超高純度過酸化水素水の生産方法およびこれに用いる分子篩の製作方法
【課題】低い純度、複雑な操作及び高いエネルギー消費量を必要とするという問題を解決することのできる超高純度過酸化水素水の生産方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る超高純度過酸化水素水の生産方法は、工業級過酸化水素水を、0.1〜0.15MPaの圧力下、キレート化吸着剤を備えたSBA−15分子篩でろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を得る手順を含んで行い、前記キレート化吸着剤は、分子内に水酸基又はカルボキシル基を有することを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る超高純度過酸化水素水の生産方法は、工業級過酸化水素水を、0.1〜0.15MPaの圧力下、キレート化吸着剤を備えたSBA−15分子篩でろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を得る手順を含んで行い、前記キレート化吸着剤は、分子内に水酸基又はカルボキシル基を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子グレード(electronic grade;以下、「電子級」という。)の化学試薬の生産方法に係り、特に超清浄かつ高純度(以下、「超高純度」という。)電子級過酸化水素水の生産方法およびこれに用いる分子篩の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子級の過酸化水素水は、洗浄剤だけでなく、電子工業シリコンチップの洗浄剤、プリント配線のエッチング剤としても良く、また、超高純度試薬、例えば超高純度珪酸の製作原料としても良く、電子工業での不可欠な電子化学製品である。電子工業の急速な発展に連れて、電子級過酸化水素水の生産も急速な発展を遂げ、これと同時に、集積回路の寸法微小化と処理の高速度方向への発展に繋がり、電子級過酸化水素水の品質に対する要求が厳しくなった。現在、超高純度電子級過酸化水素水の生産方法には、精留法、樹脂吸着法、膜分離法及び超臨界抽出法などがある。
【0003】
精留法は、無機不純物を除去する一番理想的な方法の一つであり、生産量が大きく、長い周期で生産できる。例えば、特許文献1で公開された過酸化水素水生産方法と特許文献2で公開された過酸化水素水生産方法はいずれも、多段式加熱蒸発を通じて気体・液体分離を行う。特許文献3に、一種の超高純度過酸化水素水の生産プロセスが公開されている。これによれば、過酸化水素水は、蒸留を通じて有機炭素不純物と無機不純物を除去してから、減圧精留で過酸化水素水を生産している。特許文献4で公開された過酸化水素水生産プロセスでは、精留と洗浄とを組み合わせた方式を採用している。但し、精留法はエネルギー消耗量が高すぎ、また精留塔は裏層のフッ素樹脂用量が大きくて、コストが高い。
【0004】
超高純度電子級過酸化水素水の生産に使用される樹脂吸着法は、主に強酸性陽イオン交換樹脂、強アルカリ性陰イオン交換樹脂、親水性多孔樹脂等に係り、当該方法の不純物除去率が高く、多種純度級別の製品を取得できて、それに設備敷地面積が少なく、組合せ方式が柔軟である。例えば、特許文献5で公開された酢酸イオンが存在する条件の下で行うイオン交換による過酸化水素水の生産方法は、少なくとも一つの陽イオン交換担体と少なくとも化学式R−COO-で表されるカルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン)を含む一つの陰イオン交換樹脂のあるイオン交換担体を採用して吸着を行う。特許文献6で公開された過酸化水素水純化方法も、二級イオン交換樹脂並列方法を採用しており、特許文献7で公開された過酸化水素水の製作方法、特許文献8で公開された過酸化水素水の製作方法、それに特許文献9で公開された過酸化水素水純化方法はいずれも、強酸性陽イオン交換樹脂と強アルカリ性陰イオン交換樹脂とを組み合わせた方法を採用する。但し、樹脂吸着法を採用する生産プロセスと手順が複雑で、樹脂消耗量が大きい。
【0005】
膜ろ過技術は、今後発展する可能性が高く、膜ろ過プロセスで物質相転移が発生せず、室温の下でも操作できて、操作が簡単で、不純物除去率が高く、製品の純度が高い。但し、膜ろ過操作の圧力が高く、それにろ過膜の耐用年数が短く、頻繁な交換が要るため、コストが高くなる欠点がある。従って、目下殆どの場合では、膜ろ過技術を他の方法と組み合わせて使用している。例えば、特許文献10で公開された超高純度過酸化水素水の生産方法及び特許文献11で公開された電子級過酸化水素水の生産方法とプロセスはいずれも、イオン交換樹脂と膜ろ過とを組み合わせて使用しているが、特許文献12で公開された超高純度過酸化水素水の製造プロセス及び装置は、膜ろ過、活性炭吸着及び多段式精留を組み合わせて使用している。
【0006】
超臨界抽出方法は、ここ数年来新しくできた分離方法で、この方法は操作が簡単で、大量生産量に適し、エネルギー消費量が低い。例えば、フィンランドのKemirachemical Oy社は、超臨界状態の下、二酸化炭素抽出方法で過酸化水素水の中での有機不純物を除去することによって、過酸化水素水を生産する。但し、当該方法の製品純度が低い。
【0007】
現在、活性炭吸着方法で電子級過酸化水素水を生産する方法に関する公開もあり、例えば、特許文献13で公開された過酸化水素水精製方法は、活性炭を前処理・洗浄してから吸着する方法である。ただし、活性炭は、過酸化水素水に対して分解役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−292521号公報
【特許文献2】特開2000−1305号公報
【特許文献3】米国特許第5670028号明細書
【特許文献4】米国特許第5296104号明細書
【特許文献5】国際公開第98/054085号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5851505号明細書
【特許文献7】特開平10−259008号公報
【特許文献8】特開平10−324506号公報
【特許文献9】特開平10−297909号公報
【特許文献10】中国特許第1189387C号明細書
【特許文献11】中国特許第100420625C号明細書
【特許文献12】中国特許出願公開第101244810A号明細書
【特許文献13】特開平11−35305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に説明したように、従来の超高純度過酸化水素水の生産技術には、低い純度、複雑な操作及び高いエネルギー消費量という問題がある。
【0010】
本発明は、前記状況に鑑みてなされたものであり、これらの問題を解決することのできる超高純度過酸化水素水の生産方法およびこれに用いる分子篩の製作方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、キレート化吸着剤を搭載するSBA−15分子篩で工業級過酸化水素水をろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を生産する。
【0012】
本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法の手順は次のとおりである。
工業級過酸化水素水を、0.1〜0.15MPaの圧力下、キレート化吸着剤を備えたSBA−15分子篩でろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を得る。
【0013】
好ましくは、前記限外ろ過膜の孔径は0.5μm以下である。
【0014】
好ましくは、前記キレート化吸着剤は、分子中に水酸基又はカルボキシル基を有し、例えば、8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸の一種又は多種の混合である。
【0015】
更に好ましくは、前記キレート化吸着剤とSBA−15分子篩との質量比が2:1である。
【0016】
本発明のキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法は次のとおりである。
SBA−15分子篩を前記キレート化吸着剤の溶液に浸してからろ過し、次に超高純度水に浸して洗浄し、それから100℃の下で24時間乾燥する。
【0017】
この中で、前記キレート化吸着剤が8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸の一種又は多種の混合である。
【0018】
好ましくは、前記キレート化吸着剤の溶液がアルコール溶液である。
【0019】
更に好ましくは、前記キレート化吸着剤のアルコール溶液の質量濃度が10〜50%である。
【0020】
好ましくは、前記SBA−15分子篩の前記キレート化吸着剤のアルコール溶液での浸し時間が24〜48時間である。
【0021】
従来の技術と比べて、本発明は下記の優位性を有している。
(1)本発明はSBA−15分子篩を担体として、キレート化吸着剤を備えた分子篩を製作することによって、ろ過プロセスでの過酸化水素の分解を効果的にコントロールできる。これと同時に、SBA−15分子篩は有機不純物を効果的に吸着でき、さらに吸着剤を搭載しているSBA−15分子篩は原料での金属イオンに対して強い吸着能力を有している。
(2)本発明は、第一段階の吸着が大量の不純物を除去でき、これで後段の膜ろ過での膜耐用年数が大きく増えるため、生産コストを削減できる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたところを総合すれば、本発明は、二段階吸着ろ過方法を採用し、原料での不純物を有効に除去することによって、製品純度が高く、品質が安定的且つコントロール可能になった。それに、吸着法は操作が簡単であり、エネルギー消費量が低いので、大規模な過酸化水素水の生産に適する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る超高純度過酸化水素水の生産方法は、まず過酸化水素水をキレート化吸着剤に通して原料中の有機不純物及び金属不純物を除去してから、ろ過膜を通して固体顆粒及び一部の無機不純物を除去して、最後に取得する製品がSEMI C8標準の要求に適合し、これと同時に多孔質シリカであるSBA−15分子篩が過酸化水素と反応せず、繰り返し使用することができる。当該生産方法は、従来の生産方法での高い不純物、複雑な操作と高いエネルギー消費量の難題を克服した。
【0024】
この中で、使用されたキレート化吸着剤を備えた分子篩の成分は、SBA−15分子篩及び分子内に水酸基又はカルボキシル基を有するキレート化吸着剤を含む。
【0025】
本発明で用いるキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法は次のとおりである。
前記キレート化吸着剤は、溶媒で溶解して浸漬液とし、SBA−15分子篩を前記キレート化吸着剤の浸漬液に浸してからろ過し、次に超高純度水に浸して洗浄し、それから100℃の下で24時間乾燥することによってキレート化吸着剤を備えた分子篩を得る。
【0026】
本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法は次のとおりである。
前記キレート化吸着剤を搭載する分子篩で工業級過酸化水素水をろ過してから、限外ろ過膜でろ過して、電子製品の生産に使用できる超高純度過酸化水素水を生産する。
【0027】
次に、本発明をより良く理解するために、キレート化吸着剤の例として8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸を用い、また、前記キレート化吸着剤のアルコール浸漬液を例として、具体的な実施例を通じて本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法及びキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法を詳細に記載する。但し、下記の具体的な実施例は本発明の範囲を制限しない。
【0028】
この中で、前記8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸及びSBA−15分子篩は市販されているものを用いることができる。
【実施例1】
【0029】
500gの8−ヒドロキシキノリンを3000gのアルコール(エタノール)に溶解し、浸漬液を製作した。250gのSBA−15分子篩を室温下で前記浸漬液に24h浸すことによって、キレート化吸着剤を備えた分子篩を製作した。将来の使用に備え、このキレート化吸着剤を備えた分子篩をカラムに装入してろ過カラムを製作した。
【0030】
100gの30質量%工業級過酸化水素水を0.1MPaの圧力下で、前記製作したろ過カラムに通してろ過した後、孔径0.5μmの限外ろ過膜でろ過した。最後にろ液を収集して、超高純度過酸化水素水を得た。
【0031】
得られた製品の純度検定結果を後記する表1に示す。
【実施例2】
【0032】
実施例1を参照する。
500gのシクロペンタンカルボン酸を4000gのアルコールに溶解し、浸漬液を製作した。250gのSBA−15分子篩を室温の下で前記浸漬液に48h浸漬し、ろ過後のSBA−15分子篩を超高純度水に浸漬して洗浄した後、100℃の下で24h乾燥することによって、キレート吸着剤を備えたSBA−15分子篩を製作した。将来の使用に備え、このキレート化吸着剤を備えた分子篩をカラムに装入してろ過カラムを製作した。
【0033】
100gの30質量%工業級過酸化水素水を0.12MPaの圧力下で、前記製作したろ過カラムに通してろ過した後、孔径0.2μmの限外ろ過膜でろ過した。ろ液を収集して、超高純度過酸化水素水を得た。
【0034】
得られた製品の純度検定結果を後記する表1に示す。
【実施例3】
【0035】
実施例1を参照する。
1,1−ジメチルプロピオ酸をキレート吸着剤とする場合、本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法により、同じようにSEMI C8標準に適合する製品を生産することができる。
【0036】
500gの1,1−ジメチルプロピオ酸を5000gのアルコールに溶解し、浸漬液を製作した。250gのSBA−15分子篩を室温の下で前記浸漬液に48h浸漬し、ろ過後のSBA−15分子篩を超高純度水に浸漬して洗浄した後、100℃の下で24h乾燥することによって、キレート吸着剤を備えたSBA−15分子篩を製作した。将来の使用に備え、このキレート化吸着剤を備えた分子篩をカラムに装入してろ過カラムを製作した。
【0037】
100gの30質量%工業級過酸化水素水を0.15MPaの圧力下で、前記製作したろ過カラムに通してろ過した後、孔径0.2μmの限外ろ過膜でろ過した。ろ液を収集して、超高純度過酸化水素水を得た。
【0038】
得られた製品の純度検定結果を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
ここで、過酸化水素の含有量は、化学分析法で測定し、有機炭素をTOC分析機械(TOC−VCPH)で分析し、陽イオンをICP−MSで分析し、陰イオンをイオン交換クロマトグラフィー(IC)で分析し、0.5μm以上の粉塵粒子をレーザー粒子計数器(RION 40KAF)で分析した。
【0042】
表1に示すように、本発明の生産方法で生産された超高純度過酸化水素水の製品としての品質は安定で、純度はSEMI C8標準に適合していることがわかる。また、簡単な操作でこれを得ることができ、高いエネルギー消費量を必要としなかった。
【0043】
以上、本発明の具体的な実施例に対して詳細に述べたが、これらは、範例に過ぎず、本発明は以上で述べられた具体的な実施例に限定されない。本発明の属する技術分野の当業者に対して、本発明に対する如何なる同等な修正又は代替も本発明の範囲内にある。従って、本発明の趣旨と範囲から外れない前提の下での均等な変換と修正は、全て本発明の範囲内に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子グレード(electronic grade;以下、「電子級」という。)の化学試薬の生産方法に係り、特に超清浄かつ高純度(以下、「超高純度」という。)電子級過酸化水素水の生産方法およびこれに用いる分子篩の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子級の過酸化水素水は、洗浄剤だけでなく、電子工業シリコンチップの洗浄剤、プリント配線のエッチング剤としても良く、また、超高純度試薬、例えば超高純度珪酸の製作原料としても良く、電子工業での不可欠な電子化学製品である。電子工業の急速な発展に連れて、電子級過酸化水素水の生産も急速な発展を遂げ、これと同時に、集積回路の寸法微小化と処理の高速度方向への発展に繋がり、電子級過酸化水素水の品質に対する要求が厳しくなった。現在、超高純度電子級過酸化水素水の生産方法には、精留法、樹脂吸着法、膜分離法及び超臨界抽出法などがある。
【0003】
精留法は、無機不純物を除去する一番理想的な方法の一つであり、生産量が大きく、長い周期で生産できる。例えば、特許文献1で公開された過酸化水素水生産方法と特許文献2で公開された過酸化水素水生産方法はいずれも、多段式加熱蒸発を通じて気体・液体分離を行う。特許文献3に、一種の超高純度過酸化水素水の生産プロセスが公開されている。これによれば、過酸化水素水は、蒸留を通じて有機炭素不純物と無機不純物を除去してから、減圧精留で過酸化水素水を生産している。特許文献4で公開された過酸化水素水生産プロセスでは、精留と洗浄とを組み合わせた方式を採用している。但し、精留法はエネルギー消耗量が高すぎ、また精留塔は裏層のフッ素樹脂用量が大きくて、コストが高い。
【0004】
超高純度電子級過酸化水素水の生産に使用される樹脂吸着法は、主に強酸性陽イオン交換樹脂、強アルカリ性陰イオン交換樹脂、親水性多孔樹脂等に係り、当該方法の不純物除去率が高く、多種純度級別の製品を取得できて、それに設備敷地面積が少なく、組合せ方式が柔軟である。例えば、特許文献5で公開された酢酸イオンが存在する条件の下で行うイオン交換による過酸化水素水の生産方法は、少なくとも一つの陽イオン交換担体と少なくとも化学式R−COO-で表されるカルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン)を含む一つの陰イオン交換樹脂のあるイオン交換担体を採用して吸着を行う。特許文献6で公開された過酸化水素水純化方法も、二級イオン交換樹脂並列方法を採用しており、特許文献7で公開された過酸化水素水の製作方法、特許文献8で公開された過酸化水素水の製作方法、それに特許文献9で公開された過酸化水素水純化方法はいずれも、強酸性陽イオン交換樹脂と強アルカリ性陰イオン交換樹脂とを組み合わせた方法を採用する。但し、樹脂吸着法を採用する生産プロセスと手順が複雑で、樹脂消耗量が大きい。
【0005】
膜ろ過技術は、今後発展する可能性が高く、膜ろ過プロセスで物質相転移が発生せず、室温の下でも操作できて、操作が簡単で、不純物除去率が高く、製品の純度が高い。但し、膜ろ過操作の圧力が高く、それにろ過膜の耐用年数が短く、頻繁な交換が要るため、コストが高くなる欠点がある。従って、目下殆どの場合では、膜ろ過技術を他の方法と組み合わせて使用している。例えば、特許文献10で公開された超高純度過酸化水素水の生産方法及び特許文献11で公開された電子級過酸化水素水の生産方法とプロセスはいずれも、イオン交換樹脂と膜ろ過とを組み合わせて使用しているが、特許文献12で公開された超高純度過酸化水素水の製造プロセス及び装置は、膜ろ過、活性炭吸着及び多段式精留を組み合わせて使用している。
【0006】
超臨界抽出方法は、ここ数年来新しくできた分離方法で、この方法は操作が簡単で、大量生産量に適し、エネルギー消費量が低い。例えば、フィンランドのKemirachemical Oy社は、超臨界状態の下、二酸化炭素抽出方法で過酸化水素水の中での有機不純物を除去することによって、過酸化水素水を生産する。但し、当該方法の製品純度が低い。
【0007】
現在、活性炭吸着方法で電子級過酸化水素水を生産する方法に関する公開もあり、例えば、特許文献13で公開された過酸化水素水精製方法は、活性炭を前処理・洗浄してから吸着する方法である。ただし、活性炭は、過酸化水素水に対して分解役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−292521号公報
【特許文献2】特開2000−1305号公報
【特許文献3】米国特許第5670028号明細書
【特許文献4】米国特許第5296104号明細書
【特許文献5】国際公開第98/054085号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5851505号明細書
【特許文献7】特開平10−259008号公報
【特許文献8】特開平10−324506号公報
【特許文献9】特開平10−297909号公報
【特許文献10】中国特許第1189387C号明細書
【特許文献11】中国特許第100420625C号明細書
【特許文献12】中国特許出願公開第101244810A号明細書
【特許文献13】特開平11−35305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に説明したように、従来の超高純度過酸化水素水の生産技術には、低い純度、複雑な操作及び高いエネルギー消費量という問題がある。
【0010】
本発明は、前記状況に鑑みてなされたものであり、これらの問題を解決することのできる超高純度過酸化水素水の生産方法およびこれに用いる分子篩の製作方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、キレート化吸着剤を搭載するSBA−15分子篩で工業級過酸化水素水をろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を生産する。
【0012】
本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法の手順は次のとおりである。
工業級過酸化水素水を、0.1〜0.15MPaの圧力下、キレート化吸着剤を備えたSBA−15分子篩でろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を得る。
【0013】
好ましくは、前記限外ろ過膜の孔径は0.5μm以下である。
【0014】
好ましくは、前記キレート化吸着剤は、分子中に水酸基又はカルボキシル基を有し、例えば、8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸の一種又は多種の混合である。
【0015】
更に好ましくは、前記キレート化吸着剤とSBA−15分子篩との質量比が2:1である。
【0016】
本発明のキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法は次のとおりである。
SBA−15分子篩を前記キレート化吸着剤の溶液に浸してからろ過し、次に超高純度水に浸して洗浄し、それから100℃の下で24時間乾燥する。
【0017】
この中で、前記キレート化吸着剤が8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸の一種又は多種の混合である。
【0018】
好ましくは、前記キレート化吸着剤の溶液がアルコール溶液である。
【0019】
更に好ましくは、前記キレート化吸着剤のアルコール溶液の質量濃度が10〜50%である。
【0020】
好ましくは、前記SBA−15分子篩の前記キレート化吸着剤のアルコール溶液での浸し時間が24〜48時間である。
【0021】
従来の技術と比べて、本発明は下記の優位性を有している。
(1)本発明はSBA−15分子篩を担体として、キレート化吸着剤を備えた分子篩を製作することによって、ろ過プロセスでの過酸化水素の分解を効果的にコントロールできる。これと同時に、SBA−15分子篩は有機不純物を効果的に吸着でき、さらに吸着剤を搭載しているSBA−15分子篩は原料での金属イオンに対して強い吸着能力を有している。
(2)本発明は、第一段階の吸着が大量の不純物を除去でき、これで後段の膜ろ過での膜耐用年数が大きく増えるため、生産コストを削減できる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたところを総合すれば、本発明は、二段階吸着ろ過方法を採用し、原料での不純物を有効に除去することによって、製品純度が高く、品質が安定的且つコントロール可能になった。それに、吸着法は操作が簡単であり、エネルギー消費量が低いので、大規模な過酸化水素水の生産に適する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る超高純度過酸化水素水の生産方法は、まず過酸化水素水をキレート化吸着剤に通して原料中の有機不純物及び金属不純物を除去してから、ろ過膜を通して固体顆粒及び一部の無機不純物を除去して、最後に取得する製品がSEMI C8標準の要求に適合し、これと同時に多孔質シリカであるSBA−15分子篩が過酸化水素と反応せず、繰り返し使用することができる。当該生産方法は、従来の生産方法での高い不純物、複雑な操作と高いエネルギー消費量の難題を克服した。
【0024】
この中で、使用されたキレート化吸着剤を備えた分子篩の成分は、SBA−15分子篩及び分子内に水酸基又はカルボキシル基を有するキレート化吸着剤を含む。
【0025】
本発明で用いるキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法は次のとおりである。
前記キレート化吸着剤は、溶媒で溶解して浸漬液とし、SBA−15分子篩を前記キレート化吸着剤の浸漬液に浸してからろ過し、次に超高純度水に浸して洗浄し、それから100℃の下で24時間乾燥することによってキレート化吸着剤を備えた分子篩を得る。
【0026】
本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法は次のとおりである。
前記キレート化吸着剤を搭載する分子篩で工業級過酸化水素水をろ過してから、限外ろ過膜でろ過して、電子製品の生産に使用できる超高純度過酸化水素水を生産する。
【0027】
次に、本発明をより良く理解するために、キレート化吸着剤の例として8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸を用い、また、前記キレート化吸着剤のアルコール浸漬液を例として、具体的な実施例を通じて本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法及びキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法を詳細に記載する。但し、下記の具体的な実施例は本発明の範囲を制限しない。
【0028】
この中で、前記8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸及びSBA−15分子篩は市販されているものを用いることができる。
【実施例1】
【0029】
500gの8−ヒドロキシキノリンを3000gのアルコール(エタノール)に溶解し、浸漬液を製作した。250gのSBA−15分子篩を室温下で前記浸漬液に24h浸すことによって、キレート化吸着剤を備えた分子篩を製作した。将来の使用に備え、このキレート化吸着剤を備えた分子篩をカラムに装入してろ過カラムを製作した。
【0030】
100gの30質量%工業級過酸化水素水を0.1MPaの圧力下で、前記製作したろ過カラムに通してろ過した後、孔径0.5μmの限外ろ過膜でろ過した。最後にろ液を収集して、超高純度過酸化水素水を得た。
【0031】
得られた製品の純度検定結果を後記する表1に示す。
【実施例2】
【0032】
実施例1を参照する。
500gのシクロペンタンカルボン酸を4000gのアルコールに溶解し、浸漬液を製作した。250gのSBA−15分子篩を室温の下で前記浸漬液に48h浸漬し、ろ過後のSBA−15分子篩を超高純度水に浸漬して洗浄した後、100℃の下で24h乾燥することによって、キレート吸着剤を備えたSBA−15分子篩を製作した。将来の使用に備え、このキレート化吸着剤を備えた分子篩をカラムに装入してろ過カラムを製作した。
【0033】
100gの30質量%工業級過酸化水素水を0.12MPaの圧力下で、前記製作したろ過カラムに通してろ過した後、孔径0.2μmの限外ろ過膜でろ過した。ろ液を収集して、超高純度過酸化水素水を得た。
【0034】
得られた製品の純度検定結果を後記する表1に示す。
【実施例3】
【0035】
実施例1を参照する。
1,1−ジメチルプロピオ酸をキレート吸着剤とする場合、本発明の超高純度過酸化水素水の生産方法により、同じようにSEMI C8標準に適合する製品を生産することができる。
【0036】
500gの1,1−ジメチルプロピオ酸を5000gのアルコールに溶解し、浸漬液を製作した。250gのSBA−15分子篩を室温の下で前記浸漬液に48h浸漬し、ろ過後のSBA−15分子篩を超高純度水に浸漬して洗浄した後、100℃の下で24h乾燥することによって、キレート吸着剤を備えたSBA−15分子篩を製作した。将来の使用に備え、このキレート化吸着剤を備えた分子篩をカラムに装入してろ過カラムを製作した。
【0037】
100gの30質量%工業級過酸化水素水を0.15MPaの圧力下で、前記製作したろ過カラムに通してろ過した後、孔径0.2μmの限外ろ過膜でろ過した。ろ液を収集して、超高純度過酸化水素水を得た。
【0038】
得られた製品の純度検定結果を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
ここで、過酸化水素の含有量は、化学分析法で測定し、有機炭素をTOC分析機械(TOC−VCPH)で分析し、陽イオンをICP−MSで分析し、陰イオンをイオン交換クロマトグラフィー(IC)で分析し、0.5μm以上の粉塵粒子をレーザー粒子計数器(RION 40KAF)で分析した。
【0042】
表1に示すように、本発明の生産方法で生産された超高純度過酸化水素水の製品としての品質は安定で、純度はSEMI C8標準に適合していることがわかる。また、簡単な操作でこれを得ることができ、高いエネルギー消費量を必要としなかった。
【0043】
以上、本発明の具体的な実施例に対して詳細に述べたが、これらは、範例に過ぎず、本発明は以上で述べられた具体的な実施例に限定されない。本発明の属する技術分野の当業者に対して、本発明に対する如何なる同等な修正又は代替も本発明の範囲内にある。従って、本発明の趣旨と範囲から外れない前提の下での均等な変換と修正は、全て本発明の範囲内に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業級過酸化水素水を、0.1〜0.15MPaの圧力下、キレート化吸着剤を備えたSBA−15分子篩でろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を得る手順を含んで行い、
前記キレート化吸着剤は、分子内に水酸基又はカルボキシル基を有する
ことを特徴とする超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項2】
前記限外ろ過膜の孔径が、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項3】
前記キレート化吸着剤が、8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸のうちの一種又は二種以上の混合であることを特徴とする請求項1に記載の超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項4】
前記キレート化吸着剤と前記SBA−15分子篩との比が2:1であることを特徴とする請求項1に記載の超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項5】
SBA−15分子篩をキレート化吸着剤の溶液に浸してからろ過し、次に超高純度水に浸して洗浄し、それから100℃の下で24時間乾燥することを特徴とする請求項1に記載のキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法。
【請求項6】
前記キレート化吸着剤の溶液が、前記キレート化吸着剤のアルコール溶液であることを特徴とする請求項5に記載の分子篩の製作方法。
【請求項7】
前記アルコール溶液の濃度が、10〜50%であることを特徴とする請求項6に記載の分子篩の製作方法。
【請求項8】
前記SBA−15分子篩が、24〜48時間、前記アルコール溶液中に浸されることを特徴とする請求項7に記載の分子篩の製作方法。
【請求項1】
工業級過酸化水素水を、0.1〜0.15MPaの圧力下、キレート化吸着剤を備えたSBA−15分子篩でろ過してから、限外ろ過膜でろ過して超高純度過酸化水素水を得る手順を含んで行い、
前記キレート化吸着剤は、分子内に水酸基又はカルボキシル基を有する
ことを特徴とする超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項2】
前記限外ろ過膜の孔径が、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項3】
前記キレート化吸着剤が、8−ヒドロキシキノリン、シクロペンタンカルボン酸、1,1−ジメチルプロピオ酸のうちの一種又は二種以上の混合であることを特徴とする請求項1に記載の超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項4】
前記キレート化吸着剤と前記SBA−15分子篩との比が2:1であることを特徴とする請求項1に記載の超高純度過酸化水素水の生産方法。
【請求項5】
SBA−15分子篩をキレート化吸着剤の溶液に浸してからろ過し、次に超高純度水に浸して洗浄し、それから100℃の下で24時間乾燥することを特徴とする請求項1に記載のキレート化吸着剤を備えた分子篩の製作方法。
【請求項6】
前記キレート化吸着剤の溶液が、前記キレート化吸着剤のアルコール溶液であることを特徴とする請求項5に記載の分子篩の製作方法。
【請求項7】
前記アルコール溶液の濃度が、10〜50%であることを特徴とする請求項6に記載の分子篩の製作方法。
【請求項8】
前記SBA−15分子篩が、24〜48時間、前記アルコール溶液中に浸されることを特徴とする請求項7に記載の分子篩の製作方法。
【公開番号】特開2012−116739(P2012−116739A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11454(P2011−11454)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(510302320)上海化学試剤研究所 (3)
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Chemical Reagent Research Institute
【住所又は居所原語表記】No.401 Zhenbei Road,Putuo Shanghai 200333,People’s Republic of China
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(510302320)上海化学試剤研究所 (3)
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Chemical Reagent Research Institute
【住所又は居所原語表記】No.401 Zhenbei Road,Putuo Shanghai 200333,People’s Republic of China
【Fターム(参考)】
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