説明

超音波診断装置及び画像表示装置

【課題】 基準視線方向と参照視線方向の画像データを交互に表示する際、参照視線方向から基準視線方向への切り換えを簡単な操作で効率よく行なう。
【解決手段】 超音波画像データのリアルタイム観測下にて穿刺治療を行なう際に、基準視線方向設定部81は、方向・位置検出部6が検出した穿刺針の挿入方向に基づいて基準視線方向を設定し、マニュアル表示モード設定部83は、この基準視線方向に基づいて表示パラメータを設定して表示パラメータ記憶部84に保存する。一方、画像再構成部9及び表示部11は、前記表示パラメータを用いて基準視線方向の基準画像データの生成と表示を行なった後その表示を中断して所望の方向に設定した参照視線方向の参照画像データの生成と表示を行ない、更に、保存された前記表示パラメータを用いて基準視線方向の画像データの生成と表示を続行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及び画像表示装置に係り、特に、超音波画像データを用いて診断あるいは治療を行なう際に用いられる超音波診断装置及び画像データ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された超音波振動子から発生する超音波を被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射波を前記超音波プローブによって受信してモニタ上に表示するものである。
【0003】
超音波診断法は、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作でリアルタイムの2次元画像が容易に観測できるため、心臓などの機能検査や各種臓器の形態診断に広く用いられている。又、X線診断装置やX線CT装置による診断法に見られるような被曝が無いため、心臓、腹部、乳腺、泌尿器に対する診断のみならず、産科領域の胎児診断においても繰り返し用いることができ、更に、装置が小型ゆえにベッドサイドでの使用が可能である等多くの利点を有している。
【0004】
一方、近年では、複数の超音波振動子が1次元配列された超音波プローブを更に機械的に移動することによって3次元的な画像データ(以下では、ボリュームデータと呼ぶ。)を収集する方法が開発され、更に、複数の超音波振動子が2次元配列された所謂2次元アレイ超音波プローブを用いてボリュームデータを収集し、このボリュームデータに基づいて生成された画像データ(以下では、3次元画像データと呼ぶ。)をリアルタイム表示しようとする試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このようにして得られた3次元画像データを観測することによって、血管や各臓器の位置関係の把握が容易となるため侵襲的な検査や治療への適用が検討されており、例えば、患部組織に対する薬物の投与や細胞・組織の摘出を目的とした穿刺を3次元画像データの観測下にて行なうことにより検査や治療における安全性を飛躍的に向上することができる。
【0006】
ところで、3次元画像データを上述の検査や治療に用いる最大の目的は、病巣部と周囲の臓器や血管との位置関係を正確に把握することにあるが、これを行なうためには収集されたボリュームデータから3次元画像データを生成する際に、観測方向(以下、視線方向と呼ぶ。)を簡単な操作で任意の方向に設定可能である必要があり、このような要求に対して、3次元画像データの視線方向に対応したジョイスティック等を操作部(入力部)に設け、所定方向に移動(傾倒)したジョイスティックのX軸、Y軸及びZ軸に対する回動角度に基づいて3次元画像データの視線方向を設定する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】米国特許第5563346号明細書
【特許文献2】特開平9−62438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3次元画像データの観測下において穿刺針やカテーテルを用いた診断・治療を行なう場合、3次元画像データの視線方向は通常穿刺針やカテーテルの挿入方向に設定されるが、この視線方向に基づいて生成された3次元画像データのみでは穿刺針やカテーテルの挿入方向や挿入深度の観測が周囲の臓器や血管、更には超音波特有の体内ガスや骨格等の影響によって阻害される場合が多い。
【0008】
即ち、穿刺針やカテーテルの挿入方向や挿入深度を正確に設定するためには、挿入方向に設定された視線方向(以下、基準視線方向)に基づいて生成された3次元画像データ(以下、基準3次元画像データ)の他に、上述の阻害要因の影響を受け難い方向を視線方向(以下、参照視線方向)として生成された3次元画像データ(以下、参照3次元画像データ)の観測が必要となる。
【0009】
例えば、医師ら(以下、操作者)は、穿刺針やカテーテルの挿入前あるいは挿入中において基準3次元画像データを観測し、挿入に必要な画像情報が上述の阻害要因のために得られない場合には視線方向を他の視線方向(参照視線方向)に切り換えて参照3次元画像データの観測を行なう。そして、1方向あるいは複数方向の参照視線方向において得られた参照3次元画像データによって必要な画像情報の収集が完了したならば、再度、視線方向を基準視線方向に戻し、この基準視線方向の基準3次元画像データに基づいて穿刺針あるいはカテーテルの挿入操作を続行する。尚、上述の参照3次元画像データを生成する際、好適な画像表示方法や画像処理方法等が基準3次元画像データに対して独立に設定される場合がある。
【0010】
ところで、所定の参照視線方向から元の基準視線方向に戻す場合、従来は入力部に設けられたポインティングデバイス(入力デバイス)を用いて再設定が行なわれ、視線方向の再設定に伴う画像表示方法や画像処理方法等の再設定も手動によって行なわれてきた。
【0011】
即ち、上述の視線方向や画像表示方法、更には画像処理方法等(以下では、これらを纏めて画像パラメータと呼ぶ。)の再設定は、操作者が手動によって行なってきたため多くの時間と手間を要し操作者に与える負担も大きかった。又、手動による視線方向の再設定は十分な再現性が得られないため診断・治療の精度を劣化させる可能性もあった。
【0012】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基準3次元画像データと参照3次元画像データのリアルタイム表示を交互に行ないながら被検体に対する診断あるいは治療を行なう際に、参照3次元画像データの表示から基準3次元画像データの表示への切り換えを短時間かつ簡単な操作で行なうことにより診断効率あるいは治療効率の向上が可能な超音波診断装置及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波振動子を有した超音波プローブと、前記超音波振動子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、前記超音波の送受信の方向を制御し前記被検体を3次元走査する走査制御手段と、前記受信手段によって得られた受信信号に基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記被検体に対して基準視線方向を設定する基準視線方向設定手段と、前記基準視線方向と異なる方向に所望の参照視線方向を設定する参照視線方向設定手段と、前記基準視線方向及び前記参照視線方向の表示パラメータに基づいて基準画像データ及び参照画像データを生成する画像データ生成手段と、少なくとも前記基準視線方向の表示パラメータを保存する表示パラメータ記憶手段と、前記基準画像データ及び前記参照画像データを表示する表示手段を備え、前記基準画像データと前記参照画像データの生成と表示を交互に行なう際に、所定の参照画像データの生成前に行なわれた基準画像データの生成における基準視線方向の表示パラメータを前記表示パラメータ記憶手段から読み出し、この表示パラメータに基づいて前記参照画像データの生成後の基準画像データを生成することを特徴としている。
【0014】
又、請求項11に係る本発明の画像表示装置は、被検体に対し医用画像診断装置を用いて得られたボリュームデータを保存するボリュームデータ記憶手段と、前記ボリュームデータに基づいて基準視線方向を設定する基準視線方向設定手段と、前記基準視線方向と異なる方向に所望の参照視線方向を設定する参照視線方向設定手段と、前記基準視線方向及び前記参照視線方向の表示パラメータに基づいて基準画像データ及び参照画像データを生成する画像データ生成手段と、少なくとも前記基準視線方向の表示パラメータを保存する表示パラメータ記憶手段と、前記基準画像データ及び前記参照画像データを表示する表示手段を備え、前記基準画像データと前記参照画像データの生成と表示を交互に行なう際に、所定の参照画像データの生成前に行なわれた基準画像データの生成における基準視線方向の表示パラメータを前記表示パラメータ記憶手段から読み出し、この表示パラメータに基づいて前記参照画像データの生成後の基準画像データを生成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基準画像データと参照画像データの表示を交互に行ないながら被検体に対する診断あるいは治療を行なう際に、参照画像データの表示から基準画像データの表示への切り換えを短時間かつ簡単な操作で行なうことにより、診断効率や治療効率が向上するとともに正確な診断や治療が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
以下に述べる本発明の第1の実施例では、ボリュームデータに基づいて生成された画像データ(即ち、3次元画像データ)のリアルタイム観測下にて穿刺治療を行なう場合に、穿刺針の挿入方向に基づいて設定された基準視線方向と初期設定された画像表示方法及び画像処理方法に基づいて表示パラメータ設定し、この表示パラメータを用いて基準3次元画像データの生成と表示を行なうと共に表示パラメータの保存を行なう。次いで、基準3次元画像データの生成と表示を中断し、所望の方向に設定した参照視線方向に基づいて参照3次元画像データの生成と表示を行なった後、保存された前記表示パラメータに基づいた基準3次元画像データの生成と表示を続行する。
【0018】
尚、以下の実施例では、2次元アレイ超音波プローブを用いた3次元走査によりボリュームデータを生成する場合について述べるが、これに限定されるものではなく、例えば複数の超音波振動子が1次元配列された超音波プローブを移動あるいは回動してもよい。更に、穿刺針による治療を目的とした3次元画像データの表示方法について述べるが、カテーテル等の診断・治療器具を用いた他の診断・治療であっても構わない。
【0019】
(装置の構成)
本実施例における超音波診断装置の構成につき図1乃至図3を用いて説明する。尚、図1は、超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2は、この超音波診断装置が備えた送受信部及び受信信号処理部のブロック図を示す。
【0020】
図1に示した本実施例の超音波診断装置100は、被検体に対して超音波パルスを送信すると共に、超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する超音波振動子を備えた超音波プローブ3と、被検体の所定方向に対して超音波パルスを送信するための駆動信号を超音波プローブ3の超音波振動子に供給すると共に超音波振動子から得られた複数チャンネルの受信信号を整相加算する送受信部2と、整相加算後の受信信号に対してBモードデータを生成する受信信号処理部4と、走査方向単位で得られるBモードデータを順次保存して3次元データ(ボリュームデータ)を生成するボリュームデータ記憶部5を備えている。
【0021】
又、超音波診断装置100は、超音波プローブ3に装着され、穿刺針150の挿入方向や先端部の位置(即ち、挿入深度)を検出する方向・位置検出部6と、被検体情報の入力、参照視線方向の設定、基準3次元画像データ及び参照3次元画像データに対する画像表示方法や画像処理方法等の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部7と、上述の画像パラメータ(視線方向、画像表示方法及び画像処理方法等)に基づいて表示パラメータの設定と保存を行なう表示パラメータ設定部8を備えている。
【0022】
更に、超音波診断装置100は、ボリュームデータ記憶部5に保存されたボリュームデータを読み出し、上述の表示パラメータに基づいて所定視線方向からの3次元画像データを再構成する画像再構成部9と、得られた3次元画像データに対して画像処理を行なう画像処理部10と、画像処理された3次元画像データを表示する表示部11と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部12を備えている。
【0023】
超音波プローブ3は、図示しない2次元配列されたN個(N=N1×N2)の超音波振動子をその先端部分に有し、この先端部分を被検体に接触させて超音波の送受信を行なう。又、超音波プローブ3の超音波振動子の各々は、図示しないNチャンネルの多芯ケーブルを介して送受信部2に接続されている。超音波振動子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルス(駆動信号)を超音波パルス(送信超音波)に変換し、又、受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気的な受信信号に変換する機能を有している。
【0024】
この超音波プローブ3には、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等があり、操作者は診断部位に応じて任意に選択することが可能であるが、本実施例では、N本の超音波振動子が2次元配列されているセクタ走査用の超音波プローブを用いた場合について述べる。
【0025】
次に、図2に示した送受信部2は、超音波プローブ3の超音波振動子に対して駆動信号を供給する送信部21と、超音波振動子から得られたNチャンネルの受信信号に対して整相加算を行なう受信部22を備えている。そして、送信部21は、レートパルス発生器211と、送信遅延回路212と、駆動回路213を備えており、レートパルス発生器211は、送信超音波の繰り返し周期を決定するレートパルスを生成して送信遅延回路212に供給する。
【0026】
送信遅延回路212は、送信に使用される超音波振動子と同数のNチャンネルの独立な遅延回路から構成され、送信超音波を所定の深さに集束するための集束用遅延時間と、送信超音波を所定の方向に送信するための偏向用遅延時間を上記レートパルスに与え、このレートパルスを駆動回路213に供給する。そして、駆動回路213は、送信遅延回路212と同数のNチャンネルの独立な駆動回路を有しており、超音波プローブ3に内蔵されたN個の超音波振動子を駆動し、被検体内に送信超音波を放射する。
【0027】
一方、受信部22は、Nチャンネルから構成されるA/D変換器221及び受信遅延回路222と、加算器223を備えており、超音波振動子から供給されたNチャンネルの受信信号は、A/D変換器221にてデジタル信号に変換され、受信遅延回路222に送られる。受信遅延回路222は、所定の深さからの受信超音波を集束するための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をA/D変換器221から出力されるNチャンネルの受信信号の各々に与え、加算器223は、これら受信遅延回路222からの受信信号を加算する。即ち、受信遅延回路222と加算器223により、所定方向から得られた受信信号は整相加算される。
【0028】
次に、受信信号処理部4は、包絡線検波器411と対数変換器412を備え、包絡線検波器411は、受信部22の加算器223から供給された整相加算後の受信信号を包絡線検波し、この包絡線検波信号は対数変換器412においてその振幅が対数変換されてBモードデータが生成される。一般に、被検体内からの受信信号は、80dB以上の広いダイナミックレンジをもった振幅を有しており、これを30dB程度のダイナミックレンジを有する通常のテレビモニタに表示するには、対数変換による振幅圧縮が必要となる。尚、包絡線検波器411と対数変換器412は順序を入れ替えて構成してもよい。
【0029】
図1に戻って、ボリュームデータ記憶部5は、被検体に対する超音波の3次元走査によって得られた所定走査方向からのBモードデータを保存するための記憶回路であり、受信信号処理部4において得られたBモードデータはボリュームデータ記憶部5に走査方向単位で順次保存されてボリュームデータが生成される。
【0030】
一方、方向・位置検出部6は、超音波プローブ3の中心軸をZo軸として設定された直交座標系(Xo−Yo−Zo)において穿刺針150の挿入方向を検出する図示しない挿入方向検出器と、穿刺針150の先端部位置を検出する図示しない挿入深度検出器を備えている。例えば、穿刺針150の挿入方向をガイドする中空形状の穿刺針ガイド151が超音波プローブ3に対して回動自在に装着されている。そして、前記挿入方向検出器は、この穿刺針ガイドの回動角度を計測することによって穿刺針150の挿入方向を検出し、挿入深度検出器は、穿刺針ガイド150の中心軸上をスライドする穿刺針の移動量を計測することによって穿刺針先端部の位置を検出する。
【0031】
又、入力部7は、操作パネル上に液晶表示パネルやキーボード、トラックボール、マウス等の入力デバイスを備え、被検体情報の入力、基準3次元画像データに対する画像表示方法や画像処理方法の初期設定、参照視線方向の設定、参照3次元画像データに対する画像表示方法及び画像処理方法の初期設定と更新、基準3次元画像データ表示モードと参照3次元画像データ表示モードの切り換え、マニュアル表示モードと自動表示モードの切り換え、更には、3次元画像データを生成するための各種コマンドの入力等を行なう。特に、参照3次元画像データに対する参照視線方向、画像表示方法及び画像処理方法はマニュアル表示モードと自動表示モードの各々に対して初期設定され、更に、自動表示モードにおける参照視線方向及び基準視線方向の更新時間間隔や相対回動角度も入力部7にて設定される。
【0032】
尚、画像表示方法としてボリュームレンダリング表示、サーフェイスレンダリング表示、MIP(Maximum Intensity Projection)表示、MPR(Multi Planar reconstraction)表示、プレーンカット表示等があり、又、画像処理方法として透明度(Opacity)やプレーンカット位置、色調、輝度のダイナミックレンジ及びウインドウレベル、視野角度(視野範囲)、各種フィルタ定数等の設定がある。
【0033】
次に、表示パラメータ設定部8は、基準視線方向設定部81と自動表示モード設定部82とマニュアル表示モード設定部83と表示パラメータ記憶部84を備えている。そして、基準視線方向設定部81は、システム制御部12を介して方向・位置検出部6から供給される穿刺針挿入方向の情報に基づいて基準3次元画像データの基準視線方向を設定する。
【0034】
又、自動表示モード設定部82は、基準視線方向設定部81から供給される基準視線方向と予め設定された参照視線方向の相対回動角度の情報に基づいて参照視線方向を設定し、この参照視線方向と前記基準視線方向、更にはシステム制御部12を介して入力部7から供給される基準3次元画像データ及び参照3次元画像データの画像表示方法と画像処理方法に基づいて自動表示モードにおける表示パラメータを設定する。
【0035】
一方、マニュアル表示モード設定部83は、基準視線方向設定部81から供給される基準視線方向とシステム制御部12を介して入力部7から供給される参照視線方向や基準3次元画像データ及び参照3次元画像データの画像表示方法と画像処理方法に基づいてマニュアル表示モードの表示パラメータを設定する。そして,表示パラメータ記憶部84は、上述の自動表示モード設定部82及びマニュアル表示モード設定部83が設定した表示パラメータを保存する。
【0036】
尚、上記表示パラメータとして、例えば、基準視線方向及び参照視線方向の位置座標、ボリュームデータから基準3次元画像データへの座標変換やボリュームデータから参照3次元画像データへの座標変換に必要な変換パラメータがあり、又、画像表示方法としてボリュームレンダリング表示を選択する場合には、3次元画像データの各画素に対する透明度や色調等の設定に必要なパラメータがある。そして、これらの表示パラメータは上述の自動表示モード設定部82及びマニュアル表示モード設定部83において生成される。
【0037】
次に、画像再構成部9は、図示しない演算回路と記憶回路を備え、ボリュームデータ記憶部5に保存されている当該被検体のボリュームデータを画像再構成して所定の視線方向における3次元画像データを生成する。即ち、画像再構成部9の前記演算回路は、ボリュームデータ記憶部5に保存されているボリュームデータと表示パラメータ設定部8の表示パラメータ記憶部84に保存されている座標変換に関する表示パラメータを読み出し、この表示パラメータに基づいてボリュームデータの各画素の座標変換を行なって3次元画像データ(画像処理前の3次元画像データ)を生成する。
【0038】
一方、前記記憶回路には、画像再構成部9において生成された画像処理前の3次元画像データや画像処理前の3次元画像データを画像処理部10が画像処理して得られた画像処理後の3次元画像データが保存される。
【0039】
又、画像処理部10は、図示しない演算回路を備え、画像再構成部9にて生成された画像処理前の3次元画像データに対して所望の画像表示方法における画像処理を行なう。例えば、ボリュームレンダリング表示に際して前記演算回路は3次元画像データにおける各画素の透明度と色調を設定し、更に、ノイズ低減や輪郭強調を目的としたフィルタリング処理等の画像処理を行なう。
【0040】
次に、表示部11は、図示しない表示用画像データ生成回路と変換回路とモニタを備え、表示用画像データ生成回路は、画像再構成部9の記憶回路に保存された画像処理後の3次元画像データに対し所定の表示形態に対応した走査変換等の処理を行なって表示用画像データを生成し、変換回路は、前記表示用画像データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行なってモニタに表示する。
【0041】
システム制御部12は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部7から入力された種々の情報は前記記憶回路に保存される。次いで、前記CPUは、これらの情報に基づいて超音波診断装置100における上述の各ユニットの制御やシステム全体の制御を行なう。例えば、システム制御部12は、送信部21の送信遅延回路212及び受信部22の受信遅延回路222における遅延時間を制御して被検体に対し超音波による3次元走査を行なう。尚、図3に、超音波プローブ3の中心をZo軸とした直交座標(Xo−Yo−Zo)と走査方向(θp、φq)の関係を示す。
【0042】
(3次元画像データの表示手順)
次に、本実施例における3次元画像データの表示手順につき図1乃至図6を用いて説明する。尚、図4及び図5は、3次元画像データの表示手順を示すフローチャートである。
【0043】
(初期設定)
3次元画像データの生成と表示に先立ち、超音波診断装置100の操作者は、入力部7において被検体情報を入力すると共に基準3次元画像データ及び参照3次元画像データに対する画像表示方法として「ボリュームレンダリング表示」を、更に、画像処理方法として「透明度」と「色調」を夫々初期設定する。そして、これらの入力情報や初期設定情報は、システム制御部12の記憶回路に保存される(図4のステップS1)。
【0044】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、入力部7にてボリュームデータの生成開始コマンドを入力し(図4のステップS2)、入力されたコマンド信号がシステム制御部12に供給されることにより、ボリュームデータの生成が開始される。
【0045】
このボリュームデータの生成に際して、図2に示した送信部21のレートパルス発生器211は、システム制御部12からの制御信号に従って被検体内に放射する送信超音波の繰り返し周期(レート周期)を決定するレートパルスを生成し送信遅延回路212に供給する。送信遅延回路212は、送信において細いビーム幅を得るために所定の深さに超音波を集束するための遅延時間と、最初の走査方向(θ1、φ1)に超音波を送信するための遅延時間を前記レートパルスに与え、このレートパルスをNチャンネルの駆動回路213に供給する。次いで、駆動回路213は、送信遅延回路212から供給されたレートパルスに基づいて駆動信号を生成し、この駆動信号を超音波プローブ3におけるN個の超音波振動子に供給して被検体内に送信超音波を放射する。
【0046】
放射された送信超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる被検体の臓器境界面や組織にて反射し、送信時と同じ超音波振動子によって受信されてNチャンネルの電気的な受信信号に変換される。次いで、この受信信号は、受信部22のA/D変換器221においてデジタル信号に変換された後、Nチャンネルの受信遅延回路222において所定の深さからの受信超音波を収束するための遅延時間と走査方向(θ1、φ1)からの受信超音波に対し強い受信指向性を設定するための遅延時間が与えられ、加算器223にて整相加算される。
【0047】
そして、整相加算後の受信信号が供給された受信信号処理部4の包絡線検波器411及び対数変換器412は、この受信信号に対して包絡線検波と対数変換を行なってBモードデータを生成し、図1のボリュームデータ記憶部5に保存する。
【0048】
走査方向(θ1、φ1)におけるBモードデータの生成と保存が終了したならば、超音波の送受信方向がφ方向にΔφずつ更新されたφq=φ1+(q−1)Δφ(q=2〜Q)によって設定される走査方向(θ1、φ2乃至φQ)に対して同様の手順で超音波の送受信を行なう。このとき、システム制御部12は、その制御信号によって送信遅延回路212及び受信遅延回路222の遅延時間を超音波送受信方向に対応させて更新する。
【0049】
上述の手順によって走査方向(θ1、φ1乃至φQ)に対する超音波送受信が終了したならば、送受信方向がθ方向にΔθずつ更新されたθp=θ1+(p−1)Δθ(p=2〜P)を設定し、走査方向θ2乃至θPの各々に対して上述のφ1乃至φQの超音波送受信を繰り返すことによって3次元走査が行なわれる。そして、各々の走査方向に対する超音波送受信によって得られたBモードデータは走査方向に対応してボリュームデータ記憶部5に保存されボリュームデータが生成される(図4のステップS3)。
【0050】
一方、操作者は、超音波プローブ3に対して回動自在に取り付けられた穿刺針ガイド151を所定の回動角度に固定した後、この穿刺針ガイドの中心に穿刺針150を装着する。このとき超音波プローブ3に取り付けられた方向・位置検出部6の挿入方向検出器は、超音波プローブ3の中心軸(Zo軸)に対する穿刺針ガイドの回動角度ξoに基づいて穿刺針の挿入方向を検出し、検出結果をシステム制御部12を介して表示パラメータ設定部8の基準視線方向設定部81に供給する。
【0051】
基準視線方向設定部81は、方向・位置検出部6から供給された穿刺針の挿入方向の情報に基づき基準3次元画像データに対する基準視線方向を設定してマニュアル表示モード設定部83に供給し(図4のステップS4)、マニュアル表示モード設定部83は、入力部7よりシステム制御部12を介して供給される基準3次元画像データの画像表示方法及び画像処理方法の情報と基準視線方向設定部81から供給される基準視線方向の情報に基づき、基準3次元画像データを生成するための表示パラメータを設定して表示パラメータ記憶部84に保存する(図4のステップS5)。
【0052】
一方、画像再構成部9の演算回路は、ボリュームデータ記憶部5に保存されたボリュームデータと表示パラメータ記憶部84に保存された座標変換に関する表示パラメータを読み出し、前記ボリュームデータの各画素に対し座標変換を行なって画像処理前の基準3次元画像データを生成し、自己の記憶回路に保存する。次いで、画像処理部10は、画像再構成部9にて生成された画像処理前の基準3次元画像データの各画素に対しボリュームレンダリング表示における透明度や色調等を設定して画像処理後の基準3次元画像データを生成し、画像再構成部9の記憶回路に保存する。
【0053】
次いで、表示部11の表示用画像データ生成回路は、画像再構成部9の記憶回路に保存された画像処理後の基準3次元画像データに対し走査変換等の処理を行なって表示用画像データを生成する。そして、この表示用画像データは、D/A変換とテレビフォーマット変換が施された後モニタに表示される(図4のステップS6)。
【0054】
表示部11のモニタに表示された基準3次元画像データの観測において、穿刺針150の周囲に位置する臓器や血管、更には体内ガスや骨格等により穿刺針の挿入方向や病巣部を把握することが困難な場合には、操作者は、入力部7において参照3次元画像データ表示モードとマニュアル表示モードを選択し(図4のステップS7)、更に、参照3次元画像データ用画像パラメータ(即ち、参照視線方向、画像表示方法及び画像処理方法)の設定あるいは更新を行なう。(図4のステップS8)。但し、上述のマニュアル表示モードの代りに後述する自動表示モードを選択することも可能である。
【0055】
図6は、基準視線方向と参照視線方向の位置関係を示したものであり、基準視線方向C1をZ軸とした直交座標(X―Y―Z)において参照視線方向C2が定義される。例えば、参照視線方向C2は基準視線方向C1をY軸の周囲で角度ηy、X軸の周囲で角度ηxだけ回動させることによって所望の参照視線方向C2に設定することが可能となる。尚、上述の参照視線方向の設定の際に、必要に応じて前記参照視線方向を回転軸とした画像回転が行なわれる。
【0056】
即ち、操作者は、入力部7の操作パネルにおいて参照3次元画像データの選択とマニュアル表示モードの選択を行ない、更に基準視線方向C1の回動中心として「X軸」あるいは「Y軸」の何れかを選択した後、例えば、キーボード上の上矢印「↑」及び下矢印「↓」を用いて回動角度「ηx」あるいは「ηy」を設定し、更に、右矢印「→」及び左矢印「←」を用いて画像回転を行なう。但し、特許文献2に記載されているような方法によって上述の回動角度「ηx」、「ηy」及び画像回転を同時に設定してもよい。
【0057】
次に、入力部7において設定あるいは更新された参照3次元画像データ用の画像パラメータは、システム制御部12を介してマニュアル表示モード設定部83に供給され、マニュアル表示モード設定部83は、上述の画像パラメータに基づき参照3次元画像データを生成するための表示パラメータを設定して表示パラメータ記憶部84に保存する(図4のステップS9)。
【0058】
一方、画像再構成部9は、ボリュームデータ記憶部5に保存されているボリュームデータと表示パラメータ設定部8の表示パラメータ記憶部84に保存された参照3次元画像データのための表示パラメータを読み出し、前記ボリュームデータの各画素に対して座標変換を行なって画像処理前の参照3次元画像データを生成する。そして、画像処理部10は、この画像処理前の参照3次元画像データの各画素に対し画像処理を行ない、表示部11は、画像処理後の参照3次元画像データをモニタに表示する(図4のステップS10)。
【0059】
操作者は、このようにして生成された参照3次元画像データを観測した後、更に、他の参照視線方向からの参照3次元画像データを観測したい場合、あるいは画像表示方法や画像処理方法を変更したい場合にはこれらの画像パラメータを入力部7において更新し、表示パラメータ設定部8は、更新された画像パラメータに基づいて参照3次元画像データ用の表示パラメータを設定する。そして、画像再構成部9及び画像処理部10は、設定された表示パラメータを用いて参照3次元画像データを生成し表示部11に表示する(図4のステップS8乃至S10)。
【0060】
一方、参照3次元画像データの観測によって十分な情報が得られた場合には、操作者は、入力部7において基準3次元画像データ表示モードを選択し(図4のステップS11)。この表示モード切り換え情報をシステム制御部12を介して受信した画像再構成部9は、上述のステップS6における最後の基準3次元画像データの生成に用いられ表示パラメータ設定部8の表示パラメータ記憶部84に保存されている表示パラメータ(以下では、最新表示パラメータと呼ぶ。)を読み出し(図4のステップS12)、次いでボリュームデータ記憶部5に保存されているボリュームデータの各画素を前記最新表示パラメータに基づいて座標変換して画像処理前の基準3次元画像データを生成する。又、画像処理部10は、この画像処理前の基準3次元画像データの各画素に対し表示パラメータ記憶部84に保存されている最新表示パラメータに基づいてボリュームレンダリング表示のための画像処理を行ない、画像処理後の基準3次元画像データを表示部11のモニタに表示する(図4のステップS13)。
【0061】
そして、操作者は、この基準3次元画像データの観測下にて穿刺針の挿入を行ない(図4のステップS14)、更に上述の各ステップを繰り返す(図4のステップS2乃至S14)。以上述べた手順により、基準3次元画像データ及び所望の参照3次元画像データの観測下で穿刺針の挿入を継続し、その先端部が病巣部に到達したならば、所定の治療行為を行なう。例えば、エタノール注入による肝臓癌の治療を行なう場合には、穿刺針150の先端部が病巣部に正確に挿入されたことを上述の3次元画像データによって確認した後、エタノールの注入を前記病巣部に対して行なう。
【0062】
以上、操作者がマニュアル表示モードを選択した場合における3次元画像データの表示手順について述べたが、本実施例における超音波診断装置100には既に述べたように自動表示モード機能が備えられている。
【0063】
即ち、上述のステップS6において基準視線方向に基づいた基準3次元画像データの観測が行なわれた後、入力部7にて参照3次元画像データ表示モードと自動表示モードが選択された場合には(図5のステップS21)、この選択情報がシステム制御部12を介して供給された表示パラメータ設定部8の自動表示モード設定部82は、基準視線方向設定部81から供給される基準視線方向の情報と予め設定された相対回動角度の情報に基づいて1つあるいは複数の参照視線方向を自動設定する(図5のステップS22)。次いで、この参照視線方向の情報と予め内部の記憶回路に保存されている参照3次元画像データの画像表示方法及び画像処理方法の情報に基づいて参照3次元画像データ用の表示パラメータを設定して表示パラメータ記憶部84に保存する。
【0064】
(図5のステップS23)
そして、画像再構成部9は、表示パラメータ設定部8の表示パラメータ記憶部84に保存されている参照3次元画像データ用の表示パラメータを読み出し、ボリュームデータ記憶部5に保存されているボリュームデータの各画素を前記参照3次元画像データ用の表示パラメータに基づいて座標変換して画像処理前の基準3次元画像データを生成する。又、画像処理部10は、この画像処理前の基準3次元画像データの各画素に対し表示パラメータ記憶部84に保存されている参照3次元画像データ用表示パラメータに基づく画像処理を行なって表示部11のモニタに表示する(図5のステップS24)。
【0065】
尚、予め設定された参照視線方向数が複数の場合には、所定時間間隔Tx(例えば、数秒間隔)で参照視線方向を順次更新し、画像再構成部9及び画像処理部10は、更新された参照視線方向に対する参照3次元画像データ用表示パラメータを用いて参照3次元画像データを生成し表示部11に時系列表示する。
【0066】
上述の参照3次元画像データの表示が終了したならば、自動的に基準3次元画像データ表示モードが選択され(図5のステップS25)、画像再構成部9及び画像処理部10は、表示パラメータ設定部8の表示パラメータ記憶部84に保存されている基準3次元画像データ用の最新表示パラメータを読み出す(図5のステップS26)。そして、得られた最新表示パラメータに基づいて基準3次元画像データを生成し表示部11にリアルタイム表示する(図5のステップS27)。
【0067】
次いで、所定期間Tyにおける基準3次元画像データのリアルタイム表示が終了したならばステップS22に戻り、基準視線方向に基づく基準3次元画像データと1つあるいは複数の参照視線方向に基づく参照3次元画像データを所定間隔Txで表示する。即ち、表示部11のモニタには、基準3次元画像データと参照3次元画像データが所定間隔で繰り返し表示され、操作者は、複数の視線方向における3次元画像データの観測下にて穿刺針の移動(挿入)を行なう(図5のステップS28)。
【0068】
以上述べた本発明の第1の実施例によれば、基準3次元画像データと参照3次元画像データの観測を交互に行なう際に、基準3次元画像データの生成に用いた表示パラメータが逐次保存されるため、参照3次元画像データの観測から基準3次元画像データの観測に戻る場合、保存された最新の表示パラメータを用いて基準3次元画像データを生成することができる。このため、参照3次元画像データの表示から基準3次元画像データの表示への切り換えを短時間で行なうことが可能となり、診断・治療効率は飛躍的に向上する。
【0069】
又、極めて簡単な操作で3次元画像データの切り換えが可能となるため、操作者の負担が軽減され、更に、最新の表示パラメータが用いられるため切り換え前後の基準視線方向を正確に一致させることが可能となり、再現性に優れた基準3次元画像データを得ることができる。
【0070】
尚、上述の第1の実施例では、穿刺針の挿入方向に基づいて基準視線方向の設定を行なったが、方向・位置検出器6によって検出される穿刺針の挿入深度の情報に基づき、例えば、ボリュームレンダリング表示における透明度や輝度の設定、プレーンカット表示におけるプレーン位置の設定、更には、MPR表示おける画像断面位置の設定などを行なうことができる。又、穿刺針による治療を目的とした3次元画像データの表示について述べたが、カテーテルや強力超音波を用いた診断・治療においても同様の手順によって3次元画像データを表示することが可能である。
【0071】
一方、上述の実施例における超音波診断装置では、Bモードデータに基づいてボリュームデータを生成する場合について述べたが、カラードプラデータ等、他の超音波データに基づいてボリュームデータを生成してもよい。又、2次元配列された超音波振動子による3次元走査について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、1次元配列された超音波振動子を配列方向に垂直な方向に移動させることによって3次元走査を行なってもよい。更に、コンベックス走査やリニア走査、更にはラジアル走査等、セクタ走査以外の走査法によってボリュームデータを生成してもよい。
【実施例2】
【0072】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。上述の第1の実施例では、超音波診断装置100の送受信部2、超音波プローブ3、受信信号処理部4及びボリュームデータ記憶部5を用いてボリュームデータを生成し、このボリュームデータに基づいて基準3次元画像データ及び参照3次元画像データの生成と表示を行なう場合について述べたが、別途設置された医用画像診断装置から供給されたボリュームデータに基づいて上述の3次元画像データの生成及び表示を行なう3次元画像表示装置であってもよい。
【0073】
即ち、以下に述べる本発明の第2の実施例における3次元画像表示装置では、医用画像診断装置から供給された被検体のボリュームデータに対して設定した画像パラメータ(基準視線方向、画像表示方法及び画像処理方法)に基づいて表示パラメータの設定と保存を行ない、この表示パラメータに基づいて基準3次元画像データの生成と表示を行なう。次いで、基準3次元画像データの表示を中断し、所望の方向に設定した参照視線方向に基づいて参照3次元画像データの生成と表示を行なった後、保存された前記表示パラメータに基づいた基準3次元画像データの生成と表示を続行する。
【0074】
(装置の構成)
本発明の第2の実施例における3次元画像表示装置の全体構成につき図7のブロック図を用いて説明する。この3次元画像表示装置200は、別途設置された医用画像診断装置から画像データIF(インターフェース)1aを介して供給されるボリュームデータを保存するボリュームデータ記憶部5aと、このボリュームデータを画像処理することによって穿刺針あるいはカテーテル等の輪郭を抽出し、この輪郭情報に基づいて挿入方向や挿入深度を検出する方向・位置検出部6aと、被検体情報の入力、参照視線方向の設定、基準3次元画像データ及び参照3次元画像データに対する画像表示方法や画像処理方法等の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部7aと、3次元画像データの視線方向や画像表示方法、更には画像処理方法等に基づいて表示パラメータの設定と保存を行なう表示パラメータ設定部8aを備えている。
【0075】
更に、3次元画像表示装置200は、ボリュームデータ記憶部5aに保存されたボリュームデータを読み出し、上述の表示パラメータに基づいて所定視線方向からの3次元画像データを再構成する画像再構成部9aと、得られた3次元画像データに対して画像処理を行なう画像処理部10aと、画像処理された3次元画像データを表示する表示部11aと、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部12aを備えている。
【0076】
そして、表示パラメータ設定部8aは、システム制御部12aを介して方向・位置検出部6aから供給される穿刺針等の挿入方向の情報に基づいて基準3次元画像データの基準視線方向を設定する基準視線方向設定部81aと、この基準視線方向設定部81aから供給される基準視線方向と予め設定された参照視線方向の相対回動角度に基づいて1つあるいは複数の参照視線方向を設定し、この参照視線方向と前記基準視線方向、更には入力部7aから供給される3次元画像データの画像表示方法や画像処理方法に基づいて自動表示モードにおける表示パラメータを設定する自動表示モード設定部82aを備え、更に、基準視線方向設定部81aから供給される基準視線方向とシステム制御部12aを介して入力部7aから供給される参照視線方向や3次元画像データの画像表示方法及び画像処理方法に基づいてマニュアル表示モードの表示パラメータを設定するマニュアル表示モード設定部83aと、上述の表示パラメータを保存する表示パラメータ記憶部84aを備えている。但し、方向・位置検出部6a及びボリュームデータ記憶部5aを除く上述の各ユニットは、これらのユニットに対応する第1の実施例のユニットと略同様の機能を有しているため詳細な説明は省略する。
【0077】
(3次元画像データの表示手順)
次に、本実施例における3次元画像データの表示手順を図8に示したフローチャートに沿って説明する。但し、この第2の実施例の手順を示すフローチャートにおいて、図4に示した第1の実施例のステップと同一の手順を示すステップは同一符合で示し、その説明を省略する。
【0078】
3次元画像データの生成と表示に先立ち、3次元画像表示装置200の操作者は、入力部7aにおいて基準3次元画像データ及び参照3次元画像データに対する画像表示方法と画像処理方法を初期設定する。そして、システム制御部12aは入力部7aから供給されたこれらの初期設定情報を自己の記憶回路に保存する(図8のステップS31)。
【0079】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、別途設置された医用画像診断装置に対してボリュームデータを要求し、供給されたボリュームデータを画像データIF1aを介してボリュームデータ記憶部5aに一旦保存する(図8のステップS32)。
【0080】
次に、方向・位置検出部6aは、ボリュームデータ記憶部5aに保存されたボリュームデータを読み出し、例えば、輪郭強調処理等の画像処理を行なって穿刺針やカテーテル等の診断・治療器具の輪郭を抽出する。そして、得られた輪郭情報に基づいて上記診断・治療器具の挿入方向や挿入深度を検出し、検出結果をシステム制御部12aを介して表示パラメータ設定部8aの基準視線方向設定部81aに供給する。
【0081】
次いで、基準視線方向設定部81aは、上記診断・治療器具の挿入方向の情報に基づき基準3次元画像データに対する基準視線方向を設定してマニュアル表示モード設定部83aに供給し(図8のステップS33)、マニュアル表示モード設定部83aは、システム制御部12aより供給される基準3次元画像データの画像表示方法及び画像処理方法の情報と基準視線方向設定部81aから供給される基準視線方向の情報に基づき、基準3次元画像データを生成するための表示パラメータを設定して表示パラメータ記憶部84aに保存する(図8のステップS34)。
【0082】
一方、画像再構成部9aは、ボリュームデータ記憶部5aに保存されたボリュームデータと表示パラメータ記憶部84aに保存された座標変換に関する表示パラメータを読み出し、前記ボリュームデータの各画素に対し座標変換を行なって画像処理前の基準3次元画像データを生成する。そして、画像処理部10aは、画像再構成部9aにて生成された画像処理前の基準3次元画像データの各画素に対し所定の画像処理を行なって画像処理後の基準3次元画像データを生成する。一方、表示部11aは、画像処理後の基準3次元画像データに対し走査変換、D/A変換、テレビフォーマット変換等を行なった後モニタに表示する(図8のステップS35)。
【0083】
以上、本実施例における基準3次元画像データの表示手順について述べたが、この基準3次元画像データの表示に後続するマニュアル表示モードでの参照3次元画像データの表示と基準3次元画像データの再表示、更には自動表示モードにおける基準3次元画像データ及び参照3次元画像データの表示の手順については第1の実施例の場合と同様であるため説明を省略する。
【0084】
以上述べた本発明の第2の実施例によれば、第1の実施例と同様にして、参照3次元画像データの表示から基準3次元画像データの表示への切り換えを短時間で行なうことが可能となるため、診断・治療効率が飛躍的に向上し、操作者の負担が軽減される。更に、最新の表示パラメータを用いて基準3次元画像データが生成されるため再現性に優れた基準3次元画像データを再表示することができる。
【0085】
更に、本実施例における3次元画像表示装置は、医用画像診断装置に対して独立に構成されているため、超音波診断装置のみならず他の画像診断装置によって収集されたボリュームデータに対しても所望の基準3次元画像データ及び参照3次元画像データの生成と表示が可能となる。
【0086】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施例では参照3次元画像データの表示から基準3次元画像データの表示に切り替わる際、保存された最新の参照3次元画像データ用表示パラメータに基づいて新たな基準3次元画像データの生成を行なったが、最新の参照3次元画像データ用表示パラメータの代りに最新の参照3次元画像データ用画像パラメータを用いてもよい。
【0087】
又、上述の第1の実施例では超音波プローブに回動自在に取り付けられたガイドの回動角度に基づいて基準視線方向の設定を行なったが、第2の実施例と同様にして、ボリュームデータを画像処理して得られた輪郭情報に基づいて基準視線方向等の設定を行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例の超音波診断装置が備える送受信部及び受信信号処理部の構成を示すブロック図。
【図3】同実施例における超音波プローブの座標と走査方向の関係を示す図。
【図4】同実施例のマニュアル表示モードにおける3次元画像データの表示手順を示すフローチャート。
【図5】同実施例の自動表示モードにおける3次元画像データの表示手順を示すフローチャート。
【図6】同実施例における基準視線方向と参照視線方向の関係を示す図。
【図7】本発明の第2の実施例における3次元画像表示装置の全体構成を示すブロック図。
【図8】同実施例における3次元画像データの表示手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0089】
1a…画像データIF
2…送受信部
3…超音波プローブ
4…受信信号処理部
5、5a…ボリュームデータ記憶部
6、6a…方向・位置検出部
7、7a…入力部
8、8a…表示パラメータ設定部
9、9a…画像再構成部
10、10a…画像処理部
11、11a…表示部
12、12a…システム制御部
3…超音波プローブ
21…送信部
22…受信部
81、81a…基準視線方向設定部
82、82a…自動表示モード設定部
83、83a…マニュアル表示モード設定部
84、84a…表示パラメータ記憶部
211…レートパルス発生器
212…送信遅延回路
213…駆動回路
221…A/D変換器
222…受信遅延回路
223…加算器
411…包絡線検波器
412…対数変換器
100…超音波診断装置
200…3次元画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波振動子を有した超音波プローブと、
前記超音波振動子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、
前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、
前記超音波の送受信の方向を制御し前記被検体を3次元走査する走査制御手段と、
前記受信手段によって得られた受信信号に基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記被検体に対して基準視線方向を設定する基準視線方向設定手段と、
前記基準視線方向と異なる方向に参照視線方向を設定する参照視線方向設定手段と、
前記基準視線方向及び前記参照視線方向の表示パラメータに基づいて基準画像データ及び参照画像データを生成する画像データ生成手段と、
少なくとも前記基準視線方向の表示パラメータを保存する表示パラメータ記憶手段と、
前記基準画像データ及び前記参照画像データを表示する表示手段を備え、
前記基準画像データと前記参照画像データの生成と表示を交互に行なう際に、所定の参照画像データの生成前に行なわれた基準画像データの生成における基準視線方向の表示パラメータを前記表示パラメータ記憶手段から読み出し、この表示パラメータに基づいて前記参照画像データの生成後の基準画像データを生成することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記被検体の体内に挿入された診断・治療器具の挿入方向を検出する方向・位置検出手段を備え、前記基準視線方向設定手段は、前記方向・位置検出手段が検出した前記挿入方向に基づいて前記基準視線方向を設定することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記方向・位置検出手段は、前記超音波プローブに対する前記診断・治療器具の相対位置情報に基づいて前記挿入方向を検出することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記方向・位置検出手段は、前記ボリュームデータを画像処理して抽出した輪郭情報に基づいて前記診断・治療器具の挿入方向を検出することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項5】
参照視線方向入力手段を備え、前記参照視線方向設定手段は、前記参照視線方向入力手段において入力された設定情報に基づいて前記参照視線方向の設定を行なうことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記参照視線方向設定手段は、前記参照視線方向入力手段において入力された設定情報に基づいて前記参照視線方向と共に画像回転の設定を行なうことを特徴とする請求項5記載の超音波診断装置。
【請求項7】
表示モード入力手段と表示モード変更手段を備え、前記表示モード変更手段は、前記表示モード入力手段から供給される指示信号に基づいて前記参照画像データの表示から前記基準画像データの表示への切換えを行なうことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
表示モード変更手段を備え、前記表示モード変更手段は、前記参照画像データの表示と前記基準画像データの表示を交互に自動切換えすることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
表示パラメータ設定手段を備え、前記表示パラメータ設定手段は、画像表示方法あるいは画像処理方法に基づいて前記表示パラメータを設定することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記画像データ生成手段は、前記基準視線方向及び前記参照視線方向の情報に基づいて前記ボリュームデータを座標変換して前記基準画像データ及び前記参照画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項11】
被検体に対し医用画像診断装置を用いて得られたボリュームデータを保存するボリュームデータ記憶手段と、
前記ボリュームデータに基づいて基準視線方向を設定する基準視線方向設定手段と、
前記基準視線方向と異なる方向に参照視線方向を設定する参照視線方向設定手段と、
前記基準視線方向及び前記参照視線方向の表示パラメータに基づいて基準画像データ及び参照画像データを生成する画像データ生成手段と、
少なくとも前記基準視線方向の表示パラメータを保存する表示パラメータ記憶手段と、
前記基準画像データ及び前記参照画像データを表示する表示手段を備え、
前記基準画像データと前記参照画像データの生成と表示を交互に行なう際に、所定の参照画像データの生成前に行なわれた基準画像データの生成における基準視線方向の表示パラメータを前記表示パラメータ記憶手段から読み出し、この表示パラメータに基づいて前記参照画像データの生成後の基準画像データを生成することを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
前記被検体の体内に挿入された診断・治療器具の挿入方向を検出する方向・位置検出手段を備え、前記基準視線方向設定手段は、前記方向・位置検出手段が検出した前記挿入方向に基づいて前記基準視線方向を設定することを特徴とする請求項11記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記方向・位置検出手段は、前記ボリュームデータを画像処理して抽出した輪郭情報に基づいて前記診断・治療器具の挿入方向を検出することを特徴とする請求項12記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−346176(P2006−346176A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176429(P2005−176429)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】