説明

路面補修具

【課題】歩道など路面を構成するアスファルトと、歩道と車道とを隔成する縁石を構成するコンクリートとの境界の隙間を低コストで補修することができる路面補修具を提供する。
【解決手段】路面Aを構成するアスファルトと縁石Bを構成するコンクリートとの境界における隙間Aaを覆って補修する路面補修具であって、アスファルトに似せた色彩とされたアスファルト色部2と、コンクリートに似せた色彩とされたコンクリート色部3とが形成されたシート状部材1から成り、当該アスファルト色部2をアスファルト側に、コンクリート色部3をコンクリート側に位置決めされつつ隙間Aaを覆って貼付可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面を構成するアスファルトと縁石を構成するコンクリートとの境界における隙間を覆って補修する路面補修具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歩道など路面を構成するアスファルトと、歩道と車道とを隔成する縁石を構成するコンクリートとの境界には隙間が生じていることが多く、その隙間から雑草等が生えることも多い。然るに、雑草の繁殖により、境界近傍のアスファルトが次第に浸食されてしまい景観を損ねてしまうことから、除草作業を頻繁に行うことが必要となるが、雑草の繁殖期などにおいては、除草作業が追いつかず、アスファルトの浸食が生じてしまうことが多い。
【0003】
このように、アスファルトが雑草等により浸食された場合は、従来、隙間に生えた雑草を取り除いた後、浸食された部位及びその周囲を重機や工具等ではつり、その部位をアスファルトにて新たに舗装し直して再生させていた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、路面をはつって舗装し直す必要があったため、多大な費用を必要としてしまうという問題があった。また、たとえ除草を頻繁に行ったとしても、歩道など路面を構成するアスファルトと、歩道と車道とを隔成する縁石を構成するコンクリートとの境界の隙間を放置しておけば、その隙間近傍のアスファルトが経時的に傷んでしまい、多大な費用をかけて再生のための工事を行う必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、歩道など路面を構成するアスファルトと、歩道と車道とを隔成する縁石を構成するコンクリートとの境界の隙間を低コストで補修することができる路面補修具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、路面を構成するアスファルトと縁石を構成するコンクリートとの境界における隙間を覆って補修する路面補修具であって、前記アスファルトに似せた色彩とされたアスファルト色部と、前記コンクリートに似せた色彩とされたコンクリート色部とが形成されたシート状部材から成り、当該アスファルト色部をアスファルト側に、コンクリート色部をコンクリート側に位置決めされつつ前記隙間を覆って貼付可能であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の路面補修具において、前記シート状部材は、織布製法により得られた織布から成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の路面補修具において、前記織布は、前記アスファルトに似せた色彩及びコンクリートに似せた色彩に先染された糸を織り上げて形成されたものから成ることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の路面補修具において、前記織布は、その表面に劣化防止剤が塗布されて劣化防止処理されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の路面補修具において、前記織布は、その表面に前記劣化防止剤と共に防炎剤が塗布されて劣化防止防炎処理されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の路面補修具において、前記シート状部材は、その裏面にシリコンシーラント又は水溶性接着剤が路面状態に応じて選択的に塗布され、前記隙間に貼付可能とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の路面補修具において、前記シート状部材は、織布に、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂及び水が所定の割合で含浸されたものから成ることを特徴する。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記織布がポリエステル織布から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、アスファルト色部をアスファルト側に、コンクリート色部をコンクリート側に位置決めされつつ隙間を覆って貼付可能とされることから、歩道など路面を構成するアスファルトと、歩道と車道とを隔成する縁石を構成するコンクリートとの境界の隙間を低コストで補修することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、シート状部材は、織布製法により得られた織布から成るので、基布の平面密度が高く貼付時の接着強度を向上させることができ、補修後において不用意に剥がれてしまうのを抑制することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、織布は、アスファルトに似せた色彩及びコンクリートに似せた色彩に先染された糸を織り上げて形成されたものから成るので、形成された後の織布に対する着色工程を不要とすることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、織布は、その表面に劣化防止剤が塗布されて劣化防止処理されたので、太陽光や雨等、環境による劣化を抑制することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、織布は、その表面に劣化防止剤と共に防炎剤が塗布されて劣化防止防炎処理されたので、太陽光や雨等、環境による劣化を抑制することができるとともに、火の付いたたばこが捨てられたとしても延焼を抑制することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、シート状部材は、その裏面にシリコンシーラント又は水溶性接着剤が路面状態に応じて選択的に塗布され、隙間近傍を覆って貼付可能とされたので、補修部に対する貼付をより確実に行わせ、確実な補修を行わせることができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、シート状部材は、織布に水溶性アクリル樹脂と水溶性ウレタン樹脂及び水が所定の割合で含浸されたものから成るので、各種色のシート状部材が容易に得られるとともに路面への接着性を高めることができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、織布がポリエステル織布から成るので、シート状部材の引張力を高めて長期に亘り使用可能な路面補修具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る路面補修具は、路面を構成するアスファルトと縁石を構成するコンクリートとの境界における隙間を覆って補修するためのもので、図1に示すように、アスファルトに似せた色彩(紫がかった紺色など)とされたアスファルト色部2と、コンクリート(白に近い灰色)に似せた色彩とされたコンクリート色部3とが形成されたシート状部材1から成る。
【0023】
かかるシート状部材1は、織布製法により得られた織布(糸を織り上げて形成された織布)から成るものであり、少なくともその表面がアスファルトに似せた色彩、及びコンクリートに似せた色彩に着色されたものである。かかる織布は、例えばアスファルトに似せた色彩及びコンクリートに似せた色彩に先染された糸を織り上げて形成されたものから成るものである。
【0024】
このように、アスファルトに似せた色彩及びコンクリートに似せた色彩に先染された糸を織り上げて織布を形成すれば、形成された後の織布に対する着色工程を不要とすることができるが、例えば着色されない織布に対してエアガン等により着色塗料を吹き付け塗装してもよく、或いは着色されない織布を着色塗料に浸して当該着色塗料を含浸させる所謂ドブ付け工程にて得るようにしてもよい。
【0025】
また、シート状部材1は、その表面に劣化防止剤及び防炎剤が塗布されて劣化防止防炎処理された織布から成るものである。劣化防炎処理を施したシート状部材によれば、太陽光や雨等、環境による劣化を抑制することができるとともに、火の付いたたばこが捨てられたとしても延焼を抑制することができ、耐久性及び耐火性の観点から極めて優れたものとされている。即ち、シート状部材1は、人や車両等が頻繁に行き交う路面上に貼付されるため、高い耐久性及び耐候性が求められるとともに、たばこの投げ捨て等に対する延焼の高い抑制効果が求められており、本シート状部材1によれば、これら要求を確実に満たすことができるのである。
【0026】
織布に塗布すべき劣化防止剤としては、例えばアイカ工業株式会社製の商品名「アイカアイボンAE−150」(エチレン−酢ビ共重合エマルジョン系接着剤)を用いるのが好ましく、樹脂コーティングするのが更に好ましい。また、織布に塗布すべき防炎剤としては、大和化学工業株式会社製の商品名「フランDH−5000EK」、「フランS−400」、或いは「フランTTC」(リン系の剤)を用いるのが好ましい。特に、「フランDH−5000EK」を用いる場合、重曹(炭酸水素ナトリウム)にてPH7程度に中和し、水等で溶解させたものとするのが好ましい。尚、劣化防止剤と防炎剤とを一括して塗布して一工程にて劣化防止防炎処理を行ってもよく、或いは劣化防止剤の塗布工程と防炎剤の塗布工程とを別々に行ってもよい。
【0027】
然るに、本路面補修具を成すシート状部材1は、同図に示すように、長尺状に形成されつつロール状に巻かれており、これを必要量繰り出して路面の補修部に貼付することができるようになっている。以下、シート状部材1の貼付方法について、図2〜図4に基づいて説明する。尚、同図における符号Aはアスファルトから成る歩道の路面、Bは縁石、Cは車道の路面を示している。
【0028】
まず、図2に示す如く歩道における路面Aを構成するアスファルトと縁石Bを構成するコンクリートとの境界における隙間Aaに繁殖した雑草等を刈り取り除去する。図3に示す如く雑草等の除去後、路面Aにおいて雑草の繁殖等により隆起している場合は、転圧したり或いはサンダー掛けを行って平坦に成形しておく。尚、補修部のゴミ等の異物は完全に除去しておく。
【0029】
一方、シート状部材1を補修部の寸法に応じて必要量繰り出しておき、その裏面(貼付面)に対し、乾燥後に透明となる水溶性接着剤を十分塗布しておく。また、補修部が荒れている場合(面粗度が粗い場合等)は、シート状部材1の裏面(貼付面)にシリコンシーラントを十分塗布しておく。即ち、補修部の路面状態に応じて、シリコンシーラント又は水溶性接着剤を選択的に塗布するのである。
【0030】
次に、図4に示すように、アスファルト色部2を路面Aのアスファルト側に、コンクリート色部を縁石Bのコンクリート側に位置決めし、シート状部材1にて隙間Aaを覆いつつ補修部に貼付する。貼付後は、シート状部材1の上面から作業者が踏み付けて接着を確実に行わせるとともに、ローラ等にて全面を略均等に押さえて安定させる。以上により、本路面補修具の貼付作業が終了する。
【0031】
上記の如く本実施形態によれば、アスファルト色部2をアスファルト側に、コンクリート色部3をコンクリート側に位置決めされつつ隙間Aaを覆って貼付可能とされることから、大規模な再生工事等が不要とされ、歩道など路面Aを構成するアスファルトと、歩道と車道とを隔成する縁石Bを構成するコンクリートとの境界の隙間Aaを低コストで補修することができる。
【0032】
また、本路面補修具を成すシート状部材1は、織布製法により得られた織布から成るので、基布の平面密度が高く貼付時の接着強度を向上させることができ、補修後において不用意に剥がれてしまうのを抑制することができる。更に、本シート状部材1は、その裏面にシリコンシーラント又は水溶性接着剤が補修部の路面状態に応じて選択的に塗布され、隙間Aaを覆って貼付可能とされたので、補修部に対する貼付をより確実に行わせ、確実な補修を行わせることができる。
【0033】
また更に、アスファルト色部2とコンクリート色部3は、2色の糸を所定の幅に配置して織り上げているので、ラインが明瞭な縞模様とすることができるとともに、当該2色のラインが路面の景観をより引き締めることができ、景観をより向上させることができる。尚、本シート状部材1は、路面Aを構成するアスファルトと縁石Bを構成するコンクリートとの境界における隙間を覆って補修するので、当該隙間をなくし、その後の雑草等の繁殖を抑制して景観を長期に亘って維持することができる。
【0034】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば補修時に限らず、路面A及び縁石Bの新設時から適用することができ、この場合、除草作業等が不要になるため更に低コストで設置することができる。また、アスファルト色部2のアスファルトに似せた色彩、及びコンクリート色部3のコンクリートに似せた色彩は、補修部に合わせて任意選択及び決定することができる。
【0035】
シート状部材1は、例えばバージンポリエステル100%、或いは再生品ポリエステル100%のものを使用するのが好ましい。この場合、アスファルト色部2やコンクリート色部3の色彩に加え、それら質感にも似せることができ、補修部に貼付した状態で極めて自然な状態とすることができる。
【0036】
更に、本実施形態においては、織布が、その表面に劣化防止剤とともに防炎剤が塗布されて劣化防止防炎処理されているが、劣化防止剤或いは防炎剤のみを塗布するようにしてもよい。例えば、劣化防止剤のみを塗布して劣化防止処理されたものと、劣化防止剤及び防炎剤の両者を塗布して劣化防止防炎処理されたものとを用意しておき、路面補修具が貼付される場所やコスト等を勘案して、選択的に貼付するようにしてもよい。尚、劣化防止剤又は防炎剤は、貼付前の路面補修具に予め塗布しておいてもよく、或いは路面補修具を路面に貼付した後に塗布するようにしてもよい。
【0037】
ところで、上記実施形態おいて、シート状部材1を次のように構成することもできる。すなわち、シート部材1の織布として、前述したポリエステル織布を使用し、この織布に、水溶性アクリル樹脂と水溶性ウレタン樹脂及び水を含浸させる。この場合、水溶性アクリル樹脂としては、例えば関西ペイント株式会社製のフッソ、アクリル樹脂を用い、水溶性ウレタン樹脂としては、例えばアイカ工業株式会社製の商品名アイカアイボンAE−150やアイカアイボン114等を用いるのが好ましい。また、水溶性アクリル樹脂と水溶性ウレタン樹脂と共に所定の顔料を含浸させることも可能である。
【0038】
そして、これらの水溶性アクリル樹脂と水溶性ウレタン樹脂及び水を、図5に示す実施例1〜実施例3に示す割合で混合して含浸液を作成し、この含浸液内に織布を例えばトブ付けして含浸液を織布に含浸させることにより、シート状部材1を作製する。このシート状部材によれば、図5の実験結果欄に示すように、シート状部材1の引張力が大幅に向上する等、路面補修具として良好(実施例1が最も良好)な結果が得られた。また、各種色の水溶性アクリル樹脂の使用でシート状部材1の色を路面Aの色調に簡単に合わすことができたり、水溶性ウレタン樹脂の接着性により、路面Aへの接着強度を一層高めることができたり、あるいはポリエステル織布の使用により、太陽の紫外線に対して強く長期に亘り安定使用可能な路面補修具が得られることも確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、アスファルトに似せた色彩とされたアスファルト色部と、コンクリートに似せた色彩とされたコンクリート色部とが形成されたシート状部材から成り、当該アスファルト色部をアスファルト側に、コンクリート色部をコンクリート側に位置決めされつつ隙間に貼付可能である路面補修具であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る路面補修具を示す模式図
【図2】同路面補修具の補修部に対する貼付方法を示すべく、補修及び除草前の路面状態を示す模式図
【図3】同路面補修具の補修部に対する貼付方法を示すべく、補修前及び除草後の路面状態を示す模式図
【図4】同路面補修具の補修部に対する貼付方法を示すべく、補修後の路面状態を示す模式図
【図5】同路面補修具の変形例の実験結果を示す図
【符号の説明】
【0041】
1 シート状部材(路面補修具)
2 アスファルト色部
3 コンクリート色部
A 路面(アスファルト)
Aa 隙間
B 縁石(コンクリート)
C 車道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を構成するアスファルトと縁石を構成するコンクリートとの境界における隙間を覆って補修する路面補修具であって、
前記アスファルトに似せた色彩とされたアスファルト色部と、
前記コンクリートに似せた色彩とされたコンクリート色部と、
が形成されたシート状部材から成り、当該アスファルト色部をアスファルト側に、コンクリート色部をコンクリート側に位置決めされつつ前記隙間を覆って貼付可能であることを特徴とする路面補修具。
【請求項2】
前記シート状部材は、織布製法により得られた織布から成ることを特徴とする請求項1記載の路面補修具。
【請求項3】
前記織布は、前記アスファルトに似せた色彩及びコンクリートに似せた色彩に先染された糸を織り上げて形成されたものから成ることを特徴とする請求項2記載の路面補修具。
【請求項4】
前記織布は、その表面に劣化防止剤が塗布されて劣化防止処理されたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の路面補修具。
【請求項5】
前記織布は、その表面に前記劣化防止剤と共に防炎剤が塗布されて劣化防止防炎処理されたことを特徴とする請求項4記載の路面補修具。
【請求項6】
前記シート状部材は、その裏面にシリコンシーラント又は水溶性接着剤が路面状態に応じて選択的に塗布され、前記隙間を覆って貼付可能とされたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の路面補修具。
【請求項7】
前記シート状部材は、織布に、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂及び水が所定の割合で含浸されたものから成ることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の路面補修具。
【請求項8】
前記織布は、ポリエステル織布から成ることを特徴とする請求項7記載の路面補修具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−215063(P2008−215063A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10210(P2008−10210)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(599170353)
【Fターム(参考)】