説明

路面変状管理システム

【課題】人為操作によるオートレベルで測量する場合に、携帯電話を入力端末とし、計測者が携帯電話を操作して入力処理を完了できて便利であり、システム構成としても経済的で簡易なものとし得、携帯電話からのデータ送出によりリアルタイム処理に適合し得る路面変状管理システムを提供する。
【解決手段】計測者が携帯し、計測範囲データから路面9の測点リスト(xxx1等)の一覧表を生成すると共に、測点リストの各測点における測量値の入力を受け付けて計測結果データを生成する測量用アプリケーションを搭載した携帯電話8を備え、ホストパソコン6と携帯電話8とを無線通信で接続し、ホストパソコンは計測範囲データを携帯電話に送出し、携帯電話の測量用アプリケーションは、携帯電話の画面に測点リストの一覧表を表示し、一覧表への測量値の入力を受け付け、入力完了指示を受け付けることで、計測結果データをホストパソコンへ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人為操作によるオートレベルを用いて測量する場合に、片手で操作可能な携帯電話を入力端末としてその通信機能を利用し、レベルを視準しながら計測者が携帯電話を操作して入力処理を完了することができて使い勝手がよく便利であり、システム構成としても複雑高度でない経済的で簡易なものとすることが可能であって、かつ携帯電話からのデータ送出によりリアルタイム処理に適合し得る路面変状管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド機の掘進に伴う地盤の先行沈下や後続沈下などで誘発される路面変化を管理する路面変状管理システムに関する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1の「シールド工事における地盤沈下量抑制方法」は、シールド機の位置と沈下性状から沈下量を予測してシールド機の掘進管理の制御をリアルタイムで行うことのできるシールド工事における地盤沈下量抑制方法を提供することを目的とし、路線上の沈下データと、シールド機の位置を特定する位置データと、シールド機の掘進管理データとを連続して求める工程と、上記データと時間データを組み込んでシールド機の位置と沈下データとを関連づける工程と、前記シールド機の位置と沈下データとの関連づけに基づいてシールド機の各位置における沈下性状をリアルタイムで沈下特性曲線としてグラフ化し、画像表示する工程と、沈下特性曲線に基づいて沈下量を予測し、事前にシールド機の切羽水圧、土砂取り込み量、掘進速度、シールド機の姿勢、泥水粘性、裏込め注入量、カッター圧力等の制御を行って沈下量を抑制する工程とを含む。沈下量は、掘進計画路線上の地表面や地中に設置した沈下計で計測され、沈下計の計測値は、公衆回線や無線を介して中央管理室に伝送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−284903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、沈下計を地表面や地中に数多く設置する必要があり、計測準備作業が煩雑であった。計測作業については、従来周知のオートレベルを用いることが便利であり、このオートレベルの操作との連係性に優れ、リアルタイム処理に適合する計測値の処理系統の案出が望まれている。
【0005】
また、特許文献1では、沈下計の計測値の伝送に関し、公衆回線や無線を介するとの記載があるが、具体的な方法については何らの開示もなく、計測値の伝送についても、複雑高度でない経済的で簡易なものとすることができる処理系統の案出が望まれている。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、人為操作によるオートレベルを用いて測量する場合に、片手で操作可能な携帯電話を入力端末としてその通信機能を利用し、レベルを視準しながら計測者が携帯電話を操作して入力処理を完了することができて使い勝手がよく便利であり、システム構成としても複雑高度でない経済的で簡易なものとすることが可能であって、かつ携帯電話からのデータ送出によりリアルタイム処理に適合し得る路面変状管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる路面変状管理システムは、シールド機の掘進に伴う地盤の先行沈下や後続沈下などで誘発される路面変化を管理する路面変状管理システムであって、シールド機の運転席に設けられ、該シールド機の運転操作に連動して当該シールド機の掘進に伴う切羽位置データを取り込むとともに、路面変状管理モニタリング用データをモニターに表示する坑内用ソフトウエアを搭載した坑内管理パソコンと、管理室に設けられ、切羽位置データに応じた計測範囲データを決定すると共に、測点リストと測量値の計測結果データから路面変状管理モニタリング用データを生成するホスト用ソフトウエアを搭載したホストパソコンと、測定現場の計測者が携帯し、計測範囲データから路面の測点リストの一覧表の生成を実行すると共に、操作キーの操作で測点リストの各測点における測量値の入力を受け付けて計測結果データの生成を実行する測量用アプリケーションを搭載した携帯電話とを備え、上記ホストパソコンと上記坑内管理パソコンとをデータの送受が可能に有線で接続すると共に、該ホストパソコンと上記携帯電話とをデータの送受が可能に無線通信で接続し、上記ホストパソコンは、上記坑内管理パソコンから受領した切羽位置データに応じて決定した計測範囲データを、上記携帯電話に送出し、計測範囲データを受領した上記携帯電話は、計測者の操作に応じて測量用アプリケーションが起動されて、該携帯電話の画面に測点リストの一覧表を表示し、測点リストに列挙された各測点の路面をレベル計を用いて実測した計測者による一覧表への測量値の入力を受け付け、さらに、計測者の入力完了の指示を受け付けることで、計測結果データを上記ホストパソコンへ送出し、上記ホストパソコンは、受領した計測結果データから路面変状管理モニタリング用データを生成し、さらに、生成した路面変状管理モニタリング用データを上記坑内管理パソコンへ送出し、上記坑内管理パソコンは、受領した路面変状管理モニタリング用データを当該坑内管理パソコンのモニターに表示するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる路面変状管理システムにあっては、人為操作によるオートレベルを用いて測量する場合に、片手で操作可能な携帯電話を入力端末としてその通信機能を利用し、レベルを視準しながら計測者が携帯電話を操作して入力処理を完了することができて使い勝手がよく便利であり、しかもシステム構成としても複雑高度でない経済的で簡易なものとすることができると共に、携帯電話からのデータ送出によりリアルタイム処理に適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかる路面変状管理システムの好適な一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1に示した路面変状管理システムで適用されるホストパソコンと携帯電話の間のデータ送受を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる路面変状管理システムの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。シールド工事では、シールド機の掘進に伴い、地盤に先行沈下や後続沈下などが生じることがあり、これに誘発されて路面が変化することが知られている。
【0011】
図1および図2に示すように、本実施形態にかかる路面変状管理システム1は主に、シールド機2の運転席3に設けた坑内管理パソコン4と、シールド機2が位置する坑内から離れた管理室5に設けたホストパソコン6と、管理室5や坑内から離れた測定現場7の計測者が携帯する携帯電話8と、路面9を測量するオートレベル10とから構成され、路面9の変化を管理するようになっている。
【0012】
オートレベル10は従来周知であって、測定現場7の計測者によって人為的に操作され、路面9を実測してその測量値を表示するようになっている。
【0013】
シールド機2は、従来周知のように、切羽水圧、土砂取り込み量、掘進速度、シールド機の姿勢、泥水粘性、裏込め注入量、カッター圧力等の調節を行うことにより、沈下量を抑制し得る運転制御が可能に構成されている。
【0014】
シールド機2の運転席3の坑内管理パソコン4には、坑内用ソフトウエアが搭載され、この坑内用ソフトウエアは、シールド機2の運転操作に連動してシールド機2の掘進に伴う切羽位置データを取り込むと共に、後述するようにホストパソコン6から受領した路面変状管理モニタリング用データを、坑内管理パソコン4に接続したモニターに表示するようになっている。
【0015】
また、坑内用ソフトウエアは必要に応じて、坑内管理パソコン4に接続したプリンタから帳票を出力できるようになっている。シールド機2の運転者は、モニターに表示された路面変状管理モニタリング用データを見ることで、沈下量を抑制するようにシールド機2を運転操作することができる。
【0016】
坑内管理パソコン4は、管理室5のホストパソコン6と、データの送受が可能に有線で接続される。ホストパソコン6には、ホスト用ソフトウエアが搭載され、ホスト用ソフトウエアは、切羽位置データに応じた測量範囲データを決定すると共に、後述するように携帯電話8から受領する測点リストと測量値の計測結果データから、路面変状管理モニタリング用データを生成する。
【0017】
計測範囲データAは、シールド機2の切羽位置データに基づき、シールド機2の通過前(先行沈下に対応)と通過後(後続沈下に対応)の一定範囲における当該シールド機2の中心線上とその両側に対して、水準測量を実施する範囲を示すデータである。計測範囲データAの決定頻度、即ち測量頻度は、適宜に設定される。
【0018】
路面変状管理モニタリング用データは、決定された測量範囲データAに対応して、その範囲で掘進しているシールド機2の縦断方向および横断方向の沈下傾向を時系列的に示すものである。ホストパソコン6は、路面変状管理モニタリング用データを生成すると、これを坑内管理パソコン4へ送出する。ホスト用ソフトウエアは必要に応じて、ホストパソコン6に接続したモニターにデータを表示したり、プリンタから帳票を出力する。
【0019】
ホストパソコン6は、キーボード操作やマウス操作で、この計測範囲データAを携帯電話8に向かって送出する。ホストパソコン6によるこの送出操作により、管理室5の職員に、測量の実行と計測範囲を認識させることができる。
【0020】
ホストパソコン6は、携帯電話8と、データの送受が可能に無線通信で接続される。携帯電話8にはよく知られているように、キー操作で起動されて、データを送受することが可能なアプリケーションが各種搭載されていて、本実施形態では、この種のアプリケーションと同様に機能する測量用アプリケーションが搭載される。
【0021】
携帯電話8は、ホストパソコン6から送出された計測範囲データAを受領する。測量用アプリケーションは、計測者の操作に従って起動されると、計測範囲データAから、路面9の測点リスト(xxx1等)の一覧表T(図2参照)の生成を実行して携帯電話8の画面8aに表示した後、測量値(○○○○)の入力待機状態となる。測量値は、オートレベル10を操作する測定現場7の計測者によって、携帯電話8へ入力される。
【0022】
具体的には、測量用アプリケーションは、計測者による携帯電話8の操作キーの操作で、測点リストに列挙された各測点(xxx1等)における測量値(○○○○)を、測点リストの一覧表Tに入力することを受け付けて画面8aに表示すると共に、測点リスト(xxx1等)と測量値(○○○○)の計測結果データBの生成を実行する。測量用アプリケーションは最後に、計測者の入力完了の指示を受け付けることで、計測結果データBをホストパソコン6へ送出する。
【0023】
すなわち、各測点を携帯電話8の画面8aに一覧表Tで表示し、当該一覧表Tへ直接測量値を入力してホストパソコン6へ送出することができる。なお、携帯電話8とホストパソコン6とのデータ送受には、よく知られているようにFTPサーバ11が介在される(図2参照)。
【0024】
本実施形態にかかる路面変状管理システム1の作用について説明する。路面変状管理を実行する際には、坑内管理パソコン4の坑内用ソフトウエアが、切羽位置データを取り込み、この切羽位置データをホストパソコン6へ送出する。切羽位置データを受領したホストパソコン6のホスト用ソフトウエアは、計測範囲データAを決定し、管理室5の職員の操作によって、この計測範囲データAを携帯電話8へ送出する。
【0025】
測定現場7の計測者は、携帯電話8の着信機能により、測定開始を認知し、携帯電話8の測量用アプリケーションを起動する。測量用アプリケーションは、受領した計測範囲データAから路面9の測点リスト(xxx1等)の一覧表Tを生成し、携帯電話8の画面8aに表示する。計測者は、人為操作によりオートレベル10を操作し、測点リストの一覧表Tに表示された各測点(xxx1等)に対し、一つずつ計測を実施して測量値(○○○○)を得る。
【0026】
計測者は、測量値(○○○○)を直接、携帯電話8の画面8aに表示されている測点リスト(xxx1等)の一覧表Tへ入力する。測量値の入力を完了した計測者が、測量用アプリケーションに対し、入力完了の指示を実行すると、測点リスト(xxx1等)と測量値(○○○○)の計測結果データBがホストパソコン6へ送出される。
【0027】
ホストパソコン6のホスト用ソフトウエアは、計測結果データBを受領すると、上述した路面変状管理モニタリング用データを生成する。路面変状管理モニタリング用データは、ホストパソコン6のモニターでも確認することができる。ホスト用ソフトウエアは、生成した路面変状管理モニタリング用データを坑内管理パソコン4へ送出する。
【0028】
坑内管理パソコン4の坑内用ソフトウエアは、受領した路面変状管理モニタリング用データを坑内管理パソコン4のモニターに表示する。シールド機2の運転者は、モニター表示を見ながら、カッタートルクや推力などの掘進管理に加え、路面変状状態を確認しつつ、シールド機2を運転することができる。
【0029】
以上説明した本実施形態にかかる路面変状管理システム1は、極めて軽量かつ機能性の高い携帯電話8を入力端末としてその通信機能を利用して構成すると共に、当該携帯電話8の画面8aに測量値の直接入力が可能な測量用アプリケーションを搭載するようにし、そしてまた、携帯電話8の操作が手動によることに対応させて、測量機器として人為的操作によるオートレベル10と組み合わせるようにしているので、システム構成として経済的で簡易なものとすることができると共に、レベルを視準しながら計測者が携帯電話8を操作して入力処理を完了することができて使い勝手がよく、きわめて便利なシステムを構成することができる。従って、高価な自動測量装置やそれに適用すべき複雑な制御等を備える必要がまったくなく、コストアップを招くことがない。
【0030】
また、携帯電話8からホストパソコン6へのデータ送出は、瞬時に完了することができ、ホスト用ソフトウエアや坑内用ソフトウエアの処理速度にも依るが、シールド機2の掘進に対し、それに対応する路面変状管理モニタリング用データを迅速にほぼリアルタイムで管理することができる。
【0031】
このようにリアルタイムで管理できることにより、即ち、今測定した路面9の変状状態と現在掘削しているシールド機2の管理を直ちに照合できることにより、現象と原因を直ちに結びつけることができて、土圧や裏込め注入圧の変化がすぐに路面9に現れる場所などでは、シールド機2の運転者に正確かつ迅速に掘進指示を出すことができる。
【0032】
これにより、シールド機2の切羽直上の路面変状を直ちに把握できると共に、これに従ったシールド機2の運転により、先行沈下や後続沈下を的確に防止することができる。
【0033】
携帯電話8への入力操作については、その画面8aに表示した測点リストの一覧表Tと入力した測量値を対比することが可能で、各測点における誤計測や誤入力を、その場で点検することができる。
【0034】
ホスト用ソフトウエアおよび坑内用ソフトウエアには、計測結果データBから得られた沈下傾向が許容値を超えている場合に、警告を発するアラーム機能を設けるようにしてもよい。
【0035】
携帯電話8に搭載する測量用アプリケーションには、入力された測量値が既入力の測量値と大きく異なる場合に、警告を発する機能を持たせることが好ましく、これにより測量ミスや入力ミスを防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 路面変状管理システム
2 シールド機
3 シールド機の運転席
4 坑内管理パソコン
5 管理室
6 ホストパソコン
7 測定現場
8 携帯電話
8a 携帯電話の画面
9 路面
10 オートレベル
A 計測範囲データ
B 計測結果データ
T 測点リストの一覧表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機の掘進に伴う地盤の先行沈下や後続沈下などで誘発される路面変化を管理する路面変状管理システムであって、
シールド機の運転席に設けられ、該シールド機の運転操作に連動して当該シールド機の掘進に伴う切羽位置データを取り込むとともに、路面変状管理モニタリング用データをモニターに表示する坑内用ソフトウエアを搭載した坑内管理パソコンと、
管理室に設けられ、切羽位置データに応じた計測範囲データを決定すると共に、測点リストと測量値の計測結果データから路面変状管理モニタリング用データを生成するホスト用ソフトウエアを搭載したホストパソコンと、
測定現場の計測者が携帯し、計測範囲データから路面の測点リストの一覧表の生成を実行すると共に、操作キーの操作で測点リストの各測点における測量値の入力を受け付けて計測結果データの生成を実行する測量用アプリケーションを搭載した携帯電話とを備え、
上記ホストパソコンと上記坑内管理パソコンとをデータの送受が可能に有線で接続すると共に、該ホストパソコンと上記携帯電話とをデータの送受が可能に無線通信で接続し、
上記ホストパソコンは、上記坑内管理パソコンから受領した切羽位置データに応じて決定した計測範囲データを、上記携帯電話に送出し、
計測範囲データを受領した上記携帯電話は、計測者の操作に応じて測量用アプリケーションが起動されて、該携帯電話の画面に測点リストの一覧表を表示し、測点リストに列挙された各測点の路面をレベル計を用いて実測した計測者による一覧表への測量値の入力を受け付け、さらに、計測者の入力完了の指示を受け付けることで、計測結果データを上記ホストパソコンへ送出し、
上記ホストパソコンは、受領した計測結果データから路面変状管理モニタリング用データを生成し、さらに、生成した路面変状管理モニタリング用データを上記坑内管理パソコンへ送出し、
上記坑内管理パソコンは、受領した路面変状管理モニタリング用データを当該坑内管理パソコンのモニターに表示するように構成したことを特徴とする路面変状管理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−36571(P2012−36571A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174612(P2010−174612)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】