説明

車両、充填状態報知装置

【課題】燃料ガスを利用する利用手段と、燃料ガスを蓄える燃料タンクとを備えた車両に関する技術を提供する。
【解決手段】燃料タンクに燃料ガスを充填する充填装置との間で、燃料ガスの充填に関する情報について通信を行う通信手段を備えた車両であって、燃料ガスを利用する燃料ガス利用手段と、燃料ガス利用手段が利用する燃料ガスを蓄える燃料タンクと、燃料タンク内の状態を検知するタンク状態検知手段と、タンク状態に基づいて、燃料タンクへの燃料ガスの充填の状態を判断する判断部と、判断結果に基づいて、通信手段以外の手段で、燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する報知部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを利用する利用手段と、燃料ガスを蓄える燃料タンクとを備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスを利用する利用手段(例えば、燃料電池や水素燃料エンジン等)を搭載した車両では、燃料ガスを充填する充填装置との間で、燃料タンクの状態に関する情報(例えば燃料タンクの温度や圧力)について通信を行いながら燃料タンクに燃料ガスの充填を行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。これは、燃料ガスを充填する際の作業効率を向上するためである。
【0003】
しかしながら、車両が充填装置と通信を行う通信手段を備えている場合であっても、充填装置が通信手段を備えていない場合や、または充填装置が通信手段を備えていても何らかの理由により通信が出来ない場合などがありえる。こうした場合、充填装置と通信を行わないで燃料ガスを充填することになる。燃料ガス充填時の燃料タンクの好ましい状態は法規で定められており、充填装置との通信を行わないで充填作業を行った場合、燃料ガスの充填が好ましい状態で行えなくなり、作業効率が低下するとの指摘がされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−269693号公報
【特許文献2】特開平7−208698号公報
【特許文献3】特開2009−522519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、充填装置と通信の如何を問わず、車両が備える燃料タンクに効率的に燃料ガスを充填することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
[適用例1]
燃料タンクに燃料ガスを充填する充填装置との間で、前記燃料ガスの充填に関する情報について通信を行う通信手段を備えた車両であって、前記燃料ガスを利用する燃料ガス利用手段と、前記燃料ガス利用手段が利用する燃料ガスを蓄える燃料タンクと、前記燃料タンク内の状態を検知するタンク状態検知手段と、前記タンク状態に基づいて、前記燃料タンクへの前記燃料ガスの充填の状態を判断する判断部と、前記判断結果に基づいて、前記通信手段以外の手段で、前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する報知部とを備える車両。
【0007】
この車両によると、燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する報知部を備えるので、燃料ガスの充填者は、通信手段以外の手段を用いて効率的に充填作業を行うことができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載の車両であって、前記報知部は、前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を視認可能に表示する表示部を備え、前記表示部は、前記燃料タンクに前記燃料ガスを充填している充填者が視認可能な位置に設置されている車両。
この車両によると、燃料ガスの充填者が充填中の燃料タンクの充填の状態を視認しながら充填作業を行うことができる。
【0009】
[適用例3]
前記表示部は、前記燃料タンクと前記充填装置とを接続するための充填口の近傍に設置されている適用例2記載の車両。
この車両によると、燃料ガスの充填者は充填口近傍において燃料タンクの充填の状態を認識することができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか記載の車両であって、前記報知部は、前記通信手段が前記充填装置と通信が可能か否かに関わらず前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する車両。
この車両によると、燃料ガスの充填者は、通信手段が充填装置と通信可能な場合にも充填中の燃料タンクの充填の状態を認識することができる。
【0011】
[適用例5]
適用例1ないし適用例3のいずれか記載の車両であって、前記報知部は、前記通信手段が前記充填装置と通信ができない場合にのみ前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する車両。
この車両によると、燃料ガスの充填者は、報知部が燃料タンクの充填の状態を報知することにより、通信手段と充填装置が通信ができないことを認識することができる。
【0012】
[適用例6]
前記判断部は前記タンク状態に基づいて、前記充填の状態を複数のレベルに分けて判断し、前記報知部は、前記判断結果に対応して前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を段階的に報知する適用例1ないし適用例5のいずれか記載の車両。
この車両によると、燃料ガスの充填者は燃料タンクの充填の状態を段階的に認識しながら充填作業を行うことができる。
【0013】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか記載の車両であって、前記報知部はさらに、前記通信手段が前記充填装置と通信可能か否かを報知する車両。
この車両によると、燃料ガスの充填者は、通信手段が充填装置と通信可能であるか否かを認識することができる。
【0014】
[適用例8]
前記報知部は前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を音として報知する適用例1ないし適用例7のいずれか記載の車両。
この車両によると、燃料ガスの充填者は、燃料タンクの充填の状態を聴覚で認識することができる。
【0015】
[適用例9]
燃料タンクに蓄えられた燃料ガスを利用する燃料ガス利用手段を備えた車両が搭載する前記燃料タンクの充填の状態について報知する充填状態報知装置であって、前記燃料タンク内の状態に関する情報を取得するタンク状態取得手段と、前記燃料タンク内の状態に関する情報に基づいて、前記燃料タンクの充填の状態を判断する判断部と、前記判断結果に基づいて、前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する報知部とを備える充填状態報知装置。
この充填状態報知装置によると、燃料ガスの充填者は、充填中の燃料タンクの充填の状態を認識しながら充填作業をおこなうことができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、充填状態表示方法および装置、燃料ガス充填システム、それらの方法または装置の機能を実現するための集積回路、コンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】水素充填システム10の構成を説明する説明図である。
【図2】インジケータ50を説明する説明図である。
【図3】充填状態表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】充填状態判断テーブルTBを説明する説明図である。
【図5】水素充填システム10の状態を説明する説明図である。
【図6】通信状態表示ランプ54の一例を示した説明図である。
【図7】変形例3を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
図1は、第1実施例としての水素充填システム10の構成を示す説明図である。水素充填システム10は、水素タンク30を搭載した車両20と、水素タンク30へ水素を充填するための水素ステーションSTとを備える。水素ステーションSTは、水素タンク30に水素を充填するための水素を蓄える水素タンク60と、水素を充填するための水素供給管61と、車両20と接続する水素供給ノズル62とを備える。水素ステーションSTは、水素タンク60に蓄えられている水素を、水素供給管61と水素供給ノズル62とを介して車両20が備える水素タンク30に供給する。
【0019】
車両20は、水素タンク30と、電子制御装置40(以下「ECU40」とも呼ぶ)と、燃料電池FCとを備える。車両20は、燃料電池FCが発電した電力によって駆動用モータ(図示省略)を駆動し、その駆動力によって走行する。燃料電池FCによる発電は、水素タンク30から水素供給管38を介して供給された水素ガスと、図示しない酸素供給管から燃料電池FCに供給された酸素ガスとによって行われる。燃料電池が発電する仕組みについては公知の技術であるので説明は省略する。
【0020】
車両20は、ボディーの側面に凹部(以下、「水素充填用凹部25」とも呼ぶ)を備える。水素充填用凹部25には、水素ステーションSTが備える水素供給ノズル62と接続するための水素充填口32が備えられており、水素タンク30と水素充填口32とは水素充填管31を介して連通している。水素充填管31は、補給弁33を備える。補給弁33は、その開閉はECU40によって制御されており、水素充填開始時に開弁され、水素充填終了時に閉弁される。
【0021】
また水素タンク30内には水素ガスを充填中の水素タンク30の温度Tを測定する温度センサ36が備えられ、水素充填管31内には、水素ガスを充填中の水素タンク30の圧力Pを測定する圧力センサ37が備えられている。ECU40は、温度センサ36が測定した温度Tおよび圧力センサ37が測定した圧力Pとを電気信号として取得し、温度Tと圧力Pとに基づいて水素タンク30への水素の充填の状態を算出する。具体的には、水素タンク30への水素の充填率(以下、「SOC(State Of Charge)」とも呼ぶ)を算出する。また、ECU40は、水素タンク30の温度Tと圧力Pが作業効率上問題のない値であるかの判断も行っている。
【0022】
ECU40が算出した温度Tおよび圧力Pに関する情報(以下、タンク状態情報」とも呼ぶ)は、水素充填口32が備える赤外線通信装置35から水素ステーションSTの水素供給ノズル62が備える赤外線通信装置65を介して水素ステーションSTに送信される。タンク状態情報を受信した水素ステーションSTは、タンク状態情報に基づいて充填の継続または停止を判断する。水素ステーションSTが、受信したタンク状態情報に基づいて水素タンク30への水素の充填を停止すると判断した場合には、水素タンク60からの水素の供給を停止するとともに、赤外線通信装置65,赤外線通信装置35を介してECU40に、水素の停止信号を送信する。ECU40は、水素ステーションSTからの停止信号を受信すると、補給弁33を制御して閉弁する。なお、本実施例では、ECU40と水素ステーションSTとは通信手段として赤外線通信を用いたが、ブルートゥース(登録商標)や、電波を用いた通信など、種々の通信手段を用いることができる。
【0023】
水素タンク30は安全弁34を備える。安全弁34は可容性金属によって構成されている。安全弁34は、水素の充填時に、水素タンク30の温度が110±10℃に達した場合にその可容性金属が溶融して、水素タンク30と外部との貫通孔を形成し、水素タンク30内の水素を外部に放出する。安全弁34は一度作動すると、再度使用することはできず、取り替える必要がある。
【0024】
車両20は、これらの構成に加え、更に、インジケータ50を備える。インジケータ50は、水素充填時の水素タンク30に充填の状態の度合(以下、「充填状態」とも呼ぶ)を水素充填者に対して表示するインジケータである。インジケータ50はECU40によって制御されており、ECU40が取得した温度T、圧力PおよびSOCに基づいて、インジケータ50に水素タンク30の充填状態を表示する。すなわち、充填状態とは、水素タンク30の温度Tと圧力P(以下「タンク状態」とも呼ぶ)から定まる指標であり、水素タンク30の状態が充填作業上好ましい状態であるか否かを段階的に示す指標である。
【0025】
図2は、インジケータ50を説明する説明図である。インジケータ50は、図2に示すように、水素充填用凹部25内に設置されている。より具体的には、インジケータ50は、水素充填者が水素ステーションST側の水素供給ノズル62と車両20側の水素充填口32とを接続し水素充填をしている最中に視認可能な位置に設置されている。インジケータ50は、充填状態を表示する表示部51と、水素タンク30の状態が所定の状態になったときにブザーを鳴動するスピーカ52とを備える。
【0026】
表示部51は、水素充填時の水素タンク30の充填状態を、「正常」、「注意」、「中止」の3段階で表示する。水素タンク30の状態が正常の場合は「正常」に該当する表示ランプを青色に点灯させる。水素タンク30への水素の充填は継続してもよいが、充填中の監視および注意が必要である場合は、「注意」に該当する表示ランプを黄色に点灯させ、スピーカ52警告用のブザー音を鳴動する。水素タンク30への水素の充填を中止すべき時は、「中止」に該当する表示ランプを赤に点灯させ、警告用のブザー音を鳴動させる。これらインジケータ50(表示部51およびスピーカ52)の動作制御はECU40が行っている。
【0027】
次に、ECU40が行っているインジケータ50の動作制御(以下、「充填状態表示処理」とも呼ぶ)について説明する。本実施例では、充填状態表示処理は、水素充填者がリッド39を開いたことをトリガとしてECU40が開始する。図2に示すように、水素充填用凹部25には、リッド39の開閉を検知する開閉センサ53が備えられており、開閉センサ53がリッド39が開いたことを検知すると、リッド39が開いた旨の信号(以下、「リッド開信号」とも呼ぶ)をECU40に送信する。リッド開信号を受信するとECU40は充填状態表示処理を開始する。
【0028】
図3は、ECU40が行う充填状態表示処理の流れを示すフローチャートである。充填状態表示処理を開始すると、ECU40は、温度センサ36から水素タンク30の温度Tを取得し、圧力センサ37から水素タンク30の圧力Pを取得する(ステップS102)。ECU40は、取得した温度Tおよび圧力Pから水素タンク30の充填状態を判断する(ステップS104)。ECU40は、充填状態を判断するにあたり、充填状態判断テーブルTBを用いる。
【0029】
図4は、充填状態判断テーブルTBを説明する説明図である。充填状態判断テーブルTBは、横軸が水素タンク30の温度T(℃)、縦軸が水素タンク30の圧力P(MPa)からなるテーブルである。充填状態判断テーブルTBにおける実線の直線KはSOCが100%である状態を示す点の集合、すなわち水素タンク30の水素の充填率が100%の場合の温度Tと圧力Pとから定まる状態(T,P)の集合である。充填状態判断テーブルTB上の点線の直線Lは、SOCが98%の場合の状態(T,P)の集合である。T>85℃である領域F1は、水素タンク30の充填作業上問題がある状態に相当する領域である。P>87.5MPaである領域F2は、法令による基準を超えた状態に相当する領域である。充填状態判断テーブルTB上において、直線KとP=87.5とで挟まれた領域F3は、SOC=100%を超えており、この状態は、法令による基準を超えた状態に相当する領域である。ECU40は、水素タンク30の状態(T、P)が、これら領域F1,領域F2,領域F3の領域にあると判断した場合は、インジケータ50の表示部51において、「中止」に該当する表示ランプを赤に点灯させ、ブザーを鳴動する(「中止」:ステップS104、ステップS106)。
【0030】
充填状態判断テーブルTBにおいて、82℃<T≦85℃かつSOC<100である領域F4と、T≦82℃かつ98%≦SOC<100%である領域F5とは、充填中の水素タンク30の状態に充填作業上および法令上の問題がないが、充填作業上または法令上問題のある状態に近い状態であり、水素充填者の注意・監視が必要な状態に相当する領域である。ECU40は、水素タンク30の状態(T、P)が、これら領域F4,領域F5の領域にあると判断した場合は、インジケータ50の表示部51において、「注意」に該当する表示ランプを黄に点灯させ、ブザーを鳴動する(「注意」:ステップS104、ステップS108)。
【0031】
充填状態判断テーブルTBにおいて、上記の領域F1〜領域F5以外の領域である領域F6は、充填中の水素タンク30の状態として正常の状態に相当する。ECU40は、水素タンク30の状態(T、P)が、領域F6にあると判断した場合は、インジケータ50の表示部51において、「正常」に該当する表示ランプを青に点灯させる。(「正常」:ステップS104、ステップS110)。
【0032】
その後、充填状態表示処理を終了するか判断し(ステップS112)、処理を終了と判断するまではステップS102〜ステップS110の処理を、所定のインターバルで繰返し行う。処理を終了するかの判断は、例えば、リッド39が閉まったことを開閉センサ53を介してECU40が検知し処理終了と判断してもよいし、圧力センサ37によって水素タンク30内の圧力変化を検知して所定期間の圧力変化が無ければ処理終了と判断しても良い。ECU40はこのようにして充填状態表示処理を行う。
【0033】
以上説明したように、ECU40が充填状態表示処理を行い、インジケータ50に水素充填時の水素タンク30の充填状態を表示することによって、その表示に基づいて水素充填者は水素の充填の継続または中止を判断することができる。具体的には以下のような場合に有効である。
【0034】
図5は、水素充填時における水素充填システム10の状態を説明する説明図である。水素充填のために水素充填者によって、水素充填口32と水素供給ノズル62とが接続される(状態T202)。その後、赤外線通信装置35と赤外線通信装置65との間で赤外線通信が可能であるか否かの判断を、ECU40および水素ステーションSTが備える制御部が、赤外線通信装置35および赤外線通信装置65を介して信号のやり取りを行うことによって行う。赤外線通信が可能である場合(T204)、水素ステーションSTとECU40との間で赤外線通信を行いながら水素タンク30への水素の充填(以下、「通信充填」とも呼ぶ)を行う(状態T208)。この時、ECU40は、温度センサ36で測定した温度T、および圧力センサ37で測定した圧力Pを赤外線通信によって水素ステーションSTにリアルタイムに送信し、ECU40および水素ステーションSTによって水素タンク30の状態を監視しながら水素の充填を行う。そして、水素ステーションSTまたはECU40がSOC=100%を検知し、互いに赤外線通信によって充填停止の信号をやり取りし、水素ステーションSTは水素の供給を停止し、ECU40は補給弁33を制御して閉弁する。赤外線通信を行いながら水素タンク30の状態に異常が無くSOCが100%になるまで充填すると、水素充填システム10は、水素の充填を停止する(状態T228)。
【0035】
一方、状態T202において、何らかの理由により赤外線通信が出来ないと判断した場合にも(状態T206)、法令上は充填可能であるため、赤外線通信を行わずに水素の充填(以下、「非通信充填」とも呼ぶ)を開始する(状態T210)。この場合、水素充填者がインジケータ50を視認しながら、水素ステーションSTを手動で操作して水素の充填を行うことによって、例えば、インジケータ50が備える表示部51の「注意」の黄のランプが点灯した時点、あるいは、「中止」の赤のランプが点灯した時点で充填を手動で停止することによって水素の充填を停止することができる(状態T226,状態228)。
【0036】
次に、仮に、通信充填(状態T208)を行っている場合、または、非通信充填(状態T210)を行っている場合において、水素タンク30の温度Tが充填作業上問題がある温度Tまで過加熱した場合(本実施例ではT>85℃)を想定する(状態T212,状態T214)。水素ステーションSTまたはECU40が、温度T、圧力P、SOCの値から、充填の停止を判断し互いに充填停止の信号をやり取り可能な場合は(T216)、水素ステーションSTは水素の供給を停止し、ECU40は補給弁33を制御して閉弁することによって水素の充填を停止する。
【0037】
一方、ECU40が、温度T、圧力Pの値から、充填の停止を判断したが、その情報が水素ステーションSTに送信できず水素ステーションSTからの水素の充填が継続された場合(状態T218)、または、水素タンクが過加熱の状態にもかかわらず非通信充填のため水素ステーションSTからの水素の充填が継続された場合(状態T222)、インジケータ50が「注意」あるいは「中止」の表示、およびブザーを鳴動し水素充填者に警告をするため(状態T220,状態T224)、水素充填者は、安全弁34が作動する前に手動で水素の充填を停止することができる(状態T228)。すなわち、安全弁34は水素タンク30が110±10℃に達すると作動するが、インジケータ50は水素タンク30が82℃以上で「注意」の表示とブザーの鳴動、85℃以上で「中止」の表示とブザーの鳴動により水素充填者に警告をするので、水素充填者は、安全弁34が作動する前に手動で水素の充填を停止することができる。
【0038】
また、安全弁34の作動および水素タンク30からの水素の放出を未然に防ぐことができるため、外部に放出する水素に起因する危険を回避することができる。また、安全弁34は一度使用すると取り替える必要があるが、充填状態表示処理によって、水素充填者によって安全弁34の作動を未然に防ぐことが出来るため、安全弁の取り替えによるコストを削減することができる。
【0039】
特許請求の範囲との対応関係としては、水素ステーションSTが特許請求の範囲に記載の充填装置に対応し、水素が特許請求の範囲に記載の燃料ガスに対応し、温度Tと圧力Pとが特許請求の範囲に記載の燃料タンク内の状態に対応し、ECU40が特許請求の範囲に記載の判断部に対応する。
【0040】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
(B1)変形例1:
変形例1として、インジケータ50に、水素ステーションSTとの通信が可能であるか否か(以下、「通信状態」とも呼ぶ)を報知する通信状態表示ランプを備えるとしてもよい。水素の充填時にECU40が水素ステーションSTとの通信が可能か否かを判断し際に、その判断結果を通信状態表示ランプ54として表示する。図6は、通信状態表示ランプ54の一例を示した説明図である。図に示すように、通信状態表示ランプ54を水素充填者が水素充填時に視認可能な位置に設置する。通信状態表示ランプ54は、「通信可」と「通信不可」の2つの点灯部を有し。水素ステーションSTとの通信が可能な場合には「通信可」を点灯させ、水素ステーションSTとの通信が不可能な場合には「通信不可」を点灯させる。このようにすることで、「通信不可」の点灯部が点灯している場合には、通常の通信充填に比べ、注意深く充填すべきことを注意喚起することができ、水素充填時の作業効率が向上する。
【0042】
(B2)変形例2:
上記実施例では、水素充填システム10において、水素充填が通信充填か非通信充填かに関わらず、インジケータ50は充填状態を表示するとしていたが、変形例2として、非通信充填の場合のみ、インジケータ50による充填状態の報知(表示部51による充填状態の表示およびスピーカ52によるブザーの鳴動)を行うとしてもよい。この場合、水素充填時にECU40が水素ステーションSTとの通信が可能か否かの判断を行い、通信が不可であると判断した場合にのみインジケータ50を制御して充填状態の報知を行うことにより実現可能である。このようにしても上記実施例と同様の効果を得ることができる。また、インジケータ50によって充填状態が報知されているときは充填時に注意が必要である旨を充填者が認識するため、充填者からの認識性が向上し、作業効率の向上につながる。
【0043】
(B3)変形例3:
上記実施例では、インジケータ50は水素充填用凹部25に備えるとしたが、それに限らず、水素充填者が水素充填時に認識可能な位置であれば、車両20の他の位置に備えるとしてもよい。例えば、図7に示すように、車両20のボディー部分の水素充填用凹部25の側辺部であるP1の位置や、車体の下部であるP2の位置や、ミラーの周縁であるP3の位置などに備えるとしてもよい。このようにしても上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(B4)変形例4:
上記実施例では、インジケータ50によって充填状態を段階的に報知するとしたが、それに限ることなく、上記実施例で説明した「注意」と「中止」の状態をまとめて1つの警告ランプとして設置するとしてもよい。すなわち、水素タンク30が「注意」および「中止」に相当する状態に至った場合には、水素充填者が充填を停止することができる。このようにしても、水素ステーションSTと通信を行わないで水素充填を行った場合には充填者は安全弁が作動する前に水素充填を停止することができる。
【0045】
(B5)変形例5:
上記実施例では、車両の駆動力に用いる電力を発電する燃料電池に供給する水素ガスを蓄える水素タンクに、水素を充填する場合を例にして説明をしたが、それに限ることなく、例えば、水素を燃料としたエンジンによって駆動する車両が搭載する水素タンクに水素を充填する場合に適用してもよい。その他、水素に限らず、天然ガスを用いて発電を行う燃料電池など、燃料電池に用いるこが可能な種々の燃料ガスを、車両が搭載する燃料タンクに充填する場合に適用することができる。また、車両の駆動力として用いる電力を発電するための燃料電池に供給する燃料ガスを充填する場合に限らす、他の用途に用いる電力を発電するための電力を発電するための燃料電池に供給する燃料ガスを充填する場合に適用することもできる。
【0046】
(B6)変形例6:
上記実施例においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…水素充填システム
20…車両
25…水素充填用凹部
30…水素タンク
31…水素充填管
32…水素充填口
33…補給弁
34…安全弁
35…赤外線通信装置
36…温度センサ
37…圧力センサ
38…水素供給管
39…リッド
40…電子制御装置
50…インジケータ
51…表示部
52…スピーカ
53…開閉センサ
54…通信状態表示ランプ
60…水素タンク
61…水素供給管
62…水素供給ノズル
65…赤外線通信装置
T…温度
P…圧力
K…直線
L…直線
F1〜F6…領域
TB…充填状態判断テーブル
FC…燃料電池
ST…水素ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに燃料ガスを充填する充填装置との間で、前記燃料ガスの充填に関する情報について通信を行う通信手段を備えた車両であって、
前記燃料ガスを利用する燃料ガス利用手段と、
前記燃料ガス利用手段が利用する燃料ガスを蓄える燃料タンクと、
前記燃料タンク内の状態を検知するタンク状態検知手段と、
前記タンク状態に基づいて、前記燃料タンクへの前記燃料ガスの充填の状態を判断する判断部と、
前記判断結果に基づいて、前記通信手段以外の手段で、前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する報知部と
を備える車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記報知部は、前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を視認可能に表示する表示部を備え、
前記表示部は、前記燃料タンクに前記燃料ガスを充填している充填者が視認可能な位置に設置されている
車両。
【請求項3】
前記表示部は、前記燃料タンクと前記充填装置とを接続するための充填口の近傍に設置されている請求項2記載の車両。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の車両であって、
前記報知部は、前記通信手段が前記充填装置と通信が可能か否かに関わらず前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する
車両。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の車両であって、
前記報知部は、前記通信手段が前記充填装置と通信ができない場合にのみ前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する
車両。
【請求項6】
前記判断部は前記タンク状態に基づいて、前記充填の状態を複数のレベルに分けて判断し、
前記報知部は、前記判断結果に対応して前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を段階的に報知する請求項1ないし請求項5のいずれか記載の車両。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の車両であって、
前記報知部はさらに、前記通信手段が前記充填装置と通信可能か否かを報知する
車両。
【請求項8】
前記報知部は前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を音として報知する請求項1ないし請求項7のいずれか記載の車両。
【請求項9】
燃料タンクに蓄えられた燃料ガスを利用する燃料ガス利用手段を備えた車両が搭載する前記燃料タンクの充填の状態について報知する充填状態報知装置であって、
前記燃料タンク内の状態に関する情報を取得するタンク状態取得手段と、
前記燃料タンク内の状態に関する情報に基づいて、前記燃料タンクの充填の状態を判断する判断部と、
前記判断結果に基づいて、前記燃料タンクの充填の状態に関する情報を報知する報知部と
を備える充填状態報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76713(P2012−76713A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226460(P2010−226460)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】