説明

足の第1中足指節関節の異常の治療

哺乳動物の足の第1中足指節関節の異常を治療するための薬物の調製における神経筋毒素の使用が開示される。好ましい実施形態には、外転外反母趾、内反母趾、強直母趾、および強剛母趾などの異常を治療するための薬物の調製において、ボツリヌス毒素など、筋肉と神経の間の接合を妨害することができる毒素の使用が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年2月12日に出願された米国仮特許出願第60/544,017号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、足の第1中足指節関節の異常を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
第1中足指節関節の異常には、外転外反母趾(一般に「バニオン」として知られている)、内反母趾、強直母趾(hallux limitus)、強剛母趾(hallux rigidus)、および他の障害を含む様々な障害が含まれる。
【0004】
外転外反母趾(「外転外反母趾」)は、最も頻繁に見られる第1中足指節関節の異常の一つである。外転外反母趾の患者では、母趾(足の親指)の基節骨が第2趾の方向に向いている。これにより、足の親指は外側に偏り(足の親指が身体の中線から離れて傾き)、第1中足骨と第2中足骨の間の角度が広くなるという結果になる。
【0005】
外転外反母趾の発症における最も大きい変形力の一つは、母趾内転筋である。この筋肉には、横および斜めの2つの筋腹がある。外転外反母趾の患者では、母趾内転筋が機械的に優位に立ち、母趾を外側に引っ張り、中足骨の先端を内側に向ける。
【0006】
外転外反母趾変形の重症度は、従来、X線写真からの様々な測定に基づいて定量化されている。一般的な測定法の一つが、第1中足骨の線と第2中足骨の線の間の中足骨間の角度の測定である。普通は、この角度は、平均すると約6度から約8度である。外転外反母趾の患者では、中足骨間の角度が増大し、重症の異常では測定が30度を超える。別の一般的な測定法は、第1中足の軸線と足の親指の軸線の間の角度である、母趾外転角度である。普通は、この角度は、平均すると約10度から約15度である。外転外反母趾では、母趾外転角度が増大し、極端な症例では測定が70度を超える。3番目の一般的な測定法は、脛骨の種子骨の位置である。外転外反母趾では、第1中足骨は種子骨の内側にはずれ、見かけ上の外側への脱臼を引き起こす。第1中足骨の中央軸線を通して引いた線に対する脛骨の種子骨の位置が、脛骨の種子骨の位置を決める。
【0007】
内反母趾は、母趾(足の親指)の基節骨が第2趾から外側に向く、第1中足指節関節の異常である。これにより、足の親指が内側に偏る(足の親指が身体の中線に向かって傾く)という結果になる。内反母趾の発症における一般的な変形力は、母趾外転筋である。内反母趾の患者では、母趾外転筋が機械的に優位に立ち、母趾を内側に引っ張り、中足骨の先端を外側に向ける。
【0008】
強直母趾は、第1中足指節関節の可動域の制限をもたらす、第1中足指節関節の異常である。普通は、第1中足指節関節の可動域は、平均すると約55度から約75度である。強直母趾の患者では、この可動域が減少する。可動域が約5度より小さくなった場合、この状態を一般的に強剛母趾(足の親指のこわばり)と呼ぶ。
【0009】
強直母趾は、機能性または構造性の可能性がある。機能性の強直母趾は、体重負荷のある間にのみ第1中足指節関節の可動域の制限を示す。一方、構造性の強直母趾は、体重負荷のある間も体重負荷のない間も第1中足指節関節の可動域の制限を示す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、様々な第1中足指節関節の異常を、神経筋毒素を用いて、治療することができる。例えば、一実施形態では、外転外反母趾の症状を軽減するのに十分な量の毒素を患者に投与することにより、外転外反母趾を治療することができる。好ましい態様では、毒素を、筋肉内注射により、好ましくは母趾内転筋中に投与することができる。最も好ましくは、毒素を、横および斜めの母趾内転筋の2つの筋腹の両方に注射することができる。さらに、毒素を、足の親指の伸展に関与する、足の短指伸筋に投与することができる。
【0011】
別の一実施形態では、内反母趾の症状を軽減するのに十分な量の毒素を投与することにより、内反母趾を治療することができる。好ましい態様では、毒素を、筋肉内注射により、好ましくは母趾外転筋中に投与することができる。
【0012】
別の一実施形態では、第1中足指節関節の可動域を増大させるのに十分な量の毒素を投与することにより、強直母趾(または、重症の症例では、強剛母趾)を治療することができる。好ましい態様では、毒素を、筋肉内注射により、好ましくは足の短母指屈筋中に投与することができる。最も好ましくは、毒素を、足の短母指屈筋の内側および外側の筋腹の両方に注射することができる。
【0013】
本発明により治療することができる、第1中足指節関節の他の異常は、外傷、種子骨の障害、および他の第1中足指節関節の障害を含むことができる。
【0014】
毒素は、筋肉と神経の間の接合を妨害することができる神経筋毒素のいずれであってもよい。好ましい態様では、神経筋毒素は、アセチルコリン放出の阻害物質である。例えば、好ましくは、ボツリヌス毒素などのクロストリジウム属の菌の毒素を用いることができる。現在、A型からG型までと呼ばれる7つの既知のボツリヌス毒素の血清型が存在する。現在最も好まれる神経筋毒素は、一般に、A型ボツリヌス毒素である。
【0015】
上述したように、毒素を投与する好ましい方法は、筋肉内注射によるものである。例えば、この実施形態の好ましい態様では、針を標的とする筋肉中に挿入し、毒素を筋肉中に注射し、必要に応じて、繰り返して所望の量の毒素を筋肉に送達することができる。この実施形態のさらに好ましい態様では、注射に最適の部位を決定するために、電気的な刺激を用いることができる。毒素を投与する他の方法も用いることができる。
【0016】
別の一実施形態では、この方法は、場合により、毒素が投与された筋肉に対向する筋肉を刺激することをさらに含む。
【0017】
別の一実施形態では、この方法は、場合により、毒素が投与された後、姿勢を維持するために足を固定することをさらに含む。処置後の固定を、対立筋の電気的刺激と共に用いることができることがさらに企図される。
【0018】
別の一実施形態では、足の手術を受ける間、患者に毒素を投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、神経筋毒素を使用することにより、第1中足指節関節の異常を治療する方法に関する。本発明の実施は、関節異常の症状を軽減するのに十分な量の毒素を患者に投与することを伴う。好ましい態様では、毒素を筋肉内注射により投与することができる。少量の神経筋毒素を筋肉内に注射することにより、脱神経と同様の効果を誘発し、用量依存的な筋緊張の低下、およびそれに続く筋肉の萎縮をもたらす。
【0020】
毒素は、筋肉と神経の間の接合を妨害することができる神経筋毒素のいずれであってもよい。好ましい態様では、毒素は、ボツリヌス毒素、またはそのアセチルコリン放出阻害効果を模倣するタンパク質などの、アセチルコリン放出の阻害物質である。現在、A型からG型までと呼ばれる7つの既知のボツリヌス毒素の血清型が存在する。他の有用な可能性のある毒素としては、それらに限定されないが、破傷風毒素、テトロドトキシン、ディフィシル毒素、ブチリカム毒素、および様々な動物の毒液などがある。ブドウ球菌のα毒素も、骨格筋の可逆性の弛緩性麻痺を誘発することが示されているので、用いることができる(Harshmanら、Infect.Immun.、第62巻、第421〜425頁、1994年)。
【0021】
組換え型神経筋毒素、合成神経筋毒素、および誘導体の神経筋毒素も、本発明によって企図される。例えば、これらの天然毒素の作用を模倣する、組換えDNA技術を用いて産生されたタンパク質を用いることができる。適切な毒素は、当技術分野でよく知られているin vitroのタンパク質合成技術を用いて合成製造したタンパク質も含むことができる。合成製造した神経毒素はまた、酵素的または化学的処理、およびそれ自体が神経毒性である部分との結合または誘導体化などの様々な操作によって神経毒性になった物質を含むものとする。したがって、本発明と関連して用いるための毒素には、自然に存在する毒素および他の既知の毒素の誘導体が含まれる。「誘導体」は、親の化学物質とわずかに異なるが、その化学物質の生物学的作用と類似した、または実質的に類似した生物学的作用を依然として有する化学物質を意味する。例えば、適切な毒素の誘導体は、当技術分野でよく知られているように、修飾されたアミノ酸側鎖を有する神経毒素成分を含むことができる。
【0022】
本発明はまた、神経筋毒素のフラグメント、サブユニット、およびキメラの形態の誘導体を用いることができることも企図している。例えば、ボツリヌス毒素は、2つのジスルフィド結合により結合された1本の重鎖および1本の軽鎖からなる。ジスルフィド結合を切断することにより、サブユニットを分離し、安定剤または毒性増強剤など、他の部分と結合させることができる。他のサブユニットまたは毒性物質と再結合させれば、本発明において使用するのに適した生物学的に活性なキメラを生成することができる。毒素のフラグメント、例えば、神経毒性活性および/または生物学的活性を保持する神経毒素の部分を用いることもできる。
【0023】
本発明はまた、現在知られている神経筋毒素とアミノ酸配列の相同性および/または同一性が共通している神経毒性物質を用いることができることも企図している。さらに、毒素の混合物も、好ましくは、そのような混合物が単一の毒素を用いるよりも長時間持続する作用をもたらすように選択される場合に、用いることができる。
【0024】
現在好ましい毒素はボツリヌス毒素であり、最も好ましくは、A型ボツリヌス毒素である。Allergan(BOTOX)およびIpsen(DYSPORT)から市販されているA型ボツリヌス毒素は、現在FDAにより頸部ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、および皺用に認可されている、人工的に生産された神経筋麻痺性薬剤である。筋肉内に注射されると、ボツリヌス毒素は神経末端に結合し、放出されるアセチルコリンから神経を遮断する。その結果、筋肉は収縮することができず、効果的に弛緩する。B型ボツリヌス毒素は、MYOBLOCの商標で市販されており、臨床的に安全で、多くの神経筋の病気を治療するのに効果的であることも示されている。F型ボツリヌス毒素の使用も、商業化に向けて研究されている。
【0025】
筋肉の弛緩の度合いは、投与量を変化させることにより、投与方法または投与部位を変化させることにより、および投与頻度により調節することができる。
【0026】
患者に投与される毒素の用量は、病気の重症度(例えば、治療を必要とする領域の大きさ、患者の年齢および大きさ、ならびに毒素の効力)に依存する。毒素の1ユニット(U)は、それぞれが18〜20グラムの体重のメスのスイスウェブスターマウスに腹腔内注射した時のLD50と定義される。典型的には、患者に投与される用量は、約1ユニットから約1000ユニットであることができる。一実施形態では、A型ボツリヌス毒素についての現在好ましい投与量は、約50ユニットから約300ユニットである。このような最大量は、眼瞼痙攣およびジストニアの治療に使用される投与量(10〜150U)を大きく上回るが、ヒトに対する致死量(約3000Uと推定されている)を十分に下回っている。最も好ましくは、A型ボツリヌス毒素の投与量の範囲は、約75ユニットから約100ユニットである。当業者であれば、他の神経筋毒素について適当な投与量を知っているか、または過度の実験を行わずに容易に決定することができる。
【0027】
神経筋毒素の効果は遅れて出ることがあるので、処置後の患者のモニタリングを用いて、毒素のさらなる投与が必要かどうかを決定できることがさらに企図される。例えば、外転外反母趾の場合には、中足骨間の角度、母趾の外転角度、および/または、脛骨の種子骨の位置の処置前と処置後の測定値の比較を用いて、さらなる治療が必要かどうかを決定することができる。この実施形態の現在好ましい態様では、このような処置後の患者のモニタリングを、最初の処置の後、約3〜6週目に行うことができる。このようなモニタリングにより、さらなる治療が必要であることが明らかになった場合に、必要に応じて、毒素を再投与することができる。
【0028】
A型ボツリヌス毒素の効果は、患者にもよるが、一般に、約3ヶ月から約6ヶ月間持続する。症状が再発した場合は、必要に応じて、毒素を再投与することができる。他の神経筋毒素について投与する頻度を、当業者は、ごく普通の実験を用いて決定することができる。
【0029】
上記のように、選択された毒素を投与する好ましい方法は、標的とする筋肉への注射によるものである。筋肉内注射は、任意の適切な注射器具を用いて行うことができる。例えば、3ccのツベルクリンシリンジに27ゲージの針を用いて、毒素を筋肉中に直接送達することができる。ニードルレス注入システムを用いて、毒素を標的とする筋肉中に注入することもできる。
【0030】
あるいは、当業者であれば、毒素を投与するのに適した他の技術を決定することができる。例えば、経皮送達システムを用いて、必要に応じて、毒素を投与することができる。さらに、足の手術の間に毒素を投与することができ、この場合、手術中に標的とする場所に毒素を送達するのに適したあらゆる技術を用いることができる。
【0031】
筋肉内注射により投与される場合、当業者であれば、毒素を注射するのに適した技術を決定することができる。この実施形態の現在好ましい態様では、電気的刺激を用いて、注射に最適の部位を決定することができる。例えば、電極に接続された挿入可能な針を、皮膚を通して、標的とする筋肉内に挿入することができる。この針電極を、次いで、標準的な電気的刺激ユニットの刺激プローブに接続することができる。針が筋肉中へ進むにつれ、運動反応を誘発するために、電気的な刺激が与えられる。刺激された筋肉は収縮することにより反応するので、針が標的とする筋肉中の適切な位置にあることを確認するのに、視覚による確認を用いることができる。
【0032】
例えば、内反母趾を治療するために毒素を筋肉内注射により投与しようとする場合、母趾外転筋は、好ましくは、足の内側の面で触診することができ、針電極は、内側の皮膚から、母趾外転筋の中央の筋腹中に向けて配置することができる。ひとたび運動反応が誘発されると(母趾の内転)、毒素を注射することができる。
【0033】
当業者であれば、筋肉内注射を用いる場合、毒素を注射するのに適した他の技術を知っているか、または容易に確かめることができる。例えば、注射する筋肉によって、注射するのに最適な部位を決定するために、筋電図検査法を単独で、または電気的刺激と組み合わせて用いることができる。あるいは、当業者は、最適な注射部位を解剖学的に決定することができることもある。さらに、当業者であれば、ある場合には、毒素を最適に及ばない次善の部位に投与する理由があることを理解するであろう。いずれの場合でも、十分な毒素を標的とする場所に送達するために、このプロセスを必要に応じて繰り返すことができる。
【0034】
別の一実施形態では、この方法は、場合により、毒素が投与された筋肉に対向する筋肉を刺激することをさらに含む。ほとんどの場合、このようなさらなる刺激は不必要である。用いる場合には、対向する筋肉の刺激は、対向する筋肉に電気的な衝撃を加えるための標準的な電気的な筋肉刺激装置を用いて達成することができる。例えば、外転外反母趾の場合には、好ましくは母趾外転筋の運動点上に電極パッドを配置し、低電圧の刺激を加えて筋肉の収縮を引き起こすことにより、刺激を加えることができる。最も好ましくは、神経筋毒素の投与の後で、必要に応じて、対向する筋肉の刺激を患者が行うことができる。例えば、この実施形態の現在好ましい態様では、患者に、追跡調査(フォローアップ)を受ける前に、毎日、対向する筋肉を刺激するように指示することができる。
【0035】
別の一実施形態では、この方法は、場合により、毒素が投与された後、位置を維持するために足を固定することをさらに含む。第1中足指節関節の異常についての矯正的な処置の後、位置を維持するために固定を使用することは当技術分野においてよく知られている。例えば、副木、矯正靴、リッジ底靴(ridged sole shoe)、ギプス、ガーゼ、テープなどを用いて、毒素の投与後に、足を固定することができる。この実施形態の現在好ましい態様では、毒素を投与した後に、標準的な副木を足の上に配置することができる。例えば、外転外反母趾の場合には、好ましくは、患者に、フォローアップを受ける前に、毎晩、足をバニオン副木の中に置くように指示することができる。
【0036】
別の一実施形態では、固定を、対向する筋肉の電気的刺激と共に用いることができる。例えば、外転外反母趾の場合には、好ましくは、患者に、フォローアップを受ける前に、毎日、足をバニオン副木の中に置きながら、母趾外転筋を刺激するように指示することができる。
【0037】
別の一実施形態では、患者の足の手術の間、患者に毒素を投与することができる。好ましい態様では、関節の異常の手術の間、好ましくは最初の外科治療が行われた後に、標的とする筋肉に毒素を投与することができる。例えば、外転外反母趾の場合には、好ましくは、第1中足指節関節の手術の間、好ましくは最初の外科治療が行われた後に、毒素を母趾内転筋中に筋肉内注射により投与することができる。
【実施例】
【0038】
次に、以下の実施例を参照することにより本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【0039】
各実施例では、適切な領域に、ボツリヌス毒素を含む滅菌溶液(例えば、保存料を含まない0.9%滅菌食塩水に可溶化した100ユニットのBOTOX)を注射した。注射する部位の決定は、DIGISTIM III末梢神経/筋肉刺激装置、およびINOJECT針電極を用い、リード(ゲル電極)を患者の腿に配置して行った。
【0040】
(実施例1)
外転外反母趾を患う女性患者を、A型ボツリヌス毒素100ユニットを用い、母趾内転筋中に毒素を直接注射して、治療した。INOJECT針を第1および第2中足指節関節に近い方の足の背側の中央の第1間腔から配置し、針を母趾内転筋の横の筋腹の方向に進めながら2Hzのパルスを出力することにより、注射部位の決定を行った。運動反応が誘発されると(母趾の脈動性外転)、母趾内転筋の横の筋腹中に毒素25ユニットを注射した。次いで、針を一部後退させ、母趾内転筋の斜めの腕に向けて上向きに向け直し、運動反応が誘発される(母趾の内転)まで足底に進める。この時点で、斜めの母趾内転筋中に毒素75ユニットを注射した。1週間以内に、外転外反母趾の症状は著しく軽減した。
【0041】
患者を注射後41日間経過観察し、患者の経過をモニターするために、処置前後のX線写真の測定を行った。処置前、患者の中足骨間の角度は14度、脛骨の種子骨の位置は4、および母趾外転角度は20度を示していた。注射後24日目、患者の中足骨間の角度は10度にまで減少し、脛骨の種子骨の位置は3、および母趾外転角度は10度であった。注射後41日目、患者の中足骨間の角度は9度にまでさらに減少し、脛骨の種子骨の位置は2、および母趾外転角度は7度であった。41日間、患者の外転外反母趾に関連する以前の症状の報告はなかった。
【0042】
(実施例2)
強直母趾を患う女性患者を、A型ボツリヌス毒素100ユニットを用い、短母趾屈筋中に毒素を直接注射して、治療した。INOJECT針を近接する中央の第1間腔で足の背側から皮膚を通して配置し、針を短母趾屈筋の横の筋腹の方へ足底の中央の方向に進めながら刺激を加えることにより、注射部位の決定を行った。第1中足指節関節の足底の屈曲の運動反応で位置が確認されると、短母趾屈筋の横の筋腹中に毒素50ユニットを注射した。次いで、筋肉を触診することができる足の内側面を通して、針を、短母趾屈筋の中央の筋腹に接近させた。針を、およその第1中足骨のレベルから、第1中足指節関節の足底の屈曲の運動反応が誘発されるまで、横に進めた。この時点で、短母趾屈筋の中央の筋腹中に毒素50ユニットを注射した。
【0043】
3日以内に、強直母趾の症状は著しく軽減した。治療前、患者の第1中足指節関節の可動域は30度を示し、可動域で疼痛があった。注射1週間後、患者の第1中足指節関節の可動域は50度を示し、可動域の終わりで疼痛はなかった。6週目に、患者の第1中足指節関節の可動域は55度を示し、可動域で、または可動域の終わりで疼痛はなかった。
【0044】
本発明の特定の形態を記載してきたが、本発明は、その精神および範囲から逸脱せずに、他の特定の形態で実施できることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の足の第1中足指節関節の異常を治療するための薬物の調製における神経筋毒素の使用。
【請求項2】
前記異常が外転外反母趾である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記異常が内反母趾である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記異常が強直母趾である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記異常が強剛母趾である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記神経筋毒素がボツリヌス毒素である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記神経筋毒素がA型ボツリヌス毒素である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
薬物の単位投与量が、約50ユニットから約300ユニットの間のA型ボツリヌス毒素を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記神経筋毒素がB型ボツリヌス毒素である、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記神経筋毒素が毒素の混合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の使用。

【公表番号】特表2007−522240(P2007−522240A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553312(P2006−553312)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/004599
【国際公開番号】WO2005/079828
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506276114)
【Fターム(参考)】