説明

車両の制御装置

【課題】手動変速操作にてダウンシフトが行われたときに、変速機の実際の変速比が変化しない場合であっても減速挙動を出すことができるようにする。
【解決手段】ユーザによってギヤ段または変速比の範囲を狭める操作(ダウンシフト操作)がなされても、変速機のギヤ段または変速比が変更されない場合は、前記ギヤ段または変速比が変更される場合よりも、回転電機(モータジェネレータMG)による減速度を大きくする減速度制御を実行する。このような制御により、ユーザによるダウンシフト操作によってギヤ段または変速比が変更されない場合であっても、減速挙動を出すことが可能となり、ユーザは要求通りの減速感を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、さらに詳しくは、走行用の駆動力を駆動輪に伝達する駆動力伝達経路に変速機が設けられた車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護を配慮した車両として、ハイブリッド車両、電気自動車(EV)、燃料電池車両などが開発・実用化されている。
【0003】
これらの車両のうち、ハイブリッド車両は、エンジンと、このエンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた変速機と、エンジンの出力により発電された電力やバッテリ(蓄電装置)に蓄えられた電力により駆動する電動機(例えば、モータジェネレータまたはモータ)とを備え、これらエンジン及び電動機のいずれか一方または双方を走行駆動力源として走行することが可能である。
【0004】
変速機が搭載されたハイブリッド車両等の車両にあっては、車速とアクセル開度(またはスロットル開度)に応じた最適なギヤ段(変速比)を得るための変速線を有する変速マップを用いて目標ギヤ段(変速比)を算出し、その目標ギヤ段に基づいて変速機のギヤ段を自動的に設定している。
【0005】
また、変速機が搭載された車両においては、運転者(ユーザ)により操作されるシフトレバーが設けられており、そのシフトレバーを操作することにより、変速機のシフトポジションを、例えばPポジション(パーキングレンジ)、Rポジション(リバースレンジ)、Nポジション(ニュートラルレンジ)、Dポジション(ドライブレンジ)などに切り替えることが可能となっている。さらに、近年では、手動変速モード(シーケンシャルモード)の選択が可能な変速機も実用化されており、運転者によるシフトレバーの操作によって自動変速機のギヤ段(変速比)を任意に切り替えることも可能になっている。
【0006】
このような手動変速モードでは、例えば、変速機の全ギヤ段範囲(全変速比範囲)内でギヤ段(変速比)を制限するための上限ギヤ段(下限変速比)が運転者の手動操作により切り替え可能であるとともに、その上限ギヤ段(下限変速比)を最も高い側のギヤ段(最も低い側の変速比)とする制限ギヤ段範囲内(制限変速比範囲内)で自動変速を行う制御(いわゆるレンジホールド制御)が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−196766号公報
【特許文献2】特開平06−221417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した変速機が搭載された車両にあっては、手動変速モードにおいて、ドライバが設定している上限ギヤ段に対し実際のギヤ段が低い場合に、ドライバがダウンシフト操作を行っても、その操作により上限ギヤ段が変更されるのみであり、変速機の実際のギヤ段は変速されない。こうした状況になると、シフトダウンによる車両挙動(減速)が現れないので、運転者が要求したとおりの減速感を出すことができない。
【0009】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、手動変速モード時においてダウンシフト操作されたときに、変速機の実際の変速比が変化しない場合であっても減速挙動を出すことが可能な車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、原動機(例えばエンジン)の動力を変速して車輪(駆動輪)に伝達する変速機と、車輪に動力を伝達可能に設けられた回転電機と、前記変速機のギヤ段(変速段)または変速比の範囲を指示する手動変速手段とを備える車両の制御装置を前提としており、このような車両の制御装置において、前記手動変速装置による前記ギヤ段または変速比の範囲を狭める操作がなされても、前記変速機の実ギヤ段または実変速比が前記狭められたギヤ段または変速比の範囲内であり前記ギヤ段または変速比が変更されない場合は、前記ギヤ段または変速比が変更される場合よりも、前記回転電機による減速度を大きくする減速度制御を実行することを技術的特徴としている。
【0011】
本発明によれば、ユーザの手動変速操作によりギヤ段または変速比の範囲を狭める操作が行われた際に、変速機のギヤ段または変速比が変更されない場合であっても、回転電機にて減速度(減速トルク)を発生することができるので、減速挙動を出すことが可能となる。これによってユーザ(ドライバ)は要求通りの減速感を得ることができる。
【0012】
本発明において、前回に前記変速機のギヤ段または変速比を狭める操作がなされた際の減速度(回転電機による減速トルク)に基づいて、次回に前記減速度制御を行う際の前記回転電機による減速度の大きさを補正するようにしてもよい。
【0013】
この場合、変速機を変速した際のトルク(減速度)は、その変速機の変速前後における出力軸回転数の変化量に相関があるという点を利用して、減速度を設定するようにしてもよい。
【0014】
具体的には、前回に前記変速機のギヤ段または変速比を狭める操作がなされた際の当該変速機の出力側の回転数(例えば出力軸回転数)の変化量と、前回に上記減速度制御を行った際の変速機の出力側の回転数(例えば出力軸回転数)の変化量との差を求め、その回転数変化量の差に基づいて、次回に減速度制御を行う際の回転電機による減速度の大きさを補正するという制御を実行するようにしてもよい。
【0015】
このような制御を実行すると、上記減速度制御時の減速度(減速力)を、実際に変速機を変速した場合に発生する減速力に近づけることができるので、ユーザは変速機を実際に変速した場合と同等な減速感を得ることができる。
【0016】
本発明の具体的な構成として、上記減速度制御を行う際の回転電機による減速度は、上記手動変速装置の指示によるギヤ段または変速比の範囲(変速範囲)が狭いほど大きく設定するという構成を挙げることができる。
【0017】
このような構成を採用すれば、例えば、手動変速装置の指示による変速範囲が狭いときの低ギヤ段への変速指示(例えば[3rd→2nd]の変速指示)の場合(エンジンブレーキによる制動力が大きな変速領域である場合)に回転電機による減速度を大きくすることができるとともに、高車速で元々エンジンブレーキが効かない領域での低ギヤ段への変速指示(例えば[8th→7th]の変速指示の場合)には回転電機による減速度を小さくすることができるので、手動変速装置の指示による変速範囲に見合った減速度を出力することが可能になる。
【0018】
また、本発明において、上記手動変速装置の指示による変速比の範囲(変速範囲)が狭いほど、変速比の変化幅(変速比のステップ比)が大きく設定されているという構成を採用してもよい。
【0019】
本発明の他の具体的な構成として、車両の減速要求(例えば、ブレーキペダル踏み込みによる減速要求等)がある場合、その減速要求量が大きいほど、上記減速度制御時の減速度を大きくするようにしてもよい。このようにすれば、車両の減速要求に応じた適切な制動力を得ることができる。
【0020】
また、走行路面が下り勾配である場合などで減速要求見込み量が大きいほど(下り勾配が大きいほど)、上記減速度制御時の減速度を大きくするようにしてもよい。このようにすれば、例えば、降坂路の勾配に対応した適切な制動力を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、手動変速操作によりギヤ段または変速比の範囲を狭める操作が行われた際に、変速機のギヤ段または変速比が変更されない場合であっても、減速挙動を出すことができる。これによりユーザは要求通りの減速感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用する車両の概略構成を示すスケルトン図である。
【図2】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の車両に搭載される変速機において各クラッチ及び各ブレーキのギヤ段ごとの作動状態を示す作動表である。
【図4】シフト操作装置の要部斜視図(a)及びシフト操作装置のシフトゲート(b)を併記して示す図である。
【図5】シフトポジションインジケータ及びシフトレンジインジケータの一例を示す図である。
【図6】変速機の変速制御に用いる変速マップの一例を示す図である。
【図7】Sモード時においてシフトレンジインジケータに表示されるシフトレンジ(上限ギヤ段)と、その各シフトレンジで使用可能なギヤ段とを示す表である。
【図8】Sモード時の変速制御の一例を示すフローチャートである。
【図9】Sモード時の変速制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図10】減速トルク補正値の算出マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
この例の車両は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式のハイブリッド車両HVであって、図1に示すように、駆動系として、車両走行用の駆動力を発生するエンジン(内燃機関)1、モータジェネレータMG、変速機2、デファレンシャル装置3、駆動輪(後輪)4、及び、従動輪(前輪:図示せず)などを備えている。また、制御系として、ハイブリッドECU(Electronic Control Unit)100、エンジンECU200、及び、MG_ECU300などを備えている。これら、ハイブリッドECU100と、エンジンECU200と、MG_ECU300とは互いに通信可能に接続されている。
【0025】
なお、上記モータジェネレータMG及び変速機2については、軸心に対して略対称的に構成されているので、図1のスケルトン図では下側半分を省略している。
【0026】
次に、エンジン1、モータジェネレータMG、変速機2、及び、ECU100,200,300などの各部について以下に説明する。
【0027】
−エンジン−
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置であって、例えば、吸気通路に設けられたスロットルバルブ(図示せず)のスロットル開度(吸気空気量)、燃料噴射量、点火時期などの運転状態を制御できるように構成されている。エンジン1の運転状態はエンジンECU200によって制御される。エンジンECU200はハイブリッドECU100からの出力要求に応じて、上記した吸入空気量制御、燃料噴射量制御、及び、点火時期制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0028】
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11は変速機2の入力軸2Aに連結されている。クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)はエンジン回転数センサ101によって検出される。
【0029】
−モータジェネレータ−
モータジェネレータMGは、永久磁石からなるロータMGRと、3相巻線が巻回されたステータMGSとを備えた交流同期発電機であって、発電機(ジェネレータ)として機能するとともに電動機(電動モータ)としても機能する。モータジェネレータMGのロータMGR(回転軸)は変速機2の入力軸2A(エンジン1のクランクシャフト11)に連結されており、その変速機2の入力軸2Aに対し動力の入出力が可能となっている。つまり変速機2の入力軸2A(エンジン1と駆動輪4との間の駆動力伝達経路)に力行トルク(正側のトルク)または回生トルク(負側のトルク)を出力することができる。また、モータジェネレータMGにはロータMGR(回転軸)の回転数を検出するMG回転数センサ(図2参照)が設けられている。
【0030】
図2に示すように、モータジェネレータMGはインバータ301を介してバッテリ(蓄電装置)302に接続されている。インバータ301はMG_ECU300によって制御される。
【0031】
インバータ301は、モータジェネレータMGの制御用のIPM(Intelligent Power Module:インテリジェントパワーモジュール)を備えている。その各IPMは、複数(例えば6個)の半導体スイッチング素子(例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などによって構成されている。
【0032】
MG_ECU300は、ハイブリッドECU100からの出力要求に応じてインバータ301を制御して、モータジェネレータMGの力行または回生を制御する。具体的には、例えば、バッテリ302からの直流電流を、モータジェネレータMGを駆動する交流電流に変換する。また、エンジン1の動力によりモータジェネレータMGで発電された交流電流を、バッテリ302を充電するための直流電流に変換する。
【0033】
−変速機−
図1に示すように、変速機2は、エンジン1と駆動輪4との間の動力伝達経路に設けられている。変速機2は、エンジン1から入力軸2Aに入力される回転動力を変速して出力軸2B(駆動輪4)に出力する。変速機2の出力軸2Bはデファレンシャル装置3等を介して駆動輪4に連結されている。変速機2の入力軸2Aの回転数は入力軸回転数センサ102によって検出される。また、変速機2の出力軸2Bの回転数は出力軸回転数センサ103によって検出される。これら入力軸回転数センサ102及び出力軸回転数センサ103の各出力信号はハイブリッドECU100に入力される。
【0034】
変速機2は、第1遊星歯車装置21Aを主体として構成される第1変速部(フロントプラネタリ)21、第2遊星歯車装置22A及び第3遊星歯車装置22Bを主体として構成される第2変速部(リアプラネタリ)22、第1〜第4クラッチC1〜C4、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2などによって構成されている。
【0035】
第1変速部21を構成している第1遊星歯車装置21Aは、ダブルピニオン型の歯車式遊星機構であって、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1P1、これらピニオンギヤP1,P1を自転及び公転可能に支持するプラネタリキャリアCA1、及び、ピニオンギヤP1,P1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。
【0036】
プラネタリキャリアCA1は入力軸2Aに連結されており、その入力軸2Aと一体的に回転駆動可能となっている。サンギヤS1は回転回転不能にトランスミッションケース20に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸2Aに対して減速回転させられて、その回転を第2変速部22に伝達する。
【0037】
第2変速部22を構成する第2遊星歯車装置22Aは、シングルピニオン型の遊星歯車装置装置であって、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するプラネタリキャリアCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第2変速部22を構成する第3遊星歯車装置22Bは、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であって、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギP2及びP3、それらピニオンギP2及びP3を自転及び公転可能に支持するプラネタリキャリアCA3、並びに、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
【0038】
そして、上記第2遊星歯車装置22A及び第3遊星歯車装置22Bでは、ピニオンギヤP2を回転可能に支持するプラネタリキャリアCA2とCA3、及び、リングギヤR2とR3とは相互に共用されることによって、4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。すなわち、第2遊星歯車装置22AのサンギヤS2によって第1回転要素R1が構成され、第2遊星歯車装置22AのプラネタリキャリアCA2と第3遊星歯車装置22BのプラネタリキャリアCA3とが互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成されている。さらに、第2遊星歯車装置22AのリングギヤR2と第3遊星歯車装置22BのリングギヤR3とが互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置22BのサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。
【0039】
上記第1回転要素RM1であるサンギヤS2は、第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース20に選択的に連結されており、その第1ブレーキB1が係合状態になるとサンギヤS2の回転が停止され、第1ブレーキB1の解放状態になるとサンギヤS2は回転可能な状態になる。
【0040】
また、サンギヤS2は、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置21AのリングギヤR1に選択的に連結されており、その第3クラッチC3が係合状態になると、サンギヤS2とリングギヤR1とが一体的に回転し、第3クラッチC3が解放状態になると、サンギヤS2とリングギヤR1とは相対回転可能な状態になる。
【0041】
さらに、サンギヤS2は、第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置21AのプラネタリキャリアCA1に選択的に連結されており、その第4クラッチC4が係合状態になると、サンギヤS2とプラネタリキャリアCA1とが一体的に回転し、第4クラッチC4が解放状態になると、サンギヤS2とプラネタリキャリアCA1とは相対回転可能な状態になる。
【0042】
第2回転要素RM2であるプラネタリキャリアCA2及びCA3は、第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース20に選択的に連結されており、その第2ブレーキB2が係合状態になるとプラネタリキャリアCA2及びCA3の回転が停止され、第2ブレーキB2が解放状態になるとプラネタリキャリアCA2及びCA3は回転可能な状態になる。
【0043】
また、プラネタリキャリアCA2及びCA3は、第2クラッチC2を介して入力軸2Aに選択的に連結されており、その第2クラッチC2が係合状態になると、プラネタリキャリアCA2及びCA3は入力軸2Aと一体的に回転し、第2クラッチC2が解放状態になるとプラネタリキャリアCA2及びCA3は入力軸2Aに対して相対回転可能な状態になる。
【0044】
第3回転要素RM3であるリングギヤR2及びR3は、出力軸2Bに一体回転可能に連結されている。そして、第4回転要素RM4であるサンギヤS3は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に選択的に連結されており、その第1クラッチC1が係合状態になるとサンギヤS3はリングギヤR1と一体的に回転し、第1クラッチC1が解放状態になると、サンギヤS3とリングギヤR1とは相対回転可能な状態になる。
【0045】
以上の第1〜第4クラッチC1〜C4、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2は、いずれも油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)によって摩擦係合させられる湿式多板摩擦係合装置(摩擦係合要素)であって、これらクラッチC1〜C4及びブレーキB1,B4の係合または解放は油圧制御回路400及びハイブリッドECU100(図1及び図2参照)によって制御される。
【0046】
図3は、第1〜第4クラッチC1〜C4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2における係合状態または解放状態と各ギヤ段(1st〜8th)との関係を示す係合表である。この係合表において、○印は「係合状態」を示し、空白は「解放状態」を示している。
【0047】
図3に示すように、この例の変速機2において、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2を係合させることで、変速比(変速比=入力軸2Aの回転速度/出力軸2Bの回転速度)が最も大きい第1ギヤ段(1st)が成立し、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1を係合させることで第2ギヤ段(2nd)が成立する。
【0048】
第1クラッチC1及び第3クラッチC3を係合させることで第3ギヤ段(3rd)が成立し、第1クラッチC1及び第4クラッチC4を係合させることで第4変速比(4th)が成立する。第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合させることで第5ギヤ段(5th)が成立し、第2クラッチC2及び第4クラッチC4を係合させることで第6ギヤ段(6th)が成立する。そして、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を係合させることで第7ギヤ段(7th)が成立し、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1を係合させることで第8ギヤ段(8th)が成立するようになっている。
【0049】
また、第3クラッチC3及び第2ブレーキB2を係合させることで第1後ギヤ段(R1)が成立し、第4クラッチC4及び第2ブレーキB2を係合させることで第2後進ギヤ段(R2)が成立するようになっている。また、クラッチC1〜第4クラッチC4及びブレーキB1,B2の全てを解放させることで、動力伝達が遮断される「ニュートラルレンジ及び「パーキングレンジ」が成立するようになっている。なお、「パーキングレンジ」レンジにおいては、例えばパーキングロック機構(図示せず)によって出力軸2Bの回転が機械的に固定される。
【0050】
−シフト操作装置−
このハイブリッド車両HVには、運転席の近傍に、図4(a)に示すようなシフト操作装置5が配置されている。シフト操作装置5にはシフトレバー51が変位可能に設けられている。
【0051】
この例のシフト操作装置5には、図4(b)に示すように、Pポジション(パーキングレンジ)、Rポジション(リバースレンジ)、Nポジション(ニュートラルレンジ)、及び、Dポジション(ドライブレンジ)、Sポジション(シーケンシャルシフトレンジ)が設定されており、ドライバが所望の変速ポジションへシフトレバー51を変位させることが可能となっている。これらPポジション、Rポジション、Nポジション、Sポジション(下記のアップシフト(+)位置及びダウンシフト位置(−)位置も含む)の各変速ポジションは、シフトポジションセンサ107(図2参照)によって検出される。シフトポジションセンサ107の出力信号はハイブリッドECU100に入力される。
【0052】
なお、ハイブリッドECU100は、シフトポジションセンサ107の出力信号に基づいて、自動変速モードまたは手動変速モード(シーケンシャルモード(Sモード))のいずれのモードが選択されているのかを判別することができる。
【0053】
以下、シフトレバー51の変速ポジションが選択される状況と、そのときの変速機2の動作態様について、図3を参照して各変速ポジション(「Nポジション」、「Rポジション」、「Dポジション」「Sポジション」)ごとに説明する。
【0054】
「Nポジション」は、変速機2の入力軸2Aと出力軸2Bとの連結を切断する際に選択されるポジションであり、シフトレバー51が「Nポジション」に操作されると、変速機2のクラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2の全てが解放される。
【0055】
「Rポジション」は、ハイブリッド車両HVを後退させる際に選択されるポジションであり、シフトレバー51がこのRポジションに操作されると、変速機2は後進ギヤ段に切り替えられる。なお、ハイブリッド車両HVの後進時には、車速等に応じて第1後進ギヤ段(R1)と第2後進ギヤ段(R2)との切り替え可能となっている。
【0056】
「Dポジション」は、ハイブリッド車両HVを前進させる際に選択されるポジションであり、シフトレバー51がこのDポジションに操作されると、ハイブリッド車両HVの運転状態などに応じて、変速機2の複数の前進ギヤ段(前進8速)が自動的に変速制御される。
【0057】
「Sポジション」は、複数の前進ギヤ段(前進8速)の変速動作をドライバが手動によって行う際に選択されるポジション(手動変速ポジション)であって、このSポジションの前後に「−」位置及び「+」位置が設けられており、シフトレバー51が「+」側(シフトレンジアップ)に操作されると、その「+」位置への1回操作ごとにシフトレンジが1段ずつアップ(例え1st→2nd→・・→8th)される。一方、シフトレバー51が「−」側(シフトレンジダウン)に操作されると、その「−」位置への1回操作ごとにシフトレンジが1段ずつダウン(例えば8th→7th→・・→1st)される。
【0058】
また、この例のハイブリッド車両HVには、インストルメントパネル(以下、インパネともいう)のコンビネーションメータ(図示せず)内に、図5に示すシフトポジションインジケータ61及びシフトレンジインジケータ62が配置されている。
【0059】
シフトポジションインジケータ61は、上記シフトレバー51によって選択されているポジションがP,R,N,Dポジションであるとき、及び、Sモード(ポジション)であるときに点灯する。例えば、Dポジションが選択されているときには、シフトポジションインジケータ61の「D」の文字が点灯し、また、Sポジションが選択されているときには、シフトポジションインジケータ61の「S」の文字が点灯する。
【0060】
シフトレンジインジケータ62は、Sモード(Sポジション)時に選択されているシフトレンジ(上限ギヤ段)を表示する。例えば、第3ギヤ段(3rd)で走行しているときに、Sモード(手動変速モード)が選択されたときには、シフトレンジインジケータ62に、例えば第3ギヤ段(第2ギヤ段または第4ギヤ段の場合もある)であることを示す文字「3」が表示され、この状態から、シフトレバー51が「−」側(ダウンシフト側)に1回操作されると、シフトレンジインジケータ62に第2ギヤ段であることを示す文字「2」が表示される。さらに、シフトレバー51が「−」側(ダウンシフト側)に1回操作されると、シフトレンジインジケータ62に第1ギヤ段であることを示す文字「1」が表示される。
【0061】
なお、シフトレバー51によって選択されているポジションがP,R,N,Dポジションであるときには、シフトレンジインジケータ62は消灯され、シフトレンジの表示がなくなる。
【0062】
以上のシフトポジションインジケータ61及びシフトレンジインジケータ62の各表示はハイブリッドECU100によって制御される。
【0063】
−ECU−
ハイブリッドECU100は、エンジン1の運転を制御するエンジンECU200と、モータジェネレータMGの駆動を制御するMG_ECU300との間で制御信号やデータ信号を送受信し、エンジン1の運転制御、モータジェネレータMGの駆動制御、並びに、エンジン1及びモータジェネレータMGの協調制御などを含む各種制御を実行する電子制御装置である。
【0064】
ハイブリッドECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びバックアップRAMなどを備えている。
【0065】
ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMはエンジン1の停止時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0066】
なお、エンジンECU200及びMG_ECU300においても、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備えている。
【0067】
図2に示すように、ハイブリッドECU100には、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)を検出するエンジン回転数センサ101、変速機2の入力軸2Aの回転数を検出する入力軸回転数センサ102、変速機2の出力軸2Bの回転数を検出する出力軸回転数センサ103、エンジン1のスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ104、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ105、ハイブリッド車両HVの速度を検出する車速センサ106、上記シフトポジションセンサ107、MG回転数センサ108、バッテリ302の充放電電流を検出する電流センサ109、バッテリ温度センサ110、及び、ブレーキペダルに対する踏力(ブレーキ踏力)を検出するブレーキペダルセンサ111などが接続されている。さらにハイブリッドECU100には、エンジン冷却水温を検出する水温センサ、吸入空気量を検出するエアフロメータ、吸気温センサなどのエンジン1の運転状態を示すセンサなどが接続されており、これらの各センサからの信号がハイブリッドECU100に入力される。
【0068】
そして、ハイブリッドECU100は、バッテリ302を管理するために、上記電流センサ108によって検出された充放電電流の積算値や、上記バッテリ温度センサ109にて検出されたバッテリ温度などに基づいて、バッテリ302の充電状態(SOC:State of Charge)や、バッテリ302の入力制限Win及び出力制限Woutなどを演算する。また、ハイブリッドECU100は、シフトポジションインジケータ61及びシフトレンジインジケータ62の表示制御を実行する。
【0069】
さらに、ハイブリッドECU100は、変速機2のギヤ段を設定する変速指令(ソレノイド制御信号など)を油圧制御回路400に出力する。この変速指令に基づいて、油圧制御回路400のリニアソレノイドバルブやON−OFFソレノイドバルブの励磁・非励磁などが制御され、所定のギヤ段(第1速(1st)〜第8速(8th))を構成するように、変速機2のクラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2が所定の状態(図3参照)に係合または解放される。この変速機2の変速制御の詳細については後述する。
【0070】
さらに、ハイブリッドECU100は、下記の[走行制御]、[自動変速制御]及び[Sモード時の変速制御]を実行する。
【0071】
[走行制御]
ハイブリッドECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジンECU200及びMG_ECU300に出力要求を送信して駆動力を制御する。具体的には、アクセル操作量Acc及び車速Vに基づいてドライバの要求駆動力Trを算出し、その要求駆動力Trが得られるように、エンジンECU200及びMG_ECU300に出力要求を送信して、エンジン1及びモータジェネレータMGの駆動を制御することによりハイブリッド車両HVの走行制御を行う。
【0072】
例えば、発進時や低速走行時等であってエンジン1の運転効率が悪い場合には、モータジェネレータMGのみにより走行(以下、「EV走行」ともいう)を行う。また、車室内に配置された走行モード選択スイッチによってドライバがEV走行モードを選択した場合にもEV走行を行う。
【0073】
一方、通常走行時には、要求駆動力Trに見合う動力がエンジン1から出力されるようにエンジン1を駆動して、そのエンジン1の動力で走行(エンジン走行)を行う。
【0074】
また、高速走行時には、さらにバッテリ(走行用バッテリ)302からの電力をモータジェネレータMGに供給し、このモータジェネレータMGの出力を増大させて駆動輪4に対して駆動力の追加(駆動力アシスト;力行)を行う。
【0075】
さらに、減速時(コースト走行時)には、モータジェネレータが発電機として機能して回生発電を行い、回収した電力をバッテリ302に蓄える制御を行う。なお、バッテリ302の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン1の出力を増加してモータジェネレータMGによる発電量を増やしてバッテリ302に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時においても必要に応じてエンジン1の駆動量を増加する制御を行う場合もある。例えば、前述のようにバッテリ302の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン1の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合や、車両が急加速する場合等である。
【0076】
[変速制御]
本実施形態では、車両走行状態(アクセル開度Acc及び車速V)に応じて変速機2を自動変速する自動変速モードと、ドライバ(ユーザ)の操作に応じて変速機2を手動変速するSモード(手動変速モード)とを選択することが可能である。その各モードについて説明する。
【0077】
(自動変速モード)
まず、この例の変速制御に用いる変速マップについて図6を参照して説明する。
【0078】
図6に示す変速マップは、車速V及びアクセル開度Accをパラメータとし、それら車速V及びアクセル開度Accに応じて、適正なギヤ段(最適な燃費となるギヤ段)を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、ハイブリッドECU100のROM内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(ギヤ段の切り替えライン)によって区画されている。
【0079】
図6に示す変速マップにおいて、アップシフト線(変速線)を実線で示し、ダウンシフト線(変速線)を破線で示している。また、アップシフト及びダウンシフトの各切り替え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。なお、図6には、第1ギヤ段(1st)〜第4ギヤ段(4th)までの変速線を記載しているが、実際に使用する変速線マップには、第1ギヤ段(1st)から第8ギヤ段(8th)までの変速領域を区画するアップシフト線及びダウンシフト線が設定されている。
【0080】
次に、自動変速制御の基本動作について説明する。
【0081】
ハイブリッドECU100は、車速センサ106の出力信号から車速Vを算出するとともに、アクセル開度センサ105の出力信号からアクセル開度Accを算出し、それら車速V及びアクセル開度Accに基づいて、図6の変速マップを参照して目標ギヤ段を算出し、その目標ギヤ段と現状ギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0082】
その判定結果により、変速の必要がない場合(目標ギヤ段と現状ギヤ段とが同じで、ギヤ段が適切に設定されている場合)には、油圧制御回路400に変速指令を出力せずに現状ギヤ段を維持する。
【0083】
一方、目標ギヤ段と現状ギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、変速機2のギヤ段が「第3ギヤ段」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図6に示す点Paから点Pbに変化した場合、ダウンシフト変速線[3→2]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標ギヤ段が「第2ギヤ段」となり、その第2ギヤ段を設定する変速指令を油圧制御回路400に出力して、第3ギヤ段から第2ギヤ段への変速(3→2ダウンシフト変速)を行う。
【0084】
なお、車速Vは、出力回転数センサ103の出力信号から算出するようにしてもよい。また、変速機2の現在のギヤ段は、例えば、変速機2を構成しているクラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2のそれぞれの係合・解放状態から認識することができる。それらクラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2の係合・解放状態は油圧スイッチ等によって検出することができる。
【0085】
(Sモード)
次に、Sモードについて説明する。
【0086】
まず、本実施形態では、上記シフト操作装置5のシフトレバー51がDポジションからSポジション(Sモード)に切り替えられると、シフトポジションセンサ107からハイブリッドECU100にSモード信号が出力されて、シーケンシャルシフトマチックによるレンジの切り替え操作が可能なSモードに移行する。また、Sモードに移行したときには、図5に示すシフトポジションインジケータ61の「S」の文字が点灯する。
【0087】
Sモードが設定された場合、ハイブリッドECU100は、例えば現在の変速機2のギヤ段を上限ギヤ段とし、その上限ギヤ段(下限変速比)を最も高い側のギヤ段(最も低い側の変速比)とする制限ギヤ段(制限変速比)範囲内で自動変速を行う制御(レンジホールド制御)を実行する。
【0088】
具体的には、Sモードに切り替えられたときのギヤ段が、例えば第6ギヤ段(6th)である場合、その第6ギヤ段を上限ギヤ段とし、図5に示すシフトレンジインジケータ62に「6」の文字が表示される。この場合、図7に示すように、上限ギヤ段である第6ギヤ段(6th)〜第1ギヤ段(1st)の間において、変速機2の自動変速(上記した変速マップに基づく自動変速制御)が可能な状態になる。
【0089】
また、上限ギヤ段が第6ギヤ段である状態で、シフトレバー51が「−」側に一回操作(ダウンシフト操作)された場合は、上限ギヤ段が第5ギヤ段(5th)に変更されるとともに、その第5ギヤ段(5th)〜第1ギヤ段(1st)の間において、変速機2の自動変速(上記した変速マップに基づく自動変速制御)が可能な状態になる(図7参照)。
【0090】
一方、上限ギヤ段が第6ギヤ段である状態で、シフトレバー51が「+」側に一回操作(アップシフト操作)された場合は、上限ギヤ段が第7ギヤ段(7th)に変更されるとともに、その第7ギヤ段(7th)〜第1ギヤ段(1st)の間において、変速機2の自動変速(上記した変速マップに基づく自動変速制御)が可能な状態になる(図7参照)。
【0091】
なお、シフトレバー51がDポジションからSポジション(Sモード)に切り替えたときの上限ギヤ段については、その切り替え時の変速機2のギヤ段(例えば第6ギヤ段)よりも1段低いギヤ段(第5ギヤ段)または1段高いギヤ段(第7ギヤ段)を上限ギヤ段とするようにしてもよい。
【0092】
なお、上記シフト操作装置5が、本発明の「手動変速装置」に相当する。また、本発明の「変速機のギヤ段または変速比の範囲を狭める操作」とは、上記シフト装置5のシフトレバー51のSポジションでの手動操作により上記上限ギヤ段を下げる操作に相当する。
【0093】
ところで、上記したようなSモードでのレンジホールド制御において、ドライバが手動操作にて設定している上限ギヤ段(シフトレンジインジケータ62に表示されているギヤ段)と、変速機2の実際のギヤ段(以下、実ギヤ段ともいう)とが異なる場合がある。この点について説明する。
【0094】
まず、車両走行中にDポジションからSポジション(Sモード)に切り替って、上限ギヤ段が例えば第3ギヤ段(3rd)に設定されている場合(図6の破線丸印の状態)、ドライバによる手動ダウンシフト操作(「−」側へのレバー操作)が行われない状態で、車速Vが低下していき、その低下車速Vが図6のダウンシフト変速線[3→2]を跨いでしまうと、変速機2の自動変速が実行されて実ギヤ段のみが第3ギヤ段から第2ギヤ段に変更されてしまう。これに対し、上限ギヤ段(シフトレンジインジケータ62に表示のギヤ段)は変化せずに第3ギヤ段のままが維持されるので、変速機2の実ギヤ段と上限ギヤ段とが乖離する。
【0095】
そして、このような状態、つまり、ドライバが設定しているギヤ段よりも実ギヤ段が低い状態で、ドライバがダウンシフトしようとしてシフトレバーを「−」側に1回操作した場合、その手動ダウンシフト操作では上限ギヤ段が第3ギヤ段から第2ギヤ段に変更されるのみであり、変速機2の実ギヤ段は変化しない(以下、この状況を「空打ち」ともいう)。こうした状況になると、ダウンシフトによる車両挙動(減速)が現れないので、ドライバが要求した通りの減速感を出すことができない。
【0096】
なお、このような点を考慮して、従来制御では、ドライバのダウンシフト要求で、変速機2を実際に変速できるように、上限ギヤ段を1段ずつではなく、例えば上限ギヤ段である第3ギヤ段からギヤ段を2段下げるようにしている。しかし、このような制御では、手動ダウンシフト操作により、上限ギヤ段が変速比が最も大きい第1ギヤ段に設定されてしまうので、上記変速マップに基づく自動変速(シフトアップ変速)ができなくなってしまい、そのダウンシフト変速後の加速時には、ドライバがシフトアップ操作を1段ずつ行う必要があって、その変速操作が煩雑になる場合がある。なお、第4ギヤ段以上の上限ギヤ段から複数段(2段以上)下げる場合にも、上記と同様に、ダウンシフト変速後の加速時の変速操作が煩雑になる。
【0097】
[Sモード時の変速制御]
以上のような点を考慮し、本実施形態では、Sモード時においてドライバが手動ダウンシフト操作を行ったときに、変速機2の実際の変速比が変化しない場合(空打ちの場合)であっても減速挙動を出すことで、ドライバが減速感を得られるようにする。これを実現するための具体的な制御(Sモード時の変速制御)について図8のフローチャートを参照して説明する。
【0098】
図8の制御ルーチンはハイブリッドECU100において所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返して実行される。
【0099】
まず、ステップST101では、シフトポジションセンサ107の出力信号に基づいて、Sモード(手動変速モード)が選択されているか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合はリターンする。ステップST101の判定結果が肯定判定(YES)である場合はステップST102に進む。
【0100】
ステップST102では、シフトポジションセンサ107の出力信号に基づいて、手動ダウンシフト要求(シフトレバー51の「−」側への操作)があったか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合はリターンする。ステップST102の判定結果が肯定判定(YES)はステップST103に進む。
【0101】
ステップST103においては、上記手動ダウンシフト要求時の上限ギヤ段が変速機2の実ギヤ段よりも大きいか否かを判定する。具体的には、手動ダウンシフト要求時に上記インパネのシフトレンジインジケータ62(図5参照)に表示の上限ギヤ段が、変速機2の実ギヤ段よりも大きいか否かを判定を判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合はステップST107に進む。ステップST103の判定結果が判定結果が肯定判定(YES)である場合([上限ギヤ段>実ギヤ段]である場合)は、上記した空打ちが発生する可能性があると判定してステップST104に進む。
【0102】
ステップST104では、変速機2の油圧制御回路400に変速指令を油圧制御回路400に変速指令を出力せずに現状ギヤ段が維持される。すなわち、上記手動ダウンシフト要求時の上限ギヤ段と変速機2の実ギヤ段とが乖離している場合には、変速機2の変速は行われない。
【0103】
次に、ステップST105では、モータジェネレータMGによって駆動輪4に減速力を発生させるための減速トルク量(減速度量)を算出する。このモータジェネレータMGによる減速トルク量の算出処理については後述する。
【0104】
そして、ステップ106において、上記ステップST105で算出した減速トルク量をモータジェネレータMGが出力するようにMG_ECUにトルク指令を出力する。MG_ECUは、ハイブリッドECU100からのトルク指令信号に応じてモータジェネレータMGの駆動電流を制御することによって変速機2の入力軸2A(駆動輪4)に減速トルクを出力する(モータジェネレータMGによる減速度を大きくする)。
【0105】
一方、上記ステップST103の判定結果が否定判定(NO)である場合([上限ギヤ段≦実ギヤ段]である場合)は、ステップST107において、変速機2の油圧制御回路400に変速指令(上記手動ダウンシフト要求に応じたダウンシフト変速指令)を出力して変速機2の実ギヤ段をダウンシフト変速する。さらにステップST108において、変速機2の変速制御に必要なMGトルク(モータジェネレータMGの出力トルク)を算出する。例えば、変速機2の変速によってモータジェネレータMGが回転される際に、そのモータジェネレータMGの回転変化によって生じるイナーシャ分をキャンセルするようにモータジェネレータMGの出力トルクを算出する。そして、その算出したトルクをモータジェネレータMGが出力するようにMG_ECUにトルク指令を出力する(ステップST106)。
【0106】
次に、以上のSモード時の変速制御について、図9のタイミングチャートを参照して具体的に説明する。
【0107】
まず、自動変速モード(ドライブレンジ)での走行中において、タイミングt1の時点でアクセルOFFとなり、その後に、タイミングt2の時点でドライバの操作によりSモード(シーケンシャルモード)が選択されると、上限ギヤ段(図中の1点鎖線)が設定される。この時点では、上限ギヤ段(例えば第4ギヤ段)と変速機2の実ギヤ段(図中の実線)とは同じである。
【0108】
次に、タイミングt3の時点で、ドライバによるシフトレバー51の操作によりダウンシフト要求があった場合、その時点t3で変速機2の実ギヤ段が1段ダウンシフト(第4ギヤ段→第3ギヤ段)される。このとき、変速機2の変速は、ドライバによる手動ダウンシフト操作(「−」側へのレバー操作)による手動変速であるので、上限ギヤ段(インパネのシフトレンジインジケータ62に表示のギヤ段)についても1段だけ下げられる(第4ギヤ段→第3ギヤ段)。これにより上限ギヤ段と変速機2の実ギヤ段とは同じになる。なお、このようなドライバ手動操作による変速機2のダウンシフト変速により、ハイブリッド車両HVの駆動力が低下(図中Xa部分の駆動力低下)するとともに、出力軸回転数(車速)も低下する(図中Xb部分の回転数低下)。
【0109】
この後、コースト走行により車速Vが低下して、図6に示す変速マップのダウンシフト線を跨いだ場合(例えば、ダウンシフト変速線[3→2]を跨いだ場合)、その時点t4で、変速機2が自動変速され、変速機2の実ギヤ段のみが1段下げられる(第3ギヤ段→第2ギヤ段)。この変速機2の自動変速の際には、ドライバによる手動ダウンシフト操作(「−」側へのレバー操作)が行われていないので、上限ギヤ段は変更されず、図9(t4〜t6)に示すように、変速機2の実ギヤ段(実線)と上限ギヤ段(一点鎖線)とが乖離する。
【0110】
このような状態つまりドライバの手動操作にて設定している上限ギヤ段(第3ギヤ段)よりも変速機2の実ギヤ段が低い状態(第2ギヤ段の状態)で、ドライバがダウンシフトしようとしてシフトレバーを「−」側に1回操作した場合、その手動ダウンシフト操作では上限ギヤ段のみが変更(第3ギヤ段→第2ギヤ段)されるだけであり、変速機2の実ギヤ段は変化しない(空打ち)。こうした状況になると、ダウンシフトによる車両挙動(減速)が現れない(図中Xc部分の破線)。
【0111】
そこで、本実施形態では、上記タイミングt4で開始した変速機2の自動変速制御が終了した後、タイミングt5の時点で空打ち予測フラグをONする。そして、その空打ち予測フラグがON状態であるときに、タイミングt6の時点(上限ギヤ段と実ギヤ段とが乖離している状態)でドライバによる手動ダウンシフト要求があった場合(図8のステップST103が肯定判定である場合)は、モータジェネレータMGの駆動を制御して、減速トルク(MGトルク)を、図中Xd部分の破線で示すトルク(空打ち時のMGトルク)よりも大きくする(図8のステップST105及びST108の処理を実行する)。
【0112】
具体的には、変速機2の変速が実際に行われた場合の駆動力の低下(図中Xa部分のトルク相及びイナーシャ相における駆動力低下)と同じような形態の減速力が発生するように、モータジェネレータMGを制御して減速トルク(図中Xd部分の実線で示すMGトルク)を出力する。このような制御を実行することにより、変速機2を変速した場合と同じような減速力(図中Xc部分の実線で示す駆動力低下)を発生させることができる。
【0113】
なお、このような空打ちを防止するための減速度制御を「空打ち防止減速度制御」とも呼ぶ。
【0114】
以上のように、本実施形態によれば、変速機2の手動操作時に、ドライバ(ユーザ)によってギヤ段(変速比)の範囲を狭める操作(ダウンシフト操作)があったときに、変速機2の実際の変速比(ギヤ段)が変化しない場合であっても、モータジェネレータMGにて減速トルクを発生することができる。これにより、空打ちの状況であっても、ドライバは、実際に変速機2を変速した場合と同等な減速感を得ることができる。しかも、1回の手動ダウンシフト操作ごとに減速挙動を出すことができるので、上記した従来制御(1回の手動ダウン操作で上限ギヤ段を複数段変更する制御)のような問題も発生しない。これによって、ダウンシフト後の再加速時に、ドライバがシフトアップ操作を何度も行う必要がなくなって再加速時の変速操作に煩わしさがなくなる。
【0115】
[減速トルク量]
次に、上記空打ちを防止するための減速トルク量(空打ち時にモータジェネレータMGにて発生する減速トルク量)について説明する。
【0116】
まず、空打ち時のモータジェネレータMGによる減速トルク量は、現在の車速Vに基づいてマップ等を参照して算出し、その減速トルク量を出力できるようにモータジェネレータMGの駆動を制御(フィードフォワード制御)する。
【0117】
上記減速トルク量の算出に用いるマップは、例えば、車速Vをパラメータとして、変速機2を変速した場合と同等の減速力を発生できるような減速トルク量を、実験・シミュレーション等によって取得しておき、その結果を基に適合した値をマップ化したものを用いる。また、このような減速トルク算出マップは、変速機2の各ギヤ段ごとに作成しておき、ハイブリッドECU100のROM内に記憶しておく。この場合、変速機2のギヤ段が低いほど(変速比が大きいほど)、減速トルクのマップ値が大きくなるように各マップの減速トルク値を設定するようにしてもよい。
【0118】
ここで、手動ダウンシフト操作で変速機2を変速する場合と、変速機2を変速せずにモータジェネレータMGによって減速力を発生する場合とにおいて、減速力が異なる場合がある(上記したフィードフォワード制御により減速トルクを設定する場合に発生する可能性がある)。このような点を解消するには、減速トルクの学習補正を行えばよい。その補正方法の一例について説明する。
【0119】
図1のハイブリッド車両において、変速機2をダウンシフト変速した際のトルクは、変速機2の変速前後の出力軸回転数Noutの変化量に相関があるので、その出力軸回転数Noutの変化量を用いて以下の処理にて減速トルクの補正を行う。
【0120】
(i)前回に変速機2をダウンシフト変速したときの、変速前後における出力軸回転数Noutの変化量(出力軸回転数変化量ΔNoutat)を求めておく。例えば、図9に示すXb部分の出力軸回転数変化量Noutatを求めておく。
【0121】
(ii)前回に空打ち防止減速度制御を実施したときの、変速機2の出力軸回転数Noutの変化量(出力軸回転数変化量ΔNoutmg)を求めておく。例えば、図9に示すXe部分の出力軸回転数変化量Noutmgを求めておく。
【0122】
(iii)上記出力軸回転数変化量ΔNoutatと出力軸回転数変化量ΔNoutmgとの差を求め、その出力軸回転数変化量の差(ΔNoutat−ΔNoutmg)に基づいて図10のマップを参照して変速トルク補正値を求める。
【0123】
ここで、図10の補正値マップは、実験・シミュレーション等によって適合したマップであり、ハイブリッドECU100のROM内に記憶されている。この補正値マップにおいては、空打ち防止減速度制御により発生する出力軸回転数変化量Noutmgが、変速機2を変速した際に発生する出力軸回転数変化量ΔNoutatよりも小さい場合、その回転数変化量差(ΔNoutat−ΔNoutmg)が大きいほど、減速トルク補正値が正側に大きくなるように設定されており、また、出力軸回転数変化量Noutmgが出力軸回転数変化量ΔNoutatよりも大きい場合は、回転数変化量差(ΔNoutat−ΔNoutmg=負の値)が大きいほど、減速トルク補正値が負側に大きくなるように設定されている。なお、このような補正値マップは変速機2の各ギヤ段ごとに作成しておいてもよい。
【0124】
(iv)上記(iii)の処理で求めた減速トルク補正値を用いてモータジェネレータMGが出力する減速トルクを学習補正する。
【0125】
具体的には、例えば、前回に空打ち防止減速度制御を実施した際の減速トルク(例えば、上記した減速トルク算出マップから求めた減速トルク)に上記減速トルク補正値を加算したものを今回の空打ち防止減速度制御時の減速トルクとし、この今回の空打ち防止減速度制御時の出力軸回転数変化量Noutmgから求めた減速トルク補正値を今回の減速トルク値に加算したものを、次回の空打ち防止減速度制御時の減速トルクとするという学習補正を行う。このような学習補正により、空打ち防止減速度制御時の減速トルクを、実際に変速機2を変速した場合の減速トルクにより近づけることができる。
【0126】
なお、上記減速トルク補正値を求める際に用いる変速機2の出力軸回転数変化量Noutatについては、実走行中に出力軸回転数センサ103の出力信号に基づいてオンラインで取得するようにしてもよい。また、変速機2の変速前後の変速比の変化と出力軸回転数変化量との関係をマップ化したマップを作成しておき、そのマップを参照して出力軸回転数変化量Noutatを求めるようにしてもよい。
【0127】
[変形例]
以上の実施形態において、ハイブリッド車両HVの減速要求(例えば、ブレーキペダル踏み込み等による減速要求)がある場合、その減速要求量が大きいほど、上記空打ち防止減速度制御時の減速トルクを大きくするようにしてもよい。このようにすれば、車両の減速要求に応じた適切な制動力を得ることができる。
【0128】
また、走行路面が下り勾配(降坂路)である場合などで減速要求見込み量が大きいほど(下り勾配が大きいほど)、上記空打ち防止減速度制御時の減速トルクを大きくするようにしてもよい。このようにすれば、例えば降坂路の勾配に対応した適切な制動力を得ることができる。
【0129】
−他の実施形態−
以上の例では、シーケンシャルモード(Sモード)の選択が可能な車両の制御について説明したが、本発明はこれに限られることなく、例えばマニュアルシフトモードやスポーツモードと称されている手動変速モード(シーケンシャルモードに相当する変速モード)の選択が可能な車両の制御にも適用可能である。
【0130】
以上の例では、前進8段の有段式変速機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限られることなく、例えば前進6段などの任意複数段の有段式変速機が搭載された車両の制御にも適用可能である。
【0131】
以上の例では、FR方式のハイブリッド車両の制御に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限られることなく、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両の制御にも適用可能である。
【0132】
以上の例では、1つの回転電機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例について説明したが、2つもしくは3つ以上の回転電機(モータもしくはモータジェネレータ)が搭載されたハイブリッド車両の制御にも本発明は適用可能である。
【0133】
以上の例では、有段式変速機が搭載された車両の制御に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ベルト式無段変速機などの無段変速機が搭載された車両であって、その無段変速機の変速比を手動操作によって段階的に設定する手動変速モード(レンジホールド制御)の選択が可能な車両の制御にも本発明は適用可能である。
【0134】
また、走行用の駆動源として回転電機(モータジェネレータ)のみが搭載され、その回転電機と駆動輪との間に変速機が設けられた車両(電気自動車(EV)や燃料電池車両)であって、手動変速モード(レンジホールド制御)の選択が可能な車両の制御にも本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、車両の制御に利用可能であり、さらに詳しくは、走行用の駆動力を駆動輪に伝達する駆動力伝達経路に変速機が設けられた車両の制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 エンジン
2 変速機
4 駆動輪
5 シフト操作装置(手動変速装置)
51 シフトレバー
62 シフトレンジインジケータ
100 ハイブリッドECU
103 出力軸回転数センサ
105 アクセル開度センサ
106 車速センサ
107 シフトポジションセンサ
200 MG_ECU
MG モータジェネレータ(回転電機)
400 油圧制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の動力を変速して車輪に伝達する変速機と、
車輪に動力を伝達可能に設けられた回転電機と、
前記変速機のギヤ段または変速比の範囲を指示する手動変速手段と、
を備える車両の制御装置であって、
前記手動変速装置による前記ギヤ段または変速比の範囲を狭める操作がなされても、前記ギヤ段または変速比が変更されない場合は、前記ギヤ段または変速比が変更される場合よりも、前記回転電機による減速度を大きくする減速度制御を実行することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
前回に前記変速機のギヤ段または変速比を狭める操作がなされた際の減速度に基づいて、次回に前記減速度制御を行う際の前記回転電機による減速度の大きさを補正することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両の制御装置において、
前回に前記変速機のギヤ段または変速比を狭める操作がなされた際の当該変速機の出力側の回転数の変化量と、前回に前記減速度制御を行った際の前記変速機の出力側の回転数の変化量との差を求め、その回転数変化量差に基づいて、次回に前記減速度制御を行う際の前記回転電機による減速度の大きさを補正することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記減速度制御を行う際の前記回転電機による減速度は、前記手動変速装置の指示による前記ギヤ段または変速比の範囲が狭いほど大きく設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記手動変速装置の指示による前記変速比の範囲が狭いほど変速比の変化幅が大きく設定されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記減速度制御を行う際の前記回転電機による減速度は、車両の減速要求または減速要求見込み量が大きいほど大きく設定することを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86763(P2013−86763A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231949(P2011−231949)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】