と対応付けて取得するデータ取得手段と、前記経時的なn個の前記各サブボリュームデータと前記時相情報とに基づいて、前記周期的運動の各時相における前記診断部位に関するフルボリュームデータを生成するデータ生成手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、被検体の周期的運動を行う診断部位に対して、造影剤を実質的に破壊しない程度の音圧を有する超音波を用いる第1の超音波走査と、造影剤を実質的に破壊する程度の音圧を用いる第2の超音波走査と、を実行する超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、前記診断部位の少なくとも一部を含み空間的に連続するm個(mは2以上の整数)のサブ領域のそれぞれにつき、前記第1の超音波走査又は前記第2の超音波走査をn回(nは2以上の整数)行うことで、前記各サブ領域に関する経時的なn個のサブボリュームデータを、前記周期的運動の時相を示す時相情報と対応付けて取得させるデータ取得機能と、前記経時的なn個の前記各サブボリュームデータと前記時相情報とに基づいて、前記周期的運動の各時相における前記診断部位に関するフルボリュームデータを生成させるデータ生成機能と、を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
以上本発明によれば、従来に比してリアルタイム性の高いコントラストエコーイメージングを実行可能な超音波診断装置及び超音波診断装置制御プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、本スキャン処理による走査範囲であるサブボリュームv1、v2、v3、v4と、当該サブボリュームv1〜v4によって構成されるフルボリュームV(=v1+v2+v3+v4)との関係を示した図である。
【図3】図3は、フラッシュスキャン優先モードによるCHIのスキャンシーケンスの概念図である。
【図4】図4は、トリガードスキャン周期T=6心拍とする三次元トリガスキャン法において取得された、サブボリュームv1〜v4を例示した図である。
【図5】図5は、モニタリングスキャン優先モードによるCHIのスキャンシーケンスの概念図である。
【図6】図6は、変形例に係るモニタリングスキャン優先モードによるCHIのスキャンシーケンスの概念図である。
【図7】図7は、三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能に従う処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】図8は、三次元トリガードスキャンを用いたCHI処理によって取得された超音波画像の表示形態の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブA、装置本体B、インタフェイス部Cを具備している。
【0016】
超音波プローブAは、装置本体Bからの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブAから被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブAに受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
なお、本超音波プローブAは、被検体の三次元領域を超音波走査可能なものである。そのため、超音波プローブAは、振動子をその配列方向の直交方向に沿って機械的に揺動させ、三次元領域を超音波走査する構成、又は二次元的に配列された二次元振動素子を用いて電気的制御により三次元領域を超音波走査する構成等を有する。前者の構成を採用する場合、被検体の三次元的走査は揺動回路によって行われるため、検査者はプローブ本体を被検体に接触させるだけで、自動的に複数の二次元断層像を取得することができる。制御された揺動速度から断面間の正確な距離も検知できる。また、後者の構成を採用する場合には、原理的には、従来の二次元断層像を取得するのと同じ時間で、三次元領域を超音波走査することができる。
【0018】
インタフェイス部Cは、モニタ11、入力装置13を具備している。
【0019】
モニタ11は、装置本体Bからのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報(Bモード画像)、血流情報(平均速度画像、分散画像、パワー画像等)、これらの組み合わせを画像として表示する。
【0020】
入力装置13は、装置本体Bに接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体Bにとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。例えば、操作者が入力装置13の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、当該超音波診断装置は一時停止状態となる。
【0021】
また、入力装置13は、三次元トリガードスキャンを用いたCHIにおいて、サブボリューム数、トリガードスキャンの繰り返し周期、走査線密度、フレームレート、ゲイン、周波数、ダイナミックレンジ、フィルタ設定、視野深度、フォーカス位置等を設定・変更するためのスイッチ等を有する。
【0022】
装置本体Bは、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット23、Bモード処理ユニット25、ドプラ処理ユニット27、画像生成ユニット28、第1のメモリ29、ボクセル変換ユニット31、データ解析ユニット33、画像合成ユニット35、記憶ユニット37、制御プロセッサ(CPU)39、インタフェイスユニット41を具備している。
【0023】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブAに駆動パルスを印加する。
【0024】
超音波受信ユニット23は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、超音波プローブAを介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0025】
Bモード処理ユニット25は、受信ユニット23からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成ユニット28に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ11に表示される。
【0026】
ドプラ処理ユニット27は、受信ユニット23から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0027】
画像生成ユニット28は、Bモード処理ユニット25、ドプラ処理ユニット27、ボクセル変換ユニット31から受け取った各種データに基づいて、表示画像としての超音波診断画像を生成する。また、画像生成ユニット28は、データ解析ユニット33から受け取ったボリュームデータを用いてボリュームレンダリング等の所定の画像処理を実行し、三次元画像等を生成する。なお、当該画像生成ユニット28に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0028】
第1のメモリ29は、Bモード処理ユニット25又はドプラ処理ユニット27からの生データをフレーム毎に記憶する。
【0029】
ボクセル変換ユニット31は、第1のメモリ29に記録されたフレーム毎の生データを用いて、複数のサブボリュームデータを生成する。
【0030】
データ解析ユニット33は、ボクセル変換ユニット31において生成された複数のサブボリュームデータを時相毎に記憶する。また、データ解析ユニット33は、後述する三次元トリガードスキャンを用いたCHIにおいて、時相情報に基づいて複数のサブボリューム間の時間的対応付け(周期的運動に関する時相対応付け)を行う。さらに、データ解析ユニット33は、時相対応付がなされた複数のサブボリュームを空間的につなぎ合わせることで、映像化対象領域に関するフルボリュームデータを生成する。
【0031】
画像合成ユニット35は、画像生成ユニット28から受け取った画像を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成し、ビデオ信号としてモニタ11に出力する。
【0032】
記憶ユニット37は、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体、及びこれらの媒体に記録された情報を読み出す装置である。この記憶ユニット37には、送受信条件、所定のスキャンシーケンス、三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能を実現するためのプログラム、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラム、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、ボディマーク生成プログラム、各種信号データや画像データ、その他のデータ群が保管されている。記憶部ユニット37内のデータは、インタフェイスユニット41を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0033】
制御プロセッサ39は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ39は、記憶ユニット37から三次元トリガードスキャンを用いたCHIを実現するためのプログラム、所定のスキャンシーケンス、画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0034】
インタフェイスユニット41は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェイスである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェイスユニット41よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0035】
(三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能)
次に、本超音波診断装置1が有する、三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能について説明する。この機能は、CHIを行う場合に、フラッシュスキャン又はモニタリングスキャンのいずれかにおいて三次元トリガードスキャンを選択的に実行することで、ボリュームレート・リアルタイム性を向上させるものである。本機能は、フラッシュスキャン優先モード、モニタリングスキャン優先モードに大きく分けることができる。以下、各優先モードについて説明する。
【0036】
なお、三次元トリガスキャン法とは、周期的運動の時相を識別するための情報(時相情報)と対応付けながら、診断部位の少なくとも一部を含み空間的に連続する小領域に関するボリューム(サブボリューム)データを、対応付けた時相情報を基準として空間的、時間的な再配列を行うことで、所望の範囲に関するボリュームデータ(フルボリュームデータ)を生成すると共に、時相情報に従ってサブボリュームを逐次更新することで、高ボリュームレート、高リアルタイム性を持つ三次元スキャンを実行するものである。
【0037】
図2は、本スキャン処理による走査範囲であるサブボリュームv1、v2、v3、v4と、当該サブボリュームv1〜v4によって構成されるフルボリュームV(=v1+v2+v3+v4)との関係を示した図である。本スキャン処理では、同図示すサブボリュームv1〜v4のそれぞれにつき、トリガードスキャンの繰り返し周期(トリガードスキャン周期)Tに亘るボリュームスキャンが実行される。従って、例えばトリガードスキャン周期T内において診断部位の運動周期を6個(6周期)とし、一運動周期においてサブボリュームv1〜v4分のデータを取得するとすれば、合計24個のサブボリュームが取得されることになる(図4参照)。
【0038】
また、本実施形態においては、三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能の適用例として、周期的運動を行う部位が心臓である場合を例とする。しかしながら、これに拘泥されず、本機能は、循環器系であれば、どのような部位であっても適用可能である。また、本実施形態においては、説明を簡単にするため、三次元トリガードスキャンにおけるサブボリューム数n=4であるとし、トリガードスキャン周期T=6心拍分であるとする。しかしながら、入力装置13からの設定・変更により、サブボリューム数n、トリガードスキャン周期Tは任意の値に設定可能である。さらに、本実施形態においては、時相情報としてECG波形を採用する。しかしながら、当該例に拘泥されず、周期的運動の時相を識別可能な情報であれば、どのようなものを採用してもよい。
【0039】
[フラッシュスキャン優先モード]
フラッシュスキャン優先モードでは、CHIにおいて、フラッシュスキャンについては三次元トリガードスキャンを実行し、モニタリングスキャンについては通常のボリュームスキャン(ノーマルライブボリュームスキャン)を実行するものである。
【0040】
図3は、フラッシュスキャン優先モードによるCHIのスキャンシーケンスの概念図である。なお、同図における矢印は一回のサブボリュームスキャン又はノーマルライブボリュームスキャンを象徴的に表したものである。また、矢印の長さは、各断面の送信超音波の音圧の強弱に対応している。また、同図では、サブボリュームデータを便宜上vijと表記している。添字iはサブボリュームの番号(すなわち、空間情報)に対応する。また、添字jは、トリガードスキャン周期T内において収集される順番(すなわち、時間情報)を示すものである。なお、二つのサブボリューム間で添字jが同一であったとしても、トリガードスキャンの特性から、収集された心時相の同一は必ずしも保証されない。
【0041】
図3に示すように、フラッシュスキャン優先モードでは、低音圧超音波を用いるモニタリングスキャンについては、フルボリュームVについてのノーマルライブボリュームスキャンを繰り返す。操作者は、モニタリングスキャンによって逐次取得されるフルボリュームVについてのライブ像を観察しながら、スキャン領域の確認や造影剤の流入状況等を視認することができる。また、操作者は、所望のタイミング(例えば、診断部位に造影剤が十分に流入したタイミング)で、入力装置13等を介してフラッシュスキャンの開始指示を入力する。制御プロセッサ39は、当該開示指示に応答して、当該開始指示からトリガードスキャン周期T(今の場合、6心拍分)においてトリガスキャンを繰り返し実行し、時相情報(ここではECG波形)と対応付けながら各サブボリュームデータ(図3の例では、v11〜v46までの24個のサブボリュームデータ)を取得する。
【0042】
次に、データ解析ユニット33は、時相情報に基づいてサブボリューム間の時相対応付けと行うと共に、時間的に対応付けられたサブボリュームを空間的につなぎ合わせることで、フルボリュームデータを生成する。
【0043】
例えば、図4に示すような、サブボリュームv1に関するトリガードスキャン周期T分のデータであるサブボリュームデータv11〜v16と、サブボリューム2に関するトリガードスキャン周期T分のデータであるサブボリュームデータv21〜v26との間の時相対応付け処理は、次の様である。すなわち、サブボリュームデータv11〜v16のそれぞれに付された時相情報とサブボリュームデータv21〜v26のそれぞれに付された時相情報とを比較して、例えば時相のずれが所定の閾値以内である場合には、同時相のサブボリュームであると判定する。この判定結果に基づいて、サブボリュームデータv111〜v16とサブボリュームデータv21〜v26との間の時相対応付けを行うことができる。また、残りのv31〜v46についても、時相情報を用いて時間的対応を判定し、空間的につなぎ合わせることで、各時相につき図2に示すようなフルボリュームデータVを生成することができる。
【0044】
[モニタリングキャン優先モード]
モニタリングスキャン優先モードでは、CHIにおいて、モニタリングスキャンについては三次元トリガードスキャンを実行し、フラッシュスキャンについてはノーマルライブボリュームスキャンを実行するものである。
【0045】
図5は、モニタリングスキャン優先モードによるCHIのスキャンシーケンスの概念図である。なお、矢印等の表記法については図4と同様である。
【0046】
図5に示すように、低音圧超音波を用いるモニタリングスキャンについては、制御プロセッサ39は、所望のタイミング(例えば、R波発生を基準としたタイミング)でトリガードスキャン周期T(今の場合、6心拍分)においてトリガスキャンを繰り返し実行し、時相情報(ECG波形)と対応付けながら各サブボリュームデータ(v11〜v46までの24個のサブボリュームデータ)を取得する。また、操作者は、所望のタイミング(例えば、診断部位に造影剤が十分に流入したタイミング)で、入力装置13等を介してフラッシュスキャンの開始指示を入力する。制御プロセッサ39は、当該開示指示に応答して、当該開始指示からフルボリュームVについてのノーマルライブボリュームスキャンを所定期間繰り返す。これにより、例えばフルボリュームV内の造影剤破壊に専念することができる。
【0047】
次に、データ改正部33は、時相情報に基づいてサブボリューム間の時相対応付けと行うと共に、時間的に対応付けられたサブボリュームを空間的につなぎ合わせることで、フルボリュームデータを生成する。ボリュームデータの生成手法は、フラッシュスキャン優先モードの場合と実質的に同じである。
【0048】
[変形例]
次に、モニタリングスキャン優先モードの変形例について説明する。本変形例は、モニタリングスキャンにおいて、一つのサブボリュームについて三次元トリガードスキャンを実行し、これを各サブボリュームについて順次実行することで種々の時相に対応した複数のサブボリュームデータを取得し、時相情報に基づいて事後的に時間的、空間的対応付けを行って時相毎のフルボリュームデータを生成するものである。
【0049】
図6は、変形例に係るモニタリングスキャン優先モードによるCHIのスキャンシーケンスの概念図である。なお、矢印等の表記法については図4、図5と同様である。
【0050】
図6に示すように、制御プロセッサ39は、まず、モニタリングモードにおいて、サブボリュームv1につき所望のタイミングでトリガードスキャン周期T/4においてトリガスキャンを繰り返し実行し、時相情報(ECG波形)と対応付けながら各サブボリュームデータ(v11〜v16までの6個のサブボリュームデータ)を取得する。また、操作者は、所望のタイミング(例えば、診断部位に造影剤が十分に流入したタイミング)で、入力装置13等を介してフラッシュスキャンの開始指示を入力する。制御プロセッサ39は、当該開示指示に応答して、当該開始指示からフルボリュームVについてのノーマルライブボリュームスキャンを所定期間繰り返す。
【0051】
次に、制御プロセッサ39は、モニタリングモードにおいて、サブボリュームv2につき所望のタイミングでトリガードスキャン周期T/4においてトリガスキャンを繰り返し実行し、時相情報(ECG波形)と対応付けながら各サブボリュームデータ(v21〜v26までの6個のサブボリュームデータ)を取得する。また、操作者は、所望のタイミングで、入力装置13等を介してフラッシュスキャンの開始指示を入力する。制御プロセッサ39は、当該開示指示に応答して、当該開始指示からフルボリュームVについてのノーマルライブボリュームスキャンを所定期間繰り返す。
【0052】
以下、図6に示すように、同様のモニタリングスキャン、フラッシュスキャンをサブボリュームv3、v4についても実行することで、サブボリュームデータv31〜v36、v41〜46を時相情報と対応付けながら取得する。
【0053】
次に、データ改正部33は、時相情報に基づいてサブボリューム間の時相対応付けと行うと共に、時間的に対応付けられたサブボリュームを空間的につなぎ合わせることで、フルボリュームデータを生成する。ボリュームデータの生成手法は、フラッシュスキャン優先モードの場合と実質的に同じである。
【0054】
(動作)
次に、三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能に従う処理(三次元トリガードスキャンを用いたCHI処理)を含む本超音波診断装置1の動作について説明する。
【0055】
図7は、三次元トリガードスキャンを用いたCHI処理を含む動作の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、制御プロセッサ39は、入力装置13からの入力に基づいて、サブボリュームの数(セグメント数)、走査範囲(すなわち、フルボリュームの領域)の設定する(ステップS1)。また、制御プロセッサ39は、入力装置13からの入力に基づいて、サブボリューム毎の走査条件(例えば、走査線密度、フレームレート、ゲイン、周波数、ダイナミックレンジ、フィルタ設定、視野深度、フォーカス位置等)を設定する(ステップS2)。
【0056】
ステップS1、S2の各種パラメータ設定が終了し、所定のタイミングで被検体に造影剤が投与されると(ステップS3)、制御プロセッサ39は、モニタリングスキャン優先モード、モニタリングスキャン優先モードのいずれかのモードに従う三次元トリガードスキャンを用いたCHI処理が実行され、その結果取得されたサブボリュームデータを時間的、空間的に対応付けて時相毎のフルボリュームデータを生成する(ステップS4、ステップS5)。
【0057】
画像生成ユニット28は、生成された各時相のフルボリュームデータを用いてボリュームレンダリング等の画像処理を実行し、時相毎の三次元画像を生成する。生成された三次元画像は、リアルタイム動画像として、或いは必要に応じて静止画像として、例えば図8に示す形態にてモニタ11に表示される(ステップS6)。
【0058】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
本超音波診断装置によれば、三次元トリガードスキャンを用いたCHI機能により、状況に応じて、フラッシュスキャン優先モード又はモニタリングスキャン優先モードを選択することができる。従って、例えばフラッシュスキャン優先モードを選択した場合には、フラッシュスキャンにおいて三次元トリガードスキャンが実行され、高ボリュームレートにてフラッシュ画像を取得することができる。また、三次元トリガードスキャンにおいては、超音波断面の間の時間差が少ないため、瞬時にバブルを破壊することができる。さらに、モニタリングスキャンをノーマルライブボリュームによって実行するため、従来に比して、ガイド・リアルタイム性を向上させることができる。一方、モニタリングスキャン優先モードを選択した場合には、モニタリングスキャンにおいて三次元トリガードスキャンが実行され、高ボリュームレートにてモニタリング画像を取得することができる。従って、高い精度にてスキャン領域や造影剤流入状況を確認することができる。また、フラッシュキャンをノーマルライブボリュームによって実行するため、瞬時にバブルを破壊することができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0061】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上本発明によれば、従来に比してリアルタイム性の高いコントラストエコーイメージングを実行可能な超音波診断装置及び超音波診断装置制御プログラムを実現することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…超音波診断装置、11…モニタ、13…入力装置、21…超音波送信ユニット、23…超音波受信ユニット、25…Bモード処理ユニット、27…ドプラ処理ユニット、28…画像生成ユニット、29…第1のメモリ、31…ボクセル変換ユニット、33…データ解析ユニット、35…画像合成ユニット、37…記憶ユニット、39…制御プロセッサ(CPU)、41…インタフェイスユニット、A…超音波プローブ、B…装置本体、C…インタフェイス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の周期的運動を行う診断部位に対して、造影剤を実質的に破壊しない程度の音圧を有する超音波を用いる第1の超音波走査と、造影剤を実質的に破壊する程度の音圧を用いる第2の超音波走査と、を実行する超音波診断装置であって、
前記診断部位の少なくとも一部を含み空間的に連続するm個(mは2以上の整数)のサブ領域のそれぞれにつき、前記第1の超音波走査又は前記第2の超音波走査をn回(nは2以上の整数)行うことで、前記各サブ領域に関する経時的なn個のサブボリュームデータを、前記周期的運動の時相を示す時相情報と対応付けて取得するデータ取得手段と、
前記経時的なn個の前記各サブボリュームデータと前記時相情報とに基づいて、前記周期的運動の各時相における前記診断部位に関するフルボリュームデータを生成するデータ生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記データ取得手段は、前記m個のサブ領域につき、n回(nは2以上の整数)の前記第1の超音波走査を実行し、
前記データ生成手段は、前記診断部位に造影剤が流入する様子の経時的変化を示す超音波画像を取得するための、前記フルボリュームデータを生成すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記データ取得手段は、前記m個のサブ領域につき、n回(nは2以上の整数)の前記第2の超音波走査を実行し、
前記データ生成手段は、前記診断部位に流入した造影剤の破壊を利用した超音波画像を取得するための、前記フルボリュームデータを生成すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
被検体の周期的運動を行う診断部位に対して、造影剤を実質的に破壊しない程度の音圧を有する超音波を用いる第1の超音波走査と、造影剤を実質的に破壊する程度の音圧を用いる第2の超音波走査と、を実行する超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、
前記診断部位の少なくとも一部を含み空間的に連続するm個(mは2以上の整数)のサブ領域のそれぞれにつき、前記第1の超音波走査又は前記第2の超音波走査をn回(nは2以上の整数)行うことで、前記各サブ領域に関する経時的なn個のサブボリュームデータを、前記周期的運動の時相を示す時相情報と対応付けて取得させるデータ取得機能と、
前記経時的なn個の前記各サブボリュームデータと前記時相情報とに基づいて、前記周期的運動の各時相における前記診断部位に関するフルボリュームデータを生成させるデータ生成機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−220875(P2010−220875A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72566(P2009−72566)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】