超音波診断装置
【課題】連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術において、選択性を向上させる新しい連続波を提供する。
【解決手段】正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波に対して、正弦パターンに基づいた処理を施す。余弦パターン処理部22Aは、RF波発振器20からπ/2シフト回路21を介して得られるRF波に対して余弦パターンに基づいた処理を施す。正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。
【解決手段】正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波に対して、正弦パターンに基づいた処理を施す。余弦パターン処理部22Aは、RF波発振器20からπ/2シフト回路21を介して得られるRF波に対して余弦パターンに基づいた処理を施す。正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願の発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究開発を重ねてきた。特に、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術に注目して研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、選択性を向上させる新しい連続波を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、2列の数値パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンを前記2列の数値パターンとする連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、前記正弦パターンに従って振幅を変化させる正弦波と、前記余弦パターンに従って振幅を変化させる余弦波と、を合成することにより、前記連続波の送信信号を形成する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記正弦パターンは、互いに異なるN個(Nは自然数で偶数)の位相値に対応したN個の正弦関数値で構成され、前記余弦パターンは、当該N個の位相値に対応したN個の余弦関数値で構成され、前記連続波の送信信号は、当該N個の位相値に対応したパターン長Nの位相パターンを備える、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、パターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力し、前記受信信号処理部は、パターン長Nをn個(nは自然数)ごとにmブロック(mは自然数)に分割し、各ブロックごとの部分的な復調信号を得てから、mブロックに亘る部分的な復調信号を加算して前記目標位置に対応した復調信号を得る、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、一定期間ごとに1ブロックずつシフトさせつつ、mブロックからなるパターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、選択性を向上させる新しい連続波が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。
【図3】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。
【図4】参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。
【図5】乗算器出力の具体例を示す図である。
【図6】位相シフト連続波を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図7】余弦パターンの巡回を説明するための図である。
【図8】正弦パターンの巡回を説明するための図である。
【図9】巡回的な位相パターンを説明するための図である。
【図10】巡回位相パターンの送信信号を利用して得られる受信信号の処理を説明するための図である。
【図11】巡回的な受信処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は、生体内へ超音波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は、生体内からの超音波の反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0018】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、合成処理部24から連続波の送信信号が供給され、送信ビームフォーマ14は、その送信信号に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして超音波の送信ビームが形成され、二次元平面内で又は三次元空間内で送信ビームが走査される。
【0019】
送信ビームフォーマ14に供給される連続波の送信信号は、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される。
【0020】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(搬送波信号)に対して、正弦パターンに基づいた処理を施す。一方、余弦パターン処理部22Aは、RF波発振器20からπ/2シフト回路21を介して得られるRF波(搬送波信号)に対して余弦パターンに基づいた処理を施す。
【0021】
そして、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される連続波の送信信号については後にさらに詳述する。
【0022】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして二次元平面内で又は三次元空間内で走査される送信ビームに対応した受信ビームが形成され、受信ビームに沿って受信RF信号が収集される。
【0023】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0024】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、合成処理部24から出力される送信信号に基づいて生成される。つまり、合成処理部24から出力される送信信号が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理された送信信号が参照信号として直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。
【0025】
π/2シフト回路26は、遅延処理された参照信号の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力されて他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0026】
加算部46,48は、LPF36,38から得られる復調信号を所定期間に亘って加算する。これにより、位相シフト連続波の位相パターンに関する加算処理が実行され、参照信号の位相パターンと一致する目標位置からの復調信号が選択的に抽出される。この位置選択性については後にさらに詳述する。
【0027】
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)50は、加算部46,48から得られる復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部50において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部50から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0028】
ドプラ情報解析部52は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では、遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部52において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部52は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0029】
表示部54は、ドプラ情報解析部52において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部60によって制御される。つまり、システム制御部60は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0030】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、位相シフト連続波に対応した超音波を送受して受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出している。そこで図1の超音波診断装置における位相シフト処理と、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0031】
<位相シフト処理について>
図1の超音波診断装置では、互いに相補的な関係にある2列の数値パターンを用いて位相シフト処理が行われる。つまり、正弦パターン処理部22Bにおいて正弦パターンが利用され、余弦パターン処理部22Aにおいて余弦パターンが利用される。
【0032】
2列の数値パターンである正弦パターンと余弦パターンは次式により定義される。次式において、aiが余弦パターンであり余弦関数から得られる。一方、biが正弦パターンであり正弦関数から得られる。また、Nはパターン長を示す自然数であり、iはパターンを構成している各数値(各符号)の番号である。ちなみに、Nは任意の自然数かつ偶数であり2の累乗に限定されない。
【0033】
【数1】
【0034】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(正弦波)の振幅を正弦パターンに従って変化させる。一方、余弦パターン処理部22Aは、π/2シフト回路21を介して得られるRF波(余弦波)の振幅を余弦パターンに従って変化させる。そして、正弦パターン処理部22Bから出力される連続波と、余弦パターン処理部22Aから出力される連続波が合成処理部24において合成され、次式に示す連続波の送信信号が形成される。
【0035】
【数2】
【0036】
送信信号に対応した受信信号は、その送信信号が送信された時刻から、次式に示す遅延時間τだけ遅れて受信系に到達する。なお、次式において、Tbは数値パターンの1ビット(各数値)の時間長つまりビット長であり、l(エル)は任意の自然数である。そしてξは1/2ビット長以下の時間である。
【0037】
【数3】
【0038】
図1の超音波診断装置では、送信信号を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が、受信ミキサ30において受信信号と乗算される。送信信号を基準とした受信信号の遅延時間をτ、遅延回路25における遅延量(時間シフト量)をkTbとすると、受信ミキサ30において乗算される受信信号(数4式)と参照信号(数5式)は、それぞれ次のように表現される。
【0039】
【数4】
【0040】
【数5】
【0041】
そして、受信ミキサ30において、次式に示すように受信信号と参照信号が乗算され、乗算結果としてベースバンド成分が得られる。
【0042】
【数6】
【0043】
受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)のうち、第1項は、互いに同じ数値パターンであるai同士およびbi同士の積に関する相関電力であり、第2項は、互いに異なる数値パターンであるaiとbiの積に関する相互干渉電力である。目標位置の選択性を高めるためには、第1項に示される相関はシャープであることが必要とされ、第2項に示される相互干渉は小さいことが望ましい。なお、数6式の最終行において、ω0tが受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により除去されている。
【0044】
ここで、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項である余弦波の位相について検討する。この余弦波の位相は、数3式に示した遅延時間τを用いると、次式のように表現できる。
【0045】
【数7】
【0046】
数7式に示す余弦波の位相にはξが含まれており、1/2ビット長以下の時間であるξに応じて余弦波の位相が変化する。この位相の変化は、目標位置の選択性(相関性)に重要な影響を及ぼす要因ではないため、以下においては位相の表現からξを省略して目標位置の選択性について説明する。
【0047】
まず、相関電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項に含まれる相関値は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0048】
【数8】
【0049】
数8式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。実際に目標位置から得られる受信信号には、N個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれており、また、参照信号にもN個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれている。受信ミキサ30において次々に得られる数8式の乗算結果は、LPF36,38を経て加算部46,48に出力される。そして、加算部46,48において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は数9式のように表現できる。さらに、数10式に示す公式を利用すると、数9式は数11式のように簡潔に表現できる。
【0050】
【数9】
【0051】
【数10】
【0052】
【数11】
【0053】
数11式におけるδklは、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。また、kとlが互いに等しい場合にcosθklが1となるため、数11式はさらに簡潔に次式のように変換される。
【0054】
【数12】
【0055】
数12式は、kで特定される目標位置に対応した参照信号と、l(エル)で特定される深さからの受信信号と、を乗算して得られる自己相関値を示しており、kとlが互いに等しい場合にNとなり、kとlが互いに異なる場合に0となる。つまり、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみがNとなる。
【0056】
次に、相互干渉電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第2項に含まれる相互干渉は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0057】
【数13】
【0058】
数13式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。受信ミキサ30において次々に得られる数13式の乗算結果は、LPF36,38を経て加算部46,48に出力され、加算部46,48において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は次式のように表現できる。
【0059】
【数14】
【0060】
数14式の第2項は、数10式により0となる。数14式の第1項におけるΣの項は、数10式に示すとおりであり、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。一方、数14式の第1項のsinθklは、kとlが互いに等しい場合に0となる。つまり、次式に示すとおり、相互干渉電力については、kとlが互いに等しい場合でもkとlが互いに異なる場合でも常に0となる。
【0061】
【数15】
【0062】
以上の解析から、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って加算することにより、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。
【0063】
次に、正弦パターンと余弦パターンの具体例について説明する。パターン長を8(N=8)とすると、数1式から、余弦パターンA(数16式)と正弦パターンB(数17式)が得られる。
【0064】
【数16】
【0065】
【数17】
【0066】
余弦パターンAと正弦パターンBを構成する各数値(各符号)は、単純な2値符号とは異なり、−1と+1との間で離散的な値をとる。また、余弦パターンAと正弦パターンBを利用して形成される送信信号(数2式)の振幅は次式のように算出されるため、常に1となり、送信信号の振幅が時間的に変動しないことがわかる。
【0067】
【数18】
【0068】
余弦パターンAと正弦パターンBを数2式に適用して得られる送信信号は次式のようになる。
【0069】
【数19】
【0070】
図2は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。つまり、図2に示す送信信号は、数19式で表現される信号である。また、図3は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。図2と図3に示す送信信号は、余弦パターンAと正弦パターンBを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させ、その位相パターンを繰り返すことにより得られる連続波(位相シフト連続波)となっている。
【0071】
<位置選択性について>
図4は、参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。図4には、数19式の送信信号を利用した場合に、ある深さから得られる受信信号の位相(受信波の位相)が示されている。また、図4には、数19式の送信信号を遅延処理して得られる参照信号の位相(参照波の位相φ0〜φ7)も示されている。そして、受信信号と各参照信号を乗算して得られる出力と、1パターン(パターン長8)に亘る出力の合計も図示されている。図4に示すように、参照波の位相がφ0の場合に、受信波の位相と参照波の位相が互いに一致して合計が8となり、参照波の位相がφ0以外では合計が0となる。
【0072】
図5は、乗算器出力の具体例を示す図である。図5には、数19式の送信信号を利用した場合に、距離軸方向のφ0からφ8までの各深さにおいて、時間軸方向の1ビット長ごとに得られる乗算器出力(受信ミキサ30の出力)が示されている。また、位相パターンの1周期(8ビット長)に亘って得られる乗算器出力の加算値も図示されている。図5に示す深さφ0からφ7の各々は、図4に示す参照波の位相φ0からφ7に対応した深さである。また、図5に示す深さφ8は、位相パターンを繰り返した際に、1周期後の参照波の位相φ0に対応する深さである。
【0073】
図5に示す深さφ0と深さφ8では、位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って、参照信号と受信信号との間で位相が全て一致するため(図4参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さφ1からφ7では、参照信号と受信信号との間で位相がずれているため(図4参照)、乗算器出力がランダムに変化している。なお、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる(図4参照)。
【0074】
そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さφ0と深さφ8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。乗算器出力を平均化する場合には、例えば、加算部46,48に代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0075】
図5に示すように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7の受信信号に関する乗算器出力は、加算または平均化することによりゼロになるものの、1ビット長ごとにランダムに変動している。この変動のために、位相パターンを繰り返す位相シフト連続波を利用して得られる乗算器出力の周波数スペクトラムには、位相パターンの1周期(NTb)の逆数fpの整数倍に対応した線スペクトラムが現れる。
【0076】
図6は、位相シフト連続波(位相変調された連続波)を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。図6(A)は、受信信号の周波数スペクトラムを示している。受信信号は、生体内における減衰を無視すると送信信号と同じ波形となる。送信信号は、位相シフト連続波であり、したがって、受信信号の周波数スペクトラムも、位相シフト連続波の周波数スペクトラムとなる。周波数f0は、RF信号の周波数である。RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。また周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔Tbの逆数となる。
【0077】
図6(B)は、受信ミキサ30における乗算により得られるベースバンド信号の周波数スペクトラムを示している。図6(B)に示す周波数スペクトラムには、直流付近の信号成分と、RF信号の周波数f0の2倍の高調波成分が含まれている。ドプラ信号は、これらの成分に付着した形で出現する。なお、LPF36,38において、周波数f0の2倍の高調波成分が遮断されて直流付近の信号成分のみが抽出される。つまり、図6(B)に示す周波数スペクトラムの周波数0の近傍の信号が抽出される。
【0078】
直流信号成分には、ドプラ信号の他に、固定組織からの反射波に起因するクラッタ信号が含まれている。特に、体表や骨からの反射波は、ドプラ信号よりも数10dBも大きい場合があり、ドプラ信号を測定する際の妨害となる。クラッタ信号は、図6(B)に示すように、位相パターンの繰り返し周波数fpとその高調波成分を含んでおり、ドプラ信号に重畳される。
【0079】
クラッタ信号は、目標位置を対象とした選択的な復調処理を施した場合においても、受信ミキサ30から出力されるベースバンド信号内に現れる。選択的な復調処理は、測定対象となる例えば血流などからの受信信号の位相パターンと参照信号の位相パターンとを互いに一致させる処理である。測定対象とは異なる位置に存在する組織などについては、位相パターンに関する一致は成立していない。したがって、図5に示したように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7に組織がある場合に、乗算器出力が1ビット長ごとにランダムに変動し、図6(B)に示すようにクラッタ信号が発生する。
【0080】
図5を利用して説明したように、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる。そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を加算または平均化することにより、図6(B)に示すクラッタ信号を低減または除去することができる。そこで、図1の超音波診断装置では、以下に説明する巡回的な送信処理を実行して、クラッタ信号を低減または除去している。
【0081】
<巡回的な送信処理について>
巡回的な送信処理には、余弦パターンを巡回して得られる巡回余弦パターンと、正弦パターンを巡回して得られる巡回正弦パターンが利用される。
【0082】
図7は、余弦パターンの巡回を説明するための図である。図7には、余弦パターンに関する繰り返し列α1,α2,・・・,αmが示されている。各繰り返し列に含まれる余弦パターンは、数1式で定義されるaiであり、図7においてパターン長Nの余弦パターンは、nビットごとにつまりn個の数値(符号)ごとにm個のブロックに分割されている。nとmは共に自然数でありn×m=Nである。
【0083】
繰り返し列α1に含まれる余弦パターンA1は、第1ブロックを先頭として、第1ブロックから昇順に第mブロックまでのm個のブロックに分割される。その余弦パターンA1をL回(Lは自然数)だけ繰り返した列が、繰り返し列α1である。
【0084】
繰り返し列α2に含まれる余弦パターンA2は、第2ブロックを先頭として、第2ブロックから昇順に第mブロックまでを配置した後に第1ブロックを配置したm個のブロックからなるパターンである。つまり、余弦パターンA2は、余弦パターンA1の先頭にある第1ブロックを最後尾にシフトさせたパターンである。その余弦パターンA2をL回だけ繰り返した列が、繰り返し列α2である。
【0085】
さらに、余弦パターンA2の先頭ブロックを最後尾にシフトさせて余弦パターンA3が形成され、その余弦パターンA3をL回だけ繰り返した繰り返し列α3が形成される。こうして、段階的に余弦パターンの先頭ブロックを最後尾にシフトさせつつ、段階的に繰り返し列α4,α5,・・・が次々に形成され、最終的に繰り返し列αmが得られる。
【0086】
繰り返し列αmに含まれる余弦パターンAmは、第mブロックを先頭としそれに続いて第1ブロックから昇順に第(m−1)ブロックまでを配置したm個のブロックからなるパターンである。その余弦パターンAmをL回だけ繰り返した列が繰り返し列αmである。
【0087】
図8は、正弦パターンの巡回を説明するための図である。図8には、正弦パターンに関する繰り返し列β1,β2,・・・,βmが示されている。各繰り返し列に含まれる正弦パターンは、数1式で定義されるbiである。図7の余弦パターンと同様に、図8におけるパターン長Nの正弦パターンは、nビットごとに(n個の数値)m個のブロックに分割されている。nとmは共に自然数でありn×m=Nである。
【0088】
繰り返し列β1に含まれる正弦パターンB1は、第1ブロックを先頭として、第1ブロックから昇順に第mブロックまでのm個のブロックに分割される。その正弦パターンB1をL回(Lは自然数)だけ繰り返した列が、繰り返し列β1である。なお、図7の余弦パターンA1と図8の正弦パターンB1の組み合わせに基づいて、先に説明した位相シフト処理が行われる。
【0089】
繰り返し列β2に含まれる正弦パターンB2は、第2ブロックを先頭として、第2ブロックから昇順に第mブロックまでを配置した後に第1ブロックを配置したm個のブロックからなるパターンである。つまり、正弦パターンB2は、正弦パターンB1の先頭にある第1ブロックを最後尾にシフトさせたパターンである。その正弦パターンB2をL回だけ繰り返した列が、繰り返し列β2である。
【0090】
さらに、正弦パターンB2の先頭ブロックを最後尾にシフトさせて正弦パターンB3が形成され、その正弦パターンB3をL回だけ繰り返した繰り返し列β3が形成される。こうして、段階的に正弦パターンの先頭ブロックを最後尾にシフトさせつつ、段階的に繰り返し列β4,β5,・・・が次々に形成され、最終的に繰り返し列βmが得られる。
【0091】
繰り返し列βmに含まれる正弦パターンBmは、第mブロックを先頭としそれに続いて第1ブロックから昇順に第(m−1)ブロックまでを配置したm個のブロックからなるパターンである。その正弦パターンBmをL回だけ繰り返した列が繰り返し列βmである。
【0092】
図9は、巡回的な位相パターンを説明するための図である。図1の余弦パターン処理部22Aは、図9(A)に示す巡回余弦パターンに従って余弦波の振幅を変化させる。図9(A)の巡回余弦パターンは、図7の繰り返し列α1,α2,・・・,αmを直列的に接続したパターンであり、繰り返し列αmに続いて繰り返し列α1以降の列がさらに接続される。
【0093】
一方、図1の正弦パターン処理部22Bは、図9(B)に示す巡回正弦パターンに従って正弦波の振幅を変化させる。図9(B)の巡回正弦パターンは図8の繰り返し列β1,β2,・・・,βmを直列的に接続したパターンであり、繰り返し列βmに続いて繰り返し列β1以降の列がさらに接続される。
【0094】
そして、図9(A)の巡回余弦パターンと図9(B)の巡回正弦パターンを利用して数2式に基づいて連続波の送信信号が形成される。図9(P)は、その送信信号の位相パターンを示している。
【0095】
図9(P)に示す巡回位相パターンは、位相パターンP1,P2,P3,・・・,Pmで構成される。位相パターンP1は、余弦パターンの繰り返し列α1と正弦パターンの繰り返し列β1に対応した位相パターンであり、位相パターンP2は、余弦パターンの繰り返し列α2と正弦パターンの繰り返し列β2に対応した位相パターンである。また、位相パターンPmは、余弦パターンの繰り返し列αmと正弦パターンの繰り返し列βmに対応した位相パターンである。このように、余弦パターンと正弦パターンの繰り返し列に応じた位相パターンが次々に得られる。
【0096】
そして、図9(P)に示す巡回位相パターンを備えた連続波の送信信号に基づいて超音波が送受され、この送信信号に対応した受信信号が得られる。
【0097】
図10は、巡回位相パターンの送信信号を利用して得られる受信信号の処理を説明するための図である。図10には、図9(P)に示す巡回位相パターンの送信信号を利用した場合に得られる復調信号が示されている。例えば、図10の信号列Y1は、図9(P)の位相パターンP1に対応した時間帯の復調信号であり、図10の信号列Y2は、図9(P)の位相パターンP2に対応した時間帯の復調信号である。図9(P)に示す巡回位相パターンの送信信号を利用することにより、図10の最下段に示すように、信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られる。
【0098】
なお、ミキサ32(図1)から、同相信号成分(I信号成分)に対応した信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られ、ミキサ34(図1)から、直交信号成分(Q信号成分)に対応した信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られる。
【0099】
各信号列に含まれるSUM1,SUM2,・・・,SUMmは、nビット長ごとに部分的に加算処理された復調信号を示している。例えば、SUM1は、nビット長の第1ブロック(図7,8参照)に対応した部分的な復調信号の加算結果であり、SUM2は、nビット長の第2ブロック(図7,8参照)に対応した部分的な復調信号の加算結果である。このように、各ブロックごとに復調信号が加算処理される。この加算処理は、例えば加算部46,48において実行される。パターン長Nの余弦パターンと正弦パターンは、各々がm個のブロックで構成されるため(図7,8参照)、パターン長Nの期間内にm個の加算結果(SUM)が得られる。
【0100】
信号列Y1は、余弦パターンA1(図7)と正弦パターンB1(図8)から得られる位相パターンP1(図9)に対応している。そのため、信号列Y1は、パターン長Nの期間内において、SUM1を先頭としてSUM1から昇順にSUMmまでのm個の加算結果で構成され、これがパターン長Nごとに繰り返される。
【0101】
信号列Y2は、余弦パターンA2と正弦パターンB2から得られる位相パターンP2に対応している。そのため、信号列Y2は、パターン長Nの期間内において、SUM2を先頭としてSUM2から昇順にSUMmまでの加算結果の後にSUM1を加えたm個の加算結果で構成され、これがパターン長Nごとに繰り返される。
【0102】
余弦パターンと正弦パターンの先頭ブロックが段階的にシフトされるため(図7,8参照)、各信号列を構成するパターン長Nの先頭の加算結果(SUM)も、信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymの順に段階的にシフトされる。
【0103】
信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymは、FFT処理部50(図1)において、各信号列ごとにFFT演算される。その結果、各信号列ごとに復調信号が周波数スペクトラムに変換される。さらに、複数の信号列から得られる複数の周波数スペクトラムがFFT処理部50において加算処理される。
【0104】
複数の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymに対応した複数の周波数スペクトラムを加算することは、これら複数の信号列に含まれる同時刻(互いに対応する時刻)における信号同士を加算することに相当する。つまり、図10に矢印で示す繰り返し方向に沿って並んだ複数の加算結果(SUM)がさらに加算されることに相当する。これにより、例えばパターン長Nの期間の先頭に位置する信号列Y1のSUM1、信号列Y2のSUM2、信号列Y3のSUM3、・・・、信号列YmのSUMmが加算される。
【0105】
つまり、位相パターンの1周期に亘って得られるSUM1からSUMmまでの部分的な復調信号が全て加算処理されることに等しい。なお、パターン長Nの期間の先頭以外においても、矢印で示す繰り返し方向に沿って並んだ複数の加算結果(SUM)が加算され、SUM1からSUMmまでの部分的な復調信号が全て加算処理されることに等しい。これにより、先に詳述したとおり、図6(B)に示すクラッタ信号が低減され、望ましくは完全に除去される。
【0106】
なお、最初の時相の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが得られると、それに引き続いて次の時相の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られる。そのため、次の時相の信号列Y1が得られたタイミングで、その信号列Y1と最初の時相の信号列Y2,Y3,・・・,Ymとを利用し、周波数スペクトラムの加算処理を実行してもよい。これにより、次の時相の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymの各々が得られるタイミングで、周波数スペクトラムの加算結果を得ることができる。
【0107】
また、図10を利用して説明した処理では、各信号列ごとに復調信号が周波数スペクトラムに変換される。その変換において、nビット長ごとに得られる加算結果(SUM)が利用される。つまりnビット長間隔のデータに基づいて周波数スペクトラムが得られる。1ビットの時間長をTbとすると、nビットの時間長はnTbであり、この時間間隔で得られるデータのサンプリング周波数はfs=1/nTbとなる。周波数の折り返しを伴わずに測定可能な最大ドプラ周波数はサンプリング周波数fsの1/2である。そのため、測定可能な最大ドプラ周波数は、1ブロックを構成するビット数「n」により決定されることとなる。
【0108】
また、FFT処理部50(図1)におけるFFT演算後の周波数分解能Δfは、FFT演算前の処理対象データの時間長Tに依存する。つまり、Δf=1/Tの関係がある。図10に示した処理では、各信号列が処理対象データであり、その時間長はT=NTb×Lである。つまりL=T/NTb=1/(Δf・NTb)となる。そのため、例えば、周波数分解能Δfを50Hzとし、パターン長Nの繰り返し周波数fp(=1/NTb)を5kHzとするとL=100となる。つまり、図7,8における同一パターンの繰り返し数であるLを100に設定すればよいことになる。
【0109】
また、パターン長Nの繰り返し周波数fpを5kHzとすると、その逆数である繰り返し周期Tpは200μs(マイクロ秒)となる。そこで、診断可能な最大の深さである診断距離dを次式のように設定する。なお、次式においてcは生体内の平均音速である。
【0110】
【数20】
【0111】
距離分解能Δdを診断距離dの1/153とすると、Δdは1mm(ミリメートル)となり、この距離分解能Δdを時間長τに換算すると次式のようになる。
【0112】
【数21】
【0113】
距離分解能Δdの時間長τは、パターン長Nのパターンを構成している各数値(各符号)の時間長つまりビット長に相当する。時間長τの符号が繰り返し周期Tpのパターンを構成する場合、そのパターンに含まれる符号数は次式により153個となる。
【0114】
【数22】
【0115】
つまり、上記の例におけるパターン長Nは153個となる。そこで、パターン長Nが偶数であるという条件を適用すると、パターン長Nが例えば152又は154に設定される。なお、パターンの繰り返し周波数fpが5kHzでありブロック数mが2に設定されると、各ブロックに対応した加算結果(SUM)の周期、つまりサンプリング周波数fsが10kHzとなる。この場合に、測定可能な最大ドプラ周波数は、サンプリング周波数fsの1/2であるため、5kHzとなる。
【0116】
周波数分解能ΔfとFFT演算前の処理対象データの時間長T(=NTb×L)との間には、Δf=1/Tの関係がある。そのため、周波数分解能Δfを例えば50Hzとすると、処理対象データの時間長Tは20ms(ミリ秒)となる。例えば、図10における各信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymの長さT(=NTb×L)が20msとなる。そして、ブロック数mが例えば2の場合には、図10において、二つの信号列Y1,Y2に基づいて加算処理が実現できる。つまり、この例の場合には、20ms×2=40msの信号取得時間があれば、クラッタ信号を低減または除去しつつドプラ信号を得ることが可能になる。
【0117】
上述した例では、パターン繰り返し周波数fpを5kHz、距離分解能Δdを1mm、最大ドプラ周波数fdを5kHz、周波数分解能Δfを50Hzに設定している。但し、これはあくまでも設定の一例であり、最大ドプラ周波数fdを2kHz,10kHzなどに設定してもよい。また、最大ドプラ周波数fdを5kHzに固定し、周波数分解能Δfを100Hz,50Hz,20Hz,10Hzなどに設定してもよい。
【0118】
以上、図7から図10を利用して、巡回的な送信処理によるクラッタ信号の低減について説明した。次に、巡回的な受信処理によるクラッタ信号の低減について説明する。
【0119】
<巡回的な受信処理について>
巡回的な受信処理では、送信時において、余弦パターンや正弦パターンを巡回させない。例えば、図7に示す繰り返し列α1のみで構成された余弦パターンと、図8に示す繰り返し列β1のみで構成された正弦パターンに基づいて得られる、図9に示す位相パターンP1のみを繰り返す連続波の送信信号が利用される。
【0120】
図11は、巡回的な受信処理を説明するための図である。図11には、位相パターンを巡回させない送信信号を利用した場合に得られる復調信号が示されている。図11の信号列Yは、例えば、位相パターンP1(図9参照)のみを繰り返す送信信号に対応した復調信号である。なお、ミキサ32(図1)から、同相信号成分(I信号成分)に対応した信号列Yが得られ、ミキサ34(図1)から、直交信号成分(Q信号成分)に対応した信号列Yが得られる。
【0121】
信号列Yに含まれるS1,S2,S3,・・・,Smの各々は、SUM1,SUM2,・・・,SUMmに対応しており、nビット長ごとに部分的に加算処理された復調信号を示している。この加算処理は、例えば加算部46,48(図1)において実行される。パターン長Nの余弦パターンと正弦パターンの各々がm個のブロックで構成される場合にはパターン長Nごとにm個の加算結果Sが得られる。信号列Yは、例えばシフトレジスタなどに一時的に記憶される。シフトレジスタは、例えば、m×(m+1)段以上の長さである。つまり、m×(m+1)個以上の加算結果Sがシフトレジスタに記憶される。
【0122】
なお、信号列Yの取得開始からm×n×(m+1)×Tb時間後には、一時的に必要とされる信号列Yがシフトレジスタ内に全て揃うため、その後は、一つの加算結果Sが得られるごとに、つまりn×Tb時間ごとに、シフトレジスタの内容を1段ずつずらして順次更新するようにしてもよい。
【0123】
シフトレジスタに一時的に記憶された信号列Yは、(m+1)個の加算結果Sごとに区切られて、二次元的な記憶構造を備えたメモリに記憶される。なお、1次元的な記憶構造を備えた複数のメモリを並列的に配列して二次元的な記憶構造を実現してもよい。
【0124】
図11に示すメモリは、各段がA1からAm+1のアドレスを備え、D1からDmまでのm段で構成されている。そして、例えば、シフトレジスタに記憶された信号列Yの先頭のS1から順にSmまでのm個の加算結果Sと、次の繰り返し時相に対応したS1と、からなる(m+1)個の加算結果Sが、メモリの第1段目D1に記憶される。また、次の区切りであるS2,S3,・・・,Sm,S2からなる(m+1)個の加算結果Sが、メモリの第2段目D2に記憶される。こうして、次々に信号列Yが区切られて、信号列Yの取得が開始されてからm×n×(m+1)×Tb時間後に、メモリの最終段である第m段目Dmまで加算結果Sが記憶される。
【0125】
メモリの第1段目D1から第m段目Dmまで加算結果Sが記憶されると、メモリの段方向に沿って、つまりD1からDmに向かって、加算結果Sがさらに加算処理される。例えば、D1からDmまでの各段の先頭アドレスA1に記憶されたS1からSmまでの加算結果Sが加算処理され、また、D1からDmまでの各段のアドレスA2に記憶されたS2からS1までの加算結果Sが加算処理される。こうして、各アドレスごとに、S1からSmまでの加算結果Sが加算処理され、FFT処理部50(図1)へ出力される。
【0126】
S1からSmまでの加算結果Sを全て加算する処理は、位相パターンの1周期に亘って得られるSUM1からSUMmまでの部分的な復調信号を全て加算することに相当する。そのため、クラッタ信号が低減され、望ましくは完全に除去されることは、先に説明したとおりである。
【0127】
なお、各アドレスごとに得られる加算処理後の復調信号は、例えば、アドレスA1,A2,・・・の順にn×Tb時間ごとにFFT処理部50へ出力される。これにより、FFT処理部50において、n×Tb時間ごとに得られるデータに基づいてFFT演算が実行される。つまり、サンプリング周波数が比較的高いため、例えば、ドプラ信号のリアルタイム表示などが実現できる。
【0128】
また、メモリに記憶された内容が各アドレスごとに加算されて全ての内容がFFT処理部50へ出力された後に、メモリの内容も更新される。一時的に必要とされる信号列Yがm×n×(m+1)×Tb時間の間隔で揃うため、例えば、この間隔ごとにメモリの内容が更新される。
【0129】
また、シフトレジスタ内に、m×(m+1)個の全ての加算結果Sが記憶される前に、例えば(m+1)個の加算結果Sが揃うごとに、(m+1)個の加算結果Sをメモリに記憶させるようにしてもよい。これにより、シフトレジスタの段数を比較的小さくすることが可能になる。
【0130】
また、n×Tb時間ごとにシフトレジスタの内容を1段ずつずらして順次更新する構成とし、シフトレジスタ内にS1,S2,・・・,Smのm個の加算結果Sが記憶された段階でこれらm個の加算結果Sを加算処理し、n×Tb時間後にシフトレジスタ内にS2,S3,・・・,Sm,S1のm個の加算結果Sが記憶された段階でこれらm個の加算結果Sを加算処理する構成としてもよい。これにより、S1からSmまでの全ての加算処理結果をn×Tb時間ごとに得ることができる。
【0131】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0132】
22A 余弦パターン処理部、22B 正弦パターン処理部、24 合成処理部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、46,48 加算部、50 FFT処理部、52 ドプラ情報解析部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願の発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究開発を重ねてきた。特に、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術に注目して研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、選択性を向上させる新しい連続波を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、2列の数値パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンを前記2列の数値パターンとする連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、前記正弦パターンに従って振幅を変化させる正弦波と、前記余弦パターンに従って振幅を変化させる余弦波と、を合成することにより、前記連続波の送信信号を形成する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記正弦パターンは、互いに異なるN個(Nは自然数で偶数)の位相値に対応したN個の正弦関数値で構成され、前記余弦パターンは、当該N個の位相値に対応したN個の余弦関数値で構成され、前記連続波の送信信号は、当該N個の位相値に対応したパターン長Nの位相パターンを備える、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、パターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力し、前記受信信号処理部は、パターン長Nをn個(nは自然数)ごとにmブロック(mは自然数)に分割し、各ブロックごとの部分的な復調信号を得てから、mブロックに亘る部分的な復調信号を加算して前記目標位置に対応した復調信号を得る、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、一定期間ごとに1ブロックずつシフトさせつつ、mブロックからなるパターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、選択性を向上させる新しい連続波が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。
【図3】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。
【図4】参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。
【図5】乗算器出力の具体例を示す図である。
【図6】位相シフト連続波を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図7】余弦パターンの巡回を説明するための図である。
【図8】正弦パターンの巡回を説明するための図である。
【図9】巡回的な位相パターンを説明するための図である。
【図10】巡回位相パターンの送信信号を利用して得られる受信信号の処理を説明するための図である。
【図11】巡回的な受信処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は、生体内へ超音波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は、生体内からの超音波の反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0018】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、合成処理部24から連続波の送信信号が供給され、送信ビームフォーマ14は、その送信信号に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして超音波の送信ビームが形成され、二次元平面内で又は三次元空間内で送信ビームが走査される。
【0019】
送信ビームフォーマ14に供給される連続波の送信信号は、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される。
【0020】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(搬送波信号)に対して、正弦パターンに基づいた処理を施す。一方、余弦パターン処理部22Aは、RF波発振器20からπ/2シフト回路21を介して得られるRF波(搬送波信号)に対して余弦パターンに基づいた処理を施す。
【0021】
そして、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される連続波の送信信号については後にさらに詳述する。
【0022】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして二次元平面内で又は三次元空間内で走査される送信ビームに対応した受信ビームが形成され、受信ビームに沿って受信RF信号が収集される。
【0023】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0024】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、合成処理部24から出力される送信信号に基づいて生成される。つまり、合成処理部24から出力される送信信号が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理された送信信号が参照信号として直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。
【0025】
π/2シフト回路26は、遅延処理された参照信号の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力されて他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0026】
加算部46,48は、LPF36,38から得られる復調信号を所定期間に亘って加算する。これにより、位相シフト連続波の位相パターンに関する加算処理が実行され、参照信号の位相パターンと一致する目標位置からの復調信号が選択的に抽出される。この位置選択性については後にさらに詳述する。
【0027】
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)50は、加算部46,48から得られる復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部50において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部50から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0028】
ドプラ情報解析部52は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では、遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部52において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部52は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0029】
表示部54は、ドプラ情報解析部52において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部60によって制御される。つまり、システム制御部60は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0030】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、位相シフト連続波に対応した超音波を送受して受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出している。そこで図1の超音波診断装置における位相シフト処理と、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0031】
<位相シフト処理について>
図1の超音波診断装置では、互いに相補的な関係にある2列の数値パターンを用いて位相シフト処理が行われる。つまり、正弦パターン処理部22Bにおいて正弦パターンが利用され、余弦パターン処理部22Aにおいて余弦パターンが利用される。
【0032】
2列の数値パターンである正弦パターンと余弦パターンは次式により定義される。次式において、aiが余弦パターンであり余弦関数から得られる。一方、biが正弦パターンであり正弦関数から得られる。また、Nはパターン長を示す自然数であり、iはパターンを構成している各数値(各符号)の番号である。ちなみに、Nは任意の自然数かつ偶数であり2の累乗に限定されない。
【0033】
【数1】
【0034】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(正弦波)の振幅を正弦パターンに従って変化させる。一方、余弦パターン処理部22Aは、π/2シフト回路21を介して得られるRF波(余弦波)の振幅を余弦パターンに従って変化させる。そして、正弦パターン処理部22Bから出力される連続波と、余弦パターン処理部22Aから出力される連続波が合成処理部24において合成され、次式に示す連続波の送信信号が形成される。
【0035】
【数2】
【0036】
送信信号に対応した受信信号は、その送信信号が送信された時刻から、次式に示す遅延時間τだけ遅れて受信系に到達する。なお、次式において、Tbは数値パターンの1ビット(各数値)の時間長つまりビット長であり、l(エル)は任意の自然数である。そしてξは1/2ビット長以下の時間である。
【0037】
【数3】
【0038】
図1の超音波診断装置では、送信信号を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が、受信ミキサ30において受信信号と乗算される。送信信号を基準とした受信信号の遅延時間をτ、遅延回路25における遅延量(時間シフト量)をkTbとすると、受信ミキサ30において乗算される受信信号(数4式)と参照信号(数5式)は、それぞれ次のように表現される。
【0039】
【数4】
【0040】
【数5】
【0041】
そして、受信ミキサ30において、次式に示すように受信信号と参照信号が乗算され、乗算結果としてベースバンド成分が得られる。
【0042】
【数6】
【0043】
受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)のうち、第1項は、互いに同じ数値パターンであるai同士およびbi同士の積に関する相関電力であり、第2項は、互いに異なる数値パターンであるaiとbiの積に関する相互干渉電力である。目標位置の選択性を高めるためには、第1項に示される相関はシャープであることが必要とされ、第2項に示される相互干渉は小さいことが望ましい。なお、数6式の最終行において、ω0tが受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により除去されている。
【0044】
ここで、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項である余弦波の位相について検討する。この余弦波の位相は、数3式に示した遅延時間τを用いると、次式のように表現できる。
【0045】
【数7】
【0046】
数7式に示す余弦波の位相にはξが含まれており、1/2ビット長以下の時間であるξに応じて余弦波の位相が変化する。この位相の変化は、目標位置の選択性(相関性)に重要な影響を及ぼす要因ではないため、以下においては位相の表現からξを省略して目標位置の選択性について説明する。
【0047】
まず、相関電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項に含まれる相関値は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0048】
【数8】
【0049】
数8式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。実際に目標位置から得られる受信信号には、N個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれており、また、参照信号にもN個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれている。受信ミキサ30において次々に得られる数8式の乗算結果は、LPF36,38を経て加算部46,48に出力される。そして、加算部46,48において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は数9式のように表現できる。さらに、数10式に示す公式を利用すると、数9式は数11式のように簡潔に表現できる。
【0050】
【数9】
【0051】
【数10】
【0052】
【数11】
【0053】
数11式におけるδklは、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。また、kとlが互いに等しい場合にcosθklが1となるため、数11式はさらに簡潔に次式のように変換される。
【0054】
【数12】
【0055】
数12式は、kで特定される目標位置に対応した参照信号と、l(エル)で特定される深さからの受信信号と、を乗算して得られる自己相関値を示しており、kとlが互いに等しい場合にNとなり、kとlが互いに異なる場合に0となる。つまり、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみがNとなる。
【0056】
次に、相互干渉電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第2項に含まれる相互干渉は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0057】
【数13】
【0058】
数13式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。受信ミキサ30において次々に得られる数13式の乗算結果は、LPF36,38を経て加算部46,48に出力され、加算部46,48において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は次式のように表現できる。
【0059】
【数14】
【0060】
数14式の第2項は、数10式により0となる。数14式の第1項におけるΣの項は、数10式に示すとおりであり、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。一方、数14式の第1項のsinθklは、kとlが互いに等しい場合に0となる。つまり、次式に示すとおり、相互干渉電力については、kとlが互いに等しい場合でもkとlが互いに異なる場合でも常に0となる。
【0061】
【数15】
【0062】
以上の解析から、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って加算することにより、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。
【0063】
次に、正弦パターンと余弦パターンの具体例について説明する。パターン長を8(N=8)とすると、数1式から、余弦パターンA(数16式)と正弦パターンB(数17式)が得られる。
【0064】
【数16】
【0065】
【数17】
【0066】
余弦パターンAと正弦パターンBを構成する各数値(各符号)は、単純な2値符号とは異なり、−1と+1との間で離散的な値をとる。また、余弦パターンAと正弦パターンBを利用して形成される送信信号(数2式)の振幅は次式のように算出されるため、常に1となり、送信信号の振幅が時間的に変動しないことがわかる。
【0067】
【数18】
【0068】
余弦パターンAと正弦パターンBを数2式に適用して得られる送信信号は次式のようになる。
【0069】
【数19】
【0070】
図2は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。つまり、図2に示す送信信号は、数19式で表現される信号である。また、図3は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。図2と図3に示す送信信号は、余弦パターンAと正弦パターンBを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させ、その位相パターンを繰り返すことにより得られる連続波(位相シフト連続波)となっている。
【0071】
<位置選択性について>
図4は、参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。図4には、数19式の送信信号を利用した場合に、ある深さから得られる受信信号の位相(受信波の位相)が示されている。また、図4には、数19式の送信信号を遅延処理して得られる参照信号の位相(参照波の位相φ0〜φ7)も示されている。そして、受信信号と各参照信号を乗算して得られる出力と、1パターン(パターン長8)に亘る出力の合計も図示されている。図4に示すように、参照波の位相がφ0の場合に、受信波の位相と参照波の位相が互いに一致して合計が8となり、参照波の位相がφ0以外では合計が0となる。
【0072】
図5は、乗算器出力の具体例を示す図である。図5には、数19式の送信信号を利用した場合に、距離軸方向のφ0からφ8までの各深さにおいて、時間軸方向の1ビット長ごとに得られる乗算器出力(受信ミキサ30の出力)が示されている。また、位相パターンの1周期(8ビット長)に亘って得られる乗算器出力の加算値も図示されている。図5に示す深さφ0からφ7の各々は、図4に示す参照波の位相φ0からφ7に対応した深さである。また、図5に示す深さφ8は、位相パターンを繰り返した際に、1周期後の参照波の位相φ0に対応する深さである。
【0073】
図5に示す深さφ0と深さφ8では、位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って、参照信号と受信信号との間で位相が全て一致するため(図4参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さφ1からφ7では、参照信号と受信信号との間で位相がずれているため(図4参照)、乗算器出力がランダムに変化している。なお、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる(図4参照)。
【0074】
そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さφ0と深さφ8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。乗算器出力を平均化する場合には、例えば、加算部46,48に代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0075】
図5に示すように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7の受信信号に関する乗算器出力は、加算または平均化することによりゼロになるものの、1ビット長ごとにランダムに変動している。この変動のために、位相パターンを繰り返す位相シフト連続波を利用して得られる乗算器出力の周波数スペクトラムには、位相パターンの1周期(NTb)の逆数fpの整数倍に対応した線スペクトラムが現れる。
【0076】
図6は、位相シフト連続波(位相変調された連続波)を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。図6(A)は、受信信号の周波数スペクトラムを示している。受信信号は、生体内における減衰を無視すると送信信号と同じ波形となる。送信信号は、位相シフト連続波であり、したがって、受信信号の周波数スペクトラムも、位相シフト連続波の周波数スペクトラムとなる。周波数f0は、RF信号の周波数である。RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。また周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔Tbの逆数となる。
【0077】
図6(B)は、受信ミキサ30における乗算により得られるベースバンド信号の周波数スペクトラムを示している。図6(B)に示す周波数スペクトラムには、直流付近の信号成分と、RF信号の周波数f0の2倍の高調波成分が含まれている。ドプラ信号は、これらの成分に付着した形で出現する。なお、LPF36,38において、周波数f0の2倍の高調波成分が遮断されて直流付近の信号成分のみが抽出される。つまり、図6(B)に示す周波数スペクトラムの周波数0の近傍の信号が抽出される。
【0078】
直流信号成分には、ドプラ信号の他に、固定組織からの反射波に起因するクラッタ信号が含まれている。特に、体表や骨からの反射波は、ドプラ信号よりも数10dBも大きい場合があり、ドプラ信号を測定する際の妨害となる。クラッタ信号は、図6(B)に示すように、位相パターンの繰り返し周波数fpとその高調波成分を含んでおり、ドプラ信号に重畳される。
【0079】
クラッタ信号は、目標位置を対象とした選択的な復調処理を施した場合においても、受信ミキサ30から出力されるベースバンド信号内に現れる。選択的な復調処理は、測定対象となる例えば血流などからの受信信号の位相パターンと参照信号の位相パターンとを互いに一致させる処理である。測定対象とは異なる位置に存在する組織などについては、位相パターンに関する一致は成立していない。したがって、図5に示したように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7に組織がある場合に、乗算器出力が1ビット長ごとにランダムに変動し、図6(B)に示すようにクラッタ信号が発生する。
【0080】
図5を利用して説明したように、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる。そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を加算または平均化することにより、図6(B)に示すクラッタ信号を低減または除去することができる。そこで、図1の超音波診断装置では、以下に説明する巡回的な送信処理を実行して、クラッタ信号を低減または除去している。
【0081】
<巡回的な送信処理について>
巡回的な送信処理には、余弦パターンを巡回して得られる巡回余弦パターンと、正弦パターンを巡回して得られる巡回正弦パターンが利用される。
【0082】
図7は、余弦パターンの巡回を説明するための図である。図7には、余弦パターンに関する繰り返し列α1,α2,・・・,αmが示されている。各繰り返し列に含まれる余弦パターンは、数1式で定義されるaiであり、図7においてパターン長Nの余弦パターンは、nビットごとにつまりn個の数値(符号)ごとにm個のブロックに分割されている。nとmは共に自然数でありn×m=Nである。
【0083】
繰り返し列α1に含まれる余弦パターンA1は、第1ブロックを先頭として、第1ブロックから昇順に第mブロックまでのm個のブロックに分割される。その余弦パターンA1をL回(Lは自然数)だけ繰り返した列が、繰り返し列α1である。
【0084】
繰り返し列α2に含まれる余弦パターンA2は、第2ブロックを先頭として、第2ブロックから昇順に第mブロックまでを配置した後に第1ブロックを配置したm個のブロックからなるパターンである。つまり、余弦パターンA2は、余弦パターンA1の先頭にある第1ブロックを最後尾にシフトさせたパターンである。その余弦パターンA2をL回だけ繰り返した列が、繰り返し列α2である。
【0085】
さらに、余弦パターンA2の先頭ブロックを最後尾にシフトさせて余弦パターンA3が形成され、その余弦パターンA3をL回だけ繰り返した繰り返し列α3が形成される。こうして、段階的に余弦パターンの先頭ブロックを最後尾にシフトさせつつ、段階的に繰り返し列α4,α5,・・・が次々に形成され、最終的に繰り返し列αmが得られる。
【0086】
繰り返し列αmに含まれる余弦パターンAmは、第mブロックを先頭としそれに続いて第1ブロックから昇順に第(m−1)ブロックまでを配置したm個のブロックからなるパターンである。その余弦パターンAmをL回だけ繰り返した列が繰り返し列αmである。
【0087】
図8は、正弦パターンの巡回を説明するための図である。図8には、正弦パターンに関する繰り返し列β1,β2,・・・,βmが示されている。各繰り返し列に含まれる正弦パターンは、数1式で定義されるbiである。図7の余弦パターンと同様に、図8におけるパターン長Nの正弦パターンは、nビットごとに(n個の数値)m個のブロックに分割されている。nとmは共に自然数でありn×m=Nである。
【0088】
繰り返し列β1に含まれる正弦パターンB1は、第1ブロックを先頭として、第1ブロックから昇順に第mブロックまでのm個のブロックに分割される。その正弦パターンB1をL回(Lは自然数)だけ繰り返した列が、繰り返し列β1である。なお、図7の余弦パターンA1と図8の正弦パターンB1の組み合わせに基づいて、先に説明した位相シフト処理が行われる。
【0089】
繰り返し列β2に含まれる正弦パターンB2は、第2ブロックを先頭として、第2ブロックから昇順に第mブロックまでを配置した後に第1ブロックを配置したm個のブロックからなるパターンである。つまり、正弦パターンB2は、正弦パターンB1の先頭にある第1ブロックを最後尾にシフトさせたパターンである。その正弦パターンB2をL回だけ繰り返した列が、繰り返し列β2である。
【0090】
さらに、正弦パターンB2の先頭ブロックを最後尾にシフトさせて正弦パターンB3が形成され、その正弦パターンB3をL回だけ繰り返した繰り返し列β3が形成される。こうして、段階的に正弦パターンの先頭ブロックを最後尾にシフトさせつつ、段階的に繰り返し列β4,β5,・・・が次々に形成され、最終的に繰り返し列βmが得られる。
【0091】
繰り返し列βmに含まれる正弦パターンBmは、第mブロックを先頭としそれに続いて第1ブロックから昇順に第(m−1)ブロックまでを配置したm個のブロックからなるパターンである。その正弦パターンBmをL回だけ繰り返した列が繰り返し列βmである。
【0092】
図9は、巡回的な位相パターンを説明するための図である。図1の余弦パターン処理部22Aは、図9(A)に示す巡回余弦パターンに従って余弦波の振幅を変化させる。図9(A)の巡回余弦パターンは、図7の繰り返し列α1,α2,・・・,αmを直列的に接続したパターンであり、繰り返し列αmに続いて繰り返し列α1以降の列がさらに接続される。
【0093】
一方、図1の正弦パターン処理部22Bは、図9(B)に示す巡回正弦パターンに従って正弦波の振幅を変化させる。図9(B)の巡回正弦パターンは図8の繰り返し列β1,β2,・・・,βmを直列的に接続したパターンであり、繰り返し列βmに続いて繰り返し列β1以降の列がさらに接続される。
【0094】
そして、図9(A)の巡回余弦パターンと図9(B)の巡回正弦パターンを利用して数2式に基づいて連続波の送信信号が形成される。図9(P)は、その送信信号の位相パターンを示している。
【0095】
図9(P)に示す巡回位相パターンは、位相パターンP1,P2,P3,・・・,Pmで構成される。位相パターンP1は、余弦パターンの繰り返し列α1と正弦パターンの繰り返し列β1に対応した位相パターンであり、位相パターンP2は、余弦パターンの繰り返し列α2と正弦パターンの繰り返し列β2に対応した位相パターンである。また、位相パターンPmは、余弦パターンの繰り返し列αmと正弦パターンの繰り返し列βmに対応した位相パターンである。このように、余弦パターンと正弦パターンの繰り返し列に応じた位相パターンが次々に得られる。
【0096】
そして、図9(P)に示す巡回位相パターンを備えた連続波の送信信号に基づいて超音波が送受され、この送信信号に対応した受信信号が得られる。
【0097】
図10は、巡回位相パターンの送信信号を利用して得られる受信信号の処理を説明するための図である。図10には、図9(P)に示す巡回位相パターンの送信信号を利用した場合に得られる復調信号が示されている。例えば、図10の信号列Y1は、図9(P)の位相パターンP1に対応した時間帯の復調信号であり、図10の信号列Y2は、図9(P)の位相パターンP2に対応した時間帯の復調信号である。図9(P)に示す巡回位相パターンの送信信号を利用することにより、図10の最下段に示すように、信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られる。
【0098】
なお、ミキサ32(図1)から、同相信号成分(I信号成分)に対応した信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られ、ミキサ34(図1)から、直交信号成分(Q信号成分)に対応した信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られる。
【0099】
各信号列に含まれるSUM1,SUM2,・・・,SUMmは、nビット長ごとに部分的に加算処理された復調信号を示している。例えば、SUM1は、nビット長の第1ブロック(図7,8参照)に対応した部分的な復調信号の加算結果であり、SUM2は、nビット長の第2ブロック(図7,8参照)に対応した部分的な復調信号の加算結果である。このように、各ブロックごとに復調信号が加算処理される。この加算処理は、例えば加算部46,48において実行される。パターン長Nの余弦パターンと正弦パターンは、各々がm個のブロックで構成されるため(図7,8参照)、パターン長Nの期間内にm個の加算結果(SUM)が得られる。
【0100】
信号列Y1は、余弦パターンA1(図7)と正弦パターンB1(図8)から得られる位相パターンP1(図9)に対応している。そのため、信号列Y1は、パターン長Nの期間内において、SUM1を先頭としてSUM1から昇順にSUMmまでのm個の加算結果で構成され、これがパターン長Nごとに繰り返される。
【0101】
信号列Y2は、余弦パターンA2と正弦パターンB2から得られる位相パターンP2に対応している。そのため、信号列Y2は、パターン長Nの期間内において、SUM2を先頭としてSUM2から昇順にSUMmまでの加算結果の後にSUM1を加えたm個の加算結果で構成され、これがパターン長Nごとに繰り返される。
【0102】
余弦パターンと正弦パターンの先頭ブロックが段階的にシフトされるため(図7,8参照)、各信号列を構成するパターン長Nの先頭の加算結果(SUM)も、信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymの順に段階的にシフトされる。
【0103】
信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymは、FFT処理部50(図1)において、各信号列ごとにFFT演算される。その結果、各信号列ごとに復調信号が周波数スペクトラムに変換される。さらに、複数の信号列から得られる複数の周波数スペクトラムがFFT処理部50において加算処理される。
【0104】
複数の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymに対応した複数の周波数スペクトラムを加算することは、これら複数の信号列に含まれる同時刻(互いに対応する時刻)における信号同士を加算することに相当する。つまり、図10に矢印で示す繰り返し方向に沿って並んだ複数の加算結果(SUM)がさらに加算されることに相当する。これにより、例えばパターン長Nの期間の先頭に位置する信号列Y1のSUM1、信号列Y2のSUM2、信号列Y3のSUM3、・・・、信号列YmのSUMmが加算される。
【0105】
つまり、位相パターンの1周期に亘って得られるSUM1からSUMmまでの部分的な復調信号が全て加算処理されることに等しい。なお、パターン長Nの期間の先頭以外においても、矢印で示す繰り返し方向に沿って並んだ複数の加算結果(SUM)が加算され、SUM1からSUMmまでの部分的な復調信号が全て加算処理されることに等しい。これにより、先に詳述したとおり、図6(B)に示すクラッタ信号が低減され、望ましくは完全に除去される。
【0106】
なお、最初の時相の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが得られると、それに引き続いて次の時相の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymが次々に得られる。そのため、次の時相の信号列Y1が得られたタイミングで、その信号列Y1と最初の時相の信号列Y2,Y3,・・・,Ymとを利用し、周波数スペクトラムの加算処理を実行してもよい。これにより、次の時相の信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymの各々が得られるタイミングで、周波数スペクトラムの加算結果を得ることができる。
【0107】
また、図10を利用して説明した処理では、各信号列ごとに復調信号が周波数スペクトラムに変換される。その変換において、nビット長ごとに得られる加算結果(SUM)が利用される。つまりnビット長間隔のデータに基づいて周波数スペクトラムが得られる。1ビットの時間長をTbとすると、nビットの時間長はnTbであり、この時間間隔で得られるデータのサンプリング周波数はfs=1/nTbとなる。周波数の折り返しを伴わずに測定可能な最大ドプラ周波数はサンプリング周波数fsの1/2である。そのため、測定可能な最大ドプラ周波数は、1ブロックを構成するビット数「n」により決定されることとなる。
【0108】
また、FFT処理部50(図1)におけるFFT演算後の周波数分解能Δfは、FFT演算前の処理対象データの時間長Tに依存する。つまり、Δf=1/Tの関係がある。図10に示した処理では、各信号列が処理対象データであり、その時間長はT=NTb×Lである。つまりL=T/NTb=1/(Δf・NTb)となる。そのため、例えば、周波数分解能Δfを50Hzとし、パターン長Nの繰り返し周波数fp(=1/NTb)を5kHzとするとL=100となる。つまり、図7,8における同一パターンの繰り返し数であるLを100に設定すればよいことになる。
【0109】
また、パターン長Nの繰り返し周波数fpを5kHzとすると、その逆数である繰り返し周期Tpは200μs(マイクロ秒)となる。そこで、診断可能な最大の深さである診断距離dを次式のように設定する。なお、次式においてcは生体内の平均音速である。
【0110】
【数20】
【0111】
距離分解能Δdを診断距離dの1/153とすると、Δdは1mm(ミリメートル)となり、この距離分解能Δdを時間長τに換算すると次式のようになる。
【0112】
【数21】
【0113】
距離分解能Δdの時間長τは、パターン長Nのパターンを構成している各数値(各符号)の時間長つまりビット長に相当する。時間長τの符号が繰り返し周期Tpのパターンを構成する場合、そのパターンに含まれる符号数は次式により153個となる。
【0114】
【数22】
【0115】
つまり、上記の例におけるパターン長Nは153個となる。そこで、パターン長Nが偶数であるという条件を適用すると、パターン長Nが例えば152又は154に設定される。なお、パターンの繰り返し周波数fpが5kHzでありブロック数mが2に設定されると、各ブロックに対応した加算結果(SUM)の周期、つまりサンプリング周波数fsが10kHzとなる。この場合に、測定可能な最大ドプラ周波数は、サンプリング周波数fsの1/2であるため、5kHzとなる。
【0116】
周波数分解能ΔfとFFT演算前の処理対象データの時間長T(=NTb×L)との間には、Δf=1/Tの関係がある。そのため、周波数分解能Δfを例えば50Hzとすると、処理対象データの時間長Tは20ms(ミリ秒)となる。例えば、図10における各信号列Y1,Y2,Y3,・・・,Ymの長さT(=NTb×L)が20msとなる。そして、ブロック数mが例えば2の場合には、図10において、二つの信号列Y1,Y2に基づいて加算処理が実現できる。つまり、この例の場合には、20ms×2=40msの信号取得時間があれば、クラッタ信号を低減または除去しつつドプラ信号を得ることが可能になる。
【0117】
上述した例では、パターン繰り返し周波数fpを5kHz、距離分解能Δdを1mm、最大ドプラ周波数fdを5kHz、周波数分解能Δfを50Hzに設定している。但し、これはあくまでも設定の一例であり、最大ドプラ周波数fdを2kHz,10kHzなどに設定してもよい。また、最大ドプラ周波数fdを5kHzに固定し、周波数分解能Δfを100Hz,50Hz,20Hz,10Hzなどに設定してもよい。
【0118】
以上、図7から図10を利用して、巡回的な送信処理によるクラッタ信号の低減について説明した。次に、巡回的な受信処理によるクラッタ信号の低減について説明する。
【0119】
<巡回的な受信処理について>
巡回的な受信処理では、送信時において、余弦パターンや正弦パターンを巡回させない。例えば、図7に示す繰り返し列α1のみで構成された余弦パターンと、図8に示す繰り返し列β1のみで構成された正弦パターンに基づいて得られる、図9に示す位相パターンP1のみを繰り返す連続波の送信信号が利用される。
【0120】
図11は、巡回的な受信処理を説明するための図である。図11には、位相パターンを巡回させない送信信号を利用した場合に得られる復調信号が示されている。図11の信号列Yは、例えば、位相パターンP1(図9参照)のみを繰り返す送信信号に対応した復調信号である。なお、ミキサ32(図1)から、同相信号成分(I信号成分)に対応した信号列Yが得られ、ミキサ34(図1)から、直交信号成分(Q信号成分)に対応した信号列Yが得られる。
【0121】
信号列Yに含まれるS1,S2,S3,・・・,Smの各々は、SUM1,SUM2,・・・,SUMmに対応しており、nビット長ごとに部分的に加算処理された復調信号を示している。この加算処理は、例えば加算部46,48(図1)において実行される。パターン長Nの余弦パターンと正弦パターンの各々がm個のブロックで構成される場合にはパターン長Nごとにm個の加算結果Sが得られる。信号列Yは、例えばシフトレジスタなどに一時的に記憶される。シフトレジスタは、例えば、m×(m+1)段以上の長さである。つまり、m×(m+1)個以上の加算結果Sがシフトレジスタに記憶される。
【0122】
なお、信号列Yの取得開始からm×n×(m+1)×Tb時間後には、一時的に必要とされる信号列Yがシフトレジスタ内に全て揃うため、その後は、一つの加算結果Sが得られるごとに、つまりn×Tb時間ごとに、シフトレジスタの内容を1段ずつずらして順次更新するようにしてもよい。
【0123】
シフトレジスタに一時的に記憶された信号列Yは、(m+1)個の加算結果Sごとに区切られて、二次元的な記憶構造を備えたメモリに記憶される。なお、1次元的な記憶構造を備えた複数のメモリを並列的に配列して二次元的な記憶構造を実現してもよい。
【0124】
図11に示すメモリは、各段がA1からAm+1のアドレスを備え、D1からDmまでのm段で構成されている。そして、例えば、シフトレジスタに記憶された信号列Yの先頭のS1から順にSmまでのm個の加算結果Sと、次の繰り返し時相に対応したS1と、からなる(m+1)個の加算結果Sが、メモリの第1段目D1に記憶される。また、次の区切りであるS2,S3,・・・,Sm,S2からなる(m+1)個の加算結果Sが、メモリの第2段目D2に記憶される。こうして、次々に信号列Yが区切られて、信号列Yの取得が開始されてからm×n×(m+1)×Tb時間後に、メモリの最終段である第m段目Dmまで加算結果Sが記憶される。
【0125】
メモリの第1段目D1から第m段目Dmまで加算結果Sが記憶されると、メモリの段方向に沿って、つまりD1からDmに向かって、加算結果Sがさらに加算処理される。例えば、D1からDmまでの各段の先頭アドレスA1に記憶されたS1からSmまでの加算結果Sが加算処理され、また、D1からDmまでの各段のアドレスA2に記憶されたS2からS1までの加算結果Sが加算処理される。こうして、各アドレスごとに、S1からSmまでの加算結果Sが加算処理され、FFT処理部50(図1)へ出力される。
【0126】
S1からSmまでの加算結果Sを全て加算する処理は、位相パターンの1周期に亘って得られるSUM1からSUMmまでの部分的な復調信号を全て加算することに相当する。そのため、クラッタ信号が低減され、望ましくは完全に除去されることは、先に説明したとおりである。
【0127】
なお、各アドレスごとに得られる加算処理後の復調信号は、例えば、アドレスA1,A2,・・・の順にn×Tb時間ごとにFFT処理部50へ出力される。これにより、FFT処理部50において、n×Tb時間ごとに得られるデータに基づいてFFT演算が実行される。つまり、サンプリング周波数が比較的高いため、例えば、ドプラ信号のリアルタイム表示などが実現できる。
【0128】
また、メモリに記憶された内容が各アドレスごとに加算されて全ての内容がFFT処理部50へ出力された後に、メモリの内容も更新される。一時的に必要とされる信号列Yがm×n×(m+1)×Tb時間の間隔で揃うため、例えば、この間隔ごとにメモリの内容が更新される。
【0129】
また、シフトレジスタ内に、m×(m+1)個の全ての加算結果Sが記憶される前に、例えば(m+1)個の加算結果Sが揃うごとに、(m+1)個の加算結果Sをメモリに記憶させるようにしてもよい。これにより、シフトレジスタの段数を比較的小さくすることが可能になる。
【0130】
また、n×Tb時間ごとにシフトレジスタの内容を1段ずつずらして順次更新する構成とし、シフトレジスタ内にS1,S2,・・・,Smのm個の加算結果Sが記憶された段階でこれらm個の加算結果Sを加算処理し、n×Tb時間後にシフトレジスタ内にS2,S3,・・・,Sm,S1のm個の加算結果Sが記憶された段階でこれらm個の加算結果Sを加算処理する構成としてもよい。これにより、S1からSmまでの全ての加算処理結果をn×Tb時間ごとに得ることができる。
【0131】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0132】
22A 余弦パターン処理部、22B 正弦パターン処理部、24 合成処理部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、46,48 加算部、50 FFT処理部、52 ドプラ情報解析部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、
前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、
生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、
前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、2列の数値パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンを前記2列の数値パターンとする連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、前記正弦パターンに従って振幅を変化させる正弦波と、前記余弦パターンに従って振幅を変化させる余弦波と、を合成することにより、前記連続波の送信信号を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の超音波診断装置において、
前記正弦パターンは、互いに異なるN個(Nは自然数で偶数)の位相値に対応したN個の正弦関数値で構成され、
前記余弦パターンは、当該N個の位相値に対応したN個の余弦関数値で構成され、
前記連続波の送信信号は、当該N個の位相値に対応したパターン長Nの位相パターンを備える、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、パターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力し、
前記受信信号処理部は、パターン長Nをn個(nは自然数)ごとにmブロック(mは自然数)に分割し、各ブロックごとの部分的な復調信号を得てから、mブロックに亘る部分的な復調信号を加算して前記目標位置に対応した復調信号を得る、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、一定期間ごとに1ブロックずつシフトさせつつ、mブロックからなるパターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、
前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、
生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、
前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、2列の数値パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンを前記2列の数値パターンとする連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、前記正弦パターンに従って振幅を変化させる正弦波と、前記余弦パターンに従って振幅を変化させる余弦波と、を合成することにより、前記連続波の送信信号を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の超音波診断装置において、
前記正弦パターンは、互いに異なるN個(Nは自然数で偶数)の位相値に対応したN個の正弦関数値で構成され、
前記余弦パターンは、当該N個の位相値に対応したN個の余弦関数値で構成され、
前記連続波の送信信号は、当該N個の位相値に対応したパターン長Nの位相パターンを備える、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、パターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力し、
前記受信信号処理部は、パターン長Nをn個(nは自然数)ごとにmブロック(mは自然数)に分割し、各ブロックごとの部分的な復調信号を得てから、mブロックに亘る部分的な復調信号を加算して前記目標位置に対応した復調信号を得る、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、一定期間ごとに1ブロックずつシフトさせつつ、mブロックからなるパターン長Nの位相パターンを繰り返すように前記連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−70874(P2012−70874A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217262(P2010−217262)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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