説明

車両のロックのための方法

【課題】手法的にも装置技術的にも少ないコストで車両の自動ドアロックを実現させ得る簡単な手段を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つのドアの開放状態が検出され、少なくとも1つのドアのロック状態が検出された場合には、車両から携帯型識別発信器に認証信号が伝送され、この場合携帯型識別発信器は前記認証信号によって車両のロックを許可され、前記携帯型識別発信器からは前記認証信号の受信後に1つ又は複数の問合せ信号が発信され、車両の側では前記問合せ信号の受信に応じて所定の強度を備えたそれぞれ応答信号が送信され、所定の数の問合せ信号に対してそのつどの応答信号が何も受信されなかった場合には、携帯型識別発信器から車両へロック信号が伝送されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のロックないしは車両における少なくとも1つのドアのロックのための方法、並びに車両用アクセス認証装置に関している。
【背景技術】
【0002】
車両、特に自動車への不正なエントリーを防ぐために、最近の自動車におけるエントリー認証システムないしはアクセス認証装置では電子セキュリティシステムが使用されている。これらのシステムではユーザー認証のために、車両における第1の通信装置と、ユーザーが携帯するキー若しくはキーホルダータイプのID発信器における第2の通信装置との間でデータ通信が行われている。
【0003】
このためにまず車両の第1通信装置からは車両周囲の近傍領域内に携帯型ID発信器が存在しているか否かを検査するために、所定の電界強度を備えた問い合せ信号が規則的な時間間隔で送出される。
【0004】
携帯型ID発信器が車両に接近して、引き続きその車両の問合せ信号を受信できるようになると、ID発信器は、認証過程の開始のために問い合わせ信号の受信に対する応答を開始する。その際には携帯型ID発信器が最終的にその認証コードを車両に伝送するデータテレグラムの交換が行われる。認証コードの検査が成功した場合には、当該車両の側にいるユーザーがドアノブを操作することによって、対応する車両ドアのロック解除若しくは全ての車両ドアのロック解除が開始され得るようになる。前述したような車両へのアクセスないしエントリーを達成するための方法では、ユーザーによる機械的若しくは電子的なキーのアクティブ操作を必要としないため、この種のアクセス形態はパッシブアクセス認証検査と称され、それに相応するアクセス認証システムは電子的パッシブアクセス認証システムと称されている。
【0005】
前述したようなパッシブアクセス認証システムにおいては車両へのアクセスが車両とユーザー携帯キーとの間の自動識別過程に基づいて行われるのに対して、車両を離れるときにも(例えば走行後の車両を駐車し終えた後で)車両のドアロックが自動的に行われることは、快適性向上を達成する上では有利となる。この問題は従来の方式では、車両がユーザーないしはユーザーに割当てられているキーを局所化し、ユーザーないしはキーが車両から離れた場合にそれを検出することで解決されてきた。その際には車両の様々な周辺領域が所定の時間順序で走査されている。ユーザーが所定の時間順序で周辺領域を通過したことを車両の制御装置が検出すると、1つ又は複数のドアのドアロックのためにロッキング命令が特定のドアロック装置若しくは集中ドアロック装置へ送信される。しかしながら前述したような所定の時間順序で車両の種々異なる周辺領域の通過を検出するための車両によるユーザーないしキーの局所化は複雑でしかも車両に多大な計算機コストを要するものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、手法的にも装置技術的にも少ないコストで車両の自動ドアロックを実現させ得る簡単な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は本発明により、少なくとも1つのドアの開放状態が検出され、少なくとも1つのドアのロック状態が検出された場合には、車両から携帯型識別発信器に認証信号が伝送され、この場合携帯型識別発信器は前記認証信号によって車両のロックを許可され、前記携帯型識別発信器からは前記認証信号の受信後に1つ又は複数の問合せ信号が発信され、車両の側では前記問合せ信号の受信に応じて所定の強度を備えたそれぞれ応答信号が送信され、所定の数の問合せ信号に対してそのつどの応答信号が何も受信されなかった場合には、携帯型識別発信器から車両へロック信号が伝送されるようにして解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の有利な実施形態は従属請求項の対象となっている。
【0009】
この場合車両、ないしは車両の少なくとも1つのドアのロッキングのための方法には以下に述べるようなステップが含まれている。まず少なくとも1つのドアの開放状態が検出される。さらに少なくとも1つのドアのロック状態が検出された場合には、車両から携帯型識別発信器に認証信号が伝送される。その場合に携帯型識別発信器は認証信号によって、車両のロックのための許可若しくは権限を付与される。認証信号の受信後は携帯型識別発信器は1つ又は複数の問合せ信号を発信する。その場合これらの問合せ信号は規則的な時間間隔、例えば250msの間隔で発信される。ここにおいて車両が各問合せ信号を受信すると、それらの信号に応じて、所定の強度を備えた相応の応答信号が携帯型識別発信器に返信される。携帯型識別発信器は、所定の問合せ信号に対してそのつどの応答信号が得られた否かを評価し、さらに
所定の数の問合せ信号に対してそのつどの応答信号が何も受信されなかった場合には、車両へロック信号(VRS)が伝送される。これにより前述した方法は次のような車両ないしは少なくとも1つのドアの自動ロックのための簡単な手段を表している。すなわち車両ないしは当該車両に割当てられた識別発信器のユーザーの所定の移動パターンが複雑な形式で検出されなければならないのではなく、携帯型識別発信器側で所定の問合せ信号に対してどのくらいの頻度で車両側で何も信号が得られなかったことを検出するだけでよい。
【0010】
有利な実施例によれば、認証信号の伝送が、閉鎖状態の前に少なくとも1つのドアの開放状態が検出された場合に初めて行われる。このことはユーザーが車両を離れたいときにはまずドアが開放され(開放状態)、車から降り、そして後ろから再びそのドアを閉める(閉鎖状態)一連の動作が行われることを意味している。従って、まず開放状態の検出があり、その後で閉鎖状態の検出があることは、ユーザーないしはドライバーが少なくとも1つの車両ドアの開閉動作の後で車両を離れたという事象に対するより良好な基準として用いることができる。
【0011】
車両から携帯型識別発信器への認証信号の伝送に対するさらなる基準としては、車両の駆動装置の非活動化状態の検出を用いることができる。ここでの駆動装置とは、当該車両の駆動用電気モーター又は内燃機関などを含み得る。さらにこの基準の利用によって、ユーザーが車両を離れるか、ないしは車両から遠ざかるようなケースにおいて、確率の高い認証信号の送信がより高いレベルで保証され得るようになる。この関係においてはさらに所定のデータないしは状態が検出される時間の順序が確定されることも考えられる。実際のケースに基づけば、例えばドライバーが長い走行の後で自身の車両を停止して車両から離れたい場合には、ドライバーはまず当該車両を例えば道路端に停めてそこで車両の駆動ユニット(エンジン)を切り、その後で車両を離れるために車両のドアを開けることが考えられる。そのためここで確定され得る順序としては、データないしは状態の検出の際に、まずエンジンないしモーターの遮断若しくは車両駆動装置の非活動化が検出され、その後でドアの開放状態と最終的なドア閉鎖状態が検出されることが想定できる。予め定められた順序で3つの全ての状態が存在するかないしは検出された場合に初めて、認証信号を車両から携帯型識別発信器へ伝送することが可能となる。
【0012】
本発明のさらに別の有利な実施例によれば、
認証信号の伝送前に携帯型識別発信器の存在が検査される。このことは例えば車両が1つ又は複数の第2の問合せ信号を送信し、携帯型識別発信器からの相応する第2の応答信号の受信によってその存在が証明されるようにして行われてもよい。有利には車両は予め定められた強度で第2の問合せ信号を送信する。この信号強度は、車両の直ぐ近くに携帯型識別発信器が存在する場合にしかこれらの問合せ信号を受信できない位の弱さである。このようにすれば携帯型識別発信器の間近な存在を確定することができる。
【0013】
従って認証信号の送信に対するさらなる基準としては、携帯型識別発信器の存在を確定することがあげられる。認証信号を車両に割当てられた識別発信器に伝送することを確実に行うために、車両側からの第2の問合せ信号によって識別発信器コードを問合せすることが可能である。これは相応する第2の応答信号によって識別発信器から車両へ伝送される。さらにここにおいては認証信号の伝送に対するさらなる基準として、有効な識別発信器コードの存在を利用することができる。このコードは受信した後で、専用に設けられている制御装置ないし評価装置によって検査される。
【0014】
さらに前述したように、第2の問合せ信号を予め定められた強度で車両から送信し、その場合に携帯型識別発信器によってその目下の存在位置において第2の問合せ信号の強度値が測定され、この測定された強度値が第2の応答信号の中に含まされ、それが携帯型識別発信器から車両に返信されるようにすることも可能である。予め定められた強度値並びに携帯型識別発信器から受信した測定強度値に基づくことによって車両は携帯型識別発信器と自身との離間距離を算出することが可能である。その場合にはさらに(さらなる基準として)、携帯型識別発信器によって測定された強度値が所定の閾値を下回った場合にのみ、すなわち携帯型識別発信器と車両との間の距離が所定の値を上回った場合にのみ、認証信号が車両から携帯型識別発信器へ伝送される。
【0015】
本発明の別の側面によれば、車両用、特に自動車用のアクセス認証装置が提供される。この装置は以下に述べる特徴を有している。この装置は車両の少なくとも1つのドアの開放状態を検出するためのドアセンサを有している。さらに前記装置は少なくとも1つのドアの閉鎖状態が検出された場合に認証信号を伝送するように構成されている、携帯型識別発信器(ユーザー若しくはドライバー側)へ認証信号を伝送するための車両側送受信装置を有している。この場合認証信号は、車両ないしは少なくとも1つのドアをロックすることに関して携帯型識別発信器にその権限を与える。さらに前記アクセス認証装置は携帯型識別発信器を有しており、この発信器は、認証信号を直ぐに受信するように構成されている識別発信器側送受信装置を含んでいる。その他にも前記識別発信器側送受信装置は、認証信号の受取りないし受信後に1つ又は複数の問合せ信号を発信し、予め定められた数の問合せ信号に対するそのつどの応答信号を(車両から)何も受信しなかった場合にロック信号を車両へ伝送するために用いられている。このことはここに示されているアクセス認証装置によれば、ユーザーが例えばキーないしはキーホルダー状の携帯型識別発信器を伴って車両から離れた場合に、当該車両の自動ロックを実現させる簡単な手段が得られることを意味している。その場合には携帯型識別発信器において、車両ロックのためのロック信号を車両へ送信することのできる所定の間隔距離にいつ達したかが確定される。
【0016】
有利な実施例によれば、認証信号が車両側送受信装置から携帯型識別発信器へ伝送される前に満たされなければならない様々な基準が定められる。その際これらの基準はユーザーが例えば走行後に車両を止めて車から離れたい場合の自動ロックを保証するべきものである。その場合車両側送受信装置は、閉鎖状態の前にドアセンサによって少なくとも1つのドアの開放状態が検出された場合には認証信号を伝送し得る。さらに有利には、エンジンセンサによって車両の駆動装置の非活動状態若しくは非作動状態が検出されたされた場合にのみ認証信号を伝送することも可能である。特に認証信号の伝送に対しては、駆動装置やドアの個々の状態の検出の正しい時間順序が維持されることも必要となり得る。例えば、まず最初に駆動装置の非活動化状態が検出され、その後で少なくとも1つのドアの開放状態が検出され、そして最後に少なくとも1つのドアの閉鎖状態が検出された場合にのみ認証信号の伝送が行われるようにしてもよい。
【0017】
さらに別の有利な実施例によれば、車両側送受信装置が認証信号の伝送前に携帯型識別発信器の存在を検査し、その存在が確定された場合にのみ認証信号が伝送される。この存在の検査は車両側送受信装置が1つ又は複数の第2の問合せ信号を送信し、携帯型識別発信器からのそのつどの第2の応答信号の受信に基づいてその存在が識別されるように行われてもよい。
【0018】
最終的に前記車両側送受信装置は、予め定められた強度の問合せ信号(ANS)が送信できるように設計されており、この場合識別発信器側送受信装置は携帯型識別発信器の箇所における第2の問合せ信号の強度を測定し、測定された強度値をそのつどの第2の応答信号に含ませることができるように設計されている。車両側送受信装置ないしはこの装置に接続されている制御装置は、第2の問合せ信号の所定の強度値を受信した測定強度値(相応の第2の応答信号内の)と比較し、その結果から例えば携帯型識別発信器と車両との間の間隔を求めることができる。車両側送受信装置に対する認証信号の送信のためのさらなる基準は、受信された第2の問合せ信号の測定強度値が予め定められた閾値を下回らなければならないことであってもよい(ないしは車両と携帯型識別発信器の間の間隔距離が所定の間隔距離を上回らなければならないものであってもよい)。
【0019】
本発明の別の側面によれば、少なくとも1つのドアと前述したようなアクセス認証装置を有している車両、特に自動車が実現される。
【0020】
さらに前述してきた方法の有利な実施例も、前記アクセス認証装置ないしは車両に対して転用できる限り、当該アクセス認証装置ないしは車両の有利な実施例と見なすことができる。
【実施例】
【0021】
以下では本発明の有利な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
まず初めに車両内、ここでは自動車FZ内で使用できるように設計されているアクセス認証システムないしアクセス認証装置ZAが示された図1が参照される。このアクセス認証装置(車両側の領域内、図1の右方参照)は、車両側制御装置STEを含んでおり、この車両側制御装置はバッテリBATから電流を供給されている。図には示されてはいないが、バッテリBATは車両のさらに別の構成要素にも電流を供給している。制御装置STEは車両側送受信装置SEに接続されており、該車両側送受信装置は、車両側アンテナANFと無線区間FSSを介して携帯型識別発信器IDG(これは以下の明細書でさらに詳細に説明する)と接続形成される。さらに前記制御装置STEは、ロッキング命令VRAを用いてドアロックを駆動制御すべくドアロックTS(これは例えば集中ドアロック装置用であってもよい)に接続されている。その他にもこの制御装置STEはライトコントロールデバイスLSEと接続形成され、この場合当該ライトコントロールデバイスLSEはライトコントロール信号LSSの受取り後に、(例えばウインカー若しくはロービームの形態の)照明装置BLを活動化ないし非活動化させ得る。
【0023】
さらに前記アクセス認証装置ZAは、少なくとも1つの車両ドア(ドアTFZ)の開放状態を検出できるように構成されているドアロックTSSを有している。換言すればドアロックTSSは、ドアTFZの開閉を識別できるように構成されている。相応する開放状態信号OSは、ドアロックTSSに自立的に転送されるか若しくは制御装置STEの問合せに応じて転送される。さらに前記アクセス認証装置ZAはモーターセンサMOを含んでおり、このモーターセンサMOは、車両FZの駆動装置、例えば内燃機関BKMの作動状態を検出できるように構成されている。検出された作動状態は、信号MSを用いて自立的に転送されるか若しくは制御装置STEの問合せに応じて転送される。
【0024】
既に前述してきたように車両FZは無線区間FSSを介して携帯型識別発信器IDGと(図1左方側の識別認証領域内において)通信可能である。この場合双方向通信に対する前提は、携帯型識別発信器IDGが第1の近傍領域ANBE内に存在することである。この領域内では車両側アンテナANFから放射された信号が携帯型識別発信器IDGによって正常に受信されるのにまだ十分な電界強度を有している。車両側アンテナANFからの信号の受信のために携帯型識別発信器IDGは識別発信器側アンテナANIを有しており、このアンテナは受信信号の処理若しくは新たな信号の生成のために識別発信器側送受信装置SEIに接続されている。前記新たな信号は最終的にこのアンテナANIを介して放射される。前記識別発信器側送受信装置にはさらに識別発信器側制御装置STIが接続されており、この制御装置STIは一方では車両FZとの認証過程の実行ができるように構成されており(特にアクセス認証検査)、またもう一方では車両FZのロックのためのロッキング信号のトリガができるように構成されている。このトリガについてはさらに以下の明細書で詳細に説明する。
【0025】
さらに詳細に説明すれば、図1中では携帯型識別発信器IDGが3つの異なるポジション、POS1,POS2,POS3で表されている。第1のポジションPOS1では携帯型識別発信器IDGが車両のすぐ近くにある第1の近傍領域ANBEに存在しており、この場合この領域内では車両FZと識別発信器IDGの間で双方向の(無線)通信が可能である。このことは換言すれば、アンテナANFとANIから送信された無線信号の電界強度ないし信号強度が他方のないしは受信側の対象の各アンテナによって正常に受信することができるくらいに十分であることを意味している。それに対して携帯型識別発信器IDGが発信器のユーザーないしは車両のユーザーと共に矢印P1に沿って車両FZから離れる方向に移動すると、携帯型識別発信器IDGは第2のポジションPOS2に到達する。この第2のポジションPOS2では携帯型識別発信器IDGは第2の近傍領域ANBに存在することになる。この領域はこの場合次のように選定されている。すなわちこの領域において識別発信器IDGないしはそのアンテナANIから放射される信号強度が車両FZのアンテナANFによって正常に受信するのに十分ではあるが、しかしながら車両FZないしはそのアンテナANFから送信された信号の強度は当該の識別発信器IDGのアンテナANIによって正常に受信するのにはもはや十分なものではない。最終的に携帯型識別発信器IDGがさらに矢印P2に沿って車両から離れる方向へ移動すると、携帯型識別発信器IDGは第2の近傍領域ANBから出てしまう。この場合は携帯型識別発信器IDGと車両FZとの間で無線区間FSSを介した通信がもはや不可能となる。ここでは、第1の近傍領域ANBEの外側の境界を表す距離ANREが約1m、それに対して第2の近傍領域ANBの外側の境界を表す距離ANRが約2m〜3mであり得ることを述べておく。
【0026】
以下の明細書ではアクセス認証装置ZAのロック制御しか詳細に説明しないが、このアクセス認証装置ZAはもちろん車両FZのような車両に対する自動アクセスないし自動エントリーのためのアクセス認証制御も含み得る。この種のアクセス認証制御は、冒頭に述べたような方式で行われてもよく、その場合には携帯型識別発信器と車両との間の認証ダイアログにおいて当該車両に対する携帯型識別発信器の属性(メンバーシップ)が検査され、この検査が成功した場合には車両は1つ若しくは全ての車両ドアのロックを解除する。
【0027】
次に、本発明の実施形態によるロック制御のための状況ないし条件を概略的に表した図2を参照して説明を続ける。図2では、ユーザーが車両FZを停止したところから出発している。この場合は当該車両の駆動ユニットないしは内燃機関が機関停止(非活動化)される。ここにおいてユーザーないしドライバーは車両のドア(図1中のTFZ参照)を開き、車両から降車する。ここではさらに別の搭乗者も運んでいることが考えられ、その場合には対応する車両ドア(例えば助手席ドア)が開放された後でこの同乗者も降車する。引き続きユーザーないしドライバーのドアTFZが閉められ、場合によってはさらに別の車両ドアも閉鎖される(符号Z1参照)。なおここでは前記ドアTFZのためのドアセンサTSSの他にもさらなるドアの開放状態を検出するための相応のドアセンサが設けられていることも述べておく。それらのドアセンサは対応するドアの開放状態を制御装置、例えば前記制御装置STEに転送できる。ここにおいて制御装置STEがそのつどの開放状態信号に基づいて、最後の車両ドアも含めて全ての車両ドアが閉鎖されていることを識別すると、制御装置は、ユーザーないしドライバーの携帯型識別発信器がまだ車両の直ぐ近くに存在しているのか否かの確定を試みる。それに対して車両はいわゆる"ポーリング(符号Z2参照)"を実施し、その際には問合せ信号が車両側アンテナを介して放射され、この信号は車両の直ぐ近くにある、すなわち第1の近傍領域ANBE内に存在する携帯型識別発信器によって応答される。ユーザーの携帯型識別発信器が第1の近傍領域ANBEに存在するならば(符号B1参照)、この発信器は受信した問合せ信号に対して相応の応答信号でもって応答し、その際には当該携帯型識別発信器はその応答信号中に例えば識別発信器コードを含ませる。この識別発信器コードが適正であるときには、認証過程が実施され、その際には車両FZが認証信号BSを携帯型識別発信器IDGに向けて発信し(符号Z3参照)、それによって携帯型識別発信器は車両をロックさせることに関して認証ないしは権限を与えられる。以下の明細書で図3に基づいて詳細に説明するように、ここにおいて識別発信器IDGは1つ又は複数の問合せ信号を車両に送信することを開始し、各問合せ信号に対して車両側からの応答信号が受信されたか否かを検査する。その場合車両の応答信号は、車両の直ぐ近くにある識別発信器(第1の近傍領域ANBE内に存在する識別発信器)のみが車両の応答信号を受信できる状態になるように選定された電界強度ないしは信号強度で放射される(すなわち車両と識別発信器の間の間隔が所定の距離になったところから識別発信器はもはや応答信号を受信できなくなる)。ここで識別発信器は、問合せ信号に対してどのくらい応答信号がもはや自身に届かなくなったかを検査する。所定の数の応答されなかった問合せ信号が記録されると、識別発信器IDGは自身が第1の近傍領域ANBEを逸脱したこと推定し(符号B2参照)、それに続いて当該識別発信器(これは認証信号によって認証されている)は車両にロック信号を送信する。このロック信号をアンテナANF若しくは車両側送受信装置SEによって受信した後で信号が制御装置に転送され、該制御装置は例えばトリガ信号に付随した識別発信器コードに基づいて最終的に車両のロックのための当該携帯型識別発信器IDGの正当性を検査する。この検査が成功した場合には、制御装置STEがロック命令をドアロックTSに送出し、車両ドアTFZ若しくはその他のさらなる車両ドア(図示せず)がロックされる(符号Z4参照)。相応にユーザーないしドライバーに対する確認のためにもライトコントロール信号LSSがライトコントロールデバイスLSEに送出され、これは照明装置BLを用いた短時間のウインカー点滅によってロックの成功を知らせる。
【0028】
最後に、本発明の実施形態に従ったロック制御のためのアクセス認証装置ZAの作動形態を詳細に表すためのフローチャートが示されている図3を参照して説明を続ける。図3では、ユーザーないしはドライバーが(走行後に)車両FZを停止したところから出発している。この場合も駆動ユニットないしは内燃機関(又は電気モータ)が機関停止又は遮断されている。この種の(機関)停止状態ないし非作動状態は例えばモーターセンサMOによって検出可能であり、この状態は信号MSを用いて制御装置STE(図1参照)に伝達される。ユーザーないしドライバーと場合によってさらなる同乗者がそれぞれの車両ドア、例えばドアTFZを開放し(このことは例えばドアセンサTSSやさらなる相応のドアセンサによって検出され制御装置STEに通知され得る)、続いてステップS1によって各車両ドアが閉鎖される(このこともドアセンサTSSと場合によってさらなるドアセンサによって検出され制御装置STEに通知される)。
【0029】
ステップS2によるユーザーないしドライバーの携帯型識別発信器の存在の検査に対するトリガとして車両ドアTFZの閉鎖ないし閉じられた状態か若しくは同乗者が複数伴う場合の最後のドアの閉鎖ないしは閉じられた状態が利用できる。しかしながら、ステップS2による存在性の検査の開始に対しては、少なくとも1つのドアセンサによって車両ドアの開放状態とそれに続く閉鎖状態が識別されるようにすることも考えられる。その上さらにステップS2による携帯型識別発信器の存在性検査の開始に対しては、駆動ユニットの停止ないしは非活動化状態と、少なくとも1つの車両ドアの開放状態とそれに続く車両ドアの閉鎖状態が基準として(制御装置STEから)識別されるようにすることも考えられる。アクセス認証装置ZAの構成に応じて、前述してきたように所定の1つ又は複数の基準の存在に従ってステップS2では携帯型識別発信器の存在性検査が次のように行われる。すなわち車両FZが1つ又は複数の問合せ信号ANSを予め定められた強度10で送信し、携帯型識別発信器IDGによって受信される。携帯型識別発信器ないしそのアンテナANIは送信された問合せ信号ANSを受信する。この場合識別発信器側送受信装置SEIは問合せ信号の受信強度を確定している。ステップS3では、識別発信器側送受信装置SEIが測定された強度値ないしはRSSI(Received Signal Indication)値を応答信号(AWS)に含ませて車両FZへ返信する。さらに応答信号AWS内には識別発信器側制御装置STIからの識別発信器コードが受含まれていてもよい。この場合前述してきたステップS2及びS3の問合せ・応答・ダイアログが繰り返し実施され、この場合ステップS4は、識別発信器IDGによって測定された問合せ信号ANSのRSSI値が所定の閾値を下回った場合に初めて実施される。このことは携帯型識別発信器IDGが車両FZから所定の間隔距離で存在することを意味する。
【0030】
携帯型識別発信器に車両ないしは当該車両の1つ又は全てのドアのロックを許可するステップS4による認証信号BSの送信は、最も簡単なケースにおいては、ステップS1において最後の(開放された)車両ドアの閉鎖状態が確定され、携帯型識別発信器の存在が車両の直ぐ近く、すなわち第1の近傍領域ANBE内で検出された(ステップS2及びS3)場合に行われる。しかしながらちょうど前述した(最も簡単な)基準の存在の後でさらなる基準が検査されることも考えられる。例えば1つないしは全ての車両ドアの閉鎖状態(ステップS1参照)を検出する前に少なくとも1つのドアの開放状態が検出されたか否かを最初に検査してもよいし、さらに駆動ユニットが作動状態から非作動状態へ切り替わったか否かを検査してもよい。ロック制御のために特定のプロセス実施例毎にそれぞれ基準が利用されるのならば、制御装置STEは車両側送受信装置SEとアンテナANFを介して認証信号BSを携帯型識別発信器IDGに伝送する。
【0031】
認証信号BSは最終的にアンテナANIと識別発信器側制御装置SEIによって受信され、識別発信器側制御装置STIに転送される。認証信号の受取りに応じて制御装置STIは1つまたは複数のさらなる問合せ信号ANS2を送信する(ステップS5)。このさらなる問合せ信号ANS2は、車両のアンテナANFないしは送受信装置SEによって受信され、さらに制御装置STEに転送される。この制御装置STEは最終的に送受信装置SEないしアンテナANFを介して相応のさらなる応答信号AWS2をステップS6に従って送信し始める。この場合さらなる応答信号AWS2の送信は、このさらなる応答信号AWS2が車両FZの直ぐ近くにある、すなわち第1の近傍領域ANBE内に存在する携帯型識別発信器IDGのみに受信可能となるように選定された所定の信号強度ないし電界強度で行われる。つまり携帯型識別発信器IDGが第1の近傍領域ANBE内に存在する限りは、さらなる問合せ・応答ダイアログが識別発信器と車両の間で(複数回でも)実施可能である。
【0032】
ステップS7において携帯型識別発信器IDGが(図1の矢印P1に沿って)車両から離れる方向で第2の近傍領域ANBに移動したならば、さらなる問合せ信号ANS2は車両FZのアンテナANFないし送受信装置SEによって受信可能ではあるが、対応する応答信号AWS2はその限られた到達範囲に起因してもはや携帯型識別発信器IDGによって受信できなくなる。このようなケースでは識別発信器側制御装置STIに接続されているカウント装置ないしはカウンタCOがカウントを開始し、いくつの送信されたさらなる問合せ信号ANS2がさらなる応答信号を車両FZから受取れなかったかがカウントされる。換言すれば、ステップS8において送信されたさらなる問合せ信号ANS2に対して、ステップS9に従って送信された応答信号AWS2はもはや携帯型識別発信器IDGによって受信されない。なぜならばこの携帯型識別発信器IDGは既に第2の近傍領域ANB内に存在するからである。そのためステップS10においてカウンタ装置は値0からスタートして値1にカウントされる。ここでは一般に、さらなる問合せ信号ANS2が送信された後、所定の期間内にそれが携帯型識別発信器IDGに届かなかった場合には、さらなる応答信号AWS2は受信されなかったものと見なされることが定められる。
【0033】
前記ステップS8及びS9に相応するステップS11及びS12の後続のダイアログに従って再びさらなる応答信号AWS2が携帯型識別発信器IDGによって何も受信されなかった場合には、ステップS13においてカウンタ装置はそのカウント値を1だけ高め、値が1から2へカウントアップされる。図3には示されていないが、ステップS8及びS9ないしはS11及びS12によるさらなる問合せ・応答ダイアログをさらに複数回繰り返すことも可能である。この場合は受信できなかった若しくは受け取れなかったさらなる応答信号の数が所定数AZになったときに、識別発信器側の制御装置STIがステップS14において識別発信器側送受信装置SEIにロック信号VRSの送信を開始させる。このロック信号VRSは最終的に車両FZのアンテナANFと送受信装置SEによって受信され、制御装置STEに転送される。さらに前記制御装置STEはステップS15においてロック命令VRAをドアロックTSに送信し、車両の特定のドアTFZないしは複数のドア若しくは全てのドアをロックさせる。このようにして車両から離れる方向の移動を検出した場合に携帯型識別発信器IDGが自立的に車両のロックを促す車両用アクセス認証装置を用いた効率的なロック制御が達成される。
【0034】
最後に図3に示されている信号は例えば125kHzの領域で送信されるLF(Low Frequence;低周波な)信号であることをのべておく。
【0035】
さらに携帯型識別発信器IDGを割当てられているユーザーに対する確認若しくは指示として任意に、ロックの完了後若しくはロック命令の送出後に制御装置STEによってライトコントロール信号LSSがライトコントロール装置LSEに送信されるようにしてもよいことを述べておく。これにより例えば照明装置BLによる短時間の点滅(例えばウインカーやロービームの形態の点滅)が引き起こされる。ドアロックの完了ないし成功に対する前記の光学的な指示の他にも制御装置STEによって音響的信号が車両から発せられてもよい(例えば短時間のクラクションなど)。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態による車両のキーレスエントリーシステムないしアクセス認証装置を概略的に表した図
【図2】本発明の実施形態による車両を離れる際のロック制御のための状況ないし条件を具現化するための概略図
【図3】本発明の実施形態による車両から離れる際のロック制御のためのアクセス認証装置の作動を表すためのフローチャート
【符号の説明】
【0037】
FZ 車両
STE 車両側制御装置
SE 車両側送受信装置
TFZ 車両ドア
TSS ドアセンサ
FSS 無線区間
ANF 車両側アンテナ
IDG 携帯型識別発信器
ANI 識別発信器側アンテナ
SEI 識別発信器側送受信装置
STI 識別発信器側制御装置
ANBE 第1の近傍領域
ANB 第2の近傍領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(FZ)の少なくとも1つのドア(TFZ)のロッキングのための方法において、
少なくとも1つのドア(TFZ)の開放状態が検出されるステップと、
少なくとも1つのドアのロック状態が検出された場合には、車両(FZ)から携帯型識別発信器(IDG)に認証信号が伝送され、この場合携帯型識別発信器は前記認証信号によって車両のロックを許可され、
前記携帯型識別発信器(IDG)からは前記認証信号の受信後に1つ又は複数の問合せ信号(ANS2)が発信され、
車両(FZ)の側では前記問合せ信号(AWS2)の受信に応じて所定の強度を備えたそれぞれ応答信号(AWS2)が送信され、
所定の数(AZ)の問合せ信号に対してそのつどの応答信号が何も受信されなかった場合には、携帯型識別発信器から車両へロック信号(VRS)が伝送されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記認証信号(BS)の伝送は、閉鎖状態の前に少なくとも1つのドアの開放状態が検出された場合に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記認証信号(BS)の伝送は、車両(FZ)の駆動装置の非活動化状態が検出された場合に行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記認証信号(BS)の伝送の前に、車両(FZ)の近傍に携帯型識別発信器(IDG)の存在が検査される、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記存在は、前記車両(FZ)からの第2の問合せ信号(ANS)の一回若しくは複数回の送信と、携帯型識別発信器(IDG)から相応に発せられた第2の応答信号(AWS)の当該車両による受信によって検査される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第2の問合せ信号は予め定められた強度(10)で車両(FZ)から送信され、前記第2の応答信号(AWS)内には携帯型識別発信器の場所で測定された第2の問合せ信号の強度値が含まれている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
測定された強度値が所定の閾値を下回った場合にのみ認証信号(BS)が伝送される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
車両(FZ)用のアクセス認証装置において、
車両(FZ)の少なくとも1つのドア(TFZ)の開放状態を検出するためのドアセンサ(TSS)と、
少なくとも1つのドアの閉鎖状態が検出された場合に、携帯型識別発信器(IDG)に認証信号(BS)を伝送するための車両側送受信装置(SE)と、携帯型識別発信器(IDG)とを有しており、 前記携帯型識別発信器は前記認証信号によって車両の少なくとも1つのドアをロックすることが許可されるものであり、
さらに前記携帯型識別発信器(IDG)は、認証信号(BS)の受信後に1つ又は複数の問合せ信号(ANS2)を発信しかつ予め定められた数(AZ)の問合せ信号(ANS2)に対してそのつどの応答信号(AWS2)が車両から何も受信されなかった場合に当該車両(FZ)へロック信号(VRS)を伝送するための識別発信器側送受信装置(SEI)を含んでいることを特徴とするアクセス認証装置。
【請求項9】
前記車両側送受信装置(SE)は、閉鎖状態の前にドアセンサ(TSS)によって少なくとも1つのドアの開放状態が検出された場合に認証信号(BS)を伝送する、請求項8記載のアクセス認証装置。
【請求項10】
さらに車両の駆動装置(BKM)の作動状態を検出するためのモーターセンサ(MO)を有しており、この場合前記車両側送受信装置(SE)は、当該モーターセンサ(MO)によって車両の駆動装置の非活動化状態が検出された場合に認証信号(BS)を伝送する、請求項8または9記載のアクセス認証装置。
【請求項11】
前記車両側送受信装置(SE)は認証信号(BS)の伝送前に携帯型識別発信器(IDG)の存在を検査し、該検査中に1つ又は複数の第2の問合せ信号(ANS)を送信し、携帯型識別発信器(IDG)からのそのつどの第2の応答信号(AWS)の受信によってその存在を識別している、請求項8から10いずれか1項記載のアクセス認証装置。
【請求項12】
前記車両側送受信装置(SE)は予め定められた強度の問合せ信号(ANS)が送信できるように設計されており、前記識別発信器側送受信装置(SEI)は携帯型識別発信器(IDG)の第2の問合せ信号の強度を測定し、測定された強度値をそのつどの第2の応答信号に含ませることができるように設計されている、請求項11記載のアクセス認証装置。
【請求項13】
前記車両側送受信装置(SE)は、受信した測定強度値が所定の閾値を下回った場合に認証信号(BS)を伝送する、請求項12記載のアクセス認証装置。
【請求項14】
少なくとも1つのドア(TFZ)と請求項8から13いずれか1項記載のアクセス認証装置(ZA)とを備えていることを特徴とする車両、特に自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−69628(P2008−69628A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238288(P2007−238288)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(507229032)ジーメンス ヴィディーオー オートモーティヴ アクチエンゲゼルシャフト (46)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VDO Automotive AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】