説明

超音波診断装置

【課題】 超音波診断装置において、複数のカラードプラMモード画像と複数の速度曲線の合成表示を行う。
【解決手段】 走査面17上において2つのMライン19,21が設定され、それらのライン上においてサンプル点P1,P2が指定される。それらのサンプル点を貫通してベクトルラインL1,L2が設定され、それらを利用してサンプル点P1,P2の速度情報に対する角度補正がなされる。画像表示に当たっては、2つのカラードプラMモード画像と2つの速度曲線の合成表示がなされる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は超音波診断装置に関し、特にドプラ波形を表示可能な超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】心臓などの臓器の超音波診断を行う場合、ドプラ情報が画像表示される。例えば、カラードプラ画像は、走査面内で取り込まれたエコーデータからドプラ情報(速度情報)抽出し、それを走査面上に表したものであり、各点の血流速度等の大きさが色相で表現される。カラードプラMモード画像は、通常のMモード画像と同様に、あるビーム軸上の各点のドプラ情報の時間変化を表したものであり、カラードプラ画像と同様に血流速度に応じた着色が施された画像である。その画像の横軸は時間軸であり、その画像の縦軸は深さ軸である。カラードプラ画像はBモード画像(二次元断層画像)と合成表示される場合があり、同様に、カラードプラMモード画像も通常のMモード画像と合成表示される場合がある。
【0003】一方、走査面内のある点のドプラ信号を時間変化の波形(速度曲線)として表示する場合もある。例えば、心臓内の弁の機能を評価する場合、心臓弁の近傍(特定の深さ)にサンプルボリュームが設定され、当該部位で取得されたドプラ信号成分がドプラスペクトラム波形として表示される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年の診断技術の発展に伴い、例えば心臓弁の機能を評価する場合において、カラードプラMモード画像とドプラ波形の両者を同時に見たい要望が出てきているが、従来装置にはそのような要望を満たす表示モードは搭載されていない。仮に、両画像を切り換え表示したり、単に左右に並べて表示したりすると、時間的な関係を把握することが困難となる。
【0005】一方、超音波診断装置で取得されるドプラ情報は、超音波ビームに沿った方向の速度成分であり、血流方向とビーム方向との交差角度に依存する。従来のカラードプラMモード画像及びドプラ波形のいずれも、超音波ビームに沿った速度成分を画像化するものに他ならない。Mモード画像やドプラ波形の表示に当たって、診断用途によっては、正確な速度表示が求められる。特に、心臓内の2つの部位に関して、時間軸を相互に一致させて2つの画像を同時表示するような場合、速度の規格化(あるいは調整)がなされていないと、カラードプラMモード画像の場合には色の対比上問題が生じ、ドプラ波形の場合には振幅の対比上問題が生じる。
【0006】本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、カラードプラMモード画像及び速度曲線の同時表示が可能な超音波診断装置を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、正確な速度情報を表示できる超音波診断装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、超音波ビームを走査して走査面を形成し、受信信号を出力する超音波送受波手段と、前記受信信号に基づいてドプラ情報を演算するドプラ処理手段と、前記走査面内において少なくとも1つのMモード用ラインを指定するためのライン指定手段と、前記Mモード用ライン上のドプラ情報の時間変化を表したカラードプラMモード画像を形成するカラードプラMモード画像形成手段と、前記Mモード用ライン上において少なくとも1つのサンプル部位を指定するためのサンプル部位指定手段と、前記サンプル部位のドプラ情報の時間変化を表す速度曲線を生成する速度曲線生成手段と、前記ドプラMモード画像及び前記速度曲線を互いの時間軸を一致させて合成し、これにより合成画像を形成する合成手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】上記構成によれば、走査面上で指定されたMモード用ラインについてカラードプラMモード画像が表示され、それと併せて、サンプル部位の速度曲線が同時表示される。よって、それらの2つの画像から、臓器の総合診断などを行うことが可能となる。
【0010】望ましくは、前記速度曲線生成手段は、前記ドプラ処理手段から出力されたドプラ情報に基づいて前記速度曲線を生成する。望ましくは、前記Mモード用ライン及び前記サンプル部位がそれぞれ複数指定され、複数の合成画像が並んで表示される。このように複数の合成画像が同時表示されれば、従来行えなかった様々な診断を行うことができ、例えば、僧坊弁及び大動脈弁を通過する血流について、Mモード用ライン上の速度分布を観察しながら、特定のサンプル部位の血流の速度曲線を評価したり、所定演算を実行したりすることができる。
【0011】望ましくは、前記カラードプラMモード画像には前記サンプル部位の位置を示すマーカーが表示される。この構成によれば、速度曲線とカラードプラMモード画像との関係を明確に把握できる。
【0012】望ましくは、前記サンプル部位に対応させて補正方位を設定するための手段と、前記サンプル点を通過する超音波ビームの方位と前記補正方位との間の角度に基づいて前記ドプラ情報を補正し、前記サンプル点における補正ドプラ情報を求める手段と、を含み、前記速度曲線生成手段は、前記補正ドプラ情報に基づいて速度曲線を生成する。この構成によれば、超音波ビームと血流ベクトルのなす角度に応じた速度誤差を排除・軽減して、正確性のある速度曲線を画像表示できる。
【0013】望ましくは、第1の速度曲線上において第1のパラメータ値を求める手段と、第2の速度曲線上において第2のパラメータ値を求める手段と、前記第1のパラメータ値と前記第2のパラメータ値に基づいて所定の評価値を演算する手段と、を含む。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】図3には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図3はその全体構成図を示すブロック図である。プローブ10は、超音波の送受波を行って受信信号を出力する超音波探触子である。送受信部12から送信信号がプローブ10に対して供給され、プローブ10からの受信信号は送受信部12において処理される。制御部11は送受信部12における送受信処理の制御を行っており、その制御の中には、ビーム方位の設定やビーム走査範囲の設定などが含まれる。
【0016】Bモード画像形成部14は、送受信部12から出力される受信信号に基づいて、白黒断層画像すなわちBモード画像を形成する手段である。そのBモード画像は画像合成部16に出力されている。ちなみに、このBモード画像形成部14は例えば検波回路などを有するものである。
【0017】送受信部12から出力される受信信号はドプラ情報処理部18に入力されている。このドプラ情報処理部18は直交検波回路及び自己相関器などを有するものであり、自己相関演算結果として速度情報を出力する手段である。その速度情報は必要に応じて画像合成部16に出力され、その画像合成部16上において二次元ドプラ画像(カラードプラ画像)が構築される。
【0018】一方、ドプラ情報処理部18から出力されるドプラ情報(速度情報)は、カラードプラMモード画像形成部20及び速度補正部24に出力されている。
【0019】ここで、カラードプラMモード画像形成部20は、図1に示すような1又は複数のカラードプラMモード画像を形成する手段である。なお、それらの画像については後に詳述する。
【0020】カラードプラMモード画像形成部20は、Mライン設定部22にて設定されたビーム方位上のドプラ情報を利用してカラードプラMモード画像を形成する。
【0021】速度補正部24は、ドプラ情報処理部18から出力される速度情報の内、サンプル点設定部26により設定された1又は複数のサンプル点(サンプルボリューム)に相当する速度情報を補正する回路である。これについては詳述するが、その補正後の速度情報が速度曲線作成部30に出力されている。
【0022】速度曲線作成部30は、後に図1において示すような、速度曲線100,102を作成する回路である。ここで、その速度曲線は上述したサンプル点に対応する速度情報(補正後の速度情報)の時間変化を表したものである。ちなみに、ここでいう速度情報は平均速度情報である。
【0023】図3に示すベクトル設定部28は、後に図2R>2において、説明するように、速度補正部24が速度情報の補正を行うに当たって、その補正の基準となるベクトル方法すなわち補正方位を指定するための手段である。
【0024】画像合成部16は、上述のように各画像が入力され、画像合成部16は例えば図1に示すような画像を形成し、その合成画像を表示部36に出力する。
【0025】演算部34は、マーカー設定部32によって設定された1又は複数のマーカーに基づいて所定の演算を実行する回路である。その演算式はユーザーが任意に設定することが可能である。
【0026】ちなみに、Mラインが設定された場合、制御部11の制御によって必要に応じて当該Mライン方向の方位に繰り返し超音波パルスが送波される。もちろん、そのような送波を間欠的に行うようにしてもよく、そのための送受信方式としては従来からの各種の方式を適用可能である。
【0027】図2には、超音波ビームのスキャンによって形成される走査面17が概念的に示されている。ここで符号11は、人間の心臓、特に左心室の断面を示しており、符号13はその内部の僧帽弁を示し、符号15は大動脈弁を示している。
【0028】例えば、その僧帽弁13を介して流入する血流についての速度情報の評価と、大動脈弁15を介して流出する血流の評価を行うために、図2に示されるように当該僧帽弁13及び大動脈弁15を通過する2つのMライン19,21がユーザーによって設定される。すなわち、図3に示したMライン設定部22が利用される。
【0029】そして、当該方向に対する連続的な超音波パルスの送受信が行われる。
【0030】また、サンプル点設定部26(図3参照)によってそれらのMライン19,21上において、血流の観測を行うべきサンプルボリュームすなわちサンプル点P1,P2が設定される。
【0031】また、本実施形態においては、それらのサンプル点P1,P2を通過するベクトルラインL1,L2を任意の方向に設定可能であり、その場合においてはベクトル設定部28が利用される。ここで、そのベクトルラインL1,L2は、ユーザーによって、僧帽弁13及び大動脈弁15の向きに応じて自在に設定される。
【0032】この場合、血流が流れる主方向にそれぞれのベクトルラインL1,L2を合わせるのが望ましいが、それには限られず、評価手法に応じて自在にライン設定を行える。
【0033】図3に示した速度補正部24は、このように設定されたMライン19,21とベクトルラインL1,L2とのなす角度θ1,θ2に基づいて、ドプラ情報処理部18から出力される速度情報に対して速度補正を実行する。すなわち、周知のように、ドプラ情報は、超音波ビームに沿った方向の速度成分であり、実際の血流の平均速度は異なる。そこで、上記のθ1,θ2に基づいてベクトルライン方向の平均速度を推定するものである。そして、そのような補正された速度情報に基づいて図3に示した速度曲線作成部30が速度曲線を作成する。
【0034】図1には、表示部36に表示される2つのカラードプラMモード画像50,52が示されている。ここで、各カラードプラMモード画像50,52における縦軸は図2に示したMライン19,21に相当しており、すなわちその縦軸は深さ軸である。また、カラードプラMモード画像50,52における横軸は時間軸である。さらに、図1において、符号46,48は図2に示したサンプル点P1,P2の深さ位置をマーカーとして示している。これらのマーカーは時間軸に平行である。
【0035】なお、図1において、符号44は色付け処理された速度情報を概念的に示している。
【0036】図1に示されるように、本実施形態においては速度曲線作成部30によって各カラードプラMモード画像50,52ごとに速度曲線100,102を合成表示することが可能である。これらの速度曲線100,102は上述したように補正後の速度情報(平均速度情報)を時間軸上に展開したものであり、その時間軸はカラードプラMモード画像50,52の時間軸と一致し、その縦軸は平均速度の大きさを表している。
【0037】図1に示すような合成画像が表示されれば、僧帽弁13,大動脈弁15のそれぞれの機能を総合評価することができ、すなわちそれらを通過する血流の全体の動きを観察しながら、サンプル点P1,P2における平均速度及び時相の正確な評価を行えるという利点がある。その結果、新機能の判断に有益な情報を提供できる。
【0038】ちなみに、本実施形態においては、マーカー設定部32によって、画面内において複数のマーカーを出すことが可能であり、例えばそのマーカーが符号40,42で示されている。そして、例えば図1においてa及びbで示す時間計測を行うことができ、演算部34は(a−b)/bという演算を行うことによって心機能を表す公知の評価値を求めている。その評価値は必要に応じて表示部36に表示される。もちろん、そのような演算以外にも各種の演算を行うことが可能であり、本実施形態によれば図1に示すような複合的な画像を表示可能であるので、様々な計測用途に適合することが可能となる。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、疾病診断上、有益な情報を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る表示例を示す説明図である。
【図2】 本発明に係る計測方法を説明するための図である。
【図3】 本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 プローブ、12 送受信部、14 Bモード画像形成部、16 画像合成部、18 ドプラ情報処理部、20 カラードプラMモード画像形成部、24速度補正部、30 速度曲線作成部、32 マーカー設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 超音波ビームを走査して走査面を形成し、受信信号を出力する超音波送受波手段と、前記受信信号に基づいてドプラ情報を演算するドプラ処理手段と、前記走査面内において少なくとも1つのMモード用ラインを指定するためのライン指定手段と、前記Mモード用ライン上のドプラ情報の時間変化を表したカラードプラMモード画像を形成するカラードプラMモード画像形成手段と、前記Mモード用ライン上において少なくとも1つのサンプル部位を指定するためのサンプル部位指定手段と、前記サンプル部位のドプラ情報の時間変化を表す速度曲線を生成する速度曲線生成手段と、前記カラードプラMモード画像及び前記速度曲線を互いの時間軸を一致させて合成し、これにより合成画像を形成する合成手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 請求項1記載の装置において、前記速度曲線生成手段は、前記ドプラ処理手段から出力されたドプラ情報に基づいて前記速度曲線を生成することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】 請求項1記載の装置において、前記Mモード用ライン及び前記サンプル部位がそれぞれ複数指定され、複数の合成画像が並んで表示されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】 請求項1記載の装置において、前記カラードプラMモード画像には前記サンプル部位の位置を示すマーカーが表示されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】 請求項1記載の装置において、前記サンプル部位に対応させて補正方位を設定するための手段と、前記サンプル点を通過する超音波ビームの方位と前記補正方位との間の角度に基づいて前記ドプラ情報を補正し、前記サンプル点における補正ドプラ情報を求める手段と、を含み、前記速度曲線生成手段は、前記補正ドプラ情報に基づいて速度曲線を生成することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】 請求項2記載の装置において、第1の速度曲線上において第1のパラメータ値を求める手段と、第2の速度曲線上において第2のパラメータ値を求める手段と、前記第1のパラメータ値と前記第2のパラメータ値に基づいて所定の評価値を演算する手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−170051(P2001−170051A)
【公開日】平成13年6月26日(2001.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−356450
【出願日】平成11年12月15日(1999.12.15)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】