説明

車両のエンジン制御装置

【課題】アクセルとブレーキの両方が踏み込まれたときにエンジンの出力を制限する出力制限制御を実行するシステムの安全性を向上させる。
【解決手段】アクセルセンサ31とブレーキスイッチ32の出力信号に基づいて、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行するシステムにおいて、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた場合でも、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態で、運転者により所定の減速要求操作(例えば、エンジンスイッチ34の操作、パーキングブレーキの操作、ブレーキの更なる踏み込み操作のうちの少なくとも1つ)が行われたと判定されたときには、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態)になったときにエンジンの出力を制限する機能を備えた車両のエンジン制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
運転者が間違えてアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏み込むことに起因する車両の暴走を防ぐことを目的として、例えば、特許文献1(特開2005−291030号公報)には、ブレーキペダルの踏み込み量が所定値(意図的なアクセルペダル及びブレーキペダルの同時踏み込みに対応した値)以上であるときに、エンジンを強制的にアイドル状態にすることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特表平2−502558号公報)には、ブレーキとアクセルが同時に操作されたときに駆動出力を所定の小さい値に減少させる安全回路において、ブレーキの操作が検出されても、運転者が新たにアクセルペダルを踏み込んだことをアクセルセンサの出力の時間微分値により検出したときには、安全回路を作動させないようにすることが記載されている。
【0004】
また、特許文献3(US6881174号公報)には、ブレーキとアクセルが同時に操作されたときにそれぞれの操作量に基づいてブレーキ要求がアクセル要求より大きいと判断した場合に、エンジン出力を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291030号公報
【特許文献2】特表平2−502558号公報
【特許文献3】US6881174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、坂道発進時(特に牽引時の坂道発進や急勾配の坂道発進時)には、車両の後退を防ぐために、運転者がブレーキを踏み込みながらアクセルを踏み込んで坂道発進する場合がある。また、ダウンシフト時のクラッチミート回転数合わせのために、いわゆるヒール・アンド・トゥによりブレーキを踏み込みながらアクセルを踏み込む場合がある。このように運転者が意図的にブレーキとアクセルの両方を踏み込んだ場合でも、従来技術では、運転者の意図に反してエンジンの出力が抑制されてしまう可能性がある。
【0007】
この対策として、本出願人は、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときにはエンジンの出力を制限する出力制限制御を実行するが、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときには出力制限制御を実行しないシステムを研究しているが、その研究過程で次のような新たな課題が判明した。
【0008】
例えば、フロアマットの引っ掛かり等によりブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた状態になってアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった場合には、車両の暴走に至る可能性があり、このような場合に、出力制限制御が実行されないと、安全性を十分に確保することができない。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれたときに出力制限制御を実行するシステムの安全性を向上させることができる車両のエンジン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の駆動源としてエンジンを搭載した車両のエンジン制御装置において、アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、所定の前提条件が成立した上でアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になったときにエンジンの出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段と、運転者により所定の減速要求操作が行われたか否かを判定する減速要求操作判定手段とを備え、出力制御手段は、前提条件が不成立の場合でもアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態で減速要求操作が行われたと判定されたときに出力制限制御を実行するようにしたものである。
【0011】
この構成では、前提条件が成立した上でアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になったときに出力制限制御を実行するシステムにおいて、前提条件が不成立の場合でもアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態で減速要求操作が行われたと判定されたときには、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御を実行することができるため、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれたときに出力制限制御を実行するシステムの安全性を向上させることができる。
【0012】
この場合、請求項2のように、エンジンを始動・停止するためのエンジンスイッチを備えたシステムでは、エンジンスイッチの操作が行われた場合に減速要求操作が行われたと判定するようにしても良い。このようにすれば、運転者がエンジンを停止させて車両を減速させるためにエンジンスイッチの操作を行った場合に、減速要求操作が行われたと判定することができる。
【0013】
また、請求項3のように、パーキングブレーキの操作を検出するパーキングブレーキ操作検出手段を備えたシステムでは、パーキングブレーキの操作が行われた場合に減速要求操作が行われたと判定するようにしても良い。このようにすれば、運転者が車両を減速させるためにパーキングブレーキの操作を行った場合に、減速要求操作が行われたと判定することができる。
【0014】
更に、請求項4のように、ブレーキの更なる踏み込み操作が行われた場合に減速要求操作が行われたと判定するようにしても良い。このようにすれば、運転者が車両を減速させるためにブレーキの更なる踏み込み操作を行った場合に、減速要求操作が行われたと判定することができる。
【0015】
また、本発明は、請求項5のように、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になったときにエンジンの出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段と、運転者により所定の減速要求操作が行われたか否かを判定する減速要求操作判定手段とを備え、出力制御手段は、アクセル操作が検出された状態で減速要求操作が行われたと判定されたときに出力制限制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になったときに出力制限制御を実行するシステムにおいて、ブレーキ操作が検出されていなくても、アクセル操作が検出された状態で減速要求操作が行われたと判定されたときは、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御を実行することができるため、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれたときに出力制限制御を実行するシステムの安全性を向上させることができる。
【0016】
この場合も、請求項6のように、エンジンスイッチの操作が行われた場合に減速要求操作が行われたと判定するようにしても良い。また、請求項7のように、パーキングブレーキの操作が行われた場合に減速要求操作が行われたと判定するようにしても良い。
【0017】
更に、請求項8のように、減速要求操作が行われたと判定して出力制限制御を実行した後にアクセルの更なる踏み込み操作が行われたときに出力制限制御を停止するようにしても良い。このようにすれば、運転者が意図的にアクセルを踏み込んだため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、出力制限制御を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は実施例1の実行条件判定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3はブレーキ後判定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4は出力制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は実施例1の出力制限制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図6】図6は実施例2の実行条件判定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
車両には、駆動源として内燃機関であるエンジン11が搭載されている。このエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0021】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各気筒の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0022】
一方、エンジン11の排気管23には、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0023】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、ノッキングを検出するノックセンサ27が取り付けられている。また、クランク軸28の外周側には、クランク軸28が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ29が取り付けられ、このクランク角センサ29の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0024】
車両には、アクセル操作量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ31(アクセル操作検出手段)と、ブレーキ操作/解除に応じてオン/オフするブレーキスイッチ32(ブレーキ操作検出手段)と、パーキングブレーキ(図示せず)の作動/解除に応じてオン/オフするパーキングブレーキスイッチ33(パーキングブレーキ操作検出手段)等が搭載されている。また、車両の運転席には、エンジン11を始動・停止するためのエンジンスイッチ34が設けられている。このエンジンスイッチ34は、例えばプッシュボタン式の操作部によってオン/オフされる。
【0025】
これら各種センサやスイッチの出力は、電子制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。その際、ECU30は、アクセルセンサ31で検出したアクセル開度(アクセル操作量)に基づいてスロットル開度(吸入空気量)等を制御してエンジン11の出力を制御する。
【0026】
また、ECU30は、エンジン停止中にエンジンスイッチ34がオンされると、イグニッションスイッチ(図示せず)をオンしてエンジン11を始動させる。そして、車両の停車中(エンジン11のアイドル運転中)にエンジンスイッチ34がオンされると、イグニッションスイッチをオフしてエンジン11を停止させる。
【0027】
また、ECU30は、後述する図2乃至図4の出力制御用の各ルーチンを実行することで出力制御手段として機能し、アクセルセンサ31とブレーキスイッチ32の出力信号に基づいて、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作と同時か又はアクセル操作の後にブレーキ操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になったと判断したときに、エンジン制御用のアクセル開度(エンジン11の制御に使用するアクセル開度)を制限することで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。この場合、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれることが特許請求の範囲でいう前提条件に相当する。
【0028】
更に、前提条件が不成立の場合(例えばブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた場合)でも、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)で運転者により所定の減速要求操作(例えばエンジンスイッチ34の操作)が行われたと判定されたときには、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御を実行する。
以下、本実施例1でECU30が実行する図2乃至図4の出力制御用の各ルーチンの処理内容を説明する。
【0029】
[実行条件判定ルーチン]
図2に示す実行条件判定ルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、アクセルON(アクセルセンサ31で検出した実アクセル開度が所定値以上)且つブレーキON(ブレーキスイッチ32がオン)であるか否かを判定し、アクセルON且つブレーキONではないと判定された場合には、ステップ106に進み、出力制限制御実行フラグをOFF(オフ)にリセットして、本ルーチンを終了する。
【0030】
一方、上記ステップ101で、アクセルON且つブレーキONであると判定された場合には、ステップ102に進み、アクセルの更なる踏み込み操作が行われたか否かを、例えば、アクセルセンサ31で検出した実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値以上であるか否かによって判定し、アクセルの更なる踏み込み操作が行われたと判定された場合には、運転者が意図的にアクセルを踏み込んだため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、ステップ106に進み、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0031】
一方、上記ステップ102で、アクセルの更なる踏み込み操作が行われていないと判定された場合には、ステップ103に進み、ブレーキ後判定フラグがON(オン)であるか否かを判定する。このブレーキ後判定フラグは、後述する図3のブレーキ後判定ルーチンによってONにセット又はOFFにリセットされる。
【0032】
このステップ103で、ブレーキ後判定フラグがONであると判定された場合には、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作と同時か又はアクセル操作の後にブレーキ操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になったと判断して、ステップ105に進み、出力制限制御実行フラグをONにセットして、本ルーチンを終了する。
【0033】
一方、上記ステップ103で、ブレーキ後判定フラグがOFFであると判定された場合には、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた(ブレーキ操作の後にアクセル操作が検出された)と判断して、ステップ104に進み、運転者により所定の減速要求操作が行われたか否かを判定する。ここで、減速要求操作として、例えば、次の(1) 〜(3) の操作が行われたか否かを判定する。
【0034】
(1) エンジンスイッチ34の操作
(2) パーキングブレーキの操作
(3) ブレーキの更なる踏み込み操作
【0035】
上記(1) のエンジンスイッチ34の操作を判定する場合には、例えば、エンジンスイッチ34がOFFからON(又はONからOFF)に切り替わったときに、エンジンスイッチ34の操作が行われたと判定する。或は、所定期間内にエンジンスイッチ34がOFFからON(又はONからOFF)に切り替わった回数が所定回数以上になったときに、エンジンスイッチ34の操作が行われたと判定するようにしても良い。また、エンジンスイッチ34のON状態が所定時間以上継続したときに、エンジンスイッチ34の操作が行われたと判定するようにしても良い。更に、所定期間内にエンジンスイッチ34のON状態が所定時間以上継続した回数が所定回数以上になったときに、エンジンスイッチ34の操作が行われたと判定するようにしても良い。
【0036】
上記(2) のパーキングブレーキの操作を判定する場合には、例えば、パーキングブレーキスイッチ33がOFFからONに切り替わったときに、パーキングブレーキの操作が行われたと判定する。或は、パーキングブレーキスイッチ33がOFFからONに切り替わった後にそのON状態が所定時間以上継続したときに、パーキングブレーキの操作が行われたと判定するようにしても良い。
【0037】
上記(3) のブレーキの更なる踏み込み操作を判定する場合には、例えば、ブレーキ油圧(例えばブレーキマスターシリンダ内の油圧)を検出する油圧センサを備えたシステムでは、ブレーキ油圧が所定値未満の状態から所定値以上になったときに、ブレーキの更なる踏み込み操作が行われたと判定する。或は、ブレーキ油圧の増加速度が所定値以上になったときに、ブレーキの更なる踏み込み操作が行われたと判定するようにしても良い。また、ブレーキ操作量(例えばブレーキペダルの踏み込み量)を検出するブレーキセンサを備えたシステムでは、ブレーキ操作量が所定値未満の状態から所定値以上になったときに、ブレーキの更なる踏み込み操作が行われたと判定する。或は、ブレーキ操作量の増加速度が所定値以上になったときに、ブレーキの更なる踏み込み操作が行われたと判定するようにしても良い。
【0038】
上記(1) 〜(3) の操作のうちのいずれか1つでも行われた場合には、減速要求操作が行われたと判定するが、上記(1) 〜(3) の操作が全て行われていない場合には、減速要求操作が行われていないと判定する。尚、減速要求操作が行われたか否かを判定する方法は、適宜変更しても良く、例えば、上記(1) 〜(3) の操作のうちの1つ又は2つのみを判定するようにしても良い。このステップ104の処理が特許請求の範囲でいう減速要求操作判定手段としての役割を果たす。
【0039】
このステップ104で、減速要求操作が行われていないと判定された場合には、エンジン出力を抑制する必要がないと判断して、ステップ106に進み、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0040】
一方、上記ステップ104で、減速要求操作が行われたと判定された場合には、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、ステップ105に進み、出力制限制御実行フラグをONにセットして、本ルーチンを終了する。
【0041】
[ブレーキ後判定ルーチン]
図3に示すブレーキ後判定ルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、アクセルONと同時か又はアクセルON後にブレーキOFF(ブレーキスイッチ32がオフ)からブレーキONに切り替わったか否かを判定し、アクセルONと同時か又はアクセルON後にブレーキOFFからブレーキONに切り替わったと判定された場合には、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれた(アクセル操作と同時か又はアクセル操作の後にブレーキ操作が検出された)と判断して、ステップ203に進み、ブレーキ後判定フラグをONにセットして、本ルーチンを終了する。
【0042】
一方、上記ステップ201で「No」と判定された場合には、ステップ202に進み、ブレーキON後にアクセルOFF(アクセルセンサ31で検出した実アクセル開度が所定値よりも小さい)からアクセルONに切り替わったか否かを判定し、ブレーキON後にアクセルOFFからアクセルONに切り替わったと判定された場合には、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた(ブレーキ操作の後にアクセル操作が検出された)と判断して、ステップ204に進み、ブレーキ後判定フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0043】
[出力制御ルーチン]
図4に示す出力制御ルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、出力制限制御実行フラグがONにセットされているか否かを判定する。
【0044】
このステップ301で、出力制限制御実行フラグがOFFであると判定された場合には、ステップ302に進み、通常出力制御を実行する。この通常出力制御では、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)を、そのままエンジン制御用のアクセル開度として採用し、このエンジン制御用のアクセル開度(=実アクセル開度)を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0045】
一方、上記ステップ301で、出力制限制御実行フラグがONにセットされていると判定された場合には、ステップ303に進み、出力制限制御を実行する。この出力制限制御では、エンジン制御用のアクセル開度を制限値(例えばアイドル運転時よりも少し大きいアクセル開度)まで減少させ、このエンジン制御用のアクセル開度を用いてエンジン11の出力を制御することで、エンジン11の出力を制限する。ここで、制限値は、出力制限制御開始時の車速(又は現在の車速)に応じてマップ等により算出する。
【0046】
尚、通常出力制御から出力制限制御へ移行する際に、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度から制限値へ徐々に変化(減少)させるようにしても良い。また、出力制限制御から通常出力制御へ移行する際に、エンジン制御用のアクセル開度を制限値から実アクセル開度へ徐々に変化(増加)させるようにしても良い。
【0047】
以上説明した本実施例1の出力制限制御の実行例を図5のタイムチャートを用いて説明する。
図5の例では、まず、時刻t1 で、運転者がアクセルを踏み込んで車両を発進させ、その後、時刻t2 で、運転者がブレーキを踏み込んでブレーキスイッチ32がONされる。これにより、アクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態となったため、出力制限制御実行フラグをONにセットして、エンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させることで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。
【0048】
この後、時刻t3 で、運転者がブレーキ操作を解除してブレーキスイッチ32がオフされると、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させることで、通常出力制御に復帰する。
【0049】
この後、時刻t4 で、運転者がアクセル操作を解除してアクセル全閉状態となった後、時刻t5 で、運転者がブレーキを踏み込んでブレーキスイッチ32がONされ、その後、時刻t6 で、運転者がアクセルを踏み込むことで、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態となるが、この場合、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれたため、出力制限制御実行フラグがOFFに維持されて、出力制限制御が実行されず、通常出力制御が継続される。
【0050】
この後、時刻t7 で、運転者によりエンジンスイッチ34がONされると、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた場合でも、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態で運転者により減速要求操作(エンジンスイッチ34の操作)が行われたため、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御実行フラグをONにセットして、エンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させることで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。
【0051】
この後、時刻t8 で、運転者がブレーキ操作を解除してブレーキスイッチ32がオフされると、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させることで、通常出力制御に復帰する。
【0052】
以上説明した本実施例1では、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行するシステムにおいて、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた場合でも、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態で運転者により減速要求操作(例えばエンジンスイッチ34の操作)が行われたと判定されたときには、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御を実行するようにしたので、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれたときに出力制限制御を実行するシステムの安全性を向上させることができる。
【0053】
尚、上記実施例1では、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに出力制限制御を実行するシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、他の前提条件(例えば、車速が所定値以上、エンジン回転速度が所定値以上等)が成立した上でアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに出力制限制御を実行するシステムに本発明を適用しても良い。
【実施例2】
【0054】
次に、図6を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0055】
本実施例2では、ECU30により後述する図6の実行条件判定ルーチンを実行することで、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行し、更に、ブレーキが踏み込まれていなくても、アクセルが踏み込まれた状態で運転者により所定の減速要求操作(例えばエンジンスイッチ34の操作)が行われたと判定されたときには、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御を実行する。
【0056】
図6に示す実行条件判定ルーチンでは、まず、ステップ401で、ブレーキONであるか否かを判定し、ブレーキONであると判定された場合には、ステップ402に進み、アクセルONであるか否かを判定する。このステップ402で、アクセルOFFであると判定された場合には、ステップ408に進み、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0057】
一方、上記ステップ401でブレーキONであると判定され且つ上記ステップ402でアクセルONであると判定された場合には、ステップ403に進み、アクセルの更なる踏み込み操作が行われたか否かを判定し、アクセルの更なる踏み込み操作が行われたと判定された場合には、運転者が意図的にアクセルを踏み込んだため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、ステップ408に進み、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0058】
一方、上記ステップ403で、アクセルの更なる踏み込み操作が行われていないと判定された場合には、ステップ404に進み、ブレーキ後判定フラグがONであるか否かを判定する。このブレーキ後判定フラグは、前述した図3のブレーキ後判定ルーチンによってONにセット又はOFFにリセットされる。
【0059】
このステップ404で、ブレーキ後判定フラグがONであると判定された場合には、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作と同時か又はアクセル操作の後にブレーキ操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になったと判断して、ステップ407に進み、出力制限制御実行フラグをONにセットして、本ルーチンを終了する。
【0060】
一方、上記ステップ404で、ブレーキ後判定フラグがOFFであると判定された場合には、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた(ブレーキ操作の後にアクセル操作が検出された)と判断して、ステップ406に進み、運転者により所定の減速要求操作が行われたか否かを判定する。ここで、減速要求操作として、例えば、次の(1) ,(2) の操作が行われたか否かを判定する。
(1) エンジンスイッチ34の操作
(2) パーキングブレーキの操作
【0061】
上記(1) ,(2) の操作のうちのいずれか一方でも行われた場合には、減速要求操作が行われたと判定するが、上記(1) ,(2) の操作が両方とも行われていない場合には、減速要求操作が行われていないと判定する。尚、減速要求操作が行われたか否かを判定する方法は、適宜変更しても良く、例えば、上記(1) ,(2) の操作のうちの一方のみを判定するようにしても良い。
【0062】
このステップ406で、減速要求操作が行われていないと判定された場合には、エンジン出力を抑制する必要がないと判断して、ステップ408に進み、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0063】
一方、上記ステップ406で、減速要求操作が行われたと判定された場合には、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、ステップ407に進み、出力制限制御実行フラグをONにセットして、本ルーチンを終了する。
【0064】
これに対して、上記ステップ401で、ブレーキOFFであると判定された場合には、ステップ405に進み、アクセルONであるか否かを判定する。このステップ405で、アクセルOFFであると判定された場合には、ステップ408に進み、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0065】
一方、上記ステップ401でブレーキOFFであると判定され且つ上記ステップ405でアクセルONであると判定された場合には、ステップ406に進み、運転者により所定の減速要求操作が行われたか否かを判定する。
【0066】
このステップ406で、減速要求操作が行われていないと判定された場合には、エンジン出力を抑制する必要がないと判断して、ステップ408に進み、出力制限制御実行フラグをOFFにリセットして、本ルーチンを終了する。
【0067】
一方、上記ステップ406で、減速要求操作が行われたと判定された場合には、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、ステップ407に進み、出力制限制御実行フラグをONにセットして、本ルーチンを終了する。
【0068】
以上説明した本実施例2では、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行するシステムにおいて、ブレーキが踏み込まれていなくても、アクセルが踏み込まれた状態で運転者により減速要求操作(例えばエンジンスイッチ34の操作)が行われたと判定されたときには、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、出力制限制御を実行するようにしたので、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれたときに出力制限制御を実行するシステムの安全性を向上させることができる。
【0069】
尚、上記実施例2では、アクセルの踏み込みと同時か又はアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに出力制限制御を実行するシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、他の前提条件(例えば、車速が所定値以上、エンジン回転速度が所定値以上等)が成立した上でアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに出力制限制御を実行するシステムや、アクセルとブレーキの踏み込み順序に拘らずアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったときに出力制限制御を実行するシステムに本発明を適用しても良い。
【0070】
また、上記各実施例1,2では、モータ等のスロットルアクチュエータでスロットルバルブの開度を制御する電子スロットルを備えたシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、アクセルペダルとスロットルバルブを機械的に連結したメカスロットルを備えたシステムに本発明を適用しても良く、この場合、出力制限制御の際には、例えば、燃料噴射量等を制限することでエンジン11の出力を制限する。
【0071】
また、上記各実施例1,2では、ブレーキ操作検出手段として、ブレーキスイッチを備えたシステムに本発明を適用したが、これ限定されず、ブレーキスイッチに代えて、ブレーキ操作量を検出するブレーキセンサを備えたシステムに本発明を適用しても良い。
【0072】
その他、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0073】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管、30…ECU(出力制御手段,減速要求操作判定手段)、31…アクセルセンサ(アクセル操作検出手段)、32…ブレーキスイッチ(ブレーキ操作検出手段)、33…パーキングブレーキスイッチ(パーキングブレーキ操作検出手段)、34…エンジンスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源としてエンジンを搭載した車両のエンジン制御装置において、
アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、
ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
所定の前提条件が成立した上で前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になったときに前記エンジンの出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段と、
運転者により所定の減速要求操作が行われたか否かを判定する減速要求操作判定手段とを備え、
前記出力制御手段は、前記前提条件が不成立の場合でも前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態で前記減速要求操作が行われたと判定されたときに前記出力制限制御を実行することを特徴とする車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジンを始動・停止するためのエンジンスイッチを備え、
前記減速要求操作判定手段は、前記エンジンスイッチの操作が行われた場合に前記減速要求操作が行われたと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
パーキングブレーキの操作を検出するパーキングブレーキ操作検出手段を備え、
前記減速要求操作判定手段は、前記パーキングブレーキの操作が行われた場合に前記減速要求操作が行われたと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記減速要求操作判定手段は、ブレーキの更なる踏み込み操作が行われた場合に前記減速要求操作が行われたと判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項5】
車両の駆動源としてエンジンを搭載した車両のエンジン制御装置において、
アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、
ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になったときに前記エンジンの出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段と、
運転者により所定の減速要求操作が行われたか否かを判定する減速要求操作判定手段とを備え、
前記出力制御手段は、前記アクセル操作が検出された状態で前記減速要求操作が行われたと判定されたときに前記出力制限制御を実行することを特徴とする車両のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記エンジンを始動・停止するためのエンジンスイッチを備え、
前記減速要求操作判定手段は、前記エンジンスイッチの操作が行われた場合に前記減速要求操作が行われたと判定することを特徴とする請求項5に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項7】
パーキングブレーキの操作を検出するパーキングブレーキ操作検出手段を備え、
前記減速要求操作判定手段は、前記パーキングブレーキの操作が行われた場合に前記減速要求操作が行われたと判定することを特徴とする請求項5又は6に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記出力制御手段は、前記減速要求操作が行われたと判定して前記出力制限制御を実行した後にアクセルの更なる踏み込み操作が行われたときに前記出力制限制御を停止することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122363(P2012−122363A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272182(P2010−272182)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】