説明

超音波霧化ユニット

【課題】圧電振動子に印加する電圧を大きく高めたり、ファンを用いたりすることなく、液体の微粒子をより遠くまで噴霧することができる超音波霧化ユニットを提供する。
【解決手段】圧電振動子11によって振動板12を超音波振動させて液体を霧化する環状の霧化部材1を有する。この霧化部材1に接触させた一対の円環状の弾性リング2を介してケーシングによって弾性的に挟持している。霧化部材1の中心を挟んだ径方向の片側における前記円環状の弾性リング2と前記霧化部材1の片面との径方向の最大対向幅L1が、前記圧電振動子11の中心を挟んだ径方向の片側における径方向幅L2に対して40%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水や薬液等の液体を超音波振動によって霧化する超音波霧化ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波霧化装置に使用される超音波霧化ユニットとして、圧電振動子に振動板を取り付けた霧化部材を、弾性素材からなる弾性部材を介してケーシングで弾性的に挟持した構造のものが提供されている(例えば特許文献1参照)。
図5は、特許文献1に記載された超音波霧化ユニットの一例を示す断面図であり、図6はその分解斜視図である。この超音波霧化ユニットは、中央部に開口101aを有する圧電振動子101に振動板102を取り付けた霧化部材100と、この霧化部材100の両面にそれぞれ添わせた一対の弾性部材103と、前記霧化部材100及び弾性部材103を収容した保持部材としてのケーシング104とを備えている。
【0003】
前記圧電振動子101は円形薄板状の圧電セラミックスからなり、その上下面に設けられた電極101bに高周波電圧を印加することにより、径方向に伸縮する超音波振動を生じる。また、前記振動板102は、金属からなる円形薄板状のものであり、圧電振動子101の開口101aを覆った状態で当該圧電振動子101の下面に取り付けられている。この振動板102の前記開口101aに臨む部分には、多数の微細孔102aが形成されている。
【0004】
前記一対の弾性部材103は、ゴムからなる円環平板状のものであり、それぞれ霧化部材100の両面に面接触した状態で密着している。また、前記ケーシング104は、中央部が開口した中空円板状のものであり、その内部において、一対の弾性部材103を介して前記霧化部材100を弾性的に挟み込んで保持している。このケーシング104は上下に分離可能に二分割されている。
【0005】
前記従来の超音波霧化ユニットによれば、前記圧電振動子101に高周波電圧を印加し、当該圧電振動子101を超音波振動させて、前記振動板102を超音波振動させることにより、当該振動板102の微細孔102a部分に供給された液体を霧化させて、噴霧することができる。
【0006】
なお、特許文献1には、前記薄板状の弾性部材103に代えて、一対の輪ゴム状の第1の弾性部材105と、この第1の弾性部材105よりも外径が大きい一対の第2の弾性部材106とを用い、これら各弾性部材105,106を、霧化部材100の両面の外周縁と開口縁とにそれぞれ添わせたものも記載されている(図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−281170号公報(図12〜図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の超音波霧化ユニットは、霧化させる液体の種類や使用環境等に応じて、液体の微粒子をより遠くまで噴霧することが要求される場合がある。この場合、圧電振動子101に印加する電圧を大きく高めたり、送風ファンを用いたりすることにより、液体の微粒子をより遠くまで噴霧することが行われている。
【0009】
しかし、圧電振動子101に印加する電圧を大きく高めると、高周波電圧を発生させる駆動回路が大きくなったり、振動板102の振幅が大きくなってその寿命が短くなったりするという問題がある。また、送風ファンを用いた場合には、液体の微粒子が過度に拡散したり、装置が大型化したりするという問題がある。
この発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、圧電振動子に印加する電圧を大きく高めたり、ファンを用いたりすることなく、液体の微粒子をより遠くまで噴霧することができる超音波霧化ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る超音波霧化ユニットは、中央部が開口した円形薄板状の圧電振動子と、厚さ方向に貫通した多数の微細孔を有し、前記開口に臨んだ状態で前記圧電振動子の片面に添わせた振動板とを備え、前記圧電振動子によって前記振動板を超音波振動させて液体を霧化する霧化部材と、
前記霧化部材の両面のそれぞれに添わせた状態で当該霧化部材と同心状に配置された一対の円環状の弾性部材と、
前記一対の弾性部材を介して前記霧化部材を弾性的に挟み込んで保持する保持部材と、を備える超音波霧化ユニットであって、
前記霧化部材の中心を挟んだ径方向の片側における前記円環状の弾性部材と前記霧化部材の片面との径方向の最大対向幅が、前記圧電振動子の中心を挟んだ径方向の片側における径方向幅に対して40%であることを特徴とする。
【0011】
このような構成の超音波霧化ユニットによれば、円環状の弾性部材と霧化部材の片面との前記径方向の最大対向幅が、圧電振動子の前記径方向幅に対して40%であるので、霧化部材の振動が抑制されるのを防止することができる。このため、霧化部材によって霧化された液体の微粒子を、遠方まで噴霧することができる。
【0012】
すなわち、本願発明者は、従来の超音波霧化ユニットが、霧化された液体の微粒子を遠方まで噴霧することができない原因について鋭意研究した結果、従来の超音波霧化ユニットは、径方向の幅寸法が大きい円環平板状の弾性部材を霧化部材の両面全体に添わせたり、輪ゴム状の二対の弾性部材を圧電振動子の両面の開口縁及び外周縁に添わせたりしていることから、当該弾性部材によって圧電振動子(霧化部材)の振動が一部抑制されていることに原因あることを見出し、かかる知見に基づいて本願発明を完成したものである。
【0013】
前記超音波霧化ユニットにおいて、前記振動板が、その中央部に噴霧側に突出する凸状部または噴霧側と反対側に突出する凸状部を有していてもよい。
【0014】
前記凸状部は、その基端部の直径をR1とし、前記圧電振動子の中央部の開口の直径をR2としたときに、R1とR2の関係が
R1≦(4/5)・R2
であるのが好ましい。
これは、R1とR2の関係がR1>(4/5)・R2となると、前記振動板のうち、前記圧電振動子の中央部の開口に臨む部分の平面部の径方向寸法が小さくなり過ぎるため、前記圧電振動子の超音波振動に伴い、前記平面部がたわみ変形し難くなって、霧化された液体の微粒子をより効果的に遠方まで噴霧することができなくなるからである。
【0015】
前記超音波霧化ユニットにおいて、前記振動板が、平板状ではなく、その中央部に噴霧側に突出する凸状部を有するのが好ましい。
この場合、霧化部材によって霧化された液体の微粒子を、当該凸状部を有しない振動板に比べて、より効果的に遠方まで噴霧することができる。
【0016】
前記超音波霧化ユニットは、前記円環状の弾性部材がOリングであるのが好ましい。
この場合、Oリングを霧化部材に対して線状に接触させることができるので、霧化部材の振動が抑制されるのをより効果的に防止することができる。このため、霧化部材によって霧化された液体の微粒子を、より遠方まで噴霧することができる。
【0017】
前記Oリングの線径は、0.5〜2.0mmの範囲であるのが好ましい。
この場合、霧化部材によって霧化された液体の微粒子を、より遠方まで噴霧することができる。
【0018】
前記超音波霧化ユニットにおいて、霧化部材の中心を挟んだ径方向の片側における前記円環状の弾性部材と前記霧化部材の片面との径方向の最小対向幅は、前記圧電振動子の中心を挟んだ径方向の片側における径方向幅に対して5%であるのが好ましい。
この場合、前記対向幅の割合が5%以上であるので、弾性部材によって霧化部材を安定的に支持することができる。このため液体を安定的に霧化させることができる。
【0019】
また、前記超音波霧化ユニットにおいては、圧電振動子の厚みが0.1〜4.0mm、外径が6〜60mmであり、前記振動板の厚みが0.02〜2.0mm、外径が6〜60mmであり、前記微細孔の孔径が3〜150μmであるのが好ましい。
この超音波霧化ユニットによれば、サイズが比較的小さい前記霧化部材において、霧化された液体の微粒子を、より遠方まで噴霧することができる。
【0020】
前記円環状の弾性部材の硬さは、20〜90 IRHDであるのが好ましく、この場合は、霧化部材を効果的に保持することができるので、液体をより安定的に霧化させることができる。
なお、本願においてIRHDの値は、国際ゴム硬さM法に準拠した値を示している。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る超音波霧化ユニットによれば、圧電振動子に印加する電圧を大きく高めたり、ファンを用いたりすることなく、液体の微粒子をより遠くまで噴霧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る超音波霧化ユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図2】前記超音波霧化ユニットの分解斜視図である。
【図3】前記超音波ユニットの要部を示す断面図である。
【図4】他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】従来の超音波霧化ユニットを示す断面図である。
【図6】前記従来例の分解斜視図である。
【図7】他の従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明に係る超音波霧化ユニットの実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、この発明に係る超音波霧化ユニットの一実施形態を示す断面図である。この超音波霧化ユニットは、圧電振動子11によって振動板12を超音波振動させて、水や薬液等の液体を霧化する霧化部材1と、前記霧化部材1の両面にそれぞれに添わせた円環状の弾性部材としての一対の弾性リング2と、この一対の弾性リング2を介して前記霧化部材1を弾性的に挟み込んで保持する保持部材としてのケーシング3とを備えている。前記振動板12には、当該振動板12に薬剤等の液体を供給するための吸液芯4を接触又は近接させている。
【0025】
前記霧化部材1の圧電振動子11は、中央部に開口11aが形成された円形薄板状の圧電セラミックスによって構成されている。この圧電振動子11は、厚さ方向に分極されており、両面に形成された図示しない電極に高周波電圧を印加することにより、径方向への微細振動を生じる。この圧電振動子11は、例えば、厚みが0.1〜4.0mm、外径が6〜60mmのサイズの小さいものであって、高周波電圧の周波数(駆動周波数)として、30〜500KHzのものが選定されている。
【0026】
前記振動板12は、例えばニッケルからなる円形薄板状のものである。この振動板12は、圧電振動子11の開口11aを覆った状態で、図1において圧電振動子11の下面に対して当該圧電振動子11と同心に接合(固着)されている。この振動板12は、例えば、厚みが0.02〜2.0mm、外径が6〜60mmのものであり、その外径は圧電振動子11の開口11aの内径寸法より大きく、そのサイズは圧電振動子11のサイズに対応させて適宜選択される。
【0027】
前記振動板12の前記開口11aに臨む部分には、厚さ方向に貫通した多数の微細孔13aが形成されている。この微細孔13aの孔径は3〜150μmである。また、前記振動板12の中央部には、その頂部から裾部へかけて曲面で構成された凸状部13が設けられている。この凸状部13は上方(液体の噴霧方向)へ膨出したドーム状のものである。この凸状部13は圧電振動子11の径方向への伸縮(振動)に伴って、上下方向に超音波振動する。前記凸状部13の立ち上り部である基端部の直径をR1とし、前記圧電振動子11の中央開口11aの直径(内径)をR2としたときに、R1とR2の関係が
R1≦(4/5)・R2
である。これにより、前記圧電振動子11の超音波振動に伴い、前記凸状部13の周囲の平面部をたわみ変形し易くすることができる。このため、霧化された液体の微粒子をより遠方まで噴霧することができる。
【0028】
前記弾性リング2は一対のみ設けられている。この一対の弾性リング2は、前記ケーシング3と前記霧化部材1の上面との間及び前記ケーシング3と前記霧化部材1の下面との間で弾性変形した状態で、それぞれ前記霧化部材1と同心状にて当該霧化部材1の上面及び下面に対して接触している。
この弾性リング2としては、線径0.5〜3mm、より好ましくは線径0.5〜2.0mmのOリングが好適に用いられる。このような線径のOリングを用いると、前記弾性リング2を霧化部材1に対して細い線状に接触させることができるので、霧化された液体の微粒子をより効果的に遠方まで噴霧することができる。
【0029】
また、前記弾性リング2の硬さは20〜90 IRHD、より好ましくは30〜90 IRHDである。これにより、霧化部材1を適度な弾力で保持して、当該霧化部材1が過度に振動するのを効果的に抑制することができる。このため、液体をより安定的に霧化させることができる。
なお、霧化部材1の上面に接触させた弾性リング2と、下面に接触させた弾性リング2とは、平均径[(内径+外径)/2]、線径、硬さ等が同一のものが好ましく、特に平均径については同じものがよい。
【0030】
図3に示すように、前記霧化部材1の中心を挟んだ径方向の片側において、前記弾性リング2と前記霧化部材1の片面との径方向の対向幅L1(以下「弾性リング2と霧化部材1との対向幅L1」という)の、前記圧電振動子11の中心を挟んだ径方向の片側における径方向幅L2(以下「圧電振動子11の径方向幅L2」という)に対する割合は、40%以下、より好ましくは35%以下に設定されている。これにより、霧化部材1の振動が抑制されるのを効果的に防止することができる。
弾性リング2と霧化部材1との対向幅L1は、霧化部材1に対する弾性リング2の投影幅である。弾性リングがOリングの場合には、対向幅L1は当該Oリングの線径であり、弾性リングが角リングの場合には、対向幅L1は当該角リングの径方向幅である。
前記圧電振動子11の径方向幅L2に対する弾性リング2と霧化部材1との対向幅L1の割合[(L1/L2)×100)(%)]は、例えば同じサイズの圧電振動子11において、弾性リング2の線径を細くしたり、太くしたりすることにより容易に設定することができる。
【0031】
前記圧電振動子11の径方向幅L2に対する弾性リング2と霧化部材1との対向幅L1の割合[(L1/L2)×100)(%)]の下限値は、霧化部材1を安定的に支持できる範囲で適宜選択される。この割合は5%以上、より好ましくは10%以上である。この場合、一対の弾性リング2によって霧化部材1を安定的に支持できるので、液体を安定的に霧化させることができる。
なお、前記弾性リング2の素材としては、ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、水素化ニトリルゴム等を挙げることができる。
【0032】
ケーシング3は、上下に分離可能に二つ割りされた中空円環状のものであり、全体が合成樹脂によって形成されている。このケーシング3の上下面の開口31の内径は、霧化部材1との間で前記弾性リング2を挟み込んで支持できるように、当該弾性リング2の内径よりも小さくなっている。前記弾性リング2はケーシング3の内面に対しても接触している。
【0033】
吸液芯4は直径が例えば3〜4.5mmの不織布で構成されており、その頂部が、振動板12の凸状部13に近接又は接触している。この吸液芯4の下部側は、芳香剤や殺菌剤、殺虫剤等の薬液を入れたタンク(図示せず)に浸漬されており、当該薬液を毛細管現象によって前記凸状部13に供給することができる。
【0034】
以上の構成の超音波霧化ユニットによれば、圧電振動子11に高周波電圧を印加して振動板12の凸状部13を振動させることにより、吸液芯4を介して前記凸状部13に供給された薬液が、毛細管現象によって当該凸状部13の微細孔13aに導入され、霧化された状態で上方に噴霧される。
この際、前記弾性リング2と霧化部材1との対向幅L1が前記圧電振動子11の径方向幅L2に対して40%以下であるため、前記弾性リング2によって霧化部材1の振動が抑制されるのを防止することができる。このため、霧化部材1によって霧化された薬液の微粒子を、より遠方まで噴霧することができる。例えば、凸型振動板を用いた本発明の超音波霧化ユニット及び従来の超音波霧化ユニット[(L1/L2)×100=100%]について、それぞれ同じ条件で薬液の微粒子を上方へ噴射させたところ、従来の超音波霧化ユニットの最大噴射高さが10〜15cmであるのに対して、本発明の超音波霧化ユニットの最大噴射高さは、従来品の2〜3倍になることが確認されている。
【0035】
なお、前記円環状の弾性部材2としては、前記Oリングに代えて、断面形状が楕円、四角形、三角形あるいは菱形等のリングであってもよく、また、D字型、X字型、T字型などのリングであってもよい。
また、この円環状の弾性部材は、周方向に完全につながって連続している必要はなく、周方向に一箇所切れ目が入っていてもよく、周方向に数箇所間欠的に切れ目が入っていてもよい。
前記振動板12の凸状部13は、頂部が曲面で構成されたドーム状のみならず、当該頂部が平面で構成された円錐台状であってもよく、その形状は任意である。
さらに、前記実施の形態においては、振動板12として凸状部13を噴霧方向に突出させた凸型振動板を例示したが、凸状部13を噴霧方向と反対方向に突出させて凹状部23とした凹型振動板であってもよい(図3の点線参照)。この他、前記振動板12は、中央部に凸状部及び凹状部を有しない平板型振動板であってもよい。
【0036】
本実施の形態においては、円形薄板状の振動板12が圧電振動子11の開口11aを完全に覆うものを例示したが、矩形薄板状の振動板を用い、この振動板を圧電振動子11の開口11aを跨ぐように掛け渡し、当該振動板の両端部を圧電振動子11の一方の面に固着するようにしてもよい。
また、この発明に係る超音波霧化ユニットは、図4に示すように、吸液芯4を使用することなく薬液を収容する容器7から薬液を直接振動板12に供給するものにも適用して実施することができる。
[効果確認試験]
【0037】
(1)効果確認試験1
<実施例A1〜A12>
実施例A1〜A12として以下の仕様の超音波霧化ユニットを作製した。この実施例の超音波霧化ユニットは、図1に示すものと同じ構造のものである。
i.霧化部材
圧電振動子:
外径15mm、内径5mm、厚み0.4mmの圧電セラミックス
振動板:
凸型振動板
・凸状部の基端部の直径3mm
・微細孔の孔径10μm
・厚み0.04mm(ニッケル製)、
ii.円環状の弾性部材
表1に示すサイズのOリング(硬さ50 IRHD)
<比較例A1〜A3>
比較例A1〜A3として、前記実施例A1〜A12と同じ構造でサイズの異なる超音波霧化ユニットを作製した。この比較例のOリングのサイズを表1に示す。
なお、表1に示す対向割合(%)は、Oリングの線径(=Oリングと霧化部材との対向幅L1)を圧電振動子の径方向幅(L2)で割り、100をかけた値である。この点は、Oリングに関して他の表においても同様である。
<試験条件及び結果>
【0038】
実施例A1〜A12及び比較例A1〜A3の超音波霧化ユニットを用いて、効果確認試験を実施した。この試験では、圧電振動子に対して電圧35Vp−p、高周波周波数110kHzの電力を供給し、噴霧液を上方へ向けて噴射したときの実施例及び比較例の最大噴霧高さを測定した。
また、噴霧液として石油系溶剤(商品名「エクソールD110」)を用いた。この効果確認試験の結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より、実施例A1〜A12は比較例A1〜A3に比べて噴霧高さが高くなることが明らかである。すなわち、Oリングと霧化部材との対向幅(L1)の最大値が、圧電振動子の径方向幅(L2)に対して40%以下である場合に、霧化部材によって霧化された薬液の微粒子を、効果的に遠方まで噴霧できることが明らかである。
【0041】
(2)効果確認試験2
<実施例B1〜B12>
実施例B1〜B12として、振動板の微細孔の孔径を6μmにした以外は前記実施例A1〜A12と同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製した。
<比較例B1〜B3>
比較例B1〜B3として、振動板の微細孔の孔径を6μmにした以外は前記比較例A1〜A3と同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製した。
【0042】
<試験条件及び結果>
実施例B1〜B12及び比較例B1〜B3の超音波霧化ユニットを用いて、効果確認試験1と同じ条件で効果確認試験を実施した。
この効果確認試験の結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2より、振動板の微細孔の孔径が6μmである実施例B1〜B12についても、比較例B1〜B3に比べて噴霧高さが高くなることが明らかである。
【0045】
(3)効果確認試験3
<実施例C1〜C12>
実施例C1〜C12として、振動板の微細孔の孔径を12μmにした以外は前記実施例A1〜A12と同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製した。
<比較例C1〜C3>
比較例C1〜C3として、振動板の微細孔の孔径を12μmにした以外は前記比較例A1〜A3と同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製した。
<試験条件及び結果>
【0046】
実施例C1〜C12及び比較例C1〜C3の超音波霧化ユニットを用いて、効果確認試験1と同じ条件で効果確認試験を実施した。
この効果確認試験の結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3より、振動板の微細孔の孔径が12μmである実施例C1〜C12についても、比較例C1〜C3に比べて噴霧高さが高くなることが明らかである。
【0049】
(4)効果確認試験4
<実施例D1〜D9>
実施例D1〜D9として、硬さが異なるOリングを用いた以外は前記実施例A1、実施例A5及び実施例A9とそれぞれ同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製した。
<試験条件及び結果>
【0050】
実施例D1〜D9の超音波霧化ユニットを用いて、効果確認試験1と同じ条件で効果確認試験を実施した。
この効果確認試験の結果を表4に示す。なお、参考までに表1の実施例A1、実施例A5及び実施例A9の試験結果も表4に併記する。
【0051】
【表4】

【0052】
表4より、Oリングのサイズが同じ超音波霧化ユニットについては、噴霧高さがほぼ同じであることが明らかである。従って、Oリングの硬さは噴霧高さにほとんど影響しないことが分かる。
【0053】
(5)効果確認試験5
<実施例E1〜E12>
実施例E1〜E12として以下の仕様の超音波霧化ユニットを作製した。この実施例E1〜E12の超音波霧化ユニットは、凹型振動板を用いた以外は図1に示すものと同じ構造のものである。
i.霧化部材
圧電振動子:
外径15mm、内径5mm、厚み0.4mmの圧電セラミックス
振動板:
凹型振動板
・凹状部の基端部の直径3mm
・微細孔の孔径10μm
・厚み0.04mm(ニッケル製)
ii.円環状の弾性部材
表5に示すサイズのOリング(硬さ50 IRHD)
<比較例E1〜E3>
比較例E1〜E3として、前記実施例E1〜E12と同じ構造でサイズが異なる超音波霧化ユニットを作製した。この比較例のOリングのサイズを表5に示す。
<試験条件及び結果>
【0054】
実施例E1〜E12及び比較例E1〜E3の超音波霧化ユニットを用いて、効果確認試験を実施した。この試験では、圧電振動子に対して電圧45Vp−p、高周波周波数110kHzの電力を供給し、実施例及び比較例の最大噴霧高さを測定した。
また、噴霧液として石油系溶剤(商品名「エクソールD110」)を用いた。この効果確認試験の結果を表5に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
表5より、Oリングと霧化部材との対向幅(L1)の最大値が、圧電振動子の径方向幅(L2)に対して40%以下である場合に、霧化部材によって霧化された薬液の微粒子を、効果的に遠方まで噴霧することができることが分かる。ただし、その噴霧高さは、実施例E1〜E12よりも、凸型振動板を用いた前記実施例A1〜A12の方が高いことが認められた。
【0057】
(6)効果確認試験6
振動板の微細孔の孔径を6μm及び12μmにした以外は前記実施例E1〜E12と同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製して、効果確認試験5と同じ条件で効果確認試験を実施した。この結果、振動板の微細孔の孔径が6μm及び12μmである場合でも、噴霧高さは、実施例E1〜E12と同等であることが確認された。
【0058】
(7)効果確認試験7
IRHD硬さが30、80及び90であるOリングを用いた以外は前記実施例E1〜E12とそれぞれ同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製して、効果確認試験1と同じ条件で効果確認試験を実施した。この結果、Oリングのサイズが同じ超音波霧化ユニットについては、噴霧高さがほぼ同じであった。従って、凹型振動板を用いた超音波霧化ユニットについても、Oリングの硬さは噴霧高さにほとんど影響しないことが確認された。
【0059】
(8)効果確認試験8
<実施例F1〜F12>
実施例F1〜F12として以下の仕様の超音波霧化ユニットを作製した。この実施例の超音波霧化ユニットは、平板型振動板を用いた以外は図1に示すものと同じ構造のものである。
i.霧化部材
圧電振動子:
外径15mm、内径5mm、厚み0.4mmの圧電セラミックス
振動板:
・平板型振動板
・厚み0.04mm(ニッケル製)
ii.円環状の弾性部材
表6に示すサイズのOリング(硬さは50 IRHD)
<比較例F1〜F3>
比較例F1〜F3として、前記実施例F1〜F12と同じ構造でサイズが異なる超音波霧化ユニットを作製した。この比較例のOリングのサイズを表6に示す。
<試験条件及び結果>
【0060】
実施例F1〜F12及び比較例F1〜F3の超音波霧化ユニットを用いて、効果確認試験を実施した。この試験では、圧電振動子に対して電圧45Vp−p、高周波周波数110kHzの電力を供給し、実施例及び比較例の最大噴霧高さを測定した。
また、噴霧液として石油系溶剤(商品名「エクソールD110」)を用いた。効果確認試験結果を表6に示す。
【0061】
【表6】

【0062】
表6より、弾性リングと霧化部材との対向幅(L1)の最大値が、圧電振動子の径方向幅(L2)に対して40%以下である場合に、霧化部材によって霧化された薬液の微粒子を、効果的に遠方まで噴霧することができることが分かる。ただし、噴霧高さは、凸型振動板を用いた実施例A1〜A12及び凹型振動板を用いた実施例E1〜E12の方が、実施例F1〜F12よりも高いことが認められた。
【0063】
(9)効果確認試験9
振動板の微細孔の孔径を6μm及び12μmにした以外は前記実施例F1〜F12と同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製し、効果確認試験5と同じ条件で効果確認試験を実施した。この結果、振動板の微細孔の孔径が6μm及び12μmである場合でも、噴霧高さは、実施例F1〜F12と同等であることが確認された。
【0064】
(10)効果確認試験10
IRHD硬さが30、80及び90であるOリングを用いた以外は前記実施例F1〜F12とそれぞれ同じ仕様の超音波霧化ユニットを作製し、効果確認試験1と同じ条件で効果確認試験を実施した。この結果、Oリングのサイズが同じ超音波霧化ユニットについては、噴霧高さがほぼ同じであった。従って、平板型振動板を用いた超音波霧化ユニットについても、Oリングの硬さは噴霧高さにほとんど影響しないことが確認された。
【0065】
(11)効果確認試験11
実施例G1〜G6として以下の仕様の超音波霧化ユニットを作製した。この実施例の超音波霧化ユニットは、振動板として凸型振動板、凹型振動板及び平板型振動板を用い、弾性リングとして角リングを用いたものである。
i.霧化部材
圧電振動子:
外径15mm、内径5mm、厚み0.4mmの圧電セラミックス
振動板:
a.凸型振動板
・凸状部の基端部の直径3mm
b.凹型振動板
・凹状部の基端部の直径3mm
c.平板型振動板
・a〜cの各振動板の厚み 0.04mm(ニッケル製)
・a〜cの各振動板の微細孔の口径 10μm
ii.円環状の弾性部材
表7に示すサイズの断面角形の角リング(硬さ55 IRHD)
<比較例G1〜G3>
比較例G1〜G3として、前記実施例G1〜G6と同じ構造でサイズが異なる超音波霧化ユニットを作製した。この比較例の角リングのサイズを表7に示す。
<試験条件及び結果>
【0066】
実施例G1〜G6及び比較例G1〜G3の超音波霧化ユニットを用いて、効果確認試験を実施した。この試験では、圧電振動子に対して以下の電圧で高周波周波数110kHzの電力を供給し、噴霧液を上方へ向けて噴射したときの実施例G1〜G6及び比較例G1〜G3の最大噴霧高さを測定した。
凸型振動板:35Vp−p
凹型振動板:45Vp−p
平板型振動板:45Vp−p
また、噴霧液として石油系溶剤(商品名「エクソールD110」)を用いた。この効果確認試験の結果を表7に示す。
なお、表7に示す対向割合(%)は、角リングの径方向幅(=角リングと霧化部材との対向幅L1)を圧電振動子の径方向幅(L2)で割り、100をかけた値である。
【0067】
【表7】

【0068】
表7より、実施例G1〜G6は比較例G1〜G3に比べて噴霧高さが高いことが明らかである。従って、弾性リングとして断面形状が四角形の角形リングを用いた場合でも、Oリングを用いた場合と同様な効果を奏することが分かる。
【符号の説明】
【0069】
1 霧化部材
11 圧電振動子
11a 開口
12 振動板
13 凸状部
13a 微細孔
2 弾性リング(弾性部材)
3 ケーシング(保持部材)
L1 弾性リングと霧化部材との対向幅
L2 圧電振動子の径方向幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部が開口した円形薄板状の圧電振動子と、厚さ方向に貫通した多数の微細孔を有し、前記開口に臨んだ状態で前記圧電振動子の片面に添わせた振動板とを備え、前記圧電振動子によって前記振動板を超音波振動させて液体を霧化する霧化部材と、
前記霧化部材の両面のそれぞれに添わせた状態で当該霧化部材と同心状に配置された一対の円環状の弾性部材と、
前記一対の弾性部材を介して前記霧化部材を弾性的に挟み込んで保持する保持部材と、を備える超音波霧化ユニットであって、
前記霧化部材の中心を挟んだ径方向の片側における前記円環状の弾性部材と前記霧化部材の片面との径方向の最大対向幅が、前記圧電振動子の中心を挟んだ径方向の片側における径方向幅に対して40%であることを特徴とする超音波霧化ユニット。
【請求項2】
前記振動板が、その中央部に噴霧側に突出する凸状部を有する請求項1記載の超音波霧化ユニット。
【請求項3】
前記凸状部の基端部の直径をR1とし、前記圧電振動子の中央部の開口の直径をR2としたときに、R1とR2の関係が
R1≦(4/5)・R2
である請求項2記載の超音波霧化ユニット。
【請求項4】
前記円環状の弾性部材がOリングである請求項1から3のいずれかに記載の超音波霧化ユニット。
【請求項5】
前記Oリングの線径が0.5から2.0mmの範囲である請求項4記載の超音波霧化ユニット。
【請求項6】
前記霧化部材の中心を挟んだ径方向の片側における前記円環状の弾性部材と前記霧化部材の片面との径方向の最小対向幅が、前記圧電振動子の中心を挟んだ径方向の片側における径方向幅に対して5%である請求項1から5のいずれかに記載の超音波霧化ユニット。
【請求項7】
前記円環状の弾性部材の硬さが20〜90 IRHDである請求項1から6のいずれかに記載の超音波霧化ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−115828(P2012−115828A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242118(P2011−242118)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000136354)株式会社フコク (97)
【Fターム(参考)】