説明

足掛装置及びその製造方法

【課題】軽量で運搬性及び作業能率性に富み、かつ強度及び耐久性に優れ、しかも極めて安価に大量生産することが出来る足掛装置を提供する。
【解決手段】足掛部2aの両側に脚部2bを連設したほぼコ字形の中空金属パイプ製芯材2の外表面全面に合成樹脂が被覆されて樹脂層3が形成され、かつ両方の脚部2bの先端部の樹脂層3の外周壁にネジ4が穿設されて構成された足掛装置1の構造である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマンホール等の足掛け用ステップとして使用される足掛装置及びその製造方法に係り、特に芯材に中空金属パイプを使用すると共にその芯材の全面に合成樹脂を被覆することによって軽量性、運搬性、安全性、耐久性及びコスト低減を可能とした足掛装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本件発明のように、金属製の足掛用芯材の外周に合成樹脂を被覆して構成した足掛装置の公知技術としては、例えば特開平9−95961号公報(第1公知技術)、特開平10−88951号公報(第2公知技術)、特開平10−292412号公報(第3公知技術)、特開平11−280364号公報(第4公知技術)等が良く知られている。
【0003】前記第1公知技術は、中空鋼材製足掛部の両端にステンレス製丸棒脚部を溶着し、かつ該足掛部と丸棒脚部の先端部を除く部分に合成樹脂を被覆して構成した足掛装置の技術である。
【0004】前記第2公知技術は、足踏部と両側部とよりなる金属製の足掛具を芯材とし、該足踏部の全面と側部の先端部を除く部分とに合成樹脂を被覆し、更に脚部の一部に蓄光部材を取付けて構成した足掛装置の技術である。
【0005】前記第3公知技術は、金属製コ字形ステップの主部及び脚部の先端部を除く部分に合成樹脂を被覆し、更に脚部に球状凸部を取付けて構成した足掛装置の技術である。
【0006】前記第4公知技術は、コ字型金属製ステップの両側脚部先端に夫々取付穴を有する固定板を一体的に設け、かつ前記ステップの全面に合成樹脂を被覆して構成した足掛装置の技術である。
【0007】然るに、前述の第1公知技術乃至第4公知技術に示す足掛装置は、いずれも足掛装置の両脚部の先端部は合成樹脂が被覆されていないので、脚部の芯材が腐蝕され易く耐久性に乏しい問題があった。または、その対策のため、ステンレス鋼などの高価な材料を使用する必要があった。
【0008】また、これ等の公知技術に示す足掛装置の両脚部の先端に露出された金属製芯材にはナット等を螺着するためのネジを穿設しなければならないので、そのための特殊な二次加工が必要であり、作業性が悪い問題があった。
【0009】かつ、これ等の公知技術に示す足掛装置は夫々主要部分が全部鋼材で構成されるので、1個ごとの部品が無視できない重さであり、組立式マンホールの様に足掛装置を工場で取付ける場合には、足掛装置の工場までの運搬費用、また、現場打マンホールでは、取付け数が多くなると相当な重量となり、取り付け作業の際の部品の持ち運びが容易でなく、さらにマンホール壁の沿って設けた不安定な足場上で作業を行うために、著しく作業者の負担となる問題があった。
【0010】前述の従来の技術の中にも、例えば第1公知技術の如く、足掛装置の内の中央部の足掛部が鋼板をプレスして形成された中空角筒で形成され、更にこの中空角筒の両端部に切り欠きを設け、この切り欠きに丸棒からなる脚部を差し込み、両者を溶接して連結固定することによって構成した足掛装置もある。
【0011】しかし、この第1公知技術に係る足掛装置は、足掛部に中空角筒を使用したので、従来のものよりも弱冠軽くはなるが、主要部が鋼製の中空角筒と丸棒とより形成されるので重くなり、足掛装置の充分な軽量化にはそれ程役立たない問題があった。更に、この第1公知技術に係る足掛装置は中空角筒の両端部に切り欠きを設けると共に、この切り欠きに丸棒からなる脚部を差し込んだ後で両者を相互に溶接しなければならないので、作業性が極めて悪い問題があった。
【0012】前述の多くの問題点に鑑み開発された全く新しい技術として、特開2001-254374に示す、特にコ字形に曲げられた中空金属パイプを芯材として使用すると共に、この芯材全面に合成樹脂を被覆し、かつ被覆された樹脂層の外周面の一部にネジを設け、前記中空金属パイプ材の内部に合成樹脂が充填されて構成される足掛装置及びその製造方法がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のような足掛装置及びその製造方法には、中空製の芯材の中に樹脂を注入した場合に、体積収縮(以下引けという)が生じるという問題点があった。
【0014】一般に引けの防止として、発泡材を混入させて引けを少なくするようにしているが、引けの現象は発生する。また、樹脂注入後、常温までの冷却時間を長くすることことにより、引けの発生を防止することができるが、生産性が低下するという問題点があった。
【0015】そこで本発明は、生産性が低下することなく、引けの発生を防止することができる足掛装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明に係る足掛装置の製造方法は、マンホール等の壁面に足掛用に取付けられる足掛装置の製造方法において、中空金属パイプ材を中央の足掛部両側に直角に脚部が連設されたコ字形に曲げる段階と、該コ字形の中空金属パイプ材の内部に合成樹脂を充填する段階と、該コ字形の中空金属パイプ材の外表面全面に合成樹脂を被覆して樹脂層を形成する段階と、を有することを特徴とした。
【0017】また、上記課題を解決するために本発明に係る足掛装置の構成は、マンホール等の壁面に足掛用に取付けられる足掛装置において、中空金属パイプ材を中央の足掛部両側に直角に脚部が連設されたコ字形に曲げる段階と、該コ字形の中空金属パイプ材の内部に合成樹脂を充填する段階と、該コ字形の中空金属パイプ材の外表面全面に合成樹脂を被覆して樹脂層を形成する段階と、から製造され、内部に合成樹脂が充填されて構成されることを特徴とした。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明に係る足掛装置及びその製造方法について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係る足掛装置の一部切開平面図、図2は足掛装置に使用される芯材の斜視説明図、図3は足掛装置の製造方法を説明する図である。
【0019】図1及び図2(a)に於いて、1は本発明に係る足掛装置であって、中空金属丸パイプ製のパイプ材2の外表面全面に合成樹脂が肉厚に被覆されて樹脂層3が形成されて構成されている。
【0020】前記中空金属丸パイプ製のパイプ材2は、中空金属製丸パイプの左右両端部を同一方向に折り曲げて足掛部2aの両側に脚部2bを設けることによって構成されている。
【0021】足掛装置1の両脚部2bの先端樹脂層3の外周面にはナット等に螺合し得るネジ4が設けられている。また、足掛装置1の足掛部2aの樹脂層3の上表面には多数のスベリ止め突起5が並列して突設されている。かつ、足掛部2aの樹脂層3の内側縁には波形状突出部6が連続して突出されている。
【0022】前述の図1及び図2(a)に示す実施形態の場合に於いては、パイプ材2として中空金属製丸パイプを使用したが、このパイプ材2は図2(b)に示す如く、中空金属製角パイプを使用することも可能である。また、この角パイプは、図に示すような四角筒でも、扁平四角筒でも、或いは六角筒、八角筒でも使用可能である。
【0023】このように、足掛装置1のパイプ材2に中空金属パイプを使用するので、これを極めて簡単にコ字形に折曲成形することが出来る。また、パイプ材2の外表面全面に合成樹脂を被覆するので、従来の如く、パイプ材2の両端先端部が露出することがなく、従って腐蝕されることがなく、長期間に亘って損傷することがなく安全に使用することが出来る。
【0024】また、両側の脚部2b先端には樹脂層の外周面にネジ4を設けたので、加工が極めて簡単である。さらに、芯材全体が一本の中空金属パイプで形成されているので、足掛装置全体を著しく強化することが出来る。
【0025】パイプ材2の中空部内には、合成樹脂を充填して充填樹脂層8を形成する。このように、中空金属パイプの内部にも合成樹脂が充填されているので、足掛装置全体の強度をより向上せしめることが出来る。
【0026】また、外周部の樹脂と本体部の樹脂を異なるものとしてもよい。即ち、中空内部の樹脂にリサイクルプラスチックを使用してもよい。これにより、生産コストを抑えることができる。
【0027】以下、足掛装置の製造方法について説明する。
【0028】図3に示すように、真っすぐな中空金属パイプ材2を、中央の足掛部2a両側に直角に脚部2bが連設されるようにコ字形に曲げる。
【0029】次に、コ字形に曲げたパイプ材2を固定治具により固定し、両端の開口端を閉塞治具で閉塞する。一方の閉塞治具は、合成樹脂を注入用に加工されており、かかる閉塞治具から合成樹脂を圧入し、パイプ材2の中空部内に合成樹脂を充填する。合成樹脂を充填されたパイプ材2を合成樹脂を常温まで冷却する。
【0030】そして、合成樹脂の射出成形(射出成形機を用いたインサート成形)によって同時工程で、パイプ材2全面に合成樹脂を所定の厚みに被覆するとともに、脚部2bに被覆された樹脂層の外周面にネジ4を形成し、足掛装置1を完成する。
【0031】上述の如く、中空製の芯材を予め曲げ、その中に樹脂を注入し、樹脂が硬化した後に外周の樹脂層を形成する。このように、充填樹脂層8と外周の樹脂層の形成を別工程とすることで、充填樹脂層8の冷却時間を確保することができる。これにより、樹脂の収縮を防止し、引けの発生を防止することができる。
【0032】
【発明の効果】本発明に係る足掛装置及びその製造方法は、中空製の芯材を予め曲げ、その中に樹脂を注入し、樹脂注入、硬化後に外周の樹脂層を形成する。これにより、樹脂の収縮を防止し、引けの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る足掛装置の一部切開平面図である。
【図2】足掛装置に使用される芯材の斜視説明図である。
【図3】足掛装置の製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 …足掛装置
2 …パイプ材
2a …足掛部
2b …脚部
3 …先端樹脂層
4 …ネジ
5 …スベリ止め突起
6 …波形状突出部
8 …充填樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 マンホール等の壁面に足掛用に取付けられる足掛装置の製造方法において、中空金属パイプ材を中央の足掛部両側に脚部が連設されたコ字形に曲げる段階と、該コ字形の中空金属パイプ材の内部に合成樹脂を充填する段階と、該コ字形の中空金属パイプ材の外表面全面に合成樹脂を被覆して樹脂層を形成する段階と、を有することを特徴とした足掛装置の製造方法。
【請求項2】 マンホール等の壁面に足掛用に取付けられる足掛装置であって、足掛部と、該足掛部両端から該足掛部と交差する方向に延長された脚部とを有するコ字形の中空金属パイプ材、該コ字形の中空金属パイプ材の内部に充填されて形成される合成樹脂の充填樹脂と、該コ字形の中空金属パイプ材の外表面全面に被覆される合成樹脂製の樹脂層と、から成ることを特徴とした足掛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−206542(P2003−206542A)
【公開日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−2339(P2002−2339)
【出願日】平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】