説明

越波防止構造

【課題】既設の堤防(護岸、胸壁等を含む)に対して越波防止構造物の取付を容易にし、施工を容易にする越波防止構造を提供する。
【解決手段】堤防1の上端部に第1の取付具5を介して基端側が取り付けられ、沖側に向かって延設されるアルミニウム製の天板2と、天板2の先端側に継手3を介して一端が連結され、他端が堤防の海側面に第2の取付具6を介して取り付けられるアルミニウム製の波返し板4と、を具備する越波防止構造において、天板2及び波返し板4を、長手方向が堤防に沿って配設され一枚のアルミニウム製押出形材にて形成する。これにより、既設の堤防1に天板2と波返し板4とからなる越波防止構造物を簡単にかつ確実に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、越波防止構造に関するもので、例えば港湾,海岸沿岸域において、堤防、胸壁等の護岸構造物(以下、これらを堤防と総称する)が設置されているが、これを越えて発生する越波から陸上の人命や建築物等を防護する越波防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、堤防はあまり高さを高くすると景観が悪くなり、設置費用も嵩むため適切な高さに設定されている。
【0003】
適切な高さでも越波を極力防止するためには堤防上端を海側に傾斜させたり、湾曲させて越波を少なくする工夫や、既存の堤防の高さをかさ上げして越波を防止することが考えられていた。
【0004】
この種の越波防止構造として、コンクリート構造のブロックと金属製骨材の骨組構造とからなり、骨組構造でコンクリート構造を支持すると共に、骨組構造同士を締結する防波構造物を既存の堤防の海側に増設するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ゴム等の弾性を有する部材にて形成される突起体を堤防にボルト等で締結する越波防止構造(例えば、特許文献2参照)や、既設堤防の上端部分を切除し、切除された上側部分に代えて新設堤防のブロックを既設堤防の下側部分の上に設置し、アンカー用鉄筋等で接合する防波構造物が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、堤防をかさ上げすることについても知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、波打ち際から海側に張り出された歩道を下から打ち上げる波から保護する構造として、歩道の下面のエ字状桁の張り出し先端部に上端を取り付け、下端を岸壁コンクリート中に埋込み固定した傾斜状の床支承桁の前面に、波板の条溝を歩道面に並行となるようにして歩道下面側を全面的に掩蔽すべく貼り付けた波除壁が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−227167号公報(特許請求の範囲、図7,図16)
【特許文献2】特開平3−293415号公報(第7図)
【特許文献3】特開2006−161402号公報(特許請求の範囲、図2)
【特許文献4】特開2005−133291号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献5】実公昭51−2919号公報(実用新案登録請求の範囲、第1図,第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の防波構造物においては、金属製骨材の骨組構造でコンクリート構造を支持すると共に、骨組構造同士を締結する構造であるため、極めて大掛かりな工事となり、新規に堤防を設置すると同様のものである。また、既設の堤防を残して増設する例も記載されるが新規堤防工事と同等の工事となり、既設の堤防を改良するものではなく構造が複雑で施工が面倒であるという問題があった。
【0009】
これに対して、特許文献2及び3に記載の技術によれば、既設の堤防に越波構造物を取り付けることができるが、特許文献2及び3に記載のものは、いずれも既設の堤防の一部を切除した後、切除した部分に新設の越波防止体を取り付けるため、これにおいても施工が面倒であるという問題があった。
【0010】
また、特許文献4に記載のものは単にかさ上げするだけのものであり、景観を損なう問題点を残していた。
【0011】
また、特許文献5に記載の構造は、歩道の下面の桁の張り出し先端部に上端を取り付け、下端を岸壁コンクリート中に埋込み固定した傾斜状の床支承桁の前面に、波板を複数のボルト、ナットによって固定すると共に、波板の上辺部を歩道桁の先端部に、かつ波板の下辺部を岸壁コンクリートにボルト止めする構造であるため、波板の取り付けに手間を要する。しかも、特許文献5に記載の構造は、歩道と波除壁とを構成する部材が異なり、多くの構成部材を用いるため、構造が複雑で組立・施工が面倒であるという問題があった。
【0012】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、既設の堤防(胸壁、護岸等を含む)に対して越波防止構造物の取付を容易にし、施工を容易にする越波防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、第1の越波防止構造は、堤防の上端部に第1の取付具を介して基端側が取り付けられ、沖側に向かって延設されるアルミニウム製の天板と、上記天板の先端側に継手を介して一端が連結され、他端が上記堤防の海側面に第2の取付具を介して取り付けられるアルミニウム製の波返し板と、を具備してなり、 上記天板及び波返し板を、長手方向が上記堤防に沿って配設され一枚のアルミニウム製押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
このように構成することにより、天板と波返し板とを同一のアルミニウム製押出形材にて形成することができる。また、堤防の上端部にアルミニウム製の天板の基端側を取り付けて、天板を沖側に向かって延設し、天板の先端側に継手を介して一端が連結される波返し板の他端を堤防の海側面に取り付けることができる。したがって、既設の堤防に越波構造物を組み付けることができる。
【0015】
請求項1記載の発明において、上記天板及び波返し板を、複数の連結リブによって区画される複数の中空部を有する中空押出形材にて形成する方が好ましい(請求項2)。この場合、上記天板及び波返し板における連結リブのうち、上記第1,第2の取付具及び上記継手の取付部付近の隣接する連結リブ間が、上記第1,第2の取付具及び上記継手を固定する固定部材の係合受部を形成する構造とする方が好ましい(請求項3)。
【0016】
このように構成することにより、天板及び波返し板を軽量にすることができ、設置現場への運搬を容易にすることができると共に、現場での組付けを容易にすることができる。この場合、天板及び波返し板における連結リブのうち、第1,第2の取付具の取付部付近及び継手の取付部付近の隣接する連結リブ間が、第1,第2の取付具及び継手を固定する固定部材の係合受部を形成することにより、第1,第2の取付具及び継手の取り付けを確実にすることができると共に、強固にすることができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の越波防止構造において、上記継手は、天板の先端側下面に固着される略L字状の第1のブラケットと、波返し板の一端部側面に固着される略L字状の第2のブラケットと、上記第1のブラケットの起立片と第2のブラケットの起立片とを回動可能に連結する連結部材とからなる、ことを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、天板に対して波返し板を変位させて堤防の海面側の任意の位置に取り付けることができる。この場合、継手の構成部材を、略L字状の第1のブラケットと第2のブラケットとで構成することにより、共通の構成部材を用いて天板と波返し板とを変位可能に連結することができる。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の越波防止構造において、上記第1の取付具は、上記天板の基端部下面に固着される略L字状の第1の取付ブラケットと、上記堤防の海側に固着される略L字状の上部取付ブラケットと、上記天板の堤防への取付前に予め上記第1の取付ブラケットの起立片と上部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第1の連結部材とからなり、 上記第2の取付具は、上記波返し板の他端部側面に固着される略L字状の第2の取付ブラケットと、上記堤防の海側に固着される略L字状の下部取付ブラケットと、上記波返し板の上記堤防への取付前に予め上記第2の取付ブラケットの起立片と下部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第2の連結部材とからなり、 上記上部取付ブラケットは、第1のアンカーボルトにより上記堤防に固着され、上記下部取付ブラケットは、上記天板の取付後に、第2のアンカーボルトにより上記堤防に固着される、ことを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、天板の取付具と波返し板の取付具の構成部材を、略L字状の取付ブラケットで構成することができ、共通の構成部材を用いて天板と波返し板とを堤防に取り付けることができる。
【0021】
また、この発明の第2の越波防止構造は、堤防の上端部に第1の取付具を介して基端側が取り付けられ、沖側に向かって延設されるアルミニウム製の天板と、上記天板の先端側に継手を介して一端が連結され、他端が上記堤防の海側面に第2の取付具を介して取り付けられるアルミニウム製の波返し板と、を具備してなり、 上記天板及び波返し板を、長手方向が上記堤防に沿って配設され、互いに接合される複数のアルミニウム製押出形材と、上記天板の下面及び上記波返し板の堤防側面における複数のアルミニウム製押出形材に跨設される略L字状の桁材と、上記押出形材と桁材とを固定する固定部材と、で構成してなる、ことを特徴とする(請求項6)。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の越波防止構造において、上記天板及び波返し板を構成する上記アルミニウム製押出形材を、複数の連結リブによって区画される複数の中空部と、上記固定部材を構成する固定ボルトの頭部を摺動可能に収容する狭隘開口状の凹溝部とを有する中空押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする。
【0023】
このように構成することにより、桁材に設けられた狭隘開口状の凹溝部内に頭部が摺動可能に収容される固定ボルトをもって天板及び波返し板と桁材とを固定することができる。
【0024】
また、請求項8記載の発明は、請求項6又は7記載の越波防止構造において、記桁材は、上記天板及び波返し板の両端部に夫々跨設される桁材と、上記天板及び波返し板の中央部に夫々背中合わせに跨設される桁材の複数を有している、ことを特徴とする。
【0025】
このように構成することにより、複数のアルミニウム製押出形材により構成される天板及び波返し板を強固な構造とすることができる。
【0026】
また、請求項9記載の発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の越波防止構造において、上記継手は、天板の下面に配設される第1の桁材の起立片と、上記波返し板の堤防側面に配設される第2の桁材の起立片と、上記第1及び第2の桁材の起立片同士を回動可能に連結する連結部材とからなる、ことを特徴とする。
【0027】
このように構成することにより、天板に対して波返し板を変位させて堤防の海面側の任意の位置に取り付けることができる。この場合、継手の構成部材を、夫々略L字状の第1のブラケットと第2の桁材とで構成することにより、天板と波返し板とを変位可能に連結することができる。
【0028】
また、請求項10記載の発明は、請求項6ないし9のいずれかに記載の越波防止構造において、上記第1の取付具は、上記天板の下面に配設される第1の桁材の起立片と、上記堤防の海側に固着される略L字状の上部取付ブラケットと、上記天板の堤防への取付前に予め上記第1の桁材の起立片と上部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第1の連結部材とからなり、 上記第2の取付具は、上記波返し板の堤防側面に配設される第2の桁材の起立片と、上記堤防の海側に固着される略L字状の下部取付ブラケットと、上記波返し板の上記堤防への取付前に予め上記第2の桁材の起立片と下部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第2の連結部材とからなり、 上記上部取付ブラケットは、第1のアンカーボルトにより上記堤防に固着され、上記下部取付ブラケットは、上記天板の取付後に、第2のアンカーボルトにより上記堤防に固着される、ことを特徴とする。
【0029】
このように構成することにより、第1,第2の取付具の構成部材を、略L字状の取付ブラケットで構成することができ、また、第1の桁材と第2の桁材を、略L字状の桁材で構成することができるので、共通の構成部材を用いて天板と波返し板とを堤防に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0031】
堤防の上端部に、堤防に沿うアルミニウム押出形材製の天板の基端側を取り付けて、天板を沖側に向かって延設し、天板の先端側に継手を介して一端が連結され、かつ堤防に沿うアルミニウム押出形材製の波返し板の他端を堤防の海側面に取り付けることができるので、既設の堤防に簡単,確実かつ強固な越波構造物を組み付けることができる。
【0032】
天板に対して波返し板を変位させて堤防の海面側の任意の位置に取り付けることができるので、更に既設の堤防の形状や条件に応じて確実に越波構造を組み付けることができる。この場合、継手の構成部材を共通の構成部材を用いて天板と波返し板とを変位可能に連結することができるので、構成部品点数の削減が図れると共に、コストの低廉化が図れる。
【0033】
天板の取付具と波返し板の取付具の構成部材を、共通の構成部材を用いて天板と波返し板とを堤防に取り付けることができるので、更に施工を容易にすることができ、かつ、構成部品点数の削減が図れると共に、コストの低廉化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係る越波防止構造の第1実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】第1実施形態の越波防止構造の概略側面図である。
【図3】図2のI部の拡大図(a)、II部の拡大図(b)及びIII部の拡大図(c)である。
【図4】第1実施形態の越波防止構造の概略正面図である。
【図5】この発明に係る越波防止構造の第2実施形態を示す概略斜視図である。
【図6】第2実施形態の越波防止構造の一部を断面で示す斜視図である。
【図7】第2実施形態の越波防止構造の概略側面図である。
【図8】図7のIV部の拡大図(a)、V部の拡大図(b)及びVI部の拡大図(c)である。
【図9】第2実施形態の越波防止構造の概略平面図である。
【図10】第2実施形態の越波防止構造の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、この発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
<第1実施形態>
この発明に係る越波防止構造は、図1ないし図3に示すように、堤防1の上端部に第1の取付具5を介して基端側が取り付けられ、沖側に向かって延設されるアルミニウム製の天板2と、天板2の先端側に継手3を介して一端が連結され、他端が堤防1の海側面に第2の取付具6を介して取り付けられるアルミニウム製の波返し板4と、を具備し、天板2及び波返し板4を、夫々長手方向が堤防1に沿って配設され一枚のアルミニウム製押出形材10にて形成した構造となっている。ここで、アルミニウムとは、アルミニウム合金を含む意味である。
【0037】
この場合、天板2及び波返し板4は、図1〜図3に示すように、複数の連結リブ10a〜10gによって区画される複数の中空部11を有する中空押出形材10にて形成されている。また、天板2及び波返し板4における複数(図面では7個の場合を示す)の連結リブ10a〜10gのうち、第1,第2の取付具5,6及び継手3の取付部付近の隣接する連結リブ10a,10b間、10d,10e,10f,10g間が、第1,第2の取付具5,6及び継手3を固定する固定部材例えば固定ボルト20の係合受部12を形成すべく間隔sが狭く、つまり中央に位置する連結リブ10cとこの連結リブ10cに隣接する連結リブ10b,10dとの間隔Sより狭くかつ固定ボルト20が挿通可能な間隔に形成されている。なお、両端部の連結リブ10a,10gと天板2及び波返し板4の幅方向の両側端片13a,13bとの間も係合受部12を形成すべく間隔sになっている。なお、天板2と波返し板4は同様の中空押出形材にて形成されており、天板2における一方の表面には滑り止め用の凹凸細条14を形成する方が好ましいため、波返し板4の表面にも凹凸細条14が形成されている。なお、滑り止め用の凹凸細条14は必ずしも設ける必要はない。なお、この場合、上記中空押出形材10(以下に形材10という)は、例えば長さ2000mm、幅500mm、高さ30mmに形成されており、越波が生じる範囲をカバーできる長さとなるように、複数の形材が堤防1に沿って配置されて天板2及び波返し板4が構成されている。
【0038】
天板2と波返し板4の一端部とを連結する継手3は、図4に示すように、天板2及び波返し板4の長手方向(押出方向)の両端部と中央部の3箇所に設けられている。この継手3は、図2及び図3(b)に示すように、天板2の先端側下面に固着される略L字状の第1のブラケット31と、波返し板4の一端部側面に固着される略L字状の第2のブラケット32と、第1のブラケット31の起立片31bと第2のブラケット32の起立片32bとを回動可能に連結する連結部材である連結ボルト22及び連結ボルト22に螺合する連結ナット23とで構成されている。
【0039】
この場合、第1のブラケット31はアルミニウム製の押出形材にて形成されており、固定片31aには、天板2の連結リブ10d,10e,10f間を貫通する2本の固定ボルト20が夫々貫通する貫通孔31cが設けられており、貫通孔31cを貫通した固定ボルト20に固定ナット21を螺合することで、第1のブラケット31が天板2の下面に固着されている。
【0040】
第2のブラケット32はアルミニウム製の押出形材にて形成されており、固定片32aには、波返し板4の側端片13aと連結リブ10a間及び連結リブ10a,10b間を貫通する2本の固定ボルト20が夫々貫通する貫通孔32cが設けられており、貫通孔32cを貫通した固定ボルト20に固定ナット21を螺合することで、第2のブラケット32が波返し板4の堤防側面に固着されている。
【0041】
上記のようにして天板2に固着された第1のブラケット31の起立片31bと、波返し板4に固着された第2のブラケット32の起立片32bには夫々貫通孔(図示せず)が設けられており、これら貫通孔内を挿通する連結ボルト22の突出側端部に連結ナット23が螺合されることで、天板2と波返し板4とが相対的に回動可能に連結される。
【0042】
上記第1の取付具5は、図2及び図3(a)に示すように、天板2の基端部下面に固着される略L字状の第1の取付ブラケット51と、堤防1の海側に固着される略L字状の上部取付ブラケット52と、天板2の堤防1への取付前に予め第1の取付ブラケット51の起立片51bと上部取付ブラケット52の起立片52bとを回動可能に連結する第1の連結部材である第1の連結ボルト22A及び第1の連結ボルト22Aに螺合する第1の連結ナット23Aとで構成されている。
【0043】
この場合、第1の取付ブラケット51はアルミニウム製の押出形材にて形成されており、固定片51aには、天板2の側端片13a,連結リブ10a間、連結リブ10a,10b間を貫通する2本の固定ボルト20が夫々貫通する貫通孔51cが設けられており、貫通孔51cを貫通した固定ボルト20に固定ナット21を螺合することで、第1の取付ブラケット51が天板2の下面に固着されている。
【0044】
上部取付ブラケット52はアルミニウム製の押出形材にて形成されており、固定片52aには、貫通孔52cが設けられており、この貫通孔52cを貫通する第1のアンカーボルト24Aにナット25を螺合することより、上部取付ブラケット52が堤防1の上端部に固着される。なお、第1のアンカーボルト24Aにはケミカルアンカーボルト等が使用される。
【0045】
上記のようにして天板2に固着された第1の取付ブラケット51の起立片51bと、堤防1の上端部に固着された上部取付ブラケット52の起立片52bには夫々貫通孔(図示せず)が設けられており、これら貫通孔内を挿通する第1の連結ボルト22Aの突出側端部に第1の連結ナット23Aが螺合されることで、天板2が堤防1に対して回動可能に連結される。
【0046】
第2の取付具6は、図2及び図3(c)に示すように、波返し板4の他端部側面に固着される略L字状の第2の取付ブラケット61と、堤防1の海側に固着される略L字状の下部取付ブラケット62と、波返し板4の堤防1への取付前に予め第2の取付ブラケット61の起立片61bと下部取付ブラケット62の起立片62bとを回動可能に連結する第2の連結部材である第2の連結ボルト22B及び第2の連結ボルト22Bに螺合する第2の連結ナット23Bとで構成されている。
【0047】
この場合、第2の取付ブラケット61の固定片61aには、連結リブ10f,10g間、連結リブ10g,波返し板4の側端片13b間を貫通する2本の固定ボルト20が夫々貫通する貫通孔61cが設けられており、貫通孔61cを貫通した固定ボルト20に固定ナット21を螺合することで、第2の取付ブラケット61が波返し板4の堤防側面に固着されている。
【0048】
下部取付ブラケット62の固定片62aには、貫通孔62cが設けられており、この貫通孔62cを貫通する第2のアンカーボルト24Bにナット25を螺合することより、下部取付ブラケット62が堤防1の海側面に固着される。なお、第2のアンカーボルト24Bには、第1のアンカーボルト24Aと同様にケミカルアンカーボルト等が使用される。
【0049】
上記のようにして波返し板4に固着された第2の取付ブラケット61の起立片61bと、堤防1の海側面に固着された下部取付ブラケット62の起立片62bには夫々貫通孔(図示せず)が設けられており、これら貫通孔内を挿通する第2の連結ボルト22Bの突出側端部に第2の連結ナット23Bが螺合されることで、波返し板4が堤防1に対して回動可能に連結される。なお、下部取付ブラケット62は、天板2の取付後に、第2のアンカーボルト24Bにより堤防1に固着される。
【0050】
上記第1の取付具5と第2の取付具6は、継手3と同様に、天板2及び波返し板4の長手方向(押出方向)の両端部と中央部の3箇所に設けられている。
【0051】
上記のように構成される天板2と波返し板4は、工場あるいは現場等において、予め継手3によって互いに回動可能に連結されると共に、天板2の基端部には第1の取付ブラケット51が固着され、波返し板4の他端部には第2の取付ブラケット61が固着される。そして、堤防1に取り付ける場合は、まず、天板2の基端部の第1の取付ブラケット51に第1の連結ボルト22A,ナット23Aによって装着された上部取付ブラケット52の固定片52aを第1のアンカーボルト24Aによって堤防1の上端部の海面側に固定する。この際、波返し板4は継手3を介して天板2に対して回動可能になっており、天板2の取付作業の支障にはならない。天板2を堤防1に取り付けた後、波返し板4の他端部の第2の取付ブラケット61に第2の連結ボルト22B,ナット23Bによって装着された下部取付ブラケット62の固定片62aを第2のアンカーボルト24Bによって堤防1の下方の海面側に固定して越波防止構造物を堤防1の越波が生じる場所に取り付ける。これにより、天板2を沖側に向かってやや下り勾配に傾斜させた状態で、天板2と波返し板4を、既設の堤防1に容易に取り付けることができる。なお、波返し板4の下端すなわち他端部から天板2までの高さは、実験により得られた結果から1m程度である方がよい。
【0052】
上記のようにして取り付けられた各ユニットの天板2間の隙間は板材(図示せず)で覆って埋めてもよい。この際、板材を天板2にブラインドリベット等で固定する方がよい。
【0053】
<第2実施形態>
図5ないし図10に示すように、第2実施形態の越波防止構造は、長手方向が堤防1に沿って配設され、互いに接合される複数例えば2枚のアルミニウム製の中空押出形材10A(以下に形材10Aという)と、2枚の形材10Aの一方の面に跨設される略L字状の第1又は第2の桁材7,8と、形材10Aと桁材7,8を固定する、固定部材例えば固定ボルト20Aとによって天板2A及び波返し板4Aを形成した場合である。また、第2実施形態の越波防止構造においては、天板2Aの基端部を第1の取付具5Aによって堤防1に取り付け、天板2Aの先端部と波返し板4Aの一端部とを継手3Aによって連結し、かつ、波返し板4Aの他端部を第2の取付具6Aによって堤防1に取り付ける構成となっている。
【0054】
この場合、天板2A及び波返し板4Aを構成する形材10Aは、複数例えば2個の連結リブ10h,10iによって区画される3個の矩形状の中空部11を有し、接合される一方の形材10Aの側壁15aに、嵌合凹条16を形成し、他方の形材10Aの側壁15bには、嵌合凹条16に嵌合可能な嵌合凸条17が形成されている。また、天板2Aを形成する形材10Aの下面の連結リブ10h,10iが位置する部位には狭隘開口状の凹溝部18が長手通しに形成されている。また、同様に、波返し板4Aを構成する形材10Aの堤防側面の連結リブ10h,10iが位置する部位には狭隘開口状の凹溝部18が長手通しに形成されている。なお、この場合、形材10Aは、例えば長さ2000mm、幅250mm、高さ30mmに形成されている。
【0055】
上記のように形成される2つの形材10Aの嵌合凹条16と嵌合凸条17を嵌合させて、形材10A同士が接合される。そして、接合された形材10Aに桁材7又は8が跨設され、形材10Aに設けられた凹溝部18内に例えば矩形状に形成された頭部20aが摺動可能に収容される固定ボルト20Aを桁材7又は8の固定片7a又は8aに設けられた貫通孔7c又は8cを貫通し、その突出部に固定ナット21を螺合することで、接合された2つの形材10Aと桁材7又は8とが固定されて、天板2Aと波返し板4が形成される。
【0056】
この場合、図9及び図10に示すように、第1の桁材7は、天板2Aの長手方向の両端部に跨設される2個と、中央部において起立片7b同士が背中合わせに跨設される2個の計4個が使用されている。また、第2の桁材8は、波返し板4Aの長手方向の両端部に跨設される2個と、中央部において、第1の桁材7の背中合わせの起立片7bを挟むようにして起立片8b同士が背中合わせに跨設される2個の計4個が使用されている。なお、第1,第2の桁材7,8はアルミニウム製の押出形材にて形成されている。
【0057】
継手3Aは、天板2Aの下面に配設される第1の桁材7の起立片7bと、波返し板4Aの堤防側面に配設される第2の桁材8の起立片8bと、第1及び第2の桁材7,8の起立片7b,8b同士を回動可能に連結する連結部材すなわち連結ボルト22及び連結ボルト22に螺合する連結ナット23とで構成されている。なお、天板2A及び波返し板4Aの中央部に配設される継手3Aは、図6に示すように、第1の桁材7の背中合わせの起立片7bを第2の桁材8の背中合わせの起立片8bが挟むようにした状態で、連結ボルト22を貫通し、その突出部に連結ナット23を螺合した構造となっている。
【0058】
一方、第1の取付具5Aは、天板2Aの下面に配設される第1の桁材7の起立片7bと、堤防1の海側に固着される略L字状のアルミニウム製の押出形材にて形成される上部取付ブラケット52と、天板2Aの堤防1への取付前に予め第1の桁材7の起立片7bと上部取付ブラケット52の起立片52bとを回動可能に連結する第1の連結部材である第1の連結ボルト22A及び第1の連結ボルト22Aに螺合する第1の連結ナット23Aとで構成されている。
【0059】
上部取付ブラケット52は、固定片52aには、貫通孔52cが設けられており、この貫通孔52cを貫通する第1のアンカーボルト24Aにナット25を螺合することより、上部取付ブラケット52が堤防1の上端部に固着される。
【0060】
上記のようにして天板2Aに固着された第1の桁材7の起立片7bと、堤防1の上端部に固着された上部取付ブラケット52の起立片52bには夫々貫通孔(図示せず)が設けられており、これら貫通孔内を挿通する第1の連結ボルト22Aの突出側端部に第1の連結ナット23Aが螺合されることで、天板2Aが堤防1に対して回動可能に連結される。
【0061】
上記第2の取付具6Aは、波返し板4Aの堤防側面に配設される第2の桁材8の起立片8bと、堤防1の海側に固着される略L字状のアルミニウム製の押出形材にて形成される下部取付ブラケット62と、波返し板4Aの堤防への取付前に予め第2の桁材8の起立片8bと下部取付ブラケット62の起立片62bとを回動可能に連結する第2の連結部材である第2の連結ボルト22B及び第2の連結ボルト22Bに螺合する第2の連結ナット23Bとで構成されている。
【0062】
下部取付ブラケット62は、固定片62aには、貫通孔62cが設けられており、この貫通孔62cを貫通する第2のアンカーボルト24Bにナット25を螺合することより、下部取付ブラケット62が堤防1の海面側に固着される。
【0063】
上記のようにして波返し板4Aに固着された第2の桁材8の起立片8bと、堤防1の海面側に固着された下部取付ブラケット62の起立片62bには夫々貫通孔(図示せず)が設けられており、これら貫通孔内を挿通する第2の連結ボルト22Bの突出側端部に第2の連結ナット23Bが螺合されることで、波返し板4Aが堤防1に対して回動可能に連結される。
【0064】
上記天板2Aと波返し板4Aは、工場あるいは現場等において、予め継手3Aによって互いに回動可能に連結されると共に、天板2Aの下面部には第1の桁材7が固着され、波返し板4Aの堤防側面には第2の桁材8が固着される。
【0065】
そして、堤防1に取り付ける場合は、まず、天板2Aの基端部に装着された上部取付ブラケット52の固定片52aを第1のアンカーボルト24Aによって堤防1の上端部の海面側に固定する。この際、波返し板4Aは継手3Aを介して天板2Aに対して回動可能になっているので、上方側に持ち上げることができ、天板2Aの取付作業の邪魔にはならない。天板2Aを堤防1に取り付けた後、波返し板4Aの他端部に装着された下部取付ブラケット62の固定片62bを第2のアンカーボルト24Bによって堤防1の下方の海面側に固定して越波防止構造物を堤防1の越波が生じる場所に取り付ける。
【0066】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0067】
<その他の実施形態>
上記第2実施形態では、天板2A及び波返し板4Aを構成する中空押出形材10Aが2個の場合について説明したが、3以上の中空押出形材を接合して天板及び波返し板を形成してもよい。なお、天板2,2A及び波返し板4,4Aは、リブを有していれば中空でなくてもよく、例えばチャンネル形状であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 堤防
2,2A 天板
3,3A 継手
4,4A 波返し板
5,5A 第1の取付具
6,6A 第2の取付具
7 第1の桁材
8 第2の桁材
10,10A 中空押出形材
10a〜10i 連結リブ
11 中空部
12 係合受部
16 嵌合凹条
17 嵌合凸条
20,20A 固定ボルト
20a 頭部
21 固定ナット
22,22A,22B 連結ボルト
23,23A,23B 連結ナット
24A,24B アンカーボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤防の上端部に第1の取付具を介して基端側が取り付けられ、沖側に向かって延設されるアルミニウム製の天板と、上記天板の先端側に継手を介して一端が連結され、他端が上記堤防の海側面に第2の取付具を介して取り付けられるアルミニウム製の波返し板と、を具備してなり、
上記天板及び波返し板を、長手方向が上記堤防に沿って配設され一枚のアルミニウム製押出形材にて形成してなる、
ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項2】
請求項1記載の越波防止構造において、
上記天板及び波返し板を、複数の連結リブによって区画される複数の中空部を有する中空押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項3】
請求項2記載の越波防止構造において、
上記天板及び波返し板における連結リブのうち、上記第1,第2の取付具及び上記継手の取付部付近の隣接する連結リブ間が、上記第1,第2の取付具及び上記継手を固定する固定部材の係合受部を形成してなる、ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の越波防止構造において、
上記継手は、天板の先端側下面に固着される略L字状の第1のブラケットと、波返し板の一端部側面に固着される略L字状の第2のブラケットと、上記第1のブラケットの起立片と第2のブラケットの起立片とを回動可能に連結する連結部材とからなる、ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の越波防止構造において、
上記第1の取付具は、上記天板の基端部下面に固着される略L字状の第1の取付ブラケットと、上記堤防の海側に固着される略L字状の上部取付ブラケットと、上記天板の堤防への取付前に予め上記第1の取付ブラケットの起立片と上部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第1の連結部材とからなり、
上記第2の取付具は、上記波返し板の他端部側面に固着される略L字状の第2の取付ブラケットと、上記堤防の海側に固着される略L字状の下部取付ブラケットと、上記波返し板の上記堤防への取付前に予め上記第2の取付ブラケットの起立片と下部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第2の連結部材とからなり、
上記上部取付ブラケットは、第1のアンカーボルトにより上記堤防に固着され、上記下部取付ブラケットは、上記天板の取付後に、第2のアンカーボルトにより上記堤防に固着される、ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項6】
堤防の上端部に第1の取付具を介して基端側が取り付けられ、沖側に向かって延設されるアルミニウム製の天板と、上記天板の先端側に継手を介して一端が連結され、他端が上記堤防の海側面に第2の取付具を介して取り付けられるアルミニウム製の波返し板と、を具備してなり、
上記天板及び波返し板を、長手方向が上記堤防に沿って配設され、互いに接合される複数のアルミニウム製押出形材と、上記天板の下面及び上記波返し板の堤防側面における複数のアルミニウム製押出形材に跨設される略L字状の桁材と、上記押出形材と桁材とを固定する固定部材と、で構成してなる、
ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項7】
請求項6記載の越波防止構造において、
上記天板及び波返し板を構成する上記アルミニウム製押出形材を、複数の連結リブによって区画される複数の中空部と、上記固定部材を構成する固定ボルトの頭部を摺動可能に収容する狭隘開口状の凹溝部とを有する中空押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項8】
請求項6又は7記載の越波防止構造において、
上記桁材は、上記天板及び波返し板の両端部に夫々跨設される桁材と、上記天板及び波返し板の中央部に夫々背中合わせに跨設される桁材の複数を有している、ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の越波防止構造において、
上記継手は、天板の下面に配設される第1の桁材の起立片と、上記波返し板の堤防側面に配設される第2の桁材の起立片と、上記第1及び第2の桁材の起立片同士を回動可能に連結する連結部材とからなる、ことを特徴とする越波防止構造。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載の越波防止構造において、
上記第1の取付具は、上記天板の下面に配設される第1の桁材の起立片と、上記堤防の海側に固着される略L字状の上部取付ブラケットと、上記天板の堤防への取付前に予め上記第1の桁材の起立片と上部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第1の連結部材とからなり、
上記第2の取付具は、上記波返し板の堤防側面に配設される第2の桁材の起立片と、上記堤防の海側に固着される略L字状の下部取付ブラケットと、上記波返し板の上記堤防への取付前に予め上記第2の桁材の起立片と下部取付ブラケットの起立片とを回動可能に連結する第2の連結部材とからなり、
上記上部取付ブラケットは、第1のアンカーボルトにより上記堤防に固着され、上記下部取付ブラケットは、上記天板の取付後に、第2のアンカーボルトにより上記堤防に固着される、ことを特徴とする越波防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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