車両の前部車体構造
【課題】歩行者との衝突時、脚払い機能を確保しつつデザイン自由度の高い前部車体構造、歩行者の高い安全性を確保できる前部車体構造等を提供すること。
【解決手段】脚払い部材6は、車幅方向中央部分の上下方向の高さ位置が導入開口5cの下側開口縁部の後方近傍部になるように配置され、車幅方向外側端部の上下方向の高さ位置が導入開口5bと導入開口5cの中間位置になるように配置されている。以上により、脚払い部材6の配置位置を低く配置した場合であっても、車幅方向左右側下方に空間部を形成することができ、バンパフェイス5の形状を平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができ、デザイン自由度を高くすることができる。
【解決手段】脚払い部材6は、車幅方向中央部分の上下方向の高さ位置が導入開口5cの下側開口縁部の後方近傍部になるように配置され、車幅方向外側端部の上下方向の高さ位置が導入開口5bと導入開口5cの中間位置になるように配置されている。以上により、脚払い部材6の配置位置を低く配置した場合であっても、車幅方向左右側下方に空間部を形成することができ、バンパフェイス5の形状を平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができ、デザイン自由度を高くすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部車体構造に関し、特にフロントサイドフレームの下側且つバンパレインフォースメントの前側位置に歩行者の下脚部を払う車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込み等の二次障害を防止することを目的として、衝突時に歩行者の下脚部を払って歩行者をボンネットの上に跳ね上げることが行われている。この具体的な構成として、バンパレインフォースメントの下方位置にシュラウドロアメンバに支持され車幅方向に延びた車幅方向部材、所謂脚払い部材を備えた前部車体構造が公知である。脚払い部材は、歩行者との衝突時に車体後方へ向かって潰れながら衝突エネルギーを吸収するため、一定の支持剛性が要求され、シュラウドロアメンバ等の車体構成部材にブラケットを介して支持されている。
【0003】
特許文献1に記載された車体構造においては、左右1対のフロントサイドフレームに固定された1対の支持部材と、これらの支持部材に支持された車幅方向に延びる車幅方向部材としての脚払い部材をバンパレインフォースメントの下方且つ前方位置に設け、この脚払い部材を歩行者との衝突エネルギーに応じて変形可能に構成している。この車体構造では、脚払い部材をフロントサイドフレームに強固に支持することができ、脚払い部材の変形によって衝突による衝撃荷重を吸収して歩行者の下脚部の安全を確保している。
【0004】
車両デザインの多様化に伴い、ボンネット高さを低くし、平面視で見てバンパフェイスの外表面を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方へ湾曲させた流線形形状の前部車体構造も存在している。この前部車体構造では、ラジエータを前傾姿勢にすると共に、車幅方向外側部分に配置される車体構成部材のレイアウトをバンパフェイスの湾曲形状に応じて調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−88634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の車体構造では、シュラウドロアメンバが車体前部の後方位置に配置された場合であっても、脚払い部材を剛性の高いブラケットやタイダウンフック等の支持部材によってフロントサイドフレームへ強固に固定することができる。しかし、脚払い部材は左右のフロントサイドフレームの下方において車幅間に亙って配置され、バンパフェイスはこの脚払い部材の左右端部の外周を覆う必要があることから、バンパフェイスの下部形状が平面視で見て車幅方向外側に突出した形状になる虞がある。
【0007】
また、歩行者の脚払い機能は、脚払い部材の配置位置が低いほど、歩行者の下脚部を効率良く払うことができ、歩行者を確実にボンネットの上に案内することができる。しかし、脚払い部材の配置位置が低いほど、車体下部において脚払い部材の外側端部が車幅方向外側へ突出するため、車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲するような外観を備えたバンパフェイス形状の実現が困難になる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、歩行者との衝突時、脚払い機能を確保しつつデザイン自由度の高い前部車体構造、歩行者の高い安全性を確保できる前部車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の車両の前部車体構造は、ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、このバンパレインフォースメントよりも前方に設けられると共に車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し且つ車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外表面を形成するバンパフェイスと、前記1対のフロントサイドフレームよりも下側位置で且つ前端が前記バンパレインフォースメントより前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造において、前記車幅方向部材は、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方位置になるよう構成されたことを特徴としている。
【0010】
この前部車体構造においては、車幅方向部材の配置位置を低くしつつ、車幅方向部材の車幅方向外側端部分を車幅方向中央部分よりも上方位置に配置することができ、バンパフェイスの左右端側下部の車幅方向外側への突出量を抑えることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記車幅方向部材の車幅方向外側端部が、少なくとも前記1対のフロントサイドフレームの直下位置に配置されたことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部に亙って上方に向かって滑らかに湾曲するよう形成されたことを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部分への移行部に上方に延びる立上り部を備えたことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1つの発明において、前記1対のフロントサイドフレームに前記車幅方向部材を支持するための左右1対の支持部材を設け、前記1対の支持部材は前記車幅方向部材に入力した車両前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1つの発明において、前記車幅方向部材の下側において車体の下面を覆うアンダカバーを有し、このアンダカバーの車幅方向中央部分の前端部に前記車幅方向部材を支持する支持部を備えたことを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1つの発明において、前記1対のフロントサイドフレーム間における前記車幅方向部材の後方位置に熱交換器と、この熱交換器を支持するシュラウドを設け、前記熱交換器は、車体前後方向前方に前傾姿勢となるように配置されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、車幅方向部材の配置位置を低くした場合でも、正面視で見て車両下部における車幅方向部材の車幅方向外側への突出量を抑えることができるため、バンパフェイスの左右端側下部を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状にすることができ、車体前部のデザイン自由度を高くすることができる。しかも、車幅方向部材の配置を低くできるため、歩行者の下脚部を確実に払うことができ、歩行者を効率良くボンネットの上に案内することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、左右のフロントサイドフレーム間に亙って車幅方向に広い範囲で歩行者の下脚部を払うことができ、衝突時における歩行者の安全性を確保することができる。
請求項3の発明によれば、車幅方向部材の長さを短く形成することができ、車体重量の軽量化を図ることができる。しかも、車幅方向部材が滑らかに湾曲するため、歩行者の下脚部が車幅方向部材に接触したとき、歩行者を車幅方向中央側のボンネット上へ積極的に誘導することができ、車体前部の車幅方向外側部分において歩行者のバンパレインフォースメントによる底突きを防止することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、立上り部の車幅方向外側にバンパフェイスが湾曲可能な空間部を形成することができるため、平面視で見てバンパフェイスの下部を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状にすることができ、デザイン自由度を高くすることができる。
請求項5の発明によれば、支持部材の衝撃吸収部が衝突エネルギーを吸収するため、車幅方向部材を小型化することができ、車体の軽量化を図ることができる。しかも、歩行者をボンネット上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を車幅方向部材と衝撃吸収部とが協働して吸収するため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低く抑えることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、歩行者との衝突時、車幅方向部材の中央部に掛る下向きのモーメントをアンダカバーによって支持することができ、歩行者を確実にボンネット上へ案内することができる。
請求項7の発明によれば、ラジエータが前傾姿勢となるように配置された低ボンネットの車両において脚払い機能を確保しつつ車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る前部車体の平面図である。
【図2】バンパフェイスを外した車両の正面図である。
【図3】シュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】支持部材の斜視図である。
【図7】支持部材とアンダカバーとの連結構造を示す図である。
【図8】実施例2に係る図2相当図である。
【図9】実施例2に係る図3相当図である。
【図10】実施例3に係る支持部材を一体形成したクラッシュカンの変形例の斜視図である。
【図11】アンダカバーの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
尚、以下の実施例において、車両の前後方向を前後方向とし、車両の左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例について図1〜図7に基づいて説明する。
車両Vの前部車体1は、エンジンルームEの上部を覆うボンネット2と、車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、前部車体1の外表面を形成するバンパフェイス5と、車幅方向に延びた脚払い部材6(車幅方向部材)と、脚払い部材6を左右1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7と、エンジン(図示略)の冷却水と走行風との熱交換を行うラジエータ8(熱交換器)等を備えている。
【0021】
ボンネット2の前端部分には、外縁形状に沿って車幅方向に延びるボンネットレインフォースメント2aが配置されている。ボンネットレインフォースメント2aは、ボンネット2と閉断面部を形成している。
【0022】
左右1対のフロントサイドフレーム3は、車室の前端部を仕切るダッシュパネル(図示略)の前側においてエンジンルームEの左右両側に前後方向に延びるように形成されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、車両Vの前側位置から後方へ向かって略水平状に延び且つ後端側途中部がダッシュパネルの縦壁部に接合されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、同様の構成であるため、右側のフロントサイドフレーム3を主に説明する。
【0023】
図3〜図5に示すように、フロントサイドフレーム3は、車幅方向外側のアウタパネルと、車幅方向内側のインナパネルとから構成され、これらのアウタパネルとインナパネルによって断面が略矩形形状の閉断面部を形成している。フロントサイドフレーム3には、上下方向に延びる複数のビード部3aがアウタパネルとインナパネルの夫々に形成されている。各々のビード部3aのビード深さとビード幅と上下長は、前面衝突時、フロントサイドフレーム3が所定の方向へ折れ変形するように設定されている。
【0024】
フロントサイドフレーム3の前端部分には、シュラウドパネル(図示略)を介してクラッシュカン9を取付けるためのフランジ部3bが形成されている。角筒状のクラッシュカン9は、車体前後方向に直交し且つクラッシュカン9の内方に凹入した環状の前後2列の溝部9aが形成されている。クラッシュカン9は、ボルトによって後端部分をフランジ部3bに締結固定されている。
【0025】
クラッシュカン9の前端部分には、バンパレインフォースメント4が連結されている。バンパレインフォースメント4は、左右方向に延びる閉断面形状に構成されている。クラッシュカン9の前端部は、バンパレインフォースメント4の閉断面内部に嵌入されるように構成されている。従って、クラッシュカン9が嵌入する部分では、バンパレインフォースメント4の断面は略コ字形状になっている。以上により、左右1対のクラッシュカン9は、車両衝突初期にバンパレインフォースメント4を介して前方から衝撃荷重が入力され、この衝撃荷重により溝部9a等が圧縮変形して潰れることで衝突エネルギーを吸収する。
【0026】
バンパレインフォースメント4の前方には、発泡合成樹脂製の衝撃吸収体10がバンパフェイス5の車幅方向全域に亙って配置されている。衝撃吸収体10は、車両衝突時にバンパフェイス5を介して前方からの衝撃荷重により圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収し、所望のエネルギー吸収機能を達成し得るサイズ、形状に構成されている。 衝撃吸収体10は、発泡合成樹脂に限ることなく、複数のリブを組み合わせて構成された合成樹脂構造体等で構成することも可能である。
【0027】
合成樹脂製のバンパフェイス5は、車体前端部分の外表面を形成し、その車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し、平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成されている。それ故、車幅方向中央部分の衝撃吸収体10の前後方向の厚さは、車幅方向外側部分の衝撃吸収体10の前後方向の厚さよりも厚くなるように形成され、クラッシュカン9の前方近傍部の衝撃吸収体10の厚さは中央部分の厚さに比べて薄く形成されている。
また、バンパフェイス5の左右外側の下部部分は下方に張り出した湾曲形状に形成され、バンパフェイス5の外観は正面視で見て左右方向に延びた扁平形状に形成されている。
【0028】
バンパフェイス5は、左右両側にヘッドライトを格納可能な1対のヘッドライト用開口5aと、車幅方向中央領域にエンジンルームE内へ走行風を導入可能な導入開口5bと、導入開口5bの下方位置に形成された走行風を導入可能な導入開口5c等を備えている。
導入開口5bは、左右のフロントサイドフレーム3間の離間距離を長軸とした略楕円形形状に形成されている。導入開口5cは、導入開口5bの長軸と略同様の長軸と導入開口5bに比べて短い短軸とから構成された長細状の楕円形形状に形成されている。バンパフェイス5の左右外側後端部には、バンパフェイス5に連続して車体側部の外表面を形成する左右1対のフロントフェンダ11が装着されている。
【0029】
図3〜図5に示すように、左右1対のフロントサイドフレーム3の間には、ラジエータ8の上部を支持するシュラウドアッパ12と、シュラウドアッパ12に比べて下側且つ後側位置にラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13と、シュラウドアッパ12の左右端部とシュラウドロア13の左右端部を夫々連結する左右1対のシュラウドサイド(図示略)が配置されている。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドは、前傾姿勢になるように配置されると共に、中央領域に開口を備えた矩形枠形状を形成している。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドによって形成された開口は、バンパフェイス5の導入開口5b,5cに対向するように配置されている。以上により、ラジエータ8は、前傾姿勢になるように配置され、ボンネット高さを低く抑えることができる。
【0030】
シュラウドアッパ12とシュラウドロア13の間には、ラジエータ8とラジエータ8用のファン14が配置されている。シュラウドアッパ12には、ラジエータ8の上部を支持するためのブラケット(図示略)がボルト締めによって取付けられている。シュラウドロア13には、ラジエータ8の下部を支持するためのブラケット(図示略)が取付けられている。以上により、ラジエータ8は、導入開口5b等から導入された走行風によってエンジンの冷却水を冷却可能に構成されている。
【0031】
脚払い部材6(車幅方向部材)は、バンパレインフォースメント4の下側位置で且つ、その前端がバンパレインフォースメント4より前方位置、つまり衝撃吸収体10の下方で且つ歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されている。合成樹脂製の脚払い部材6は、正面視で見て下方に凹入した略円弧形状に形成されている。尚、図1において、脚払い部材6は衝撃吸収体10と略同一の位置に設けられるため、記載を省略している。
【0032】
脚払い部材6は、車幅方向中央部分の上下方向の高さ位置が導入開口5cの下側開口縁部の後方近傍部になるように配置され、車幅方向外側端部の上下方向の高さ位置が導入開口5bと導入開口5cの中間位置になるように配置されている。つまり、脚払い部材6は、正面視で見て略均一な曲率になるように形成され、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方位置になるよう湾曲形状に形成されている。また、車幅方向外側端部は、フロントサイドフレーム3の直下位置に設けられている。
【0033】
脚払い部材6は、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d等を備え、車幅方向に延びた中実構造とされている。前面部6cの下部には、前方に突出して車幅方向に延びる突出部6eが形成されている。脚払い部材6の左右端部は、ボルト15によって左右の支持部材7に取付けられている。
【0034】
以上により、正面視で見て脚払い部材6の車幅方向左右外側下方に空間部を形成することができ、バンパフェイス5の形状を、平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができる。
【0035】
また、脚払い部材6の車幅方向外側端部が、フロントサイドフレーム3の直下位置に設けられ、車幅方向中央部分よりもバンパレインフォースメント4に近い位置に設けられるため、歩行者の下脚部を払う際の払い量を車幅方向中央部分よりも抑えることができ、バンパフェイス5の湾曲形状によるバンパレインフォースメント4の車幅方向外側部分におけるパフェイス5との距離の減少に伴う歩行者のバンパレインフォースメント4への底突きを防止することができる。
【0036】
図2〜図6に示すように、鋼板製の支持部材7は、支持部材7をクラッシュカン9に取付けるための取付部7aと、支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7c等によって一体的に構成されている。これら支持部材7は、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。左右の支持部材7は、同様の構成のため、右側の支持部材7について説明する。
【0037】
図6に示すように、取付部7aは、前側部分と中間部分と後側部分にボルト16が貫通可能な3ヶ所のボルト穴20と、車体前後方向に直交し且つ前後2列の溝部9aに対向すると共に各溝部9aと反対側に凹入して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部21等を備えている。支持部材7がクラッシュカン9の下端面に固定されたとき、取付部7aは車体上下方向に対して直交する面と平行に配置され、各ビード部21は車体前後方向に対して直交状に前後配置されている。
【0038】
以上により、車両の衝突によってクラッシュカン9の溝部9a等が圧縮変形して潰れたとき、ボルト16によってクラッシュカン9の下端面に固定された取付部7aは、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部21が圧縮変形され、車体前後方向に潰れることができる。それ故、取付部7aは、クラッシュカン9による衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をクラッシュカン9に支持することができる。
【0039】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に下方へ屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部22(衝撃吸収部)等を備えている。支持本体部7bは、取付部7aから下方に向かう程、前側に移行するように湾曲して形成されている。
【0040】
前側のビード部22は、前側のビード部21の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲する湾曲部22aを備え、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部22は、後側のビード部21の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部部分において前方に向かって湾曲する湾曲部22aを備え、支持本体部7bの前後方向中間位置まで形成されている。前側のビード部22と後側のビード部22の上側部分は上下方向に略平行状に延設され、夫々の下端部分は車体上下方向において略同じ高さ位置まで形成されている。
【0041】
各々のビード部22のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。以上により、歩行者へ衝突時に加わる衝撃荷重を極力低くでき、効果的に歩行者をボンネット2の上に案内することができる。
【0042】
衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部分を車体前側に湾曲させて形成されている。
衝撃伝達部7cの下端部の前側部分は、バンパレインフォースメント4の前端部よりも前方に配置されている。衝撃伝達部7cは、衝撃伝達部7cを貫通可能に設けられた1対のボルト穴23を備えている。脚払い部材6は、1対のボルト穴23を介してボルト15によって支持部材7へ締結固定される。それ故、脚払い部材6の左右端部は、クラッシュカン9の車幅方向外側端部の直下位置に配置されている。
【0043】
図3〜図5に示すように、エンジンルームEの前部の下方には、車体の下面を覆う合成樹脂製のアンダカバー17が配置されている。アンダカバー17は、バンパフェイス5の下端部からラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13の下方位置まで延びている。
図7に示すように、アンダカバー17の前端部には、車幅方向中央位置において脚払い部材6の中央部分を支持する支持ブラケット18が配置されている。
【0044】
金属製の支持ブラケット18は、断面略ハット状に形成されている。支持ブラケット18は、アンダカバー17に連結するための左右両側の連結部18aと、左右の連結部18aの間において脚払い部材6の中央部分と連結するための連結部18b等を備えている。支持ブラケット18は、連結部18aを介して4本のボルト24によってアンダカバー17の上面に固着され、脚払い部材6は、連結部18bを介して2本のボルト25によってアンダカバー17へ支持されている。
【0045】
以上により、車両Vが歩行者と衝突したしたとき、脚払い部材6の中央部分がアンダカバー17に強固に支持されているため、歩行者との衝突時に発生する下向きの曲げモーメントに基づく脚払い部材6の中央部分の移動を防止することができる。それ故、衝突時、予め設定した高さ位置で歩行者の下脚部を確実に払うことができ、歩行者をボンネット2上へ案内することができる。
【0046】
次に、車両Vの衝突時のフロントサイドフレーム3による変形モード制御を説明する。
車両Vの前面衝突が発生した場合、バンパフェイス5と衝撃吸収体10によって吸収されない衝撃荷重は、クラッシュカン9に伝達される。この荷重は、クラッシュカン9の溝部9aを押し潰すことによって吸収される。このクラッシュカン9の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、フロントサイドフレーム3の前端部から入力され、後方に向かって伝達される。
【0047】
フロントサイドフレーム3の前端部分に入力された衝撃荷重は、複数のビード部3aに作用して、各々のビード部3aの折れ変形が開始される。このとき、ビード部3aは凹入状に形成されるため、この部位におけるフロントサイドフレーム3の断面係数はその前後の部位の断面係数よりも小さく、ビード部3aが車幅方向外側に対する折れ部になる。以上により、前面衝突における衝突エネルギーを吸収している。
【0048】
ここで、支持部材7は、取付部7aによってクラッシュカン9に固定されているが、各溝部9aに対応して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部31を設けたため、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部31が圧縮変形して車体前後方向に潰され、衝突初期におけるクラッシュカン9の衝突エネルギーの吸収を阻害しない。
【0049】
次に、脚払い部材6による歩行者の脚払い制御について説明する。
図2〜図5に示すように、歩行者と衝突した場合、脚払い部材6は衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されているため、バンパフェイス5を介して突出部6eが歩行者の下脚部に衝突する。突出部6eに入力した衝撃荷重は、突出部6eまたは上面部6aと下面部6b等の潰れ変形によって吸収される。
【0050】
脚払い部材6の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、衝撃伝達部7cから支持本体部7bに伝達される。支持本体部7bに入力された衝撃荷重は、上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32の変形によって吸収される。支持本体部7bに入力された衝撃荷重が小さな場合、前側のビード部32の前部部分が潰れ変形して衝撃荷重を吸収している。衝撃荷重が大きくなるほど、前側のビード部32の潰れ変形する領域が後方且つ上方に拡大している。前側のビード部32の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、後側のビード部32の潰れ変形によって吸収される。尚、脚払い部材6が上方へ向かって変位する場合、各ビード部32は潰れ変形を行い、脚払い部材6が下方へ向かって変位する場合、各ビード部32は延び変形を行うことで、衝撃荷重を吸収している。
【0051】
以上により、歩行者と車両Vの衝突時、脚払い部材6の突出部6eが歩行者の下脚部と最も早く衝突するため、歩行者の上半身がバンパフェイス5を介してバンパレインフォースメント4と衝突する前に歩行者の下脚部を払って効果的に歩行者をボンネット2の案内することができる。しかも、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重は各ビード部32の潰れ変形によって吸収されるため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低くすることができる。
【0052】
ここで、脚払い部材6は正面視で見て下方に凹入した略円弧形状に形成されているため、歩行者との衝突時、歩行者を車幅方向中央側のボンネット2上に誘導することができる。それ故、歩行者と脚払い部材6が車幅方向外側端部分において衝突したとき、歩行者を衝撃吸収体10の厚さが厚い車幅方向中央部分に誘導でき、バンパレインフォースメント4による歩行者への底突きを防止することができる。
【0053】
次に、前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造は、ボンネット2の下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、これら1対のフロントサイドフレーム3の前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、このバンパレインフォースメント4よりも前方に設けられ車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し且つ車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外表面を形成するバンパフェイス5と、1対のフロントサイドフレーム3よりも下側位置で且つその前端がバンパレインフォースメント4より前方に配置された車幅方向に延びる脚払い部材6を備えているため、車両Vと歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込みを防止することができる。
しかも、1対のフロントサイドフレーム3の前端部分にクラッシュカン9を備えているため、フロントサイドフレーム3による変形モード制御と脚払い機能を両立することができる。
【0054】
脚払い部材6は、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方位置になるように、正面視で見て下方に凹入した略円弧形状に形成しているため、車幅方向中央部分において脚払い部材6の配置位置を低く配置した場合であっても、車幅方向左右外側下方に空間を形成することができ、バンパフェイス5の形状を平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができ、デザイン自由度を高くすることができる。
【0055】
脚払い部材6の車幅方向外側端部が、少なくとも、左右1対のフロントサイドフレーム3の先端部分に配置されたクラッシュカン9の車幅方向外側端部の直下位置に配置されたため、左右のフロントサイドフレーム3間に亙って車幅方向に広い範囲で歩行者の下脚部を払うことができ、衝突時における歩行者の安全性を確保することができる。
【0056】
脚払い部材6は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部に亙って上方に向かって滑らかに湾曲するように略均一な曲率としながら湾曲形状に形成したため、脚払い部材6の長さを短く形成することができ、車体重量の軽量化を図ることができる。しかも、歩行者の下脚部が脚払い部材6に接触したとき、歩行者を車幅方向中央側部分のボンネット2上へ誘導することができ、バンパレインフォースメント4による歩行者への底突きを防止することができる。
【0057】
1対のクラッシュカン9に脚払い部材6を支持するための左右1対の支持部材7を設け、支持部材7の支持本体部7bは脚払い部材6に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能な前後2列のビード部32を備えているため、脚払い部材6を小型化することができ、車体の軽量化を図ることができる。しかも、歩行者をボンネット2上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を脚払い部材6とビード部32が協働して吸収するため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低く抑えることができる。
【0058】
支持部材7は、取付部7aにクラッシュカン9の車体前後方向の変形を許容する前後2列のビード部31を備えているため、車両Vの前面衝突時、クラッシュカン9の潰れ変形を阻害することなく、衝突エネルギー吸収を確実に行うことができる。
【0059】
脚払い部材6の下方において、車体の下面を覆うアンダカバー17を有し、このアンダカバー17の車幅方向中央部分の前端部に脚払い部材6を支持する支持ブラケット18を形成しているため、歩行者との衝突時、脚払い部材6の中央部に掛る下向きのモーメントをアンダカバー17によって支持することにより脚払い部材6の移動を抑えて、効果的な高さ位置で歩行者の下脚部を払うことができる。
【0060】
1対のフロントサイドフレーム3間における脚払い部材6の後方位置にラジエータ8と、ラジエータ8を支持するシュラウドロア13を設け、ラジエータ8を車体前後方向前方に前傾姿勢となるように配置したため、低ボンネットの車両において、脚払い機能を確保しつつ車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した前部車体形状を得ることができる。
【実施例2】
【0061】
次に、実施例2に係る車両の前部車体構造について図8,図9に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
脚払い部材6A(車幅方向部材)は、バンパレインフォースメント4の下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメント4より前方位置、つまり衝撃吸収体10の下方で且つ歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されている。合成樹脂製の脚払い部材6Aは、正面視で見て下方に凹入した略ハット形形状に形成されている。
【0063】
脚払い部材6Aは、中央部分6fと、脚払い部材6Aの左右端部分を形成する外側端部分6gと、中央部分6fと外側端部分6gの間に設けられた立上り部6h等によって一体的に構成されている。脚払い部材6Aは、実施例1と同様に、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d等を備え、車幅方向に延びた中実構造とされている。
【0064】
中央部分6fは、正面視で見てラジエータ8の左右方向の幅に相当するように略直線状に形成され、上下方向の高さ位置が導入開口5cの下側開口縁部の後方近傍部になるように配置されている。左右の外側端部分6gは、正面視で見て脚払い部材6Aの左右外側端部から車幅方向内側へ略直線状に形成され、上下方向の高さ位置が導入開口5bと導入開口5cの中間位置になるように配置されている。
【0065】
左右の立上り部6hは、中央部分6fの左右端部分から夫々の外側端部分6gへの移行部において上方に延びるように形成されると共に、立上り部6hの上端部分は、導入開口5bの下側開口縁部よりも下方になるように構成されている。以上により、立上り部の車幅方向外側に空間部を形成することができる
【0066】
次に、実施例2に係る前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造では、立上り部の車幅方向外側にバンパフェイス5が上方に向かって湾曲可能な空間部を形成することができるため、平面視で見てバンパフェイスの左右外側下部を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状にすることができ、デザイン自由度を高くすることができる。
【0067】
また、脚払い部材6Aの車幅方向外側端部が、少なくとも、左右1対のフロントサイドフレーム3の先端部分に配置されたクラッシュカン9の車幅方向外側端部の直下位置に配置されたため、左右のフロントサイドフレーム3間に亙って車幅方向に広い範囲で歩行者の下脚部を払うことができ、衝突時における歩行者の安全性を確保することができると共に、脚払い部材6の車幅方向外側端部が、フロントサイドフレーム3の直下位置まで設けられ、車幅方向中央部よりもバンパレインフォースメント4に近い位置に設けられたため、歩行者の下脚部を払う際の払い量を車幅方向中央部よりも抑えることができ、バンパフェイス5の湾曲形状によるバンパレインフォースメント4の車幅方向外側端部分におけるパフェイス5との距離の減少に伴う歩行者のバンパレインフォースメント4への底突きを防止することができる。
【実施例3】
【0068】
次に、図10に基づいて、脚払い部材6を支持する支持部材7と一体形成されたクラッシュカン9の変形例について説明する。尚、前記実施例のクラッシュカン9と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。また、左右1対のクラッシュカンは、同様の構成のため、右側のクラッシュカンについて説明する。
【0069】
図10に示すように、クラッシュカン9Aは、アッパパネル26とロアパネル27によって構成され、両パネル26,27によって車体前後方向に延びると共に正面視で見て十字状の閉断面部を形成している。アッパパネル26は、車幅方向内側の鉛直面部26aと、鉛直面部26aの上側端部と鉛直面部26cの下側端部を連結する水平面部26bと、水平面部26bの外側端部と水平面部26dの内側端部を連結する鉛直面部26cと、鉛直面部26cの上側端部と鉛直面部26eの上側端部を連結する水平面部26d、水平面部26dの外側端部と水平面部26fの内側端部を連結する鉛直面部26eと、鉛直面部26eの下側端部と鉛直面部26gの上側端部を連結する水平面部26fと、水平面部26fの外側端部から下方に延びる鉛直面部26g等から形成されている。
【0070】
水平面部26fには、車体前後方向に直行し且つクラッシュカン9A内部に凹入する前後2列のビード部26hが形成されている。鉛直面部26gには、各ビード部26hと夫々連続すると共に車幅方向内側に凹入して上端から下端に亙って延びる前後2列のビード部26iが形成されている。
【0071】
ロアパネル27は、車幅方向内側の鉛直面部27aと、鉛直面部27a下側端部と鉛直面部27cの上側端部を連結する水平面部27bと、水平面部27bの外側端部と水平面部27dの内側端部を連結する鉛直面部27cと、鉛直面部27cの下側端部と鉛直面部27eの下側端部を連結する水平面部27dと、水平面部27dの外側端部と水平面部27fの内側端部を連結する鉛直面部27eと、鉛直面部27eの上側端部と鉛直面部27gの下側端部を連結する水平面部27fと、水平面部27fの外側端部から上方に延びる鉛直面部27g等から形成されている。クラッシュカン9Aの前後方向に延びる閉断面部は、鉛直面部26aと鉛直面部27aを溶接し、鉛直面部26gと鉛直面部27gを溶接することによって形成されている。
【0072】
支持部材7Aは、鉛直面部26gの下端部分を下方に延設することによってクラッシュカン9Aと一体的に形成されている。支持部材7Aは、支持本体部7dと、衝撃伝達部7eとから構成されている。支持本体部7dには、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部28(衝撃吸収部)が形成されている。
【0073】
前側のビード部28は、前側のビード部26iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部7dの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7dの前端部まで形成されている。後側のビード部28は、後側のビード部26iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部7dの下部において前方に向かって湾曲している。各々のビード部28のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。
【0074】
衝撃伝達部7eは、支持本体部7dの下端部分を下方へ延長して形成されている。衝撃伝達部7eは、1対のボルト穴29を備えている。支持本体部7dの車幅方向内側表面に配置された脚払い部材6は、1対のボルト穴29を介して車幅方向外側からボルト(図示略)によって支持部材7Aへ固着されている。
【0075】
以上により、クラッシュカン9Aの鉛直面部26gを下方に延長して脚払い部材6を支持可能な支持部材7Aを一体的に形成したため、支持部材7Aの、クラッシュカン9Aへの取付部を省略することができ、車体重量の軽減と、クラッシュカン9Aの潰れ変形制御の容易化を図ることができる。
【0076】
次に、図11に基づいて、アンダカバーの変形例について説明する。尚、前記実施例のアンダカバー17と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
アンダカバー17Aは、平面視で見て、後部分に凹部を備えた略矩形形状に形成されている。合成樹脂製のアンダカバー17Aは、車幅方向中央部分を前端部から後端部に亙って延びる中央部分17aと、中央部分17aの左右両側に一体的に形成された左右1対の側部分17b等を備えている。
【0078】
中央部分17aは、合成樹脂にガラス繊維を混合した繊維強化プラスチック(FRP)によって形成されている。中央部分17aの車幅方向の長さは、脚払い部材6の中央部分を支持する支持ブラケット18をボルト24によって固定できるように設定されている。
【0079】
以上により、支持ブラケット18を固定する中央部分17aの車体前後方向の支持強度を高くすることができる。それ故、歩行者との衝突時、脚払い部材6の中央部に掛る下向きのモーメントを強固に支持でき、衝突に伴う脚払い部材6の移動を確実に抑えることができる。
【0080】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、脚払い部材を合成樹脂によって形成した例を説明したが、少なくとも、歩行者との衝突時、歩行者をボンネットの上に案内できれば良く、鋼板等の金属によって形成することも可能であり、同様の効果を奏することができる。また、部分毎に異なる材質によって形成された脚払い部材を用いることも可能である。
【0081】
2〕前記実施例においては、衝撃伝達部が車体前後方向の衝撃荷重を支持本体部に伝達する例を説明したが、少なくとも、支持部材によって衝撃荷重を吸収できれば良く、衝撃伝達部に車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能なビード部等の衝撃吸収部を設けることも可能である。
【0082】
3〕前記実施例においては、左右の立上り部が中央部分の左右端部分から夫々の外側端部分への移行部において略上方に立ち上がるように形成した例を説明したが、立上り部を上方に向かって緩やかに傾斜するように形成しても良く、湾曲状に形成することも可能である。
【0083】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、フロントサイドフレームの下側且つバンパレインフォースメントの前側位置に歩行者の下脚部を払う車幅方向部材を備えた車両において、脚払い機能を確保しつつバンパフェイスの形状を平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができる。
【符号の説明】
【0085】
V 車両
1 前部車体
2 ボンネット
3 フロントサイドフレーム
4 バンパレインフォースメント
5 バンパフェイス
6,6A 脚払い部材
6f 中央部分
6g 外側端部分
6h 立上り部
7,7A 支持部材
8 ラジエータ
9,9A クラッシュカン
13 シュラウドロア
17,17A アンダカバー
22,28 ビード部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部車体構造に関し、特にフロントサイドフレームの下側且つバンパレインフォースメントの前側位置に歩行者の下脚部を払う車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込み等の二次障害を防止することを目的として、衝突時に歩行者の下脚部を払って歩行者をボンネットの上に跳ね上げることが行われている。この具体的な構成として、バンパレインフォースメントの下方位置にシュラウドロアメンバに支持され車幅方向に延びた車幅方向部材、所謂脚払い部材を備えた前部車体構造が公知である。脚払い部材は、歩行者との衝突時に車体後方へ向かって潰れながら衝突エネルギーを吸収するため、一定の支持剛性が要求され、シュラウドロアメンバ等の車体構成部材にブラケットを介して支持されている。
【0003】
特許文献1に記載された車体構造においては、左右1対のフロントサイドフレームに固定された1対の支持部材と、これらの支持部材に支持された車幅方向に延びる車幅方向部材としての脚払い部材をバンパレインフォースメントの下方且つ前方位置に設け、この脚払い部材を歩行者との衝突エネルギーに応じて変形可能に構成している。この車体構造では、脚払い部材をフロントサイドフレームに強固に支持することができ、脚払い部材の変形によって衝突による衝撃荷重を吸収して歩行者の下脚部の安全を確保している。
【0004】
車両デザインの多様化に伴い、ボンネット高さを低くし、平面視で見てバンパフェイスの外表面を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方へ湾曲させた流線形形状の前部車体構造も存在している。この前部車体構造では、ラジエータを前傾姿勢にすると共に、車幅方向外側部分に配置される車体構成部材のレイアウトをバンパフェイスの湾曲形状に応じて調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−88634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の車体構造では、シュラウドロアメンバが車体前部の後方位置に配置された場合であっても、脚払い部材を剛性の高いブラケットやタイダウンフック等の支持部材によってフロントサイドフレームへ強固に固定することができる。しかし、脚払い部材は左右のフロントサイドフレームの下方において車幅間に亙って配置され、バンパフェイスはこの脚払い部材の左右端部の外周を覆う必要があることから、バンパフェイスの下部形状が平面視で見て車幅方向外側に突出した形状になる虞がある。
【0007】
また、歩行者の脚払い機能は、脚払い部材の配置位置が低いほど、歩行者の下脚部を効率良く払うことができ、歩行者を確実にボンネットの上に案内することができる。しかし、脚払い部材の配置位置が低いほど、車体下部において脚払い部材の外側端部が車幅方向外側へ突出するため、車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲するような外観を備えたバンパフェイス形状の実現が困難になる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、歩行者との衝突時、脚払い機能を確保しつつデザイン自由度の高い前部車体構造、歩行者の高い安全性を確保できる前部車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の車両の前部車体構造は、ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、このバンパレインフォースメントよりも前方に設けられると共に車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し且つ車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外表面を形成するバンパフェイスと、前記1対のフロントサイドフレームよりも下側位置で且つ前端が前記バンパレインフォースメントより前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造において、前記車幅方向部材は、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方位置になるよう構成されたことを特徴としている。
【0010】
この前部車体構造においては、車幅方向部材の配置位置を低くしつつ、車幅方向部材の車幅方向外側端部分を車幅方向中央部分よりも上方位置に配置することができ、バンパフェイスの左右端側下部の車幅方向外側への突出量を抑えることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記車幅方向部材の車幅方向外側端部が、少なくとも前記1対のフロントサイドフレームの直下位置に配置されたことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部に亙って上方に向かって滑らかに湾曲するよう形成されたことを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部分への移行部に上方に延びる立上り部を備えたことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1つの発明において、前記1対のフロントサイドフレームに前記車幅方向部材を支持するための左右1対の支持部材を設け、前記1対の支持部材は前記車幅方向部材に入力した車両前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1つの発明において、前記車幅方向部材の下側において車体の下面を覆うアンダカバーを有し、このアンダカバーの車幅方向中央部分の前端部に前記車幅方向部材を支持する支持部を備えたことを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1つの発明において、前記1対のフロントサイドフレーム間における前記車幅方向部材の後方位置に熱交換器と、この熱交換器を支持するシュラウドを設け、前記熱交換器は、車体前後方向前方に前傾姿勢となるように配置されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、車幅方向部材の配置位置を低くした場合でも、正面視で見て車両下部における車幅方向部材の車幅方向外側への突出量を抑えることができるため、バンパフェイスの左右端側下部を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状にすることができ、車体前部のデザイン自由度を高くすることができる。しかも、車幅方向部材の配置を低くできるため、歩行者の下脚部を確実に払うことができ、歩行者を効率良くボンネットの上に案内することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、左右のフロントサイドフレーム間に亙って車幅方向に広い範囲で歩行者の下脚部を払うことができ、衝突時における歩行者の安全性を確保することができる。
請求項3の発明によれば、車幅方向部材の長さを短く形成することができ、車体重量の軽量化を図ることができる。しかも、車幅方向部材が滑らかに湾曲するため、歩行者の下脚部が車幅方向部材に接触したとき、歩行者を車幅方向中央側のボンネット上へ積極的に誘導することができ、車体前部の車幅方向外側部分において歩行者のバンパレインフォースメントによる底突きを防止することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、立上り部の車幅方向外側にバンパフェイスが湾曲可能な空間部を形成することができるため、平面視で見てバンパフェイスの下部を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状にすることができ、デザイン自由度を高くすることができる。
請求項5の発明によれば、支持部材の衝撃吸収部が衝突エネルギーを吸収するため、車幅方向部材を小型化することができ、車体の軽量化を図ることができる。しかも、歩行者をボンネット上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を車幅方向部材と衝撃吸収部とが協働して吸収するため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低く抑えることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、歩行者との衝突時、車幅方向部材の中央部に掛る下向きのモーメントをアンダカバーによって支持することができ、歩行者を確実にボンネット上へ案内することができる。
請求項7の発明によれば、ラジエータが前傾姿勢となるように配置された低ボンネットの車両において脚払い機能を確保しつつ車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る前部車体の平面図である。
【図2】バンパフェイスを外した車両の正面図である。
【図3】シュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】支持部材の斜視図である。
【図7】支持部材とアンダカバーとの連結構造を示す図である。
【図8】実施例2に係る図2相当図である。
【図9】実施例2に係る図3相当図である。
【図10】実施例3に係る支持部材を一体形成したクラッシュカンの変形例の斜視図である。
【図11】アンダカバーの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
尚、以下の実施例において、車両の前後方向を前後方向とし、車両の左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例について図1〜図7に基づいて説明する。
車両Vの前部車体1は、エンジンルームEの上部を覆うボンネット2と、車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、前部車体1の外表面を形成するバンパフェイス5と、車幅方向に延びた脚払い部材6(車幅方向部材)と、脚払い部材6を左右1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7と、エンジン(図示略)の冷却水と走行風との熱交換を行うラジエータ8(熱交換器)等を備えている。
【0021】
ボンネット2の前端部分には、外縁形状に沿って車幅方向に延びるボンネットレインフォースメント2aが配置されている。ボンネットレインフォースメント2aは、ボンネット2と閉断面部を形成している。
【0022】
左右1対のフロントサイドフレーム3は、車室の前端部を仕切るダッシュパネル(図示略)の前側においてエンジンルームEの左右両側に前後方向に延びるように形成されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、車両Vの前側位置から後方へ向かって略水平状に延び且つ後端側途中部がダッシュパネルの縦壁部に接合されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、同様の構成であるため、右側のフロントサイドフレーム3を主に説明する。
【0023】
図3〜図5に示すように、フロントサイドフレーム3は、車幅方向外側のアウタパネルと、車幅方向内側のインナパネルとから構成され、これらのアウタパネルとインナパネルによって断面が略矩形形状の閉断面部を形成している。フロントサイドフレーム3には、上下方向に延びる複数のビード部3aがアウタパネルとインナパネルの夫々に形成されている。各々のビード部3aのビード深さとビード幅と上下長は、前面衝突時、フロントサイドフレーム3が所定の方向へ折れ変形するように設定されている。
【0024】
フロントサイドフレーム3の前端部分には、シュラウドパネル(図示略)を介してクラッシュカン9を取付けるためのフランジ部3bが形成されている。角筒状のクラッシュカン9は、車体前後方向に直交し且つクラッシュカン9の内方に凹入した環状の前後2列の溝部9aが形成されている。クラッシュカン9は、ボルトによって後端部分をフランジ部3bに締結固定されている。
【0025】
クラッシュカン9の前端部分には、バンパレインフォースメント4が連結されている。バンパレインフォースメント4は、左右方向に延びる閉断面形状に構成されている。クラッシュカン9の前端部は、バンパレインフォースメント4の閉断面内部に嵌入されるように構成されている。従って、クラッシュカン9が嵌入する部分では、バンパレインフォースメント4の断面は略コ字形状になっている。以上により、左右1対のクラッシュカン9は、車両衝突初期にバンパレインフォースメント4を介して前方から衝撃荷重が入力され、この衝撃荷重により溝部9a等が圧縮変形して潰れることで衝突エネルギーを吸収する。
【0026】
バンパレインフォースメント4の前方には、発泡合成樹脂製の衝撃吸収体10がバンパフェイス5の車幅方向全域に亙って配置されている。衝撃吸収体10は、車両衝突時にバンパフェイス5を介して前方からの衝撃荷重により圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収し、所望のエネルギー吸収機能を達成し得るサイズ、形状に構成されている。 衝撃吸収体10は、発泡合成樹脂に限ることなく、複数のリブを組み合わせて構成された合成樹脂構造体等で構成することも可能である。
【0027】
合成樹脂製のバンパフェイス5は、車体前端部分の外表面を形成し、その車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し、平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成されている。それ故、車幅方向中央部分の衝撃吸収体10の前後方向の厚さは、車幅方向外側部分の衝撃吸収体10の前後方向の厚さよりも厚くなるように形成され、クラッシュカン9の前方近傍部の衝撃吸収体10の厚さは中央部分の厚さに比べて薄く形成されている。
また、バンパフェイス5の左右外側の下部部分は下方に張り出した湾曲形状に形成され、バンパフェイス5の外観は正面視で見て左右方向に延びた扁平形状に形成されている。
【0028】
バンパフェイス5は、左右両側にヘッドライトを格納可能な1対のヘッドライト用開口5aと、車幅方向中央領域にエンジンルームE内へ走行風を導入可能な導入開口5bと、導入開口5bの下方位置に形成された走行風を導入可能な導入開口5c等を備えている。
導入開口5bは、左右のフロントサイドフレーム3間の離間距離を長軸とした略楕円形形状に形成されている。導入開口5cは、導入開口5bの長軸と略同様の長軸と導入開口5bに比べて短い短軸とから構成された長細状の楕円形形状に形成されている。バンパフェイス5の左右外側後端部には、バンパフェイス5に連続して車体側部の外表面を形成する左右1対のフロントフェンダ11が装着されている。
【0029】
図3〜図5に示すように、左右1対のフロントサイドフレーム3の間には、ラジエータ8の上部を支持するシュラウドアッパ12と、シュラウドアッパ12に比べて下側且つ後側位置にラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13と、シュラウドアッパ12の左右端部とシュラウドロア13の左右端部を夫々連結する左右1対のシュラウドサイド(図示略)が配置されている。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドは、前傾姿勢になるように配置されると共に、中央領域に開口を備えた矩形枠形状を形成している。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドによって形成された開口は、バンパフェイス5の導入開口5b,5cに対向するように配置されている。以上により、ラジエータ8は、前傾姿勢になるように配置され、ボンネット高さを低く抑えることができる。
【0030】
シュラウドアッパ12とシュラウドロア13の間には、ラジエータ8とラジエータ8用のファン14が配置されている。シュラウドアッパ12には、ラジエータ8の上部を支持するためのブラケット(図示略)がボルト締めによって取付けられている。シュラウドロア13には、ラジエータ8の下部を支持するためのブラケット(図示略)が取付けられている。以上により、ラジエータ8は、導入開口5b等から導入された走行風によってエンジンの冷却水を冷却可能に構成されている。
【0031】
脚払い部材6(車幅方向部材)は、バンパレインフォースメント4の下側位置で且つ、その前端がバンパレインフォースメント4より前方位置、つまり衝撃吸収体10の下方で且つ歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されている。合成樹脂製の脚払い部材6は、正面視で見て下方に凹入した略円弧形状に形成されている。尚、図1において、脚払い部材6は衝撃吸収体10と略同一の位置に設けられるため、記載を省略している。
【0032】
脚払い部材6は、車幅方向中央部分の上下方向の高さ位置が導入開口5cの下側開口縁部の後方近傍部になるように配置され、車幅方向外側端部の上下方向の高さ位置が導入開口5bと導入開口5cの中間位置になるように配置されている。つまり、脚払い部材6は、正面視で見て略均一な曲率になるように形成され、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方位置になるよう湾曲形状に形成されている。また、車幅方向外側端部は、フロントサイドフレーム3の直下位置に設けられている。
【0033】
脚払い部材6は、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d等を備え、車幅方向に延びた中実構造とされている。前面部6cの下部には、前方に突出して車幅方向に延びる突出部6eが形成されている。脚払い部材6の左右端部は、ボルト15によって左右の支持部材7に取付けられている。
【0034】
以上により、正面視で見て脚払い部材6の車幅方向左右外側下方に空間部を形成することができ、バンパフェイス5の形状を、平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができる。
【0035】
また、脚払い部材6の車幅方向外側端部が、フロントサイドフレーム3の直下位置に設けられ、車幅方向中央部分よりもバンパレインフォースメント4に近い位置に設けられるため、歩行者の下脚部を払う際の払い量を車幅方向中央部分よりも抑えることができ、バンパフェイス5の湾曲形状によるバンパレインフォースメント4の車幅方向外側部分におけるパフェイス5との距離の減少に伴う歩行者のバンパレインフォースメント4への底突きを防止することができる。
【0036】
図2〜図6に示すように、鋼板製の支持部材7は、支持部材7をクラッシュカン9に取付けるための取付部7aと、支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7c等によって一体的に構成されている。これら支持部材7は、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。左右の支持部材7は、同様の構成のため、右側の支持部材7について説明する。
【0037】
図6に示すように、取付部7aは、前側部分と中間部分と後側部分にボルト16が貫通可能な3ヶ所のボルト穴20と、車体前後方向に直交し且つ前後2列の溝部9aに対向すると共に各溝部9aと反対側に凹入して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部21等を備えている。支持部材7がクラッシュカン9の下端面に固定されたとき、取付部7aは車体上下方向に対して直交する面と平行に配置され、各ビード部21は車体前後方向に対して直交状に前後配置されている。
【0038】
以上により、車両の衝突によってクラッシュカン9の溝部9a等が圧縮変形して潰れたとき、ボルト16によってクラッシュカン9の下端面に固定された取付部7aは、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部21が圧縮変形され、車体前後方向に潰れることができる。それ故、取付部7aは、クラッシュカン9による衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をクラッシュカン9に支持することができる。
【0039】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に下方へ屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部22(衝撃吸収部)等を備えている。支持本体部7bは、取付部7aから下方に向かう程、前側に移行するように湾曲して形成されている。
【0040】
前側のビード部22は、前側のビード部21の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲する湾曲部22aを備え、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部22は、後側のビード部21の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部部分において前方に向かって湾曲する湾曲部22aを備え、支持本体部7bの前後方向中間位置まで形成されている。前側のビード部22と後側のビード部22の上側部分は上下方向に略平行状に延設され、夫々の下端部分は車体上下方向において略同じ高さ位置まで形成されている。
【0041】
各々のビード部22のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。以上により、歩行者へ衝突時に加わる衝撃荷重を極力低くでき、効果的に歩行者をボンネット2の上に案内することができる。
【0042】
衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部分を車体前側に湾曲させて形成されている。
衝撃伝達部7cの下端部の前側部分は、バンパレインフォースメント4の前端部よりも前方に配置されている。衝撃伝達部7cは、衝撃伝達部7cを貫通可能に設けられた1対のボルト穴23を備えている。脚払い部材6は、1対のボルト穴23を介してボルト15によって支持部材7へ締結固定される。それ故、脚払い部材6の左右端部は、クラッシュカン9の車幅方向外側端部の直下位置に配置されている。
【0043】
図3〜図5に示すように、エンジンルームEの前部の下方には、車体の下面を覆う合成樹脂製のアンダカバー17が配置されている。アンダカバー17は、バンパフェイス5の下端部からラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13の下方位置まで延びている。
図7に示すように、アンダカバー17の前端部には、車幅方向中央位置において脚払い部材6の中央部分を支持する支持ブラケット18が配置されている。
【0044】
金属製の支持ブラケット18は、断面略ハット状に形成されている。支持ブラケット18は、アンダカバー17に連結するための左右両側の連結部18aと、左右の連結部18aの間において脚払い部材6の中央部分と連結するための連結部18b等を備えている。支持ブラケット18は、連結部18aを介して4本のボルト24によってアンダカバー17の上面に固着され、脚払い部材6は、連結部18bを介して2本のボルト25によってアンダカバー17へ支持されている。
【0045】
以上により、車両Vが歩行者と衝突したしたとき、脚払い部材6の中央部分がアンダカバー17に強固に支持されているため、歩行者との衝突時に発生する下向きの曲げモーメントに基づく脚払い部材6の中央部分の移動を防止することができる。それ故、衝突時、予め設定した高さ位置で歩行者の下脚部を確実に払うことができ、歩行者をボンネット2上へ案内することができる。
【0046】
次に、車両Vの衝突時のフロントサイドフレーム3による変形モード制御を説明する。
車両Vの前面衝突が発生した場合、バンパフェイス5と衝撃吸収体10によって吸収されない衝撃荷重は、クラッシュカン9に伝達される。この荷重は、クラッシュカン9の溝部9aを押し潰すことによって吸収される。このクラッシュカン9の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、フロントサイドフレーム3の前端部から入力され、後方に向かって伝達される。
【0047】
フロントサイドフレーム3の前端部分に入力された衝撃荷重は、複数のビード部3aに作用して、各々のビード部3aの折れ変形が開始される。このとき、ビード部3aは凹入状に形成されるため、この部位におけるフロントサイドフレーム3の断面係数はその前後の部位の断面係数よりも小さく、ビード部3aが車幅方向外側に対する折れ部になる。以上により、前面衝突における衝突エネルギーを吸収している。
【0048】
ここで、支持部材7は、取付部7aによってクラッシュカン9に固定されているが、各溝部9aに対応して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部31を設けたため、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部31が圧縮変形して車体前後方向に潰され、衝突初期におけるクラッシュカン9の衝突エネルギーの吸収を阻害しない。
【0049】
次に、脚払い部材6による歩行者の脚払い制御について説明する。
図2〜図5に示すように、歩行者と衝突した場合、脚払い部材6は衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されているため、バンパフェイス5を介して突出部6eが歩行者の下脚部に衝突する。突出部6eに入力した衝撃荷重は、突出部6eまたは上面部6aと下面部6b等の潰れ変形によって吸収される。
【0050】
脚払い部材6の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、衝撃伝達部7cから支持本体部7bに伝達される。支持本体部7bに入力された衝撃荷重は、上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32の変形によって吸収される。支持本体部7bに入力された衝撃荷重が小さな場合、前側のビード部32の前部部分が潰れ変形して衝撃荷重を吸収している。衝撃荷重が大きくなるほど、前側のビード部32の潰れ変形する領域が後方且つ上方に拡大している。前側のビード部32の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、後側のビード部32の潰れ変形によって吸収される。尚、脚払い部材6が上方へ向かって変位する場合、各ビード部32は潰れ変形を行い、脚払い部材6が下方へ向かって変位する場合、各ビード部32は延び変形を行うことで、衝撃荷重を吸収している。
【0051】
以上により、歩行者と車両Vの衝突時、脚払い部材6の突出部6eが歩行者の下脚部と最も早く衝突するため、歩行者の上半身がバンパフェイス5を介してバンパレインフォースメント4と衝突する前に歩行者の下脚部を払って効果的に歩行者をボンネット2の案内することができる。しかも、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重は各ビード部32の潰れ変形によって吸収されるため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低くすることができる。
【0052】
ここで、脚払い部材6は正面視で見て下方に凹入した略円弧形状に形成されているため、歩行者との衝突時、歩行者を車幅方向中央側のボンネット2上に誘導することができる。それ故、歩行者と脚払い部材6が車幅方向外側端部分において衝突したとき、歩行者を衝撃吸収体10の厚さが厚い車幅方向中央部分に誘導でき、バンパレインフォースメント4による歩行者への底突きを防止することができる。
【0053】
次に、前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造は、ボンネット2の下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、これら1対のフロントサイドフレーム3の前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、このバンパレインフォースメント4よりも前方に設けられ車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し且つ車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外表面を形成するバンパフェイス5と、1対のフロントサイドフレーム3よりも下側位置で且つその前端がバンパレインフォースメント4より前方に配置された車幅方向に延びる脚払い部材6を備えているため、車両Vと歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込みを防止することができる。
しかも、1対のフロントサイドフレーム3の前端部分にクラッシュカン9を備えているため、フロントサイドフレーム3による変形モード制御と脚払い機能を両立することができる。
【0054】
脚払い部材6は、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方位置になるように、正面視で見て下方に凹入した略円弧形状に形成しているため、車幅方向中央部分において脚払い部材6の配置位置を低く配置した場合であっても、車幅方向左右外側下方に空間を形成することができ、バンパフェイス5の形状を平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができ、デザイン自由度を高くすることができる。
【0055】
脚払い部材6の車幅方向外側端部が、少なくとも、左右1対のフロントサイドフレーム3の先端部分に配置されたクラッシュカン9の車幅方向外側端部の直下位置に配置されたため、左右のフロントサイドフレーム3間に亙って車幅方向に広い範囲で歩行者の下脚部を払うことができ、衝突時における歩行者の安全性を確保することができる。
【0056】
脚払い部材6は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部に亙って上方に向かって滑らかに湾曲するように略均一な曲率としながら湾曲形状に形成したため、脚払い部材6の長さを短く形成することができ、車体重量の軽量化を図ることができる。しかも、歩行者の下脚部が脚払い部材6に接触したとき、歩行者を車幅方向中央側部分のボンネット2上へ誘導することができ、バンパレインフォースメント4による歩行者への底突きを防止することができる。
【0057】
1対のクラッシュカン9に脚払い部材6を支持するための左右1対の支持部材7を設け、支持部材7の支持本体部7bは脚払い部材6に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能な前後2列のビード部32を備えているため、脚払い部材6を小型化することができ、車体の軽量化を図ることができる。しかも、歩行者をボンネット2上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を脚払い部材6とビード部32が協働して吸収するため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低く抑えることができる。
【0058】
支持部材7は、取付部7aにクラッシュカン9の車体前後方向の変形を許容する前後2列のビード部31を備えているため、車両Vの前面衝突時、クラッシュカン9の潰れ変形を阻害することなく、衝突エネルギー吸収を確実に行うことができる。
【0059】
脚払い部材6の下方において、車体の下面を覆うアンダカバー17を有し、このアンダカバー17の車幅方向中央部分の前端部に脚払い部材6を支持する支持ブラケット18を形成しているため、歩行者との衝突時、脚払い部材6の中央部に掛る下向きのモーメントをアンダカバー17によって支持することにより脚払い部材6の移動を抑えて、効果的な高さ位置で歩行者の下脚部を払うことができる。
【0060】
1対のフロントサイドフレーム3間における脚払い部材6の後方位置にラジエータ8と、ラジエータ8を支持するシュラウドロア13を設け、ラジエータ8を車体前後方向前方に前傾姿勢となるように配置したため、低ボンネットの車両において、脚払い機能を確保しつつ車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した前部車体形状を得ることができる。
【実施例2】
【0061】
次に、実施例2に係る車両の前部車体構造について図8,図9に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
脚払い部材6A(車幅方向部材)は、バンパレインフォースメント4の下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメント4より前方位置、つまり衝撃吸収体10の下方で且つ歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されている。合成樹脂製の脚払い部材6Aは、正面視で見て下方に凹入した略ハット形形状に形成されている。
【0063】
脚払い部材6Aは、中央部分6fと、脚払い部材6Aの左右端部分を形成する外側端部分6gと、中央部分6fと外側端部分6gの間に設けられた立上り部6h等によって一体的に構成されている。脚払い部材6Aは、実施例1と同様に、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d等を備え、車幅方向に延びた中実構造とされている。
【0064】
中央部分6fは、正面視で見てラジエータ8の左右方向の幅に相当するように略直線状に形成され、上下方向の高さ位置が導入開口5cの下側開口縁部の後方近傍部になるように配置されている。左右の外側端部分6gは、正面視で見て脚払い部材6Aの左右外側端部から車幅方向内側へ略直線状に形成され、上下方向の高さ位置が導入開口5bと導入開口5cの中間位置になるように配置されている。
【0065】
左右の立上り部6hは、中央部分6fの左右端部分から夫々の外側端部分6gへの移行部において上方に延びるように形成されると共に、立上り部6hの上端部分は、導入開口5bの下側開口縁部よりも下方になるように構成されている。以上により、立上り部の車幅方向外側に空間部を形成することができる
【0066】
次に、実施例2に係る前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造では、立上り部の車幅方向外側にバンパフェイス5が上方に向かって湾曲可能な空間部を形成することができるため、平面視で見てバンパフェイスの左右外側下部を車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状にすることができ、デザイン自由度を高くすることができる。
【0067】
また、脚払い部材6Aの車幅方向外側端部が、少なくとも、左右1対のフロントサイドフレーム3の先端部分に配置されたクラッシュカン9の車幅方向外側端部の直下位置に配置されたため、左右のフロントサイドフレーム3間に亙って車幅方向に広い範囲で歩行者の下脚部を払うことができ、衝突時における歩行者の安全性を確保することができると共に、脚払い部材6の車幅方向外側端部が、フロントサイドフレーム3の直下位置まで設けられ、車幅方向中央部よりもバンパレインフォースメント4に近い位置に設けられたため、歩行者の下脚部を払う際の払い量を車幅方向中央部よりも抑えることができ、バンパフェイス5の湾曲形状によるバンパレインフォースメント4の車幅方向外側端部分におけるパフェイス5との距離の減少に伴う歩行者のバンパレインフォースメント4への底突きを防止することができる。
【実施例3】
【0068】
次に、図10に基づいて、脚払い部材6を支持する支持部材7と一体形成されたクラッシュカン9の変形例について説明する。尚、前記実施例のクラッシュカン9と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。また、左右1対のクラッシュカンは、同様の構成のため、右側のクラッシュカンについて説明する。
【0069】
図10に示すように、クラッシュカン9Aは、アッパパネル26とロアパネル27によって構成され、両パネル26,27によって車体前後方向に延びると共に正面視で見て十字状の閉断面部を形成している。アッパパネル26は、車幅方向内側の鉛直面部26aと、鉛直面部26aの上側端部と鉛直面部26cの下側端部を連結する水平面部26bと、水平面部26bの外側端部と水平面部26dの内側端部を連結する鉛直面部26cと、鉛直面部26cの上側端部と鉛直面部26eの上側端部を連結する水平面部26d、水平面部26dの外側端部と水平面部26fの内側端部を連結する鉛直面部26eと、鉛直面部26eの下側端部と鉛直面部26gの上側端部を連結する水平面部26fと、水平面部26fの外側端部から下方に延びる鉛直面部26g等から形成されている。
【0070】
水平面部26fには、車体前後方向に直行し且つクラッシュカン9A内部に凹入する前後2列のビード部26hが形成されている。鉛直面部26gには、各ビード部26hと夫々連続すると共に車幅方向内側に凹入して上端から下端に亙って延びる前後2列のビード部26iが形成されている。
【0071】
ロアパネル27は、車幅方向内側の鉛直面部27aと、鉛直面部27a下側端部と鉛直面部27cの上側端部を連結する水平面部27bと、水平面部27bの外側端部と水平面部27dの内側端部を連結する鉛直面部27cと、鉛直面部27cの下側端部と鉛直面部27eの下側端部を連結する水平面部27dと、水平面部27dの外側端部と水平面部27fの内側端部を連結する鉛直面部27eと、鉛直面部27eの上側端部と鉛直面部27gの下側端部を連結する水平面部27fと、水平面部27fの外側端部から上方に延びる鉛直面部27g等から形成されている。クラッシュカン9Aの前後方向に延びる閉断面部は、鉛直面部26aと鉛直面部27aを溶接し、鉛直面部26gと鉛直面部27gを溶接することによって形成されている。
【0072】
支持部材7Aは、鉛直面部26gの下端部分を下方に延設することによってクラッシュカン9Aと一体的に形成されている。支持部材7Aは、支持本体部7dと、衝撃伝達部7eとから構成されている。支持本体部7dには、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部28(衝撃吸収部)が形成されている。
【0073】
前側のビード部28は、前側のビード部26iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部7dの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7dの前端部まで形成されている。後側のビード部28は、後側のビード部26iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部7dの下部において前方に向かって湾曲している。各々のビード部28のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。
【0074】
衝撃伝達部7eは、支持本体部7dの下端部分を下方へ延長して形成されている。衝撃伝達部7eは、1対のボルト穴29を備えている。支持本体部7dの車幅方向内側表面に配置された脚払い部材6は、1対のボルト穴29を介して車幅方向外側からボルト(図示略)によって支持部材7Aへ固着されている。
【0075】
以上により、クラッシュカン9Aの鉛直面部26gを下方に延長して脚払い部材6を支持可能な支持部材7Aを一体的に形成したため、支持部材7Aの、クラッシュカン9Aへの取付部を省略することができ、車体重量の軽減と、クラッシュカン9Aの潰れ変形制御の容易化を図ることができる。
【0076】
次に、図11に基づいて、アンダカバーの変形例について説明する。尚、前記実施例のアンダカバー17と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
アンダカバー17Aは、平面視で見て、後部分に凹部を備えた略矩形形状に形成されている。合成樹脂製のアンダカバー17Aは、車幅方向中央部分を前端部から後端部に亙って延びる中央部分17aと、中央部分17aの左右両側に一体的に形成された左右1対の側部分17b等を備えている。
【0078】
中央部分17aは、合成樹脂にガラス繊維を混合した繊維強化プラスチック(FRP)によって形成されている。中央部分17aの車幅方向の長さは、脚払い部材6の中央部分を支持する支持ブラケット18をボルト24によって固定できるように設定されている。
【0079】
以上により、支持ブラケット18を固定する中央部分17aの車体前後方向の支持強度を高くすることができる。それ故、歩行者との衝突時、脚払い部材6の中央部に掛る下向きのモーメントを強固に支持でき、衝突に伴う脚払い部材6の移動を確実に抑えることができる。
【0080】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、脚払い部材を合成樹脂によって形成した例を説明したが、少なくとも、歩行者との衝突時、歩行者をボンネットの上に案内できれば良く、鋼板等の金属によって形成することも可能であり、同様の効果を奏することができる。また、部分毎に異なる材質によって形成された脚払い部材を用いることも可能である。
【0081】
2〕前記実施例においては、衝撃伝達部が車体前後方向の衝撃荷重を支持本体部に伝達する例を説明したが、少なくとも、支持部材によって衝撃荷重を吸収できれば良く、衝撃伝達部に車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能なビード部等の衝撃吸収部を設けることも可能である。
【0082】
3〕前記実施例においては、左右の立上り部が中央部分の左右端部分から夫々の外側端部分への移行部において略上方に立ち上がるように形成した例を説明したが、立上り部を上方に向かって緩やかに傾斜するように形成しても良く、湾曲状に形成することも可能である。
【0083】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、フロントサイドフレームの下側且つバンパレインフォースメントの前側位置に歩行者の下脚部を払う車幅方向部材を備えた車両において、脚払い機能を確保しつつバンパフェイスの形状を平面視で見て車幅方向中央部分に比べて車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した湾曲形状に形成することができる。
【符号の説明】
【0085】
V 車両
1 前部車体
2 ボンネット
3 フロントサイドフレーム
4 バンパレインフォースメント
5 バンパフェイス
6,6A 脚払い部材
6f 中央部分
6g 外側端部分
6h 立上り部
7,7A 支持部材
8 ラジエータ
9,9A クラッシュカン
13 シュラウドロア
17,17A アンダカバー
22,28 ビード部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、このバンパレインフォースメントよりも前方に設けられると共に車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し且つ車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外表面を形成するバンパフェイスと、前記1対のフロントサイドフレームよりも下側位置で且つ前端が前記バンパレインフォースメントより前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造において、
前記車幅方向部材は、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方に位置するように形成されたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記車幅方向部材の車幅方向外側端部が、少なくとも前記1対のフロントサイドフレームの直下位置に配置されたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部に亙って上方に向かって滑らかに湾曲するよう形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部分への移行部に上方に延びる立上り部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記1対のフロントサイドフレームに前記車幅方向部材を支持するための左右1対の支持部材を設け、前記1対の支持部材は前記車幅方向部材に入力した車両前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記車幅方向部材の下側において車体の下面を覆うアンダカバーを有し、このアンダカバーの車幅方向中央部分の前端部に前記車幅方向部材を支持する支持部を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
前記1対のフロントサイドフレーム間における前記車幅方向部材の後方位置に熱交換器と、この熱交換器を支持するシュラウドを設け、前記熱交換器は、車体前後方向前方に前傾姿勢となるように配置されたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項1】
ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、このバンパレインフォースメントよりも前方に設けられると共に車幅方向中央部分が車両前後方向で最も前端に位置し且つ車幅方向外側部分ほど車体後方に湾曲した車体前部の外表面を形成するバンパフェイスと、前記1対のフロントサイドフレームよりも下側位置で且つ前端が前記バンパレインフォースメントより前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造において、
前記車幅方向部材は、車幅方向外側端部分が車幅方向中央部分よりも上方に位置するように形成されたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記車幅方向部材の車幅方向外側端部が、少なくとも前記1対のフロントサイドフレームの直下位置に配置されたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部に亙って上方に向かって滑らかに湾曲するよう形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記車幅方向部材は、車幅方向中央部分から車幅方向外側端部分への移行部に上方に延びる立上り部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記1対のフロントサイドフレームに前記車幅方向部材を支持するための左右1対の支持部材を設け、前記1対の支持部材は前記車幅方向部材に入力した車両前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記車幅方向部材の下側において車体の下面を覆うアンダカバーを有し、このアンダカバーの車幅方向中央部分の前端部に前記車幅方向部材を支持する支持部を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
前記1対のフロントサイドフレーム間における前記車幅方向部材の後方位置に熱交換器と、この熱交換器を支持するシュラウドを設け、前記熱交換器は、車体前後方向前方に前傾姿勢となるように配置されたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−63096(P2011−63096A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214553(P2009−214553)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
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