説明

超音波診断装置

【課題】超音波を介して得られる情報を反映させた表示モデルを提供する。
【解決手段】超音波データ形成部16は、複数のエコーデータに基づいて対象組織の超音波データを形成する。表示モデル形成部18は、対象組織の超音波データとの相関関係に基づいて対象組織の標準モデルの形態を変化させて表示モデルを形成する。標準モデルは、標準モデル内における重要度に応じて優先順位がつけられた複数のセグメントによって構成されている。表示モデル形成部18は、超音波データとの相関関係に基づいて各セグメントごとに形態を決定し、優先順位に従って複数のセグメントの形態を決定することにより、標準モデルの形態を変化させて表示モデルを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、対象組織の表示モデルを形成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象組織に対して超音波を送受波して得られる複数のエコーデータから対象組織の超音波画像を形成する技術が従来からよく知られている。超音波画像は、診断のみならず手術の支援画像としても利用される。さらに、近年におけるインフォームドコンセントの普及に伴い、患者への病状の説明などに超音波画像を利用する場面も少なくない。
【0003】
超音波画像には、超音波画像に特有のスペックルノイズやグレーティングローブやシャドーなどが存在する。医師等の専門家であれば、これら超音波画像に特有の現象を十分に理解したうえで、超音波画像から得られる有効な情報を利用することができる。ところが患者等に専門的な現象を理解させて超音波画像を見せることは難しい。
【0004】
一方、患者等への説明において、例えば人体モデルや臓器モデルなどを利用することも考えられる。しかし、一般的な人体モデルや臓器モデルは、患者等から実際に得られる情報を反映させたものではないため、リアリティに欠ける面もある。
【0005】
こうした状況から、本願発明者は、超音波を介して患者等から得られる情報と患者等への説明に利用されるモデルとの融合について研究開発を進めてきた。
【0006】
ちなみに、特許文献1には、超音波診断装置などから得られる断層画像データと標準モデルとをマッチングさせて検査対象の結果画像を形成する旨の技術が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された技術は、患者等への説明のための表示モデルを積極的に意識したものではなく、また、後に説明するように本発明との間にはいくつもの技術的な相違が存在する。
【0007】
【特許文献1】特開2005−169120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、超音波を介して得られる情報とモデルとの融合についての研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、超音波を介して得られる情報を反映させた表示モデルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様の超音波診断装置は、対象組織を含む空間に対して超音波を送受波するプローブと、前記空間内において超音波ビームを走査するようにプローブを制御する送信部と、プローブから得られる信号を処理することにより前記空間内から複数のエコーデータを得る受信部と、前記複数のエコーデータに基づいて対象組織の実相データを形成する実相データ形成部と、対象組織の実相データとの相関関係に基づいて対象組織のモデルデータの形態を変化させて表示モデルを形成する表示モデル形成部と、形成された表示モデルに対応した画像を表示する画像表示部と、を有し、前記モデルデータは、モデルデータ内における重要度に応じて優先順位がつけられた複数のセグメントによって構成され、前記表示モデル形成部は、前記実相データとの相関関係に基づいて各セグメントごとに形態を決定し、前記優先順位に従って複数のセグメントの形態を決定することにより、前記モデルデータの形態を変化させる、ことを特徴とする。
【0010】
上記態様により、超音波を介して得られる実相データを反映させた表示モデルを形成することが可能になる。ちなみに、上記特許文献1には、モデルデータ内における重要度に応じた優先順位に従って複数のセグメントの形態を決定する旨などの特徴事項は記載されていない。
【0011】
望ましい態様において、前記モデルデータは、幹状部分から伸長される枝状部分を備え、枝状部分に含まれる複数のセグメントに対して、枝状部分に沿って幹状部分側から順に優先順位がつけられる、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい態様において、前記表示モデル形成部は、前記枝状部分が備える複数の分岐部分と前記実相データから検出される複数の分岐位置とを互いに対応付けることにより、前記実相データを基準として前記モデルデータを位置合わせする、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい態様において、前記表示モデル形成部は、前記実相データに対して細線化処理を施すことにより得られる細線化データに基づいて前記実相データから複数の分岐位置を検出する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい態様において、前記表示モデル形成部は、前記実相データとの間の相関値が大きくなるように各セグメントに移動処理と拡大縮小処理を施して各セグメントの形態を決定する、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい態様において、前記モデルデータを構成する複数のセグメントの各々には、対象組織内における部位を示す名称情報が対応付けられており、各セグメントの名称情報に基づいて、対象組織の画像内において部位に応じた名称を表示する、ことを特徴とする。
【0016】
望ましい態様において、前記各セグメントには、前記名称情報に加えて、そのセグメントの配置状態を示す配置情報が対応付けられており、対象組織の画像内において部位の位置が指定され、各セグメントの配置情報に基づいて当該指定された位置に対応するセグメントが特定され、特定されたセグメントの名称情報に応じた名称を対象組織の画像内に表示する、ことを特徴とする。
【0017】
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、前記実相データに基づいて形成される対象組織の画像内に前記名称を表示する、ことを特徴とする。望ましい態様において、前記超音波診断装置は、前記モデルデータに基づいて形成される表示モデルに対応した画像内に前記名称を表示する、ことを特徴とする。
【0018】
また、上記目的を達成するために、本発明の好適な態様の表示モデル形成装置は、対象組織を含む空間に対して超音波を送受波することにより得られる複数のエコーデータに基づいて対象組織の実相データを形成する実相データ形成部と、対象組織の実相データとの相関関係に基づいて対象組織のモデルデータの形態を変化させて表示モデルを形成する表示モデル形成部と、を有し、前記モデルデータは、モデルデータ内における重要度に応じて優先順位がつけられた複数のセグメントによって構成され、前記表示モデル形成部は、前記実相データとの相関関係に基づいて各セグメントごとに形態を決定し、前記優先順位に従って複数のセグメントの形態を決定することにより、前記モデルデータの形態を変化させる、ことを特徴とする。
【0019】
上記表示モデル形成装置は、例えばコンピュータで実現される。つまり、超音波診断装置で得られた複数のエコーデータをコンピュータに取り込むシステムを形成し、表示モデル形成装置の機能をそのコンピュータで実現させる。例えば、上記表示モデル形成装置の動作に対応したプログラムをコンピュータに読み込ませることにより、コンピュータを表示モデル形成装置として機能させることができる。ちなみに、そのプログラムは、例えば、ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶され、これらの記憶媒体を介してコンピュータに読み込まれる。あるいは、ネットワークなどを介してプログラムがコンピュータに提供されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、超音波を介して得られる実相データを反映させた表示モデルを形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0022】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示す機能ブロック図である。プローブ10は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波を送受波する。送信部12は、対象組織を含む三次元空間内で超音波ビームを走査するようにプローブ10を送信制御する。受信部14は、プローブ10から得られる信号を処理することにより、対象組織を含む三次元空間内から複数のエコーデータを収集する。収集された複数のエコーデータは、例えばメモリなどに格納される。
【0023】
超音波データ形成部16は、三次元空間内から収集された複数のエコーデータに基づいて対象組織を含んだ三次元の超音波データ(対象組織の実相データ)を形成する。プローブ10がコンベックスタイプの探触子であれば、三次元の超音波データは、例えば、超音波ビームの主走査方向θ、これに直交する副走査方向φ、および超音波探触子の当接面の曲率中心からの距離rによる極座標系(θ,φ,r)に対応した三次元データ空間内のアドレスに対応したデータとなる。超音波データの座標系については、超音波ビームのビーム方向や走査方向に対応した極座標系から、他の座標系、例えば直交座標系(x,y,z)に変換されてもよい。その場合の三次元の超音波データは、例えば直交座標系(x,y,z)に対応した三次元データ空間内のアドレスに対応したデータとなる。
【0024】
表示モデル形成部18は、予め用意されている対象組織についての標準モデルを利用して、対象組織についての表示モデルを形成する。表示モデル形成部18は、超音波データ形成部16において形成された三次元の超音波データ(対象組織の実相データ)との相関関係に基づいて標準モデルの形態を変化させて表示モデルを形成する。
【0025】
表示画像形成部20は、表示モデル形成部18において形成された表示モデルから、対象組織のモデル画像を形成する。また、表示画像形成部20は、超音波データ形成部16において形成された三次元の超音波データから、対象組織の超音波画像を形成してもよい。表示画像形成部20において形成された対象組織のモデル画像や超音波画像は、モニタなどの表示部22に表示される。
【0026】
このように、本実施形態においては、超音波を介して得られた三次元の超音波データとの相関関係に基づいて、標準モデルの形態を変化させて対象組織の表示モデルが形成される。そこで、図2から図5を利用して、本実施形態における表示モデルの形成について詳述する。なお、既に図1に示した部分については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0027】
図2は、超音波データと標準モデルを説明するための図である。図2(I)には、対象組織の一例である肝臓内の血管から得られる三次元の超音波データが図示されており、図2(II)には、肝臓内の血管に対応した標準モデルが図示されている。
【0028】
患者等の肝臓内の血管を含む三次元空間内から複数のエコーデータを収集し、例えば二値化処理などによりエコーレベルの比較的小さい血管部分(血流部分)を抽出すると、図2(I)に示すように、血管の構造を反映させた三次元の超音波データが得られる。三次元の超音波データは、患者等の血管の構造を直接的に反映させたものであるため、医師等による診断においては極めて有用なデータである。
【0029】
しかし、超音波データから直接的に得られる超音波画像内には、例えばスペックルノイズやグレーティングローブやシャドーなどが存在する。医師等の専門家であれば、これら超音波画像に特有の現象を十分に理解したうえで、超音波画像から得られる有効な情報を利用することができる。ところが、患者等に対する病状の説明などにおいて、患者等に対して超音波画像を見せる場合、超音波に特有の現象を患者等に理解させて超音波画像を見せることは難しい。
【0030】
そこで、本実施形態においては、図2(II)に示す標準モデルを用いて、患者等に見せるための表示モデルを形成する。標準モデルは、およそ対象組織に合った形状となっており、対象組織が肝臓内の血管の場合には、例えば、図2(II)に示す形状の標準モデルとなる。標準モデルは、複数のセグメントによって構成されており、各セグメントには、標準モデル全体の中での重要度に応じて優先順位がつけられている。図2(II)では、複数のセグメントに対して、1,2,3,・・・の順に優先順位がつけられている。また、標準モデルは、優先順位1,2,3のセグメントからなる幹状部分と、優先順位4,5,6,・・・のセグメントからなる枝状部分を備えている。枝状部分においては、幹状部分側から順に優先順位がつけられている。
【0031】
本実施形態においては、表示モデル形成部18が、図2(I)に示す超音波データとの相関関係に基づいて図2(II)に示す標準モデルの形態を変化させて対象組織(血管)の表示モデルを形成する。
【0032】
図3は、本実施形態における表示モデルの形成処理を説明するためのフローチャートである。また、図4および図5は、図3のフローチャートの各ステップにおいて実行される処理を説明するための図である。以下、図4および図5を適宜利用して、図3のフローチャートに沿って各ステップの処理を説明する。
【0033】
まず、患者等の肝臓内の血管を含む三次元空間内から複数のエコーデータが収集され、二値化処理などによりエコーレベルの比較的小さい血管部分(血流部分)が抽出され、肝臓内の血管に関する三次元の超音波データが形成される(S301)。これにより、例えば図4(A)に示す超音波データが形成される。なお、この段階で、二値化処理前の三次元空間内の各エコーデータの大きさと輝度値とを対応付けた三次元の超音波画像データを形成してもよい。
【0034】
三次元の超音波データが形成されると、標準モデルを対応付けるための基準位置が設定される(S302)。例えば、血管についての二次元または三次元の超音波画像を利用してユーザが基準位置を設定する。基準位置は、超音波データに標準モデルを対応付ける際の目安となる位置であり、例えば標準モデルの優先順位1のセグメントに対応した位置である。基準位置は、例えば複数のセグメントに対応するように、複数設定されてもよい。
【0035】
次に、三次元の超音波データから複数の分岐位置が検出される(S303)。表示モデル形成部18は、図4(A)の超音波データに対して細線化処理を施すことにより、図4(B)の細線化データを形成し、細線化データに基づいて血管の分岐位置を検出する。細線化処理では、図4(A)の血管のデータの表面が血管の内側に向かって徐々に削られ、線状の(例えば太さが1画素分の)血管の細線化データが形成される。その細線化データの分岐を抽出することにより、図4(B)に示すように、セグメント7に対応する分岐位置やセグメント10に対応する分岐位置などが検出される。
【0036】
そして、基準位置や分岐位置に基づいて、標準モデル全体を移動させて血管の超音波データに対して標準モデルが位置合わせされ、また、血管の超音波データの大きさに合わせて標準モデル全体が拡大縮小される(S304)。つまり図4(C)に示すように、細線化データから検出された分岐位置と標準モデルの分岐部分(例えばセグメント7,10)とを互いに対応付けるように、標準モデル全体を移動(平行移動や回転移動)させ、必要に応じて標準モデルを拡大縮小させる。
【0037】
さらに、標準モデル全体の移動と拡大縮小の後に、標準モデルと超音波データとの相関値が算出される(S305)。そして、S306を介したループ処理により、標準モデル全体の移動と拡大縮小を徐々に変化させて複数回に亘って実行し、各回ごとに相関値が算出され、相関値が最大値となった場合にS306を介したループ処理が終了する。これにより、図4(D)に示すように、血管の超音波データと標準モデル全体が概ね一致するように対応付けられて、標準モデル全体の移動と拡大縮小が終了する。
【0038】
標準モデル全体の移動と拡大縮小が終了すると、標準モデルを構成する複数のセグメントから、優先順位に従って1つのセグメントが選択される(S307)。そして、選択されたセグメントに対して移動(平行移動や回転移動)処理と拡大縮小処理を実行し(S308)、その処理後のセグメントと超音波データとの相関値が算出される(S309)。
【0039】
そして、S310を介したループ処理により、選択されたセグメントについての移動と拡大縮小を徐々に変化させて複数回に亘って実行し、各回ごとに相関値が算出され、相関値が最大値となった場合にS310を介したループ処理が終了する。これにより、選択されたセグメントが血管の超音波データと概ね一致するように対応付けられる。
【0040】
さらに、S311を介したループ処理により、優先順位に従ってセグメントの選択が繰り返されて、各セグメントごとに超音波データへの対応付けが行われる。図5(E)から図5(J)は、優先順位に従ってセグメントの選択が繰り返されて、各セグメントごとに超音波データへの対応付けが行われる様子を示している。
【0041】
まず、図5(E)に示すように、優先順位に従って、セグメント1から3の順に各セグメントの移動と拡大縮小が行われて超音波データに対応付けられる。セグメント1から3は、標準モデルの幹状部分のセグメントである。次に、図5(F)に示すように、優先順位に従って、セグメント4から6の順に各セグメントの移動と拡大縮小が行われる。図5(G)には、セグメント14まで移動と拡大縮小が行われた様子が示されている。
【0042】
さらに、図5(H)に示すように、セグメント7において分岐されたセグメント15から17についての移動と拡大縮小が行われ、また、図5(I)に示すように、セグメント18から20についての移動と拡大縮小が行われ、そして、図5(J)に示すように、セグメント21から23についての移動と拡大縮小が行われる。
【0043】
図5(J)においては、図示された全てのセグメントについての移動と拡大縮小が終了し、その結果、複数のセグメントによって形成されるモデルが、血管の超音波データとほぼ一致する程度にまで変形されている。もちろん、図5において図示されていないセグメントについても、優先順位に従って、各セグメントごとに移動と拡大縮小が行われる。そして全てのセグメントについての処理が終了すると、図3のフローチャートが終了し、標準モデル全体が、血管の超音波データとほぼ一致する程度にまで変形され、変形後のモデルが表示モデルとして表示部22に表示される。
【0044】
このように、本実施形態によれば、患者等の実際の血管の形態を直接的に反映させた超音波データに基づいて、標準モデルが超音波データにほぼ一致する程度にまで変形されて表示モデルが形成される。そのため、その表示モデルは、患者等の個人ごとの特徴を反映させたものとなり、例えば患者等に対する病状の説明などにおいて、リアリティに富んだ説得力のある画像となる。
【0045】
さらに、標準モデルを構成する複数のセグメントの各々に、対象組織内の部位を示す名称情報とそのセグメントの配置状態を示す配置情報とを対応付けておき、各セグメントの名称情報と配置情報に基づいて、対象組織の画像内において部位に応じた名称を表示するようにしてもよい。そこで、部位に応じた名称の表示について説明する。なお、既に図1に示した部分については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0046】
図6は、各セグメントの名称情報と配置情報を説明するための図であり、図6には、各セグメントに対応付けられた名称情報と配置情報を示すテーブルが図示されている。図6に示すテーブルは、図2(II)の標準モデルに対応している。
【0047】
図6に示すテーブルにおいて、セグメント番号1〜3の各セグメントには、名称情報として「下大静脈」が対応付けられている。つまり、図2(II)の標準モデルに含まれるセグメント1〜3が下大静脈に対応していることを意味している。また、図6に示すテーブルにより、図2(II)の標準モデルに含まれる複数のセグメントのうち、セグメント4〜22が右肝静脈に対応付けられており、セグメント23〜42が中肝静脈に対応付けられており、セグメント43,44が左肝静脈に対応付けられている。
【0048】
さらに、図6に示すテーブルにおいて、各セグメントに対して配置情報が対応付けられている。配置情報には、各セグメントの位置を示す位置データpと、各セグメントの形状や大きさを示す形状データsが含まれている。位置データpは、例えば三次元データ空間内における各セグメントの座標である。各セグメントは立体的な形状であり三次元的な領域を占めるため、その領域を特定する複数の座標を位置データpとしてもよい。形状データsは、例えば各セグメントの立体的な形状と大きさを示すデータである。なお、位置データpにより各セグメントが占める領域が特定されるのであれば、形状データsを省略(位置データと形状データとを一体化)してもよい。
【0049】
図6に示すテーブルは、例えばメモリ等に記憶され、表示モデル形成部18や表示画像形成部20により参照される。既に説明したように、表示モデル形成部18は、超音波データ形成部16において形成された三次元の超音波データ(対象組織の実相データ)との相関関係に基づいて標準モデルの形態を変化させて表示モデルを形成する。例えば、図3のフローチャートに従って処理が進められ、各セグメントの形態を変化させ、標準モデル全体が血管の超音波画像とほぼ一致する程度にまで変形される。その形態の変化に応じて、図6に示すテーブルの配置情報が更新される。なお、変形前の配置情報をデフォルト値として残しつつ、変形後の配置情報を記憶するようにしてもよい。
【0050】
表示画像形成部20は、超音波データ形成部16において形成された超音波データに基づいて対象組織の超音波画像を形成する。表示画像形成部20において形成された超音波画像は表示部22に表示される。そして、その表示された超音波画像内において部位の位置が指定されると、その部位に応じた名称が表示される。
【0051】
図7は、超音波画像と部位の名称についての表示態様を示す図である。図7(I)は、断層画像の表示例を示している。図7(I)の断層画像が表示部22に表示されると、ユーザは、例えばトラックボールやマウスやタッチパネルなどの操作デバイスを利用して、断層画像上に表示されるポインタ(例えば矢印形状)を移動させ、名称を表示させたい部位の位置を指定する。部位の位置が指定されると、その位置に対応するセグメントが特定される。
【0052】
超音波画像との相関関係に基づいて各セグメントの形態を変化させ、標準モデル全体が血管の超音波画像とほぼ一致する程度にまで変形されている。そこで、図6に示すテーブルの変形後の配置情報が参照され、超音波画像(断層画像)内に指定されたポインタの位置に対応するセグメントが検索される。
【0053】
例えば、ポインタの位置がセグメント内にあれば、ポインタの位置に対応するセグメントとして、ポインタの位置を含んだセグメントが選定される。また、ポインタの位置がセグメント内になければ、例えば、ポインタの位置に最も近いセグメントが選定される。ポインタの位置に対応するセグメントを選定するにあたって、例えばヒット判定などの判定処理を利用してもよい。
【0054】
ポインタの位置に対応するセグメントが選定されると、そのセグメントの名称情報が参照され、その名称情報に対応した名称が例えば超音波画像上に表示される。図7(I)の例においては、ポインタの位置に対応するセグメントが右肝動脈であり、ポインタの近傍に「右肝動脈」の文字が表示されている。名称はポインタから離れた位置に表示されてもよいし、超音波画像外に表示されてもよい。
【0055】
図7(II)は、三次元画像の表示例を示している。三次元画像の場合においても、ポインタにより名称を表示させたい部位の位置が指定され、その位置に対応するセグメントが特定される。そして、特定されたセグメントの名称情報に対応した名称が表示される。図7(II)の例においては、ポインタの位置に対応するセグメントが右肝動脈であり、ポインタの近傍に「右肝動脈」の文字が表示されている。
【0056】
なお、図7においては、超音波画像上に名称を表示させる例を示したが、表示モデル形成部18において形成される表示モデル上に名称を表示させてもよい。
【0057】
超音波画像上に位置を指定し、その指定した位置(部位)の名称が表示されるため、例えば、各部位の位置と名称とを容易に認識することができる。そのため、例えば、医師等の検査者の負担を軽減させるなどの効果も期待できる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。例えば、図3や図7を利用して説明した処理の全てあるいは一部に対応したプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを表示モデル形成装置として機能させて表示モデルを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【図2】超音波データと標準モデルを説明するための図である。
【図3】表示モデルの形成処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】フローチャートの各ステップにおける処理を説明するための図である。
【図5】フローチャートの各ステップにおける処理を説明するための図である。
【図6】各セグメントの名称情報と配置情報を説明するための図である。
【図7】超音波画像と部位の名称についての表示態様を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
10 プローブ、12 送信部、14 受信部、16 超音波データ形成部、18 表示モデル形成部、20 表示画像形成部、22 表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象組織を含む空間に対して超音波を送受波するプローブと、
前記空間内において超音波ビームを走査するようにプローブを制御する送信部と、
プローブから得られる信号を処理することにより前記空間内から複数のエコーデータを得る受信部と、
前記複数のエコーデータに基づいて対象組織の実相データを形成する実相データ形成部と、
対象組織の実相データとの相関関係に基づいて対象組織のモデルデータの形態を変化させて表示モデルを形成する表示モデル形成部と、
形成された表示モデルに対応した画像を表示する画像表示部と、
を有し、
前記モデルデータは、モデルデータ内における重要度に応じて優先順位がつけられた複数のセグメントによって構成され、
前記表示モデル形成部は、前記実相データとの相関関係に基づいて各セグメントごとに形態を決定し、前記優先順位に従って複数のセグメントの形態を決定することにより、前記モデルデータの形態を変化させる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記モデルデータは、幹状部分から伸長される枝状部分を備え、枝状部分に含まれる複数のセグメントに対して、枝状部分に沿って幹状部分側から順に優先順位がつけられる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記表示モデル形成部は、前記枝状部分が備える複数の分岐部分と前記実相データから検出される複数の分岐位置とを互いに対応付けることにより、前記実相データを基準として前記モデルデータを位置合わせする、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記表示モデル形成部は、前記実相データに対して細線化処理を施すことにより得られる細線化データに基づいて前記実相データから複数の分岐位置を検出する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記表示モデル形成部は、前記実相データとの間の相関値が大きくなるように各セグメントに移動処理と拡大縮小処理を施して各セグメントの形態を決定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記モデルデータを構成する複数のセグメントの各々には、対象組織内における部位を示す名称情報が対応付けられており、
各セグメントの名称情報に基づいて、対象組織の画像内において部位に応じた名称を表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記各セグメントには、前記名称情報に加えて、そのセグメントの配置状態を示す配置情報が対応付けられており、
対象組織の画像内において部位の位置が指定され、各セグメントの配置情報に基づいて当該指定された位置に対応するセグメントが特定され、特定されたセグメントの名称情報に応じた名称を対象組織の画像内に表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の超音波診断装置において、
前記実相データに基づいて形成される対象組織の画像内に前記名称を表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載の超音波診断装置において、
前記モデルデータに基づいて形成される表示モデルに対応した画像内に前記名称を表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
対象組織を含む空間に対して超音波を送受波することにより得られる複数のエコーデータに基づいて対象組織の実相データを形成する実相データ形成部と、
対象組織の実相データとの相関関係に基づいて対象組織のモデルデータの形態を変化させて表示モデルを形成する表示モデル形成部と、
を有し、
前記モデルデータは、モデルデータ内における重要度に応じて優先順位がつけられた複数のセグメントによって構成され、
前記表示モデル形成部は、前記実相データとの相関関係に基づいて各セグメントごとに形態を決定し、前記優先順位に従って複数のセグメントの形態を決定することにより、前記モデルデータの形態を変化させる、
ことを特徴とする表示モデル形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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