説明

車両にある光センサシステム及び/又は識別システム用看視窓

本発明は、車両にある光センサシステム及び/又は光識別システム用看視窓(10)に関し、看視窓内に光学系の少なくとも1つの視界(11)が規定されている。視界を取巻く窓加熱装置(15)が設けられ、視界自体は組込み素子又は取付け素子なしに構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の光センサシステム及び/又は識別システム用看視窓に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造において、車両周辺の光学的監視に基く公知の援助システムがますます使用されている。このため例えば車両構造内に設けられる光カメラシステム及び/又は光センサシステムが使用されて、適当な看視窓を通って周辺へ光によりアクセスする。このようなシステムは、あらゆる種類の障害の影響に対して保護しようとするほど、それだけ高性能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の課題は、看視窓と共に光学装置を設ける場合、例えば光センサシステム及び/又は識別システムの最高性能を保証する、最初にあげた種類の看視窓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴を持つ看視窓によって解決される。本発明のそれ以外の構成は従属請求項から明らかになる。
【0005】
本発明の主要な考えは、車両にある光センサシステム及び/又は光識別システム用看視窓において、看視窓内に光学系の光学装置の少なくとも1つの視界を規定し、視界を取巻く窓加熱装置を設け、視界自体は組込み素子又は取付け素子なしに構成することである。この窓加熱装置によって、視界に特別な氷結や曇りがないようにすることができる。これに反し視界自体内には、看視を妨げる素子は設けられていない。従って本発明により、視界に設けられる加熱手段例えば線による不利な影響を受ける必要なしに、氷結、曇り等による有害な影響を除去することができる。
【0006】
なおこの開示の範囲内で次の用語が使用される。看視窓は物質的な構造単位を意味する。光学装置の視範囲は、光学装置により検出されるか又は覆われる立体角を意味する。視界は、上述した対象物の実施形態において視界に対する特定の相対位置に設けられる光学装置の視範囲の投影を看視窓において包囲し、かつ特に2つの投影に大きさ、位置及び形状寸法を少なくとも近似的に合わされている看視窓の部分範囲を意味する。1つの実施形態では、視界は視範囲の投影と少なくとも実質的に一致する。
【0007】
光学装置は、車両周辺検出のため例えば援助システムと共に使用されるカメラであってもよい。このカメラは、例えば可視波長範囲及び/又は夜間看視システム用の赤外線波長範囲で動作することができる。別の実施形態では、光学装置は光源例えば夜間看視システム用の光源例えば赤外線光源である。別の実施形態は例えば雨センサのような光センサであり、ここで与えられる列挙は純例示的であると解されるべきであり、確定的なものではない。
【0008】
車両は路面車両例えば自動車、ただし例えば鉄道車両であってもよい。
【0009】
看視窓の実施形態では、視界を取巻く看視窓の区域が、窓加熱装置を持ち、即ち看視窓全体は視界外に窓加熱装置を備えていない。この実施形態の展開では、この区域が視界を取巻く条片であり、この条片が特に約5mm〜約30mmの幅bを持っている。
【0010】
1つの実施形態では、窓加熱装置が、視界の周りに特にメアンダ状に延びるように設けられる加熱導線を含んでいる。ここでメアンダ状とは、角を丸められて巻かれる経過を持つ形状を厳密に意味するのではなく、加熱導線と視界との間隔が部分的に交代する別の経過も意味する。その例は交代する長方形関数又は三角関数のような経過である。若干の実施形態が後述される。1つの実施形態例では、加熱導線が窓へ埋込まれる加熱線を含んでいる。別の実施形態例では、加熱導線が窓の表面に設けられ、加熱導線が特に接着又は印刷されている。
【0011】
加熱導線は例えば抵抗線であり、電流を印加されると熱くなり、それによりそれが設けられている窓ガラスを加熱するので、例えば氷を解かし去り、凝縮水を蒸発させて、少なくとも前記の障害の影響により妨げられた窓を通る看視が、看視窓の範囲で保証される。
【0012】
別の実施形態では、窓加熱装置の範囲において、窓に黒色印刷が設けられている。この黒色印刷は、光学装置における有害な側方散乱光が消失されるという効果も持っている。
【0013】
1つの実施形態では、看視窓上における光学装置の視範囲の投影に少なくとも近似的に一致する幾何学的形状を視界が持っている。この視範囲は、しばしば四角形底面を持つ角錐、又は光学装置例えばセンサ又はカメラからの間隔の増大と共に広がる円錐の形状を持っている。従って看視窓がシステムの光軸に対して直角である時、看視窓の視界が例えば四角形特に正方形又は円形の幾何学的形状を持つか、又は看視窓が、例えば前窓ガラスの場合のように光学装置の光軸に対して斜めになっている時、看視窓の視界は特に台形、楕円形又は卵形である。卵形は、特に1つの方向にますます延びる寸法を持つ楕円の形状を意味し、その延び係数は特に楕円の大きい主軸の方向に増大する。その例が以下に示されている。視界の範囲における窓の湾曲に応じて、この幾何学的形状は更に歪んでいてもよい。もちろん視界は視範囲の投影に必ずしも厳密に一致していなくてもよいが、前述した対象の特定の実施形態では、この投影の位置及び/又は大きさ及び/又は幾何学的形状に少なくとも合わされている。
【0014】
これに関し当業者にわかることは、看視窓に対して光学装置の与えられた配置において、看視窓上における光学装置の視範囲の投影が規定された視界内に完全にあるように、視界が大きさを定められ、かつ配置されねばならないことである。
【0015】
1つの実施形態では、看視窓が10cm×10cmより小さく特に5cm×5cmより小さい最大寸法の視界を持っている。この寸法は、特に窓の視界のそばに設けられる加熱装置が、加熱出力を限りなく増大することなしに、限られた作用範囲のみを持つことによって制約されている。
【0016】
看視窓は例えば窓ガラス特に車両の前窓ガラス又は後窓ガラスである。更にセンサ又はカメラのように光学系の光学装置用の覆い素子であってもよく、覆い素子は例えば前照灯ガラスであってもよく、その後に少なくとも1つの光学装置が設けられている。
【0017】
更に看視窓が特別に構成される覆い素子として、可視波長範囲において透明の意味で透き通ることを強制されない。使用事例に応じて、このような覆い素子は、赤外線又は紫外線の範囲でも透明性を持ち、色フィルタ機能を持ちかつ/又は帯域フィルタ機能、高域フィルタ機能、低域フィルタ機能等ですぐれている。1つの実施形態では、視界における透過特性が、残りの看視窓の透過特性とは相違している。
【0018】
ここに示される対象の上述した構成はもちろん互いに組合わせることもできる。
【0019】
上述した種類の看視窓を含む車両も説明され、保護を請求されている。
【0020】
この開示の対象は、更に少なくとも1つの光学装置例えば光センサ及び/又はカメラ、及び上述した種類の看視窓を含むセンサシステム及び/又は識別システムであり、窓の視界が光学装置例えばセンサ及び/又はカメラの視範囲用の妨げられない光路を提供するように、窓の視界が設定され、センサ及び/又はカメラが配置されている。この場合センサ又はカメラの視範囲の幾何学的形状、視範囲の方向に対する窓の配置及び場合によっては視界の重要な範囲における窓の湾曲から生じる窓の視界の上述した幾何学的形状も重要である。更に少なくとも1つのここに述べた少なくとも1つのセンサシステム及び/又は識別システムを含む車両も、説明されかつ保護を請求されている。
【0021】
本発明の別の利点及び使用可能性は、図面に示される実施例に関連して以下の説明から明らかになる。
【0022】
明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面において、後に示される符号のリストで使用される概念及び対応する符号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 保護を請求される対象を実現する装置を含む自動車の概略平面図を示す。
【図2】 特定の視範囲及び看視窓を持つ光学装置の配置の第1の例、及び看視窓に規定される視界を示す。
【図3】 特定の視範囲及び看視窓を持つ光学装置の配置の第2の例、及び看視窓に規定される視界を示す。
【図4】 図2の看視窓に上述した対象を実現する例を示す。
【図5】 図3の看視窓に上述した対象を実現する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
同じかつ/又は機能的に同じ素子は、以下同じ符号を持っている。以下に示す絶対値及び寸法表示は例示的な値にすぎず、このような次元に本発明を限定するものではない。
【0025】
ここに説明される対象を図解するために、図1に車両1が示されている。車両1は光学装置21を含む光センサシステム及び/又は識別システムを備えている。光学装置は例えば光センサ、画像検出装置例えばカメラ、又は夜間看視システム等のための光源である。光学装置は視範囲22を持ち、車両内部空間に設けられている。視範囲22内にある光学装置の光路は、車両の看視窓、この場合特に乗客空間の窓ガラス例えば前窓ガラス10を透過する。しかし前照灯ガラス、他の電灯覆い又は車体外板の適当な個所に設けられている光学装置の覆いのような他の覆いでもよい。前窓ガラス10の透過部としての視範囲22は視界11を規定する。断面が長方形、正方形又は広がる視範囲は、視範囲の中心軸線23に対して傾斜した看視窓に、図2に示すような台形状の視野を規定する。
【0026】
図2は断面が正方形の視範囲22を持つ光学装置21を示し、視範囲は視範囲の中心軸線23に沿って広がっている。看視窓10は、視範囲の軸線23に倒して90°とは異なる角101をなして傾斜している。それにより正方形の視範囲は、まず正方形として看視窓に表わされる。同時に視範囲は光学装置21から離れると共に広がる。それにより看視窓10に投影される視界の寸法は、看視窓の傾斜のため、Yで示す軸線の方向に減少し、看視窓上の視界は台形状である。なお軸線“Y”は単に例示的で仮想的である。即ちこの軸線は、看視窓10の面において、又は看視窓が湾曲している場合視範囲の中心軸線23が看視窓を貫通する所における接線として考えられねばならない。
【0027】
視界11の範囲における看視窓の湾曲の結果、視範囲の投影の適当な歪みが生じることは、当業者には直ちに明らかである。
【0028】
図3は断面が円形の視範囲22についてこれを示す。傾斜した看視窓10に投影する際、楕円が生じる。しかし視範囲の発散のため、楕円が歪まされて、光学装置21から大きく離れている看視窓の範囲における楕円の寸法が大きくなる。即ち生じる楕円は、視範囲の発散のため延ばされ、延びの率は、記入されているY軸線の負の“Y”方向に増大する。それにより卵形の投影従って卵形の視界が生じる。
【0029】
看視窓の湾曲の結果、視界11の範囲に投影及び視界11の幾何学的形状の適当な歪みが生じることは、当業者に全く疑いなく明らかである。
【0030】
図4は、ここに説明した対象の第1の実施形態の図を示す。看視窓10は、センサシステム及び/又は識別システムの光学装置の透視用視野11を持っている。視野を取巻いて、窓加熱装置15が設けられている。この例では、装置はガラス板に印刷又は接着されるか又はガラス板に埋込まれている加熱導線から成っている。加熱導線の接続点151が更に示されている。この接続点を介して電流を加熱導線15に通すことができ、それによりこれが暖められて、看視窓を加熱する。加熱装置の範囲において、ガラス板上にいわゆる海賊印刷もしばしば存在する。この海賊印刷は、実施形態に応じて、光学装置への散乱光の入射を減少するか又は防止するのに有効である。加熱導線は、視界の周りに、広い意味でメアンダ状に設けられている。メアンダは一般に巻かれたループ状配置を意味するけれども、この範囲においてメアンダという概念は、図4に示される導線経過の説明にも利用される。一般にこの開示の範囲内で″メアンダ状″は、最も広い意味に解すべきであり、視界から交代する間隔で視界の周りに設けられる加熱導線の経過を規定する。従って加熱装置15は、視界11を取巻く条片状区域に設けられて、これを直接加熱し、看視窓内の熱伝導により視界11も一緒に加熱される。それにより視界自体に自由な透視を妨げる加熱装置の素子を設けることなしに、視界11を例えば氷又は凝縮水なしにすることができる。視界11の加熱は熱伝導に基いているので、1つの実施形態では、視界の最大寸法SMAXは限定されている。視界11を包囲する被加熱区域は幅bを持っている。この幅が小さいほど、加熱装置が看視窓の外観及び視界11外の看視窓10の透視に及ぼす全影響が少ない。
【0031】
図5には、ここに示される種類の看視窓の別の例が示されている。視界の幾何学的形状は、ここでは図3に関して示したように、看視窓の後に断面が円形に広がる視範囲を持つ図示しない光学装置の配置から生じ、看視窓10は視範囲の軸線に対して直角でないように設けられている。従って視界は卵形であり、もっと精確には上述したように歪んだ楕円の形状を持っている。加熱装置は、再び特定の幅の条片状区域として、視界を包囲している。なお加熱される区域の幅は、図4の実施例においても幅が一定である必要がないように、必ずしも一定ではない。しかし視界を包囲する被加熱区域の幅が一定であるような加熱装置の配置は、不適当な実施形態では全くない。加熱装置はここでも再び線であり、視界を包囲する区域で看視窓に接着又は印刷されるか、看視窓に埋め込まれるか、又は他の適当なやり方で設けられている。
【0032】
図5の実施例では、加熱導線がジグザグ状に設けられている。この開示の範囲内で、この配置は広い意味でメアンダ状とも解される。ここでも加熱装置の範囲に黒色印刷を容易に設けることができる。
【0033】
上述した実施形態は、視界の図示した幾何学的形状とは異なるものに直ちに転用可能である。なお加熱装置により包囲される範囲は、いかなる細部でも、視界の幾何学的形状又は光学装置の視範囲の投影の幾何学的形状に従う必要はない。同様に本発明の範囲内で、看視窓が上述したように加熱装置により包囲される複数の視界を含むような実施形態も設けることができ、これらの視界は異なる幾何学的形状及び/又はスペクトル透過特性を直ちに持つことができる。
【0034】
1つの実施形態では、加熱装置により包囲される看視窓の範囲が特定の寸法だけ視界より大きいことも全く可能である。他方加熱装置により覆われる範囲が有効な看視窓又は看視窓への光学装置の視範囲の投影へはまり込んで、光学系又は光学装置の能力を低下させないようにする。
【0035】
更に再度強調すべきことは、看視窓が必ずしも乗客空間の窓でなくてもよいことである。例えばそれが電灯覆い又は特に光学装置の覆いとして設けられている構造素子であってもよい。窓は光の可視スペクトルの透過の意味において光学的に透明でなくてもよい。光学系に合わせて、窓がスペクトル的に選択的な透過を示してもよい。透明が可視スペクトル内になくて、例えば赤外線範囲にあってもよい。後者は妨害光を消すために、夜間看視装置において利用可能である。
【0036】
特に視界におけるスペクトル透過特性は、他の窓のスペクトル透過特性又は看視窓に設けられる他の視界のスペクトル透過特性と相違していてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
10 看視窓、前窓ガラス
11 視界
15 加熱装置、加熱導線、加熱線
21 光学装置
22 光学装置の視範囲
23 視範囲の中心軸線
101 角
151 接続点
b 加熱される範囲の幅
SMAX 最大寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にある光センサシステム及び/又は光識別システム用看視窓であって、看視窓内に光学系の少なくとも1つの視界(11)が規定されているものにおいて、視界を取巻く窓加熱装置(15)が設けられ、視界自体は組込み素子又は取付け素子なしに構成されていることを特徴とする、看視窓。
【請求項2】
視界を取巻く看視窓の区域が、窓加熱装置を持っていることを特徴とする、請求項1に記載の看視窓。
【請求項3】
区域が視界を取巻く条片であり、この条片が特に約5mm〜約30mmの幅bを持っていることを特徴とする、請求項2に記載の看視窓。
【請求項4】
窓加熱装置(15)が、視界(11)の周りに特にメアンダ状に延びるように設けられる加熱導線を含んでいることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の看視窓。
【請求項5】
加熱導線が窓へ埋込まれる加熱線を含んでいることを特徴とする、請求項4に記載の看視窓。
【請求項6】
加熱導線が窓の表面に設けられ、加熱導線が特に接着又は印刷されていることを特徴とする、請求項4に記載の看視窓。
【請求項7】
窓加熱装置の範囲において、窓に黒色印刷が設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の看視窓。
【請求項8】
視界が次の形状を持ち、即ち四角形特に正方形、円形、台形、楕円形、卵形であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の看視窓。
【請求項9】
視界の寸法(SMAX)が約5cm×5cmより小さいことを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の看視窓。
【請求項10】
窓ガラス特に車両(1)の前窓ガラス又は後窓ガラスとしての、先行する請求項の1つに記載の看視窓。
【請求項11】
覆い素子としての先行する請求項の1つに記載の看視窓。
【請求項12】
光装置(21)特に光センサ及び/又はカメラ、及び先行する請求項の1つに記載の看視窓(10)を含むセンサシステム及び/又は識別システムであって、窓の視界が光学装置の視範囲(22)用の妨げられない光路を提供する、センサシステム及び/又は識別システム。
【請求項13】
請求項1〜11の1つに記載の少なくとも1つの看視窓(10)を含む車両。
【請求項14】
請求項12に記載の少なくとも1つのセンサシステム及び/又は識別システムを含む車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−534588(P2010−534588A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518489(P2010−518489)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001213
【国際公開番号】WO2009/012771
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(504087204)アーデーツエー・オートモテイブ・デイスタンス・コントロール・システムズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (33)
【Fターム(参考)】