説明

超音波診断装置及び画像処理装置

【課題】画像の視認性を向上させることができる超音波診断装置及び画像処理装置を提供すること。
【解決手段】実施の形態の超音波診断装置では、分離部は、画像データに含まれる特徴量に応じて、当該画像データに基づいて描出される表示対象物の任意の領域を奥行き方向に分離する。画像生成制御部は、分離部によって分離された表示対象物の任意の領域に奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成する。表示制御部は、画像生成制御部によって生成された表示用の画像を立体視可能なモニタにて表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、超音波診断装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の医用画像診断装置に比べ、簡便な操作性、被爆のおそれがない非侵襲性などの利点を備えた装置として、今日の医療において、心臓、肝臓、腎臓、乳腺など、様々な生体組織の検査や診断に利用されている。
【0003】
このような超音波診断装置は、超音波プローブから超音波を送信し、被検体の内部組織から反射された反射波信号を受信することによって、被検体内の組織構造の断層像(Bモード画像)を生成して表示する。さらに、近年の超音波診断装置は、超音波のドプラ効果を利用して被検体内の血流が存在する範囲とともに、血流の速度、分散、パワー等の血流情報を色によって識別可能に表示するカラードプラ画像を生成して表示する。ここで、超音波診断装置により撮像された画像において、視認性が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−319737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、画像の視認性を向上させることができる超音波診断装置及び画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の超音波診断装置は、分離手段と、画像生成手段と、表示制御手段とを有する。分離手段は、画像データに含まれる特徴量に応じて、当該画像データに基づいて描出される表示対象物の任意の領域を奥行き方向に分離する。画像生成手段は、前記分離手段によって分離された前記表示対象物の任意の領域に前記奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成する。表示制御手段は、前記画像生成手段によって生成された表示用の画像を立体視可能な表示部にて表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、2視差画像により立体表示を行なう立体表示モニタの一例を説明するための図である。
【図3】図3は、9視差画像により立体表示を行なう立体表示モニタの一例を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る画像生成部によるボリュームレンダリング処理の一例を説明するための図である。
【図5】図5は、第1に実施形態に係る課題の一例を説明するための図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る分離部による処理の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る画像生成制御部による処理の一例を説明するための図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る奥行き設定部による処理の一例を説明するための図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して超音波診断装置及び画像処理装置の実施形態を詳細に説明する。最初に、以下の実施形態で用いる用語について説明すると、「視差画像群」とは、ボリュームデータに対して、所定の視差角ずつ視点位置を移動させてボリュームレンダリング処理を行なうことで生成された画像群のことである。すなわち、「視差画像群」は、「視点位置」が異なる複数の「視差画像」から構成される。また、「視差角」とは、「視差画像群」を生成するために設定された各視点位置のうち隣接する視点位置とボリュームデータによって表される空間内の所定位置(例えば、空間の中心)とにより定まる角度のことである。また、「視差数」とは、立体表示モニタにて立体視されるために必要となる「視差画像」の数のことである。また、以下で記載する「9視差画像」とは、9つの「視差画像」から構成される「視差画像群」のことである。また、以下で記載する「2視差画像」とは、2つの「視差画像」から構成される「視差画像群」のことである。また、以下で記載する「立体視画像」とは、立体視可能な表示部が視差画像群を表示出力することで、観察者によって観察される立体画像のことである。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、入力装置12と、モニタ13と、装置本体100とを有する。
【0010】
超音波プローブ11は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信部110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、さらに、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ11は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0011】
超音波プローブ11から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ11が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ11や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
【0013】
入力装置12は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置12は、立体視画像の奥行きを設定するための入力操作を受付ける。
【0014】
モニタ13は、超音波診断装置1の操作者が入力装置12を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像などを表示したりする。
【0015】
モニタ13は、立体視可能なモニタ(以下、立体表示モニタ)であり、各種情報を表示する。例えば、モニタ13は、装置本体100において生成された視差画像群や、操作者から各種指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを表示する。
【0016】
ここで、立体表示モニタについて説明する。現在最も普及している一般的な汎用モニタは、2次元画像を2次元で表示するものであり、2次元画像を立体表示することができない。仮に、観察者が汎用モニタにて立体視を要望する場合、汎用モニタに対して画像を出力する装置は、平行法や交差法により観察者が立体視可能な2視差画像を並列表示させる必要がある。又は、汎用モニタに対して画像を出力する装置は、例えば、左目用の部分に赤色のセロハンが取り付けられ、右目用の部分に青色のセロハンが取り付けられたメガネを用いて余色法により観察者が立体視可能な画像を表示する必要がある。
【0017】
一方、立体表示モニタとしては、立体視用メガネ等の専用機器を用いることで、2視差画像(両眼視差画像とも称する)を立体視可能とするものがある。
【0018】
図2は、2視差画像により立体表示を行なう立体表示モニタの一例を説明するための図である。図2に示す一例は、シャッター方式により立体表示を行なう立体表示モニタであり、モニタを観察する観察者が装着する立体視用メガネとしてシャッターメガネが用いられる。かかる立体表示モニタは、モニタにて2視差画像を交互に出射する。例えば、図2の(A)に示すモニタは、左目用の画像と右目用の画像を、120Hzにて交互に出射する。ここで、モニタには、図2の(A)に示すように、赤外線出射部が設置され、赤外線出射部は、画像が切り替わるタイミングに合わせて赤外線の出射を制御する。
【0019】
また、赤外線出射部から出射された赤外線は、図2の(A)に示すシャッターメガネの赤外線受光部により受光される。シャッターメガネの左右それぞれの枠には、シャッターが取り付けられており、シャッターメガネは、赤外線受光部が赤外線を受光したタイミングに合わせて左右のシャッターそれぞれの透過状態及び遮光状態を交互に切り替える。以下、シャッターにおける透過状態及び遮光状態の切り替え処理について説明する。
【0020】
各シャッターは、図2の(B)に示すように、入射側の偏光板と出射側の偏光板とを有し、更に、入射側の偏光板と出射側の偏光板との間に液晶相を有する。また、入射側の偏光板と出射側の偏光板とは、図2の(B)に示すように、互いに直交している。ここで、図2の(B)に示すように、電圧が印加されていない「OFF」の状態では、入射側の偏光板を通った光は、液晶層の作用により90度回転し、出射側の偏光板を透過する。すなわち、電圧が印加されていないシャッターは、透過状態となる。
【0021】
一方、図2の(B)に示すように、電圧が印加された「ON」の状態では、液晶層の液晶分子による偏光回転作用が消失するため、入射側の偏光板を通った光は、出射側の偏光板で遮られてしまう。すなわち、電圧が印加されたシャッターは、遮光状態となる。
【0022】
そこで、例えば、赤外線出射部は、モニタ上に左目用の画像が表示されている期間、赤外線を出射する。そして、赤外線受光部は、赤外線を受光している期間、左目のシャッターに電圧を印加せず、右目のシャッターに電圧を印加させる。これにより、図2の(A)に示すように、右目のシャッターが遮光状態となり、左目のシャッターが透過状態となるため、観察者の左目に左目用の画像が入射する。一方、赤外線出射部は、モニタ上に右目用の画像が表示されている期間、赤外線の出射を停止する。そして、赤外線受光部は、赤外線が受光されない期間、右目のシャッターに電圧を印加せず、左目のシャッターに電圧を印加させる。これにより、左目のシャッターが遮光状態となり、右目のシャッターが透過状態であるため、観察者の右目に右目用の画像が入射する。このように、図2に示す立体表示モニタは、モニタに表示される画像とシャッターの状態を連動させて切り替えることで、観察者が立体視可能な画像を表示させる。なお、2視差画像を立体視可能な立体表示モニタとしては、上記のシャッター方式以外にも、偏光メガネ方式を採用したモニタも知られている。
【0023】
更に、近年実用化された立体表示モニタとしては、レンチキュラーレンズ等の光線制御子を用いることで、例えば、9視差画像等の多視差画像を観察者が裸眼にて立体視可能とするものがある。かかる立体表示モニタは、両眼視差による立体視を可能とし、更に、観察者の視点移動に合わせて観察される映像も変化する運動視差による立体視も可能とする。
【0024】
図3は、9視差画像により立体表示を行なう立体表示モニタの一例を説明するための図である。図3に示す立体表示モニタには、液晶パネル等の平面状の表示面200の前面に、光線制御子が配置される。例えば、図3に示す立体表示モニタには、光線制御子として、光学開口が垂直方向に延びる垂直レンチキュラーシート201が表示面200の前面に貼り付けられている。なお、図3に示す一例では、垂直レンチキュラーシート201の凸部が前面となるように貼り付けられているが、垂直レンチキュラーシート201の凸部が表示面200に対向するように貼り付けられる場合であっても良い。
【0025】
表示面200には、図3に示すように、縦横比が3:1であり、縦方向にサブ画素である赤(R)、緑(G)、青(B)の3つが配置された画素202がマトリクス状に配置される。図3に示す立体表示モニタは、9つの画像により構成される9視差画像を、所定フォーマット(例えば格子状)に配置した中間画像に変換したうえで、表示面200に出力する。すなわち、図3に示す立体表示モニタは、9視差画像にて同一位置にある9つの画素それぞれを、9列の画素202に割り振って出力させる。9列の画素202は、視点位置の異なる9つの画像を同時に表示する単位画素群203となる。
【0026】
表示面200において単位画素群203として同時に出力された9視差画像は、例えば、LED(Light Emitting Diode)バックライトにより平行光として放射され、更に、垂直レンチキュラーシート201により、多方向に放射される。9視差画像の各画素の光が多方向に放射されることにより、観察者の右目及び左目に入射する光は、観察者の位置(視点の位置)に連動して変化する。すなわち、観察者の見る角度により、右目に入射する視差画像と左目に入射する視差画像とは、視差角が異なる。これにより、観察者は、例えば、図3に示す9つの位置それぞれにおいて、撮影対象を立体的に視認できる。また、観察者は、例えば、図3に示す「5」の位置において、撮影対象に対して正対した状態で立体的に視認できるとともに、図3に示す「5」以外それぞれの位置において、撮影対象の向きを変化させた状態で立体的に視認できる。なお、図3に示す立体表示モニタは、あくまでも一例である。9視差画像を表示する立体表示モニタは、図3に示すように、「RRR・・・、GGG・・・、BBB・・・」の横ストライプ液晶である場合であっても良いし、「RGBRGB・・・」の縦ストライプ液晶である場合であっても良い。また、図3に示す立体表示モニタは、図3に示すように、レンチキュラーシートが垂直となる縦レンズ方式である場合であっても良いし、レンチキュラーシートが斜めとなる斜めレンズ方式である場合であっても良い。
【0027】
図1に戻って、装置本体100は、超音波プローブ11が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図1に示すように、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像生成部140と、画像メモリ150と、内部記憶部160と、制御部170とを有する。
【0028】
送受信部110は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ11に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ11から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0029】
また、送受信部110は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行ない、A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0030】
このように、送受信部110は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信部110は、後述する制御部170の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更においては、瞬時に値を切り替えることが可能であるリニアアンプ型の発振回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部110は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
【0031】
Bモード処理部120は、送受信部110からゲイン補正処理、A/D変換処理および加算処理が行なわれた処理済み反射波信号である反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0032】
ここで、Bモード処理部120は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。また、Bモード処理部120は、1つの受信データに対して、2つの検波周波数による検波処理を並列して行うことができる。
【0033】
このBモード処理部120の機能を用いることにより、超音波造影剤が注入された被検体Pの関心領域における1つの受信データから、関心領域を流動する超音波造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とする反射波データと、関心領域に存在する組織を反射源とする反射波データとを分離することができ、後述する画像生成部140は、流動するバブルを高感度に映像化した造影像および形態を観察するために組織を映像化した組織像を生成することができる。
【0034】
ドプラ処理部130は、送受信部110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0035】
より具体的には、ドプラ処理部130は、組織ドプラ法(TDI:Tissue Doppler Imaging)及びカラードプラ法(CDI:Color Doppler Imaging)を実行可能な処理部である。すなわち、ドプラ処理部130は、走査範囲内にある組織の運動情報(組織運動情報)を取得して、組織の動態を示す組織ドプラ画像を生成するための組織ドプラデータを生成する処理部である。また、ドプラ処理部130は、走査範囲内にある血流の運動情報(血流運動情報)を取得して、血流の動態を示すカラードプラ画像を生成するためのカラードプラデータを生成する処理部である。
【0036】
なお、第1の実施形態に係るBモード処理部120およびドプラ処理部130は、2次元の反射波データおよび3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、第1の実施形態に係るBモード処理部120は、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成することができる。また、第1の実施形態に係るドプラ処理部130は、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成することができる。
【0037】
画像生成部140は、Bモード処理部120及びドプラ処理部130が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部140は、Bモード処理部120が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。なお、画像生成部140は、Bモード処理部120が生成した3次元のBモードデータから、3次元のBモード画像を生成することも可能である。
【0038】
また、画像生成部140は、ドプラ処理部130が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。なお、画像生成部140は、ドプラ処理部130が生成した3次元のドプラデータから、3次元のカラードプラ画像を生成することも可能である。
【0039】
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像としての超音波画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用画像としての超音波画像を生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)などを行なう。
【0040】
また、画像生成部140は、ボリュームデータをモニタ13にて表示するための各種画像を生成することができる。具体的には、画像生成部140は、ボリュームデータからMPR(Multi Planar Reconstructions)画像、レンダリング画像(ボリュームレンダリング画像やサーフェスレンダリング画像)を生成することができる。なお、ここでいうボリュームデータとは、3次元のBモード画像や、3次元のカラードプラ画像、或いは、仮想的な3次元空間に設定した仮想ボリュームデータなどである。
【0041】
ここで、画像生成部140によるボリュームレンダリング画像の生成処理の一例を説明する。図4は、第1の実施形態に係る画像生成部140によるボリュームレンダリング処理の一例を説明するための図である。例えば、画像生成部140が、図4の「9視差画像生成方式(1)」に示すように、レンダリング条件として、平行投影法を受け付け、更に、基準の視点位置(5)と視差角「1度」とを受け付けたとする。かかる場合、画像生成部140は、視差角が「1度」おきとなるように、視点の位置を(1)〜(9)に平行移動して、平行投影法により視差角(視線方向間の角度)が1度ずつ異なる9つの視差画像を生成する。なお、平行投影法を行なう場合、画像生成部140は、視線方向に沿って無限遠から平行な光線を照射する光源を設定する。
【0042】
或いは、画像生成部140が、図4の「9視差画像生成方式(2)」に示すように、レンダリング条件として、透視投影法を受け付け、更に、基準の視点位置(5)と視差角「1度」とを受け付けたとする。かかる場合、画像生成部140は、ボリュームデータの中心(重心)を中心に視差角が「1度」おきとなるように、視点の位置を(1)〜(9)に回転移動して、透視投影法により視差角が1度ずつ異なる9つの視差画像を生成する。なお、透視投影法を行なう場合、画像生成部140は、視線方向を中心に光を3次元的に放射状に照射する点光源や面光源を各視点にて設定する。また、透視投影法を行なう場合、レンダリング条件によっては、視点(1)〜(9)は、平行移動される場合であってもよい。なお、視線方向は、図4の(A)及び(B)に示すように、視点からボリュームデータの切断面の中心(重心)に向かう方向となる。
【0043】
なお、画像生成部140は、表示されるボリュームレンダリング画像の縦方向に対しては、視線方向を中心に光を2次元的に放射状に照射し、表示されるボリュームレンダリング画像の横方向に対しては、視線方向に沿って無限遠から平行な光線を照射する光源を設定することで、平行投影法と透視投影法とを併用したボリュームレンダリング処理を行なってもよい。
【0044】
なお、画像生成部140は、表示されるボリュームレンダリング画像の縦方向に対しては、視線方向を中心に光を2次元的に放射状に照射し、表示されるボリュームレンダリング画像の横方向に対しては、視線方向に沿って無限遠から平行な光線を照射する光源を設定することで、平行投影法と透視投影法とを併用したボリュームレンダリング処理を行なってもよい。
【0045】
画像生成部140により生成された視差画像群は、画像メモリ150に格納される。その後、例えば、超音波診断装置1は、視差画像群を所定フォーマット(例えば格子状)に配置した中間画像に変換した上で立体表示モニタに表示することで、利用者である医師や検査技師に、立体視画像を表示可能となる。
【0046】
図1に戻って、画像メモリ150は、Bモード処理部120及びドプラ処理部130によって生成されたRawデータ(Bモードデータ及びドプラデータ)、画像生成部140によって生成された表示用超音波画像、及び、後述する制御部170の制御の元、生成された仮想ボリュームデータを記憶する。なお、仮想ボリュームデータについては、後に詳述する。さらに、画像メモリ150は、送受信部110を経た直後の出力信号(RF:Radio Frequency)や画像の輝度信号、種々の生データなどを必要に応じて記憶する。
【0047】
内部記憶部160は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像の保管などにも使用される。
【0048】
制御部170は、超音波診断装置1における処理全体を制御する。具体的には、制御部170は、入力装置12を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部160から読込んだ各種制御プログラムおよび各種設定情報に基づき、送受信部110、Bモード処理部120、ドプラ処理部130および画像生成部140の処理を制御したり、画像メモリ150が記憶する超音波画像などをモニタ13にて表示するように制御したりする。
【0049】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下、詳細に説明する制御部170の制御により、画像の視認性を向上させることが可能となるように構成されている。
【0050】
ここで、まず、超音波診断装置を用いた検査において、画像の視認性が低下する場合について説明する。図5は、第1の実施形態に係る課題の一例を説明するための図である。なお、図5においては、CDIを用いた心腔内血流の様子を示す。すなわち、図5に示す心腔内血流の画像は、Bモード画像である心臓部分にカラードプラ画像である逆血流50及び正常血流51が重畳された画像である。また、図5においては、正常血流51と比較して、逆血流50の分散値が高いという性質を利用して逆血流50を観察するV(Velocity:速度)−T(Turbulence:分散)表示を示す。例えば、V−T表示においては、逆血流が生じている場合、図5に示すように、逆血流50が正常血流51とは異なる色で表示される。
【0051】
ここで、例えば、図5の逆血流50の描出時間が短かったり、逆血流50が正常血流51やアーチファクトと時間的及び空間的に重複していたりした場合に、逆血流50の観察が困難になる。すなわち、画像の視認性が低下することとなり、その結果、診断の精度やスループットが低下する場合もあった。
【0052】
このような画像の視認性の低下は、上記した例以外にも、いくつか挙げられる。例えば、造影剤を用いた超音波造影検査においては、組織からのエコー信号を抑制し、造影剤からのエコー信号を強調して表示させているが、造影剤からのエコー信号である高調波や分周波には、組織由来の信号も含まれてしまう場合もあり、画像の視認性が低下する場合があった。また、CDIを用いてコロナリ(coronary:冠動脈)血流を観察する場合においても、心筋の動きにより生じるクラッタアーチファクト(組織ドプラの信号が混在するアーチファクト)により画像の視認性が低下する場合があった。
【0053】
そこで、本願では、上記したような場合の画像の視認性を向上させることを目的とする。以下、画像の視認性を向上させるための制御を実行する制御部170について詳細に説明する。
【0054】
図6は、第1の実施形態に係る制御部170の構成の一例を示す図である。制御部170は、図6に示すように、分離部171と、画像生成制御部172と、表示制御部173と、奥行き設定部174とを有する。
【0055】
分離部171は、画像データに含まれる特徴量に応じて、当該画像データに基づいて描出される表示対象物の任意の領域を奥行き方向に分離する。具体的には、分離部171は、任意の閾値によって設定された範囲の特徴量を含む画像データに基づいて描出される領域を、表示対象物の任意の領域として抽出する。そして、分離部171は、特徴量として、カラードプラ法により得られる速度、分散及びパワーの情報のうち少なくとも1つを用いる。さらに、画像データは速度に関する情報を示すものであって、分離部171は、分散を特徴量として、分散の大きい領域ほど手前に位置するよう分離を行う。また、分離部171は、特徴量として、輝度の情報を用いる。なお、第1の実施形態においては、カラードプラ法によって得られる分散の情報を用いる場合について説明する。
【0056】
図7は、第1の実施形態に係る分離部171による処理の一例を説明するための図である。図7においては、図5に示す心腔内血流のCDIデータに含まれる分散値を用いる場合について示す。例えば、分離部171は、図7の(A)に示す分散値を用いて、心腔内血流の任意の領域を奥行き方向に分離する。
【0057】
一例を挙げると、分離部171は、まず、図7の(B)に示すように、閾値「c」を用いて、「a−b」にある分散値を「a−c」及び「c−b」の2つの範囲に分離する。そして、分離部171は、心腔内血流を示す画素群を分散値に基づいて2つの画素群に分離する。例えば、分離部171は、図7の(C)に示すように、心腔内血流を示す画素群を、分散値が「a−c」の範囲内であった正常血流51を示す領域と、分散値が「c−b」の範囲内であった逆血流50を示す領域とに分離する。なお、閾値は、操作者によって予め任意に設定される場合であってもよく、又は、システムによってそれぞれ固有の閾値を持つ場合でもよく、或いは、得られた分散値に基づいて、自動的に設定する場合であってもよい。さらに、閾値は、予め設定された複数の選択肢の中から状況に応じて(例えば、表示対象物や、用いられる特徴量などに応じて)、選択される場合であってもよい。また、CDIデータが収集されていないBモード画像の領域(心臓の弁や壁など)については、分離対象としない場合であってもよく、又は、特徴量(上記例では、分散値)を「0」として、分離対象とする場合であってもよく、或いは、状況に応じて(例えば、表示対象物や、用いられる特徴量などに応じて)、分離対象とするか否かを決定する場合であってもよい。
【0058】
図6に戻って、画像生成制御部172は、分離部171によって分離された表示対象物の任意の領域に奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成する。具体的には、画像生成制御部172は、分離部171によって分離された領域を示す2次元画像を、分散値に基づいて、仮想空間の奥行き方向に配置した仮想ボリュームデータを画像生成部140に生成させる。そして、画像生成制御部172は、生成させた仮想ボリュームデータに対して所定の方向から視差の数だけ視点を変えたボリュームレンダリング処理を実行させることで、表示用の視差画像群を生成させる。
【0059】
図8は、第1の実施形態に係る画像生成制御部172による処理の一例を説明するための図である。例えば、画像生成制御部172は、図8の(A)に示すように、分離部171によって分離された逆血流50を示す2次元画像と、正常血流51を示す2次元画像とを分散値に応じて予め設定された奥行き方向に配置させる。すなわち、画像生成制御部172は、図8の(A)に示すように、Bモード画像である心臓を示す2次元画像の手前に正常血流51を示す2次元画像を配置し、正常血流51を示す2次元画像の手前に逆血流50を示す2次元画像を配置する。換言すると、画像生成制御部172は、分離部171が分散値の大きい領域ほど手前に位置するよう分離した2次元画像を、当該分離された状態で仮想空間に配置する。
【0060】
そして、画像生成制御部172は、図8の(B)に示すように、奥行き方向で順に逆血流50を示す2次元画像、正常血流51を示す2次元画像、心臓を示す2次元画像を仮想空間に配置した仮想ボリュームデータを生成させる。そして、画像生成制御部172は、例えば、図8の矢印300の方向から視差数に応じたボリュームレンダリング処理を実行させることで、表示用の視差画像群を生成させる。なお、奥行き方向の2次元画像間の間隔、ボリュームレンダリング処理を実行する際の視線方向、視差角などは、操作者により任意に設定される場合であってもよく、又は、システムによってそれぞれ固有に設定される場合でもよく、或いは、得られた分散値に基づいて、自動的に設定する場合であってもよい。さらに、奥行き方向の2次元画像間の間隔、ボリュームレンダリング処理を実行する際の視線方向、視差角などは、予め設定された複数の選択肢の中から状況に応じて(例えば、表示対象物や、用いられる特徴量などに応じて)、選択される場合であってもよい。
【0061】
図6に戻って、表示制御部173は、画像生成制御部172の制御により生成された視差画像群をモニタ13にて表示させる。例えば、表示制御部173は、図8の(B)に示す仮想ボリュームデータに対して矢印300の方向から9つの視点からボリュームレンダリング処理を実行することによって生成された視差画像群をモニタ13にて表示させる。
【0062】
上記したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1では、関心対象となる部分を立体視させた立体視画像を操作者に表示することで、画像の視認性を向上させる。
【0063】
図6に戻って、奥行き設定部174は、画像生成手段によって生成された表示用の画像が有する奥行き方向の情報を、操作者の操作に基づいて設定する。具体的には、奥行き設定部174は、操作者がモニタ13にて表示された立体視画像を観察しながら、入力装置12を介して入力操作が行われた場合に、操作に応じて、立体視画像の奥行きを変化させる。すなわち、奥行き設定部174は、現時点で表示されている立体視画像が生成された仮想ボリュームデータに配置された2次元画像の奥行き方向の間隔を広げたり、狭めたりしたのち、視差画像群を生成させ、モニタ13にて表示させることで、奥行きを変化させた立体視画像を表示させる。
【0064】
図9は、第1の実施形態に係る奥行き設定部174による処理の一例を説明するための図である。図9においては、奥行きと分散値との対応関係が比例関係である場合について示す。例えば、奥行き設定部174は、図9に示す奥行きと分散との関係を示すグラフをモニタ13に表示させる。そして、奥行き設定部174は、操作者が入力装置12を介して変化させた直線301の傾きに基づいて、立体視画像の奥行きを変化させる。
【0065】
一例を挙げると、奥行き感をもっと大きくしたい場合には、操作者は、図9の(A)に示す直線301の傾きを図9の(B)に示す直線301の傾きに変化させる。奥行き設定部174は、傾きの変化に応じて、現時点で表示されている立体視画像が生成された仮想ボリュームデータに配置された2次元画像の奥行き方向の間隔を広げた後、視差画像群を生成させ、モニタ13にて表示させることで、奥行きを大きくさせた立体視画像を表示させる。一方、奥行き感をもっと小さくしたい場合には、例えば、操作者は、図9の(B)に示す直線301の傾きを図9の(A)に示す直線301の傾きに変化させる。
【0066】
上記したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、操作者による奥行きの設定も受付けることができ、より視認性を向上させた画像を提供することを可能にする。
【0067】
なお、上記した第1の実施形態では、CDIの分散値を用いる場合について説明したが、ドプラ処理部130によって生成されるCDIデータの速度及びパワーや、Bモード処理部120によって生成されるBモードデータに含まれる輝度値を用いて表示対象物を任意の領域に分離することも可能である。
【0068】
次に、図10を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。図10は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。図10に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、視認性を向上させるためのモードがONであると(ステップS101肯定)、分離部171は、特徴量の情報(分散、速度、パワー、輝度など)を取得する(ステップS102)。
【0069】
そして、分離部171は、取得した特徴量と予め設定された閾値に基づいて、表示対象物を分離する(ステップS103)。続いて、画像生成制御部172は、分離部171によって分離された領域の2次元画像を配置する奥行きを設定して(ステップS104)、仮想ボリュームデータを生成させる(ステップS105)。
【0070】
その後、画像生成制御部172は、生成させた仮想ボリュームデータに対して視差数に応じたレンダリング処理を実行させる(ステップS106)。そして、表示制御部173は、画像生成制御部172の制御によって生成された視差画像群をモニタ13にて表示させる(ステップS107)。続いて、奥行き設定部174は、奥行きを変更するための奥行き変更要求を受付けたか否かを判定する(ステップS108)。
【0071】
ここで、奥行き変更要求を受付けた場合には(ステップS108肯定)、奥行き設定部174は、ステップS104に戻って、画像の奥行きを設定させる。一方、奥行き変更要求を受付けなかった場合には(ステップS108否定)、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、処理を終了する。
【0072】
上述したように、第1の実施形態によれば、分離部171は、画像データに含まれる特徴量に応じて、当該画像データに基づいて描出される表示対象物の任意の領域を奥行き方向に分離する。画像生成制御部172は、分離部171によって分離された表示対象物の任意の領域に奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成する。表示制御部173は、画像生成制御部172によって生成された表示用の画像を立体視可能なモニタ13にて表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、関心領域を立体視させることができ、画像の視認性を向上させることを可能にする。さらに、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、画像の視認性を向上させることにより、診断精度、及び、診断スループットを向上させることを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、分離部171は、特徴量として、カラードプラ法により得られる速度、分散及びパワーの情報のうち少なくとも1つを用いる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、逆血流やコロナリ血流を観察する場合に、それぞれの領域の視認性を特異的に向上させることを可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、画像データは速度に関する情報を示すものであって、分離部171は、分散を特徴量として、分散の大きい領域ほど手前に位置するよう分離を行う。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、観察者が関心のある領域を手前に表示させることができ、画像の視認性をより向上させることを可能にする。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、分離部171は、特徴量として、輝度の情報を用いる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、造影剤を用いた検査において、関心領域の視認性を特異的に向上させることを可能する。
【0076】
例えば、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、造影剤として微小気泡(マイクロバブル)などを静脈から注入して血流信号を増強することで、血流動態を明瞭に観察する造影エコー法において、造影像にて描出された血流動態の視認性を特異的に向上させることができ、癌の鑑別診断や、慢性肝炎、肝硬変などのびまん性肝疾患の診断などの診断精度や診断スループットを向上させることを可能にする。
【0077】
また、第1の実施形態によれば、分離部171は、任意の閾値によって設定された範囲の特徴量を含む画像データに基づいて描出される領域を、表示対象物の任意の領域として抽出する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、特徴量が近似した領域を同一の奥行きで表示させることができ、画像の視認性をより向上させることを可能にする。
【0078】
例えば、特徴量に応じて、空間的に細かいレベルで奥行きが設定されると、近接した領域において、奥行きに大きな違いが生じてしまう可能性がある。一例を挙げると、逆血流において、その内部であっても分散値がばらつく場合があり、ばらつきが奥行きに反映されてしまうと、視認性が低下する。第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、上記したような特徴量のばらつきに由来する視認性の低下を回避することを可能にする。
【0079】
また、第1の実施形態によれば、奥行き設定部174は、画像生成制御部172によって生成された表示用の画像が有する奥行き方向の情報を、操作者の操作に基づいて変更する。そして、画像生成制御部172は、奥行き設定部174によって設定された奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、操作者による奥行きの設定も受付けることができ、より視認性を向上させた画像を提供することを可能にする。
【0080】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上記した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0081】
上記した第1の実施形態では、超音波診断装置1が立体視画像を生成して表示する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、画像処理装置が立体視画像を生成して表示する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、画像処理装置は、Bモード画像データ及びドプラ画像データを取得して、特徴量(速度、分散、パワー、輝度)に基づいて表示対象物の領域を分離し、分離した領域を示す2次元画像を仮想空間における異なる奥行き方向に配置した仮想ボリュームデータを生成する。そして、画像処理装置は、生成した仮想ボリュームデータから視差数に応じた視差画像群を生成して表示する。
【0082】
また、上記した第1の実施形態においては、2次元のBモード画像データ及びドプラ画像データを用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、3次元のBモード画像データ及びドプラ画像データを用いる場合であってもよい。かかる場合には、例えば、3次元のBモード画像データ及びドプラ画像データから生成されたMPR画像やボリュームレンダリング画像を初期の画像とし、この初期の画像の特徴量に基づいて立体視画像を生成する。
【0083】
また、上記した第1の実施形態においては、1つの閾値を用いて、表示対象物の領域を分離する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、2つ以上の閾値を用いる場合であってもよい。
【0084】
また、上記した第1の実施形態においては、特徴量(分散値)の全範囲を2つの範囲に分離させる閾値を用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、特徴量の全範囲のうち、特定の範囲の特徴量を示す領域を分離する閾値を用いる場合であってもよい。例えば、図7の(B)に示す「a−b」の分散値に対して「a<c1〜c2<c<d1〜d2<b」となるように閾値を設定し、「c1〜c2」と「d1〜d2」とに含まれる特徴量を示す領域をそれぞれ分離するようにしてもよい。
【0085】
また、上記した第1の実施形態においては、予め閾値が設定される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、カラードプラ画像のデータを用いて自動で閾値を設定する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、ドプラ画像のデータに含まれる分散値を正規分布で表し、特定の領域を分離する閾値を設定する。
【0086】
上述した第1の実施形態では、仮想ボリュームデータにおける2次元画像の配置間隔を変更することにより、立体視画像の奥行きを変更する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ボリュームレンダリング処理を実行する際の視差角を変更することで、立体視画像の奥行きを変更する場合であってもよい。
【0087】
上述した第1の実施形態では、1つの特徴量を用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、2つ以上の特徴量を用いる場合であってもよい。
【0088】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、画像の視認性を向上させることを可能にする。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 超音波診断装置
100 装置本体
170 制御部
171 分離部
172 画像生成制御部
173 表示制御部
174 奥行き設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに含まれる特徴量に応じて、当該画像データに基づいて描出される表示対象物の任意の領域を奥行き方向に分離する分離手段と、
前記分離手段によって分離された前記表示対象物の任意の領域に前記奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段によって生成された表示用の画像を立体視可能な表示部にて表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記分離手段は、前記特徴量として、カラードプラ法により得られる速度、分散及びパワーの情報のうち少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像データは前記速度に関する情報を示すものであって、前記分離手段は、前記分散を特徴量として、前記分散の大きい領域ほど手前に位置するよう前記分離を行うことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記分離手段は、前記特徴量として、輝度の情報を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記分離手段は、任意の閾値によって設定された範囲の特徴量を含む画像データに基づいて描出される領域を、前記表示対象物の任意の領域として抽出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像生成手段によって生成された表示用の画像が有する奥行き方向の情報を、操作者の操作に基づいて変更する奥行き設定手段をさらに有し、
前記画像生成手段は、前記奥行き設定手段によって設定された奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
画像データに含まれる特徴量に応じて、当該画像データに基づいて描出される表示対象物の任意の領域を奥行き方向に分離する分離手段と、
前記分離手段によって分離された前記表示対象物の任意の領域に前記奥行き方向の情報が反映された表示用の画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段によって生成された表示用の画像を立体視可能な表示部にて表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−239820(P2012−239820A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115935(P2011−115935)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】