説明

身体装着具

【課題】簡単な構成で排便を促す効果の得られる身体装着具を提供することを目的とする。
【解決手段】人体の下腹部を覆う下腹部領域7を有する身体装着具である。下腹部領域7の左下腹部対応部L、右下腹部対応部R、及び上方下腹部対応部Uの少なくとも1つに、伸縮性が弱い低伸縮部2を設ける。装着時に、低伸縮部2に隣接して人体の胴部周方向に延びる部分を、伸縮性が強い高伸縮部8とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の下腹部を覆う領域を有する身体装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
人体には多数のツボが存在しており、ツボを指圧することにより健康維持や病気の回復を促進する方法が知られている。例えば、人体には排便を促進するツボが存在し、排便促進効果のあるツボを指圧することにより便秘を改善するような指圧療法がある。
【0003】
ところで、日常生活を行いながら、前記のような指圧療法ができるものが提案されている(特許文献1、特許文献2)。特許文献1のものは、肌着類や靴下類等のアンダーウエアに関するものであって、アンダーウエアの人体のツボの当接部位に突起体を設けている。これにより、特許文献1のアンダーウエアを着用すると、突起体がツボに当接するとともに、アンダーウエアの弾性によって突起体がツボを押圧して、着用中は常時指圧療法を行うことができる。特許文献2のものは、アンダーウエアに設ける突起体をシリコンゴム等の弾性体にて構成し、弾性体の素材の一部をアンダーウエアの織目内に含侵させて、アンダーウエアに突起体を固着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−222号公報
【特許文献2】特開平10−60702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記各特許文献のものは、ツボを押圧することにより、その症状の改善を図るものである。この場合、症状の改善に適したツボを正確に指圧できない場合は、指圧療法の効果は期待できない。このため、前記各特許文献のものは、症状に適したツボの位置を正確に認識し、そのツボに当接するアンダーウエアの位置に正確に突起体を設ける必要がある。しかしながら、ツボの位置は人によって異なり、また、1つのツボのエリアは小さいため、所望のツボに正確に当接するように突起体を設けることは難しい。仮に適切な位置に突起体を設けたとしても、使用者の体位が変化すること等により使用中においてアンダーウエアに伸縮が生じた場合、突起体はアンダーウエアの伸縮に追従して位置が変化する。このため、使用中に突起体がツボの位置から外れる可能性がある。このため、前記各特許文献のものでは、例えば便秘解消のために、排便促進効果のあるツボに当接するように突起体を設けても、ツボを正確に押圧できない場合があり、十分な排便促進効果が得られない可能性がある。
【0006】
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、簡単な構成で排便を促す効果の得られる身体装着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、人体の下腹部を覆う下腹部領域を有する身体装着具において、前記下腹部領域の左下腹部対応部、右下腹部対応部、及び上方下腹部対応部の少なくとも1つに、伸縮性が弱い低伸縮部を設け、装着時に、前記低伸縮部に隣接して人体の胴部周方向に延びる部分を、伸縮性が強い高伸縮部とした身体装着具を提供するものである。
【0008】
本発明に係る身体装着具によれば、下腹部領域に低伸縮部(延びにくい部分)を設けているため、人体の下腹部のうち、低伸縮部が当接する部位は、着圧が強くなり、低伸縮部にて押圧されることになる。この場合、低伸縮部は、左下腹部、右下腹部、及び上方下腹部の少なくとも1つに当接乃至圧接することになる。左下腹部には大腸の下行結腸、右下腹部には大腸の上行結腸、上方下腹部には大腸の横行結腸が存在するため、低伸縮部は、大腸のこれらの部位のいずれかを押圧することになり、大腸にたまった便を出口側へ物理的に押し流すとともに、大腸の蠕動運動を促進させて排便を促すことができる。しかも、低伸縮部は、本体部の下腹部領域に設けられているので、呼吸による下腹部の往復動により下腹部への接触圧に強弱が発生する。これにより、使用者は、装着するだけでマッサージされているような効果を得ることができる。
【0009】
便秘には、大腸の蠕動運動の低下に起因する弛緩性便秘、腸の神経の鈍化に起因する直腸性便秘等があり、大腸の機能低下が起因している場合が多い。従って、大腸を直接マッサージすることにより、腸の神経を刺激して蠕動運動を促進させることができる。これにより、本発明の身体装着具を日常的に使用すれば、大腸の機能の回復を図ることもでき、慢性的な便秘の改善にも有効なものとなる。しかも、大腸は下腹部の大半を占めているため、押圧対象を大腸とすることによって低伸縮部が押圧すべきエリアを広くできる。これにより、低伸縮部の細かい位置調節が必要なく、使用中の体位変化が生じても、低伸縮部は高い確率で大腸を押圧することができる。
【0010】
上記構成において、前記低伸縮部は、少なくとも前記左下腹部対応部に設けられるのが望ましい。下行結腸は大腸の下流側に相当し、出口に近い部位となる。便秘でない場合は、この部位に粥状の軟らかい便しか存在しないのに対し、便秘になると、この部位に固形の便がたまる。また、下行結腸周辺には、大腸の蠕動運動を司る神経や排便を促進させるツボが多数存在する。従って、低伸縮部が左下腹部を押圧することにより、最も効果的に排便を促進することができる。
【0011】
装着状態において、前記低伸縮部は、人の大腸の延在方向に沿うように配設されたものであり、大腸の始部側から出口側に向かって伸縮性が順次強くなるのが望ましい。これにより、低伸縮部は、大腸の始部側から出口側に向かって段階的な強さで下腹部を押圧することができるので、便を物理的に押し流す効果が得られ易いものとなる。
【0012】
前記構成において、前記本体部は足口を有する下半身用下着とするのが望ましい。足口を有することで、装着したときに下半身用下着の人体に対する位置が固定されてずれにくくなる。また、人が普段使用する下半身用下着に、大腸を押圧する機能を備えるようにできるため、使用者は装着に対する違和感がなく、長時間使用しやすいものとなる。
【発明の効果】
【0013】
上に述べたように、本発明によれば、簡単な構成で排便を促す効果の得られる身体装着具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る身体装着具の第1実施形態の正面図である。
【図2】図1に示す身体装着具の下腹部領域を示す説明図であり、(a)は左下腹部対応部及び右下腹部対応部、(b)は上方下腹部対応部を示す。
【図3】図1に示す身体装着具を装着した状態を示す正面図である。
【図4】本発明に係る身体装着具の第2実施形態の正面図である。
【図5】本発明に係る身体装着具の第3実施形態の正面図である。
【図6】実施品を示す正面図である。
【図7】実施品の低伸縮部の逢着方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態に係る身体装着具を具体的に説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。
【0016】
図1は、第1実施形態に係る身体装着具を示す正面図である。第1実施形態における身体装着具は、人体の下腹部を覆う下半身用下着(本実施形態ではショーツ)である。この下半身用下着は、下方開放状の足口3を左右対称に形成した伸縮性を有する前身頃4と、伸縮性を有する後身頃5と、前身頃4の下端の内股前部と後身頃5の下端の内股後部との間に配設されるマチ部6とを備えている。図2に示すように、下半身用下着のうち、装着状態で人体の下腹部を覆う部分を下腹部領域7としている。前身頃4の下腹部領域7において、図2(a)に示すように、人体の左下腹部に対応する部位を左下腹部対応部L、人体の右下腹部に対応する部位を右下腹部対応部R、図2(b)に示すように、人体の上方下腹部に対応する部位を上方下腹部対応部Uとしている。ここで、左下腹部とは、本発明の身体装着具が装着される人体にとって左側の下腹部をいい、図面上右側に相当する。また、右下腹部とは、本発明の身体装着具が装着される人体にとって右側の下腹部をいい、図面上左側に相当する。上方下腹部対応部Uは、左下腹部対応部L及び右下腹部対応部Rと一部重複する。
【0017】
図1に示すように、左下腹部対応部Lには伸縮性が弱い(伸びにくい)低伸縮部2が設けられている。「伸縮性が弱い」とは、低伸縮部2に隣接して人体の胴部周方向に延びる部分(本実施形態では、低伸縮部以外の全部)よりも相対的に伸縮性が弱いことを意味する。換言すると、低伸縮部以外の全部は、低伸縮部2よりも相対的に伸縮性が高くなり、この部分を高伸縮部8という。
【0018】
低伸縮部2と高伸縮部8とは、同一の糸を用いて同一の編み方とされており、低伸縮部2は高伸縮部8よりも糸量を多くしている。具体的には、低伸縮部2は高伸縮部8よりも、度目(編目のつまり具合)が密となっている。これにより、低伸縮部2は高伸縮部8よりも伸びにくくなって、伸縮性が低くなる。
【0019】
低伸縮部2は等脚台形状となっており、下腹部領域7の足口側では人体幅方向Wにおける幅寸法が小さい幅狭部9となり、胴側端縁11へ向かって徐々に大きくなって、胴側端縁側では大きい幅広部10となる。幅広部10と幅狭部9とは同一の糸で同一の編み方であるため、これらの部分の伸縮性は同一となる。しかしながら、幅広部10と幅狭部9を設けて低伸縮部2の幅を相違させることにより、下腹部領域7において幅広部10側では伸縮性が弱くなり、幅狭部9側へ向かって徐々に伸縮性が強くなるので、低伸縮部2の押圧力は幅狭部9側へ向かって順次小さくなる。
【0020】
前記のような身体装着具を人体に装着した状態では、図3に示すように、下腹部領域7は人体の下腹部を覆う。この場合、足口3は人体に対して固定部位となる。このように、胴側端縁11と足口3とが人体に対する固定部位となるため、下半身用下着の人体に対する位置が固定されて人体身長方向H及び幅方向Wの両方においてずれにくくなる。
【0021】
低伸縮部2は、人体身長方向Hに沿って人体の左下腹部に当接する。このとき、低伸縮部2の幅広部10が左下腹部の上方側に当接し、低伸縮部2の幅狭部9が左下腹部の下方側に当接する。
【0022】
人体の下腹部には大腸が延在する。大腸の始部は右下腹部の下方に存在し、右下腹部には始部から人体身長方向Hに沿って延びる上行結腸、上方下腹部には人体幅方向Wに沿って延びる横行結腸、左下腹部には人体身長方向Hに沿って延びる下行結腸が順に延在する。さらに、下行結腸からS字結腸、直腸が存在し、直腸が大腸の出口となる。下行結腸は大腸の下流側に相当し、出口に近い部位となる。便秘でない場合は、この部位に粥状の軟らかい便しか存在しないのに対し、便秘になると、この部位に固形の便がたまる。また、下行結腸周辺には、大腸の蠕動運動を司る神経や排便を促進させるツボが多数存在する。
【0023】
前記したように、低伸縮部2は人体身長方向Hに沿って左下腹部に当接する。このとき、低伸縮部2が当接する部位における着圧は、高伸縮部8が当接する部位における着圧よりも部分的に強くなる。しかも、呼吸による下腹部の往復動により、低伸縮部2の下腹部への接触圧に強弱が発生する。これにより、大腸(この場合、下行結腸)にたまった便を出口側へ物理的に押し流すとともに、大腸の蠕動運動を促進させて効果的に排便を促進させることができる。このようにして、使用者は本発明の身体装着具を装着するだけでマッサージ効果を得ることができる。
【0024】
便秘には、大腸の蠕動運動の低下に起因する弛緩性便秘、腸の神経の鈍化に起因する直腸性便秘等があり、大腸の機能低下が起因している場合が多い。従って、大腸を直接マッサージすることにより、腸の神経を刺激して蠕動運動を促進させることができる。本実施形態では、本体部1として人が普段使用する下半身用下着としているため、使用者は装着に対する違和感がなく、長時間使用しやすいものとなる。このように、本発明の身体装着具を日常的に使用すれば、大腸の機能の回復を図ることもでき、慢性的な便秘の改善にも有効なものとなる。しかも、大腸は下腹部の大半を占めているため、押圧対象を大腸とすることによって低伸縮部2が押圧すべきエリアを広くできる。これにより、低伸縮部2の細かい位置調節が必要なく、使用中の体位変化が生じても、低伸縮部2は高い確率で大腸を押圧することができる。
【0025】
この場合、低伸縮部2の人体幅方向Wの幅寸法は、大腸の始部側(下行結腸の上方側)から出口側(下行結腸の下方側)に向かって順次小さくなっている。これにより、低伸縮部2の押圧力は、下行結腸の上方側で最も大きく、下方側に向かって小さくなり、下行結腸を段階的に押圧できるため、便を出口側へ物理的に押し流す効果が得られ易いものとなる。
【0026】
前記第1実施形態では、左下腹部対応部Lに低伸縮部2を設けたが、右下腹部対応部Rに人体身長方向Hに沿った低伸縮部2を設けて上行結腸を押圧するものとしたり、上方下腹部対応部Uに人体幅方向Wに沿った低伸縮部2を設けて横行結腸を押圧するものとしたりできる。低伸縮部2を右下腹部対応部Rに設ける場合は、足口側を幅広部として胴側端縁側を幅狭部とするのが望ましい。低伸縮部2を上方下腹部対応部Uに設ける場合は、右下腹部側を幅広部として左下腹部側を幅狭部とするのが望ましい。
【0027】
図4は、本発明の第2実施形態に係る身体装着具を示す。この身体装着具は、左下腹部、右下腹部、上方下腹部のいずれか2箇所を押圧するものである。すなわち、下半身用下着は、下腹部領域7において左下腹部対応部Lに第1低伸縮部22が設けられるとともに、上方下腹部対応部Uに2つの第2低伸縮部23a、23bが設けられている。第1低伸縮部22と、第2低伸縮部23a、23bとの境界は、連続であっても不連続であってもよく、本実施形態では第1低伸縮部22aと、第2低伸縮部23a、23bとの境界が不連続状となっている。高伸縮部28は、低伸縮部22、23a、23b以外の全部としている。
【0028】
低伸縮部22、23a、23bと高伸縮部28とは、異なる糸を用いて同一の編み方とされている。低伸縮部22、23a、23bは、例えば綿、麻、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリルのような伸縮性が低い糸にて構成され、高伸縮部28は、例えばナイロン、ウレタンのようなそれ自体伸縮性が高い糸としたり、ゴム糸としたり、外側にウレタン繊維をまきつけたカバリング糸や、熱で繊維を螺旋状に変形させて絡ませるクリンプ加工糸のように低伸縮性の繊維を加工して伸縮性を高めた糸にて構成される。これにより、低伸縮部22、23a、23bは高伸縮部28よりも伸びにくくなって、伸縮性が低くなる。
【0029】
第1低伸縮部22は三角形状となっており、下腹部領域7の足口側では人体幅方向Wにおける幅寸法が小さい幅狭部29となり、胴側端縁へ向かって徐々に大きくなって、胴側端縁側では幅広部30となる。これにより、第1低伸縮部22において、胴側端縁側では伸縮性が弱くなり、足口側へ向かって徐々に伸縮性が強くなる。第2低伸縮部23a、23bは、人体身長方向Hにおける幅寸法が一定の細長い矩形状となっており、伸縮性は一定となる。
【0030】
第2実施形態に係る身体装着具を人体に装着した状態では、下半身用下着の下腹部領域7は人体の下腹部を覆う。第1低伸縮部22は、人体身長方向Hに沿って人体の左下腹部に当接するとともに、第2低伸縮部23a、23bは、人体幅方向Wに沿って人体の上方下腹部に当接する。これにより、下行結腸が第1低伸縮部22にて押圧されるとともに、横行結腸が第2低伸縮部23a、23bにて押圧されることになる。このとき、第1低伸縮部22の幅広部30が、左下腹部の上方側に当接する。
【0031】
このように、第2実施形態の身体装着具の低伸縮部22、23a、23bは、左下腹部及び上方下腹部の2箇所を押圧するものであり、広範囲に大腸を押圧することができるため、排便促進効果を一層向上させることができる。
【0032】
前記第2実施形態では、左下腹部対応部L及び上方下腹部対応部Uに低伸縮部22、23a、23bを設けたが、左下腹部対応部L及び右下腹部対応部Rに低伸縮部を設けて下行結腸及び上行結腸を押圧するものとしたり、右下腹部対応部R及び上方下腹部対応部Uに低伸縮部を設けて上行結腸及び横行結腸を押圧するものとしたりできる。
【0033】
図5は、本発明の第3実施形態に係る身体装着具を示す。この身体装着具は、左下腹部、右下腹部、上方下腹部の全てを押圧するものである。すなわち、下半身用下着は、下腹部領域7において左下腹部対応部Lに第1低伸縮部32が設けられ、上方下腹部対応部Uに第2低伸縮部33が設けられ、右下腹部対応部Rに第3低伸縮部34が設けられている。第2低伸縮部33と第1低伸縮部32との境界、及び第2低伸縮部33と第3低伸縮部34との境界は、連続であっても不連続であってもよく、本実施形態では第2低伸縮部33は、第1低伸縮部32及び第3低伸縮部34と連続状となっている。高伸縮部38は、下腹部領域7に相当する部分としている。
【0034】
低伸縮部32、33、34と高伸縮部38とは、同一の糸を用いて同一の編み方とされている。低伸縮部32、33、34には、例えばウレタン、ゴム、アクリルのような樹脂が塗布されている。これにより、低伸縮部32、33、34は高伸縮部38よりも伸びにくくなって、伸縮性が低くなる。
【0035】
第3実施形態に係る身体装着具を人体に装着した状態では、本体部31の下腹部領域7は人体の下腹部を覆う。第1低伸縮部32は、人体身長方向Hに沿って人体の左下腹部に当接し、第2低伸縮部33は、人体幅方向Wに沿って人体の上方下腹部に当接し、第3低伸縮部34は、人体身長方向Hに沿って人体の右下腹部に当接する。これにより、下行結腸が第1低伸縮部32にて押圧され、横行結腸が第2低伸縮部33にて押圧され、上行結腸が第3低伸縮部34にて押圧されることになる。
【0036】
このように、第3実施形態の身体装着具の低伸縮部32、33、34は、左下腹部、右下腹部、上方下腹部の全てを押圧するものであり、より広範囲に大腸を押圧することができるため、排便促進効果を一層向上させることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。低伸縮部の形状は等脚台形、矩形の他、不等脚台形、三角形、正方形、多角形、円形、楕円形、瓢箪形等種々の形状とすることができる。さらには、低伸縮部は、その延在する方向と直交する方向に沿って不連続なもの(つまり、複数の列)としたり、延在する方向に沿って不連続なものとしたりできる。
【0038】
低伸縮部と高伸縮部とを同一の糸を用いて形成する場合、低伸縮部と高伸縮部とで編み方を相違させて伸縮性に強弱をつけることができる。低伸縮部と高伸縮部とを同一の糸を用いて同一の編み方にて形成する場合、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン等の合成繊維のように熱可塑性を有する糸にて下半身用下着を形成し、低伸縮部を形成する部位に熱をかけて糸を溶かして低伸縮部を形成することができる。すなわち、高分子化合物からなる合成繊維にて構成される糸であれば、熱をかけてフィルム状に硬化させることで低伸縮部を形成できる。低伸縮部と高伸縮部とを異なる糸を用いて同一の編み方にて形成する場合、低伸縮部と高伸縮部とで糸の太さを相違させて伸縮性に強弱をつけることができる。低伸縮部と高伸縮部とで異なる糸を用いた場合であっても、低伸縮部と高伸縮部とで編み方を相違させたり、度目を相違させて糸量を相違させたり、樹脂を塗布したり、熱可塑性を有する糸の低伸縮性を形成する部位に熱をかけて糸を溶かしてもよい。低伸縮部を形成する方法は複数あり(編み方、糸量、度目、糸の太さ、糸の種類等を相違させる、樹脂を塗布する、熱をかけて糸を溶かす)、1つの低伸縮部を形成する場合に、複数の方法を用いて低伸縮部を形成してもよい。
【0039】
本体部1は、人体の下腹部を覆う下腹部領域7を有しているものであれば下半身用下着に限られず、ズボン、ストッキング等の下股までを覆うもの、腹巻、コルセット等の腹部のみを覆うもの、ボディースーツ、肌着等の上半身までを覆うもの、ベルト類等にて構成してもよい。
【0040】
下腹部領域7の範囲は任意に設定することができる。下腹部領域7は、2枚の生地を重ね合わせて2重構造としてもよい。これにより、低伸縮部2によるマッサージ効果と下腹部領域7による保温効果とが相俟って、一層排便を促進できるものとなる。
【実施例】
【0041】
本発明の身体装着具(以下、実施品という)を実際に製造して、低伸縮部と高伸縮部とにおける被装着体への着圧を測定する試験を行った。実施品の本体部は、図6に示すようなショーツタイプの下半身用下着とした。被装着体はトルソー(マネキン)とし、ディスプレーボディPSP88(株式会社キイヤ)を使用した。
【0042】
高伸縮部は下腹部を覆う領域に形成し、その大きさは人体身長方向Lの長さ寸法α1が10.5cm、人体幅方向Wの長さ寸法α2が25cmとした。高伸縮部は、ナイロン72%、ウレタン28%の伸縮生地(編布)にて構成した。
【0043】
低伸縮部は、装着状態で左下腹部に相当する位置に形成し、その大きさは人体身長方向Lの長さ寸法α3が10cm、人体幅方向Wの長さ寸法α4が7cmとした。低伸縮部は、高伸縮部に伸縮性のない綿糸(綿糸100%)を手縫いで縫いつけることにより形成した。低伸縮部の逢着方法は、図7に示すように、縦縫い幅α5が6mm、横縫い幅α6が8mmとした。なお、綿糸は横田株式会社製のダルマ家庭糸太口(20/3)を用いた。
【0044】
前記実施品について、低伸縮部と高伸縮部とにおけるトルソーへの圧力を測定した(エアパック式接触圧計AMI3037、エアパック型式:2標準(エイエムアイ・テクノ社製))。具体的には、トルソーに実施品を装着した状態で、実施品とトルソーとの間にエアパックを設置し、エアパックが押圧された際の圧力を接触圧計で測定した。
【0045】
その結果、高伸縮部における着圧は12.8gf/cm2であるのに対し、低伸縮部における着圧は19.9gf/cm2であった。これにより、低伸縮部における着圧は、高伸縮部における着圧よりも高くなることがわかった。従って、本発明のように低伸縮部を設けるとともに、低伸縮部に隣接して人体の胴部周方向に延びる部分に高伸縮部を設けた身体装着具は、装着状態で低伸縮部における着圧が高まり、この低伸縮部にて被装着体を押圧できるものであることがわかった。
【符号の説明】
【0046】
2、22、23、32、33、34 低伸縮部
3 足口
7 下腹部領域
8、28、38 高伸縮部
L 左下腹部対応部
R 右下腹部対応部
H 人体身長方向
W 人体幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の下腹部を覆う下腹部領域を有する身体装着具において、
前記下腹部領域の左下腹部対応部、右下腹部対応部、及び上方下腹部対応部の少なくとも1つに、伸縮性が弱い低伸縮部を設け、
装着時に、前記低伸縮部に隣接して人体の胴部周方向に延びる部分を、伸縮性が強い高伸縮部としたことを特徴とする身体装着具。
【請求項2】
前記低伸縮部は、少なくとも前記左下腹部対応部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の身体装着具。
【請求項3】
装着状態において、前記低伸縮部は、人の大腸の延在方向に沿うように配設されたものであり、大腸の始部側から出口側に向かって伸縮性が順次強くなることを特徴とする請求項1又は請求項2の身体装着具。
【請求項4】
前記本体部は、足口を有する下半身用下着であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項の身体装着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−208318(P2011−208318A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77317(P2010−77317)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】