説明

車両のハンドル取り付け構造

【課題】部品点数を増加せずに、ハンドル高さ調整をきわめて簡易にかつ正確に行うことができる車両のハンドル取り付け構造を提供する。
【解決手段】車体フレーム2前端のステアリングシャフト40Aに連結されたトップブリッジ41に連結カラー43を介してハンドル4を連結した車両のハンドル取り付け構造である。連結カラー43が上面および下面にハンドル4を支持可能な支持面を備え、連結カラー43を反転して装着することで、ハンドル4の支持面の高さを可変にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングシャフトに連結されたトップブリッジにカラーを介してハンドルを連結した車両のハンドル取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車体フレーム前端のステアリングシャフトに連結されたトップブリッジに、例えば各々一対のねじ棒体およびナットを介してハンドルバーを支持し、一対のねじ棒体の突出量の調整によりハンドルバーの高さ調整を可能にした車両のハンドル取り付け構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−91273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来のハンドル取り付け構造では、一対のねじ棒体およびナットが左右一対設けられているため、ハンドルの左右高さを正確に合わせることに多大な手間がかかっていた。また、一対のねじ棒体およびナット等が必要になるため、部品点数が増大していた。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、部品点数を増加せずに、ハンドル高さ調整をきわめて簡易にかつ正確に行うことができる車両のハンドル取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、車体フレーム前端のステアリングシャフトに連結されたトップブリッジに連結カラーを介してハンドルを連結した車両のハンドル取り付け構造において、前記連結カラーが上面および下面に各々ハンドルを支持可能な支持面を備え、前記連結カラーを反転して装着することにより、前記ハンドルの支持面の高さを可変に構成したことを特徴とする。
【0006】
この発明では、連結カラーが上面および下面に各々ハンドルを支持可能な支持面を備えるため、この連結カラーを上下に反転してトップブリッジに装着しても、必ず連結カラーの上面には、いずれかの支持面が位置し、この支持面に対し、ハンドルの取り付けが可能になる。そして、本構成では、連結カラーを上下に反転して装着した場合、その支持面の高さが変化するため、ハンドルの高さ調整をきわめて簡易にかつ正確に行うことができ、しかも、連結カラーを用いて高さ調整が可能なため、部品点数の増加もない。
【0007】
この場合において、左右一対のハンドルに対応する各連結カラーを左右一体化してもよい。連結カラーが一つの部材で形成されるため、部品点数を低減でき、しかも左右でハンドル高さに違いが発生せず、左右の高さ調整を行う必要がない。また、前記ハンドルは前記連結カラーの側方を覆う延長部を一体に備えてもよい。この構成では、延長部が連結カラーの側方を覆うため、連結カラーが外観されにくくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、連結カラーを上下に反転してトップブリッジに装着しても、必ず連結カラーの上面には、いずれかの支持面が位置し、この支持面に対し、ハンドルの取り付けが可能になると共に、連結カラーを上下に反転して装着した場合には、その支持面の高さが変化するため、ハンドルの高さ調整をきわめて簡易にかつ正確に行うことができ、連結カラーを用いての高さ調整であるため、部品点数の増加もない。
また、左右一対のハンドルに対応する各連結カラーを左右一体化すれば、連結カラーが一つの部材で形成されるため、部品点数を低減でき、しかも左右でハンドル高さに違いが発生せず、左右の高さ調整を行う必要がない。
さらに、ハンドルは連結カラーの側方を覆う延長部を一体に備えれば、延長部が連結カラーの側方を覆うため、連結カラーが外観されにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を添付した図面を参照しながら説明する。
図1において、自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前端部に回動可能に支持された左右一対のフロントフォーク3と、これらフロントフォーク3の上端部に取り付けられた操舵用のハンドル4と、フロントフォーク3に回転自在に支持された前輪5と、車体フレーム2に揺動可能に支持されたリヤフォーク(スイングアーム)6と、このリヤフォーク6の後端部に回転自在に支持された後輪7と、車体フレーム2に支持されたエンジン8と、車体フレーム2の上部に配設された燃料タンク9と、この燃料タンク9の後方に設けられ運転者が着座する運転者用シート10と、運転者用シート10の後方に設けられ乗員が着座する乗員用シート11と、運転者用ステップ12と、乗員用ステップ13と、車体後部の左右に取り付けられているサイドトランク14と、車体のほぼ全体を覆うカウリング15とを備えている。33はスタンドである。エンジン8の気筒部には排気管8Aが接続し、それぞれは下方に延びてからエンジン8下方にて屈曲し、その後方に配置されたマフラ8Bに接続する。
【0010】
カウリング15は、車体前部を覆いその上端面が車体フレーム2のメインフレーム16に沿っているフロントカウル17と、シート10,11の下の部分である車体後部を覆うリヤカウル18とを備えている。フロントカウル17は、車体前端に設けられたアッパーカウル19と、エンジン8の側部を覆うミドルカウル20と、エンジン8の下部を覆うアンダーカウル21とを備えている。
【0011】
フロントカウル17のうち、高さ方向中央部には第1開口部22が形成され、下部には第2開口部23が形成され、各開口部22及び23のそれぞれを介してカウリング内部と外部との間で空気(走行風)が出入りする。
第1開口部22からはエンジン8のヘッドカバーが露出し、また、フロントカウル17のうちミドルカウル20の前方にはカウリング内に走行風を取り入れるための走行風取入口20Aが設けられ、ミドルカウル20の下部左右には車体外側に膨出する膨出パネル20Bが設けられている。
【0012】
アッパーカウル19の内側には、速度計やエンジン回転計等が取り付けられたメータユニット(不図示)が配置されている。また、アッパーカウル19の前面には前照灯24が設けられ、アッパーカウル19の両側面にはバックミラーカバー25が膨出するように設けられ、バックミラーカバー25の内部にはバックミラーが設けられている。バックミラーカバー25は、フロントカウル17の側面に設けられた凹状の係止部とバックミラーカバー25に設けられた凸部とを係合することにより、フロントカウル17に取り付けられている。バックミラーカバー25の各前面には方向指示器26が設けられている。また、アッパーカウル19の上部には、前方視野用のための透明合成樹脂製のウインドスクリーン27が設けられている。
【0013】
リヤカウル18は、シート10,11の下方から後方に亘って形成され、その後部にはシート11の後方部分に設けられたリヤキャリア18Aを有している。リヤカウル18の後端には、後輪7の上方後部を覆うリヤフェンダ7Aが取り付けられている。
【0014】
前輪5は、軸心に車軸28aが設けられたホイール28の外周にタイヤ29が装着されてなるもので、車軸28aの左右両側が各フロントフォーク3下端部に支持される。この左右のフロントフォーク3には、前輪5の上方を覆うフロントフェンダ5Aが取り付けられ、前輪5のホイール28の左右両側には、フロントディスクブレーキ装置30を構成するブレーキディスク30Aがホイール28と同軸的かつ一体に固定される。フロントディスクブレーキ装置30は、このブレーキディスク30Aと、ブレーキディスク30Aを挟んでその回転を摩擦力により制動するブレーキキャリパ30Bとを有する。
【0015】
後輪7は前輪5と同様に、軸心に車軸31Aが設けられたホイール31と、ホイール31の外周に装着されたタイヤ32とを有している。そして、車軸31Aがリヤフォーク6の後端に片持ち式に支持されることにより、リヤフォーク6と一体に揺動するようになっている。
後輪7にも、前輪5のフロントディスクブレーキ装置30と同様の、ブレーキディスク、ブレーキキャリパからなるリヤディスクブレーキ装置が装備されているが、ここではその説明を図示と共に省略している。
【0016】
図2、図3は、ハンドル4の取り付け部の拡大図である。
上記車体フレーム2は左右一対のメインフレーム2Aを備え、一対のメインフレーム2Aの前端にはヘッドパイプ40が溶接で連結されている。このヘッドパイプ40にはステアリングシャフト40Aが貫通し、ステアリングシャフト40Aの上端が、トップブリッジ41に連結されている。このトップブリッジ41の両端には、図4に示すように、割形の開口部41Aが形成され、各開口部41Aには、上述したフロントフォーク3の上端が挿入され、その端部がボルト40Bで連結されている。
【0017】
各ハンドル4は、一対の別体の左右ハンドル部4A,4Bからなり、左右ハンドル部4A,4Bは、トップブリッジ41の上面に左右対称に取り付けられている。
上記ハンドル4は、図2、図3に示すように、連結カラー43を介してトップブリッジ41に連結されている。図2は、ハンドル4が、トップブリッジ41の上面を基準に低い位置に取り付けられた状態、図3は、ハンドル4が、高い位置に取り付けられた状態を示す。また、図5は、図2に対応し、ハンドル4が、トップブリッジ41の上面を基準に低い位置に取り付けられた状態、図6は、図3に対応し、ハンドル4が、高い位置に取り付けられた状態を示す。
【0018】
トップブリッジ41の上面には、図5に示すように、左右一対の凸部41A,41Bが一体に形成され、凸部41A,41Bの上面には、連結カラー43が連結されている。この連結カラー43は、左右のハンドル部4A,4Bを跨ぐように、平面視(図4)で蝶が両羽根を広げたように、左右対称に形成されている。また、連結カラー43は、凸部41A,41Bに対応した一対のボス部43A,43Bと、各ボス部43A,43Bを一体に連結する平板状の連結体43Cと、連結体43Cの合計6カ所(後述するボルト46の本数に対応)の上面および下面に形成され、他の板面より一段わずかに高く形成されたハンドル支持面43D,43Eとを備えて構成されている。ハンドル支持面43Dが第一支持面を構成し、ハンドル支持面43Eが第二支持面を構成する。
【0019】
ボス部43A,43Bには、図5に示すように、ハンドル支持面43D,43Eを基準に上下に突出した第一突出部43A1、43B1と第二突出部43A2、43B2とが形成され、図中で上に突出した第一突出部43A1、43B1の寸法L1が、下に突出した第二突出部43A2、43B2の寸法L2より大きく形成されている。連結カラー43のボス部43A,43Bには、貫通孔43F,43Gが形成され、貫通孔43F,43Gの上方から上記ボルト47が挿入され、このボルト47はトップブリッジ41の凸部41A,41Bを貫通して下方に突出し、ワッシャ51を挟んでナット53によって一体化されている。なお、L4はハンドル支持面43D,43E(第一支持面と第二支持面)間の厚さ寸法である。
凸部41A,41Bには貫通孔41C,41Dが形成され、この貫通孔41C,41Dには、圧入された鋳管製の管ブッシュ42を介してカラー部45が嵌合し、このカラー部45に上記ボルト47が貫通している。
【0020】
上記連結カラー43の第一支持面43Dには、各々別体に形成された左右一対のハンドル部4A,4Bが各々3本のボルト46(図4)を介して取り付けられている。このハンドル部4A,4Bの下面には、カラー取り付け用ボルト47の頭部が収納される袋状の凹所4Cが形成されている。凹所4Cの深さL3は、図6と比較して、連結カラー43を図5の状態、すなわち第一突出部43A1、43B1を上側にして取り付けた場合に、第一突出部43A1、43B1およびボルト47の頭部を収納できる深さに設定されている。また、ハンドル部4A,4Bには、ハンドル部4A,4Bを取り付けた状態で、連結カラー43のボス部43A,43Bの側方を覆う延長部4Dが一体に形成されている。本構成では、延長部4Dが連結カラー43のボス部43A,43Bの側方を覆うため、ボス部43A,43Bが外観されにくい。
【0021】
連結カラー43はアルミニウム鋳造製で軽量化が図られており、左右一対のボス部43A,43Bの上端面および下端面、並びに第一支持面43Dおよび第二支持面43Eが、機械切削加工されている。本構成では、各ハンドル部4A,4Bに対応するボス部43A,43Bを左右一体化したため、カラーを別体で形成したものと比較した場合、部品点数が低減し、しかも、左右でハンドル高さにほとんど違いが発生しないため、左右のハンドル高さずれに関する微調整が不要になる。
【0022】
図2、図5では、ハンドル4が、低い位置に取り付けられており、これを高い位置に変更する場合には、まず、各々3本のボルト46を外し、左右一対のハンドル部4A,4Bを取り外す。ついで、カラー取り付け用ボルト47を外し、蝶形の連結カラー43を取り外し、この連結カラー43を上下反転し、図3、図6に示すように、再び、カラー取り付け用ボルト47により、トップブリッジ41に装着し、各3本のボルト46を用いて、左右一対のハンドル部4A,4Bを固定する。
【0023】
図5では、連結カラー43の連結体43Cの高さ位置が、トップブリッジ41の凸部41A,41Bの上面を基準に、第二突出部43A2、43B2の寸法L2に対し、厚さ寸法L4を加えた位置にあって、この連結体43Cの第一支持面43Dにハンドル部4A,4Bが装着される。これに対し、図6では、連結カラー43の連結体43Cの高さ位置が、トップブリッジ41の凸部41A,41Bの上面を基準に、第一突出部43A1、43B1の寸法L1に対し、厚さ寸法L4を加えた位置にあって、この連結体43Cの第二支持面43Eにハンドル部4A,4Bが装着される。そのため、当該ハンドル部4A,4Bの支持面の高さは、高い位置と低い位置との二段階に亘って可変とすることができる。
【0024】
本実施の形態では、連結カラー43が上下端に各々ハンドル部4A,4Bを支持可能な支持面43D,43Eを備えるため、この連結カラー43を上下に反転してトップブリッジ41に装着しても、必ず連結カラー43の上端には、いずれかの支持面43D,43Eが位置し、この支持面43D,43Eに対し、ハンドル4の取り付けが可能になる。そして、本構成では、連結カラー43を上下に反転して装着した場合、図5、図6に示すように、その支持面43D,43Eの高さが変化するため、ハンドル4の高さ調整をきわめて簡易にかつ正確に行うことができ、しかも、連結カラー43を用いての高さ調整が可能なため、部品点数の増加もない。
【0025】
また、上述したように、一対のハンドル部4A,4Bに対応する連結カラー43を左右一体化したため、連結カラー43が一つの部材で形成されることにより、部品点数を低減でき、しかも左右でハンドル高さに違いが発生せず、左右の高さ調整を行う必要がなく、簡単に高さ調整が可能になる。
【0026】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態について説明したが、本発明は、係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。本発明では、連結カラーを反転して取り付けた場合に、これに取り付くハンドル高さが変化すればよいのであって、連結カラーがいわゆるトップブリッジに直接取り付けられていなくてもよい。また、凹所4Cは袋状でなく、貫通した孔であってもよい。上記構成では、自動二輪車について説明したが、これに限定せず、例えば4輪の不整地走行車両など、ハンドル高さを可変したい車種に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の自動二輪車の一実施形態を示す全体概略側面図である。
【図2】ハンドルを低く取り付けた状態を示す図である。
【図3】ハンドルを高く取り付けた状態を示す図である。
【図4】ハンドルの取り付け状態を示す平面図である。
【図5】ハンドルを低く取り付けた状態を示す断面図である。
【図6】ハンドルを高く取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
2A メインフレーム
4 ハンドル
4A,4B ハンドル部
5 前輪
7 後輪
40 ヘッドパイプ
40A ステアリングシャフト
41 トップブリッジ
43 連結カラー
43 ボス部
43C 連結体
43D 第一支持面
43E 第二支持面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム前端のステアリングシャフトに連結されたトップブリッジに連結カラーを介してハンドルを連結した車両のハンドル取り付け構造において、
前記カラーが上面および下面に各々ハンドルを支持可能な支持面を備え、前記連結カラーを反転して装着することにより、前記ハンドルの支持面の高さを可変に構成したことを特徴とする車両のハンドル取り付け構造。
【請求項2】
左右一対のハンドルに対応する各連結カラーを左右一体化したことを特徴とする請求項1に記載の車両のハンドル取り付け構造。
【請求項3】
前記ハンドルは前記カラーの側方を覆う延長部を一体に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のハンドル取り付け構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−276505(P2007−276505A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101395(P2006−101395)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】