説明

車両の後部荷室構造

【課題】ボードを格納状態から使用状態へ容易に復帰させることが可能な車両の後部荷室構造を提供する。
【解決手段】荷室フロア4aの上方に離間した略水平の位置である第1位置P1とシートバック11の背面に格納される第2位置P2とのあいだを回動可能に、シートバック11に支持されたトノボード6と、トノボード6を、第2位置P2に保持するロック機構7と、ロック機構7による第2位置P2におけるトノボード6に対する保持を解除し、トノボード6を第1位置P1と第2位置P2との間の第3位置P3へ移動させる解除機構8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部荷室を覆うボードを備えた車両の後部荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両後部の荷室に積載した荷物を覆い隠すためにトノカバーやトノボード(パッケージトレイ)を配設することが一般的である。
【0003】
通常、トノカバーは、カバー本体を巻き取るために巻き取り装置が配設されており、大型の荷物を積載する場合などトノカバーを使用しないときには、容易に格納することができる。
【0004】
それに対して、巻取り装置を備えないトノボードは、構造がシンプルで製造コスト等が低いという長所があるが、不使用時には格納しにくく、また、格納場所を確保することが難しいという問題がある。
【0005】
そこで、巻取り式のトノカバーに比べて、製造コストの面で長所があるトノボードについての上記の短所を解消する構造が、従来より種々検討されている。
【0006】
例えば、ボードがリアシート背面に回動自在に支持され、不使用時にはボードがリアシートの背面に格納される構造が特許文献1および2などによって知られている。
【0007】
たとえば、特許文献1(実開平4−38847号公報)に記載されている後部荷室構造では、パッケージトレイを水平状態とシートバック背面の間で回動させる構造である。
【0008】
また、特許文献2(特開2002−160564号公報)には、水平に延びるトノカバーを取り付けるためのパーティションボードがシートバックに回転自在に取り付けられ、シートバック前倒時に、前倒されたシートバックの背面上でパーティションボードを立設するための立設部が配設された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平4−38847号公報
【特許文献2】特開2002−160564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の特許文献1および2に示される構造の場合、車両後端からシートバックまでの距離が長いので、車両の後方開口部から手を伸ばしてボードを格納状態から使用状態へ復帰させる際に、シートバックの下端に手を伸ばしてボードを持ち上げる操作がしにくいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ボードを格納状態から使用状態へ容易に復帰させることが可能な車両の後部荷室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の車両の後部荷室構造は、車両のフロアパネル上に配設されたシートクッション、および前記シートクッションの後部に配設されたシートバックを有するリアシートと、前記シートバックの後方に配設された荷室と、前記荷室の底面を形成する荷室フロアの上方に離間した略水平の位置である第1位置と前記シートバックの背面に格納される第2位置とのあいだを回動可能に、前記シートバックに支持されたボードと、前記ボードを、少なくとも前記第2位置に保持するロック手段と、前記ロック手段による前記第2位置における前記ボードに対する保持を解除し、前記ボードを前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置へ移動させる解除手段とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0013】
この構成によれば、解除手段によって、ボードをシートバックの背面に格納された第2位置に保持するロック手段を解除し、かつ、第1位置と第2位置との間の第3位置へボードを移動させることができる。したがって、ボードを第2位置の格納状態から第1位置の使用状態へ移行させる場合に、この解除手段を操作することで、ボードを第2位置よりも第1位置に近い第3位置へ移行させることができ、その後に容易に第1位置へ移動させることができる。
【0014】
また、前記解除手段は、前記ボードを前記第3位置に移動させる方向に付勢するバネ部材を有するのが好ましい(請求項2)。
【0015】
この構成によれば、解除手段がバネ部材を有するので、バネ部材の付勢力によって、簡単な構成でボードを第3位置に移動させることができる。
【0016】
また、前記シートバックは、乗員が着座可能な立設状態において、前記シートバックの上部が下部に比べて車両後方に位置するように後傾して設置され、前記解除手段は、前記シートバックの下端より上方の位置に配設されているのが好ましい(請求項3)。
【0017】
この構成によれば、解除手段が、立設状態において後傾したシートバックの下端より上方の位置に配設されているので、車両後部から解除手段にさらに手が届きやすくなっている。シートバックの上部に配置された解除手段を操作することで、ロック手段による第2位置でのボードのロックをさらに容易に解除することができる。
【0018】
また、前記荷室の車両後方側に配設され、車両の後部開口を開閉可能に覆うバックドアをさらに備えており、前記ボードが前記第1位置にある状態で前記バックドアの閉まっているときには、前記ボードの後端は、前記バックドアに支持されているのが好ましい(請求項4)。
【0019】
この構成によれば、第1位置にあるボードの後端がバックドアに支持されるので、ボードを第1位置と第2位置との間を回動可能にしつつ、バックドアが閉状態のときには、バックドアによってボードの後端を確実に支持することができる。
【0020】
さらに、前記シートバックは、前記シートクッション対して、前記シートクッション上に前倒可能に支持され、前記ボードは、前記シートバックが前倒状態のときに前記リアシートから前方に離間して配設されたフロントシート側に回動して、前記フロントシートと前記リアシートとの間を連結できるように、前記シートバックに支持されているのが好ましい(請求項5)。
【0021】
この構成によれば、シートバックを前倒状態にして荷室を広く使用したいときには、フロントシートとリアシートとの間の隙間をボードで埋めることができる。その結果、長尺物等の荷物を最大限積載することが可能である。
【0022】
さらに、前記シートバックは、車幅方向に複数に分割されており、前記ボードは、前記シートバックに対応して車幅方向に複数に分割されており、前記ボードの幅は、前記シートバックの幅に合わせて設定されているのが好ましい(請求項6)。
【0023】
この構成によれば、車幅方向に分割されたシートバックのそれぞれを前倒させた場合に、分割されたボードもそれぞれ個別に第1位置または第2位置のいずれかを選択することができるため、よりフレキシブルに荷室の空間を活用することができる。
【0024】
さらに、前記ボードは、前記第1位置にあるときには、前記シートバックから車両の後端に渡って配設され、前記第2位置にあるときには、前記シートバックの上下幅と略同一となるように配設されているのが好ましい(請求項7)。
【0025】
この構成によれば、ボードは、第1位置では荷室を前後方向の全長に渡って完全に覆うことができ、しかも、第2位置ではシートバックの背面に完全に格納することができる。
【0026】
さらに、前記ロック手段は、前記ボードをさらに前記第3位置に保持するのが好ましい(請求項8)。
【0027】
この構成によれば、ロック手段がボードを第1位置と第2位置との間の第3位置に保持することができるので、ボードが第3位置の状態にあるときに車両を運転してもボードが揺動するなどの不具合がなくなる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の車両の後部荷室構造によれば、ボードを格納状態から使用状態へ容易に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の車両の後部荷室構造の第1実施形態に係る後部荷室構造におけるボードが第1位置にある状態を模式的に示す正面図である。
【図2】(a)は、図1の第1位置にあるボードのロック機構および解除機構付近の拡大斜視図である。(b)は、第1カム部材および第2カム部材の配置を示す拡大図である。
【図3】図1のボードが第1位置にあるときのロック機構および解除機構付近の拡大断面図である。
【図4】(a)は図1の後部荷室構造におけるボードが第2位置にある状態を模式的に示す正面図、(b)は図1のボードが第2位置にあるときのロック機構および解除機構付近の拡大断面図である。
【図5】(a)は図1の後部荷室構造におけるボードが第3位置にある状態を模式的に示す正面図、(b)は図1のボードが第3位置にあるときのロック機構および解除機構付近の拡大断面図である。
【図6】(a)は図1の後部荷室構造におけるボードが第4位置にある状態を模式的に示す正面図、(b)は図1のボードが第4位置にあるときのロック機構および解除機構付近の拡大断面図である。
【図7】図1のシートバックが前倒状態のときに、ボードがフロントシートのシートバックにもたれかかっている状態を模式的に示す正面図である。
【図8】(a)は本発明の車両の後部荷室構造の第2実施形態に係る後部荷室構造におけるボードが変更後の第3位置にある状態を模式的に示す正面図、(b)は(a)のボードが変更後の第3位置にあるときのロック機構および解除機構付近の拡大断面図である。
【図9】本発明の車両の後部荷室構造の第3実施形態に係る後部荷室構造におけるシートバックおよびボードが分割可能な構造を示す斜視図である。
【図10】図9のシートバックを車両後方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の車両の後部荷室構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1〜7に示されるハッチバックタイプの4輪自動車などの車両における車体1の後部荷室構造2は、主要な構成として、リアシート3と、荷室4と、バックドア5と、トノボード6、ロック機構7、解除機構8とを備えている。
【0032】
リアシート3は、車体1のフロアパネル9上に配設されたシートクッション10、およびシートクッション10の後部に配設されたシートバック11を有する。
【0033】
また、本実施形態では、シートバック11は、乗員が着座可能な立設状態において、シートバック11の上部が下部に比べて車体1の後方に位置するように後傾して設置されている。しかも、シートバック11は、シートクッション10対して、シートクッション10上に前倒可能に支持されている。
【0034】
荷室4は、シートバック11の後方(図1〜7の右側)に配設されている。荷室4には、車両後方から荷物を搭載することが可能である。
【0035】
トノボード6は、合成樹脂などからなり、定形性を有する板状部材である。トノボード6の前端側の第1端部6a(図1〜2参照)は、シートバック11に回転自在に支持されている。具体的には、トノボード6の第1端部6aには、回転軸12が車幅方向Aに沿って固定されている。回転軸12の両端は、シートバック11の背面11aの上部に設けられた一対の軸受13に回転自在に支持されている。
【0036】
これにより、トノボード6は、荷室4の底面を形成する荷室フロア4aの上方に離間した略水平な使用状態である第1位置P1(図1〜3参照)と、シートバック11の背面11aに格納される格納状態の第2位置P2(図4参照)とのあいだを回動できるように、シートバック11に支持されている。
【0037】
ロック機構7は、トノボード6を、少なくとも第2位置P2(図4参照)に保持する機構である。本実施形態のロック機構7は、使用状態の第1位置P1(図1〜3参照)、格納状態の第2位置P2(図4参照)の他に、さらに後述する中間位置である第3位置P3(図5参照)、前倒状態の第4位置P4(図6参照)にも、トノボード6を保持することができる構造である。ロック機構7は、シートバック11内部において一対の軸受13(図2(a)参照)の近傍にそれぞれ設けられている。
【0038】
図2〜3に示されるように、ロック機構7は、第1カム部材14と、第1カム部材14と連動する第2カム部材15と、ロック部材16とを備えている。
【0039】
第1カム部材14は、円板状のカムであり、トノボード6の回転軸12と同軸に固定されている。また、第1カム部材14は、軸受13内部に収納されている。
【0040】
第2カム部材15は、円筒状のカムであり、その軸15cはロック機構7のケーシング7aなどに回転自在に支持されている。第2カム部材15の外周面には、第1カム部材14と摩擦接触して回転力を受ける接触部分15aと、突起が形成された突起形成部分15bとを有している(図2(b)参照)。第2カム部材15の突出部形成部分15bの外周面には、4個の突起21〜24が突設されている。
【0041】
第1突起21は、第1位置P1(図1〜3参照)のときに、第2突起22は、第2位置P2(図4参照)のときに、第3突起23は、第3位置P3(図5参照)のときに、第4突起24は、第4位置P4(図6参照)のときに、それぞれロック部材16とかみ合う。
【0042】
ロック部材16は、前述の4個の突起21〜24にかみ合うことができる凹部16aを有している。ロック部材16は、ロック機構7のケーシング7aなどに支持軸17を介して、揺動自在に支持されている。また、支持軸17回りには、捩りコイルばね18が設けられている。捩りコイルばね18は、ロック部材16を突起21〜24へかみ合う方向C1へ付勢している。
【0043】
ロック部材16と突起21〜24とがかみ合う強さは、後述する解除機構8の可動部材26が突出してトノボード6を押動させたときにロックが解除される程度の強さに設定されている。また、乗員がトノボード6の後端側の第2端部6bを押し下げて、トノボード6を回転させることによっても、ロックを解除することができるように構成されている。
【0044】
本実施形態のロック機構7は、第3位置P3における保持のための第3突起23を備えており、トノボード6を第1位置と第2位置との間の第3位置P3に保持することができる。このため、トノボード6が第3位置の状態にあるときに車両を運転してもトノボード6が揺動してガタつくなどの不具合がない。
【0045】
なお、第3位置P3のための第3突起23を省略してもトノボード6を第1位置P1から第2位置P2へ移行させることは可能である。その場合も、本実施形態では、シートバック11が後傾しているので、トノボード6の自重により垂直に垂れ下がる第3位置P3へトノボード6に移動することになる。本発明では、ロック機構7は、トノボード6を、少なくとも第2位置P2に保持すればよく、第3位置P3に保持する機能を省略することは可能である。
【0046】
また、突起21〜24を配設する間隔を適宜変更することで、トノボード6の第3位置P3を任意に変更することができる。詳細については、後段の第2実施形態で述べる。
【0047】
解除機構8は、ロック機構7による第2位置P2におけるトノボード6に対する保持を解除し、トノボード6を第1位置P1と第2位置P2との間の第3位置P3へ移動させる機構である。解除機構8は、シートバック11の背面11aに埋め込まれた形で配置されている。
【0048】
解除機構8は、具体的には、図2(a)および図3に示されるように、ケーシング25と、可動部材26と、圧縮コイルばね27とを備えている。
【0049】
ケーシング25の内部には、小さい内径の第1空間部25aと、大きい内径の第2空間部25bとが形成されている。
【0050】
可動部材26は、乗員の手による操作力を受けたときにケーシング25から出没することにより、トノボード6を第3位置P3へ移動させる。
【0051】
可動部材26は、係止部分28と、磁石部分29とを有しており、図3に示されるケーシング25から突出した位置と、図4(b)に示される収納された位置との間を移動することが可能である。
【0052】
係止部分28は、ケーシング25の第1空間部25aに出没自在に挿入されている。係止部分28は、乗員の手によって、トノボード6および磁石部分29を介して第1空間部25a内部に1回押し込まれると第1空間部25a内部の係止突起または係止凹部(図示せず)に係止されてロックされ、もう1回押し込まれるとロックが解除して圧縮コイルばね27の弾性力で第1空間部25aから先端の一部が突出する。
【0053】
磁石部分29は、係止部分28の先端に固定されており、第2空間部25bに出没自在に挿入されている。係止部分28とともに押し込まれるたびに、収納位置と突出位置との間を移動する。磁石部分29には、永久磁石が内蔵されている。一方、トノボード6のシートバック11の背面11aに対向する対向面6cには、スチールなどの板磁性体からなる磁性板30が設けられている。これにより、磁石部分29は、磁性板30を吸着することにより、ロック機構7による保持とともに、格納状態の第2位置P2にあるトノボード6をシートバック11の背面11aに強固に保持することができる。
【0054】
なお、格納状態の第2位置P2にあるトノボード6のロックについては、磁石部分29の吸着力のみで保持してもよい。この場合、磁石部分29が本発明のロック手段としての機能を奏することが可能になる。
【0055】
バックドア5は、荷室4の車体1の後方側にヒンジ(図示せず)を介して回転自在に配設され、車体1の後部開口31を開閉可能に覆うドアである。本実施形態のバックドア5は、上下に開閉しているが、横開きでもよい。
【0056】
図1〜3に示されるように、トノボード6の使用状態では、トノボード6は、回転軸12回りにシートバック11の背面11aから回転して荷室フロア4aに略水平になる第1位置P1まで移動される。このとき、ロック機構7の第1突起21がロック部材16にかみ合うことにより、第1位置P1に保持される。これにより、荷室4の内部をトノボード6によって覆うことが可能になる。
【0057】
また、トノボード6が第1位置P1にある状態でバックドア5の閉まっているときには、トノボード6の後端側の第2端部6b(図1参照)は、バックドア5の突起32に支持されている。したがって、第1位置P1にあるトノボード6は、前端側がシートバック11に支持され、後端側がバックドア5に支持され、両端支持の状態になる。その結果、トノボード6を第1位置P1と第2位置P2との間を回動可能にしつつ、バックドア5が閉状態のときには、バックドア5によってトノボード6の後端側の第2端部6bを確実に支持して、トノボード6を水平位置(第1位置P1)に保持することができる。
【0058】
また、ロック機構7は、トノボード6を第1位置P1に保持することができるので、トノボード6が使用位置にあるときに、トノボード6の下部に荷物がある場合には、トノボード6と荷物との干渉を防止でき、トノボード6の破損を防止することができる。
【0059】
一方、図4(a)、(b)に示されるように、トノボード6の格納状態では、トノボード6は、回転軸12回りにシートバック11の背面11aに沿う状態まで回転して第2位置P2まで移動される。このとき、ロック機構7の第2突起22がロック部材16にかみ合うことにより、第2位置P2に保持される。トノボード6がシートバック11の背面11aに格納されることにより、荷室4に多くの荷物Bを積載することが可能になる。
【0060】
また、トノボード6が第2位置P2にあるときには、解除機構8の可動部材26はケーシング25内部に収納され、しかも、磁石部分29はトノボード6側の磁性板30を吸着している。
【0061】
なお、トノボード6を使用状態の第1位置P1から格納状態の第2位置P2へ移行するときには、トノボード6を乗員の手で押し下げて回転して、一旦、第3位置P3(図5参照)にしてから、手近にある荷物その他の物などを用いて車両後方から前方へ向かってトノボード6を第2位置P2まで押せばよい。
【0062】
本実施形態のトノボード6の長さは、シートバック11から車両後端のバックドア5までの距離に等しく、かつ、シートバック11の上下幅と略同一に設定されている。そのため、トノボード6は、第1位置P1にあるときには、シートバック11からバックドア5に渡って配設され、第2位置P2にあるときには、シートバック11の上下幅と略同一となるように配設されている。したがって、トノボード6は、第1位置では荷室4を車両の前後方向の全長に渡って完全に覆うことができ、しかも、第2位置ではシートバック11の背面11aに完全に格納することができる。そのため、1枚のトノボード6で完全に荷室4を覆うことができるので、部品点数が少なくて済むとともに、トノボード6をそのままの形状でシートバック11に格納できるので、格納動作も容易である。
【0063】
つぎに、図5(a)、(b)に示されるように、トノボード6を格納状態の第2位置P2から使用状態の第1位置P1へ移行させる場合には、解除機構8を操作して、ロック機構7の解除するとともにトノボード6を第3位置へ移動させる。
【0064】
具体的には、乗員が車体1の後部からトノボード6の背面のうち解除機構8の付近を手などで押す。これにより、解除機構8の可動部材26は、係止部分28のロックが解除され、圧縮コイルばね27の弾性力により車両後方側へ突出する。そして、可動部材26が突出することにより、トノボード6をシートバック11の背面11aに格納された第2位置P2の格納状態に保持するロック機構7が解除され、それとともに、第1位置P1と第2位置P2との間、すなわち、第2位置P2よりも車体1の後部から乗員の手が届きやすい位置である第3位置P3へトノボード6が移動される。このとき、ロック機構7の第3突起23がロック部材16にかみ合うことにより、トノボード6は、第3位置P3に保持される。
【0065】
したがって、トノボード6をシートバック11の背面11aに格納された第2位置の格納状態から荷室フロア4aを略水平に覆う第1位置P1の使用状態へ移行させる場合に、車体1の後部開口31から乗員が手を伸ばして、解除機構8の可動部材26をトノボード6を介して前方へ押し込む操作をするだけでで、トノボード6を第2位置P2よりも車両後方側であり第1位置P1に近い第3位置P3へワンタッチで移行させることができる。その後に乗員は第3位置P3のトノボード6を手で持ち上げることにより、容易に第1位置P1へ移動させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、解除機構8は、後傾したシートバック11の下端より上方の位置に配設されている。このような解除機構8の配置によって、車体1後部から解除機構8にさらに手が届きやすくなる。その結果、シートバック11の上部に配置された解除機構8を操作することで、ロック機構7による第2位置P2でのトノボード6のロックをさらに容易に解除することができる。
【0067】
また、図6(a)、(b)に示されるように、本実施形態のトノボード6は、シートバック11が前倒状態のときにリアシート3から前方に離間して配設されたフロントシート40側に回動して、フロントシート40とリアシート3との間を連結できるように、シートバック11に支持されている。したがって、シートバック11を前倒状態にして荷室4を最大限広く使用したいときには、フロントシート40とリアシート3との間の隙間41をトノボード6で埋めることができる。その結果、長尺物L等の荷物を最大限積載することが可能である。このとき、ロック機構7の第4突起24がロック部材16にかみ合うことにより、トノボード6は、第4位置P4に保持される。
【0068】
また、このような使用状態のときには、フロントシート40は、最も車両前側の位置まで移動される。そして、トノボード6の第2端部6bは、フロントシート40のシートバック42に支持されるので、トノボード6は安定した両端支持の状態になる。
【0069】
なお、図7に示されるように、長尺物L2が荷室4からフロントシート40までの間に収まる長さの場合には、フロントシート40を車両前側に移動させずに、リアシート3のシートバック11を前倒しにして、荷室4からフロントシート40のシートバック42までの空間を利用して長尺物L2を収納すればよい。この場合、トノボード6が長尺物L2によって押し潰されないように、トノボード6をフロントシート40のシートバック42にもたれかかる位置まで移動させておくのが好ましい。
【0070】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、トノボード6の使用状態の第1位置P1と格納状態の第2位置P2との間の中間位置として、トノボード6がほぼ垂直方向に延びる第3位置P3に移行する例をあげて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロック機構7の突起の位置を変更することで、トノボード6の中間位置を変更することができる。
【0071】
すなわち、本発明の第2実施形態として、図8(a)、(b)に示されるように、トノボード6の変更後の中間位置として、図5(a)の第3位置P3から少し上方へ開いた位置、すなわち変更後の第3位置P31にトノボード6を保持するようにしてもよい。この場合、ロック機構7は、変更後の第3位置P31におけるトノボード6の保持のために、変更後の第3突起43は、図5(a)の第3突起23よりも第1突起21に近づいた位置に21に設けられている。また、この場合、解除機構8の圧縮コイルばね27の弾性力は、トノボード6を変更後の第3位置P31まで跳ね上げるのに十分な強さが必要になる。
【0072】
このように、トノボード6の中間位置を、少し上方へ開いた変更後の第3位置P31にすることにより、図8(a)に示されるように、荷室4に小さい荷物Sを載せる場合にトノボード6で覆い隠すことが可能になる。
【0073】
荷物Sを載せる手順としては、例えば、変更後の第3位置P31にあるトノボード6を車両後方から乗員の手で少し開け、荷物Sを荷室4のシートバック11に近い位置に載せ、その後、トノボード6を変更後の第3位置P31に戻せばよい。このとき、図8(b)に示されるように、ロック機構7の変更後の第3突起43がロック部材16にかみ合うことにより、トノボード6は、変更後の第3位置P31に保持される。そのため、運転時にトノボード6が揺動する不具合がない。
【0074】
(第3実施形態)
また、本発明のさらに他の実施形態として、図9〜10に示されるベンチシートタイプのリアシート51では、シートクッション52は共通であるが、シートバック53が車幅方向Aに分割された仕様になっている。シートバック53は、例えば、6:4に分割され、大きい分割部分54と、小さい分割部分55とを有している。これに対応するように、トノボード56も、車幅方向に複数に分割して、大きい分割部分57と、小さい分割部分58とが配設されている。トノボード56の分割部分57、58の幅は、シートバック53の分割部分54、55の幅に合わせて設定されている。トノボード56の分割部分57、58は、それぞれシートバック53の分割部分54、55の背面に回転可能に配設されている。トノボード56の分割部分57、58は、シートバック53の分割部分54、55のいずれかが前倒状態のときに車両前方へ回転することが可能である。
【0075】
そして、シートバック53のそれぞれの分割部分54、55についても、第1実施形態と同様に、ロック機構7と、解除機構8とが設けられている。
【0076】
ロック機構7は、第1実施形態と同様に、トノボード56の分割部分57、58を、使用状態の略水平の第1位置、格納状態のシートバック53の背面に沿う第2位置、第1位置と第2位置との間の第3位置、およびシートバック53の分割部分54、55のいずれかが前倒状態のときに車両前方へ回転した第4位置に保持する。
【0077】
トノボード56の分割部分57、58の側方の隙間は、トランクサイドトリム59で閉じられている。
【0078】
図9〜10に示される構成によれば、車幅方向Aに分割されたシートバック11のそれぞれを前倒させた場合に、トノボード56の分割部分57、58もそれぞれ個別に第1位置〜第4位置のいずれかを選択することができるため、よりフレキシブルに荷室の空間を活用することができる。例えば、長尺物等の荷物を載せる場合には、荷物の幅に合わせて、シートバック53の分割部分54、55のいずれか一方を前倒状態にして、それに対応してトノボード56の分割部分57、58のいずれか一方を車両前方へ回転して第4位置にすればよい。また、このときも、トノボード56の分割部分57、58の他方は、略水平にして使用状態の第1位置またはシートバックに収納された第2位置のいずれかに配置可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 車体
2 後部荷室構造
3 リアシート
4 荷室
4a 荷室フロア
5 バックドア
6 トノボード
7 ロック機構
8 解除機構
9 フロアパネル
10 シートクッション
11 シートバック
11a 背面
12 回転軸
13 軸受
21 第1突起
22 第2突起
23 第3突起
24 第4突起
26 可動部材
27 圧縮コイルばね
28 係止部分
29 磁石部分
30 磁性板
31 後部開口
32 突起
40 フロントシート
41 隙間
42 シートバック
43 変更後の第3突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネル上に配設されたシートクッション、および前記シートクッションの後部に配設されたシートバックを有するリアシートと、
前記シートバックの後方に配設された荷室と、
前記荷室の底面を形成する荷室フロアの上方に離間した略水平の位置である第1位置と前記シートバックの背面に格納される第2位置とのあいだを回動可能に、前記シートバックに支持されたボードと、
前記ボードを、少なくとも前記第2位置に保持するロック手段と、
前記ロック手段による前記第2位置における前記ボードに対する保持を解除し、前記ボードを前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置へ移動させる解除手段と
を備えていることを特徴とする車両の後部荷室構造。
【請求項2】
前記解除手段は、前記ボードを前記第3位置に移動させる方向に付勢するバネ部材を有する、
請求項1に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項3】
前記シートバックは、乗員が着座可能な立設状態において、前記シートバックの上部が下部に比べて車両後方に位置するように後傾して設置され、
前記解除手段は、前記シートバックの下端より上方の位置に配設されている、
請求項1または2に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項4】
前記荷室の車両後方側に配設され、車両の後部開口を開閉可能に覆うバックドアをさらに備えており、
前記ボードが前記第1位置にある状態で前記バックドアの閉まっているときには、前記ボードの後端は、前記バックドアに支持されている、
請求項1から3のいずれかに記載の車両の後部荷室構造。
【請求項5】
前記シートバックは、前記シートクッション対して、前記シートクッション上に前倒可能に支持され、
前記ボードは、前記シートバックが前倒状態のときに前記リアシートから前方に離間して配設されたフロントシート側に回動して、前記フロントシートと前記リアシートとの間を連結できるように、前記シートバックに支持されている、
請求項1から4のいずれかに記載の車両の後部荷室構造。
【請求項6】
前記シートバックは、車幅方向に複数に分割されており、
前記ボードは、前記シートバックに対応して車幅方向に複数に分割されており、
前記ボードの幅は、前記シートバックの幅に合わせて設定されている、
請求項1から5のいずれかに記載の車両の後部荷室構造。
【請求項7】
前記ボードは、前記第1位置にあるときには、前記シートバックから車両の後端に渡って配設され、前記第2位置にあるときには、前記シートバックの上下幅と略同一となるように配設されている、
請求項1から6のいずれかに記載の車両の後部荷室構造。
【請求項8】
前記ロック手段は、前記ボードをさらに前記第3位置に保持する、
請求項1から7のいずれかに記載の車両の後部荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−207261(P2011−207261A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74447(P2010−74447)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】