説明

超音波診断装置

【課題】構造物の感度が良くてアーティファクトが目立ちにくい画像を生成することが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】この実施形態に係る医用画像処理装置は、撮影手段と、演算手段と、合成手段とを有する。撮影手段は、複数の異なる偏向角に超音波を偏向させて被検体に超音波を送信し、被検体からのエコー信号を受信して、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の超音波画像データを生成する。演算手段は、複数の超音波画像データに基づいて、複数の超音波画像データ間の偏向角への角度依存の傾向を求める。合成手段は、角度依存の傾向に応じて複数の超音波画像データの重みを変えて複数の超音波画像データを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置において、コンパウンド走査(compound scanning)という技術がある。コンパウンド走査においては、偏向角が変更されて被検体に超音波(送信ビーム)が送信される。また、コンパウンド走査においては、偏向角を異ならせた各送信ビームに基づき、複数の超音波画像データが生成される。また、コンパウンド走査というにおいては、これら複数の超音波画像データを合成して表示する。超音波画像データの合成方法としては、一例として加算平均がある。超音波診断装置によって受信されるエコー信号の強度は、生体内の構造物と送信ビームとのなす角度によって変化する。例えば、血管の短軸断面をリニア型の超音波プローブを用いて走査した場合、血管の上下の内膜は比較的明瞭に描出されるが、左右の内膜は描出しづらい。そこで、送信ビームの偏向角を変えた複数の超音波画像を合成することにより、角度依存によるエコー信号の欠落が相互に補間される。その結果、構造物をより明瞭に抽出することができる。また、送信ビームの偏向角が変わると、サイドローブや多重反射などのアーティファクトは、発生する位置や強度が変化する。送信ビームの偏向角を変えた複数の超音波画像を加算平均すると、アーティファクトを相対的に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−82469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ある部位を走査するときに、ある偏向角の送信ビームによっては感度の良い画像データが得られても、別の偏向角の送信ビームによって走査すると、感度が低下した画像データが得られる場合がある。このように感度の良い画像データと、感度の悪い画像データとが加算平均されると、その部位の信号強度が低下してしまう。信号強度の低下を回避する方法として、複数の超音波画像データのうち、同じ位置での画素値の最大値を表示する方法がある。この方法によると、構造物の信号低下を防ぐことができるが、アーティファクトが目立ちやすくなってしまうことがある。
【0005】
この実施形態は、感度が良くてアーティファクトが目立ちにくい構造物の画像を生成することが可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この実施形態に係る医用画像処理装置は、撮影手段と、演算手段と、合成手段とを有する。撮影手段は、複数の異なる偏向角に超音波を偏向させて被検体に超音波を送信する。また、撮影手段は被検体からのエコー信号を受信して、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の超音波画像データを生成する。演算手段は、複数の超音波画像データに基づいて、複数の超音波画像データ間の偏向角への角度依存の傾向を求める。合成手段は、角度依存の傾向に応じて複数の超音波画像データの重みを変えて複数の超音波画像データを合成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。
【図2】スキャンの概念を示す図である。
【図3】超音波画像を模式的に示す図である。
【図4】スキャンの概念を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。
【図7】第2実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1の実施の形態]
図1を参照して、第1実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図1は、第1実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。第1実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、送受信部2と、信号処理部3と、画像生成部4と、演算部5と、合成部6と、表示制御部7と、ユーザインターフェース(UI)8と、制御部9とを有する。
【0009】
(超音波プローブ1)
超音波プローブ1には、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配置された1次元アレイプローブ、又は、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブが用いられる。超音波プローブ1は被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信する。
【0010】
(送受信部2)
送受信部2は、送信部21と受信部22とを有する。送受信部2は、超音波プローブ1に電気信号を供給して超音波を発生させる。また、送受信部2は、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信する。
【0011】
(送信部21)
送信部21は、超音波プローブ1に電気信号を供給して超音波を発生させる。送信部21は、超音波プローブ1に電気信号を供給して所定の焦点にビームフォームした(送信ビームフォームした)超音波を送信させる。送信部21は、例えば図示しないクロック発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路とを有する。クロック発生器は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延をかける。すなわち送信遅延回路は、集束用遅延時間により超音波を所定の深さに集束させ、偏向用遅延時間により超音波を所定方向に送信し、送信フォーカスを実施する。パルサ回路は、各超音波振動子に対応する個別チャンネルの数分のパルサを有する。パルサ回路は、遅延がかけられた送信タイミングで駆動パルスを生成し、超音波プローブ1の各超音波振動子に駆動パルスを供給する。
【0012】
(受信部22)
受信部22は、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信する。また、受信部22はそのエコー信号に対して遅延処理を行う。この処理により、アナログのエコー信号は整相された(受信ビームフォームされた)デジタルのデータに変換される。受信部22は、例えば図示しないプリアンプ回路と、A/D変換器と、受信遅延回路と、加算器と有する。プリアンプ回路は、超音波プローブ1の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。具体的には、受信遅延回路は、所定の深さからの超音波を集束させるための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間とを、デジタルのエコー信号に与える。加算器は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。その加算によって、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。すなわち、受信遅延回路と加算器とによって、所定方向から得られたエコー信号は整相加算される。受信部22は、遅延処理が施されたエコー信号を信号処理部3に出力する。
【0013】
(信号処理部3)
信号処理部3はBモード処理部を有する。Bモード処理部はエコー信号を受信部22から受けて、エコー信号の振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は、エコー信号に対してバンドパスフィルタ処理を行う。その後、Bモード処理部は、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。また、信号処理部3はCFM(Color Flow Mapping)処理部を有していてもよい。CFM処理部は血流情報の映像化を行う。血流情報は2値化情報として得られる。血流情報には、速度、分布、又はパワーなどの情報がある。また、信号処理部3はドプラ処理部を有していてもよい。ドプラ処理部はエコー信号を位相検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出す。また、ドプラ処理部は、FFT処理を施すことにより血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。信号処理部3は、信号処理が施されたエコー信号(超音波ラスタデータ)を画像生成部4に出力する。
【0014】
(画像生成部4)
画像生成部4は、信号処理部3から出力された信号処理後のエコー信号(超音波ラスタデータ)に基づいて超音波画像データを生成する。画像生成部4は、例えばDSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を有する。画像生成部4は、走査線の信号列で表される信号処理後のエコー信号を、直交座標系で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。画像生成部4は、Bモード処理部によって信号処理が施されたエコー信号にスキャンコンバージョン処理を施す。このスキャンコンバージョン処理により、被検体の組織の形状を表すBモード画像データが生成される。画像生成部4は、演算部5と合成部6とにそれぞれ超音波画像データを出力する。
【0015】
例えば超音波プローブ1及び送受信部2は、被検体内の断面を超音波で走査する。画像生成部4は、断面における組織の形状を2次元的に表すBモード画像データ(断層像データ)を生成する。また、超音波プローブ1及び送受信部2は、3次元領域を超音波で走査することによりボリュームデータを取得してもよい。この場合、画像生成部4は、ボリュームデータにボリュームレンダリングを施してもよい。ボリュームレンダリングにより、組織の形状を立体的に表す3次元画像データが生成される。または、画像生成部4は、ボリュームデータにMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施してもよい。MPR処理により、任意の断面における画像データ(MPR画像データ)が生成される。なお、超音波プローブ1と送受信部2と信号処理部3と画像生成部4とによって、「撮影手段」の一例を構成する。
【0016】
この実施形態に係る超音波診断装置は、図示しない画像記憶部を備えていてもよい。画像記憶部は、この実施形態に係る超音波診断装置により得られたデータを記憶する。例えば画像記憶部は、受信部22にから出力されたエコー信号を記憶する。また、画像記憶部は、信号処理部3から出力された超音波ラスタデータを記憶しても良い。また、画像記憶部は、画像生成部4から出力された断層像データなどの超音波画像データを記憶してもよい。
【0017】
(コンパウンドスキャン)
この実施形態に係る超音波診断装置は、複数の異なる偏向角に超音波を偏向させて超音波を送受信する。また超音波診断装置は、受信したエコー信号に基づき、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の超音波画像データを生成する。例えば制御部9が、偏向角の制御を行う。制御部9は、偏向角を示す情報を含む制御信号を送受信部2に出力する。送受信部2は制御部9の制御の下、偏向角を変えて超音波の送受信を行う。操作者が操作部82を用いて任意の偏向角を入力してもよいし、偏向角が制御部9に予め設定されていてもよい。例えば操作者が操作部82を用いて複数の異なる偏向角を入力すると、各偏向角を示す情報が、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9に出力される。制御部9は、操作部82から入力された偏向角に従って送受信部2による超音波の送受信を制御する。なお、複数の異なる偏向角の方向に超音波を送受信するスキャンを、コンパウンドスキャンと称する場合がある。図2を参照して、コンパウンドスキャンについて説明する。図2は、スキャンの概念を示す図である。この実施形態では、超音波画像データの一例として断層像データを生成する場合について説明する。
【0018】
一例として、3つの異なる偏向角に超音波を偏向させて超音波を送受信し、偏向角がそれぞれ異なる3つの断層像データを生成する場合について説明する。送受信部2は制御部9の制御の下、第1の偏向角、第2の偏向角、及び第3の偏向角にそれぞれ超音波を偏向させて超音波を送受信する。第1の偏向角は、第2の偏向角と第3の偏向角との間の角度である。第1の偏向角の一例として、偏向の角度が0°である場合について説明する。すなわち、第1の偏向角は、超音波を偏向させない場合の角度に相当する。第2の偏向角と第3の偏向角とは、第1の偏向角を間にして互いに反対側に偏向した角度である。第1の偏向角、第2の偏向角、及び第3の偏向角は、操作者が操作部82を用いて入力すればよい。
【0019】
画像生成部4は、超音波が第1の偏向角に偏向された断層像データCを生成する。また、画像生成部4は、超音波が第2の偏向角に偏向された断層像データL1を生成する。また、超音波が第3の偏向角に偏向された断層像データR1を生成する。図2に、各断層像データを模式的に示す。図2に示す断層像データCは、超音波が第1の偏向角(偏向の角度が0°)に偏向された画像データである。すなわち、断層像データCは、超音波を偏向させないで得られた画像データである。断層像データL1は、超音波が第2の偏向角(図2において左側)に偏向された画像データである。断層像データR1は、超音波が第3の偏向角(図2において右側)に偏向された画像データである。断層像データC、断層像データL1、及び断層像データR1は、後述する合成部6によって合成される。この合成によって、図2に示す合成画像データTCが生成される。
【0020】
(超音波の偏向角とエコー信号の強度との関係)
図3を参照して、超音波の偏向角とエコー信号の強度との関係について説明する。図3は、超音波画像を模式的に示す図である。断層像データC、断層像データL1、及び断層像データR1にはそれぞれ、同じ短軸断面における血管の像が表されている。断層像データCには血管像200が表されている。断層像データL1には血管像300が表されている。断層像データR1には血管像400が表されている。血管像200、血管像300、及び血管像400はそれぞれ、同じ短軸断面における像である。
【0021】
同じ生体の構造体であっても、送信ビーム(超音波)に直交する構造物からのエコー信号の強度は、相対的に高くなる。構造物自体の位置は変化しないものの、エコー信号の強度の分布は、送信ビームの偏向角によって変化する。一方、送信ビーム及び受信ビームの軸上において、超音波プローブ1までの距離の整数倍の位置に、アーティファクトとして現れる。このアーティファクトは生体の構造物と超音波プローブ1の表面とで発生する多重反射によって発生する。
【0022】
例えば断層像データCにおいて、血管像200のうちの領域210が送信ビームに直交する領域である。そのため、領域210からのエコー信号の強度が相対的に高くなる。断層像データCは、偏向の角度が0°の超音波に基づく画像であるため、上下の血管壁に相当する領域210が明瞭に描出される。また、送信ビームの軸上に、虚像220が現れている。
【0023】
断層像データL1においては、血管像300のうちの領域310が送信ビームに直交する領域である。そのため、領域310からのエコー信号の強度が相対的に高くなる。断層像データL1は、第2の偏向角(図2において左側)に偏向された超音波に基づく画像であるため、血管の右側から送信ビームが送信される。そのため、第2の偏向角に応じて傾いた領域310が明瞭に描出される。また、虚像320も第2の偏向角に応じて傾いた位置に現れる。
【0024】
断層像データR1においては、血管像400のうちの領域410が送信ビームに直交する領域である。そのため、領域410からのエコー信号の強度が相対的に高くなる。断層像データR1は、第3の偏向角(図2において右側)に偏向された超音波に基づく画像であるため、血管の左側から送信ビームが送信される。そのため、第3の偏向角に応じて傾いた領域410が明瞭に描出される。また、虚像420も第3の偏向角に応じて傾いた位置に現れる。
【0025】
以上のように、送信ビームの偏向角が変わると、構造物からのエコー信号の強度の分布が変わる。また、送信ビームの偏向角が変わると、アーティファクトが発生する位置及び強度も変わる。この実施形態では、送信ビームの偏向角による構造物からのエコー信号の強度分布の変化、及び送信ビームの偏向角によるアーティファクトの発生位置の変化について、パターン化する。例えば、構造物からのエコー信号の強度分布及びアーティファクトの発生位置を、送信ビームの偏向角ごとに分類する。さらに、その分類を送信ビームの角度依存パターン(角度依存の傾向)として予め定義しておく。
【0026】
(角度依存のパターン)
以下に、角度依存のパターンの一例を示す。
パターンSC:第1の偏向角(偏向角が0°)の送信ビームに反射しやすい構造体からのエコー信号
パターンSL:第2の偏向角の(左側に偏向した)送信ビームに反射しやすい構造体からのエコー信号
パターンSR:第3の偏向角の(右側に偏向した)送信ビームに反射しやすい構造体からのエコー信号
パターンAC:第1の偏向角(偏向角が0°)の送信ビームで発生しやすいアーティファクト
パターンAL:第2の偏向角の(左側に偏向した)送信ビームで発生しやすいアーティファクト
パターンAR:第3の偏向角の(右側に偏向した)送信ビームで発生しやすいアーティファクト
【0027】
図3に示す断層像データCにおいて、血管壁に相当する領域210の像がパターンSCの像に対応する。また、断層像データCにおいて、虚像220がパターンACのアーティファクトに対応する。また、図3に示す断層像データL1において、血管壁に相当する領域310の像がパターンSLの像に対応する。また、断層像データL1において、虚像320がパターンALのアーティファクトに対応する。また、図3に示す断層像データR1において、血管壁に相当する領域410の像がパターンSRの像に対応する。また、断層像データR1において、虚像420がパターンARのアーティファクトに対応する。
【0028】
(演算部5)
演算部5は、差分算出部51と角度依存決定部52とを有する。演算部5は、複数の超音波画像データ間の角度依存のパターン(角度依存の傾向)を求める。角度依存のパターンは、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の断層像データに基づいて求められる。
【0029】
(差分算出部51)
差分算出部51は、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の断層像データ間の互いの差分を求める。また、差分産出部51は、各差分の絶対値を求める。第1の偏向角、第2の偏向角、及び第3の偏向角に超音波を偏向させる場合には、差分算出部51は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)の間の互い差分を求める。そして差分算出部51は、求めた各差分の絶対値を求める。具体的には、差分算出部51は、輝度などの画素値の差分を画素(x,y)ごとに求め、さらにその差分の絶対値を画素(x,y)ごとに求める。一例として、差分算出部51は、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差分の絶対値CR(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。また、差分算出部51は、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)との差分の絶対値CL(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。また、差分算出部51は、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との差分の絶対値LR(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。以下に、絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)の式を示す。
CR(x,y)=|C(x,y)−R1(x,y)|
CL(x,y)=|C(x,y)−L1(x,y)|
LR(x,y)=|L1(x,y)−R1(x,y)|
差分算出部51は、上記式に基づいて求めた差分の絶対値CR(x,y)、CL(x,y)、及びLR(x,y)を角度依存決定部52に出力する。
【0030】
上記の絶対値CR(x,y)、CL(x,y)、及びLR(x,y)は、断層像データの偏向角への角度依存パターン(角度依存の傾向)を決定するために用いられる。絶対値CR(x,y)及びCL(x,y)は、角度依存している方向を決定するために用いられる。すなわち、絶対値CL(x,y)及びCR(x,y)は、第1の偏向角を基準にして、第2の偏向角の方向(左側の方向)又は第3の偏向角の方向(右側の方向)のうちいずれの方向への依存が大きいかを示している。例えば、絶対値CR(x,y)が予め設定された閾値よりも大きい場合には、第3の偏向角の方向(右側の方向)への角度依存が大きいことを示している。また、絶対値LR(x,y)は、角度依存の程度の大きさを示している。断層像データL1と断層像データR1との差が大きくなるほど、絶対値LR(x,y)が大きくなる。そのため、絶対値LR(x,y)によって、角度依存の程度の大きさを判断することができる。なお、絶対値CR(x,y)は第1の差分の一例に相当する。また、絶対値CL(x,y)が第2の差分の一例に相当する。また、絶対値LR(x,y)が第3の差分の一例に相当する。
【0031】
(角度依存決定部52)
角度依存決定部52は、差分算出部51によって求められた差分の絶対値の組み合わせに基づいて、複数の超音波画像データ間の角度依存のパターン(角度依存の傾向)を求める。具体的には、角度依存決定部52は、いずれの偏向角の方向からのエコー信号の強度が相対的に高いのかを求める。又は角度依存決定部52は、いずれの偏向角の方向からのアーティファクトの信号強度が相対的に高いのかを求める。例えば、絶対値CR(x,y)に対する閾値を閾値Th1とする。また、絶対値CL(x,y)に対する閾値を閾値Th2とする。また、絶対値LR(x,y)に対する閾値を閾値Th3とする。これらの閾値は、角度依存のパターンを決定するための基準である。これらの閾値は、例えば図示しない記憶部に予め記憶されている。また、操作者が操作部82を用いて閾値を入力してもよい。
【0032】
角度依存決定部52は、閾値Th1、Th2、Th3を用いて、角度依存パターンADP(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。一例として、7つの条件に分けて角度依存パターンADP(x,y)を求める。
【0033】
(第1の条件)
CR(x,y)<Th1であり、CL(x,y)<Th2であり、LR(x,y)<Th3である場合には、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンSC」とする。すなわち、角度依存決定部52は、第1の偏向角(偏向角が0°)の送信ビームによって構造体から反射したエコー信号の強度が相対的に高いと判断する。絶対値CR(x,y)が閾値Th1未満であり、絶対値CL(x,y)が閾値Th2未満の場合には、エコー信号又はアーティファクトは、偏向角に依存していないと推定される。すなわち、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差が比較的小さく、また、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)との差が比較的小さい場合には、エコー信号又はアーティファクトは、偏向角に依存していないと推定される。また、絶対値LR(x,y)が閾値Th3未満の場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との差が小さく、第2の偏向角の方向(左側の方向)又は第3の偏向角の方向(右側の方向)への依存が小さいと推定される。従って、絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)が第1の条件に該当する場合には、角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンSC」に決定する。
【0034】
(第2の条件)
CR(x,y)<Th1であり、CL(x,y)>Th2であり、LR(x,y)>Th3である場合には、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンSL」とする。すなわち、角度依存決定部52は、第2の偏向角の(左側に偏向した)送信ビームによって構造体から反射したエコー信号の強度が相対的に高いと判断する。絶対値CR(x,y)が閾値Th1未満であり、絶対値CL(x,y)が閾値Th2よりも大きい場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第2の偏向角の方向(左側の方向)に角度依存していると推定される。すなわち、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差が比較的小さく、また、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)との差が比較的大きい場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第2の偏向角の方向(左側の方向)に角度依存していると推定される。また、絶対値LR(x,y)が閾値Th3よりも大きい場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とにおいて、構造体からのエコー信号の強度の差が大きいと推定される。アーティファクトの信号強度は比較的低いため、角度依存があっても、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との差分は比較的小さくなり、絶対値LR(x,y)は閾値Th3未満になると推定される。一方で、構造体からのエコー信号の強度は比較的高いため、角度依存がある場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との差分は比較的大きくなり、絶対値LR(x,y)は閾値Th3よりも大きくなると推定される。従って、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)との差は、構造体からのエコー信号の強度の差であると推定される。従って、絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)が第2の条件に該当する場合には、角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンSL」に決定する。
【0035】
(第3の条件)
CR(x,y)>Th1であり、CL(x,y)<Th2であり、LR(x,y)>Th3である場合には、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンSR」とする。すなわち、角度依存決定部52は、第3の偏向角の(右側に偏向した)送信ビームによって構造体から反射したエコー信号の強度が相対的に高いと判断する。絶対値CR(x,y)が閾値Th1よりも大きく、絶対値CL(x,y)が閾値Th2未満の場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第3の偏向角の方向(右側の方向)に角度依存していると推定される。すなわち、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差が比較的大きく、また、断層像データCと断層像データL1との差が比較的小さい場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第3の偏向角の方向(右側の方向)に角度依存していると推定される。また、第2の条件と同様に、絶対値LR(x,y)が閾値Th3よりも大きい場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とにおいて、構造体からのエコー信号の強度の差が大きいと推定される。従って、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差は、構造体からのエコー信号の強度の差であると推定される。従って、絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)が第3の条件に該当する場合には、角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンSR」に決定する。
【0036】
(第4の条件)
CR(x,y)>Th1であり、CL(x,y)>Th2であり、LR(x,y)<Th3である場合には、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンAC」とする。すなわち、角度依存決定部52は、第1の偏向角(偏向角が0°)の送信ビームによってアーティファクトが発生しやすいと判断する。絶対値CR(x,y)が閾値Th1よりも大きく、絶対値CL(x,y)が閾値Th2よりも大きい場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第2の偏向角の方向(左側の方向)及び第3の偏向角の方向(右側の方向)に角度依存していると推定される。すなわち、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差が比較的大きく、また、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)との差が比較的大きい場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第2の偏向角の方向(左側の方向)又は第3の偏向角の方向(右側の方向)に角度依存していると推定される。また、絶対値LR(x,y)が閾値Th3未満の場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とにおいて、構造体からのエコー信号の強度の差が小さいと推定される。上述したように、構造体からのエコー信号の強度は比較的高いため、角度依存がある場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との差分は比較的大きくなり、絶対値LR(x,y)は閾値Th3よりも大きくなると推定される。一方で、アーティファクトの信号強度は比較的低いため、角度依存があっても、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との差分は比較的小さくなり、絶対値LR(x,y)は閾値Th3未満になると推定される。従って、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差は、アーティファクトの信号強度の差であると推定される。また、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)との差は、アーティファクトの信号強度の差であると推定される。従って、絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)が第4の条件に該当する場合には、角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンAC」に決定する。
【0037】
(第5の条件)
CR(x,y)<Th1であり、CL(x,y)>Th2であり、LR(x,y)<Th3である場合には、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンAL」とする。すなわち、角度依存決定部52は、第2の偏向角の(左側に偏向した)送信ビームによってアーティファクトが発生しやすいと判断する。第2の条件と同様に、絶対値CR(x,y)が閾値Th1未満であり、絶対値CL(x,y)が閾値Th2よりも大きい場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第2の偏向角の方向(左側の方向)に角度依存していると推定される。また、第4の条件と同様に、絶対値LR(x,y)が閾値Th3未満の場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とにおいて、構造体からのエコー信号の強度の差が小さいと推定される。従って、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)との差は、アーティファクトの信号強度の差であると推定される。従って、絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)が第5の条件に該当する場合には、角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンAL」に決定する。
【0038】
(第6の条件)
CR(x,y)>Th1であり、CL(x,y)<Th2であり、LR(x,y)<Th3である場合には、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンAR」とする。すなわち、角度依存決定部52は、第3の偏向角の(右側に偏向した)送信ビームによってアーティファクトが発生しやすいと判断する。第3の条件と同様に、絶対値CR(x,y)が閾値Th1よりも大きく、絶対値CL(x,y)が閾値Th2未満の場合には、エコー信号又はアーティファクトは、第3の偏向角の方向(右側の方向)に角度依存していると推定される。また、第4の条件と同様に、絶対値LR(x,y)が閾値Th3未満の場合には、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とにおいて、構造体からのエコー信号の強度の差が小さいと推定される。従って、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)との差は、アーティファクトの信号強度の差であると推定される。従って、絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)が第6の条件に該当する場合には、角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンAR」に決定する。
【0039】
(第7の条件)
絶対値CR(x,y)、絶対値CL(x,y)、及び絶対値LR(x,y)が、上記の第1〜第6の条件のいずれにも該当しない場合には、角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を「パターンゼロ」に決定する。
【0040】
角度依存決定部52は、各画素(x,y)の角度依存パターンADP(x,y)を示すパターン情報を合成部6に出力する。
【0041】
(合成部6)
合成部6は、複数の断層像データにそれぞれ重みを付けて合成することにより、合成画像データを生成する。この実施形態では、合成部6は、各画素(x,y)の角度依存パターンADP(x,y)に応じて複数の断層像データの各画素(x,y)の重みを変える。合成部6はこの重み付けに基づいて、複数の断層像データを合成する。例えば、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のそれぞれの画素(x,y)の重みを角度依存パターンADP(x,y)に応じて変える。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を合成する。このようにして、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。以下、角度依存パターンADP(x,y)に応じた合成方法について説明する。
【0042】
(パターンSCの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSC」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)+R1(x,y)}/3
第1の偏向角(偏向角が0°)の送信ビームによって構造体から反射したエコー信号の強度が比較的高い場合には、合成部6は、すべての断層像データを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)にそれぞれ同じ重みを付けて加算する。この加算により、合成部6は、合成画像データTC(x,y)を生成する。換言すると、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうちのすべての断層像データを選択し、すべての断層像データを加算平均する。この加算平均により、合成部6は、合成画像データTC(x,y)を生成する。
【0043】
(パターンSLの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSL」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)}/2
第2の偏向角の(左側に偏向した)送信ビームによって構造体から反射したエコー信号の強度が比較的高い場合には、合成部6は、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とに対する重みを「0.5」とし、断層像データR1(x,y)に対する重みを「0」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。換言すると、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうち、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とを選択し、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により合成画像データTC(x,y)を生成する。角度依存パターンADP(x,y)がパターンSLの場合、3つの断層像データのうちエコー信号の感度が良い2つの断層像データを加算平均する。この場合、2つの断層像データは、断層像データC及び断層像データL1である。感度が低い断層像データR1を加算平均に用いないため、3つすべての断層像データを加算平均した場合と比べて、加算平均による感度の低下を抑制することが可能となる。
【0044】
(パターンSRの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSR」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+R1(x,y)}/2
第3の偏向角の(右側に偏向した)送信ビームによって構造体から反射したエコー信号の強度が比較的高い場合には、合成部6は、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とに対する重みを「0.5」とし、断層像データL1(x,y)に対する重みを「0」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。換言すると、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうち、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とを選択し、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。角度依存パターンADP(x,y)がパターンSRの場合、3つの断層像データのうちエコー信号の感度が良い2つの断層像データを加算平均する。この場合、2つの断層像データは、断層像データC及び断層像データR1である。感度が低い断層像データL1を加算平均に用いないため、3つすべての断層像データを加算平均した場合と比べて、加算平均による感度の低下を抑制することが可能となる。
【0045】
(パターンACの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAC」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={L1(x,y)+R1(x,y)}/2
第1の偏向角(偏向角が0°)の送信ビームによってアーティファクトが発生しやすい場合には、合成部6は、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データC(x,y)に対する重みを「0」とし、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とに対する重みを「0.5」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。換言すると、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうち、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とを選択し、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTCを生成する。角度依存パターンADP(x,y)がパターンACの場合、3つの断層像データのうちアーティファクトの感度が低い2つの断層像データを加算平均する。この場合、2つの断層像データは、断層像データL1及び断層像データR1である。アーティファクトの感度が高い断層像データCを加算平均に用いないため、3つすべての断層像データを加算平均した場合と比べて、加算平均によるアーティファクトの増加を抑制することが可能となる。
【0046】
(パターンALの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAL」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+R1(x,y)}/2
第2の偏向角の(左側に偏向した)送信ビームによってアーティファクトが発生しやすい場合には、合成部6は、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データL1(x,y)に対する重みを「0」とし、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とに対する重みを「0.5」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。換言すると、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうち、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とを選択し、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。角度依存パターンADP(x,y)がパターンALの場合、3つの断層像データのうちアーティファクトの感度が低い2つの断層像データを加算平均する。この場合、2つの断層像データは、断層像データC及び断層像データR1である。アーティファクトの感度が高い断層像データL1を加算平均に用いないため、3つすべての断層像データを加算平均した場合と比べて、加算平均によるアーティファクトの増加を抑制することが可能となる。
【0047】
(パターンARの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAR」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)}/2
第3の偏向角の(右側に偏向した)送信ビームによってアーティファクトが発生しやすい場合には、合成部6は、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データR1(x,y)に対する重みを「0」とし、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とに対する重みを「0.5」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。換言すると、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうち、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とを選択し、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTCを生成する。角度依存パターンADP(x,y)がパターンARの場合、3つの断層像データのうちアーティファクトの感度が低い2つの断層像データを加算平均する。この場合、2つの断層像データは、断層像データC及び断層像データL1である。アーティファクトの感度が高い断層像データR1を加算平均に用いないため、3つすべての断層像データを加算平均した場合と比べて、加算平均によるアーティファクトの増加を抑制することが可能となる。
【0048】
(パターンゼロの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンゼロ」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)+R1(x,y)}/3
【0049】
合成部6は、画素(x,y)ごとに上記の合成を行うことにより、合成画像データTC(x,y)を画素(x,y)ごとに生成する。合成部6は、合成画像データTC(x,y)を表示制御部7に出力する。
【0050】
以上のように、構造体からのエコー信号に角度依存がある場合には、3つの断層像データのうち感度が良い断層像データを加算平均することにより、加算平均による感度の低下を防ぐことが可能となる。また、アーティファクトに角度依存がある場合には、3つの断層像データのうち感度が低い断層像データを加算平均することにより、加算平均によるアーティファクトの増加を抑制することが可能となる。すなわち、構造体からのエコー信号については、感度が良い断層像データが選択されるようになる。かつ、アーティファクトについては、感度が低い断層像データが選択されるようになる。これらのことにより、構造物の感度が良くてアーティファクトが目立ちにくい画像を生成することが可能となる。その結果、アーティファクトに基づく像よりも生体信号(構造体からのエコー信号)に基づく像の視認性が向上する。
【0051】
(合成方法の変形例)
合成方法の変形例について説明する。合成部6は、複数の断層像データのうち画素値の最大値又は最小値を用いて合成画像データTC(x,y)を生成してもよい。
【0052】
例えば、角度依存パターンADP(x,y)が、「パターンSC」、「パターンSL」、「パターンSR」のうちのいずれかの場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Max{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
構造体からのエコー信号に角度依存がある場合には、合成部6は、3つの断層像データのうち画素値の最大値を用いて合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうち、最大の画素値を選択して合成画像データTC(x,y)を生成する。
換言すると、合成部6は、最大の画素値に対する重みを「1」とし、最大値以外の画素値に対する重みを「0」にして、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を重み付け加算することにより、合成画像データTC(x,y)を生成する。構造体からのエコー信号に角度依存がある場合には、3つの断層像データのうち画素値の最大値を用いることにより、構造体からのエコー信号の強度が比較的高い断層像データを選択することが可能となる。
【0053】
また、角度依存パターンADP(x,y)が、「パターンAC」、「パターンAL」、「パターンAR」のうちのいずれかの場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Min{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
アーティファクトに角度依存がある場合には、合成部6は、3つの断層像データのうち画素値の最小値を用いて合成画像データTC(x,y)を生成する。すなわち、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のうち、最小の画素値を選択して合成画像データTC(x,y)を生成する。換言すると、合成部6は、最小の画素値に対する重みを「1」とし、最小値以外の画素値に対する重みを「0」にして、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を重み付け加算することにより、合成画像データTC(x,y)を生成する。アーティファクトに角度依存がある場合には、3つの断層像データのうち画素値の最小値を用いることにより、アーティファクトの信号強度が比較的低い断層像データを選択することが可能となる。
【0054】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンゼロ」の場合には、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)+R1(x,y)}/3
すなわち、合成部6は、すべての断層像データを加算平均することにより、合成画像データTC(x,y)を生成する。
【0055】
以上のように変形例に係る合成方法によると、構造体からのエコー信号に角度依存がある場合には、感度が最も良い断層像データが選択され、アーティファクトに角度依存がある場合には、感度が最も低い断層像データが選択される。そのことにより、構造物の感度が良くてアーティファクトが目立ちにくい画像を生成することが可能となる。その結果、アーティファクトに基づく像よりも生体信号(構造体からのエコー信号)に基づく像の視認性が向上する。
【0056】
(表示制御部7)
表示制御部7は、合成画像データTC(x,y)を合成部6から受ける。表示制御部7は、受けた合成画像データTC(x,y)に基づいて、合成画像を表示部81に表示させる。
【0057】
(ユーザインターフェース(UI)8)
ユーザインターフェース(UI)8は、表示部81と操作部82とを有する。表示部81は、CRTや液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されている。操作部82は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成されている。
【0058】
(制御部9)
制御部9は、超音波診断装置の各部の動作を制御する。例えば、制御部9は、送受信部2による超音波の送受信を制御する。
【0059】
なお、3つの断層像データを対象にした合成処理について説明したが、3つ以上の断層像データを合成してもよい。また、この実施形態の超音波診断装置は複数のボリュームデータを合成してもよいし、複数の3次元画像データを合成してもよい。
【0060】
(コンパウンドスキャンの変形例)
図4を参照して、コンパウンドスキャンの変形例について説明する。図4は、スキャンの概念を示す図である。この変形例において超音波プローブ1は、例えば5つの異なる偏向角に超音波を偏向させて超音波を送受信する。また超音波診断装置は、受信したエコー信号に基づき、偏向角がそれぞれ異なる5つの断層像データを生成する。送受信部2は制御部9の制御の下、第1の偏向角、第2の偏向角、第3の偏向角、第4の偏向角、及び第5の偏向角にそれぞれ超音波を偏向させて超音波を送受信する。上述したように、第1の偏向角は0°である。第2の偏向角は、図4において最も左側に偏向した角度である。第3の偏向角は、図4において最も右側に偏向した角度である。第4の偏向角は、第1の偏向角と第2の偏向角との間の角度である。第5の偏向角は、第1の偏向角と第3の偏向角との間の角度である。第1の偏向角、第2の偏向角、第3の偏向角、第4の偏向角、及び第5の偏向角は、操作者が操作部82を用いて入力すればよい。
【0061】
画像生成部4は、第1の偏向角に偏向された超音波に基づく断層像データCを生成する。また、第2の偏向角に偏向された超音波に基づく断層像データL1を生成する。また、第3の偏向角に偏向された超音波に基づく断層像データR1を生成する。また、第4の偏向角に偏向された超音波に基づく断層像データL2を生成する。また、第5の偏向角に偏向された超音波に基づく断層像データR2を生成する。図4に、各断層像データを示す。図4に示す断層像データCは、超音波が第1の偏向角(偏向の角度が0°)に偏向された画像データである。断層像データL1は、第2の偏向角(図4において最も左側)に偏向された超音波に基づく画像データである。断層像データR1は、第3の偏向角(図4において最も右側)に偏向された超音波に基づく画像データである。断層像データL2は、第4の偏向角(図4において左側)に偏向された超音波に基づく画像データである。断層像データR2は、第5の偏向角(図4において右側)に偏向された超音波に基づく画像データである。断層像データC、断層像データL1、断層像データR1、断層像データL2、及び断層像データR2は、合成部6によって合成される。この合成によって、合成画像データTCが生成される。
【0062】
以上のように5つの偏向角に超音波を偏向して超音波を送受信する場合であっても、演算部5は、互いに偏向角の差が大きい断層像データを用いる。すなわち、演算部5は、偏向角が0°の断層像データC(x,y)、超音波が最も左側に偏向した断層像データL1(x,y)、及び超音波が最も右側に偏向した断層像データR1(x,y)を用いて、角度依存パターンADP(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。互いに偏向角の差が大きい断層像データを用いれば、角度依存の傾向が明確になるからである。
【0063】
合成部6は、上述したように、各断層像データの重みを角度依存パターンADP(x,y)に応じて変える。その上で合成部6は、各断層像データを重み付け合成する。この変形例においては、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、断層像データL2(x,y)、断層像データR1(x,y)、及び断層像データR2(x,y)のそれぞれの画素(x,y)の重みを、角度依存パターンADP(x,y)に応じて変える。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、断層像データL2(x,y)、断層像データR1(x,y)、及び断層像データR2(x,y)を合成する。このようにして、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。合成部6は、画素(x,y)ごとに上記の合成を行うことにより、合成画像データTC(x,y)を画素(x,y)ごとに生成する。合成部6は、合成画像データTC(x,y)を表示制御部7に出力する。
【0064】
なお、7つ以上の偏向角に超音波を偏向して超音波を送受信する場合であっても、超音波診断装置は、互いに偏向角の差が大きい断層像データを用いて角度依存パターンADP(x,y)を求めればよい。
【0065】
画像生成部4、演算部5、合成部6、及び表示制御部7のそれぞれの機能は、プログラムによって実行されてもよい。一例として、画像生成部4、演算部5、合成部6、及び表示制御部7はそれぞれ、図示しない処理装置と、図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。処理装置は、CPU、GPU、又はASICなどによって構成されていてもよい。記憶装置は、ROM、RAM、又はHDDなどによって構成されていてもよい。記憶装置には、画像生成プログラムと、演算プログラムと、合成プログラムと、表示処理プログラムと、が記憶されている。画像生成プログラムは、画像生成部4の機能を実行する。合成プログラムは合成部6の機能を実行する。演算プログラムは演算部5の機能を実行する。表示処理プログラムは表示制御部7の機能を実行する。また、演算プログラムには、差分算出プログラムと、角度依存決定プログラムとが含まれる。差分算出プログラムは、差分算出部51の機能を実行する。角度依存プログラムは、角度依存決定部52の機能を実行する。CPUなどの処理装置が、記憶部に記憶されている各プログラムを実行することにより、各部の機能を実行する。
【0066】
(動作)
次に、図5を参照して、第1実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作について説明する。図5は、第1実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0067】
(ステップS01)
まず、送受信部2は制御部9の制御の下、偏向角を変えて超音波の送受信を行う。例えば、送受信部2は、第1の偏向角(偏向角が0°)、第2の偏向角、及び第3の偏向角にそれぞれ超音波を偏向させて超音波を送受信する。画像生成部4は、例えば図2に示すように、超音波が第1の偏向角に偏向された断層像データCを生成する。また、超音波が第2の偏向角に偏向された断層像データL1を生成する。また、超音波が第3の偏向角に偏向された断層像データR1を生成する。画像生成部4は、演算部5と合成部6とに断層像データを出力する。
【0068】
(ステップS02)
差分算出部51は、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の断層像データ間の互いの差分を求める。そして差分算出部51は、求めた各差分の絶対値を求める。例えば、差分算出部51は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)の間の互いの差分を画素(x,y)ごとに求める。そして差分算出部51は、求めた差分の絶対値CR(x,y)、CL(x,y)、及びLR(x,y)を求める。
【0069】
(ステップS03)
角度依存決定部52は、差分算出部51によって求められた差分の絶対値の組み合わせに基づいて、角度依存パターンADP(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。角度依存決定部52は、角度依存パターンADP(x,y)を示すパターン情報を合成部6に出力する。
【0070】
(ステップS04)
合成部6は、各画素(x,y)の角度依存パターンADP(x,y)に応じて複数の断層像データの各画素(x,y)の重みを変える。合成部6はこの重み付けに基づいて、複数の断層像データを合成する。例えば、合成部6は、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)のそれぞれの画素(x,y)の重みを角度依存パターンADP(x,y)に応じて変える。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を合成することにより、合成画像データTC(x,y)を画素(x,y)ごとに生成する。合成部6は、合成画像データTC(x,y)を表示制御部7に出力する。
【0071】
(ステップS05)
表示制御部7は、合成画像データTC(x,y)に基づく合成画像を表示部81に表示させる。
【0072】
以上のように、第1実施形態に係る超音波診断装置によると、構造体からのエコー信号に角度依存がある場合には、複数の断層像データのうち、感度が良い断層像データを加算平均することにより、加算平均による感度の低下を防ぐことが可能となる。また、アーティファクトに角度依存がある場合には、複数の断層像データのうち感度の低い断層像データを加算平均することにより、加算平均によるアーティファクトの増加を抑制することが可能となる。そのことにより、構造物の感度が良くてアーティファクトが目立ちにくい画像を生成することが可能となる。その結果、アーティファクトに基づく像よりも生体信号(構造体からのエコー信号)に基づく像の視認性が向上する。
【0073】
[第2の実施の形態]
図6を参照して、第2実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図6は、第2実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。第2実施形態に係る超音波診断装置は、第1実施形態に係る演算部5及び合成部6の代わりに、演算部5Aと合成部6Aとを有する。演算部5A及び合成部6A以外の構成は、第1実施形態に係る超音波診断装置と同じであるため、説明を省略する。一例として第1実施形態と同様に、第1の偏向角、第2の偏向角、及び第3の偏向角に超音波を偏向させて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)が生成される場合について説明する。
【0074】
(演算部5A)
演算部5Aは、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の断層像データに基づいて、角度依存の傾向を示す角度依存情報ADI(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。以下の式に示すように、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との画素値の差分の絶対値を、角度依存情報ADI(x,y)とする。
ADI(x,y)=|L1(x、y)−R1(x、y)|
角度依存情報ADI(x,y)が大きくなるほど、角度依存の程度が大きいことを示している。演算部5Aは、角度依存情報(x,y)を合成部6Aに出力する。
【0075】
(合成部6A)
合成部6Aは、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の断層像データを加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データを生成する。例えば、合成部6Aは、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。
【0076】
また、合成部6Aは、合成画像データTC(x,y)に角度依存情報(x,y)を合成することにより、重畳画像データTI(x,y)を生成する。例えば、合成部6Aは、合成画像データTC(x,y)のR信号(Red信号)、G信号(Green信号)、又はB信号(Blue信号)のうち、いずれかの信号に角度依存情報(x,y)を合成する。例えば操作者が操作部82を用いて、角度依存情報(x,y)を合成する信号を指定してもよい。一例としてB信号に角度依存情報(x,y)を合成する場合、合成部6Aは、以下の式に従って重畳画像データTI(x,y)(R,G,B)を生成する。
TI(x,y)のR信号=TC(x,y)
TI(x,y)のG信号=TC(x,y)
TI(x,y)のB信号=TC(x,y)+ADI(x,y)
【0077】
合成部6Aは、重畳画像データTI(x,y)を表示制御部7に出力する。表示制御部7は、重畳画像データTI(x,y)に基づく重畳画像を表示部81に表示させる。
【0078】
以上のように合成部6Aは、合成画像データTC(x,y)に角度依存情報ADI(x,y)を合成する。この合成により、合成部6Aは、角度依存が大きい(角度依存情報ADIが大きい)箇所は、合成された成分の色が強調されて表示させる。例えばB信号に角度依存情報ADI(x,y)を合成すると、角度依存情報ADI(x,y)が合成された箇所の青みが強くなって表示される。角度依存が大きい、すなわち角度依存情報ADIが大きい場合には、角度依存情報ADIの大きさに応じて青みが強くなって表示される。そのことにより、操作者にとって生体の構造体とアーティファクトとを識別しやすくなる。
【0079】
なお、3つの断層像データを対象にした合成処理について説明したが、第1実施形態と同様に、3つ以上の断層像データを合成してもよい。また、複数のボリュームデータを合成してもよいし、複数の3次元画像データを合成してもよい。
【0080】
また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。例えば合成部6Aは、第1実施形態に係る合成部6によって生成された合成画像データTC(x,y)に、角度依存情報ADI(x,y)を合成してもよい。
【0081】
演算部5A及び合成部6Aのそれぞれの機能は、プログラムによって実行されてもよい。一例として、演算部5A及び合成部6Aはそれぞれ、図示しない処理装置と、図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。処理装置はCPU、GPU、又はASICなどによって構成されていてもよい。記憶装置は、ROM、RAM、又はHDDなどによって構成されていてもよい。記憶装置には、演算プログラムと、合成プログラムとが記憶されている。演算プログラムは演算部5Aの機能を実行する。合成プログラムは合成部6Aの機能を実行する。CPUなどの処理装置が、記憶部に記憶されている各プログラムを実行することにより、各部の機能を実行する。
【0082】
(動作)
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作について説明する。図7は、第2実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0083】
(ステップS10)
まず、送受信部2は制御部9の制御の下、偏向角を変えて超音波の送受信を行う。例えば、送受信部2は、第1の偏向角(偏向角が0°)、第2の偏向角、及び第3の偏向角にそれぞれ超音波を偏向させて超音波を送受信する。画像生成部4は、例えば図2に示すように、超音波が第1の偏向角に偏向された断層像データCを生成する。また、超音波が第2の偏向角に偏向された断層像データL1を生成する。また、超音波が第3の偏向角に偏向された断層像データR1を生成する。画像生成部4は、演算部5Aと合成部6Aとに断層像データを出力する。
【0084】
(ステップS11)
演算部5Aは、超音波の偏向角が異なる複数の断層像データに基づいて、角度依存情報ADI(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。例えば、演算部5Aは、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)との画素値の差分の絶対値を、角度依存情報ADI(x,y)とする。演算部5Aは、角度依存情報(x,y)を合成部6Aに出力する。
【0085】
(ステップS12)
合成部6Aは、超音波の偏向角がそれぞれ異なる複数の断層像データを加算平均する。この加算平均により、合成部6Aは、合成画像データを生成する。例えば、合成部6Aは、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算平均する。この加算平均により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。
【0086】
(ステップS13)
合成部6Aは、合成画像データTC(x,y)に角度依存情報(x,y)を合成する。この合成により、合成部6Aは、重畳画像データTI(x,y)を生成する。例えば、合成部6Aは、合成画像データTC(x,y)のB信号に角度依存情報(x,y)を合成する。合成部6Aは、重畳画像データTI(x,y)を表示制御部7に出力する。
【0087】
(ステップS14)
表示制御部7は、重畳画像データTI(x,y)に基づく重畳画像を表示部81に表示させる。
【0088】
以上のように、第2実施形態に係る超音波診断装置によると、合成画像データTC(x,y)に角度依存情報ADI(x,y)を合成する。この合成により、角度依存が大きい(角度依存情報ADIが大きい)箇所は、合成された成分の色(例えば青色)が強調されて表示される。角度依存が大きい(角度依存情報ADIが大きい)場合には、例えば青みがさらに強くなって表示されるため、操作者にとって生体の構造体とアーティファクトとを識別しやすくなる。
【0089】
[第3の実施の形態]
次に、第3実施形態に係る超音波診断装置について説明する。第3実施形態に係る超音波診断装置も、第1実施形態と同様に、コンパウンドスキャンによる複数の画像(画像における各画素)の角度依存パターンADP(x,y)を求める。また、各画像に重み付けをする点も同様である。ただし第3実施形態第は、第1実施形態と異なり、撮影部位や傾向に応じて合成方法を変更する。すなわち画像が示す部位等に対応して、重み付けした各画像の画素について加算平均する合成方法であるか、重み付けした各画像の最大値又は最小値を用いる合成方法であるかが設定される。
【0090】
例えば、スペックルといったランダムなノイズが発生しやすい部分を示す画像では、重み付けした各画像を加算平均する合成方法により、平滑化する方がノイズの除去という点において有効である。これに対し、血管の断面のような構造物を示す画像では、重み付けした各画像の最大値を用いる合成方法により、感度の良い画像を生成することが有効である。また、このような画像に対して、各画像の最小値を用いる合成方法により、アーティファクトが目立ちにくい画像を生成することが有効である。
【0091】
(合成方法設定画面)
第3実施形態において超音波診断装置における図示しない記憶部には、合成方法の設定画面の画面データが記憶されている。この合成方法の設定画面の図示は省略する。合成方法の設定画面は、「撮影部位または傾向」を設定するための表示欄を有する。表示欄における撮影部位としては、例えば血管、肝臓等がある。傾向としては、例えばノイズ発生のしやすさが段階的に表示される。操作者が操作部82を用いてこの表示欄に表示された項目のうち、いずれかの撮影部位又はいずれかの傾向を選択すると、選択した情報が制御部9に出力される。
【0092】
図示しない記憶部には予め撮影部位又は傾向に対応した合成方法が記憶されている。制御部9は、合成方法の設定画面において選択された、例えば撮影部位の情報に対応した合成方法を記憶部から読み出す。
【0093】
なお、制御部9が角度依存パターンに基づいて、対応する合成方法を読み出す構成に限られない。他の例については例えば次のように構成することが可能である。角度依存パターンが求められると、その角度依存パターンを表示する。あわせて各断層像のうち少なくともいずれか1つを表示する。この時点で操作者は表示された断層像と、求められた角度依存パターンを参照することが可能である。この例において、合成方法の設定画面は、合成方法の種類を複数表示する表示欄が設けられている。操作者が操作部82を用いて、この表示欄に表示された項目のうち、いずれかの合成方法を選択すると、その情報が制御部9に送られる。
【0094】
制御部9は、上記のように設定された合成方法を合成部6に出力する。
【0095】
(合成方法)
以下、第3実施形態の合成部6による、合成画像データTC(x,y)の生成について説明する。
【0096】
(パターンSCの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSC」であり、且つ「撮影部位が血管」と選択された場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Max{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
すなわち、各断層像データに同じ重み付けをし、かつ最大の画素値を選択して合成画像データTC(x,y)を生成する。なお、パターンSCの定義については第1実施形態と同様である。
【0097】
なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSC」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが低い」と選択された場合も、合成部6は、上記「撮影部位が血管」と選択された場合と同様に合成画像データTC(x,y)を求める。
【0098】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSC」であり、且つ「撮影部位が肝臓」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)+R1(x,y)}/3
すなわち、各断層像データに同じ重み付けをし、加算する。それにより合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。
【0099】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSC」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが高い」と選択された場合も、合成部6は、上記「撮影部位が肝臓」と選択された場合と同様に合成画像データTC(x,y)を求める。
【0100】
(パターンSLの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSL」であり、且つ「撮影部位が血管」と選択された場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Max{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSL」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが低い」と選択された場合も同様である。
【0101】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSL」であり、且つ「撮影部位が肝臓」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)}/2
なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSL」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが高い」と選択された場合も同様である。
【0102】
(パターンSRの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSR」であり、且つ「撮影部位が血管」と選択された場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Max{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSR」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが低い」と選択された場合も同様である。
【0103】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSR」であり、且つ「撮影部位が肝臓」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+R1(x,y)}/2
なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンSR」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが高い」と選択された場合も同様である。
【0104】
(パターンACの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAC」であり、且つ「撮影部位が血管」と選択された場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Min{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
合成部6は、複数の断層像データのうち画素値の最小値を用いて合成画像データTC(x,y)を生成する。なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAC」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが低い」と選択された場合も同様である。
【0105】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAC」であり、且つ「撮影部位が肝臓」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={L1(x,y)+R1(x,y)}/2
合成部6は、断層像データC(x,y)に対する重みを「0」とし、断層像データL1(x,y)と断層像データR1(x,y)とに対する重みを「0.5」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、断層像データC(x,y)、断層像データL1(x,y)、及び断層像データR1(x,y)を加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAC」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが高い」と選択された場合も同様である。
【0106】
(パターンALの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAL」であり、且つ「撮影部位が血管」と選択された場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Min{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
合成部6は、複数の断層像データのうち画素値の最小値を用いて合成画像データTC(x,y)を生成する。なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAL」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが低い」と選択された場合も同様である。
【0107】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAL」であり、且つ「撮影部位が肝臓」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+R1(x,y)}/2
合成部6は、断層像データL1(x,y)に対する重みを「0」とし、断層像データC(x,y)と断層像データR1(x,y)とに対する重みを「0.5」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、複数の断層像データを加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAL」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが高い」と選択された場合も同様である。
【0108】
(パターンARの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAR」であり、且つ「撮影部位が血管」と選択された場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)=Min{C(x,y)、L1(x,y)、R1(x,y)}
合成部6は、複数の断層像データのうち画素値の最小値を用いて合成画像データTC(x,y)を生成する。なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAR」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが低い」と選択された場合も同様である。
【0109】
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAR」であり、且つ「撮影部位が肝臓」の場合、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)}/2
合成部6は、断層像データR1(x,y)に対する重みを「0」とし、断層像データC(x,y)と断層像データL1(x,y)とに対する重みを「0.5」に重み付けする。合成部6はこの重み付けに基づいて、複数の断層像データを加算する。この加算により、合成部6は合成画像データTC(x,y)を生成する。なお、角度依存パターンADP(x,y)が「パターンAR」であり、且つ「画像の傾向としてノイズ発生の度合いが高い」と選択された場合も同様である。
【0110】
(パターンゼロの場合)
角度依存パターンADP(x,y)が「パターンゼロ」の場合、合成方法設定画面で選択された情報にかかわらず、合成部6は、以下の式に従って合成画像データTC(x,y)を求める。
TC(x,y)={C(x,y)+L1(x,y)+R1(x,y)}/3
【0111】
合成部6は、画素(x,y)ごとに上記の合成を行うことにより、合成画像データTC(x,y)を画素(x,y)ごとに生成する。合成部6は、合成画像データTC(x,y)を表示制御部7に出力する。
【0112】
(閾値設定画面)
第3実施形態において超音波診断装置における図示しない記憶部には、角度依存パターンを定める画素値等の閾値の設定画面が記憶されている。すなわち、上述の第1の条件〜第6の条件に該当するかを判定するのに用いる閾値Th1、Th2、Th3は、閾値設定画面を介して入力される。この閾値の設定画面の図示は省略する。上述の通り、閾値Th1は、絶対値CR(x,y)に対する閾値である。閾値Th2は、絶対値CL(x,y)に対する閾値である。閾値Th3は、絶対値LR(x,y)に対する閾値である。
【0113】
閾値の設定画面には、閾値Th1の入力欄、閾値Th2の入力欄および、閾値Th3の入力欄が設けられている。操作者が操作部82を用いていずれかの入力欄に閾値を入力すると、入力した閾値と、その種別(Th1、Th2または、Th3)とが制御部9に出力される。
【0114】
なお、閾値設定画面は、閾値Th1、閾値Th2および、閾値Th3それぞれの入力欄を有する構成でなくても良い。例えば、「撮影部位」または「画像の傾向」ごとに、閾値の組み合わせを選択可能な表示欄が設けられていてもよい。「撮影部位」または「画像の傾向」については、合成方法設定画面において説明した内容と同様である。一例として、閾値設定画面の当該表示欄においては、「撮影部位が血管」である場合の、閾値Th1、閾値Th2および、閾値Th3の組み合わせを選択可能である。また、他の例として画像の傾向として「ノイズが発生の度合いが高い」場合の、閾値Th1、閾値Th2および、閾値Th3の組み合わせを選択可能である。
【0115】
操作者が操作部82を用いて、表示欄におけるいずれかの項目を選択すると、選択された閾値の組み合わせが制御部9に出力される。
【0116】
制御部9は、入力または選択された閾値の組み合わせを角度依存決定分52に送る。角度依存決定部52は、選択された閾値Th1、Th2、Th3を用いて、角度依存パターンADP(x,y)を画素(x,y)ごとに求める。
【0117】
なお、第3実施形態は、5つの偏向角に超音波を偏向して超音波を送受信する場合であっても、7つ以上の偏向角に超音波を偏向して超音波を送受信する場合であっても、適用することが可能である。また、第3実施形態は、第2実施形態と組み合わせて超音波診断装置に適用することが可能である。また、第3実施形態おいては、撮影部位の例として「血管」、「肝臓」の例のみを説明したが、各種設定画面においては当然、他の撮影部位を選択等することが可能である。また、画像の傾向として「ノイズの発生の度合い」を示したが、画像の傾向は他の表現で表示されていてもよい。また、第3実施形態においては、合成方法の変更または閾値の変更のいずれか一方が行えればよく、必ずしも双方の処理をする必要はない。
【0118】
以上のように、第3実施形態に係る超音波診断装置によると、撮影部位や画像の傾向に応じて、合成方法が変更される。すなわち、構造体からのエコー信号に角度依存がある場合、撮影部位や画像の傾向に応じて、加算平均を行うか、最大値を用いるかを変更することができる。また、アーティファクトに角度依存がある場合も、撮影部位や画像の傾向に応じて、加算平均を行うか、最小値を用いるかを変更することができる。
【0119】
つまり状況に応じて、加算平均による感度の低下およびアーティファクトの増加の抑制、およびノイズの除去の調和を図っている。そのことにより、構造物の感度が良くてアーティファクトが目立ちにくい画像を生成することが可能となる。その結果、アーティファクトに基づく像よりも生体信号(構造体からのエコー信号)に基づく像の視認性が向上する。
【0120】
さらに、第2実施形態との組み合わせにおいては、合成画像データTC(x,y)に角度依存情報ADI(x,y)を合成する。この合成により、角度依存が大きい(角度依存情報ADIが大きい)箇所は、合成された成分の色(例えば青色)が強調されて表示される。角度依存が大きい(角度依存情報ADIが大きい)場合には、例えば青みがさらに強くなって表示されるため、操作者にとって生体の構造体とアーティファクトとを識別しやすくなる。
【0121】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1 超音波プローブ
2 送受信部
3 信号処理部
4 画像生成部
5、5A 演算部
6、6A 合成部
7 表示制御部
8 ユーザインターフェース(UI)
9 制御部
51 差分算出部
52 角度依存決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる偏向角に超音波を偏向させて被検体に超音波を送信し、前記被検体からのエコー信号を受信して、前記超音波の前記偏向角がそれぞれ異なる複数の超音波画像データを生成する撮影部と、
前記複数の超音波画像データに基づいて、前記複数の超音波画像データ間の前記偏向角への角度依存の傾向を求める演算部と、
前記角度依存の傾向に応じて前記複数の超音波画像データそれぞれに重み付けをし、前記複数の超音波画像データを合成する合成部と、
を有する超音波診断装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記複数の超音波画像データ間の互いの差分を求め、前記差分の組み合わせに基づいて前記角度依存の傾向を求める、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記差分の組み合わせに基づいて、前記被検体内の構造体からのエコー信号の強度又はアーティファクトの信号強度が相対的に高くなる偏向角の方向を前記角度依存の傾向として求め、
前記合成部は、前記複数の超音波画像データのうち、前記構造体からの前記エコー信号の強度が相対的に高くなる偏向角における超音波画像データを合成する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記撮影部は、第1の偏向角に前記超音波を偏向させて前記第1の偏向角における第1の超音波画像データを生成し、前記第1の偏向角とは異なる第2の偏向角に前記超音波を偏向させて前記第2の偏向角における第2の超音波画像データを生成し、前記第1の偏向角を間にして前記第2の偏向角とは反対側の第3の偏向角に前記超音波を偏向させて前記第3の偏向角における第3の超音波画像データを生成し、
前記演算部は、前記第1の超音波画像データと前記第2の超音波画像データとの第1の差分、前記第1の超音波画像データと前記第3の超音波画像データとの第2の差分、及び、前記第2の超音波画像データと前記第3の超音波画像データとの第3の差分を求め、前記第1の差分と前記第2の差分とに基づいて、前記構造体からの前記エコー信号の強度又は前記アーティファクトの信号強度が相対的に高くなる偏向角の方向を求め、前記第3の差分に基づいて、前記構造体からの前記エコー信号の強度又は前記アーティファクトの信号強度のいずれが相対的に高くなるのか求め、
前記合成部は、前記構造体からの前記エコー信号の強度が相対的に高くなる場合には、前記第1の超音波画像データ、前記第2の超音波画像データ、及び前記第3の超音波画像データのうち前記構造体からの前記エコー信号の強度が相対的に高くなる超音波画像データを合成し、前記アーティファクトの信号強度が相対的に高くなる場合には、前記第1の超音波画像データ、前記第2の超音波画像データ、及び前記第3の超音波画像データのうち前記アーティファクトの信号強度が相対的に低くなる超音波画像データを合成する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記演算部は、
予め設定された第1の閾値と前記第1の差分とを比較し、かつ予め設定された第2の閾値と前記第2の差分とを比較することにより、前記被検体内の構造体からのエコー信号の強度又はアーティファクトの信号強度が、前記第2の偏向角または前記第3の偏向角のいずれかに依存しているかを求め、
さらに予め設定された第3の閾値と前記第3の差分とを比較することにより、前記構造体からの前記エコー信号の強度又は前記アーティファクトの信号強度のいずれが相対的に高くなるのか求める、
請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記第1の閾値、前記第2の閾値および前記第3の閾値を設定するためのユーザインタフェースを備え、
前記演算部は、前記ユーザインタフェースにおいて設定された前記第1の閾値、前記第2の閾値および前記第3の閾値に基づいて、該第1の閾値と前記第1の差分とを比較し、かつ該第2の閾値と前記第2の差分とを比較し、且つ該第3の閾値と第3の差分を比較する、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波画像の撮影部位を指定するためのユーザインタフェースと、
前記合成部における複数の合成方法を、前記偏向角の方向と、前記構造体からの前記エコー信号の強度又は前記アーティファクトの信号強度のいずれが相対的に高いかの判定結果と、前記指定された撮影部位とに対応付けて記憶する記憶部と、を備え、
前記合成部は、
前記演算部が求めた前記偏向角の方向および前記判定結果と、前記撮影部位とに基づいて、前記合成方法のいずれかを選択し、該合成方法に基づいて超音波画像データを合成する、請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
複数の異なる偏向角に超音波を偏向させて被検体に超音波を送信し、前記被検体からのエコー信号を受信して、前記超音波の前記偏向角がそれぞれ異なる複数の超音波画像データを生成する撮影部と、
前記複数の超音波画像データに基づいて、前記複数の超音波画像データ間の前記偏向角への角度依存の傾向を求める演算部と、
前記複数の超音波画像データを合成することにより合成画像データを生成し、前記合成画像に前記角度依存の傾向を示す情報を合成する合成部と、
を有する超音波診断装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記複数の超音波画像データ間の互いの差分を求め、前記差分に基づいて前記角度依存の傾向を求める、
請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記合成部は、前記角度依存の傾向を示す情報を所定の色にして前記合成画像データに合成する、
請求項8又は請求項9に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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