説明

車両のガスタンク取り付け構造

【課題】左右一対のホイールハウスインナパネル間の荷室スペースを広くすることができて、荷室に大きな荷物を収容することができる車両のガスタンク取り付け構造を提供する。
【解決手段】燃料ガスを貯留するガスタンク1を車両の後部に固定してある車両のガスタンク取り付け構造であって、ガスタンク1を軸芯が上下方向に沿う縦姿勢にしてホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間に固定し、ガスタンク1にリング部材10を外嵌し、リング部材10に設けた一対の取り付け部11をホイールハウスインナパネル3とバックパネル4に各別に取り付け固定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
燃料ガスを貯留するガスタンクを車両の後部に固定してある車両のガスタンク取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス等の燃料ガスで走行する車両には燃料ガスが貯留されたガスタンクが搭載される。従来、上記の車両のガスタンク取り付け構造では、特許文献1に開示されているように、ガスタンクを後部座席の後方の荷室フロアに軸芯が左右方向に沿う横向き姿勢にして載置固定してあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−186741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、ガスタンクを後部座席の後方の荷室フロアに横向き姿勢に載置固定してあったために、左右一対のホイールハウスインナパネル間の荷室スペースが狭くなって大きな荷物を荷室に収容することが困難になっていた。
本発明の目的は、左右一対のホイールハウスインナパネル間の荷室スペースを広くすることができて、荷室に大きな荷物を収容することができる車両のガスタンク取り付け構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
燃料ガスを貯留するガスタンクを車両の後部に固定してある車両のガスタンク取り付け構造であって、
前記ガスタンクを軸芯が上下方向に沿う縦姿勢にしてホイールハウスインナパネルとバックパネルの間に固定してある点にある。(請求項1)
【0006】
請求項1の構成によれば、ガスタンクを軸芯が上下方向に沿う縦姿勢にしたことで、ガスタンクが占める荷室フロア上の面積を小さくすることができ、さらに、左右一対のホイールハウスインナパネル間の荷室スペースに比べて面積が小さいホイールハウスインナパネルとバックパネルの間にもガスタンクを配置できるようになる。
そして、前記縦姿勢のガスタンクをホイールハウスインナパネルとバックパネルの間に固定してあるから、左右一対のホイールハウスインナパネル間の荷室スペースを従来の構造に比べて広くすることができて、荷室に大きな荷物を収容することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記ガスタンクにリング部材を外嵌し、前記リング部材に設けた一対の取り付け部を前記ホイールハウスインナパネルとバックパネルに各別に取り付け固定してあると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記ガスタンクに外嵌したリング部材の一対の取り付け部をホイールハウスインナパネルとバックパネルに各別に取り付け固定してあるから、ガスタンクを強固に車体に固定することができる。
しかも、バックパネルとホイールハウスインナパネルを車両前後方向でリング部材を介して連結することができ、バックパネルの剛性を向上させて車両の後部にバックドア用の大きな開口を形成したことに起因する車両の後部の剛性の低下を防止することができて、車両の後部の剛性を向上させることができる。(請求項2)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、左右一対のホイールハウスインナパネル間の荷室スペースを広くすることができて、荷室に大きな荷物を収容することができる車両のガスタンク取り付け構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両のガスタンク取り付け構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に燃料ガスとしてのCNG(圧縮天然ガス)を貯留するガスタンク1を自動車の後部に固定した自動車のガスタンク取り付け構造を示してある。
【0012】
ガスタンク1は外径に比べて軸芯方向の長さが長い金属製の円筒状のタンクであり、タンク内に天然ガスが加圧されて貯留されている。ガスタンク1の径は全長にわたって一定に設定されている。このガスタンク1を軸芯が上下方向に沿う縦姿勢(鉛直姿勢)にして、後部座席の後方の荷室2の右側に配置された右後輪用のホイールハウスインナパネル3の後方で、ホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間に配置され、ホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の車幅方向の一端部(右端部)との間に固定してある。
【0013】
ホイールハウスインナパネル3はクオータインナパネル5の車幅方向内側W1のパネル面よりも車幅方向内側W1に膨出している。バックパネル4は荷室2の後壁を形成する。このバックパネル4にバックドア用の開口6が形成されている。また、クオータインナパネル5の車両前方側Frにリヤドア用の開口7が形成されている。ホイールハウスインナパネル3とバックパネル4は離間しており、それらの間の荷室フロア8は下方に屈曲し、クオータインナパネル5とともに荷室フロア面から下方に窪んだ空間が形成されている。
【0014】
ガスタンク1の下端は荷室フロア8の面から下方に窪んだ空間内に位置してガスタンク1の容量を確保し、上端は荷室フロア8と天井との間のほぼ中央に位置して後方の視界を確保している。つまり、ガスタンク1の全長は荷室2の高さのほぼ1/2に設定されている。ガスタンク1の底部は支持部材(図示せず)を介して荷室フロア8の窪んだ空間内に載置されている。ガスタンク1の底部を荷室フロア8から浮き上がらせてあってもよい。
【0015】
そして、車両前後方向視でガスタンク1の車幅方向外側W2の外周面がクオータインナパネル5の車幅方向内側W1のパネル面に近接し、ガスタンク1の車幅方向内側W1の外周面がホイールハウスインナパネル3の車幅方向内側W1のパネル面とほぼ同一位置に位置している。つまり、ガスタンク1は、ホイールハウスインナパネル3の後部とバックパネル4の間の車幅方向外側W2に拡大された荷室に配置されている。車両前後方向視でガスタンク1の車幅方向内側W1の外周面がホイールハウスインナパネル3の車幅方向内側W1のパネル面よりも車幅方向外側W2に位置していてもよい。
【0016】
ガスタンク1のガス給排口はガスタンク1の軸芯方向の一端部である下端部(底部)に形成されて、給排管9が給排口から荷室フロア8の下方に延びている。
【0017】
また、ガスタンク1に上下一対のリング状のスチールベルト10(リング部材に相当)を外嵌固定し、上側のスチールベルト10に設けた車両前方側Frに延びる取り付け部11をリアピラーインナリンフォース12の取り付けフランジ12Fにボルト固定してある。
そして、下側のスチールベルト10に設けた車両前方側Frに延びる取り付け部11をホイールハウスインナパネル3の取り付けフランジにボルト固定してある。
さらに、上側のスチールベルト10と下側のスチールベルト10にそれぞれ設けた車両後方側Rrに延びる取り付け部11をバックパネル4の車両前方側Frのパネル面に、後述のL字形のブラケット25を介して取り付け固定してある。
各取り付け部11は車幅方向を向く取り付け面を有する板状に形成されて取り付け部11の幅方向の両端部(上下両端部)に補強リブ11Rが折曲形成されている。
【0018】
リアピラーインナリンフォース12はホイールハウスインナパネル3の上方に位置して、クオータインナパネル5の車幅方向内側W1のパネル面よりも荷室2の車幅方向内側W1に膨出している。リアピラーインナリンフォース12の取り付けフランジ12Fとホイールハウスインナパネル3の取り付けフランジはクオータインナパネル5の車幅方向内側W1のパネル面に重なって溶接接合されている。
【0019】
前記スチールベルト10は周方向で分断された一対の分割ベルト13から成る。この分割ベルト13は、ガスタンク1に外嵌する半円形状の嵌合部14と、嵌合部14の周方向の両端部から径方向外方側にそれぞれ延びる延出部15とを備えている。
そして、一対の分割ベルト13の嵌合部14をガスタンク1に外嵌して各分割ベルト13の延出部15同士を嵌合部14の両側でそれぞれ重ね合わせ、互いに重なった延出部15同士をボルト連結してスチールベルト10をガスタンク1に外嵌固定してある。
【0020】
互いに重なった一対の延出部15のうち一方の延出部15は車両前後方向でガスタンク1とは反対側(ガスタンク1の径方向外方側)に他方の延出部15よりも突出し、その突出部を前記取り付け部11として構成してある。
【0021】
上側のスチールベルト10の嵌合部14から車両前方側Frに延びる取り付け部11は、リアピラーインナリンフォース12の取り付けフランジ12Fに車幅方向内側W1から重なっている。そして、車幅方向内側W1から取り付けボルトBを取り付け部11と取り付けフランジ12Fのボルト挿通孔に挿通させ、取り付けフランジ12Fの裏側のナットに螺合してある。
【0022】
下側のスチールベルト10の嵌合部14から車両前方側Frに延びる取り付け部11は、ホイールハウスインナパネル3の取り付けフランジに車幅方向内側W1から重なっている。そして、車幅方向内側W1から取り付けボルトBを取り付け部11と取り付けフランジのボルト挿通孔に挿通させ、取り付けフランジの裏側のナットに螺合してある。
【0023】
上側のスチールベルト10の嵌合部14から車両後方側Rrに延びる取り付け部11は、バックパネル4の車両前方側Frのパネル面に溶接固着された上下一対のL字形のブラケット25のうち、上側のL字形のブラケット25の車両前方側Frに延びる一片25Aに車幅方向内側W1から重なっている。そして、車幅方向内側W1から取り付けボルトBを取り付け部11と前記一片25Aのボルト挿通孔に挿通させ、前記一片25Aの裏側のナットに螺合してある。
【0024】
下側のスチールベルト10の嵌合部14から車両後方側Rrに延びる取り付け部11は、バックパネル4の車両前方側Frのパネル面に溶接固着された上下一対のL字形のブラケット25のうち、下側のL字形のブラケット25の車両前方側Frに延びる一片25Aに車幅方向内側W1から重なっている。そして、車幅方向内側W1から取り付けボルトBを取り付け部11と前記一片25Aのボルト挿通孔に挿通させ、前記一片25Aの裏側のナットに螺合してある。
【0025】
前記ガスタンク1を自動車の後部に次のようにして固定する。
(1) ガスタンク1を車両に搭載する前にガスタンク1に上下一対のスチールベルト10をそれぞれ車体側の取り付け位置に合わせて組付ける。
つまり、上側のスチールベルト10(及び下側のスチールベルト10)の一対の分割ベルト13の嵌合部14をガスタンク1に外嵌して各分割ベルト13の延出部15同士を嵌合部14の両側でそれぞれ重ね合わせ、互いに重なった延出部15同士をボルト連結してスチールベルト10をガスタンク1に組付ける。
(2) 上下一対のスチールベルト10の車両前方側Frに延びる取り付け部11をリアピラーインナリンフォース12の取り付けフランジ12Fとホイールハウスインナパネル3の取り付けフランジに車幅方向内側W1から重ね各別にボルト固定する。
(3) 上下一対のスチールベルト10の車両後方側Rrに延びる取り付け部11を、バックパネル4の車両前方側Frのパネル面に溶接固着した上下一対のL字形のブラケット25の車両前方側Frに延びる一片25Aに車幅方向内側W1から重ね各別にボルト固定する。
【0026】
本発明の構成によれば、ガスタンク1を軸芯が上下方向に沿う縦姿勢にしたことで、ガスタンク1が占める荷室フロア上の面積を小さくすることができ、さらに、左右一対のホイールハウスインナパネル3間の荷室スペースに比べて面積が小さいホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間にガスタンク1を配置できるようになる。
そして、前記縦姿勢のガスタンク1をホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間に配置固定してあるから、ホイールハウスインナパネル3の後方の空間を有効活用して左右一対のホイールハウスインナパネル3間の荷室スペースを広くすることができて、荷室2に大きな荷物を収容することができる。
【0027】
また、ガスタンク1に外嵌したスチールベルト10の一対の取り付け部11をホイールハウスインナパネル3とバックパネル4に各別に取付けボルトBで取り付け固定してあるから、ガスタンク1を強固に車体に固定することができる。
しかも、バックパネル4とホイールハウスインナパネル3を車両前後方向でスチールベルト10を介して連結することができ、バックパネルの剛性を向上させて車両の後部にバックドア用の開口6を形成したことに起因する車両の後部の剛性の低下を防止することができて、車両の後部の剛性を向上させることができる。
【0028】
[別実施形態]
(1) 上記の実施形態では、右側のホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間にだけガスタンク1を固定したが、左側のホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間にも別のガスタンク1をさらに固定して、合計2本のガスタンク1を車両の後部に固定してあってもよい。また、左側のホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間にだけガスタンク1を固定してあってもよい。
【0029】
(2) 左右一対のホイールハウスインナパネル3の間に前記ガスタンク1の一部が位置していてもよい。
この構造の場合も、ホイールハウスインナパネル3とバックパネル4の間にガスタンク1を固定してあるので、例えば、左右一対のホイールハウスインナパネル3の間にだけガスタンク1を配置した従来の構造よりも、左右一対のホイールハウスインナパネル3の間の荷室スペースを広くすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ガスタンク
3 ホイールハウスインナパネル
4 バックパネル
10 リング部材(リング状のスチールベルト)
11 取り付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを貯留するガスタンクを車両の後部に固定してある車両のガスタンク取り付け構造であって、
前記ガスタンクを軸芯が上下方向に沿う縦姿勢にしてホイールハウスインナパネルとバックパネルの間に固定してある車両のガスタンク取り付け構造。
【請求項2】
前記ガスタンクにリング部材を外嵌し、前記リング部材に設けた一対の取り付け部を前記ホイールハウスインナパネルとバックパネルに各別に取り付け固定してある請求項1記載の車両のガスタンク取り付け構造。


【図1】
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