説明

身体の内部領域に空洞を設けるためのシステム及び方法

身体の内部領域に空洞を設けるためのシステム及び方法を記載する。記載された1つの方法において、第1のカニューレ(20,60)の遠位端(24)を越えたならば膨張するように構成された膨張可能部(42)を含むシャフト(40)が、第1のカニューレを通して挿入される。次いで、膨張可能部が膨張され、それにより空洞が形成される。膨張可能部が膨張されているとき、骨セメントが空洞内に挿入され得る。次いで、膨張可能部は潰されることができ、シャフトが第1のカニューレを通して取り出され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断又は治療のために身体の内部領域に空洞(cavity)を設けるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
診断又は治療手順の中には、身体の内部領域に空洞を設けることを必要とするものがある。例えば、米国特許第4,969,888号及び第5,108,404号に開示されているように、骨折又はその他の異常な骨の状態を治療する治療手順の一部として、元来骨粗鬆症であっても、また骨粗鬆症なくても、海綿骨組織内に空洞を形成するために、膨張可能体が配備され得る。膨張可能体は、内部空洞を形成するために海綿骨を圧縮し得る。空洞は、皮質骨の内部構造支持を新しくするための充填材料、例えば、骨セメントを受け入れ得る。
【0003】
この手順は、骨粗鬆症、阻血性壊死、癌、外傷、又は他の疾患により、骨折、若しくは圧迫骨折又は潰された皮質骨を治療するために用いられることができる。これらの状態は、治療が成功しなければ、変形、慢性合併症を生じ、また、生活の質にあらゆる悪影響をもたらすことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨及び他の身体内領域に、安全で有効な方法で空洞をもたらすことができる、さらなるシステム及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、身体の内部領域に空洞を設けるためのシステム及び方法を提供する。例示的な一実施形態が、第1のカニューレを通してシャフトを挿入するステップを含み、このシャフトは、第1のカニューレの遠位端を越えたならば膨張するように構成された膨張可能部を含む。この例示的な一実施形態は、さらに、膨張可能部を膨張させ、それにより空洞を形成し、膨張可能部が膨張されている間にこの空洞内に骨セメントを挿入するステップを含む。次いで、膨張可能部は、潰されることができ、シャフトは、第1カニューレを通して除去され得る。骨セメントは、周囲構造物、例えば椎体を支持するために残され得る。
【0006】
この実施形態は、本発明を限定及び画定するために記載されるものではなく、本発明の理解を補助するために本発明の実施形態の例を提示するためのものである。例示的な実施形態は、発明の詳細な説明の章において論じられ、この章で、本発明のさらなる詳細を記載する。本発明の様々な実施形態により提供される利点が、本明細書を吟味することによりさらに理解されよう。
【0007】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明を、添付図面を参照しつつ読むことにより、より良く理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態は、身体の内部領域に空洞を設けるためのシステム及び方法を提供する。本発明を具体化するこのシステム及び方法は、診断又は治療のために、1以上の組織層の内部又はこれらの組織に隣接して空洞を形成することが必要とされる場合にはいつでも、多くの適切な身体内部領域に用いられるように適合されることができる。例示的な実施形態は、本発明を、骨を治療するために用いられるシステム及び方法に関連して示す。他の実施形態において、本発明は、他の身体内部領域又は組織タイプに用いられ得る。
【0009】
ここで図面を参照する。図面全体を通じて、類似の部品番号は類似の要素を示す。図1は、本発明の一実施形態に従うツール10の斜視図である。図1に示されているツール10は外科手術器具を含み、操作者が、目標とする処置領域に空洞を設けることを可能にするように構成されている。ツール10は、近位端22及び遠位端24を有する外側シャフト20を含む。外側シャフト20は、ねじり伝達能力をもたらす弾性の不活性材料(例えば、ステンレス鋼、ニッケル‐チタン合金、例えばニチノール、及び、他の適切な金属合金)からつくられ得る。外側シャフト20は、外側シャフト20の把持及び操作を補助するためのハンドル26を含み得る。例えば、一実施形態において、ハンドル26は、外側シャフト20の周囲に固定される発泡材料からつくられることができる。
【0010】
図1に示されているツール10は、さらに、外側シャフト20に対して移動するように構成された内側シャフト40を含む。内側シャフト40は、ねじり伝達能力をもたらす弾性の不活性材料(例えば、ステンレス鋼、ニッケル‐チタン合金、例えばニチノール、及び、他の適切な金属合金)からつくられ得る。他の実施形態において、内側シャフト40は、炭素繊維、ガラス、又は、プラスチック若しくはゴムなどの柔軟な材料を含む様々な適切な材料からつくられ得る。柔軟な内側シャフト40を含む一実施形態において、内側シャフト40は、例えば、捩られたワイヤフィラメント、例えば、ステンレス鋼、ニッケル‐チタン合金(例えばニチノール)、及び、他の適切な金属合金からつくられ得る。
【0011】
図1に示されている実施形態において、外側シャフト20及び内側シャフト40の両方が矩形チューブからつくられ、この矩形チューブは、ほぼ矩形の断面、及び、この矩形チューブ内の共通の軸に沿った穴を含む。他の実施形態において、外側シャフト20及び内側シャフト40の一方又は両方の断面が、円形状、直線で囲まれた形状、楕円形状、多角形状、又は他の任意の適切な形状であることができる。別の実施形態において、内側シャフト40の少なくとも一部が中実であり得る。
【0012】
内側シャフト40は、近位部44と遠位部46との間に配置された膨張可能部42を含む。膨張可能部42は、近位部44及び遠位部46により、膨張直径を超えて膨張することを抑制されている。示されている実施形態において、近位部44の断面は、膨張可能部42が膨張状態にあっても、膨張されていない状態(非膨張状態)にあっても、遠位部46の断面とほぼ同じである。
【0013】
示されている実施形態において、膨張可能部42は、外側に膨張する複数のビーム(梁状部)50を含む。図1〜図6に示されている実施形態において、複数のビーム50は、内側シャフト40の4つの角部の各々から膨張可能部42に沿って材料を除去することにより設けられる。他の実施形態において、膨張可能部42は、別の適切な方法を用いて設けられ得る。例えば、膨張可能部42は、内側シャフト40の一部を伸張することにより、又は、1以上のスリット、溝、凹部、若しくは穴を、近位部44と遠位部46との間に位置する内側シャフト40の一部に設けることにより設けられ得る。
【0014】
図1に示されている実施形態において、複数のビーム50を形成する材料は、内側シャフト40の材料と同一である。別の実施形態において、内側シャフト40の少なくとも膨張可能部42が、内側シャフト40の他の部分とは異なる材料からつくられ得る。例えば、一実施形態において、膨張可能部42は、弾性の復元力を有して形成される外科用グレードの形状記憶材料、例えばニッケル‐チタン合金からつくられることができ、内側シャフト40の近位部44は、外科用グレードのステンレス鋼、プラスチック、又は他の任意の適切な材料からつくられ得る。
【0015】
図1に示されている複数のビーム50は、各々、台形の断面を含む。他の実施形態において、1以上のビーム50の断面は、円形状、直線で囲まれた形状、又は他の任意の適切な形状であることができる。
【0016】
図1に示されている実施形態において、膨張可能部42の複数のビーム50の各々が、内側シャフト40の矩形チューブの1以上の角部から材料を適切な角度で除去することにより形成された、少なくとも1つのベベル(面取りされた)エッジ52を含む。別の実施形態において、1以上のベベルエッジ52を含むビーム50が全くなくても、また、ビーム50の全てより少数であってもよい。さらに別の実施形態においては、膨張可能部42の別の部分が、少なくとも1つの組織層に直接接触し、且つせん断するように構成された面を含み得る。
【0017】
図3、図5、及び図6に示されているように、膨張可能部42が少なくとも部分的に膨張されるとき、複数のビーム50の1つ以上におけるベベルエッジ52の少なくとも1つが、内側シャフト40が回転されるときに、膨張可能部42に隣接した身体組織の少なくとも1層に直接に接触し、且つ、その組織層をせん断(掻爬)するために用いられ得る。示されている実施形態では、膨張可能部42は、目標とする処置領域において隣接する組織塊を切断するように構成されている。別の実施形態では、外側シャフト20及び内側シャフト40の少なくとも一方の近位端が、使用時に電気モータ(図示せず)に接続され得るフィッテング(取付け部品)(図示せず)を有し得る。こうして、モータは、内側シャフト40及び外側シャフト20の一方又は両方を回転させることができ、それにより、膨張可能部42を回転させ得る。
【0018】
図1〜図6に示されている実施形態において、内側シャフト40は、1つの連続材料片を含み、この材料片から、複数のビーム50が、連続した材料の幾らかを除去することにより設けられ得る。他の実施形態において、膨張可能部42は、近位部44及び遠位部46の少なくとも一方に、別の適切な方法を用いて結合され得る。例えば、このような実施形態の1つにおいて、膨張可能部42の膨張可能なビーム50が、近位部44及び遠位部46の両方に、溶接、接着、溶融、又は、他の任意の適切な締結具(例えば、ねじ、リベット、鋲、止め金、釘など)を用いることにより結合され得る。
【0019】
図1〜図6に示されている内側シャフト40の膨張可能部42は、コントローラ48と連通して(つながって)いる。図1及び図4〜図6に示されているコントローラ48は、スライドコントローラを含む。別の実施形態において、内側シャフト40の少なくとも膨張可能部42が、適切なタイプの異なるコントローラ、例えば、ピストルグリップコントローラ、ラチェットコントローラ、ねじ付コントローラ、又は、他の任意の適切なタイプのコントローラと連通することができ、これらのコントローラは、膨張可能部42が外側シャフト20の遠位端24を超えて延伸する範囲、及び、膨張可能部42が膨張される範囲の少なくとも一方を、ツール10の操作者が制御することを可能にするように構成されることができる。
【0020】
ここで図2を参照すると、図1に示したツール10の拡大端面図が示されており、この図において、膨張可能部42は、膨張していない状態で示されている。図2に示されているように、内側シャフト40の膨張可能部42が膨張していない状態にあるとき、膨張可能部42の非膨張寸法(膨張されていない寸法)(内側シャフト40の軸に対して垂直な方向にて測定される)は、中空の外側シャフト20の最小の内部管腔寸法よりも小さい寸法を含み、これにより、内側シャフト40と外側シャフト20との間に、内側シャフト40が外側シャフト20の軸に沿って外側シャフト20内を移動することを可能にする間隙をもたらす。他の実施形態において、内側シャフト40は外側シャフト20に対して回転されるように構成され得る。
【0021】
図2に示され、また、先に記載したように、膨張可能なビーム50は、内側シャフト40を形成している矩形チューブの4つの角部を膨張可能部42に沿って除去することにより形成される。示されている実施形態において、矩形チューブによる内側シャフト40の4つの角部は、各々、得られる膨張可能なビーム50が台形の断面形状を含み、且つ、台形の各辺(側部)がベベルエッジ52を含むような角度で除去されている。他の実施形態において、ビーム50の1つ以上が、別の適切な形状(例えば、円形、直線で囲まれた形状、多角形、非対称形など)の断面を含み得る。
【0022】
ここで図3を参照すると、ツール10の拡大端面図が示されており、この図において、膨張可能部42が膨張状態にて示されている。図3に示されているように、膨張状態において、膨張可能部42は、外側シャフト20の内部管腔の最大内寸と少なくとも同じだけ大きい膨張寸法(膨張された寸法)(内側シャフト40の軸に対して垂直な方向にて測定される)を含む。この膨張状態にある間、遠位部46の寸法は図2に示された非膨張状態から実質的に変化せずに維持されることも理解されるであろう。この実施形態において、膨張可能部42は、膨張されていない近位部44及び膨張されていない遠位部46により、図3に示されている膨張寸法を超えて膨張することが防止される。
【0023】
図1〜図6に示した実施形態において、膨張可能なビーム50のベベルエッジ52は、面をもたらし、この面は、膨張可能部42が図3に示されている膨張状態にあり、且つ、少なくとも内側シャフト40が内側シャフト40の軸を中心に回転されるときに、隣接する組織に直接接触し、且つこの組織をせん断するために用いられ得る。
【0024】
ここで図4を参照すると、ツール10の立面図が示されており、この図において、膨張可能部42は引き込まれた位置にて示されている。図4に示されているように、コントローラ48を近位方向(図4における矢印A)にスライドさせることにより、膨張可能部42が外側シャフト20の遠位端24から延在する距離が短くされ、又は、なくされ、それにより、膨張可能部42の膨張が少なくとも部分的に制限される。図4に示されているように、膨張可能部42は、最も近位側の位置において外側シャフト20の遠位端24内の或る地点に引き込まれ、それにより、内側シャフト40の膨張可能部42の膨張可能なビーム50を、図2に示されている非膨張状態に拘束する。
【0025】
ここで図5を参照すると、ツール10の斜視図が示されており、この図において、膨張可能部42は膨張状態にて示されている。図5に示されているように、コントローラ48を遠位方向(図5における矢印F)にスライドさせることにより、膨張可能部42が、外側シャフト20の遠位端24を越えた地点に前進し、膨張可能部44のビーム50を、隣接する身体組織に露出させる。内側シャフト40の膨張可能部42が少なくとも部分的に外側シャフト20の遠位端24から出たならば、外科医は、膨張可能部42の寸法を、非膨張状態(図2を参照)から膨張状態(図3及び図5を参照)に、又は、任意の中間状態(図6を参照)に膨張させ得る。
【0026】
ここで図6を参照すると、ツール10の立面図が示されており、この図において、膨張可能部42は、外側シャフト20の遠位端24を越えた地点(図5に示されている)から、膨張可能部42の少なくとも一部が外側シャフト20の遠位端24内にある地点に部分的に引き込まれた状態で示されている。図6に示されているように、ツール10の操作者は、膨張可能部42を、図3及び図5に示された膨張状態から、図2に示された非膨張状態に、又は、任意の中間状態に、コントローラ48を最も遠位側の位置から近位方向にスライドさせることにより収縮させることができる。コントローラ48が近位側にスライドされるとき、内側シャフト40の膨張可能部42は、外側シャフト20の遠位端24内の地点に少なくとも部分的に戻される(図6に示されている)。図1〜図6に示した実施形態において、外側シャフト20と複数のビーム50との接触により生じる圧力が、膨張可能部42のビーム50を、内側シャフト40の中心軸に向って撓ませ、それにより、膨張可能部42を少なくとも部分的に収縮させる(例えば、図6にて膨張されている程度と比較して、膨張可能部42が図5にて膨張されている程度まで)。
【0027】
本発明の一実施形態において、コントローラ48は、また、外科医が、膨張可能部42が外側シャフト20の遠位端24を越えて延伸している程度、又は膨張可能部42が膨張された程度を視覚的に推定することができる指示マーク(印)を含むことができる。
【0028】
本発明の別の実施形態において、膨張可能部42の少なくとも一部が、1以上の放射線マーカーを含み得る。例えば、図1〜図6に示されている実施形態において、複数のビーム50の1つ以上が、1つ以上の放射線マーカーを含み得る。マーカーは、放射線不透過性材料、例えば、プラチナ、金、カルシウム、及び他の重金属からつくられ得る。
【0029】
複数の放射線マーカーを用いる実施形態において、第1のマーカーは、膨張可能部42が遠位部46に結合されている地点又はその付近に配置されることができ、別のマーカーは、第1マーカーから間隔をあけた膨張可能部42上の位置に配置され得る。別の実施形態において、内側シャフト40の遠位部46、又は外側シャフト20の遠位端24が、1以上のマーカーを有することができる。放射線マーカーは、目標とする処置領域内での膨張可能部42及び外側シャフト20の、放射線による可視化を可能にする。別の実施形態において、他の形態のマーカーが、目標とする処置領域内で少なくとも膨張可能部42の位置及び形状を外科医が視覚化することを可能にするために用いられることができる。例えば、膨張可能部42が、その内部に配置された膨張可能なバルーンによりもたらされる力を用いて膨張される一実施形態(図7を参照)において、バルーンは、放射線不透過性材料を用いて膨張され得る。
【0030】
本発明の一実施形態に従うツール、例えば、図1〜図6に関して記載されているツール10は、内部の管腔を含むことができる。この管腔は、外部の流体源及び外部の減圧源に、Y字状弁を介して連結され得る。このような一実施形態において、洗浄液、例えば、無菌食塩水を、ツール10が組織塊に空洞を設けている間、又はその後に、流体源から管腔を通して目標とする処置領域内に導入することができる。洗浄液は、切断動作中に摩擦を低減し、また、組織から熱を奪うことができる。洗浄液は、組織塊が切断されている間、連続的に、又は断続的に導入されることができる。洗浄液は、また、抗凝血剤又は他の抗凝固剤を運ぶこともできる。このような一実施形態において、管腔は減圧源に連結されることができ、液体及び屑が目標とする組織領域から管腔を通して吸引されることができる。
【0031】
図7を参照すると、本発明の一実施形態に従うツール210の、バルーンにより作動させられる膨張可能部242の斜視図が示されている。図7に示されているように、内側シャフト240の膨張可能部242が、外側シャフト220の遠位端224を越えて延伸されている。膨張可能なバルーン280が、外側シャフト220の軸に沿って内側シャフト240内に延在する内部の穴の中に挿入されている。図示されているバルーン280は、材料(例えば、先に述べたような放射線不透過性材料)を、内側シャフト240の近位部244に面した開口(図示せず)を通して用いることにより膨張される。
【0032】
示されている実施形態において、バルーン280が膨張されるとき、バルーン280の面に加えられる圧力が、内側シャフト240の膨張可能部242を膨張させる。図示されている実施形態において、膨張可能部242は、複数の膨張可能なビーム250を含み、ビームの各々が、近位端及び遠位端の両方にて、内側シャフト240の近位部244及び遠位部246にそれぞれ接続されている。
【0033】
図7に示されている実施形態において、膨張可能部242が膨張されたならば、バルーン280は収縮されて、内側シャフト240から除去され得る。内側シャフトの少なくとも膨張可能部242は、バルーン280が収縮されて除去された後に、膨張可能部242を図7に示されている膨張状態に実質的に維持することができる材料からつくられ得る。
【0034】
図示されている実施形態において、バルーン280が収縮されて除去されたならば、次いで、材料、例えば骨セメントが、膨張可能部242の膨張により設けられた空洞を充填するために、バルーン280との化学的相互作用に関する問題を生じずに用いられ得る。このような実施形態は、ツール210が、椎体の高さを回復するために用いられる状況(図10〜図13を参照)、及び、バルーン280を形成している材料が、空洞を充填するために用いられる骨セメントと化学的に適合しない状況において有用であり得る。このような状況において、ツール210の膨張可能部242は、回復された椎体の高さを、バルーン280が収縮されて取り外された後も維持する。次いで、骨セメントが、ツール210の内側シャフト240内に延在する穴を介して、又は、別のカニューレ(例えば、対側カニューレ)を介して挿入され得る。次いで、ツール210は、骨セメントが硬化する前に治療部位から除去され得る。
【0035】
ここで図8を参照すると、ヒトの幾つかの椎骨90の立面(側面)図が示されており、カニューレ60が、幾つかの椎骨の1つの椎体92への、カニューレ60の軸に沿った経皮通路を確立している様子が示されている。椎体92は、前側(すなわち、前方又は胸側)に延在している。椎体92は、緻密な皮質骨94から形成された外周部を含む。皮質骨94は、皮質骨94の内部容積を占める網状の海綿骨、すなわち海綿状の骨96(髄様骨又は小柱骨(骨梁骨)とも称され、図9〜図12に示されている)を取り囲んでいる。
【0036】
椎体92は楕円ディスクの形状である。図8〜図12に示されているように、椎体92の内部に、例えば、椎体92の後側を通ってアクセス入口をドリルであけること(後側方アプローチ)により到達することができる。後側方アプローチのための入口は椎体92の後側に位置し、この入口は前方に延在して椎体92内に入る。入口は、閉鎖型の低侵襲性の手術により、又は開放型の手術により設けられることができる。
【0037】
或いは、椎骨90の一方又は両方の椎弓根を通ってアクセス入口をドリルであけることにより内部へのアクセスを行うことができる。これは、経椎弓根アプローチと称される。いずれのアクセス部位を示すかを最終的に決定するのは外科医である。
【0038】
本発明に従うツールは、カニューレ60内及びカニューレ60の軸に沿って移動することにより少なくとも1つの組織層に隣接して配備されるように構成され得る。例えば、図8に示されているように、カニューレ60は、網状骨内に空洞を設けるために、ツール、例えば、上記のツール10又はツール210を導入させ、椎骨90の椎体92内の網状骨へアクセスさせ得る。このような空洞は、垂直圧迫骨折又は他の病変若しくは外傷により失われた椎体の高さの幾らかを回復するための手術中に、骨セメントを椎体92内に挿入する前に設けられ得る。
【0039】
しかし、本発明に従うシステム及び方法の用途が、ヒトの脊椎に限定されず、生きた、又は生きていない有機体の他の部分に空洞を設け、又は、これらの部分を掻爬するためにも用いられ得ることが理解されよう。例えば、ツール10は、他の実施形態において、他のタイプの骨に、及び、他のタイプの組織(例えば、椎間板、膝関節など)の内部又はこれらに隣接して配備されることができる。
【0040】
ここで図9を参照すると、カニューレ60によりアクセスされている椎骨90の平面(冠状)図が示されており、椎体92内の海綿骨96を見せるために一部が除かれて示されている。図9に示されているように、図1〜図6に関して先に記載したツール10が、カニューレ60内に、椎骨90の椎体92にアクセスするために挿入されている。ツール10は、カニューレ60内でカニューレ60の軸に沿って移動するように構成されている。
【0041】
図9に示した実施形態において、内側シャフト40の膨張可能部42は、図3に示した膨張状態に膨張することを、カニューレ60の内壁により抑制されている。しかし、膨張可能部42は、カニューレ60の遠位端62を越えたならば、海綿骨96内に空洞を設けるために、非膨張状態(図2参照)から膨張状態(図3参照)に膨張され得る。
【0042】
使用において、外側シャフト20は、カニューレ60内でスライド及び回転するために保持される。ツール10のユーザは、目標とする治療部位にツール10を配備するために、外側シャフト20をカニューレ60内で軸方向に自由にスライドさせ得る。ツール10が治療部位に配備されたならば、ユーザは、外側シャフト20の遠位端24の外側に膨張可能部42を展開させることができる。ユーザは、また、外側シャフト20をカニューレ60内で回転させることができ、それにより、内側シャフト40の膨張可能部42を回転させて、膨張可能部42の向き及び移動経路を調節し得る。
【0043】
図9に示されているように、一実施形態において、膨張可能部42は、カニューレ60により完全に閉じ込められているならば、外側シャフト20の遠位端24を越えてかなりの距離突出していても、カニューレ60により潰される。このような一実施形態において、内側シャフト40の膨張可能部42は、膨張可能部が外側シャフト20の遠位端24を越えて延在していなければ外側シャフト20により拘束され、また、外側シャフト20の遠位端24を越えて延在しているならば、カニューレ60内を通過している間に、カニューレ60により拘束される。
【0044】
少なくとも内側シャフト40の膨張可能部42が形状記憶合金から形成される一実施形態において、膨張可能部42は、カニューレ60の遠位端62を越えたならば、跳ね開いて、膨張可能部42の予め設定された、本来の膨張寸法になり得る。その後、外科医は、膨張可能部42がカニューレ60の遠位端62を越えて延在する程度、及び、膨張可能部42が膨張される程度の少なくとも一方を変えるために、コントローラ(例えば、上記のコントローラ48)を操作することができる。
【0045】
図9に示した実施形態において、膨張可能部42がカニューレ60の遠位端62を越えたならば、ツール10のユーザは、展開された膨張可能部42を、外側シャフト20及び内側シャフト40の少なくとも一方をカニューレ60内で回転させることにより回転させることも可能である。図12に関して以下に論じるように、膨張可能部42の回転により、周囲の組織塊(この場合は海綿骨96)をスライス又は切断し得る。
【0046】
カニューレ60を形成する材料は、膨張可能部42の前進及び回転を容易にするように選択され得る。カニューレ60は、例えば、標準的な、柔軟な医療グレードのプラスチック材料、例えば、ビニル、ナイロン、ポリエチレン、イオノマー、ポリウレタン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて構成されることができる。外側シャフト20又は内側シャフト40の少なくとも幾らかの部分は、より大きい剛性をもたらすための、より堅固な材料を含むこともでき、それにより、シャフトの操作性能及びトルク伝達能力を補助する。この目的のために用いられことができるより堅固な材料は、ステンレス鋼、ニッケル‐チタン合金(例えば、ニチノール)、及び他の金属合金を含む。
【0047】
他の実施形態において、膨張可能部42、及びカニューレ60の遠位端62の少なくとも一方が、先に述べたような1以上の放射線マーカーを有することができる。マーカーは、目標とする処置領域内で使用中の膨張可能部42、及び、カニューレ60に対する膨張可能部42の位置を放射線により可視化することを可能にし得る。
【0048】
ここで図10を参照すると、垂直圧迫骨折状態を含んだヒトの椎骨90の立面(側面)図が示されている。図10に示されているように、椎骨90の椎体92が、椎体92内の海綿骨96の骨粗鬆症のために部分的に押し潰されている。この骨折により椎体92の寸法H1が減少している。カニューレ60が、椎体92内の海綿骨96へのアクセスをもたらすために経皮的に挿入されている。
【0049】
図10に示した実施形態において、図7に関して記載したツール210の膨張可能部242が、非膨張状態で、カニューレ60を通して椎体94に挿入されている。ツール210のユーザは、ツール210を、骨折が生じたときに椎体92内に空洞を設けて椎体92の失われた高さを回復するために用いようとすることが可能である。
【0050】
図11を参照すると、図10のヒトの椎骨90の、ツール210が椎体92の高さを図10に示した寸法H1から寸法H2まで増大した後の立面(側面)図が示されている。図11に示されているように、ツール210の内側シャフト240の膨張可能部242は、バルーン280の膨張により、完全に膨張された状態に膨張されている。膨張可能部242は膨張されているが、内側シャフト240の近位部244及び遠位部246は両方共膨張されていない。このような寸法H2の増大は、ツール210を用いる外科医が、椎骨90を、少なくとも部分的に、垂直圧迫骨折状態が生じる前と類似の形状に回復することを可能にし得る。
【0051】
図10及び図11に示されている実施形態において、バルーン280は、膨張可能部242が図11に示されているように膨張されたならば、収縮されて除去され得る。図示されている膨張可能部242は、バルーン280が収縮されて除去された後も、寸法H2まで回復された高さを維持するように構成されている。
【0052】
図10及び図11に示されている実施形態において、ツール210の外側シャフト220及び内側シャフト240は、カニューレ60内での軸方向移動及び回転移動のために操作されることができる。別の実施形態において、外側シャフト220自体がカニューレとして機能し得る。さらに別の実施形態において、図10及び図11に示したカニューレ60が、外側シャフト220として機能し得る。この場合、内側シャフト240の膨張可能部242とカニューレ60との接触により生じる力が、膨張可能部242を、図11に示されている膨張状態から図10に示されている非膨張状態に、又は、中間の状態に収縮させ得る。
【0053】
図10及び図11に示されている実施形態において、ツール210のユーザは、外側シャフト220及び内側シャフト240の少なくとも一方を、椎体92内の目標とする処置領域に配備するために、カニューレ60内で軸方向に自由にスライドさせ得る。
【0054】
ここで図12を参照すると、図10及び図11に示したツール210及び椎骨90の平面(冠状)図が示されており、ツール210は、椎体92の海綿骨96内で回転されている状態で示されている。図12に示されているように、内側シャフト240の膨張可能部242が膨張され、次いでバルーン280(図12には示さず)が収縮されて除去されたとき、ツール210はカニューレ60内で回転され得る(矢印Rにより示されているように)。このような一実施形態において、膨張可能部242の膨張可能なビーム250上のベベルエッジ252は、膨張可能部242が膨張されたならば、ツール210が、ユーザにより、周囲の海綿骨96内部で回転される(図12の矢印Rにより示されているように)ときに、キュレットとして機能し得る。従って、回転している膨張可能部42は、椎体92内にて海綿骨96を切断し得る。図12に示されている実施形態において、ビーム250のベベルエッジ252は、ツール210のユーザが所望の形状及び寸法の空洞Cを設けることを補助するために海綿骨96に直接接触して海綿骨96を切断するように構成されている。
【0055】
一実施形態において、膨張可能部242により切断された海綿骨を除去するために、吸引チューブも、カニューレ60を通して配備され得る。さらに別の実施形態において、外側シャフト220及び内側シャフト240の少なくとも一方が、空洞が形成されているときに洗浄液を空洞内に運び、且つ吸引チューブとしても機能する内部管腔を含むことができる。吸引チューブ(又は、外側シャフト220,内側シャフト240内の管腔)は、洗浄液を導入することができ(必要であれば、抗凝血剤と共に)、そして、膨張可能部242により切断された海綿骨を除去し得る。或いは、外側シャフト220及び内側シャフト240の少なくとも一方が、吸引チューブとして機能する第1の管腔、及び、治療領域を洗浄するように機能する第2の管腔を含み得る。一実施形態において、膨張可能部242を周期的に膨張させること、又は、既に膨張されている膨張可能部242を回転させることにより、ユーザは、所望の寸法を有する空洞Cを設け得る。
【0056】
所望の空洞Cが形成されたならば、空洞形成ツール、例えば、ツール10又はツール210は、カニューレ60を通して引き抜かれ得る。例えば、一実施形態において、ツール210のユーザは、最初に内側シャフト240の膨張可能部242を外側シャフト220内に引き込むことができ、それにより、膨張部を潰し得る。次いで、ツール210が治療部位から、カニューレ60を通して除去され得る。別の実施形態において、膨張可能部242は、最初に膨張可能部242を外側シャフト220内に引き込まずに、ツール210を単に治療部位からカニューレ60を通して引き抜くことにより潰され得る。
【0057】
或いは、一実施形態において、空洞Cは、ツール210の膨張可能部242が膨張状態でまだ椎体96内部に配備されているときに、少なくとも部分的に、材料、例えば骨セメントを充填され得る。次いで、他の任意の適切なツールを、カニューレ60を通して、又は、別のカニューレ(例えば、対側カニューレ)を通して配備することができる。例えば、第2のツールが、診療又は治療手順(例えば、空洞Cに骨セメントを充填する)を行うことができる。他の実施形態において、他の材料(例えば、治療材料)が、空洞C内に、膨張可能部242が膨張状態で椎体92内に配備されているときに膨張可能部242により供給され得る。例えば、同種移植材料、人工代用骨、薬剤、又は、硬化状態にされ得る流動性材料が、空洞C内に供給され得る。この処置は、放射線療法又は化学療法にも用いられ得る。このような材料106を治療のために空洞Cに注入することのさらなる詳細が、米国特許第4,969,888号、及び、第5,108,404号、及び、同時係属中の米国特許出願の公開公報2003/0229372号に見られ、これらの特許及び出願を援用して本文の記載の一部とする。
【0058】
ここで図13を参照すると、本発明の一実施形態に従う方法600のフローチャートが示されている。例示的な実施形態は、ボックス615に示されているように、カニューレ(例えば、先に記載したカニューレ60)を、垂直圧迫骨折状態を含む椎骨の椎体に経皮的に挿入することを含む。
【0059】
ボックス625に示されているように、方法600は、膨張可能部を含むシャフトを、カニューレを通して椎体内に挿入することをさらに含む。膨張可能部は、例えば、上記の膨張可能部42を含むことができ、また、シャフトは、少なくとも、上記の内側シャフト40を含み得る。一実施形態において、シャフトは、上記の内側シャフト40及び外側シャフト20を含み得る。
【0060】
ボックス635に示されているように、方法600は、未だ膨張されていないバルーン(例えば、上記のバルーン280)を、シャフトを通して、シャフトの膨張可能部内の地点に挿入することをさらに含む。
【0061】
次いで、ボックス645に示されているように、バルーンが膨張されることができ、それにより、シャフトの膨張可能部が膨張される。膨張可能部の膨張により、空洞(例えば、上記の空洞C)が椎体内に設けられ得る。
【0062】
ボックス655に示されているように、方法600は、さらに、バルーンを収縮させ、除去することを含む。例えば、バルーンは、膨張可能部が椎体内の空洞を維持している間に、収縮され、次いで、シャフト内に延在する穴を通して除去され得る。
【0063】
ボックス665に示されているように、方法600は、膨張可能部が膨張されている間に、膨張可能部により形成された空洞内に骨セメントを挿入することをさらに含む。骨セメントは、椎体内に、シャフトが挿入されたカニューレと同じカニューレを通して挿入されても、又は、別のカニューレ、例えば、対側カニューレを通して供給されてもよい。さらに、又は、或いは、別の手術ツール、例えば、内視鏡が、シャフト内に延在する穴を通して空洞内に挿入され得る。
【0064】
ボックス675に示されているように、方法600は、骨セメントが空洞内に挿入されたならば膨張可能部を潰すことを、さらに含む。一実施形態において、膨張可能部は、膨張可能部を、軸方向に、カニューレの遠位端内の、膨張可能部の膨張寸法よりも小さい寸法の内径を含む地点まで移動させることにより潰され得る。空洞内に残される骨セメントが、シャフトの膨張可能部が潰された後に、椎体に寸法安定性をもたらし得る。
【0065】
ボックス685に示されているように、例示的な方法600は、膨張可能部を含むシャフトを、カニューレを通して除去することを最後に含む。他の実施形態において、膨張可能部はシャフトから分離可能であり得、また、シャフトの少なくとも他の幾らかの部分がカニューレから取り出された状態で、膨張可能部は、膨張又は非膨張状態で椎体内に残され得る。
【0066】
本発明の一実施形態に従うツールが、骨又は他の組織に配備される前に無菌キット500内にパッケージングされ得る(図14及び図15を参照)。このような一実施形態において、ツールは、使い捨て用のツールを含み得る。
【0067】
ここで図14及び図15を参照すると、本発明の一実施形態に従う、使い捨て用の空洞形成ツールを保存するための無菌キットの平面図及び分解図が示されている。図14及び図15に示されているように、キット500は内部トレイ508を含む。トレイ508は、特定の空洞形成ツール(総括的に番号502で示す)を、最初に使用される前の滅菌及び保存中に、平坦に配置された真直な状態で保持する。トレイ508は、打ち抜きダンボール又は熱成形プラスチック材料から形成されることができる。トレイ508は、ツール510を平坦に配置された真直な望ましい状態に維持する、間隔を有して配置された1以上のタブ509を含む。
【0068】
示されている実施形態において、キット500は内側ラップ512を含み、ラップ512は、トレイ508を外部環境との接触から密閉するために、周囲が熱などによりシールされている。内側ラップ512の一端は、使用時のトレイ508への迅速なアクセス(無菌環境、例えば手術室内にて行われ得る)を可能にするための、慣用の剥離シール514を含む(図15参照)。
【0069】
図示されているキット500は、また、外側ラップ516も含み、外側ラップ516も、周囲が熱などによりシールされて、内側ラップ512を密閉している。外側ラップ516の一端は、内側ラップ512へのアクセスをもたらすための、慣用の剥離シール518を含み(図15参照)、内側ラップ512は、ツール510の緊急の使用に対応して、外側ラップ516から、ツール510自体の滅菌性を低下させずに取り外されることができる。
【0070】
内側ラップ512及び外側ラップ516(図15参照)の両方が、周囲がシールされたトップシート520及びボトムシート522を含む。例示された実施形態において、トップシート520は、キット500の内容物の目視確認を可能にするために、透明なプラスチックフィルム、例えば、ポリエチレン又はマイラー(MYLR)(商標)材料からつくられる。ボトムシート522は、エチレンオキシド滅菌ガスを透過させる材料、例えば、タイベック(TYVEC)(商標)プラスチック材料(デュポン社から入手可能)からつくられ得る。
【0071】
無菌キット500は、また、キット500の内容物の再使用を防止するように断定的に警告するための、「1人の患者にだけ使用」(又はこれに匹敵する言葉)の注意書きを含むラベル又はインサート506を有する。ラベル506は、また、ツール510を再滅菌しないように断定的に指示し得る。ラベル506は、また、外科医又はユーザに、使用時に、適切なバイオ廃棄物手順に従ってツール510及びキットの全内容物を廃棄するように指示し得る。キット500内にツール510がパッケージされていることが、外科医又はユーザに、ツール510が無菌で以前に使用されたことがないことを証明する。これにより、外科医又はユーザは、ツール510が定められた性能及び滅菌性を満たし、また、使用のために膨張されたときに望ましい構造をもたらすことを確信する。
【0072】
キット500は、また、先に記載した方法で海綿骨内に空洞を形成するためにツール510の使用に関して外科医に、指示する使用指示書524を含み得る。例えば、指示書524は、外科医に、ツール510を骨内に配備し、操作して空洞を形成するように指示する。指示書524は、また、外科医に、空洞を、材料、例えば骨セメント、同種移植材料、人工代用骨、薬剤、又は、流動性材料(ツール510が空洞に供給されている間、又はその後に硬化状態にされる)で充填するように指示することもできる。
【0073】
本発明の実施形態の以上の記載は、例示及び説明の目的で行われたに過ぎず、網羅的なものでも、また、本発明を、開示された正確な形態に限定するものでもない。本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、本発明の実施形態に様々な修正をし、また本発明の実施形態を適応させることが、当業者には明確であろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従うツールの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したツールの拡大端面図であり、ツールの膨張可能部が膨張されていない状態で示されている。
【図3】図3は、図1に示したツールの拡大端面図であり、ツールの膨張可能部が膨張された状態で示されている。
【図4】図4は、図1に示したツールの側面図であり、ツールの膨張可能部が引き込まれた位置状態で示されている。
【図5】図5は、図1に示したツールの斜視図であり、ツールの膨張可能部が膨張された状態で示されている。
【図6】図6は、図1に示したツールの側面図であり、ツールの膨張可能部が部分的に引き込まれた位置で示されている。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に従うツールの、バルーンにより作動される膨張可能部の斜視図である。
【図8】図8は、ヒトの幾つかの椎骨の立面(側面)図であり、カニューレが、幾つかの椎骨の1つの椎体への経皮路を確立している様子を示す。
【図9】図9は、カニューレによりアクセスされているヒトの椎骨の平面(冠状)図であり、椎体内の海綿骨を示すために一部が除かれている。
【図10】図10は、垂直圧迫骨折状態を含む、ヒトの椎骨の立面(側面)図であり、椎骨内に空洞を設けるために配備される、本発明の一実施形態に従う、バルーンにより膨張可能な膨張可能部を含むツールが、膨張されていない状態で示されている。
【図11】図11は、図10のツール及び椎骨の側面図であり、ツールの膨張可能部が膨張状態で示され、また、椎骨の内部寸法が、膨張可能部の膨張により増大している様子を示す。
【図12】図12は、図10のツール及び椎骨の平面(冠状)図であり、ツールが海綿骨内で回転されている様子を示す。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に従う方法のフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に従う使い捨てツールを保存するように構成されている無菌キットの平面図である。
【図15】図15は、図14の無菌キットの分解斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端、遠位端、内腔寸法、及び、経路を確立する軸を含むカニューレと、
前記カニューレ内で前記カニューレの軸に沿って移動することにより組織に隣接して配備されるように適合されたシャフトと、
を含み、
前記シャフトが、近位部、遠位部、及び、前記近位部と前記遠位部の間に配置された膨張可能部を含み、当該膨張可能部が、膨張寸法を越えて膨張することを、前記近位部及び前記遠位部により抑制されるシステム。
【請求項2】
前記膨張可能部が、前記組織に隣接した空洞の寸法を、当該空洞に骨セメントが充填されているときに維持するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記膨張寸法が、少なくとも前記内腔寸法であり、前記膨張可能部が、前記内腔寸法よりも小さい、非膨張寸法を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記膨張可能部が、前記カニューレの遠位端を越えた地点から前記カニューレの遠位端内に運ばれるときに、前記膨張寸法から前記非膨張寸法に収縮されるように前記膨張可能部が構成されている請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記膨張可能部が、前記カニューレの遠位端を越えた地点に延伸されるときに、前記非膨張寸法から前記膨張寸法に膨張されるように前記膨張可能部が構成されている請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記シャフトの近位部が、前記シャフトの遠位部の断面と実質的に類似の断面を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記近位部の断面と前記遠位部の断面が、共に多角形を含み、前記膨張可能部が、前記多角形の少なくとも1つの角部を除去することにより設けられる請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記膨張可能部が、外側に膨張する少なくとも1つのビームを含み、当該外側に膨張する少なくとも1つのビームが、前記シャフトの近位部に結合された近位端、及び、前記シャフトの遠位部に結合された遠位端を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記膨張可能部が、組織に直接接触し且つせん断するように構成されている面を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記面がベベルエッジ面を含む請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記シャフトが、前記カニューレの軸に沿って前記シャフト内に延在する管腔を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記管腔が内視鏡を受け入れるように構成されている請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記管腔が、膨張されていないバルーンを受け入れるように構成されている請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記膨張可能部が、前記膨張されていないバルーンが膨張されるときに膨張されるように構成されている請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記シャフトの少なくとも膨張可能部が形状記憶材料を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
膨張可能部を含むシャフトをカニューレを通して挿入するステップであって、前記シャフトが前記カニューレの遠位端を越えたならば膨張するように構成されているステップと、
前記膨張可能部を膨張させ、それにより空洞を形成するステップと、
前記膨張可能部が膨張されている間に骨セメントを空洞内に挿入するステップと、
前記膨張可能部を潰すステップと、
前記シャフトを、前記カニューレを通して取り出すステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記膨張可能部を膨張させるステップが、
膨張されていないバルーンを、前記シャフト内の管腔を通して前記膨張可能部内の或る地点まで挿入するステップであって、前記バルーンが膨張されたときに前記膨張可能部を膨張させるように、前記バルーンが構成されているステップと、
前記バルーンを膨張させるステップと、
を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記バルーンを収縮させるステップと、
前記バルーンを、前記シャフト内の管腔を通して取り出すステップと、
をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記膨張可能部が、前記空洞に隣接した組織に直接接触し且つせん断するように構成された面を含む方法であって、前記組織を前記面に接触させるステップをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記面がベベルエッジ面を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記カニューレが第1のカニューレを含み、骨セメントを空洞に挿入するステップが、骨セメントを、第2のカニューレを通して挿入するステップを含む請求項16に記載の方法。
【請求項22】
第2のカニューレが対側カニューレを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記空洞が組織に隣接している請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記膨張可能部が前記シャフトの近位部と前記シャフトの遠位部との間に配置されており、前記膨張可能部が、膨張寸法を越えて膨張することを、前記近位部及び前記遠位部により抑制される請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記シャフトの近位部の断面が、シャフトの遠位部の断面と実質的に類似している請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−536532(P2008−536532A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555134(P2007−555134)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/003603
【国際公開番号】WO2006/088649
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(504445817)カイフォン インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】