超音波診断装置
【課題】映像化の対象とする反射波成分を高精度にて抽出することができ、好適な超音波画像を提供可能な超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】少なくとも第1の基本波と当該第1の基本波よりも高周波である第2の基本波とを有する送信超音波を生成するものであって、当該送信超音波を被検体に送信しその反射波を受信した場合、反射波に含まれる第1の基本波と第2の基本波との差音成分が第1の基本波の二次高調波と相互作用し、反射波に含まれる第1の基本波と第2の基本波との和音成分が第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と相互作用するように、第1の基本波及び第2の基本波のうちの少なくとも一方の周波数を制御し、相互作用を制御するために第1の基本波及び第2の基本波のうちの少なくとも一方の位相を制御して送信超音波を生成し、送信超音波を被検体に送信し、被検体から送信超音波の反射波を受信し、反射波に基づいて、超音波画像を生成する。
【解決手段】少なくとも第1の基本波と当該第1の基本波よりも高周波である第2の基本波とを有する送信超音波を生成するものであって、当該送信超音波を被検体に送信しその反射波を受信した場合、反射波に含まれる第1の基本波と第2の基本波との差音成分が第1の基本波の二次高調波と相互作用し、反射波に含まれる第1の基本波と第2の基本波との和音成分が第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と相互作用するように、第1の基本波及び第2の基本波のうちの少なくとも一方の周波数を制御し、相互作用を制御するために第1の基本波及び第2の基本波のうちの少なくとも一方の位相を制御して送信超音波を生成し、送信超音波を被検体に送信し、被検体から送信超音波の反射波を受信し、反射波に基づいて、超音波画像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療等の分野に用いられる超音波診断装置に関し、特に非線形減少を利用した映像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、血流イメージングが可能等の特長を有し、心臓、腹部、泌尿器、および産婦人科などで広く利用されている。
【0003】
この超音波画像診断装置においては、種々の撮影法による生体情報の映像化が可能である。例えばコントラストエコー法は、被検体の血管内に微小気泡(マイクロバブル)等からなる超音波造影剤を投与することで、超音波散乱エコーの増強を図るものである。この様な撮影法においては、受信信号から、映像化対象とするエコー信号成分を高S/N比で抽出することは、従来からの大きな課題となっている。そのため、各撮影方法においては、様々な工夫がなされている。
【0004】
具体的には、セカンドハーモニックイメージングにおいては、映像化対象とする二次高調波の帯域は、基本波の帯域によって決定される。従って、当該基本波帯域を調整することで、二次高調波の帯域幅を制御し、映像化に好適な信号を取得するようにしている。例えば、二次高調波を低周波側に広げるには、原理的には、基本波を低周波側に広げればよい。また、二次高調波を高周波側に広げる場合には、基本波を高周波側に広げればよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現実には、図21に示すように、低周波側に広げられる基本波の帯域は、プローブ帯域によって制限される。また、高周波側に広げた場合には、図21に示すように、受信信号において基本波と二次高調波との帯域が重なり合い、それぞれへの分離が困難となる場合がある。
【0006】
また、コントラストエコーにおいて、基本波と二次高調波との中間の帯域を映像化すると、組織と造影剤とのコントラストを高くすることが知られている。
【0007】
しかしながら、基本波と二次高調波とを常に完全に除去することは困難であり、映像化した場合、適切な生体情報を提供できない場合がある。例えば、図22に示すように1.5f0帯域付近を映像化する場合、映像化帯域に両者の一部が入り込み、高エコーを示す組織が造影時に一緒に映像化され、造影の判断を難しくすることがある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、差音成分の位相等を制御することで、当該差音成分と二次高調波とを相互作用させ、映像化の対象とする反射波成分を高精度にて抽出する超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0010】
実施形態に係る超音波診断装置は、少なくとも第1の基本波と当該第1の基本波よりも高周波である第2の基本波とを有する送信超音波を生成する手段であって、当該送信超音波を被検体に送信しその反射波を受信した場合、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との差音成分が前記第1の基本波の二次高調波と相互作用し、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との和音成分が前記第1の基本波の二次高調波及び前記第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と相互作用するように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の周波数を制御し、前記相互作用を制御するために前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の位相を制御して前記送信超音波を生成する送信超音波生成手段と、前記送信超音波を前記被検体に送信する送信手段と、前記被検体から前記送信超音波の反射波を受信する受信手段と、前記反射波に基づいて、超音波画像を生成する画像生成手段と、を具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置10の構成を示した図である。
【図2】図2(a)、(b)は、本実施形態に係る手法の概念を説明するための図である。
【図3】図3は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークをf2(f<f2)にもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。
【図4】図4(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図5】図5は、二つの周波数ピークf、f2を(f<f2)有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図7】図7は、例えば二つの周波数ピークf、3f有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。
【図8】図8(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図9】図9(a)、(b)は、サイン型の送信超音波を説明するための図である。
【図10】図10(a)、(b)は、コサイン型の送信超音波を説明するための図である。
【図11】図11は、本超音波診断装置10が実行する差音成分を利用した映像化手法の処理手順を示したフローチャートである。
【図12】図12(a)、(b)は、第1の実施形態において送信される超音波を説明するための図である。
【図13】図13は、周波数ピークf1を有する第1の基本波と、周波数ピークf2(f1<f2)を有する第2の基本波を足し合わせて生成される送信超音波のスペクトラムを示した図である。
【図14】図14は、図13に示す第1の及び第2の基本波から構成された超音波を被検体に送信した場合に得られる各反射波成分のスペクトラムを示した図である。
【図15】図15は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを3fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。
【図16】図16(a)、(b)、(c)は、第2の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図17】図17(a)、(b)は、第2の実施形態において送信される超音波を説明するための図である。
【図18】図18(a)は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを1.5fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。図18(b)は、図18(a)に示す第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波のスペクトラムを示した図である。図18(c)は、図18(a)に示す第1の基本波と第2の基本波との差音成分及び和音成分のスペクトラムを示した図である。図18(d)は、図18(b)に示す各二次高調波、図18(c)に示す差音成分及び和音成分が合成された反射波のスペクトラムを示した図である。
【図19】図19(a)は、図18(a)に示す第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波のスペクトラムを示した図である。図19(b)は、図18(a)に示す第1の基本波と第2の基本波との差音成分及び和音成分のスペクトラムを示した図である。図19(c)は、図19(a)に示す各二次高調波、図19(b)に示す差音成分及び和音成分が合成された反射波のスペクトラムを示した図である。
【図20】図20(a)は、第3の実施形態に係る手法によってエコー信号のスペクトラムを示したグラフである。図20(b)は、図20(a)の比較例である。
【図21】図21は、回路の非線形性に由来するノイズを示した図である。
【図22】図22(a)、(b)は、従来の手法にて2レートで超音波を送信した場合得られる反射波のスペクトラムの一部を示している。図22(c)は、差分処理によって得られるスペクトラムを示している。
【図23】図23(a)、(b)は、本実施形態に係る手法にて2レートで超音波を送信した場合得られる反射波のスペクトラムの一部を示している。図23(c)は、差分処理によって得られるスペクトラムを示している。
【図24】図24は、従来技術を説明するための図である。
【図25】図25は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態〜第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置10の構成を、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本超音波診断装置10は、超音波プローブ11、パルサ/アンプユニット13、波形制御部14、A/Dコンバータ15、検波ユニット16、信号処理部17、フィルタ処理部18、フィルタ処理部18Bモード処理部19、ドプラ処理部21、DSC23、表示部25、入力ユニット27を具備している。
【0014】
超音波プローブ11は、パルサからの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ11から被検体に超音波が送信されると、生体組織の非線形性により、超音波の伝播に伴って種々のハーモニック成分が発生する。送信超音波を構成する基本波とハーモニック成分は、体内組織の音響インピーダンスの境界、微小散乱等により後方散乱され、反射波(エコー)として超音波プローブ11に受信される。
【0015】
パルサ/アンプユニット13は、送信時において送信超音波を形成するため、波形制御部14による制御に基づいて所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)でレートパルスを繰り返し発生し、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を、各レートパルスに与える。パルサ/アンプユニット13は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ11に駆動パルスを印加する。
【0016】
また、パルサ/アンプユニット13は、受信時において、プローブ11を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。また、パルサ/アンプユニット13は、受信時において、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性(走査線)が決定される。
【0017】
なお、パルサ/アンプユニット13等において、例えばデジダルウェイブフォーマを使用し、これによって送信超音波の波形を決定する場合、一連の撮影において複合化等の処理が介在することにより、測定される受信信号に間接的なノイズ(基本波のもれ成分)が乗る場合がある。本超音波診断装置10は、この間接的ノイズを除去することが可能である。これについては、後で詳しく説明する。
【0018】
波形制御部14は、入力ユニット27からの指示、又は予め設定されたプログラム等に基づいて、例えば二つの基本波(第1の基本波、第2の基本波)から構成される送信超音波の波形を形成するように、パルサ/アンプユニット13を制御する。より具体的には、波形制御部14は、第2の基本波と第1の基本波との差音成分が、第1の基本波の二次高調波の周波数近傍に出現し当該二次高調波と相互作用(振幅を強め合う又は弱め合うこと。又は、差音成分と二次高調波のスペクトラムが重なり合う位相干渉を発生すること。)するように、第2の基本波の物理的条件(周波数、振幅、位相等)を制御する。
【0019】
A/Dコンバータ15は、パルサ/アンプユニット13から受けとったアナログ信号を、ディジタル信号に変換する。
【0020】
検波ユニット16は、A/Dコンバータ15から受けとった信号に90度位相のずれたリファレンス周波数を有する信号をそれぞれ乗じて直交検波行い、I、Q信号を得る。このI、Q信号は、受信信号からリファレンス周波数を減じた周波数を有する信号となる。なお、リファレンス周波数は、一般に超音波画像を生成する帯域の中心周波数に設定される。
【0021】
信号処理部17は、差分処理等の所定の信号処理を行う。より具体的には、信号処理部17は、コントラストエコーにおいて、時間差のあるフレーム同士の差分を演算することで組織像を消去し、造影剤エコー成分を抽出する。
【0022】
フィルタ処理部18は、所定の周波数帯域の反射波成分を減衰させ、所望の周波数帯域の反射波成分を抽出(フィルタリング)してBモード処理部19、又はドプラ処理部21に出力する複素ディジタルフィルタである。本実施形態では、例えばフィルタ処理部18は、第1の基本波に対応する二次高調波の周波数帯域近傍の反射波成分が少なくとも含まれるように、フィルタリングを実行する。
【0023】
Bモード処理部19は、フィルタ処理された受信信号に対して対数増幅等を施す。増幅された信号は、DSC23に送られ、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像として表示部25にカラー表示される。
【0024】
ドプラ処理部21は、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。血流情報はDSC23に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像として表示部25にカラー表示される。
【0025】
DSC23は、Bモード処理部19、ドプラ処理部21から入力した超音波スキャンの走査線信号列を、空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換し、さらにビデオフォーマット変換を行う。
【0026】
表示部25は、DSC23からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。また、造影剤を用いた場合には、造影剤の空間的分布、つまり血流或いは血液の存在している領域を求めた定量的な情報量に基づいて、輝度画像やカラー画像として表示する。
【0027】
入力ユニット27は、装置10の本体に接続され、オペレータからの各種指示・命令・情報を装置本体22にとりこむための、関心領域(ROI)の設定などを行うための(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)が設けられる。また、当該入力ユニット27を介して、送信超音波の送信条件をマニュアル的に入力することもできる。
【0028】
(差音成分)
次に、本映像化手法において利用される差音成分の発生原理について説明する。一般に、基本波をa・sinftとした場合、二乗の非線形の効果は(a・sinft)2として表すことができる。また、第1の基本波sinf1t、第2の基本波a・sinf2tとする送信超音波を使用する場合、その非線形効果は(sinf1t+a・sinf2t)2と表すことができ、次のように変形することができる。
【数1】
【0029】
ここで、最終行第1項は第1の基本波の二次高調波成分であり、第2項は第2の基本波と第1の基本波との差音成分に対応している。また、三行目において省略した項には、基本波成分、和音成分等が含まれている。
【0030】
本手法では、基本波の周波数、位相を制御することで当該差音成分と二次高調波成分の相互作用を制御し、映像化の対象とする反射波成分を高S/N比にて抽出する。なお、差音成分自体を抽出して映像化する手法は、例えば特願2001−110307に記載されているが、本文献には位相制御に関する記載はない。
【0031】
次に、本実施形態に係る、差音成分を利用した映像化手法について説明する。まず、本映像化手法の概念について、図2〜図8を参照しながら説明する。
【0032】
図2(a)は、二つの周波数ピークf1、f2(ただし、f1<f2)を有する超音波のスペクトラムを示した図である(以下、前者を第1の基本波、後者を第2の基本波と呼ぶことにする。)。図2(b)は、第1の基本波及び第2の基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合に得られる反射波(受信信号)のスペクトラムを示した図である。図2(b)に示すように、受信信号には、送信超音波を構成する周波数f1、f2の各基本波成分に対応する反射波の他に、生体伝播の非線形性により発生する反射波の差音成分(DC、f2−f1)、和音成分(2f1、2f2、f1+f2)が発生する。ここで、DCとは、ゼロ周波数を中心とした若干広がりのある帯域内の周波数成分である。また、周波数2f1、2f2の各和音成分は、それぞれ第1の基本波の二次高調波、第2の基本波の二次高調波に対応している。
【0033】
本実施形態に係る手法では、例えば第1の基本波の二次高調波成分と周波数f2−f1の差音成分とに注目する。すなわち、第2の基本波の周波数と位相とを制御することで、周波数f2−f1の差音成分を第1の基本波の二次高調波成分に同位相で重畳させる。これにより、当該第1の基本波の二次高調波帯域付近の成分を増大させ映像化することで、有用な生体情報を得るものである。
【0034】
本手法によれば、この第1の基本波の二次高調波帯域付近の反射波成分の大きさを、当該二次高調波帯域より低周波側、高周波側、その両方の3つの形態によって制御することができる。以下、各形態について具体的に説明する。
【0035】
図3は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークをf2(f<f2)にもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。なお、f2は、3fよりも少し小さな値、例えば2.8f程度の値であるとする。当該スペクトラムを有する各基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合、図4(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図4(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図4(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。この反射波は、2fを中心周波数とする第1の基本波の二次高調波成分が低周波側に広げられ、そのピークを増大させたものと同等である。
【0036】
また、図5は、例えば二つの周波数ピークf、f2を(f<f2)有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。ただし、f2は、3fよりも大きな値、例えば3.2f程度の値であるとする。当該スペクトラムを有する超音波を被検体に送信した場合、図6(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図6(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図6(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。この反射波は、2fを中心周波数とする第1の基本波の二次高調波が高周波側に広げられ、そのピークを増大させたものと同等である。
【0037】
さらに、図7は、例えば二つの周波数ピークf、3f有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。ただし、3fをピークにもつ基本波は、図3のf1をピークにもつ基本波と図5のf2をピークにもつ基本波とを足し合わせたものである。当該スペクトラムを有する超音波を被検体に送信した場合、図8(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図8(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図8(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。この反射波は、2fを中心周波数とする第1の基本波の二次高調波が低周波側及び高周波側に広げられ、そのピークを増大させたものと同等である。
【0038】
(送信超音波)
次に、上記差音成分を出現させるための送信超音波について説明する。送信超音波は、サイン型とコサイン型とに分類することができる。また、それぞれの型において、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるもの(すなわち、二次高調波と同一の極性を持つ差音成分を発生させるもの)と、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるもの(すなわち、二次高調波と反対の極性を持つ差音成分を発生させるもの)とがある。以下、サイン型については図9(a)、(b)を参照し、コサイン型については図10(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0039】
図9(a)は、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるための、サイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の山(谷)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。一方、図9(b)は、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるための、サイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の谷(山)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。
【0040】
より具体的には、第1の基本波をΨ1=A1sin(2πωf1)、第2の基本波をΨ2=A2sin(2πωf2+θ)とした場合、第1の基本波と第2の基本波との強め合い又は弱め合いの条件は、初期位相θによって次のように表すことができる。
【0041】
すなわち、A1、A2>0とした場合、
(1)強め合う条件 θ=π
(2)弱め合う条件 θ=0 or 2π
一方、図10(a)は、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるための、コサイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の山(谷)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。一方、図10(b)は、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるための、コサイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の谷(山)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。
【0042】
より具体的には、第1の基本波をΨ1=A1cos(2πωf1)、第2の基本波をΨ2=A2cos(2πωf2+θ)とした場合、第1の基本波と第2の基本波との強め合い又は弱め合いの条件は、初期位相θによって次のように表すことができる。
【0043】
すなわち、A1、A2>0とした場合、
(1)強め合う条件 θ=0 or 2π
(2)弱め合う条件 θ=π
なお、本実施形態では、後述するように、二次高調波と差音成分とが強め合う場合について説明する。従って、図9(a)又は図10(a)に示す波形を有する送信超音波(より厳密には、各図に示した基本波を重ね合わせて得られる超音波。図12参照。)が、波形制御部14の制御のもと、パルサ/アンプユニット13によって生成され、プローブ11から送信される。また、後述するように、二次高調波と差音成分とが強め合う場合について説明する第2の実施形態においては、図9(b)又は図10(b)に示す波形を有する送信超音波(図17参照。)が、波形制御部14の制御のもと、パルサ/アンプユニット13によって生成され、プローブ11から送信される。
【0044】
(差音成分を利用した映像化手法)
次に、差音成分を利用した映像化手法を実行する場合における、本超音波診断装置10の動作について説明する。本実施形態は、直接的には第2の基本波の位相等を制御し、間接的には差音成分の位相を制御することで、第1の基本波の二次高調波成分を増大させるものである。この例は、例えば組織領域を画像化する場合等に実益がある。
【0045】
図11は、本超音波診断装置10が実行する差音成分を利用した映像化手法の処理手順を示したフローチャートである。同図において、まず、送信超音波の条件が自動的に設定される(ステップS1)。ここで、送信超音波の条件とは、第2の基本波と第1の基本波との差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数付近に出現させるための、各基本波の周波数、振幅、位相その他の物理的条件を意味する。なお、この送信超音波の条件としての各周波数は、ハーモニックモードのマルチ周波数として、予め設定されている。操作者は、目的毎に表示部25に表示された複数の推奨周波数の中から、入力ユニット27を介して任意に選択することができる。
【0046】
具体的には、ステップS1において、次のような設定が自動的に実行される。すなわち、、差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数の付近であり、かつ低周波数側に出現させたい場合(図3、図4参照)には、第1の基本波の周波数はfとして、第2の基本波の周波数は例えば2.8fとして設定される。一方、差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数の付近であり、かつ高周波数側に出現させたい場合(図5、図6参照)には、第1の基本波の周波数はfとして、第2の基本波の周波数は3.2fとして設定される。また、差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数の付近であり、かつ低周波数側及び高周波側に出現させたい場合(図7、図8参照)には、第1の基本波の周波数はfとして、第2の基本波の周波数は3fとして、設定される。また、極性、振幅については、二次高調波と差音成分とが強め合うように制御される。
【0047】
図12(a)は、n=6(nは波数)とした場合の各基本波の超音波パルスの例を示している。同図に示した第1の基本波に関するバースト波、第2の基本波に関するバースト波が足し合わされ、図12(b)に示す送信超音波が生成される。
【0048】
なお、ステップS1における各基本波の条件設定は、上述した自動設定の他、例えば、患者情報、撮影部位を含む診断情報、撮影モード選択等に基づいて、操作者がマニュアル設定する構成であってもよい。
【0049】
次に、図12(b)に示した送信超音波が被検体内に送信し(ステップS2)、その反射波をエコー信号として受信する(ステップS3)。このエコー信号は、周波数帯域が2f付近において、第1の基本波の二次高調波と差音成分とから構成されたピークを有するものとなっている。
【0050】
当該エコー信号は、増幅、遅延加算等の各処理を受けた後、フィルタ処理部18によってフィルタリングされる(ステップS4)。例えば、周波数2fを中心とした帯域(組織ハーモニックエコー成分が支配的な帯域)を通過させ、その前後の帯域は全て減衰させるようなフィルタリングを実行する。
【0051】
次に、フィルタリングされたエコー信号は、Bモード処理部19(又は、ドプラ処理部21)において所定の処理を受け(ステップS5)、超音波画像として表示部25に表示される(ステップS6)。
【0052】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0053】
本実施形態に係る手法によれば、送信超音波を構成する基本波の差音成分の位相等を制御することで、当該差音成分と二次高調波成分とが強め合うように相互作用させることができる。これにより、二次高調波成分をその低周波側若しくは高周波側、又はその両方に大きくすることができ、映像化の対象とする反射波成分を増大せることができる。その結果、従来のセカンドハーモニックイメージングと比較して、帯域設計の自由度を広げることができる。また、映像化信号を高S/N比にて抽出することができ、医療の現場において、有益な生体情報を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る超音波診断装置によれば、送信超音波を構成する基本波の差音成分の位相等は、マニュアル設定の他、診断情報等によって自動的に設定することができる。また、各基本波周波数の推奨する組み合わせが目的毎に表示されるので、差音成分と二次高調波成分とを相互作用させるための周波数等の設定を簡便かつ迅速に行うことができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の基本波の二次高調波成分を除去・低減するように差音成分の位相を制御するものである。。この例は、例えば特願2001−343577号に開示されているように、コントラストエコーにおいて、第1の基本波周波数の略1.5倍帯域において組織像と造影剤エコーとを分離し、造影剤エコーを映像化する場合等に実益がある。
【0056】
差音成分を利用した映像化手法の一般的な概念について、図13、図14を参照しながら説明する。
【0057】
図13は、周波数ピークf1を有する第1の基本波と、周波数ピークf2(f1<f2)を有する第2の基本波とを足し合わせて生成される送信超音波のスペクトラムを示した図である。なお、この第1の基本波、第2の基本波は、例えば図9(b)、図10(b)に示す弱め合いの関係を持つものである。
【0058】
また、図14は、図13に示す第1の及び第2の基本波から構成された超音波を被検体に送信した場合に得られる各反射波成分のスペクトラムを示した図である。図14に示すように、送信超音波を構成する周波数f1、f2の各基本波成分に対応する反射波の他に、生体伝播の非線形性により発生する反射波の差音成分(DC、f2−f1)、和音成分(2f1、2f2、f1+f2)が発生する。ここで、周波数2f1、2f2の各和音成分は、それぞれ第1の基本波の二次高調波、第2の基本波の二次高調波に対応している。
【0059】
第2の実施形態では、周波数f2−f1と2f1とが等しくなるように送信周波数f2を制御することで、第1の基本波の二次高調波成分を周波数f2−f1の差音成分によって相殺する。これにより、例えばコントラストエコーにおいて、2f1帯域付近の組織ハーモニック成分を取り除くことができ、造影剤からの反射波成分を高い精度にて抽出することができる。
【0060】
図15は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを3fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。当該スペクトラムを有する各基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合、図16(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図16(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図16(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。なお、第1の基本波の二次高調波は、理想的には差音成分によって相殺される(0となる)。
【0061】
次に差音成分を利用した映像化手法を実行する場合における、本超音波診断装置10の動作について、図11を参照しながら説明する。
【0062】
まず、送信超音波の条件が、入力ユニット27を介して又は自動的に設定される(ステップS1)。
【0063】
図17(a)は、n=6とした場合の各基本波の超音波パルスの例を示している。同図に示した第1の基本波に関する第1のバースト波と、第2の基本波に関する第2のバースト波(ただし、位相は図12(b)の場合と反転。)とが足し合わされ、図17(b)に示す送信超音波が生成される。
【0064】
なお、当該ステップにおける送信超音波の条件設定は、第1の実施形態で述べた自動設定、又は選択設定によって実現されてもよい。
【0065】
以下、第1の実施形態と略同様の処理を行うことにより、差音成分によって二次高調波が相殺された、反射波成分を高い精度にて抽出することができる。この当該抽出された造影剤エコーを映像化することで、有用な生体情報を迅速かつ簡便に得ることができる。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の基本波と第2の基本波との和音成分を、第1の基本波又は第2の基本波の二次高調波と相互作用させることにより、広い帯域での画像化、高S/N比の画像化等を実現するものである。
【0067】
以下、和音成分を二次高調波とが重畳し強め合う相互作用を例に、図18〜図20を参照しながら説明する。
【0068】
図18(a)は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを1.5fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。当該スペクトラムを有する各基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合、図18(b)に示すスペクトラムを有する第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波と、図18(c)に示すスペクトラムを有する差音成分及び和音成分とが発生する。従って、これらが合成された反射波を受信すると、そのスペクトラムは、例えば図18(d)に示すように、広い帯域のスペクトラムを有するものとなる。
【0069】
また、超音波送信によって得られる二次高調波、差音成分、和音成分は、は図19(a)、図19(b)に示すように、図18(b)、図18(c)に比して広い帯域に出現する場合がある。係る場合、これらが合成された反射波を受信すると、そのスペクトラムは、例えば図19(c)に示すように、差音成分とも重畳した広い帯域のスペクトラムを有するものとなる。
【0070】
次に、和音成分を利用した映像化手法を実行する場合における、本超音波診断装置10の動作について、図11を参照しながら説明する。本実施形態は、直接的には第1の基本波の周波数、第2の基本波の位相及び周波数を制御し、間接的には和音成分の周波数、位相を制御することで、反射波を高帯域化するものである。この例は、例えばパルスインバージョンによって取り出したハーモニック成分に対し、周波数コンパウンドを行って画像化する場合等に実益がある。
【0071】
まず、図11において、送信超音波の条件が自動的に設定される(ステップS1)。ここで、送信超音波の条件とは、第2の基本波と第1の基本波との和音成分を、第1の基本波の二次高調波の高周波側近傍に出現させるための、各基本波の周波数、振幅、位相その他の物理的条件を意味する。なお、この送信超音波の条件としての各周波数は、差音成分の場合と同様に、ハーモニックモードのマルチ周波数として、予め設定されている。
【0072】
具体的には、ステップS1において、次のような設定が自動的に実行される。すなわち、和音成分を、第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波を重畳させるため、第1の基本波の中心周波数を例えばf1=1.6MHz、第2の基本波の中心周波数を例えばf2=2.5MHzとして設定する。また、極性、振幅については、二次高調波と和音成分とが強め合うように制御される。
【0073】
次に、送信超音波が被検体内に送信され(ステップS2)、その反射波をエコー信号として受信する(ステップS3)。
【0074】
図20(a)は、上記基本波から構成される送信超音波を、極性を反転させて2レートで送信し(パルスインバージョン送信)、得られたエコー信号のスペクトラムを示したグラフである。同図に示すように、和音成分と二次高調波とを相互作用させることで、エコー信号中のハーモニック(差音成分、第1の基本波の二次高調波、和音成分がコンパウンドされたもの。以下、「ハーモニックコンパウンド成分」と呼ぶ。)のスペクトラムCを、広い帯域に出現させることができる。
【0075】
一方、図20(b)は、同図中心周波数f=2.1MHzの超音波を極性を反転させて2レートで送信し(パルスインバージョン送信)、得られたエコー信号のスペクトラムを示したグラフである。この超音波送信においては、和音成分と二次高調波とは相互作用していない。同図から解るように、エコー信号中のハーモニックコンパウンド成分Cは、和音成分と二次高調波とが相互作用する図20(a)の場合よりも狭い帯域幅となって出現する。従って、距離分解能が十分でなく、スペックル除去能も高くない。
【0076】
得られたハーモニックコンパウンド成分は、増幅、遅延加算等の各処理を受けた後、フィルタ処理部18によってフィルタリングされる(ステップS4)。このフィルタリングは、例えば図20(a)に示す様に、比較的広い帯域幅で行うことができる。
【0077】
次に、フィルタリングされたエコー信号は、Bモード処理部19(又は、ドプラ処理部21)において所定の処理を受け(ステップS5)、超音波画像として表示部25に表示される(ステップS6)。
【0078】
本実施形態に係る手法によれば、第1の基本波又は第2の基本波の周波数、位相等を制御することで、和音成分と二次高調波成分とが強め合うように相互作用させることができる。これにより、第1の基本波の二次高調波をその高周波側に、第2の基本波の二次高調波をその低周波側に大きくすることができ、映像化の対象とする反射波成分が増大することになる。その結果、距離分解能を向上させることができる。また、コンパウンドを行う周波数差が大きいため、効果の高いスペックル除去を実現することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、和音成分と二次高調波とが重畳し強め合う相互作用を例に説明を行った。これに対し、和音成分を二次高調波とが相殺し合う相互作用を発生させることも可能である。そのためには、例えば第1及び第2の基本波に図9(b)、図10(b)に示すような弱め合う関係を持たせるように、基本波の少なくとも一方の位相を制御すればよい。
【0080】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第1の実施形態で述べた差音成分の位相制御、又は第3の実施形態で述べた和音成分の位相制御を、ドプラモードにおいて実行するものである。以下、第1の実施形態にて説明した差音成分の位相制御(すなわち、差音成分と二次高調波とが強め合う場合)を例に、図1を参照しながら説明する。
【0081】
一般に、ドップラモードにおいては、一の走査線に対して複数回の超音波送受信が実行される。波形制御部14は、この一の走査線に対する各送信において、二次高調波と強めあう差音成分を発生させる超音波を送信する。この送信超音波は、既述の様に、互いの山同士(又は谷同士)とが同位相となっている第1の基本波と第2の基本波とを重ね合わせて生成されたものである。
【0082】
各送信超音波に対応する各受信エコー信号が受信されると、信号処理部17は、各受信エコー信号から、二次高調波帯域の信号成分(すなわち二次高調波に差音成分が重畳した信号成分)を抽出する。
【0083】
ドプラ処理部21は、抽出された二次高調波帯域の信号成分に基づいて、ドプラ効果による造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等を情報を多点について求める。これらの情報は、DSC23に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、及びこれらを組み合わせたドプラ画像として、表示部25にカラー表示される。
【0084】
以上、ドプラモードにおいて、差音成分と二次高調波とを互いに強め合うように相互作用させる場合を例に説明した。これに対し、差音成分と二次高調波とを互いに弱め合うように相互作用させる場合には、一の走査線に対する複数回の超音波送信のそれぞれにおいて、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させる超音波を送信する。この送信超音波は、既述の様に、一方の山と一方の谷とが同位相となっている第1の基本波と第2の基本波とを重ね合わせたものとする。
【0085】
以上述べた構成によれば、ドプラモードにおいても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態は、例えばコロナリー(冠動脈)等の画像化において、特に実益がある。
【0086】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態では、差音成分又は和音成分の位相、振幅、極性を制御することで、当該差音成分により基本波のもれを相殺するものである。この基本波のもれは、当該超音波診断装置10に内在する特性によって生ずるものである。以下、差音成分を利用する場合を例として説明する。
【0087】
一般に、装置に使用される各電気・電子回路は、制御等の観点から、その入力と出力とが線形であることが好ましい。しかしながら、各回路は厳密な意味において線形な入力−出力関係を有しておらず、非線形性を内在している。特に、ディジタル回路を使用する場合には、アナログ信号への変換における複合化等により、回路の非線形性を誘発する。
【0088】
本超音波診断装置10でも、例えば送受信回路15において使用されるデジタルウェイブフォーマ、その他の各構成要素において使用される回路の非線形性により受信信号が影響を受け、図21に示すような基本波のもれが誘発される場合がある。
【0089】
本実施形態に係る手法では、この回路の非線形性や精度限界に由来する基本波のもれを差音成分によって除去又は減少させる。例えば図21に示すノイズ成分を除去する場合、超音波送信において、差音成分が1.5f付近に出現するように、周波数ピークをfとする第1の基本波と周波数ピークを2.5fとする第2の基本波からなる超音波を送信する。このとき、第2の基本波の振幅は、第1の基本波との差音成分と回路の非線形性に由来するノイズ成分とが略等しくなるように、かつ第2の基本波の極性は第1の基本波の極性と反転するように設定する(第1の実施形態参照)。
【0090】
この様な構成により、差音成分を、回路の非線形性に由来するノイズ成分の除去を望む帯域に、相当のスペクトラムで出現させることがでる。従って、受信信号においては、ノイズ成分と差音成分とが相殺することになり、当該ノイズ成分を除去又は低減させることができる。
【0091】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明の技術的思想を、コントラストエコーにおいて複数回の超音波送受信を行い、モーションアーチファクトの削除を目的として、サブトラクション法により造影剤エコーを抽出する場合において利用するものである。以下、差音成分を利用する場合を例として説明する。
【0092】
一般に、受信する反射波は、被検体の体動による影響を受ける。これは、例えば複数回の超音波送受信を用いた映像法において、モーションアーチファクトとして画像上に現れる。本実施形態では、差音成分の位相等を制御することで、各受信超音波において発生する基本波のもれ成分を除去又は低減し、且つ異なるレート間でエコー信号の差分をとることで、モーションアーチファクト等のノイズ成分を除去又は低減する。
【0093】
すなわち、まず、周波数ピークfを有する第1の基本波と、周波数ピークf2(f<f2)を有する第2の基本波とを足し合わせて生成される送信超音波を、所定のタイミングにて少なくとも2レートで送信する。この送信超音波は、前記二次高調波と前記差音成分との位相が逆転するように生成される。また、以下の説明では、送信超音波を2レートで送信するものとする。
【0094】
各送信超音波に対応する各エコー信号を受信すると、増幅、A/D変換等の所定の処理が施される。ここで注目すべきは、各エコー信号においては、差音成分により基本波のもれ成分が除去又は低減されている点である。
【0095】
受信されたエコー信号は、増幅、A/D変換等の所定の処理を受け、信号処理部17によって異なるレート間で差分(サブトラクション)され、造影剤エコー信号が抽出される。これは、次の原理に基づく。
【0096】
すなわち、各レートにおいて得られた受信信号において、造影剤エコー成分以外は、組織に由来する成分である。一方、造影剤エコー成分は体液中の造影剤に由来するものである。この造影剤は送信超音波によって変化(破裂等)するため、造影剤エコー成分のレート間の時間における信号変移は、組織に由来する成分と比較して大きいと考えられる。従って、例えば2レート目の受信信号から1レート目の受信信号を減算(サブトラクション)すれば、組織に由来する成分は体動に由来する成分のみとなり、これよりも高いスペクトラムを有する造影剤エコー成分が相対的に強調される。これを画像化することで、有効な血流情報を画像化することができる。
【0097】
本実施形態では、差分処理によって、画像中のモーションアーチファクトの低減を実現することができる。以下、モーションアーチファクトが、例えば画像化帯域における組織に由来する信号の10%の割合で出現する場合を例として、図22及び図23を参照しながら説明する。
【0098】
図22(a)は、従来の手法にて(すなわち、特定の差音成分の制御を行うことなく)2レートで超音波を送信した場合に、1レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。また、図22(b)は、2レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。図22(a)、(b)からわかるように、第1の基本波の高周波側及び高調波の低周波側の基本波のもれ成分に上、レート間の時間差の体動によって発生したエコー信号が重畳している。
【0099】
また、図22(b)の信号から図22(a)の信号を減算した場合には、図22(c)に示すように、1レート目と2レート目との間に発生した体動を原因とするノイズ成分(モーションアーチファクト)が残留する。今の場合、このモーションアーチファクトは、基本波のもれ成分を含んだ組織に由来する信号の10%程度発生することになる。
【0100】
一方、図23(a)は、本実施形態に係る手法にて2レートで超音波を送信した場合に、1レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。また、図23(b)は、2レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。図23(a)からわかるように、差音成分との弱め合いにより基本波のもれ成分は従来よりも低減されており、図23(b)からわかるように、レート間の時間差の体動によって発生したエコー信号のみ、第1の基本波の高周波側及び高調波の低周波側に出現している。
【0101】
また、図23(b)の信号から図23(a)の信号を減算した場合には、図23(c)に示すように、1レート目と2レート目との間に発生した体動を原因とするノイズ成分(モーションアーチファクト)が残留する。今の場合、このモーションアーチファクトは、基本波のもれ成分が除去された組織に由来する信号の10%程度発生することになる。従って、モーションアーチファクトは、従来の手法と比較して低くすることができる。
【0102】
以上述べた様に、本実施形態に係る手法では、まず、差音成分によって受信信号に含まれる基本波のもれ成分を除去又は低減させた後、これを用いてレート間での減算処理を行い、造影剤エコー信号を抽出する。従って、基本波のもれ成分自体、及びモーションアーチファクトに対する基本波のもれ成分の影響を除去することができ、組織に由来する信号を差分処理によって高精度で除去することができる。その結果、従来に比して、造影剤エコー成分を相対的により強調させることができ、有効な血流情報を画像化することができる。
【0103】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変形例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば以下に示す(1)〜(3)のように、その要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0104】
(1)各実施形態においては、二つの基本波に基づいて生成される差音成分を利用して、映像化に好適なエコー信号を抽出する場合を例とした。これに対し、二以上の基本波に基づいて生成される差音成分を利用して、同様の作用を実現する構成であってもよい。
【0105】
(2)各実施形態においては、二つの基本波のうち、周波数の高い第2の基本波の周波数を制御することで、当該二つの基本波に基づいて生成される差音成分の周波数を制御した。しかし、これに限定する趣旨ではなく、使用する基本波の周波数帯域に応じて、周波数の低い第1の基本波を制御することで、差音成分の周波数を制御する構成であってもよい。
【0106】
(3)第1及び第2の実施形態において、例えば位相を反転させた2レートの送信を行い、各レートに対応する受信信号を加算することで、各基本波成分を除去する構成であってもよい。この様な構成によれば、第1の実施形態においては、差音成分の重畳及び加算処理により、映像対象とされる二次高調波成分をさらに大きくすることができる。また、第2の実施形態においては、加算処理により、原理的に二倍の二次高調波を取得することができる。
【0107】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…超音波診断装置、11…超音波プローブ、13…パルサ/アンプユニット、15…A/Dコンバータ、16…検波ユニット、17…信号処理部、18…フィルタ処理部、19…Bモード処理部、21…ドプラ処理部、22…装置本体、23…DSC、25…表示部、27…入力ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療等の分野に用いられる超音波診断装置に関し、特に非線形減少を利用した映像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、血流イメージングが可能等の特長を有し、心臓、腹部、泌尿器、および産婦人科などで広く利用されている。
【0003】
この超音波画像診断装置においては、種々の撮影法による生体情報の映像化が可能である。例えばコントラストエコー法は、被検体の血管内に微小気泡(マイクロバブル)等からなる超音波造影剤を投与することで、超音波散乱エコーの増強を図るものである。この様な撮影法においては、受信信号から、映像化対象とするエコー信号成分を高S/N比で抽出することは、従来からの大きな課題となっている。そのため、各撮影方法においては、様々な工夫がなされている。
【0004】
具体的には、セカンドハーモニックイメージングにおいては、映像化対象とする二次高調波の帯域は、基本波の帯域によって決定される。従って、当該基本波帯域を調整することで、二次高調波の帯域幅を制御し、映像化に好適な信号を取得するようにしている。例えば、二次高調波を低周波側に広げるには、原理的には、基本波を低周波側に広げればよい。また、二次高調波を高周波側に広げる場合には、基本波を高周波側に広げればよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現実には、図21に示すように、低周波側に広げられる基本波の帯域は、プローブ帯域によって制限される。また、高周波側に広げた場合には、図21に示すように、受信信号において基本波と二次高調波との帯域が重なり合い、それぞれへの分離が困難となる場合がある。
【0006】
また、コントラストエコーにおいて、基本波と二次高調波との中間の帯域を映像化すると、組織と造影剤とのコントラストを高くすることが知られている。
【0007】
しかしながら、基本波と二次高調波とを常に完全に除去することは困難であり、映像化した場合、適切な生体情報を提供できない場合がある。例えば、図22に示すように1.5f0帯域付近を映像化する場合、映像化帯域に両者の一部が入り込み、高エコーを示す組織が造影時に一緒に映像化され、造影の判断を難しくすることがある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、差音成分の位相等を制御することで、当該差音成分と二次高調波とを相互作用させ、映像化の対象とする反射波成分を高精度にて抽出する超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0010】
実施形態に係る超音波診断装置は、少なくとも第1の基本波と当該第1の基本波よりも高周波である第2の基本波とを有する送信超音波を生成する手段であって、当該送信超音波を被検体に送信しその反射波を受信した場合、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との差音成分が前記第1の基本波の二次高調波と相互作用し、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との和音成分が前記第1の基本波の二次高調波及び前記第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と相互作用するように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の周波数を制御し、前記相互作用を制御するために前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の位相を制御して前記送信超音波を生成する送信超音波生成手段と、前記送信超音波を前記被検体に送信する送信手段と、前記被検体から前記送信超音波の反射波を受信する受信手段と、前記反射波に基づいて、超音波画像を生成する画像生成手段と、を具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置10の構成を示した図である。
【図2】図2(a)、(b)は、本実施形態に係る手法の概念を説明するための図である。
【図3】図3は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークをf2(f<f2)にもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。
【図4】図4(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図5】図5は、二つの周波数ピークf、f2を(f<f2)有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図7】図7は、例えば二つの周波数ピークf、3f有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。
【図8】図8(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図9】図9(a)、(b)は、サイン型の送信超音波を説明するための図である。
【図10】図10(a)、(b)は、コサイン型の送信超音波を説明するための図である。
【図11】図11は、本超音波診断装置10が実行する差音成分を利用した映像化手法の処理手順を示したフローチャートである。
【図12】図12(a)、(b)は、第1の実施形態において送信される超音波を説明するための図である。
【図13】図13は、周波数ピークf1を有する第1の基本波と、周波数ピークf2(f1<f2)を有する第2の基本波を足し合わせて生成される送信超音波のスペクトラムを示した図である。
【図14】図14は、図13に示す第1の及び第2の基本波から構成された超音波を被検体に送信した場合に得られる各反射波成分のスペクトラムを示した図である。
【図15】図15は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを3fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。
【図16】図16(a)、(b)、(c)は、第2の実施形態に係る手法による、第1の基本波の二次高調波と差音成分との相互作用を説明するための図である。
【図17】図17(a)、(b)は、第2の実施形態において送信される超音波を説明するための図である。
【図18】図18(a)は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを1.5fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。図18(b)は、図18(a)に示す第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波のスペクトラムを示した図である。図18(c)は、図18(a)に示す第1の基本波と第2の基本波との差音成分及び和音成分のスペクトラムを示した図である。図18(d)は、図18(b)に示す各二次高調波、図18(c)に示す差音成分及び和音成分が合成された反射波のスペクトラムを示した図である。
【図19】図19(a)は、図18(a)に示す第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波のスペクトラムを示した図である。図19(b)は、図18(a)に示す第1の基本波と第2の基本波との差音成分及び和音成分のスペクトラムを示した図である。図19(c)は、図19(a)に示す各二次高調波、図19(b)に示す差音成分及び和音成分が合成された反射波のスペクトラムを示した図である。
【図20】図20(a)は、第3の実施形態に係る手法によってエコー信号のスペクトラムを示したグラフである。図20(b)は、図20(a)の比較例である。
【図21】図21は、回路の非線形性に由来するノイズを示した図である。
【図22】図22(a)、(b)は、従来の手法にて2レートで超音波を送信した場合得られる反射波のスペクトラムの一部を示している。図22(c)は、差分処理によって得られるスペクトラムを示している。
【図23】図23(a)、(b)は、本実施形態に係る手法にて2レートで超音波を送信した場合得られる反射波のスペクトラムの一部を示している。図23(c)は、差分処理によって得られるスペクトラムを示している。
【図24】図24は、従来技術を説明するための図である。
【図25】図25は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態〜第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置10の構成を、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本超音波診断装置10は、超音波プローブ11、パルサ/アンプユニット13、波形制御部14、A/Dコンバータ15、検波ユニット16、信号処理部17、フィルタ処理部18、フィルタ処理部18Bモード処理部19、ドプラ処理部21、DSC23、表示部25、入力ユニット27を具備している。
【0014】
超音波プローブ11は、パルサからの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ11から被検体に超音波が送信されると、生体組織の非線形性により、超音波の伝播に伴って種々のハーモニック成分が発生する。送信超音波を構成する基本波とハーモニック成分は、体内組織の音響インピーダンスの境界、微小散乱等により後方散乱され、反射波(エコー)として超音波プローブ11に受信される。
【0015】
パルサ/アンプユニット13は、送信時において送信超音波を形成するため、波形制御部14による制御に基づいて所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)でレートパルスを繰り返し発生し、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を、各レートパルスに与える。パルサ/アンプユニット13は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ11に駆動パルスを印加する。
【0016】
また、パルサ/アンプユニット13は、受信時において、プローブ11を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。また、パルサ/アンプユニット13は、受信時において、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性(走査線)が決定される。
【0017】
なお、パルサ/アンプユニット13等において、例えばデジダルウェイブフォーマを使用し、これによって送信超音波の波形を決定する場合、一連の撮影において複合化等の処理が介在することにより、測定される受信信号に間接的なノイズ(基本波のもれ成分)が乗る場合がある。本超音波診断装置10は、この間接的ノイズを除去することが可能である。これについては、後で詳しく説明する。
【0018】
波形制御部14は、入力ユニット27からの指示、又は予め設定されたプログラム等に基づいて、例えば二つの基本波(第1の基本波、第2の基本波)から構成される送信超音波の波形を形成するように、パルサ/アンプユニット13を制御する。より具体的には、波形制御部14は、第2の基本波と第1の基本波との差音成分が、第1の基本波の二次高調波の周波数近傍に出現し当該二次高調波と相互作用(振幅を強め合う又は弱め合うこと。又は、差音成分と二次高調波のスペクトラムが重なり合う位相干渉を発生すること。)するように、第2の基本波の物理的条件(周波数、振幅、位相等)を制御する。
【0019】
A/Dコンバータ15は、パルサ/アンプユニット13から受けとったアナログ信号を、ディジタル信号に変換する。
【0020】
検波ユニット16は、A/Dコンバータ15から受けとった信号に90度位相のずれたリファレンス周波数を有する信号をそれぞれ乗じて直交検波行い、I、Q信号を得る。このI、Q信号は、受信信号からリファレンス周波数を減じた周波数を有する信号となる。なお、リファレンス周波数は、一般に超音波画像を生成する帯域の中心周波数に設定される。
【0021】
信号処理部17は、差分処理等の所定の信号処理を行う。より具体的には、信号処理部17は、コントラストエコーにおいて、時間差のあるフレーム同士の差分を演算することで組織像を消去し、造影剤エコー成分を抽出する。
【0022】
フィルタ処理部18は、所定の周波数帯域の反射波成分を減衰させ、所望の周波数帯域の反射波成分を抽出(フィルタリング)してBモード処理部19、又はドプラ処理部21に出力する複素ディジタルフィルタである。本実施形態では、例えばフィルタ処理部18は、第1の基本波に対応する二次高調波の周波数帯域近傍の反射波成分が少なくとも含まれるように、フィルタリングを実行する。
【0023】
Bモード処理部19は、フィルタ処理された受信信号に対して対数増幅等を施す。増幅された信号は、DSC23に送られ、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像として表示部25にカラー表示される。
【0024】
ドプラ処理部21は、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。血流情報はDSC23に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像として表示部25にカラー表示される。
【0025】
DSC23は、Bモード処理部19、ドプラ処理部21から入力した超音波スキャンの走査線信号列を、空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換し、さらにビデオフォーマット変換を行う。
【0026】
表示部25は、DSC23からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。また、造影剤を用いた場合には、造影剤の空間的分布、つまり血流或いは血液の存在している領域を求めた定量的な情報量に基づいて、輝度画像やカラー画像として表示する。
【0027】
入力ユニット27は、装置10の本体に接続され、オペレータからの各種指示・命令・情報を装置本体22にとりこむための、関心領域(ROI)の設定などを行うための(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)が設けられる。また、当該入力ユニット27を介して、送信超音波の送信条件をマニュアル的に入力することもできる。
【0028】
(差音成分)
次に、本映像化手法において利用される差音成分の発生原理について説明する。一般に、基本波をa・sinftとした場合、二乗の非線形の効果は(a・sinft)2として表すことができる。また、第1の基本波sinf1t、第2の基本波a・sinf2tとする送信超音波を使用する場合、その非線形効果は(sinf1t+a・sinf2t)2と表すことができ、次のように変形することができる。
【数1】
【0029】
ここで、最終行第1項は第1の基本波の二次高調波成分であり、第2項は第2の基本波と第1の基本波との差音成分に対応している。また、三行目において省略した項には、基本波成分、和音成分等が含まれている。
【0030】
本手法では、基本波の周波数、位相を制御することで当該差音成分と二次高調波成分の相互作用を制御し、映像化の対象とする反射波成分を高S/N比にて抽出する。なお、差音成分自体を抽出して映像化する手法は、例えば特願2001−110307に記載されているが、本文献には位相制御に関する記載はない。
【0031】
次に、本実施形態に係る、差音成分を利用した映像化手法について説明する。まず、本映像化手法の概念について、図2〜図8を参照しながら説明する。
【0032】
図2(a)は、二つの周波数ピークf1、f2(ただし、f1<f2)を有する超音波のスペクトラムを示した図である(以下、前者を第1の基本波、後者を第2の基本波と呼ぶことにする。)。図2(b)は、第1の基本波及び第2の基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合に得られる反射波(受信信号)のスペクトラムを示した図である。図2(b)に示すように、受信信号には、送信超音波を構成する周波数f1、f2の各基本波成分に対応する反射波の他に、生体伝播の非線形性により発生する反射波の差音成分(DC、f2−f1)、和音成分(2f1、2f2、f1+f2)が発生する。ここで、DCとは、ゼロ周波数を中心とした若干広がりのある帯域内の周波数成分である。また、周波数2f1、2f2の各和音成分は、それぞれ第1の基本波の二次高調波、第2の基本波の二次高調波に対応している。
【0033】
本実施形態に係る手法では、例えば第1の基本波の二次高調波成分と周波数f2−f1の差音成分とに注目する。すなわち、第2の基本波の周波数と位相とを制御することで、周波数f2−f1の差音成分を第1の基本波の二次高調波成分に同位相で重畳させる。これにより、当該第1の基本波の二次高調波帯域付近の成分を増大させ映像化することで、有用な生体情報を得るものである。
【0034】
本手法によれば、この第1の基本波の二次高調波帯域付近の反射波成分の大きさを、当該二次高調波帯域より低周波側、高周波側、その両方の3つの形態によって制御することができる。以下、各形態について具体的に説明する。
【0035】
図3は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークをf2(f<f2)にもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。なお、f2は、3fよりも少し小さな値、例えば2.8f程度の値であるとする。当該スペクトラムを有する各基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合、図4(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図4(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図4(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。この反射波は、2fを中心周波数とする第1の基本波の二次高調波成分が低周波側に広げられ、そのピークを増大させたものと同等である。
【0036】
また、図5は、例えば二つの周波数ピークf、f2を(f<f2)有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。ただし、f2は、3fよりも大きな値、例えば3.2f程度の値であるとする。当該スペクトラムを有する超音波を被検体に送信した場合、図6(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図6(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図6(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。この反射波は、2fを中心周波数とする第1の基本波の二次高調波が高周波側に広げられ、そのピークを増大させたものと同等である。
【0037】
さらに、図7は、例えば二つの周波数ピークf、3f有する送信超音波のスペクトラムを示した図である。ただし、3fをピークにもつ基本波は、図3のf1をピークにもつ基本波と図5のf2をピークにもつ基本波とを足し合わせたものである。当該スペクトラムを有する超音波を被検体に送信した場合、図8(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図8(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図8(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。この反射波は、2fを中心周波数とする第1の基本波の二次高調波が低周波側及び高周波側に広げられ、そのピークを増大させたものと同等である。
【0038】
(送信超音波)
次に、上記差音成分を出現させるための送信超音波について説明する。送信超音波は、サイン型とコサイン型とに分類することができる。また、それぞれの型において、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるもの(すなわち、二次高調波と同一の極性を持つ差音成分を発生させるもの)と、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるもの(すなわち、二次高調波と反対の極性を持つ差音成分を発生させるもの)とがある。以下、サイン型については図9(a)、(b)を参照し、コサイン型については図10(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0039】
図9(a)は、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるための、サイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の山(谷)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。一方、図9(b)は、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるための、サイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の谷(山)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。
【0040】
より具体的には、第1の基本波をΨ1=A1sin(2πωf1)、第2の基本波をΨ2=A2sin(2πωf2+θ)とした場合、第1の基本波と第2の基本波との強め合い又は弱め合いの条件は、初期位相θによって次のように表すことができる。
【0041】
すなわち、A1、A2>0とした場合、
(1)強め合う条件 θ=π
(2)弱め合う条件 θ=0 or 2π
一方、図10(a)は、二次高調波と強めあう差音成分を発生させるための、コサイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の山(谷)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。一方、図10(b)は、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるための、コサイン型の送信超音波の波形(中心部分)を示している。同図に示すように、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させるためには、第2の基本波(周波数f2)を、その振幅の山(谷)が第1の基本波(周波数f1)の振幅の谷(山)とタイミングが(例えば)一致するように位相を制御する。
【0042】
より具体的には、第1の基本波をΨ1=A1cos(2πωf1)、第2の基本波をΨ2=A2cos(2πωf2+θ)とした場合、第1の基本波と第2の基本波との強め合い又は弱め合いの条件は、初期位相θによって次のように表すことができる。
【0043】
すなわち、A1、A2>0とした場合、
(1)強め合う条件 θ=0 or 2π
(2)弱め合う条件 θ=π
なお、本実施形態では、後述するように、二次高調波と差音成分とが強め合う場合について説明する。従って、図9(a)又は図10(a)に示す波形を有する送信超音波(より厳密には、各図に示した基本波を重ね合わせて得られる超音波。図12参照。)が、波形制御部14の制御のもと、パルサ/アンプユニット13によって生成され、プローブ11から送信される。また、後述するように、二次高調波と差音成分とが強め合う場合について説明する第2の実施形態においては、図9(b)又は図10(b)に示す波形を有する送信超音波(図17参照。)が、波形制御部14の制御のもと、パルサ/アンプユニット13によって生成され、プローブ11から送信される。
【0044】
(差音成分を利用した映像化手法)
次に、差音成分を利用した映像化手法を実行する場合における、本超音波診断装置10の動作について説明する。本実施形態は、直接的には第2の基本波の位相等を制御し、間接的には差音成分の位相を制御することで、第1の基本波の二次高調波成分を増大させるものである。この例は、例えば組織領域を画像化する場合等に実益がある。
【0045】
図11は、本超音波診断装置10が実行する差音成分を利用した映像化手法の処理手順を示したフローチャートである。同図において、まず、送信超音波の条件が自動的に設定される(ステップS1)。ここで、送信超音波の条件とは、第2の基本波と第1の基本波との差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数付近に出現させるための、各基本波の周波数、振幅、位相その他の物理的条件を意味する。なお、この送信超音波の条件としての各周波数は、ハーモニックモードのマルチ周波数として、予め設定されている。操作者は、目的毎に表示部25に表示された複数の推奨周波数の中から、入力ユニット27を介して任意に選択することができる。
【0046】
具体的には、ステップS1において、次のような設定が自動的に実行される。すなわち、、差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数の付近であり、かつ低周波数側に出現させたい場合(図3、図4参照)には、第1の基本波の周波数はfとして、第2の基本波の周波数は例えば2.8fとして設定される。一方、差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数の付近であり、かつ高周波数側に出現させたい場合(図5、図6参照)には、第1の基本波の周波数はfとして、第2の基本波の周波数は3.2fとして設定される。また、差音成分を、第1の基本波の二次高調波の周波数の付近であり、かつ低周波数側及び高周波側に出現させたい場合(図7、図8参照)には、第1の基本波の周波数はfとして、第2の基本波の周波数は3fとして、設定される。また、極性、振幅については、二次高調波と差音成分とが強め合うように制御される。
【0047】
図12(a)は、n=6(nは波数)とした場合の各基本波の超音波パルスの例を示している。同図に示した第1の基本波に関するバースト波、第2の基本波に関するバースト波が足し合わされ、図12(b)に示す送信超音波が生成される。
【0048】
なお、ステップS1における各基本波の条件設定は、上述した自動設定の他、例えば、患者情報、撮影部位を含む診断情報、撮影モード選択等に基づいて、操作者がマニュアル設定する構成であってもよい。
【0049】
次に、図12(b)に示した送信超音波が被検体内に送信し(ステップS2)、その反射波をエコー信号として受信する(ステップS3)。このエコー信号は、周波数帯域が2f付近において、第1の基本波の二次高調波と差音成分とから構成されたピークを有するものとなっている。
【0050】
当該エコー信号は、増幅、遅延加算等の各処理を受けた後、フィルタ処理部18によってフィルタリングされる(ステップS4)。例えば、周波数2fを中心とした帯域(組織ハーモニックエコー成分が支配的な帯域)を通過させ、その前後の帯域は全て減衰させるようなフィルタリングを実行する。
【0051】
次に、フィルタリングされたエコー信号は、Bモード処理部19(又は、ドプラ処理部21)において所定の処理を受け(ステップS5)、超音波画像として表示部25に表示される(ステップS6)。
【0052】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0053】
本実施形態に係る手法によれば、送信超音波を構成する基本波の差音成分の位相等を制御することで、当該差音成分と二次高調波成分とが強め合うように相互作用させることができる。これにより、二次高調波成分をその低周波側若しくは高周波側、又はその両方に大きくすることができ、映像化の対象とする反射波成分を増大せることができる。その結果、従来のセカンドハーモニックイメージングと比較して、帯域設計の自由度を広げることができる。また、映像化信号を高S/N比にて抽出することができ、医療の現場において、有益な生体情報を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る超音波診断装置によれば、送信超音波を構成する基本波の差音成分の位相等は、マニュアル設定の他、診断情報等によって自動的に設定することができる。また、各基本波周波数の推奨する組み合わせが目的毎に表示されるので、差音成分と二次高調波成分とを相互作用させるための周波数等の設定を簡便かつ迅速に行うことができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の基本波の二次高調波成分を除去・低減するように差音成分の位相を制御するものである。。この例は、例えば特願2001−343577号に開示されているように、コントラストエコーにおいて、第1の基本波周波数の略1.5倍帯域において組織像と造影剤エコーとを分離し、造影剤エコーを映像化する場合等に実益がある。
【0056】
差音成分を利用した映像化手法の一般的な概念について、図13、図14を参照しながら説明する。
【0057】
図13は、周波数ピークf1を有する第1の基本波と、周波数ピークf2(f1<f2)を有する第2の基本波とを足し合わせて生成される送信超音波のスペクトラムを示した図である。なお、この第1の基本波、第2の基本波は、例えば図9(b)、図10(b)に示す弱め合いの関係を持つものである。
【0058】
また、図14は、図13に示す第1の及び第2の基本波から構成された超音波を被検体に送信した場合に得られる各反射波成分のスペクトラムを示した図である。図14に示すように、送信超音波を構成する周波数f1、f2の各基本波成分に対応する反射波の他に、生体伝播の非線形性により発生する反射波の差音成分(DC、f2−f1)、和音成分(2f1、2f2、f1+f2)が発生する。ここで、周波数2f1、2f2の各和音成分は、それぞれ第1の基本波の二次高調波、第2の基本波の二次高調波に対応している。
【0059】
第2の実施形態では、周波数f2−f1と2f1とが等しくなるように送信周波数f2を制御することで、第1の基本波の二次高調波成分を周波数f2−f1の差音成分によって相殺する。これにより、例えばコントラストエコーにおいて、2f1帯域付近の組織ハーモニック成分を取り除くことができ、造影剤からの反射波成分を高い精度にて抽出することができる。
【0060】
図15は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを3fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。当該スペクトラムを有する各基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合、図16(a)に示す第1の基本波の二次高調波と、図16(b)に示す差音成分(中心周波数)とが足し合わされた図16(c)に示す反射波が、周波数2fの近傍において測定される。なお、第1の基本波の二次高調波は、理想的には差音成分によって相殺される(0となる)。
【0061】
次に差音成分を利用した映像化手法を実行する場合における、本超音波診断装置10の動作について、図11を参照しながら説明する。
【0062】
まず、送信超音波の条件が、入力ユニット27を介して又は自動的に設定される(ステップS1)。
【0063】
図17(a)は、n=6とした場合の各基本波の超音波パルスの例を示している。同図に示した第1の基本波に関する第1のバースト波と、第2の基本波に関する第2のバースト波(ただし、位相は図12(b)の場合と反転。)とが足し合わされ、図17(b)に示す送信超音波が生成される。
【0064】
なお、当該ステップにおける送信超音波の条件設定は、第1の実施形態で述べた自動設定、又は選択設定によって実現されてもよい。
【0065】
以下、第1の実施形態と略同様の処理を行うことにより、差音成分によって二次高調波が相殺された、反射波成分を高い精度にて抽出することができる。この当該抽出された造影剤エコーを映像化することで、有用な生体情報を迅速かつ簡便に得ることができる。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の基本波と第2の基本波との和音成分を、第1の基本波又は第2の基本波の二次高調波と相互作用させることにより、広い帯域での画像化、高S/N比の画像化等を実現するものである。
【0067】
以下、和音成分を二次高調波とが重畳し強め合う相互作用を例に、図18〜図20を参照しながら説明する。
【0068】
図18(a)は、周波数ピークをfにもつ第1の基本波、及び周波数ピークを1.5fにもつ第2の基本波のスペクトラムを示した図である。当該スペクトラムを有する各基本波から構成された送信超音波を被検体に送信した場合、図18(b)に示すスペクトラムを有する第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波と、図18(c)に示すスペクトラムを有する差音成分及び和音成分とが発生する。従って、これらが合成された反射波を受信すると、そのスペクトラムは、例えば図18(d)に示すように、広い帯域のスペクトラムを有するものとなる。
【0069】
また、超音波送信によって得られる二次高調波、差音成分、和音成分は、は図19(a)、図19(b)に示すように、図18(b)、図18(c)に比して広い帯域に出現する場合がある。係る場合、これらが合成された反射波を受信すると、そのスペクトラムは、例えば図19(c)に示すように、差音成分とも重畳した広い帯域のスペクトラムを有するものとなる。
【0070】
次に、和音成分を利用した映像化手法を実行する場合における、本超音波診断装置10の動作について、図11を参照しながら説明する。本実施形態は、直接的には第1の基本波の周波数、第2の基本波の位相及び周波数を制御し、間接的には和音成分の周波数、位相を制御することで、反射波を高帯域化するものである。この例は、例えばパルスインバージョンによって取り出したハーモニック成分に対し、周波数コンパウンドを行って画像化する場合等に実益がある。
【0071】
まず、図11において、送信超音波の条件が自動的に設定される(ステップS1)。ここで、送信超音波の条件とは、第2の基本波と第1の基本波との和音成分を、第1の基本波の二次高調波の高周波側近傍に出現させるための、各基本波の周波数、振幅、位相その他の物理的条件を意味する。なお、この送信超音波の条件としての各周波数は、差音成分の場合と同様に、ハーモニックモードのマルチ周波数として、予め設定されている。
【0072】
具体的には、ステップS1において、次のような設定が自動的に実行される。すなわち、和音成分を、第1の基本波の二次高調波及び第2の基本波の二次高調波を重畳させるため、第1の基本波の中心周波数を例えばf1=1.6MHz、第2の基本波の中心周波数を例えばf2=2.5MHzとして設定する。また、極性、振幅については、二次高調波と和音成分とが強め合うように制御される。
【0073】
次に、送信超音波が被検体内に送信され(ステップS2)、その反射波をエコー信号として受信する(ステップS3)。
【0074】
図20(a)は、上記基本波から構成される送信超音波を、極性を反転させて2レートで送信し(パルスインバージョン送信)、得られたエコー信号のスペクトラムを示したグラフである。同図に示すように、和音成分と二次高調波とを相互作用させることで、エコー信号中のハーモニック(差音成分、第1の基本波の二次高調波、和音成分がコンパウンドされたもの。以下、「ハーモニックコンパウンド成分」と呼ぶ。)のスペクトラムCを、広い帯域に出現させることができる。
【0075】
一方、図20(b)は、同図中心周波数f=2.1MHzの超音波を極性を反転させて2レートで送信し(パルスインバージョン送信)、得られたエコー信号のスペクトラムを示したグラフである。この超音波送信においては、和音成分と二次高調波とは相互作用していない。同図から解るように、エコー信号中のハーモニックコンパウンド成分Cは、和音成分と二次高調波とが相互作用する図20(a)の場合よりも狭い帯域幅となって出現する。従って、距離分解能が十分でなく、スペックル除去能も高くない。
【0076】
得られたハーモニックコンパウンド成分は、増幅、遅延加算等の各処理を受けた後、フィルタ処理部18によってフィルタリングされる(ステップS4)。このフィルタリングは、例えば図20(a)に示す様に、比較的広い帯域幅で行うことができる。
【0077】
次に、フィルタリングされたエコー信号は、Bモード処理部19(又は、ドプラ処理部21)において所定の処理を受け(ステップS5)、超音波画像として表示部25に表示される(ステップS6)。
【0078】
本実施形態に係る手法によれば、第1の基本波又は第2の基本波の周波数、位相等を制御することで、和音成分と二次高調波成分とが強め合うように相互作用させることができる。これにより、第1の基本波の二次高調波をその高周波側に、第2の基本波の二次高調波をその低周波側に大きくすることができ、映像化の対象とする反射波成分が増大することになる。その結果、距離分解能を向上させることができる。また、コンパウンドを行う周波数差が大きいため、効果の高いスペックル除去を実現することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、和音成分と二次高調波とが重畳し強め合う相互作用を例に説明を行った。これに対し、和音成分を二次高調波とが相殺し合う相互作用を発生させることも可能である。そのためには、例えば第1及び第2の基本波に図9(b)、図10(b)に示すような弱め合う関係を持たせるように、基本波の少なくとも一方の位相を制御すればよい。
【0080】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第1の実施形態で述べた差音成分の位相制御、又は第3の実施形態で述べた和音成分の位相制御を、ドプラモードにおいて実行するものである。以下、第1の実施形態にて説明した差音成分の位相制御(すなわち、差音成分と二次高調波とが強め合う場合)を例に、図1を参照しながら説明する。
【0081】
一般に、ドップラモードにおいては、一の走査線に対して複数回の超音波送受信が実行される。波形制御部14は、この一の走査線に対する各送信において、二次高調波と強めあう差音成分を発生させる超音波を送信する。この送信超音波は、既述の様に、互いの山同士(又は谷同士)とが同位相となっている第1の基本波と第2の基本波とを重ね合わせて生成されたものである。
【0082】
各送信超音波に対応する各受信エコー信号が受信されると、信号処理部17は、各受信エコー信号から、二次高調波帯域の信号成分(すなわち二次高調波に差音成分が重畳した信号成分)を抽出する。
【0083】
ドプラ処理部21は、抽出された二次高調波帯域の信号成分に基づいて、ドプラ効果による造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等を情報を多点について求める。これらの情報は、DSC23に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、及びこれらを組み合わせたドプラ画像として、表示部25にカラー表示される。
【0084】
以上、ドプラモードにおいて、差音成分と二次高調波とを互いに強め合うように相互作用させる場合を例に説明した。これに対し、差音成分と二次高調波とを互いに弱め合うように相互作用させる場合には、一の走査線に対する複数回の超音波送信のそれぞれにおいて、二次高調波と弱め合う差音成分を発生させる超音波を送信する。この送信超音波は、既述の様に、一方の山と一方の谷とが同位相となっている第1の基本波と第2の基本波とを重ね合わせたものとする。
【0085】
以上述べた構成によれば、ドプラモードにおいても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態は、例えばコロナリー(冠動脈)等の画像化において、特に実益がある。
【0086】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態では、差音成分又は和音成分の位相、振幅、極性を制御することで、当該差音成分により基本波のもれを相殺するものである。この基本波のもれは、当該超音波診断装置10に内在する特性によって生ずるものである。以下、差音成分を利用する場合を例として説明する。
【0087】
一般に、装置に使用される各電気・電子回路は、制御等の観点から、その入力と出力とが線形であることが好ましい。しかしながら、各回路は厳密な意味において線形な入力−出力関係を有しておらず、非線形性を内在している。特に、ディジタル回路を使用する場合には、アナログ信号への変換における複合化等により、回路の非線形性を誘発する。
【0088】
本超音波診断装置10でも、例えば送受信回路15において使用されるデジタルウェイブフォーマ、その他の各構成要素において使用される回路の非線形性により受信信号が影響を受け、図21に示すような基本波のもれが誘発される場合がある。
【0089】
本実施形態に係る手法では、この回路の非線形性や精度限界に由来する基本波のもれを差音成分によって除去又は減少させる。例えば図21に示すノイズ成分を除去する場合、超音波送信において、差音成分が1.5f付近に出現するように、周波数ピークをfとする第1の基本波と周波数ピークを2.5fとする第2の基本波からなる超音波を送信する。このとき、第2の基本波の振幅は、第1の基本波との差音成分と回路の非線形性に由来するノイズ成分とが略等しくなるように、かつ第2の基本波の極性は第1の基本波の極性と反転するように設定する(第1の実施形態参照)。
【0090】
この様な構成により、差音成分を、回路の非線形性に由来するノイズ成分の除去を望む帯域に、相当のスペクトラムで出現させることがでる。従って、受信信号においては、ノイズ成分と差音成分とが相殺することになり、当該ノイズ成分を除去又は低減させることができる。
【0091】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明の技術的思想を、コントラストエコーにおいて複数回の超音波送受信を行い、モーションアーチファクトの削除を目的として、サブトラクション法により造影剤エコーを抽出する場合において利用するものである。以下、差音成分を利用する場合を例として説明する。
【0092】
一般に、受信する反射波は、被検体の体動による影響を受ける。これは、例えば複数回の超音波送受信を用いた映像法において、モーションアーチファクトとして画像上に現れる。本実施形態では、差音成分の位相等を制御することで、各受信超音波において発生する基本波のもれ成分を除去又は低減し、且つ異なるレート間でエコー信号の差分をとることで、モーションアーチファクト等のノイズ成分を除去又は低減する。
【0093】
すなわち、まず、周波数ピークfを有する第1の基本波と、周波数ピークf2(f<f2)を有する第2の基本波とを足し合わせて生成される送信超音波を、所定のタイミングにて少なくとも2レートで送信する。この送信超音波は、前記二次高調波と前記差音成分との位相が逆転するように生成される。また、以下の説明では、送信超音波を2レートで送信するものとする。
【0094】
各送信超音波に対応する各エコー信号を受信すると、増幅、A/D変換等の所定の処理が施される。ここで注目すべきは、各エコー信号においては、差音成分により基本波のもれ成分が除去又は低減されている点である。
【0095】
受信されたエコー信号は、増幅、A/D変換等の所定の処理を受け、信号処理部17によって異なるレート間で差分(サブトラクション)され、造影剤エコー信号が抽出される。これは、次の原理に基づく。
【0096】
すなわち、各レートにおいて得られた受信信号において、造影剤エコー成分以外は、組織に由来する成分である。一方、造影剤エコー成分は体液中の造影剤に由来するものである。この造影剤は送信超音波によって変化(破裂等)するため、造影剤エコー成分のレート間の時間における信号変移は、組織に由来する成分と比較して大きいと考えられる。従って、例えば2レート目の受信信号から1レート目の受信信号を減算(サブトラクション)すれば、組織に由来する成分は体動に由来する成分のみとなり、これよりも高いスペクトラムを有する造影剤エコー成分が相対的に強調される。これを画像化することで、有効な血流情報を画像化することができる。
【0097】
本実施形態では、差分処理によって、画像中のモーションアーチファクトの低減を実現することができる。以下、モーションアーチファクトが、例えば画像化帯域における組織に由来する信号の10%の割合で出現する場合を例として、図22及び図23を参照しながら説明する。
【0098】
図22(a)は、従来の手法にて(すなわち、特定の差音成分の制御を行うことなく)2レートで超音波を送信した場合に、1レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。また、図22(b)は、2レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。図22(a)、(b)からわかるように、第1の基本波の高周波側及び高調波の低周波側の基本波のもれ成分に上、レート間の時間差の体動によって発生したエコー信号が重畳している。
【0099】
また、図22(b)の信号から図22(a)の信号を減算した場合には、図22(c)に示すように、1レート目と2レート目との間に発生した体動を原因とするノイズ成分(モーションアーチファクト)が残留する。今の場合、このモーションアーチファクトは、基本波のもれ成分を含んだ組織に由来する信号の10%程度発生することになる。
【0100】
一方、図23(a)は、本実施形態に係る手法にて2レートで超音波を送信した場合に、1レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。また、図23(b)は、2レート目の送信超音波によって得られた反射波のスペクトラムの一部を示している。図23(a)からわかるように、差音成分との弱め合いにより基本波のもれ成分は従来よりも低減されており、図23(b)からわかるように、レート間の時間差の体動によって発生したエコー信号のみ、第1の基本波の高周波側及び高調波の低周波側に出現している。
【0101】
また、図23(b)の信号から図23(a)の信号を減算した場合には、図23(c)に示すように、1レート目と2レート目との間に発生した体動を原因とするノイズ成分(モーションアーチファクト)が残留する。今の場合、このモーションアーチファクトは、基本波のもれ成分が除去された組織に由来する信号の10%程度発生することになる。従って、モーションアーチファクトは、従来の手法と比較して低くすることができる。
【0102】
以上述べた様に、本実施形態に係る手法では、まず、差音成分によって受信信号に含まれる基本波のもれ成分を除去又は低減させた後、これを用いてレート間での減算処理を行い、造影剤エコー信号を抽出する。従って、基本波のもれ成分自体、及びモーションアーチファクトに対する基本波のもれ成分の影響を除去することができ、組織に由来する信号を差分処理によって高精度で除去することができる。その結果、従来に比して、造影剤エコー成分を相対的により強調させることができ、有効な血流情報を画像化することができる。
【0103】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変形例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば以下に示す(1)〜(3)のように、その要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0104】
(1)各実施形態においては、二つの基本波に基づいて生成される差音成分を利用して、映像化に好適なエコー信号を抽出する場合を例とした。これに対し、二以上の基本波に基づいて生成される差音成分を利用して、同様の作用を実現する構成であってもよい。
【0105】
(2)各実施形態においては、二つの基本波のうち、周波数の高い第2の基本波の周波数を制御することで、当該二つの基本波に基づいて生成される差音成分の周波数を制御した。しかし、これに限定する趣旨ではなく、使用する基本波の周波数帯域に応じて、周波数の低い第1の基本波を制御することで、差音成分の周波数を制御する構成であってもよい。
【0106】
(3)第1及び第2の実施形態において、例えば位相を反転させた2レートの送信を行い、各レートに対応する受信信号を加算することで、各基本波成分を除去する構成であってもよい。この様な構成によれば、第1の実施形態においては、差音成分の重畳及び加算処理により、映像対象とされる二次高調波成分をさらに大きくすることができる。また、第2の実施形態においては、加算処理により、原理的に二倍の二次高調波を取得することができる。
【0107】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…超音波診断装置、11…超音波プローブ、13…パルサ/アンプユニット、15…A/Dコンバータ、16…検波ユニット、17…信号処理部、18…フィルタ処理部、19…Bモード処理部、21…ドプラ処理部、22…装置本体、23…DSC、25…表示部、27…入力ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の基本波と当該第1の基本波よりも高周波である第2の基本波とを有する送信超音波を生成する手段であって、当該送信超音波を被検体に送信しその反射波を受信した場合、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との差音成分が前記第1の基本波の二次高調波と相互作用し、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との和音成分が前記第1の基本波の二次高調波及び前記第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と相互作用するように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の周波数を制御し、前記相互作用を制御するために前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の位相を制御して前記送信超音波を生成する送信超音波生成手段と、
前記送信超音波を前記被検体に送信する送信手段と、
前記被検体から前記送信超音波の反射波を受信する受信手段と、
前記反射波に基づいて、超音波画像を生成する画像生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信超音波生成手段は、前記第1の基本波の二次高調波と前記差音成分との位相が合うように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうち少なくとも一方の位相を制御して、前記送信超音波を生成することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信超音波生成手段は、前記第1の基本波の二次高調波及び前記第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と前記和音成分との位相が合うように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうち少なくとも一方の位相を制御して、前記送信超音波を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項1】
少なくとも第1の基本波と当該第1の基本波よりも高周波である第2の基本波とを有する送信超音波を生成する手段であって、当該送信超音波を被検体に送信しその反射波を受信した場合、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との差音成分が前記第1の基本波の二次高調波と相互作用し、前記反射波に含まれる前記第1の基本波と前記第2の基本波との和音成分が前記第1の基本波の二次高調波及び前記第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と相互作用するように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の周波数を制御し、前記相互作用を制御するために前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうちの少なくとも一方の位相を制御して前記送信超音波を生成する送信超音波生成手段と、
前記送信超音波を前記被検体に送信する送信手段と、
前記被検体から前記送信超音波の反射波を受信する受信手段と、
前記反射波に基づいて、超音波画像を生成する画像生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信超音波生成手段は、前記第1の基本波の二次高調波と前記差音成分との位相が合うように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうち少なくとも一方の位相を制御して、前記送信超音波を生成することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信超音波生成手段は、前記第1の基本波の二次高調波及び前記第2の基本波の二次高調波の少なくとも一方と前記和音成分との位相が合うように、前記第1の基本波及び前記第2の基本波のうち少なくとも一方の位相を制御して、前記送信超音波を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
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【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−214130(P2010−214130A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125318(P2010−125318)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【分割の表示】特願2004−67850(P2004−67850)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【分割の表示】特願2004−67850(P2004−67850)の分割
【原出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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