説明

車両のピラー部構造

【課題】ピラーのインナパネルへのガーニッシュ、ワイヤハーネス、および水ホースの組付作業が容易にできるようにする。
【解決手段】車両のピラー部構造は、ピラー4のインナパネル9を覆うガーニッシュ11と、インナパネル9に形成され、ガーニッシュ11用の係止突起12を嵌入させる第1係止孔13と、インナパネル9とガーニッシュ11との間の空間14に配設されるワイヤハーネス17および水ホース20と、インナパネル9に形成され、ワイヤハーネス17および水ホース20用の各係止突起23,27を嵌入させる第2、第3係止孔24,28とを備える。第1係止孔13、水ホース20、およびワイヤハーネス17を、この順序で、インナパネル9の幅方向Wに並設する。ピラー4の長手方向Lで、第2、第3係止孔24,28を互いに近傍に配置すると共に、第2、第3係止孔24,28の間に第1係止孔13を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラーとこのピラーを車体内部側から覆うガーニッシュとの間の空間に、水ホースとワイヤハーネスとを配設した車両のピラー部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両のピラー部構造に相当するものには、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両のピラー部構造は、互いに対面するアウタ、インナパネルの接合により形成されるピラーと、このピラーのインナパネルを車体内部側から覆うガーニッシュと、上記インナパネルに形成され、上記ガーニッシュから突出した係止突起を嵌入させて係止させる第1係止孔と、上記ピラーに沿って延び、上記インナパネルとガーニッシュとの間の空間に配設されるワイヤハーネスと、上記インナパネルに形成され、上記ワイヤハーネス側から突出した係止突起をそれぞれ嵌入させて係止させる第2係止孔とを備えている。
【0003】
また、従来、上記したインナパネルとガーニッシュとの間の空間に、上記ワイヤハーネスに加えて、ウィンドシールド用ワイパーに供給される水を送水する水ホースを配設したものがある。そして、この場合、上記水ホース側から突出した係止突起を嵌入させて係止させる第3係止孔が上記インナパネルに形成される。
【0004】
ここで、上記ピラーのインナパネルに上記ガーニッシュ、ワイヤハーネス、および水ホースを組み付ける際の組付作業は、通常、次のように行なわれる。
【0005】
即ち、まず、上記インナパネルの第2、第3係止孔に、上記ワイヤハーネスおよび水ホース側から突出した各係止突起をそれぞれ嵌入させて係止させる。すると、上記インナパネルにワイヤハーネスおよび水ホースが組み付けられる。次に、上記ガーニッシュが上記ワイヤハーネスおよび水ホースを車体内部側から覆うよう設定し、かつ、上記ガーニッシュから突出した係止突起を上記インナパネルの第1係止孔に嵌入させて係止させる。すると、上記インナパネルにガーニッシュも組み付けられて、上記空間に上記ワイヤハーネスと水ホースとが配設された状態となり、もって、上記組付作業が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−18835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した組付作業では、次のような問題点がある。
【0008】
即ち、上記インナパネルにワイヤハーネスおよび水ホースを組み付けた場合、上記ワイヤハーネスは可撓性があって撓み易いものである。このため、この撓みにより生じた弛み部分が上記第1係止孔側に向かって変位するおそれがある。そして、この変位が生じた場合には、その後、ガーニッシュを組み付けようとして、このガーニッシュから突出した係止突起を上記第1係止孔に嵌入させようとするとき、上記ワイヤハーネスの弛み部分が上記した係止突起の嵌入を邪魔するおそれがある。
【0009】
そこで、第1に、上記第1係止孔に係止突起を嵌入させるに際し、上記第1係止孔から上記ワイヤハーネスの弛み部分を離反させてやることが考えられる。しかし、これでは、上記組付作業が煩雑になる。
【0010】
また、第2に、上記ワイヤハーネス側から突出する係止突起と、この係止突起を嵌入させて係止させる上記第2係止孔とを、上記ピラーの長手方向で短い所定ピッチで、より多く設定することが考えられる。しかし、このようにすると、車両のピラー部構造の部品点数が増加して、その構成が複雑になると共に、上記第2係止孔が上記ピラーのインナパネルに、より多く形成される分、このインナパネルの剛性が低下しがちになるという不都合が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両のピラー部構造の構成部品であるピラーのインナパネルに、ガーニッシュ、ワイヤハーネス、および水ホースを組み付ける組付作業をする場合に、この組付作業が容易にできるようにし、かつ、この組付作業の容易化が簡単な構成で達成できるようにすると共に、上記インナパネルの剛性が良好なままに維持されるようにすることである。
【0012】
請求項1の発明は、互いに対面するアウタ、インナパネル8,9の接合により形成されるピラー4と、このピラー4のインナパネル9を車体2内部側から覆うガーニッシュ11と、上記インナパネル9に形成され、上記ガーニッシュ11から突出した係止突起12を嵌入させて係止させる第1係止孔13と、上記ピラー4に沿って延び、上記インナパネル9とガーニッシュ11との間の空間14に配設されるワイヤハーネス17および水ホース20と、上記インナパネル9に形成され、上記ワイヤハーネス17および水ホース20側から突出した各係止突起23,27をそれぞれ嵌入させて係止させる第2、第3係止孔24,28とを備えた車両のピラー部構造において、
上記第1係止孔13、水ホース20、およびワイヤハーネス17を、この順序で、上記インナパネル9の幅方向Wに並設し、
上記ピラー4の長手方向Lで、上記第2、第3係止孔24,28を互いに近傍に配置すると共に、これら第2、第3係止孔24,28の間に上記第1係止孔13を配置したことを特徴とする車両のピラー部構造である。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、互いに対面するアウタ、インナパネルの接合により形成されるピラーと、このピラーのインナパネルを車体内部側から覆うガーニッシュと、上記インナパネルに形成され、上記ガーニッシュから突出した係止突起を嵌入させて係止させる第1係止孔と、上記ピラーに沿って延び、上記インナパネルとガーニッシュとの間の空間に配設されるワイヤハーネスおよび水ホースと、上記インナパネルに形成され、上記ワイヤハーネスおよび水ホース側から突出した各係止突起をそれぞれ嵌入させて係止させる第2、第3係止孔とを備えた車両のピラー部構造において、
上記第1係止孔、水ホース、およびワイヤハーネスを、この順序で、上記インナパネルの幅方向に並設し、
上記ピラーの長手方向で、上記第2、第3係止孔を互いに近傍に配置すると共に、これら第2、第3係止孔の間に上記第1係止孔を配置している。
【0016】
ここで、上記ピラーのインナパネルに上記ガーニッシュ、ワイヤハーネス、および水ホースを組み付ける際の組付作業は、通常、次のように行なわれる。
【0017】
即ち、まず、上記インナパネルの第2、第3係止孔に、上記ワイヤハーネスおよび水ホース側から突出した各係止突起をそれぞれ嵌入させて係止させる。すると、上記インナパネルにワイヤハーネスおよび水ホースが組み付けられる。次に、上記ガーニッシュが上記ワイヤハーネスおよび水ホースを車体内部側から覆うよう設定し、かつ、上記ガーニッシュから突出した係止突起を上記インナパネルの第1係止孔に嵌入させて係止させる。すると、上記インナパネルにガーニッシュも組み付けられて、上記空間に上記ワイヤハーネスと水ホースとが配設された状態となり、もって、上記組付作業が終了する。
【0018】
上記の場合、前記発明によれば、第1係止孔、水ホース、およびワイヤハーネスを、この順序で、上記インナパネルの幅方向に並設している。
【0019】
ここで、上記水ホースはその内部の水の水圧に耐える必要上、上記ワイヤハーネスよりも大きい剛性を有している。このため、上記組付作業において、インナパネルにワイヤハーネスおよび水ホースを組み付けたとき、仮に、上記ワイヤハーネスが撓み易くて、この撓みにより生じた弛み部分が上記第1係止孔側に向かって変位しようとしても、この変位は上記水ホースによって防止される。
【0020】
しかも、前記発明によれば、ピラーの長手方向で、上記第2、第3係止孔を互いに近傍に配置すると共に、これら第2、第3係止孔の間に上記第1係止孔を配置している。
【0021】
このため、上記組付作業において、インナパネルにワイヤハーネスおよび水ホースを組み付けたとき、上記各係止突起によりインナパネル側に係止された上記ワイヤハーネスおよび水ホースの各部分の近傍部はそれぞれ撓み量が小さく抑制されることから、上記ワイヤハーネスと水ホースとのそれぞれ撓みによる弛み部分が上記第1係止孔側に向かって変位することは未然に防止される。
【0022】
よって、上記インナパネルにワイヤハーネスおよび水ホースを組み付けた後に、ガーニッシュを組み付けようとして、このガーニッシュから突出した係止突起を上記第1係止孔に嵌入させるとき、上記ワイヤハーネスおよび水ホースの弛み部分が上記第1係止孔への係止突起の嵌入を邪魔することは防止される。この結果、上記した第1係止孔へのガーニッシュの係止突起の嵌入が容易かつ円滑にできて、上記組付作業が容易にできる。
【0023】
また、上記した組付作業の容易化は、上記ガーニッシュ、ワイヤハーネス、および水ホースの配置の工夫と、各係止突起および第1〜第3係止孔の配置の工夫とで達成されるのであり、つまり、上記各係止突起および第1〜第3係止孔の数の増加を抑制して達成できることから、上記組付作業の容易化は、簡単な構成で達成される。また、上記したように、第1〜第3係止孔の数の増加を抑制できる分、上記インナパネルの剛性の低下が防止されて、この剛性が良好なままに維持される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図3のI部拡大断面図である。
【図2】車両の全体側面図である。
【図3】フロントピラーを車体内部側から見た側面図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の車両のピラー部構造に関し、車両のピラー部構造の構成部品であるピラーのインナパネルに、ガーニッシュ、ワイヤハーネス、および水ホースを組み付ける組付作業をする場合に、この組付作業が容易にできるようにし、かつ、この組付作業の容易化が簡単な構成で達成できるようにすると共に、上記インナパネルの剛性が良好なままに維持されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0026】
即ち、車両のピラー部構造は、互いに対面するアウタ、インナパネルの接合により形成されるピラーと、このピラーのインナパネルを車体内部側から覆うガーニッシュと、上記インナパネルに形成され、上記ガーニッシュから突出した係止突起を嵌入させて係止させる第1係止孔と、上記ピラーに沿って延び、上記インナパネルとガーニッシュとの間の空間に配設されるワイヤハーネスおよび水ホースと、上記インナパネルに形成され、上記ワイヤハーネスおよび水ホース側から突出した各係止突起をそれぞれ嵌入させて係止させる第2、第3係止孔とを備えている。上記第1係止孔、水ホース、およびワイヤハーネスが、この順序で、上記インナパネルの幅方向に並設される。上記ピラーの長手方向で、上記第2、第3係止孔が互いに近傍に配置されると共に、これら第2、第3係止孔の間に上記第1係止孔が配置される。
【実施例】
【0027】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0028】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0029】
上記車両1の車体2の内部が車室3とされている。上記車体2は、その左右各側壁前部の骨格部材を構成するフロントピラー4を備えている。これら各ピラー4は後上方に向かって延び、車体2の前上部における上記左右ピラー4の間にフロントウィンド5が設けられる。また、車体2の前側部における上記各ピラー4の後側に、それぞれフロントサイドドア6が設けられる。また、車体2の後部の後面を形成するリヤウィンド7が設けられる。
【0030】
上記各ピラー4は、車体2の幅方向で互いに対面するアウタ、インナパネル8,9と、これら両パネル8,9の間に挟まれる補強パネル10とを備えている。これら各パネル8〜10の上端縁部同士と下端縁部同士とがそれぞれ互いに重ねられてスポット溶接Sされ、上記ピラー4は剛性の大きい中空閉断面構造とされている。
【0031】
上記ピラー4のインナパネル9を上記車体2内部の車室3側から覆う樹脂製のガーニッシュ11が設けられている。また、このガーニッシュ11の上記インナパネル9側の面からこのインナパネル9に向かって一体的に突出する係止突起12が設けられている。この係止突起12は、上記ピラー4の長手方向Lに所定ピッチで複数(3つ)設けられている。また、上記インナパネル9には、上記各係止突起12をそれぞれ嵌入させて係止させる複数(3つ)の第1係止孔13が形成されている。上記インナパネル9とガーニッシュ11との間には、上記ピラー4の長手方向Lに向かって延びる長尺の空間14が形成されている。
【0032】
車体2の前部内にバッテリ15が設けられる。また、車体2における車室3の天井に天井ランプ16が設けられる。上記空間14には、上記ピラー4に沿って長く延びる可撓性のワイヤハーネス17が配設され、このワイヤハーネス17により不図示の制御装置を介し上記バッテリ15に上記天井ランプ16が接続される。そして、上記制御装置からの電力の供給により、天井ランプ16が車室3内を照射する。
【0033】
上記車体2の前部に水タンク18が設けられる一方、上記車体2の後部に、上記リヤウィンド7のウィンドシールドに指向するようウォッシャノズル19が設けられる。上記空間14には、上記ピラー4に沿って長く延びる可撓性の水ホース20が配設され、この水ホース20により上記水タンク18内が上記ウォッシャノズル19に連結される。そして、不図示の水ポンプの作動により、上記水タンク18内からウォッシャノズル19に水21が供給される。この水21は、上記ウォッシャノズル19を通して上記リヤウィンド7のウィンドシールドに散布され、不図示のワイパーと協同して、上記リヤウィンド7のウィンドシールドを清浄にする。
【0034】
上記水ホース20は塩化ビニル樹脂(PVC)製で、その内部を流れる水21からの水圧に耐える必要上、上記ワイヤハーネス17よりも大きい剛性を有している。
【0035】
上記ワイヤハーネス17の長手方向の中途部を挿入させてこの中途部を保持するバンド式のクリップ22と、このクリップ22(ワイヤハーネス17側)から上記インナパネル9に向かって一体的に突出する係止突起23とが設けられている。これらクリップ22および係止突起23は、上記ピラー4の長手方向Lに所定ピッチで複数(3つ)設けられている。また、上記インナパネル9には、上記各係止突起23をそれぞれ嵌入させて係止させる複数(3つ)の第2係止孔24が形成されている。
【0036】
上記ワイヤハーネス17および水ホース20の長手方向の各中途部を挿入させて、これら中途部を一体的に保持するクリップ26と、このクリップ26(ワイヤハーネス17および水ホース20側)から上記インナパネル9に向かって一体的に突出する係止突起27とが設けられている。これらクリップ26および係止突起27は、上記ピラー4の長手方向Lに所定ピッチで複数(3つ)設けられている。また、上記インナパネル9には、上記各係止突起27をそれぞれ嵌入させて係止させる複数(3つ)の第3係止孔28が形成されている。
【0037】
上記ピラー4の長手方向Lの各部において、上記第1係止孔13、水ホース20、およびワイヤハーネス17は、この順序で、上記インナパネル9の幅方向W(上下方向)の下側から上側に向けて並設されている。また、これと同様にして、第1係止孔13、第3係止孔28、および第2係止孔24は、この順序で並設されている。上記車両1が小型車である場合には、上記ピラー4の長手方向Lの各部横断面は小さいものである。このため、上記インナパネル9の幅方向Wの寸法も小さくなりがちである。よって、上記インナパネル9の幅方向Wにおける上記空間14の幅寸法も狭いことから、上記第1係止孔13、水ホース20、およびワイヤハーネス17は、上記インナパネル9の幅方向Wで互いに近傍に配置される。
【0038】
上記ピラー4の長手方向Lで、上記第2、第3係止孔24,28は互いに近傍に配置されている。また、上記ピラー4の長手方向Lで、上記第2、第3係止孔24,28の間に上記第1係止孔13が配置されている。このため、上記インナパネル9にほぼ直交するような視線で見れば(図1,2)、上記第1〜第3係止孔13,24,28は、これら13,24,28を結ぶ線が三角形状となるよう配置される。
【0039】
図1において、上記インナパネル9に対するワイヤハーネス17の係止用係止突起23および第2係止孔24と、ワイヤハーネス17および水ホース20の係止用係止突起27および第3係止孔28とは各形状が互いに相違させられており、上記第2係止孔24への上記ワイヤハーネス17および水ホース20用係止突起27の嵌入は可能であるが、上記第3係止孔28への上記ワイヤハーネス17用係止突起23の嵌入は不能とされている。これにより、上記インナパネル9へのワイヤハーネス17の誤組み付けが防止されている。
【0040】
ここで、上記ピラー4のインナパネル9に上記ガーニッシュ11、ワイヤハーネス17、および水ホース20を組み付ける際の組付作業は、通常、次のように行なわれる。
【0041】
即ち、まず、上記インナパネル9の第2、第3係止孔24,28に、上記ワイヤハーネス17および水ホース20側から突出した各係止突起23,27をそれぞれ嵌入させて係止させる。すると、上記インナパネル9にワイヤハーネス17および水ホース20が組み付けられる。次に、上記ガーニッシュ11が上記ワイヤハーネス17および水ホース20を車体2内部の車室3側から覆うよう設定し、かつ、上記ガーニッシュ11から突出した係止突起12を上記インナパネル9の第1係止孔13に嵌入させて係止させる。すると、上記インナパネル9にガーニッシュ11も組み付けられて、上記空間14に上記ワイヤハーネス17と水ホース20とが配設された状態となり、もって、上記組付作業が終了する。
【0042】
上記の場合、前記したように、第1係止孔13、水ホース20、およびワイヤハーネス17を、この順序で、上記インナパネル9の幅方向Wに並設している。
【0043】
ここで、上記水ホース20はその内部の水21の水圧に耐える必要上、上記ワイヤハーネス17よりも大きい剛性を有している。このため、上記組付作業において、インナパネル9にワイヤハーネス17および水ホース20を組み付けたとき、仮に、上記ワイヤハーネス17が撓み易くて、この撓みにより生じた弛み部分が上記第1係止孔13側に向かって変位しようとしても、この変位は上記水ホース20によって防止される。
【0044】
しかも、前記したように、ピラー4の長手方向Lで、上記第2、第3係止孔24,28を互いに近傍に配置すると共に、これら第2、第3係止孔24,28の間に上記第1係止孔13を配置している。
【0045】
このため、上記組付作業において、インナパネル9にワイヤハーネス17および水ホース20を組み付けたとき、上記各係止突起23,27によりインナパネル9側に係止された上記ワイヤハーネス17および水ホース20の各部分の近傍部はそれぞれ撓み量が小さく抑制されることから、上記ワイヤハーネス17と水ホース20とのそれぞれ撓みによる弛み部分が上記第1係止孔13側に向かって変位することは未然に防止される。
【0046】
よって、上記インナパネル9にワイヤハーネス17および水ホース20を組み付けた後に、ガーニッシュ11を組み付けようとして、このガーニッシュ11から突出した係止突起12を上記第1係止孔13に嵌入させるとき、上記ワイヤハーネス17および水ホース20の弛み部分が上記第1係止孔13への係止突起12の嵌入を邪魔することは防止される。この結果、上記した第1係止孔13へのガーニッシュ11の係止突起12の嵌入が容易かつ円滑にできて、上記組付作業が容易にできる。
【0047】
また、上記の場合、第3係止孔28に嵌入されて係止される係止突起27側には、上記ワイヤハーネス17および水ホース20が共に保持されるため、上記ワイヤハーネス17の弛み部分が上記第1係止孔13側に向かって変位することは、より確実に防止される。
【0048】
また、上記した組付作業の容易化は、上記ガーニッシュ11、ワイヤハーネス17、および水ホース20の配置の工夫と、各係止突起12,23,27および第1〜第3係止孔13,24,28の配置の工夫とで達成されるのであり、つまり、上記各係止突起12,23,27および第1〜第3係止孔13,24,28の数の増加を抑制して達成できることから、上記組付作業の容易化は、簡単な構成で達成される。また、上記したように、第1〜第3係止孔13,24,28の数の増加を抑制できる分、上記インナパネル9の剛性の低下が防止されて、この剛性が良好なままに維持される。
【0049】
そして、上記各作用効果は、車両1が小型車である場合など、上記インナパネル9の幅方向Wで、上記第1係止孔13、ワイヤハーネス17、および水ホース20を互いに近傍に配置せざるを得ない場合や、配置させたい場合に、特に有益である。
【0050】
具体的には、車両1が小型車であると、上記ピラー4の長手方向Lの各部横断面が小さくて、上記インナパネル9の幅方向Wの寸法は小さくなりがちである。この場合、上記インナパネル9の幅方向Wで、上記第1係止孔13、ワイヤハーネス17、および水ホース20を互いに大きく離間させることは困難であるため、互いに近傍に配置させることとなる。しかし、このようにした場合でも、上記構成によれば、上記組付作業は容易にできる。
【0051】
なお、以上は図示の例によるが、上記ピラー4はセンタピラーでもリアピラーでもよい。また、上記クリップ26は水ホース20のみを保持するものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
2 車体
3 車室
4 ピラー
8 アウタパネル
9 インナパネル
11 ガーニッシュ
12 係止突起
13 第1係止孔
14 空間
17 ワイヤハーネス
20 水ホース
21 水
22 クリップ
23 係止突起
24 第2係止孔
26 クリップ
27 係止突起
28 第3係止孔
L 長手方向
S スポット溶接
W 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対面するアウタ、インナパネルの接合により形成されるピラーと、このピラーのインナパネルを車体内部側から覆うガーニッシュと、上記インナパネルに形成され、上記ガーニッシュから突出した係止突起を嵌入させて係止させる第1係止孔と、上記ピラーに沿って延び、上記インナパネルとガーニッシュとの間の空間に配設されるワイヤハーネスおよび水ホースと、上記インナパネルに形成され、上記ワイヤハーネスおよび水ホース側から突出した各係止突起をそれぞれ嵌入させて係止させる第2、第3係止孔とを備えた車両のピラー部構造において、
上記第1係止孔、水ホース、およびワイヤハーネスを、この順序で、上記インナパネルの幅方向に並設し、
上記ピラーの長手方向で、上記第2、第3係止孔を互いに近傍に配置すると共に、これら第2、第3係止孔の間に上記第1係止孔を配置したことを特徴とする車両のピラー部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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