超音波診断装置及びその制御方法
【課題】超音波の音速制約により生じるドプラスペクトル画像の画質の劣化を抑える。
【解決手段】実施系形態に係る超音波診断装置において、設定部は、複数の観測部位を設定する。距離判定部は、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する。スキャン切替部は、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【解決手段】実施系形態に係る超音波診断装置において、設定部は、複数の観測部位を設定する。距離判定部は、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する。スキャン切替部は、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Bモード画像などの血管像上に血流情報の観察部位としてレンジゲートを設定し、そのレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像を表示する超音波診断装置が知られている。また、かかる超音波診断装置によって、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示するデュアルドプラ技術も知られている。
【0003】
ここで、デュアルドプラ技術で用いられるスキャン方式として、インターリーブスキャン及びセグメントスキャンがある。インターリーブスキャンは、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信することで、各レンジゲートにおける血流情報を取得する方式である。また、セグメントスキャンは、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれに対して複数回ずつ交互に超音波を送受信することで、各レンジゲートにおける血流情報を取得する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−206303号公報
【特許文献2】特開平6−7352号公報
【特許文献3】特開2008−92981号公報
【特許文献4】特開平11−94932号公報
【特許文献5】特開平6−7348号公報
【特許文献6】特開2009−136446号公報
【特許文献7】特開2007−202617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、超音波の音速制約によって、良好なドプラスペクトル画像が得られない場合があった。例えば、インターリーブスキャンでは、速度レンジが制約されて低くなるため、被検体の深部に流れる速い血流に関するドプラスペクトラム画像に折り返し現象が発生しやすい。また、セグメントスキャンでは、1つのレンジゲートに連続して超音波を送受信している間は、その他のレンジゲートには超音波が送受信されない。そのため、各レンジゲートにおけるドプラスペクトラム画像に周期的なデータの欠落が発生し、この欠落によって画像の劣化が生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波診断装置は、設定部と、距離判定部と、スキャン切替部と、画像生成部と、表示部とを備える。設定部は、複数の観測部位を設定する。距離判定部は、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する。スキャン切替部は、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。画像生成部は、前記第1のスキャン又は前記第2のスキャンにより受信された反射波データに基づいて、前記複数の観測部位それぞれにおける移動速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像をそれぞれ生成する。表示部は、前記ドプラスペクトル画像を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図3A】図3Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図3B】図3Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図4A】図4Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図4B】図4Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図5A】図5Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図5B】図5Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図6A】図6Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図6B】図6Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図7A】図7Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図7B】図7Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図8】図8は、本実施形態に係る距離判定部による距離の判定を説明するための図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に係るインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。
【図11】図11は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。
【図12】図12は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。
【図13】図13は、本実施形態に係るセグメントスキャンのシーケンスを示す図である。
【図14】図14は、本実施形態に係るセグメントスキャンにおける処理の流れを示す図である。
【図15】図15は、超音波の音速制約を説明するための図である。
【図16】図16は、本実施形態に係る計測値表示部による計測値の表示の一例を示す図である。
【図17】図17は、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図である。
【図18】図18は、本実施形態に係る計測値表示部による計測値の表示の一例を示す図である。
【図19A】図19Aは、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図(1)である。
【図19B】図19Bは、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図(2)である。
【図19C】図19Cは、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図(3)である。
【図20】図20は、本実施形態に係る超音波診断装置によるB/D同時スキャンの処理手順を示すフローチャートである。
【図21】図21は、本実施形態に係る超音波診断装置による自動計測処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、表示部2と、入力部3と、装置本体10とを有する。
【0009】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層及び音響レンズ、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。かかる超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0010】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが血流や心臓壁などの移動体の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して周波数偏移(ドプラ偏移)を受ける。
【0011】
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ1や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
【0012】
入力部3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置100の操作者から各種要求を受け付け、受け付けた各種要求を装置本体10に転送する。
【0013】
例えば、操作者は、入力部3が有するトラックボールを用いて、Bモード画像などの血管像上に血流情報の観察部位を示すレンジゲートの設定を行なう。また、例えば、操作者は、入力部3が有するパネルスイッチなどを用いて、Bモード画像とドプラスペクトル画像とを表示するB/D同時スキャンの開始要求及び終了要求を行う。
【0014】
表示部2は、超音波診断装置100の操作者が入力部3を用いて各種要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像などを表示したりする。
【0015】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する。具体的には、装置本体10は、送信部11と、受信部12と、Bモード処理部13と、ドプラ処理部14と、画像生成部15と、画像メモリ16と、制御部17と、内部記憶部18とを有する。
【0016】
送信部11は、トリガ発生回路、送信遅延回路及びパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定の繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)の送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。なお、PRFは、レート周波数とも呼ばれる。送信遅延回路は、パルサ回路が発生する各レートパルスに対して、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0017】
なお、送信部11は、後述する制御部17の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0018】
ここで、送信遅延時間は、超音波ビームの送信フォーカスの音響レンズからの位置(深さ)によって決定される。そして、送信部11は、送信遅延時間を用いることで、超音波の送信における送信指向性を制御する。
【0019】
受信部12は、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路により受信遅延時間が与えられた反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0020】
ここで、受信遅延時間は、超音波ビームの受信フォーカスの音響レンズからの位置(深さ)によって決定される。そして、受信部12は、受信遅延時間を用いることで、超音波の受信における受信指向性を制御する。
【0021】
また、本実施形態にかかる超音波プローブ1は、送信フォーカス及び受信フォーカスの位置に応じて、送受信に用いる圧電振動子(送信用口径及び受信用口径)を変更することが可能である。例えば、近い位置からの反射波信号を受信する際には、強い受信フォーカスをかけるために、受信する振動子の数を少なくしておき、中央部分の圧電振動子で受信した反射波信号のみが超音波画像の生成に用いられるように、小さな受信用口径が受信条件として決定される。また、遠い位置からの反射波信号を受信する際には、圧電振動子の口径が大きいほど受信フォーカスを強くできるので、距離に応じて受信用口径を大きくするように受信条件が決定される。
【0022】
Bモード処理部13は、受信部12によって生成された反射波データに対して対数増幅、包絡線検波処理などを行うことで、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0023】
ドプラ処理部14は、受信部12によって生成された反射波データから速度情報を周波数解析することでドプラ偏移を抽出し、ドプラ偏移を用いることで、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0024】
なお、本実施形態に係るBモード処理部13及びドプラ処理部14は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。
【0025】
画像生成部15は、Bモード処理部13及びドプラ処理部14によって生成されたデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部15は、Bモード処理部13によって生成されたBモードデータから、反射波の強度を輝度で表したBモード画像を生成する。または、画像生成部15は、Bモード処理部13によって生成された所定のスキャンラインにおけるBモードデータから、所定のスキャンラインにおける反射波強度の時系列に沿った変化を輝度にて表したMモード画像を生成する。
【0026】
また、画像生成部15は、ドプラ処理部14によって生成されたドプラデータから、移動体情報(血流情報や組織の移動情報)を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。さらに、画像生成部15は、ドプラ処理部14によって生成されたドプラデータから、移動体の速度情報(血流の速度情報や組織の速度情報)を時系列に沿ってプロットしたドプラスペクトラム画像を生成する。
【0027】
画像メモリ16は、画像生成部15が生成した超音波画像を記憶するメモリである。また、画像メモリ16は、Bモード処理部13やドプラ処理部14によって生成されたデータを記憶することも可能である。
【0028】
内部記憶部18は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)、診断プロトコル、各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部18は、必要に応じて、画像メモリ16によって記憶される画像の保管などにも使用される。また、内部記憶部18によって記憶されるデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0029】
制御部17は、超音波診断装置100の処理全体を制御する。具体的には、制御部17は、入力部3を介して操作者から入力された各種要求や、内部記憶部18から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づいて、送信部11、受信部12、Bモード処理部13、ドプラ処理部14、画像生成部15の処理を制御する。また、制御部17は、画像メモリ16によって記憶される超音波画像や、画像生成部15によって行われる各種処理を指定するためのGUIなどを表示部2に表示するよう制御する。
【0030】
以上、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る超音波診断装置100では、制御部17が、血流情報の観測部位として設定された少なくとも2つのレンジゲートについて、第1のレンジゲートから超音波プローブまでの距離と第2のレンジゲートから超音波プローブまでの距離との合計長が閾値未満であるか否かを判定する。また、制御部17は、距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にはインターリーブスキャンを行い、距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にはセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。また、画像生成部15が、セグメントスキャン又はインターリーブスキャンにより受信された反射波データに基づいて、第1のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第1のドプラスペクトラム画像と第2のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第2のドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成する。そして、表示部2が、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトラム画像及び第2のドプラスペクトル画像を表示する。
【0031】
すなわち、本実施形態に係る超音波診断装置100は、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示する場合に、各レンジゲートの深さの合計に応じて、インターリーブスキャンとセグメントスキャンとを自動的に切り替える。ここで、インターリーブスキャンは、第1のレンジゲート及び第2のレンジゲートそれぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する方式である。また、セグメントスキャンは、第1のレンジゲート及び第2のレンジゲートそれぞれに対して複数回ずつ交互に超音波を送受信する方式である。
【0032】
以下では、かかる超音波診断装置100について詳細に説明する。なお、本実施形態では、超音波診断装置100は、Bモード画像の血管像上に血流情報の観察部位として2つのレンジゲートを設定し、各レンジゲートにおけるドプラスペクトル画像をそれぞれ表示する。このように、2つのレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示する表示モードを以下ではデュアルドプラモードと呼ぶ。なお、超音波診断装置100は、2つのレンジゲートにおけるドプラスペクトル画像を1つずつ表示することも可能である。このように、2つのレンジゲートにおけるドプラスペクトル画像を1つずつ表示する表示モードを以下ではシングルドプラモードと呼ぶ。
【0033】
また、超音波診断装置100は、診断対象の臓器や診断の種類に応じて各種のアプリケーションを実行することができる。本実施形態では、超音波診断装置100が、心臓の診断用のアプリケーションと頚動脈の診断用のアプリケーションとを実行する場合について説明する。さらに、超音波診断装置100は、診断部位に応じて、ドプラスペクトル画像の表示態様を切り替えることができる。本実施形態では、診断部位が心臓の左室流入血流(Left Ventricular Inflow:LVI)及び左室流出血流(Left Ventricular Outflow:LVO)である場合と、心臓の左室流入血流ピーク速度(E)及び僧帽弁輪移動速度(e’)である場合と、頚動脈の総頚動脈(Common Carotid Artery:CCA)及び内頚動脈(Internal Carotid Artery:ICA)である場合とについて説明する。
【0034】
次に、本実施形態に係る制御部17について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る制御部17の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御部17は、表示制御部17aと、設定部17fと、距離判定部17bと、スキャン切替部17cと、計測値算出部17dと、計測値表示部17eとを有する。
【0035】
表示制御部17aは、入力部3を介して操作者から各種要求を受け付け、受け付けた各種要求に応じて、画像メモリ16によって記憶される超音波画像や、画像生成部15によって行われる各種処理を指定するためのGUIなどを表示部2に表示させる。また、超音波診断装置100は、入力部3が有するタッチコマンドスクリーンを介して、上述した表示モード、アプリケーション及び診断部位を選択する操作を操作者から受け付ける。
【0036】
例えば、表示制御部17aは、タッチスクリーン上に「Dual Doppler」ボタン、「PWD1」ボタン、「PWD2」ボタンを表示させる。「Dual Doppler」ボタンは、シングルモード又はデュアルモードの選択と、診断部位の選択とを操作者から受け付けるためのボタンである。この「Dual Doppler」は、操作者によって押下されるたびに、「Dual Doppler(off)」、「Dual Doppler(LVI/LVO)」、「Dual Doppler(E/e’)」の順で表示を切り替える。
【0037】
また、「PWD1」ボタン及び「PWD2」ボタンは、2つのレンジゲートのうちいずれかを選択する操作を操作者から受け付けるためのボタンである。これら「PWD1」ボタン及び「PWD2」ボタンは、「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(off)」の状態では「PWD1」及び「PWD2」と表示され、「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(LVI/LVO)」の状態では「PWD1(LVI)」及び「PWD2(LVO)」と表示され、「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(E/e’)」の状態では「PWD1(E)」及び「PWD2(e’)」と表示される。
【0038】
そして、例えば、表示制御部17aは、操作者からB/D同時スキャンの開始要求を受け付けた場合には、画像生成部15によって生成されたBモード画像及びドプラスペクトラム画像を表示部2に表示させる。また、表示制御部17aは、表示部2に表示されたBモード画像上に、超音波の送受信方向を示す2本のスキャンラインを表示する。また、表示制御部17aは、各スキャンライン上にレンジゲートを表示する。なお、表示制御部17aは、入力部3が有するトラックボールを介して操作者から受け付けた操作に応じて、各スキャンラインを走査方向に移動させたり、各レンジゲートの位置をスキャンラインに沿って移動させたりする。
【0039】
ここで、表示制御部17aは、操作者によって選択された表示モードやアプリケーション、診断部位に応じて、Bモード画像上に表示するスキャンライン及びレンジゲートの位置や、ドプラスペクトラム画像の種類を変化させる。例えば、スキャンライン及びレンジゲートの位置は、あらかじめアプリケーション及び診断部位ごとに定義されたプリセット情報に基づいて決められる。
【0040】
図3A、3B、4A及び4Bは、本実施形態に係る超音波診断装置100におけるシングルドプラモードを説明するための図である。図3A、3B、4A及び4Bは、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合を示している。なお、図3A及び4Aは、表示部2が有する表示領域を示しており、図3B及び4Bは、タッチコマンドスクリーンを示している。
【0041】
図3A、3B、4A及び4Bに示すように、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2にBモード画像31を表示し、そのBモード画像31上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、左室流出血流の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0042】
そして、例えば、図3A及び3Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(off)」の状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、スキャンラインPWD1上に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像32を表示させる。なお、この状態では、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0043】
また、例えば、図4A及び4Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(off)」の状態で、「PWD2」ボタンが選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、スキャンラインPWD2上に設定されたレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像42を表示させる。なお、この状態では、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0044】
図5A、5B、6A、6B、7A、7B及び7Cは、本実施形態に係る超音波診断装置100におけるデュアルドプラモードを説明するための図である。図5A及び5Bは、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合を示している。また、図6A及び6Bは、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合を示している。また、図7A、7B及び7Cは、頚動脈の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として総頚動脈及び内頚動脈が選択された場合を示している。
【0045】
図5A及び5Bに示すように、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2に心臓のBモード画像51を表示し、そのBモード画像51上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、左室流出血流の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0046】
そして、例えば、図5A及び5Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(LVI/LVO)」の状態である場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、レンジゲートRG1における正側の速度成分を示すドプラスペクトル画像52と、レンジゲートRG2における負側の速度成分を示すドプラスペクトル画像53とを上下に配置して表示させる。なお、この状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。一方、「PWD2」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0047】
また、図6A及び6Bに示すように、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2に心臓のBモード画像61を表示し、そのBモード画像61上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、僧帽弁輪の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0048】
そして、例えば、図6A及び6Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(E/e’)」の状態である場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、レンジゲートRG1における左室流入血流ピーク速度のドプラスペクトル画像62と、僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像63とを上下に配置して表示させる。なお、この状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。一方、「PWD2」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0049】
また、例えば、図7A及び7Bに示すように、頚動脈の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として総頚動脈及び内頚動脈が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2に頚動脈のBモード画像71を表示し、そのBモード画像71上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、総頚動脈の位置にレンジゲートRG1が配置され、内頚動脈の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0050】
そして、例えば、図7A及び7Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(CCA/ICA)」の状態である場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、レンジゲートRG1における総頚動脈のドプラスペクトル画像72と、内頚動脈のドプラスペクトル画像73とを上下に配置して表示させる。なお、この状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。一方、「PWD2」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0051】
図2の説明にもどって、設定部17fは、複数の観測部位を設定する。本実施形態では、設定部17fは、表示制御部17aによって表示部2に表示されたレンジゲートの位置に基づいて、観測部位を設定する。具体的には、設定部17fは、表示部2に表示されたBモード画像上でレンジゲートが位置付けられた箇所を、観測部位として設定する。
【0052】
距離判定部17bは、複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する。本実施形態では、距離判定部17bは、複数の観測部位のうち少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較する。
【0053】
具体的には、距離判定部17bは、血流情報の観測部位として設定された少なくとも2つのレンジゲートについて、第1のレンジゲートから超音波プローブまでの距離と第2のレンジゲートから超音波プローブまでの距離との合計長が閾値未満であるか否かを判定する。
【0054】
図8は、本実施形態に係る距離判定部17bによる距離の判定を説明するための図である。図8に示すように、例えば、Bモード画像81上に設定された2本のスキャンラインPWD1及びPWD2が設定されており、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1が設定され、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2が設定されていたとする。この場合には、距離判定部17bは、超音波プローブ1のプローブ原点80からレンジゲートRG1までの距離R1と、超音波プローブ1の原点80からレンジゲートRG2までの距離R2とをそれぞれ算出する。そして、距離判定部17bは、算出した距離R1と距離R2との合計長を算出し、その合計長が所定の閾値未満であるか否かを判定する。
【0055】
ここで、本実施形態では、距離判定部17bは、診断部位に基づいて閾値を設定して距離の合計長の判定を行う。例えば、距離判定部17bは、診断部位が心臓の左室流入血流及び左室流出血流である場合には、インターリーブスキャンを行った場合でも折り返しを生じないレンジゲートの深さの2倍の値を閾値として設定する。ここで、折り返しを生じないレンジゲートの深さは、例えば、あらかじめ実験的にレンジゲートの深さを少しずつ深くしながらインターリーブスキャンを行い、ドプラスペクトル画像に折り返しが発生した時点でのレンジゲートの深さより浅くすればよい。この深さから求められる閾値は、例えば、あらかじめ操作者によって所定の記憶部に格納される。そして、距離判定部17bは、記憶部に格納されている閾値を取得して、距離の合計長の判定を行う。なお、診断部位が心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度である場合についても、同様に閾値を設定することができる。
【0056】
また、例えば、距離判定部17bは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、設定し得るレンジゲートの深さの最大値の2倍より大きな値を閾値として設定する。これにより、頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈の診断が行われる場合には、各レンジゲートから超音波プローブまでの距離の合計長が閾値以上となることがなくなるので、常にインターリーブスキャンでデータが収集されることになる。一般的に、頚動脈は体表から浅い位置にあるので、インターリーブスキャンでデータを収集しても、折り返し現象が発生する可能性が低く、十分な画質のドプラ画像が得られる。
【0057】
なお、ここでは、診断部位に基づいて閾値を設定する場合について説明したが、例えば、距離判定部17bは、患者情報に基づいて閾値を設定してもよい。例えば、距離判定部17bは、診断が行われる際に操作者によって超音波診断装置100に入力された患者の性別や年齢に基づいて、閾値を設定する。例えば、ドプラの速度レンジは、加齢とともに低下することが知られている。そこで、例えば、距離判定部17bは、患者の年齢が上がるにつれて値が低くなるように、閾値を設定する。
【0058】
図2の説明にもどって、スキャン切替部17cは、少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが閾値を下回っていた場合に、複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが閾値を上回っていた場合に、複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0059】
本実施形態では、スキャン切替部17cは、少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が閾値を下回っていた場合に、第1のスキャンを行い、少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が閾値を上回っていた場合に、第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0060】
なお、第2のスキャンは、例えば、複数の観測部位それぞれに対して同じ数だけ超音波を送受信するものでもよいし、複数の観測部位それぞれに対して異なる数だけ超音波を送受信するものでもよい。例えば、第2のスキャンは、複数の観測部位のうち1つ又は複数の観測部位については1回ずつ超音波を送受信し、他の観測部位については複数回超音波を送受信してもよい。
【0061】
ここで、各観測部位に何回ずつ送受信を行うかは、例えば、観測部位の深さによって決められる。一般的に、一方の観測部位の深さが深いほど、その観測部位に対して複数回超音波を送受信するのにかかる時間が長くなるため、他方の観測部位に関するドプラ波形に生じる空隙が大きくなってしまう。そこで、例えば、深い位置にある観測部位については、浅い位置にある観測部位よりも送受信の回数を減らす。
【0062】
また、送受信の回数は、例えば、必要とされる測定精度によって決められてもよい。例えば、高精度の測定が必要な観測部位や、SN比の悪い観測部位については、送受信の回数を増やすようにする。また、送受信の回数は、例えば、流速によって決められてもよい。例えば、ある観測部位の流速が低い場合には、その観測部位については1回ずつ超音波を送受信し、他の観測部位については複数回超音波を送受信するようにする。これにより、流速が低い観測部位については、時間間隔を空けて超音波を送受信することで、低い流速の検出を行うことができる。
【0063】
具体的には、スキャン切替部17cは、距離判定部17bにより距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にインターリーブスキャンを行い、距離判定部17bにより距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。ここで、インターリーブスキャン及びセグメントスキャンについて具体的に説明する。なお、ここでは、図8に示したレンジゲートRG1及びRG2からデータを収集する場合について説明する。
【0064】
まず、インターリーブスキャンについて説明する。図9は、本実施形態に係るインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。図9において、横軸は時間を示している。また、Txは、超音波プローブ1から送信される超音波のPRFと送信タイミングとを示している。また、Rxは、超音波プローブ1により反射波が受信されるタイミングを示している。また、D1は、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。また、D2は、RG2におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。
【0065】
インターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれに対して1回ずつ交互に超音波が送受信される。例えば、図9に示すように、インターリーブスキャンでは、スキャンラインPWD1に沿ってPRFが8kHzの超音波が送信され、スキャンラインPWD2に沿ってPRFが4kHzの超音波が送信される。ここで、スキャンラインPWD1に対する送信とスキャンラインPWD2に対する送信とは、1回ずつ交互に行われる。
【0066】
また、インターリーブスキャンでは、例えば、レンジゲートRG1の反射波とレンジゲートRG2の反射波とが交互に受信される。そして、例えば、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータとRG2におけるドプラスペクトル画像用のデータとが、それぞれ2.7kHzの周期でサンプリングされる。なお、インターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びRG2の位置に応じて、各レンジゲートからのデータ収集が最短で可能となるPRFが設定される。
【0067】
図10は、本実施形態に係るインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。図10に示すように、インターリーブスキャンでは、ドプラ処理部14が、レンジゲートRG1からの反射波データに対して、ウォールフィルター(Wall Filter)、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)、後処理(Post処理)を順に施すことで、レンジゲートRG1における血流の流速を示すドプラデータを生成する。
【0068】
一方、ドプラ処理部14は、レンジゲートRG2からの反射波データに対して、ウォールフィルター(Wall Filter)、FFT(Fast Fourier Transformation)、後処理(Post処理)を順に施すことで、レンジゲートRG2における血流の流速を示すドプラデータを生成する。そして、画像生成部15が、ドプラ処理部14によって生成された各ドプラデータから、レンジゲートRG1におけるドプラスペクトラム画像とレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成して表示部2に表示させる(Dual−D表示)。
【0069】
なお、診断部位として心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンでは、僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像は組織ドプラになるので、シーケンスが図9に示したものと少し異なる。図11は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。なお、ここでは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、僧帽弁輪の位置にレンジゲートRG2が配置されているとする。図11において、横軸は時間を示している。また、Tx、Rx、D1及びD2の意味は図9と同様である。また、D3は、RG2における僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。
【0070】
左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれに対して複数回ずつ交互に超音波が送受信される。例えば、図11に示すように、インターリーブスキャンでは、スキャンラインPWD1に沿ってPRFが5kHzの超音波が送信され、スキャンラインPWD2に沿ってPRFが4kHzの超音波が送信される。ここで、スキャンラインPWD1に対する送信とスキャンラインPWD2に対する送信とは、1回ずつ交互に行われる。
【0071】
また、インターリーブスキャンでは、例えば、レンジゲートRG1の反射波とレンジゲートRG2の反射波とが交互に受信される。そして、例えば、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータとRG2におけるドプラスペクトル画像用のデータとが、それぞれ2.2kHzの周期でサンプリングされる。また、RG2における僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像用のデータは、例えば、1.1kHzの周期に間引いて収集が行われる。これは、組織の移動速度は血流の流速に比べて遅いためである。なお、インターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びRG2の位置に応じて、各レンジゲートからのデータ収集が最短で可能となるPRFが設定される。
【0072】
図12は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。図12に示すように、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンでは、ドプラ処理部14が、レンジゲートRG2からの反射波データに対して、ウォールフィルター(Wall Filter)を施す前に、ローパスフィルタ(Low Pass Filter:LPF)とスケーリング(Scaling)とを施す。これにより、僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像用のデータが間引かれる。
【0073】
次に、セグメントスキャンについて説明する。図13は、本実施形態に係るセグメントスキャンのシーケンスを示す図である。図13において、横軸は時間を示している。また、Tx及びRxの意味は図9と同じである。また、D1は、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。また、D2は、RG2におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。また、D3は、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータに関する信号処理を示している。また、D4は、RG2におけるドプラスペクトル画像用のデータに関する信号処理を示している。
【0074】
セグメントスキャンでは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれに対して複数回ずつ交互に超音波が送受信される。例えば、図13に示すように、セグメントスキャンでは、スキャンラインPWD1に沿ってPRFが5kHzの超音波が複数回連続して送信され、スキャンラインPWD2に沿ってPRFが4kHzの超音波が複数回連続して送信される。ここで、スキャンラインPWD1に対する送信とスキャンラインPWD2に対する送信とは、複数回ずつ交互に行われる。
【0075】
また、セグメントスキャンでは、例えば、レンジゲートRG1の反射波が複数回連続して受信され、レンジゲートRG2の反射波が複数回連続して受信される。ここで、レンジゲートRG1からの反射波の受信とレンジゲートRG2からの反射波の受信とは、複数回ずつ交互に行われる。そして、例えば、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータとRG2におけるドプラスペクトル画像用のデータとが、複数回の反射波データからなるセグメントの単位で交互にサンプリングされる。なお、セグメントスキャンでは、レンジゲートRG1及びRG2の位置に応じて、各レンジゲートからのデータ収集が最短で可能となるPRFが設定される。
【0076】
ここで、セグメントスキャンでは、レンジゲートRG1に連続して超音波を送受信している間は、レンジゲートRG2には超音波が送受信されないため、各レンジゲートにおけるドプラスペクトラム画像に周期的なデータの欠落が発生する。そこで、本実施形態では、各レンジゲートにおけるドプラスペクトラム画像に周期的なデータの欠落区間に補間データが挿入される。これにより、データの欠落によって生じる画像の劣化を抑えることができる。
【0077】
図14は、本実施形態に係るセグメントスキャンにおける処理の流れを示す図である。図14に示すように、セグメントスキャンでは、ドプラ処理部14が、レンジゲートRG1及びRG2それぞれからの反射データに対してウォールフィルター(Wall Filter)、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)を順に施す。このとき、ウォールフィルター及び高速フーリエ変換は時分割処理となる。なお、ドプラ処理部14は、時分割処理でウォールフィルター及び高速フーリエ変換を行うのではなく、図10に示した流れと同様に、レンジゲートRG1及びRG2それぞれからの反射波データに対して、別々にウォールフィルター及び高速フーリエ変換を施してもよい。
【0078】
そして、ドプラ処理部14は、高速フーリエ変換が施されたレンジゲートRG1からのデータに対して、パラメータ同定処理、補間データ生成処理、後処理(Post処理)を施すことで、レンジゲートRG1におけるドプラスペクトラム画像に生じているデータの欠落区間に補間データを補填する。同様に、ドプラ処理部14は、高速フーリエ変換が施されたレンジゲートRG2からのデータに対しても、パラメータ同定処理、補間データ生成処理、後処理(Post処理)を施すことで、レンジゲートRG2におけるドプラスペクトラム画像に生じているデータの欠落区間に補間データを補填する。そして、画像生成部15が、ドプラ処理部14によって生成された各ドプラデータから、レンジゲートRG1におけるドプラスペクトラム画像とレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成して表示部2に表示させる(Dual−D表示)。
【0079】
ここで、上述したインターリーブスキャン又はセグメントスキャンのいずれかを単独で行った場合には、従来のように、超音波の音速制約によって、良好なドプラスペクトル画像が得られない可能性がある。図15は、超音波の音速制約を説明するための図である。図15に示すように、超音波診断装置で用いられる超音波には、視野深度と、PRFと、ドプラの速度レンジとの間にトレードオフが生じる。
【0080】
図15に示す関係からも分かるように、PRFが小さくなると、視野深度は深くなるのに対して、ドプラの速度レンジは低くなる。インターリーブスキャンでは、レンジゲートの数に応じてPRFが小さくなってしまうので、このような音速制約からドプラスペクトラム画像の速度レンジが小さくなってしまい、折り返し現象が発生しやすい。このため、インターリーブスキャンでは、例えば、深い位置に設定されたレンジゲートにおける速い血流を診断することが困難である。
【0081】
これに対し、本実施形態では、スキャン切替部17cが、距離判定部17bによって距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にはインターリーブスキャンを行い、距離判定部17bにより距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にはセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。すなわち、本実施形態では、深い位置に設定されたレンジゲートにおける血流を診断する場合には、自動的にスキャン方式がインターリーブスキャンからセグメントスキャンに切り替わる。したがって、本実施形態によれば、深い位置に設定されたレンジゲートにおける速い血流についても画質のよいドプラスペクトル画像を得ることができる。
【0082】
図2の説明にもどって、計測値算出部17dは、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトラム画像により示される移動速度と第2のドプラスペクトラム画像により示される移動速度とから得られる計測値を算出する。
【0083】
例えば、計測値算出部17dは、診断部位が心臓の左室流入血流及び左室流出血流である場合には、左室流入血流の位置に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度と、左室流出血流の位置に設定されたレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度とから、各種計測値を算出する。例えば、計測値算出部17dは、Mitral系の計測値として、Evel、Avel、E/A(Evel/Avel)、DcTなどの計測値を算出する。また、計測値算出部17dは、Aortic系の計測値として、VTI、VP、PPG、MPGなどの計測値を算出する。
【0084】
さらに、計測値算出部17dは、左室流入血流及び左室流出血流に関する計測値として、IRT(Isovolumetric Relaxation Time)、ICT(Isovolumetric Contraction Time)、T.Indexなどの計測値を算出する。図17は、本実施形態に係る計測値算出部17dによる計測値の算出の一例を示す図である。例えば、図17に示すように、拡張期心室流入血流速度波形の終了から開始までの時間をa、駆出時間(ET:Ejection Time)をb、心電図のR波から心室流入血流速度波形の開始までの時間をc、心電図のR波から左室駆出血流速度波形の終了までの時間をdとすると、IRT、ICTは、それぞれ以下に示す式により算出される。
【0085】
IRT=c−d
ICT=a−b−IRT
T.Index=(a−b)/b
【0086】
また、計測値算出部17dは、診断部位が心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度である場合には、左室流入血流の位置に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度と、僧帽弁輪の位置に設定されたレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像により示される僧帽弁輪移動速度とから、各種計測値を算出する。例えば、計測値算出部17dは、EPV、e’、e’/Eなどの計測値を算出する。ここで、EPVは、左室流入血流速度波形におけるE波のピーク速度である。また、e’は、僧帽弁輪移動速度のピーク値である。
【0087】
また、計測値算出部17dは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、Bモード画像に基づいて各種計測値を算出する。図19A、19B及び19Cは、本実施形態に係る計測値算出部17dによる計測値の算出の一例を示す図である。例えば、図19Aに示すように、計測値算出部17dは、レンジゲートRG1とレンジゲートRG2との間の距離Lを算出する。また、例えば、図19Bに示すように、計測値算出部17dは、頚動脈の上下壁厚h1及びh2、頚動脈の内径Dを算出する。
【0088】
さらに、計測値算出部17dは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、総頚動脈の位置に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度と、内頚動脈の位置に設置されたレンジゲートRG2おけるドプラスペクトル画像により示される血流速度とから、各種計測値を算出する。例えば、図19Cに示すように、計測値算出部17dは、CCAVel、ICAVel、T1などの計測値を算出する。ここで、Ccavelは、CCAの最高速度であり、Icavelは、ICAの最高速度である。また、T1は、CCAピークとICAピークとの時間差である。また、計測値算出部17dは、脈波速度Cから動脈硬化度Eを算出してもよい。例えば、動脈硬化度Eは、部位ごとにあらかじめ決められたプリセット値をρとすると、以下に示す式(1)により算出される。
【0089】
【数1】
【0090】
図2の説明にもどって、計測値表示部17eは、計測値算出部17dにより算出された計測値を表示部2に表示させる。
【0091】
図16は、本実施形態に係る計測値表示部17eによる計測値の表示の一例を示す図である。例えば、図16に示すように、計測値表示部17eは、診断部位が心臓の左室流入血流及び左室流出血流である場合には、Mitral系の計測値を表示するための表示領域161に、計測値算出部17dにより算出されたEvel、Avel、E/A(Evel/Avel)、DcTなどの計測値を表示する。また、計測値算出部17dは、Aortic系の計測値を表示するための表示領域162に、計測値算出部17dによって算出されたVTI、VP、PPG、MPGなどの計測値を表示する。さらに、計測値表示部17eは、左室流入血流及び左室流出血流に関する計測値を表示するための表示領域163に、計測値算出部17dによって算出されたIRT、ICT、T.Indexなどの計測値を表示する。
【0092】
図18は、本実施形態に係る計測値表示部17eによる計測値の表示の一例を示す図である。例えば、図18に示すように、計測値表示部17eは、診断部位が心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度である場合には、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度に関する計測値を表示するための表示領域181に、計測値算出部17dによって算出されたEPV、e’、e’/Eなどの計測値を出力する。
【0093】
また、例えば、計測値表示部17eは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、図19Cに示したように、CCAVel、ICAVelなどの計測値を表示部2に表示する。
【0094】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置100によるB/D同時スキャンの処理手順について説明する。図20は、本実施形態に係る超音波診断装置100によるB/D同時スキャンの処理手順を示すフローチャートである。
【0095】
図20に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100では、制御部17が、操作者からB/D同時スキャンの開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。そして、B/D同時スキャンの開始要求が受け付けられた場合には(ステップS101,Yes)、表示制御部17aが、画像生成部15によって生成されたBモード画像を表示部2に表示する(ステップS102)。
【0096】
その後、表示制御部17aは、操作者によって診断用のアプリケーションが選択されるまで待機する(ステップS103,No)。そして、アプリケーションが選択された場合には(ステップS103,Yes)、表示制御部17aは、操作者によって診断部位が選択されるまで待機する(ステップS104,No)。
【0097】
そして、診断部位が選択された場合には(ステップS104,Yes)、距離判定部17bが、スキャン方式の切り換え判定に用いられる閾値を設定する(ステップS105)。その後、距離判定部17bは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2が設定されるまで待機する(ステップS106,No)。
【0098】
そして、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2が設定された場合には(ステップS106,Yes)、距離判定部17bは、超音波プローブ1からレンジゲートRG1までの距離R1と超音波プローブ1からレンジゲートRG2までの距離R2との合計長を算出する(ステップS107)。その後、距離判定部17bは、算出した距離の合計長が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0099】
ここで、距離の合計長が閾値未満であった場合には(ステップS108,Yes)、スキャン切替部17cが、スキャン方式をインターリーブスキャンに切り替える(ステップS109)。一方、距離の合計長が閾値以上であった場合には(ステップS108,No)、スキャン切替部17cは、スキャン方式をセグメントスキャンに切り替える(ステップS110)。
【0100】
続いて、表示制御部17aが、操作者によってデュアルドプラモードが選択されている場合には(ステップS111,Yes)、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示部2に表示させる(ステップS112)。一方、表示制御部17aが、操作者によってデュアルドプラモードが選択されていない場合には(ステップS111,No)、レンジゲートRG1又はレンジゲートRG2おけるドプラスペクトル画像を表示部2に表示させる(ステップS113)。
【0101】
その後、操作者によってレンジゲートが変更された場合には(ステップS114,Yes)、制御部17が、ステップS107に制御を戻す。こうして、制御部17は、レンジゲートが変更されている間は、上述したスキャンの切り替えに関する処理を繰り返す。
【0102】
また、制御部17は、レンジゲートが変更されずに(ステップS114,No)、操作者からB/D同時スキャンの終了要求も受け付けなかった場合には(ステップS115,No)、ステップS103に制御を戻す。こうして、操作者からB/D同時スキャンの終了要求を受け付けるまでの間は、制御部17は、ステップS103〜S114の処理を繰り返す。そして、制御部17は、操作者からB/D同時スキャンの終了要求を受け付けた場合には(ステップS115,Yes)、B/D同時スキャンに関する処理を終了する。
【0103】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置100による自動計測処理の処理手順について説明する。図21は、本実施形態に係る超音波診断装置100による自動計測処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0104】
図21に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100では、制御部17が、操作者からフリーズ要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。そして、フリーズ要求が受け付けられた場合には(ステップS201,Yes)、表示制御部17aが、Bモード画像及びドプラスペクトル画像をフリーズ(停止)する(ステップS202)。
【0105】
続いて、計測値算出部17dが、画像生成部15により生成された各ドプラスペクトラム画像により示される移動速度から得られる計測値を算出する(ステップS203)。そして、計測値表示部17eが、計測値算出部17dにより算出された計測値を表示部2に表示させる(ステップS204)。
【0106】
上述したように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、距離判定部17bと、スキャン切替部17cと、画像生成部15と、表示部2とを有する。距離判定部17bは、血流情報の観測部位として設定された少なくとも2つのレンジゲートについて、第1のレンジゲートから超音波プローブまでの距離と第2のレンジゲートから超音波プローブまでの距離との合計長が閾値未満であるか否かを判定する。スキャン切替部17cは、距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にはインターリーブスキャンを行い、距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にはセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。画像生成部15は、セグメントスキャン又はインターリーブスキャンにより受信された反射波データに基づいて、第1のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第1のドプラスペクトラム画像と第2のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第2のドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成する。表示部2は、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトラム画像及び第2のドプラスペクトル画像を表示する。
【0107】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示する場合に、各レンジゲートの深さの合計に応じて、インターリーブスキャンとセグメントスキャンとを自動的に切り替える。これにより、深い位置に設定されたレンジゲートにおける血流を診断する場合には、自動的にスキャン方式がインターリーブスキャンからセグメントスキャンに切り替わる。したがって、本実施形態によれば、深い位置に設定されたレンジゲートにおける速い血流についても画質のよいドプラスペクトル画像を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、超音波の音速制約により生じるドプラスペクトル画像の画質の劣化を抑えることができる。
【0108】
なお、上記実施形態では、スキャン切替部17cは、各レンジゲートから超音波プローブ1までの距離の合計長が閾値以上であると判定された場合に、スキャン方式をセグメントスキャンに切り替えることとした。例えば、これに加えて、スキャン切替部17cは、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトル画像又は第2のドプラスペクトル画像の速度レンジが所定の速度閾値を下回った場合にも、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替えるようにしてもよい。これにより、超音波の音速制約により生じるドプラスペクトル画像の画質の劣化をより確実に抑えることができる。
【0109】
また、上記実施形態では、距離判定部17bが、複数の観測部位のうち少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較することとしたが、実施形態はこれに限られない。
【0110】
例えば、距離判定部17bは、3つ以上の観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較してもよい。この場合には、スキャン切替部17cは、3つ以上の観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を下回っていた場合に、インターリーブスキャンを行い、前記少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を上回っていた場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0111】
また、例えば、距離判定部17bは、複数の観測部位のうち、いずれか1つの観測部の走査線上における深さを閾値と比較してもよい。例えば、距離判定部17bは、複数の観測部位のうち、基準とすべき観測部位を指定する操作を操作者から受け付け、操作者によって指定された観測部位の走査線上における深さを閾値と比較する。この場合には、スキャン切替部17cは、操作者によって指定された観測部位の深さが閾値を下回っていた場合に、インターリーブスキャンを行い、操作者によって指定された観測部位の深さが閾値を上回っていた場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0112】
さらに、例えば、距離判定部17bは、1つの観測部位を基準とするのではなく、複数の観測部位それぞれを閾値と比較してもよい。この場合には、スキャン切替部17cは、複数の観測部位のうち、少なくとも1つの観測部位の深さが閾値を下回っていた場合に、インターリーブスキャンを行う。また、スキャン切替部17cは、複数の観測部位のうち、少なくとも1つの観測部位の深さが閾値を上回っていた場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0113】
また、上記実施形態では、スキャン切替部17cが、閾値に基づいてスキャン方式を切り替えることとしたが、実施形態はこれに限られない。
【0114】
例えば、スキャン切替部17cは、閾値に基づくスキャン方式の切り替えを行うとともに、さらに、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じているか否かを検出し、折り返しが生じていることを検出した場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替えてもよい。
【0115】
この場合には、例えば、スキャン切替部17cは、スキャン中に、所定の時間間隔で、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じているか否かを検出する。ここで、折り返しを検出する方法としては、各種の方法を用いることができる。
【0116】
例えば、スキャン切替部17cは、ドプラ処理部14によって生成されたドプラデータに基づいて、血流速度の最大値の経時的な変化をトレースすることで、血流速度の最大値のトレース波形を検出する。このトレース波形は、ドプラスペクトラム画像の辺縁部をトレースした波形となる。さらに、スキャン切替部17cは、検出したトレース波形に基づいて各速度の頻度を求め、速度の頻度分布を表すヒストグラムを作成する。そして、スキャン切替部17cは、ヒストグラムから上限値ULと下限値LLを求め、絶対値|UL−LL|が第1の閾値より大きい値であり、かつ、|UL|又は|LL|のいずれかが第2の閾値より大きい場合に、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じていると判定する。ここで、第1の閾値は、ノイズなどを判定するための値である。また、第2の閾値は、第1の閾値より大きい値であり、例えば、ナイキスト周波数(PRFの1/2)の値である。
【0117】
そして、スキャン切替部17cは、折り返しが生じていることを検出した場合に、検出した時点でスキャン方式をセグメントスキャンに切り替える。なお、スキャン切替部17cは、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じていることを検出した場合に、ただちにスキャン方式を切り替えるのではなく、距離判定部17bによって用いられる閾値を、折り返しを検出した時点での観測部位の深さ(少なくとも1つの観測部位の深さ又は複数の観測部位の深さの合計)より小さい値に変更してもよい。このように閾値を変更した場合には、距離判定部17bが観測部位の深さと閾値とを比較した際に、観測部位の深さが閾値を上回ることになり、その結果、スキャン切替部17cによってスキャン方式がセグメントスキャンに切り替えられる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0119】
100 超音波診断装置
2 表示部
15 画像生成部
17 制御部
17b 距離判定部
17c スキャン切替部
17f 設定部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Bモード画像などの血管像上に血流情報の観察部位としてレンジゲートを設定し、そのレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像を表示する超音波診断装置が知られている。また、かかる超音波診断装置によって、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示するデュアルドプラ技術も知られている。
【0003】
ここで、デュアルドプラ技術で用いられるスキャン方式として、インターリーブスキャン及びセグメントスキャンがある。インターリーブスキャンは、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信することで、各レンジゲートにおける血流情報を取得する方式である。また、セグメントスキャンは、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれに対して複数回ずつ交互に超音波を送受信することで、各レンジゲートにおける血流情報を取得する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−206303号公報
【特許文献2】特開平6−7352号公報
【特許文献3】特開2008−92981号公報
【特許文献4】特開平11−94932号公報
【特許文献5】特開平6−7348号公報
【特許文献6】特開2009−136446号公報
【特許文献7】特開2007−202617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、超音波の音速制約によって、良好なドプラスペクトル画像が得られない場合があった。例えば、インターリーブスキャンでは、速度レンジが制約されて低くなるため、被検体の深部に流れる速い血流に関するドプラスペクトラム画像に折り返し現象が発生しやすい。また、セグメントスキャンでは、1つのレンジゲートに連続して超音波を送受信している間は、その他のレンジゲートには超音波が送受信されない。そのため、各レンジゲートにおけるドプラスペクトラム画像に周期的なデータの欠落が発生し、この欠落によって画像の劣化が生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波診断装置は、設定部と、距離判定部と、スキャン切替部と、画像生成部と、表示部とを備える。設定部は、複数の観測部位を設定する。距離判定部は、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する。スキャン切替部は、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。画像生成部は、前記第1のスキャン又は前記第2のスキャンにより受信された反射波データに基づいて、前記複数の観測部位それぞれにおける移動速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像をそれぞれ生成する。表示部は、前記ドプラスペクトル画像を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図3A】図3Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図3B】図3Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図4A】図4Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図4B】図4Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるシングルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図5A】図5Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図5B】図5Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図6A】図6Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図6B】図6Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図7A】図7Aは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(1)である。
【図7B】図7Bは、本実施形態に係る超音波診断装置におけるデュアルドプラモードを説明するための図(2)である。
【図8】図8は、本実施形態に係る距離判定部による距離の判定を説明するための図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に係るインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。
【図11】図11は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。
【図12】図12は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。
【図13】図13は、本実施形態に係るセグメントスキャンのシーケンスを示す図である。
【図14】図14は、本実施形態に係るセグメントスキャンにおける処理の流れを示す図である。
【図15】図15は、超音波の音速制約を説明するための図である。
【図16】図16は、本実施形態に係る計測値表示部による計測値の表示の一例を示す図である。
【図17】図17は、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図である。
【図18】図18は、本実施形態に係る計測値表示部による計測値の表示の一例を示す図である。
【図19A】図19Aは、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図(1)である。
【図19B】図19Bは、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図(2)である。
【図19C】図19Cは、本実施形態に係る計測値算出部による計測値の算出の一例を示す図(3)である。
【図20】図20は、本実施形態に係る超音波診断装置によるB/D同時スキャンの処理手順を示すフローチャートである。
【図21】図21は、本実施形態に係る超音波診断装置による自動計測処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、表示部2と、入力部3と、装置本体10とを有する。
【0009】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層及び音響レンズ、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。かかる超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0010】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが血流や心臓壁などの移動体の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して周波数偏移(ドプラ偏移)を受ける。
【0011】
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ1や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
【0012】
入力部3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置100の操作者から各種要求を受け付け、受け付けた各種要求を装置本体10に転送する。
【0013】
例えば、操作者は、入力部3が有するトラックボールを用いて、Bモード画像などの血管像上に血流情報の観察部位を示すレンジゲートの設定を行なう。また、例えば、操作者は、入力部3が有するパネルスイッチなどを用いて、Bモード画像とドプラスペクトル画像とを表示するB/D同時スキャンの開始要求及び終了要求を行う。
【0014】
表示部2は、超音波診断装置100の操作者が入力部3を用いて各種要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像などを表示したりする。
【0015】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する。具体的には、装置本体10は、送信部11と、受信部12と、Bモード処理部13と、ドプラ処理部14と、画像生成部15と、画像メモリ16と、制御部17と、内部記憶部18とを有する。
【0016】
送信部11は、トリガ発生回路、送信遅延回路及びパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定の繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)の送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。なお、PRFは、レート周波数とも呼ばれる。送信遅延回路は、パルサ回路が発生する各レートパルスに対して、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0017】
なお、送信部11は、後述する制御部17の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0018】
ここで、送信遅延時間は、超音波ビームの送信フォーカスの音響レンズからの位置(深さ)によって決定される。そして、送信部11は、送信遅延時間を用いることで、超音波の送信における送信指向性を制御する。
【0019】
受信部12は、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路により受信遅延時間が与えられた反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0020】
ここで、受信遅延時間は、超音波ビームの受信フォーカスの音響レンズからの位置(深さ)によって決定される。そして、受信部12は、受信遅延時間を用いることで、超音波の受信における受信指向性を制御する。
【0021】
また、本実施形態にかかる超音波プローブ1は、送信フォーカス及び受信フォーカスの位置に応じて、送受信に用いる圧電振動子(送信用口径及び受信用口径)を変更することが可能である。例えば、近い位置からの反射波信号を受信する際には、強い受信フォーカスをかけるために、受信する振動子の数を少なくしておき、中央部分の圧電振動子で受信した反射波信号のみが超音波画像の生成に用いられるように、小さな受信用口径が受信条件として決定される。また、遠い位置からの反射波信号を受信する際には、圧電振動子の口径が大きいほど受信フォーカスを強くできるので、距離に応じて受信用口径を大きくするように受信条件が決定される。
【0022】
Bモード処理部13は、受信部12によって生成された反射波データに対して対数増幅、包絡線検波処理などを行うことで、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0023】
ドプラ処理部14は、受信部12によって生成された反射波データから速度情報を周波数解析することでドプラ偏移を抽出し、ドプラ偏移を用いることで、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0024】
なお、本実施形態に係るBモード処理部13及びドプラ処理部14は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。
【0025】
画像生成部15は、Bモード処理部13及びドプラ処理部14によって生成されたデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部15は、Bモード処理部13によって生成されたBモードデータから、反射波の強度を輝度で表したBモード画像を生成する。または、画像生成部15は、Bモード処理部13によって生成された所定のスキャンラインにおけるBモードデータから、所定のスキャンラインにおける反射波強度の時系列に沿った変化を輝度にて表したMモード画像を生成する。
【0026】
また、画像生成部15は、ドプラ処理部14によって生成されたドプラデータから、移動体情報(血流情報や組織の移動情報)を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。さらに、画像生成部15は、ドプラ処理部14によって生成されたドプラデータから、移動体の速度情報(血流の速度情報や組織の速度情報)を時系列に沿ってプロットしたドプラスペクトラム画像を生成する。
【0027】
画像メモリ16は、画像生成部15が生成した超音波画像を記憶するメモリである。また、画像メモリ16は、Bモード処理部13やドプラ処理部14によって生成されたデータを記憶することも可能である。
【0028】
内部記憶部18は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)、診断プロトコル、各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部18は、必要に応じて、画像メモリ16によって記憶される画像の保管などにも使用される。また、内部記憶部18によって記憶されるデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0029】
制御部17は、超音波診断装置100の処理全体を制御する。具体的には、制御部17は、入力部3を介して操作者から入力された各種要求や、内部記憶部18から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づいて、送信部11、受信部12、Bモード処理部13、ドプラ処理部14、画像生成部15の処理を制御する。また、制御部17は、画像メモリ16によって記憶される超音波画像や、画像生成部15によって行われる各種処理を指定するためのGUIなどを表示部2に表示するよう制御する。
【0030】
以上、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る超音波診断装置100では、制御部17が、血流情報の観測部位として設定された少なくとも2つのレンジゲートについて、第1のレンジゲートから超音波プローブまでの距離と第2のレンジゲートから超音波プローブまでの距離との合計長が閾値未満であるか否かを判定する。また、制御部17は、距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にはインターリーブスキャンを行い、距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にはセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。また、画像生成部15が、セグメントスキャン又はインターリーブスキャンにより受信された反射波データに基づいて、第1のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第1のドプラスペクトラム画像と第2のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第2のドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成する。そして、表示部2が、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトラム画像及び第2のドプラスペクトル画像を表示する。
【0031】
すなわち、本実施形態に係る超音波診断装置100は、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示する場合に、各レンジゲートの深さの合計に応じて、インターリーブスキャンとセグメントスキャンとを自動的に切り替える。ここで、インターリーブスキャンは、第1のレンジゲート及び第2のレンジゲートそれぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する方式である。また、セグメントスキャンは、第1のレンジゲート及び第2のレンジゲートそれぞれに対して複数回ずつ交互に超音波を送受信する方式である。
【0032】
以下では、かかる超音波診断装置100について詳細に説明する。なお、本実施形態では、超音波診断装置100は、Bモード画像の血管像上に血流情報の観察部位として2つのレンジゲートを設定し、各レンジゲートにおけるドプラスペクトル画像をそれぞれ表示する。このように、2つのレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示する表示モードを以下ではデュアルドプラモードと呼ぶ。なお、超音波診断装置100は、2つのレンジゲートにおけるドプラスペクトル画像を1つずつ表示することも可能である。このように、2つのレンジゲートにおけるドプラスペクトル画像を1つずつ表示する表示モードを以下ではシングルドプラモードと呼ぶ。
【0033】
また、超音波診断装置100は、診断対象の臓器や診断の種類に応じて各種のアプリケーションを実行することができる。本実施形態では、超音波診断装置100が、心臓の診断用のアプリケーションと頚動脈の診断用のアプリケーションとを実行する場合について説明する。さらに、超音波診断装置100は、診断部位に応じて、ドプラスペクトル画像の表示態様を切り替えることができる。本実施形態では、診断部位が心臓の左室流入血流(Left Ventricular Inflow:LVI)及び左室流出血流(Left Ventricular Outflow:LVO)である場合と、心臓の左室流入血流ピーク速度(E)及び僧帽弁輪移動速度(e’)である場合と、頚動脈の総頚動脈(Common Carotid Artery:CCA)及び内頚動脈(Internal Carotid Artery:ICA)である場合とについて説明する。
【0034】
次に、本実施形態に係る制御部17について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る制御部17の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御部17は、表示制御部17aと、設定部17fと、距離判定部17bと、スキャン切替部17cと、計測値算出部17dと、計測値表示部17eとを有する。
【0035】
表示制御部17aは、入力部3を介して操作者から各種要求を受け付け、受け付けた各種要求に応じて、画像メモリ16によって記憶される超音波画像や、画像生成部15によって行われる各種処理を指定するためのGUIなどを表示部2に表示させる。また、超音波診断装置100は、入力部3が有するタッチコマンドスクリーンを介して、上述した表示モード、アプリケーション及び診断部位を選択する操作を操作者から受け付ける。
【0036】
例えば、表示制御部17aは、タッチスクリーン上に「Dual Doppler」ボタン、「PWD1」ボタン、「PWD2」ボタンを表示させる。「Dual Doppler」ボタンは、シングルモード又はデュアルモードの選択と、診断部位の選択とを操作者から受け付けるためのボタンである。この「Dual Doppler」は、操作者によって押下されるたびに、「Dual Doppler(off)」、「Dual Doppler(LVI/LVO)」、「Dual Doppler(E/e’)」の順で表示を切り替える。
【0037】
また、「PWD1」ボタン及び「PWD2」ボタンは、2つのレンジゲートのうちいずれかを選択する操作を操作者から受け付けるためのボタンである。これら「PWD1」ボタン及び「PWD2」ボタンは、「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(off)」の状態では「PWD1」及び「PWD2」と表示され、「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(LVI/LVO)」の状態では「PWD1(LVI)」及び「PWD2(LVO)」と表示され、「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(E/e’)」の状態では「PWD1(E)」及び「PWD2(e’)」と表示される。
【0038】
そして、例えば、表示制御部17aは、操作者からB/D同時スキャンの開始要求を受け付けた場合には、画像生成部15によって生成されたBモード画像及びドプラスペクトラム画像を表示部2に表示させる。また、表示制御部17aは、表示部2に表示されたBモード画像上に、超音波の送受信方向を示す2本のスキャンラインを表示する。また、表示制御部17aは、各スキャンライン上にレンジゲートを表示する。なお、表示制御部17aは、入力部3が有するトラックボールを介して操作者から受け付けた操作に応じて、各スキャンラインを走査方向に移動させたり、各レンジゲートの位置をスキャンラインに沿って移動させたりする。
【0039】
ここで、表示制御部17aは、操作者によって選択された表示モードやアプリケーション、診断部位に応じて、Bモード画像上に表示するスキャンライン及びレンジゲートの位置や、ドプラスペクトラム画像の種類を変化させる。例えば、スキャンライン及びレンジゲートの位置は、あらかじめアプリケーション及び診断部位ごとに定義されたプリセット情報に基づいて決められる。
【0040】
図3A、3B、4A及び4Bは、本実施形態に係る超音波診断装置100におけるシングルドプラモードを説明するための図である。図3A、3B、4A及び4Bは、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合を示している。なお、図3A及び4Aは、表示部2が有する表示領域を示しており、図3B及び4Bは、タッチコマンドスクリーンを示している。
【0041】
図3A、3B、4A及び4Bに示すように、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2にBモード画像31を表示し、そのBモード画像31上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、左室流出血流の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0042】
そして、例えば、図3A及び3Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(off)」の状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、スキャンラインPWD1上に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像32を表示させる。なお、この状態では、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0043】
また、例えば、図4A及び4Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(off)」の状態で、「PWD2」ボタンが選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、スキャンラインPWD2上に設定されたレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像42を表示させる。なお、この状態では、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0044】
図5A、5B、6A、6B、7A、7B及び7Cは、本実施形態に係る超音波診断装置100におけるデュアルドプラモードを説明するための図である。図5A及び5Bは、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合を示している。また、図6A及び6Bは、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合を示している。また、図7A、7B及び7Cは、頚動脈の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として総頚動脈及び内頚動脈が選択された場合を示している。
【0045】
図5A及び5Bに示すように、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流及び左室流出血流が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2に心臓のBモード画像51を表示し、そのBモード画像51上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、左室流出血流の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0046】
そして、例えば、図5A及び5Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(LVI/LVO)」の状態である場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、レンジゲートRG1における正側の速度成分を示すドプラスペクトル画像52と、レンジゲートRG2における負側の速度成分を示すドプラスペクトル画像53とを上下に配置して表示させる。なお、この状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。一方、「PWD2」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0047】
また、図6A及び6Bに示すように、心臓の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2に心臓のBモード画像61を表示し、そのBモード画像61上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、僧帽弁輪の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0048】
そして、例えば、図6A及び6Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(E/e’)」の状態である場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、レンジゲートRG1における左室流入血流ピーク速度のドプラスペクトル画像62と、僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像63とを上下に配置して表示させる。なお、この状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。一方、「PWD2」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0049】
また、例えば、図7A及び7Bに示すように、頚動脈の診断用のアプリケーションが選択され、診断部位として総頚動脈及び内頚動脈が選択された場合には、表示制御部17aは、表示部2に頚動脈のBモード画像71を表示し、そのBモード画像71上に2本のスキャンラインPWD1及びPWD2を表示する。また、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1を表示し、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2を表示する。このとき、表示制御部17aは、総頚動脈の位置にレンジゲートRG1が配置され、内頚動脈の位置にレンジゲートRG2が配置されるように、スキャンラインPWD1及びPWD2並びにレンジゲートRG1及びRG2を表示する。
【0050】
そして、例えば、図7A及び7Bに示すように、タッチコマンドスクリーンに表示された「Dual Doppler」ボタンが「Dual Doppler(CCA/ICA)」の状態である場合には、表示制御部17aは、表示部2が有する表示領域上に、レンジゲートRG1における総頚動脈のドプラスペクトル画像72と、内頚動脈のドプラスペクトル画像73とを上下に配置して表示させる。なお、この状態で、「PWD1」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD1及びレンジゲートRG1に対する操作を受け付け可能な状態にする。一方、「PWD2」ボタンが押下された場合には、表示制御部17aは、スキャンラインPWD2及びレンジゲートRG2に対する操作を受け付け可能な状態にする。
【0051】
図2の説明にもどって、設定部17fは、複数の観測部位を設定する。本実施形態では、設定部17fは、表示制御部17aによって表示部2に表示されたレンジゲートの位置に基づいて、観測部位を設定する。具体的には、設定部17fは、表示部2に表示されたBモード画像上でレンジゲートが位置付けられた箇所を、観測部位として設定する。
【0052】
距離判定部17bは、複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する。本実施形態では、距離判定部17bは、複数の観測部位のうち少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較する。
【0053】
具体的には、距離判定部17bは、血流情報の観測部位として設定された少なくとも2つのレンジゲートについて、第1のレンジゲートから超音波プローブまでの距離と第2のレンジゲートから超音波プローブまでの距離との合計長が閾値未満であるか否かを判定する。
【0054】
図8は、本実施形態に係る距離判定部17bによる距離の判定を説明するための図である。図8に示すように、例えば、Bモード画像81上に設定された2本のスキャンラインPWD1及びPWD2が設定されており、スキャンラインPWD1上にレンジゲートRG1が設定され、スキャンラインPWD2上にレンジゲートRG2が設定されていたとする。この場合には、距離判定部17bは、超音波プローブ1のプローブ原点80からレンジゲートRG1までの距離R1と、超音波プローブ1の原点80からレンジゲートRG2までの距離R2とをそれぞれ算出する。そして、距離判定部17bは、算出した距離R1と距離R2との合計長を算出し、その合計長が所定の閾値未満であるか否かを判定する。
【0055】
ここで、本実施形態では、距離判定部17bは、診断部位に基づいて閾値を設定して距離の合計長の判定を行う。例えば、距離判定部17bは、診断部位が心臓の左室流入血流及び左室流出血流である場合には、インターリーブスキャンを行った場合でも折り返しを生じないレンジゲートの深さの2倍の値を閾値として設定する。ここで、折り返しを生じないレンジゲートの深さは、例えば、あらかじめ実験的にレンジゲートの深さを少しずつ深くしながらインターリーブスキャンを行い、ドプラスペクトル画像に折り返しが発生した時点でのレンジゲートの深さより浅くすればよい。この深さから求められる閾値は、例えば、あらかじめ操作者によって所定の記憶部に格納される。そして、距離判定部17bは、記憶部に格納されている閾値を取得して、距離の合計長の判定を行う。なお、診断部位が心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度である場合についても、同様に閾値を設定することができる。
【0056】
また、例えば、距離判定部17bは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、設定し得るレンジゲートの深さの最大値の2倍より大きな値を閾値として設定する。これにより、頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈の診断が行われる場合には、各レンジゲートから超音波プローブまでの距離の合計長が閾値以上となることがなくなるので、常にインターリーブスキャンでデータが収集されることになる。一般的に、頚動脈は体表から浅い位置にあるので、インターリーブスキャンでデータを収集しても、折り返し現象が発生する可能性が低く、十分な画質のドプラ画像が得られる。
【0057】
なお、ここでは、診断部位に基づいて閾値を設定する場合について説明したが、例えば、距離判定部17bは、患者情報に基づいて閾値を設定してもよい。例えば、距離判定部17bは、診断が行われる際に操作者によって超音波診断装置100に入力された患者の性別や年齢に基づいて、閾値を設定する。例えば、ドプラの速度レンジは、加齢とともに低下することが知られている。そこで、例えば、距離判定部17bは、患者の年齢が上がるにつれて値が低くなるように、閾値を設定する。
【0058】
図2の説明にもどって、スキャン切替部17cは、少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが閾値を下回っていた場合に、複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが閾値を上回っていた場合に、複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0059】
本実施形態では、スキャン切替部17cは、少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が閾値を下回っていた場合に、第1のスキャンを行い、少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が閾値を上回っていた場合に、第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0060】
なお、第2のスキャンは、例えば、複数の観測部位それぞれに対して同じ数だけ超音波を送受信するものでもよいし、複数の観測部位それぞれに対して異なる数だけ超音波を送受信するものでもよい。例えば、第2のスキャンは、複数の観測部位のうち1つ又は複数の観測部位については1回ずつ超音波を送受信し、他の観測部位については複数回超音波を送受信してもよい。
【0061】
ここで、各観測部位に何回ずつ送受信を行うかは、例えば、観測部位の深さによって決められる。一般的に、一方の観測部位の深さが深いほど、その観測部位に対して複数回超音波を送受信するのにかかる時間が長くなるため、他方の観測部位に関するドプラ波形に生じる空隙が大きくなってしまう。そこで、例えば、深い位置にある観測部位については、浅い位置にある観測部位よりも送受信の回数を減らす。
【0062】
また、送受信の回数は、例えば、必要とされる測定精度によって決められてもよい。例えば、高精度の測定が必要な観測部位や、SN比の悪い観測部位については、送受信の回数を増やすようにする。また、送受信の回数は、例えば、流速によって決められてもよい。例えば、ある観測部位の流速が低い場合には、その観測部位については1回ずつ超音波を送受信し、他の観測部位については複数回超音波を送受信するようにする。これにより、流速が低い観測部位については、時間間隔を空けて超音波を送受信することで、低い流速の検出を行うことができる。
【0063】
具体的には、スキャン切替部17cは、距離判定部17bにより距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にインターリーブスキャンを行い、距離判定部17bにより距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。ここで、インターリーブスキャン及びセグメントスキャンについて具体的に説明する。なお、ここでは、図8に示したレンジゲートRG1及びRG2からデータを収集する場合について説明する。
【0064】
まず、インターリーブスキャンについて説明する。図9は、本実施形態に係るインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。図9において、横軸は時間を示している。また、Txは、超音波プローブ1から送信される超音波のPRFと送信タイミングとを示している。また、Rxは、超音波プローブ1により反射波が受信されるタイミングを示している。また、D1は、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。また、D2は、RG2におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。
【0065】
インターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれに対して1回ずつ交互に超音波が送受信される。例えば、図9に示すように、インターリーブスキャンでは、スキャンラインPWD1に沿ってPRFが8kHzの超音波が送信され、スキャンラインPWD2に沿ってPRFが4kHzの超音波が送信される。ここで、スキャンラインPWD1に対する送信とスキャンラインPWD2に対する送信とは、1回ずつ交互に行われる。
【0066】
また、インターリーブスキャンでは、例えば、レンジゲートRG1の反射波とレンジゲートRG2の反射波とが交互に受信される。そして、例えば、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータとRG2におけるドプラスペクトル画像用のデータとが、それぞれ2.7kHzの周期でサンプリングされる。なお、インターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びRG2の位置に応じて、各レンジゲートからのデータ収集が最短で可能となるPRFが設定される。
【0067】
図10は、本実施形態に係るインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。図10に示すように、インターリーブスキャンでは、ドプラ処理部14が、レンジゲートRG1からの反射波データに対して、ウォールフィルター(Wall Filter)、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)、後処理(Post処理)を順に施すことで、レンジゲートRG1における血流の流速を示すドプラデータを生成する。
【0068】
一方、ドプラ処理部14は、レンジゲートRG2からの反射波データに対して、ウォールフィルター(Wall Filter)、FFT(Fast Fourier Transformation)、後処理(Post処理)を順に施すことで、レンジゲートRG2における血流の流速を示すドプラデータを生成する。そして、画像生成部15が、ドプラ処理部14によって生成された各ドプラデータから、レンジゲートRG1におけるドプラスペクトラム画像とレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成して表示部2に表示させる(Dual−D表示)。
【0069】
なお、診断部位として心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンでは、僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像は組織ドプラになるので、シーケンスが図9に示したものと少し異なる。図11は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンのシーケンスを示す図である。なお、ここでは、左室流入血流の位置にレンジゲートRG1が配置され、僧帽弁輪の位置にレンジゲートRG2が配置されているとする。図11において、横軸は時間を示している。また、Tx、Rx、D1及びD2の意味は図9と同様である。また、D3は、RG2における僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。
【0070】
左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれに対して複数回ずつ交互に超音波が送受信される。例えば、図11に示すように、インターリーブスキャンでは、スキャンラインPWD1に沿ってPRFが5kHzの超音波が送信され、スキャンラインPWD2に沿ってPRFが4kHzの超音波が送信される。ここで、スキャンラインPWD1に対する送信とスキャンラインPWD2に対する送信とは、1回ずつ交互に行われる。
【0071】
また、インターリーブスキャンでは、例えば、レンジゲートRG1の反射波とレンジゲートRG2の反射波とが交互に受信される。そして、例えば、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータとRG2におけるドプラスペクトル画像用のデータとが、それぞれ2.2kHzの周期でサンプリングされる。また、RG2における僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像用のデータは、例えば、1.1kHzの周期に間引いて収集が行われる。これは、組織の移動速度は血流の流速に比べて遅いためである。なお、インターリーブスキャンでは、レンジゲートRG1及びRG2の位置に応じて、各レンジゲートからのデータ収集が最短で可能となるPRFが設定される。
【0072】
図12は、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンにおける処理の流れを示す図である。図12に示すように、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度が選択された場合のインターリーブスキャンでは、ドプラ処理部14が、レンジゲートRG2からの反射波データに対して、ウォールフィルター(Wall Filter)を施す前に、ローパスフィルタ(Low Pass Filter:LPF)とスケーリング(Scaling)とを施す。これにより、僧帽弁輪移動速度のドプラスペクトル画像用のデータが間引かれる。
【0073】
次に、セグメントスキャンについて説明する。図13は、本実施形態に係るセグメントスキャンのシーケンスを示す図である。図13において、横軸は時間を示している。また、Tx及びRxの意味は図9と同じである。また、D1は、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。また、D2は、RG2におけるドプラスペクトル画像用のデータがサンプリングされるタイミングを示している。また、D3は、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータに関する信号処理を示している。また、D4は、RG2におけるドプラスペクトル画像用のデータに関する信号処理を示している。
【0074】
セグメントスキャンでは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれに対して複数回ずつ交互に超音波が送受信される。例えば、図13に示すように、セグメントスキャンでは、スキャンラインPWD1に沿ってPRFが5kHzの超音波が複数回連続して送信され、スキャンラインPWD2に沿ってPRFが4kHzの超音波が複数回連続して送信される。ここで、スキャンラインPWD1に対する送信とスキャンラインPWD2に対する送信とは、複数回ずつ交互に行われる。
【0075】
また、セグメントスキャンでは、例えば、レンジゲートRG1の反射波が複数回連続して受信され、レンジゲートRG2の反射波が複数回連続して受信される。ここで、レンジゲートRG1からの反射波の受信とレンジゲートRG2からの反射波の受信とは、複数回ずつ交互に行われる。そして、例えば、RG1におけるドプラスペクトル画像用のデータとRG2におけるドプラスペクトル画像用のデータとが、複数回の反射波データからなるセグメントの単位で交互にサンプリングされる。なお、セグメントスキャンでは、レンジゲートRG1及びRG2の位置に応じて、各レンジゲートからのデータ収集が最短で可能となるPRFが設定される。
【0076】
ここで、セグメントスキャンでは、レンジゲートRG1に連続して超音波を送受信している間は、レンジゲートRG2には超音波が送受信されないため、各レンジゲートにおけるドプラスペクトラム画像に周期的なデータの欠落が発生する。そこで、本実施形態では、各レンジゲートにおけるドプラスペクトラム画像に周期的なデータの欠落区間に補間データが挿入される。これにより、データの欠落によって生じる画像の劣化を抑えることができる。
【0077】
図14は、本実施形態に係るセグメントスキャンにおける処理の流れを示す図である。図14に示すように、セグメントスキャンでは、ドプラ処理部14が、レンジゲートRG1及びRG2それぞれからの反射データに対してウォールフィルター(Wall Filter)、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)を順に施す。このとき、ウォールフィルター及び高速フーリエ変換は時分割処理となる。なお、ドプラ処理部14は、時分割処理でウォールフィルター及び高速フーリエ変換を行うのではなく、図10に示した流れと同様に、レンジゲートRG1及びRG2それぞれからの反射波データに対して、別々にウォールフィルター及び高速フーリエ変換を施してもよい。
【0078】
そして、ドプラ処理部14は、高速フーリエ変換が施されたレンジゲートRG1からのデータに対して、パラメータ同定処理、補間データ生成処理、後処理(Post処理)を施すことで、レンジゲートRG1におけるドプラスペクトラム画像に生じているデータの欠落区間に補間データを補填する。同様に、ドプラ処理部14は、高速フーリエ変換が施されたレンジゲートRG2からのデータに対しても、パラメータ同定処理、補間データ生成処理、後処理(Post処理)を施すことで、レンジゲートRG2におけるドプラスペクトラム画像に生じているデータの欠落区間に補間データを補填する。そして、画像生成部15が、ドプラ処理部14によって生成された各ドプラデータから、レンジゲートRG1におけるドプラスペクトラム画像とレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成して表示部2に表示させる(Dual−D表示)。
【0079】
ここで、上述したインターリーブスキャン又はセグメントスキャンのいずれかを単独で行った場合には、従来のように、超音波の音速制約によって、良好なドプラスペクトル画像が得られない可能性がある。図15は、超音波の音速制約を説明するための図である。図15に示すように、超音波診断装置で用いられる超音波には、視野深度と、PRFと、ドプラの速度レンジとの間にトレードオフが生じる。
【0080】
図15に示す関係からも分かるように、PRFが小さくなると、視野深度は深くなるのに対して、ドプラの速度レンジは低くなる。インターリーブスキャンでは、レンジゲートの数に応じてPRFが小さくなってしまうので、このような音速制約からドプラスペクトラム画像の速度レンジが小さくなってしまい、折り返し現象が発生しやすい。このため、インターリーブスキャンでは、例えば、深い位置に設定されたレンジゲートにおける速い血流を診断することが困難である。
【0081】
これに対し、本実施形態では、スキャン切替部17cが、距離判定部17bによって距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にはインターリーブスキャンを行い、距離判定部17bにより距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にはセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。すなわち、本実施形態では、深い位置に設定されたレンジゲートにおける血流を診断する場合には、自動的にスキャン方式がインターリーブスキャンからセグメントスキャンに切り替わる。したがって、本実施形態によれば、深い位置に設定されたレンジゲートにおける速い血流についても画質のよいドプラスペクトル画像を得ることができる。
【0082】
図2の説明にもどって、計測値算出部17dは、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトラム画像により示される移動速度と第2のドプラスペクトラム画像により示される移動速度とから得られる計測値を算出する。
【0083】
例えば、計測値算出部17dは、診断部位が心臓の左室流入血流及び左室流出血流である場合には、左室流入血流の位置に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度と、左室流出血流の位置に設定されたレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度とから、各種計測値を算出する。例えば、計測値算出部17dは、Mitral系の計測値として、Evel、Avel、E/A(Evel/Avel)、DcTなどの計測値を算出する。また、計測値算出部17dは、Aortic系の計測値として、VTI、VP、PPG、MPGなどの計測値を算出する。
【0084】
さらに、計測値算出部17dは、左室流入血流及び左室流出血流に関する計測値として、IRT(Isovolumetric Relaxation Time)、ICT(Isovolumetric Contraction Time)、T.Indexなどの計測値を算出する。図17は、本実施形態に係る計測値算出部17dによる計測値の算出の一例を示す図である。例えば、図17に示すように、拡張期心室流入血流速度波形の終了から開始までの時間をa、駆出時間(ET:Ejection Time)をb、心電図のR波から心室流入血流速度波形の開始までの時間をc、心電図のR波から左室駆出血流速度波形の終了までの時間をdとすると、IRT、ICTは、それぞれ以下に示す式により算出される。
【0085】
IRT=c−d
ICT=a−b−IRT
T.Index=(a−b)/b
【0086】
また、計測値算出部17dは、診断部位が心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度である場合には、左室流入血流の位置に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度と、僧帽弁輪の位置に設定されたレンジゲートRG2におけるドプラスペクトル画像により示される僧帽弁輪移動速度とから、各種計測値を算出する。例えば、計測値算出部17dは、EPV、e’、e’/Eなどの計測値を算出する。ここで、EPVは、左室流入血流速度波形におけるE波のピーク速度である。また、e’は、僧帽弁輪移動速度のピーク値である。
【0087】
また、計測値算出部17dは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、Bモード画像に基づいて各種計測値を算出する。図19A、19B及び19Cは、本実施形態に係る計測値算出部17dによる計測値の算出の一例を示す図である。例えば、図19Aに示すように、計測値算出部17dは、レンジゲートRG1とレンジゲートRG2との間の距離Lを算出する。また、例えば、図19Bに示すように、計測値算出部17dは、頚動脈の上下壁厚h1及びh2、頚動脈の内径Dを算出する。
【0088】
さらに、計測値算出部17dは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、総頚動脈の位置に設定されたレンジゲートRG1におけるドプラスペクトル画像により示される血流速度と、内頚動脈の位置に設置されたレンジゲートRG2おけるドプラスペクトル画像により示される血流速度とから、各種計測値を算出する。例えば、図19Cに示すように、計測値算出部17dは、CCAVel、ICAVel、T1などの計測値を算出する。ここで、Ccavelは、CCAの最高速度であり、Icavelは、ICAの最高速度である。また、T1は、CCAピークとICAピークとの時間差である。また、計測値算出部17dは、脈波速度Cから動脈硬化度Eを算出してもよい。例えば、動脈硬化度Eは、部位ごとにあらかじめ決められたプリセット値をρとすると、以下に示す式(1)により算出される。
【0089】
【数1】
【0090】
図2の説明にもどって、計測値表示部17eは、計測値算出部17dにより算出された計測値を表示部2に表示させる。
【0091】
図16は、本実施形態に係る計測値表示部17eによる計測値の表示の一例を示す図である。例えば、図16に示すように、計測値表示部17eは、診断部位が心臓の左室流入血流及び左室流出血流である場合には、Mitral系の計測値を表示するための表示領域161に、計測値算出部17dにより算出されたEvel、Avel、E/A(Evel/Avel)、DcTなどの計測値を表示する。また、計測値算出部17dは、Aortic系の計測値を表示するための表示領域162に、計測値算出部17dによって算出されたVTI、VP、PPG、MPGなどの計測値を表示する。さらに、計測値表示部17eは、左室流入血流及び左室流出血流に関する計測値を表示するための表示領域163に、計測値算出部17dによって算出されたIRT、ICT、T.Indexなどの計測値を表示する。
【0092】
図18は、本実施形態に係る計測値表示部17eによる計測値の表示の一例を示す図である。例えば、図18に示すように、計測値表示部17eは、診断部位が心臓の左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度である場合には、左室流入血流ピーク速度及び僧帽弁輪移動速度に関する計測値を表示するための表示領域181に、計測値算出部17dによって算出されたEPV、e’、e’/Eなどの計測値を出力する。
【0093】
また、例えば、計測値表示部17eは、診断部位が頚動脈の総頚動脈及び内頚動脈である場合には、図19Cに示したように、CCAVel、ICAVelなどの計測値を表示部2に表示する。
【0094】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置100によるB/D同時スキャンの処理手順について説明する。図20は、本実施形態に係る超音波診断装置100によるB/D同時スキャンの処理手順を示すフローチャートである。
【0095】
図20に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100では、制御部17が、操作者からB/D同時スキャンの開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。そして、B/D同時スキャンの開始要求が受け付けられた場合には(ステップS101,Yes)、表示制御部17aが、画像生成部15によって生成されたBモード画像を表示部2に表示する(ステップS102)。
【0096】
その後、表示制御部17aは、操作者によって診断用のアプリケーションが選択されるまで待機する(ステップS103,No)。そして、アプリケーションが選択された場合には(ステップS103,Yes)、表示制御部17aは、操作者によって診断部位が選択されるまで待機する(ステップS104,No)。
【0097】
そして、診断部位が選択された場合には(ステップS104,Yes)、距離判定部17bが、スキャン方式の切り換え判定に用いられる閾値を設定する(ステップS105)。その後、距離判定部17bは、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2が設定されるまで待機する(ステップS106,No)。
【0098】
そして、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2が設定された場合には(ステップS106,Yes)、距離判定部17bは、超音波プローブ1からレンジゲートRG1までの距離R1と超音波プローブ1からレンジゲートRG2までの距離R2との合計長を算出する(ステップS107)。その後、距離判定部17bは、算出した距離の合計長が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0099】
ここで、距離の合計長が閾値未満であった場合には(ステップS108,Yes)、スキャン切替部17cが、スキャン方式をインターリーブスキャンに切り替える(ステップS109)。一方、距離の合計長が閾値以上であった場合には(ステップS108,No)、スキャン切替部17cは、スキャン方式をセグメントスキャンに切り替える(ステップS110)。
【0100】
続いて、表示制御部17aが、操作者によってデュアルドプラモードが選択されている場合には(ステップS111,Yes)、レンジゲートRG1及びレンジゲートRG2それぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示部2に表示させる(ステップS112)。一方、表示制御部17aが、操作者によってデュアルドプラモードが選択されていない場合には(ステップS111,No)、レンジゲートRG1又はレンジゲートRG2おけるドプラスペクトル画像を表示部2に表示させる(ステップS113)。
【0101】
その後、操作者によってレンジゲートが変更された場合には(ステップS114,Yes)、制御部17が、ステップS107に制御を戻す。こうして、制御部17は、レンジゲートが変更されている間は、上述したスキャンの切り替えに関する処理を繰り返す。
【0102】
また、制御部17は、レンジゲートが変更されずに(ステップS114,No)、操作者からB/D同時スキャンの終了要求も受け付けなかった場合には(ステップS115,No)、ステップS103に制御を戻す。こうして、操作者からB/D同時スキャンの終了要求を受け付けるまでの間は、制御部17は、ステップS103〜S114の処理を繰り返す。そして、制御部17は、操作者からB/D同時スキャンの終了要求を受け付けた場合には(ステップS115,Yes)、B/D同時スキャンに関する処理を終了する。
【0103】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置100による自動計測処理の処理手順について説明する。図21は、本実施形態に係る超音波診断装置100による自動計測処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0104】
図21に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100では、制御部17が、操作者からフリーズ要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。そして、フリーズ要求が受け付けられた場合には(ステップS201,Yes)、表示制御部17aが、Bモード画像及びドプラスペクトル画像をフリーズ(停止)する(ステップS202)。
【0105】
続いて、計測値算出部17dが、画像生成部15により生成された各ドプラスペクトラム画像により示される移動速度から得られる計測値を算出する(ステップS203)。そして、計測値表示部17eが、計測値算出部17dにより算出された計測値を表示部2に表示させる(ステップS204)。
【0106】
上述したように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、距離判定部17bと、スキャン切替部17cと、画像生成部15と、表示部2とを有する。距離判定部17bは、血流情報の観測部位として設定された少なくとも2つのレンジゲートについて、第1のレンジゲートから超音波プローブまでの距離と第2のレンジゲートから超音波プローブまでの距離との合計長が閾値未満であるか否かを判定する。スキャン切替部17cは、距離の合計長が閾値未満であると判定された場合にはインターリーブスキャンを行い、距離の合計長が閾値以上であると判定された場合にはセグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。画像生成部15は、セグメントスキャン又はインターリーブスキャンにより受信された反射波データに基づいて、第1のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第1のドプラスペクトラム画像と第2のレンジゲートにおける血流速度の経時的な変化を示す第2のドプラスペクトル画像とをそれぞれ生成する。表示部2は、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトラム画像及び第2のドプラスペクトル画像を表示する。
【0107】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、複数箇所に設定されたレンジゲートそれぞれにおけるドプラスペクトル画像を表示する場合に、各レンジゲートの深さの合計に応じて、インターリーブスキャンとセグメントスキャンとを自動的に切り替える。これにより、深い位置に設定されたレンジゲートにおける血流を診断する場合には、自動的にスキャン方式がインターリーブスキャンからセグメントスキャンに切り替わる。したがって、本実施形態によれば、深い位置に設定されたレンジゲートにおける速い血流についても画質のよいドプラスペクトル画像を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、超音波の音速制約により生じるドプラスペクトル画像の画質の劣化を抑えることができる。
【0108】
なお、上記実施形態では、スキャン切替部17cは、各レンジゲートから超音波プローブ1までの距離の合計長が閾値以上であると判定された場合に、スキャン方式をセグメントスキャンに切り替えることとした。例えば、これに加えて、スキャン切替部17cは、画像生成部15により生成された第1のドプラスペクトル画像又は第2のドプラスペクトル画像の速度レンジが所定の速度閾値を下回った場合にも、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替えるようにしてもよい。これにより、超音波の音速制約により生じるドプラスペクトル画像の画質の劣化をより確実に抑えることができる。
【0109】
また、上記実施形態では、距離判定部17bが、複数の観測部位のうち少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較することとしたが、実施形態はこれに限られない。
【0110】
例えば、距離判定部17bは、3つ以上の観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較してもよい。この場合には、スキャン切替部17cは、3つ以上の観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を下回っていた場合に、インターリーブスキャンを行い、前記少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を上回っていた場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0111】
また、例えば、距離判定部17bは、複数の観測部位のうち、いずれか1つの観測部の走査線上における深さを閾値と比較してもよい。例えば、距離判定部17bは、複数の観測部位のうち、基準とすべき観測部位を指定する操作を操作者から受け付け、操作者によって指定された観測部位の走査線上における深さを閾値と比較する。この場合には、スキャン切替部17cは、操作者によって指定された観測部位の深さが閾値を下回っていた場合に、インターリーブスキャンを行い、操作者によって指定された観測部位の深さが閾値を上回っていた場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0112】
さらに、例えば、距離判定部17bは、1つの観測部位を基準とするのではなく、複数の観測部位それぞれを閾値と比較してもよい。この場合には、スキャン切替部17cは、複数の観測部位のうち、少なくとも1つの観測部位の深さが閾値を下回っていた場合に、インターリーブスキャンを行う。また、スキャン切替部17cは、複数の観測部位のうち、少なくとも1つの観測部位の深さが閾値を上回っていた場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える。
【0113】
また、上記実施形態では、スキャン切替部17cが、閾値に基づいてスキャン方式を切り替えることとしたが、実施形態はこれに限られない。
【0114】
例えば、スキャン切替部17cは、閾値に基づくスキャン方式の切り替えを行うとともに、さらに、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じているか否かを検出し、折り返しが生じていることを検出した場合に、セグメントスキャンを行うようにスキャン方式を切り替えてもよい。
【0115】
この場合には、例えば、スキャン切替部17cは、スキャン中に、所定の時間間隔で、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じているか否かを検出する。ここで、折り返しを検出する方法としては、各種の方法を用いることができる。
【0116】
例えば、スキャン切替部17cは、ドプラ処理部14によって生成されたドプラデータに基づいて、血流速度の最大値の経時的な変化をトレースすることで、血流速度の最大値のトレース波形を検出する。このトレース波形は、ドプラスペクトラム画像の辺縁部をトレースした波形となる。さらに、スキャン切替部17cは、検出したトレース波形に基づいて各速度の頻度を求め、速度の頻度分布を表すヒストグラムを作成する。そして、スキャン切替部17cは、ヒストグラムから上限値ULと下限値LLを求め、絶対値|UL−LL|が第1の閾値より大きい値であり、かつ、|UL|又は|LL|のいずれかが第2の閾値より大きい場合に、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じていると判定する。ここで、第1の閾値は、ノイズなどを判定するための値である。また、第2の閾値は、第1の閾値より大きい値であり、例えば、ナイキスト周波数(PRFの1/2)の値である。
【0117】
そして、スキャン切替部17cは、折り返しが生じていることを検出した場合に、検出した時点でスキャン方式をセグメントスキャンに切り替える。なお、スキャン切替部17cは、ドプラスペクトル画像に折り返しが生じていることを検出した場合に、ただちにスキャン方式を切り替えるのではなく、距離判定部17bによって用いられる閾値を、折り返しを検出した時点での観測部位の深さ(少なくとも1つの観測部位の深さ又は複数の観測部位の深さの合計)より小さい値に変更してもよい。このように閾値を変更した場合には、距離判定部17bが観測部位の深さと閾値とを比較した際に、観測部位の深さが閾値を上回ることになり、その結果、スキャン切替部17cによってスキャン方式がセグメントスキャンに切り替えられる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0119】
100 超音波診断装置
2 表示部
15 画像生成部
17 制御部
17b 距離判定部
17c スキャン切替部
17f 設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の観測部位を設定する設定部と、
前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する距離判定部と、
前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替えるスキャン切替部と、
前記第1のスキャン又は前記第2のスキャンにより受信された反射波データに基づいて、前記複数の観測部位それぞれにおける移動速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像をそれぞれ生成する画像生成部と、
前記ドプラスペクトル画像を表示する表示部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記距離判定部は、前記複数の観測部位のうち少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較し、
前記スキャン切替部は、前記少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を下回っていた場合に、前記第1のスキャンを行い、前記少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を上回っていた場合に、前記第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記ドプラスペクトラム画像により示される移動速度とから得られる計測値を算出する計測値算出部と、
前記計測値を表示部に表示させる計測値表示部と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記距離判定部は、診断部位又は患者情報に基づいて前記閾値を設定して前記深さの判定を行う、請求項1、2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記スキャン切替部は、前記ドプラスペクトル画像の速度レンジが所定の速度閾値を下回った場合に、前記第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える、請求項1〜4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記スキャン切替部は、前記ドプラスペクトル画像に折り返しが生じているか否かを検出し、折り返しが生じていることを検出した場合に、前記第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える、請求項1〜4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波診断装置の制御方法であって、
前記超音波診断装置の制御部が、
複数の観測部位を設定し、
前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較し、
前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替え、
前記第1のスキャン又は前記第2のスキャンにより受信された反射波データに基づいて、前記複数の観測部位それぞれにおける移動速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像をそれぞれ生成し、
前記ドプラスペクトル画像を表示部に表示させる、
ことを含む、制御方法。
【請求項1】
複数の観測部位を設定する設定部と、
前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較する距離判定部と、
前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替えるスキャン切替部と、
前記第1のスキャン又は前記第2のスキャンにより受信された反射波データに基づいて、前記複数の観測部位それぞれにおける移動速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像をそれぞれ生成する画像生成部と、
前記ドプラスペクトル画像を表示する表示部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記距離判定部は、前記複数の観測部位のうち少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計と所定の閾値とを比較し、
前記スキャン切替部は、前記少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を下回っていた場合に、前記第1のスキャンを行い、前記少なくとも2つの観測部位の走査線上における深さの合計が前記閾値を上回っていた場合に、前記第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記ドプラスペクトラム画像により示される移動速度とから得られる計測値を算出する計測値算出部と、
前記計測値を表示部に表示させる計測値表示部と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記距離判定部は、診断部位又は患者情報に基づいて前記閾値を設定して前記深さの判定を行う、請求項1、2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記スキャン切替部は、前記ドプラスペクトル画像の速度レンジが所定の速度閾値を下回った場合に、前記第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える、請求項1〜4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記スキャン切替部は、前記ドプラスペクトル画像に折り返しが生じているか否かを検出し、折り返しが生じていることを検出した場合に、前記第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替える、請求項1〜4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波診断装置の制御方法であって、
前記超音波診断装置の制御部が、
複数の観測部位を設定し、
前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さと所定の閾値とを比較し、
前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を下回っていた場合に、前記複数の観測部位それぞれに対して1回ずつ交互に超音波を送受信する第1のスキャンを行い、前記少なくとも1つの観測部位の走査線上における深さが前記閾値を上回っていた場合に、前記複数の観測部位のうち少なくとも1つの観測部位については複数回超音波を送受信して、前記複数の観測部位それぞれに対して交互に超音波を送受信する第2のスキャンを行うようにスキャン方式を切り替え、
前記第1のスキャン又は前記第2のスキャンにより受信された反射波データに基づいて、前記複数の観測部位それぞれにおける移動速度の経時的な変化を示すドプラスペクトラム画像をそれぞれ生成し、
前記ドプラスペクトル画像を表示部に表示させる、
ことを含む、制御方法。
【図1】
【図2】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図2】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【公開番号】特開2012−139489(P2012−139489A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276302(P2011−276302)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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