説明

足場装置

【課題】本発明は、地山の掘削や点検などを行う際の作業効率を良好にした足場装置を提供する。
【解決手段】並設された作業ステージ4の作業台20の高さを揃えた状態で、モータ26をオンすると、地山Aの近くで補助ステージ23a,23bが左右に広がり、補助ステージ23aと補助ステージ23bとが枠柱3c,3dの前方まで迫り出す。そして、隣り同士の補助ステージ23a,23bが枠柱3c,3dの前方で接近する。従って、補助ステージ23a,23bを伝って、隣の作業ステージ4の作業台20に作業員が容易に移ることができ、従来のように、刃口室S毎に作業ステージを昇降させる必要がなく、作業者は、刃口室S毎に作業台20を横に移動しながら地山Aの掘削作業や点検作業を行うことができるので、作業効率が極めて良く、しかも安全に作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート函体を地中で押し進めながらトンネル状の地中構造物を築造する推進工法に利用される作業用の足場装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2008−231862号公報がある。この公報に記載された足場架台(作業ステージ)は、函体の前端で並設された3個の刃口室毎に配置されている。この足場架台には、枠材に金網が張られた足場部材が前後方向に移動可能に取付けられている。従って、足場部材を地山近づけるように移動させることで、作業員は、容易に、地山を手掘りすることができ、地山の状態を点検することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成の足場架台にあっては、地山の掘削作業や点検作業の際に作業員が近づくことはできるが、刃口室毎に地山の掘削作業や点検作業を行う際、刃口室毎に足場架台を昇降させなければならず、作業効率が悪いといった問題点がある。また、隣接する足場架台は所定距離だけ離されているので、作業員が隣の足場架台に飛び移ることは好ましくなく、このような行動を回避させるようにしなければならない。
【0005】
本発明は、地山の掘削や点検などを行う際の作業効率を良好にした足場装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、函体の前端で複数並設されている刃口室毎に配置され、作業台が設けられた作業ステージを有する足場装置において、
刃口室を形成する刃口枠の枠柱に沿って作業ステージを昇降させる昇降装置と、
作業台の前側に配置されて、函体の横断方向で枠柱の前方まで水平方向に拡幅する補助ステージと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この足場装置の前側に配置された補助ステージは、函体の横断方向で枠柱の前方まで水平方向に拡幅するので、隣り同士の作業ステージの高さを揃えた状態で補助ステージを拡幅状態にすると、補助ステージを伝って隣の作業台に作業員が容易に移ることができる。従って、刃口室毎に作業ステージを昇降させる必要がなく、刃口室毎に作業ステージを横に移動しながら地山の掘削作業や点検作業を行うことができるので、作業効率が極めて良く、しかも安全に作業を行うことができる。
【0008】
また、補助ステージを拡幅させる拡幅装置は、作業台に固定されたモータと、横断方向に延在してモータにより回転するネジ軸と、補助ステージに設けられてネジ軸に螺着される雌ネジ部と、により構成されていると好適である。
このような構成を採用すると、モータのシャフトを正転及び逆転させることで、ネジ軸に沿って補助ステージを往復動させることができる。従って、地山から作業ステージの作業台が離れているとき、補助ステージを作業ステージ内に格納し、地山に作業ステージの作業台が接近しているとき、補助ステージを作業ステージから横方向に拡幅することができる。
【0009】
また、昇降装置は、枠柱に沿って延在するラックと、作業ステージに設けられてラックに噛合するピニオンと、ピニオンを回転させるモータと、を備えていると好適である。
このような構成を採用すると、電動で作業ステージを確実に昇降させることができる。
【0010】
また、作業ステージの作業台は、電動シリンダによって前後方向に進退すると好適である。
電動シリンダを利用することで、地山から作業ステージの作業台を離したり、地山に作業ステージの作業台を近づけたりしたりする動作を電動で確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地山の掘削作業や点検作業などの様々な作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る足場装置が適用される構造体を示す正面図である。
【図2】作業ステージを示す側面図である。
【図3】作業ステージを示す平面図である。
【図4】補助ステージが拡幅した状態を示す平面図である。
【図5】補助ステージを裏面側から見た底面図である。
【図6】作業台の動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る足場装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、R&C工法に利用される構造体を示しており、このR&C工法は、横断面角型鋼管1を並設したなる角型ルーフRによって線路等を防護し、この角型ルーフRを函体2で押し出しながら函体2を線路等の下に埋設させる工法である。
【0015】
函体2の前端には、矢板5aを長方形状に配列してなる刃口5が3つ並設されており、各刃口5は、函体2の前端に取付けられた刃口枠3にそれぞれ固定されている。各刃口枠3は、上枠3aと下枠3bと左右一対の枠柱3c,3dとによって長方形をなしており、刃口枠3によって囲まれた空間が刃口室Sとして形成され、各刃口室S内で作業ステージ4が枠柱3c,3dに沿って昇降する。
【0016】
図2及び図3に示すように、足場装置10は、刃口室S毎に設置されており、作業ステージ4を昇降させるための昇降装置11を備えている。この昇降装置11は、作業ステージ4の基台12に固定されたモータ13と、モータ13によって回転するピニオン14と、
一方の枠柱3cにブラケット15aを介して固定され、枠柱3cに沿って上下方向に延在し、ピニオン14が噛合するラック15と、他方の枠柱3dにブラケット16aを介して固定され、枠柱3c及び枠柱3dに沿って上下方向に延在する左右一対のガイドレール16と、基台12に設けられて、ガイドレール16に沿って摺動する左右一対のガイドローラ17とを備えている。
【0017】
左右の枠柱3cと枠柱3dとは、互いに同じ角度をもって前傾状態で配置されて、枠柱3c,3dに対してラック15及びガイドレール16は平行に延在している。作業ステージ4の基台12に裏面側には、モータ13が配置され、モータ13の出力は、減速機構18を介してピニオン14に伝達され、ピニオン14は、ラック15に噛合されている。従って、モータ13のオンオフによって、作業ステージ4を任意の高さで停止させることができる。
【0018】
更に、作業ステージ4には、基台12上で水平方向に延在するガイドレールに沿って進退する作業台20が配置され、手摺り20aが設けられたこの作業台20は、電動シリンダ21によって水平方向で任意の位置に停止させることができる。この電動シリンダ21の一端すなわちモータ21a側は、基台12に固定され、電動シリンダ21の他端すなわちシリンダ21b側は、作業台20に固定されている。従って、電動シリンダ21のモータ21aのオンオフによって、作業台20を前後に進退させることができ、地山Aに接近させて作業を行うときに作業台20を前進させ、地山Aから離して作業ステージ4を昇降させるときに作業台20を後退させることができる。
【0019】
図4及び図5に示すように、枠材に金網が張られ状態の作業台20の前側には、横方向に延在するステップ板22が配置され、ステップ板22には、補助ステージ23a,23bを横方向に拡幅するための拡幅装置24が設けられている。補助ステージ23a,23bは、ステップ板22の両側端部から出没可能であり、必要な時(掘削作業や点検作業時)に、ステップ板22の両側端部から突出させ、必要でない時(作業台20の進退時)に、ステップ板22の裏面側に格納される。
【0020】
この補助ステージ23a,23bは、作業台20のステップ板22の左右に配置され、一方の補助ステージ23aは、函体2の横断方向で枠柱3cの前方まで水平方向に拡幅し、他方の補助ステージ23bは、函体2の横断方向で枠柱3dの前方まで水平方向に拡幅する。つまり、一方の補助ステージ23aは、枠柱3cに固定された刃口5の前方で作業者から見て左側に広がり、他の補助ステージ23bは、枠柱3dに固定された刃口5の前方で作業者から見て右側に広がる。
【0021】
図5に示すように、拡幅装置24は、作業台20のステップ板22の裏面に固定されたモータ26と、横断方向に延在して、モータ26により笠歯歯車を介して回転すると共に、左右で逆のネジ切りがなされたネジ軸27a,27bと、補助ステージ23a,23bに設けられてネジ軸27a,27bに螺着される雌ネジ部28a,28bと、により構成されている。
【0022】
モータ26のシャフトを正転させることで、ネジ軸27aとネジ軸27bとが同時に同一方向に回転し、ネジ軸27aとネジ軸27bとが逆ネジ状態になっているので、左右の補助ステージ23a,23bが互いに離れるように移動し、これによって、補助ステージ23a,23bが枠柱3c,3dの前方まで迫り出す。
【0023】
これに対し、補助ステージ23a,23bが枠柱3c,3dの前方まで迫り出した状態で、作業台20を後退させると、補助ステージ23a,23bが刃口5に衝突してしまうので、モータ26のシャフトを逆転させることで、補助ステージ23a,23bが同期してステップ板22の裏面側に格納される。
【0024】
地山Aから作業台20が離れているとき(図6(a)参照)、電動シリンダ21のモータをオンすることで、刃口前方の地山Aの近くまで作業台20を移動させる(図6(b)参照)。そして、3基それぞれの作業ステージ4の作業台20の高さを揃えた状態で、モータ26をオンすると、地山Aの近くで補助ステージ23a,23bが左右に広がり、補助ステージ23aと補助ステージ23bとが枠柱3c,3dの前方まで迫り出す。そして、隣り同士の補助ステージ23a,23bが枠柱3c,3dの前方で接近する(図6(c)参照)。
【0025】
従って、補助ステージ23a,23bを伝って、隣の作業ステージ4の作業台20に作業員が容易に移ることができ、従来のように、刃口室S毎に作業ステージを昇降させる必要がなく、作業者は、刃口室S毎に作業台20を横に移動しながら地山Aの掘削作業や点検作業を行うことができるので、作業効率が極めて良く、しかも安全に作業を行うことができる。
【0026】
作業ステージ4の昇降、前後進退、拡幅のオンオフ操作は、作業ステージ4上でも作業ステージ4外の何れであってもよい。操作盤は、ペンダントスイッチ式が好ましく、スイッチ配線の範囲で何れの位置でも操作可能であり、操作可能なボタンのみ点灯作動することが好ましい。
【符号の説明】
【0027】
2…函体、3…刃口枠、3c,3d…枠柱、4…作業ステージ、5…刃口、10…足場装置、11…昇降装置、12…基台、13…モータ、14…ピニオン、15…ラック、18…減速機構、20…作業台、21…電動シリンダ、23a,23b…補助ステージ、24…拡幅装置、26…モータ、27a,27b…ネジ軸、28a,28b …雌ネジ部、A…地山、S…刃口室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
函体の前端で複数並設されている刃口室毎に配置され、作業台が設けられた作業ステージを有する足場装置において、
刃口室を形成する刃口枠の枠柱に沿って前記作業ステージを昇降させる昇降装置と、
前記作業台の前側に配置されて、前記函体の横断方向で前記枠柱の前方まで水平方向に拡幅する補助ステージと、を備えたことを特徴とする足場装置。
【請求項2】
前記補助ステージを拡幅させる拡幅装置は、
前記作業台に固定されたモータと、
横断方向に延在して前記モータにより回転するネジ軸と、
前記補助ステージに設けられて前記ネジ軸に螺着される雌ネジ部と、により構成されていることを特徴とする請求項1記載の足場装置。
【請求項3】
前記昇降装置は、
前記枠柱に沿って延在するラックと、
前記作業ステージに設けられて前記ラックに噛合するピニオンと、
前記ピニオンを回転させるモータと、を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の足場装置。
【請求項4】
前記作業ステージの前記作業台は、電動シリンダによって前後方向に進退することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−255246(P2010−255246A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105284(P2009−105284)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】