説明

車両の後部荷室構造

【課題】車両走行時に、荷室内に収納された荷物の移動に伴ってコントロールユニットが破損することを防止できる車両の後部荷室構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車両の後部荷室としてのトランクルーム1に揺動可能に配設された一対のヒンジアーム6、6を介して車体に支持されると共に、該ヒンジアーム6の揺動によりトランクルーム1の開口部4を開閉するトランクリッド5を備えた車両の後部荷室構造であって、トランクルーム1の側部には、ボディコントロールモジュール(BCM)17を配置しており、該BCM17を、トランクリッド5を閉じた状態のヒンジアーム6の車幅方向外側に配置し、該ヒンジアーム6の車幅方向外側部に対向させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の後部荷室に揺動可能に配設された一対のヒンジアームの揺動により、上記後部荷室の開口部を開閉するトランクリッドを備えた車両の後部荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、一般的に、各種補機を制御するためのコントロールユニットが配設されている。そして、従来においては、コントロールユニットに接続されるハーネスの短縮化を図ることを目的として、車両後部の補機を制御するための専用のコントロールユニットを車両後部に配設したものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−213130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両後部に配設される補機の増加に伴い、上述のように車両後部に配設されるコントロールユニットに複数本のハーネスが接続される場合がある。このため、車種によっては、ハーネスを配索する際の作業性等を考慮して、上記コントロールユニットを車両後部荷室内に配設しているものがある。
【0005】
しかしながら、この場合、荷室に大型の荷物が収納されると、車両走行時、荷物の移動に伴ってこれがコントロールユニットに接触し、該コントロールユニットを破損させる虞があった。
【0006】
この発明は、車両走行時に、荷室内に収納された荷物の移動に伴ってコントロールユニットが破損することを防止できる車両の後部荷室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の車両の後部荷室構造は、車両の後部荷室に揺動可能に配設された一対のヒンジアームを介して車体に支持されると共に、該ヒンジアームの揺動により上記後部荷室の開口部を開閉するトランクリッドを備えた車両の後部荷室構造であって、上記後部荷室の側部には、車両のコントロールユニットを配置しており、該コントロールユニットを、上記トランクリッドを閉じた状態の上記ヒンジアームの車幅方向外側に配置し、該ヒンジアームの車幅方向外側部に対向させたものである。
【0008】
この構成によれば、大型の荷物が後部荷室内に収納されていた場合であっても、車両走行時に、上記荷物の移動に伴ってこれがコントロールユニットに接触することをヒンジアームによって防止することができる。これにより、上記荷物との接触に起因するコントロールユニットの破損を確実に防止することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジアームが、その中間部を突出させた湾曲形状をなしており、上記コントロールユニットを、上記トランクリッドを閉じた状態において、上記ヒンジアームの両端部を結ぶ仮想線、及び上記中間部により囲まれた領域と側面視で重複するように配置したものである。
【0010】
この構成によれば、荷物がコントロールユニットに接触することを確実に防止でき、その結果、コントロールユニットの破損をより確実に防止することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジアームが、上記トランクリッドを全開した状態では、上記コントロールユニットに対して上方側に位置するものである。
【0012】
この構成によれば、開口部を通じて車外からコントロールユニットにアクセスする際、コントロールユニットへのアクセスがヒンジアームによって阻害されることを防止できる。このため、コントロールユニットの着脱作業及びメンテナンス作業を容易にすることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記後部荷室内に、上記ヒンジアームの車幅方向内側部と上記後部荷室の側部とを覆うサイドトリムを配設したものである。
【0014】
この構成によれば、後部荷室の見栄えを向上させることができると共に、荷物等が、コントロールユニットに接続されたハーネスと接触することを防止でき、その結果、ハーネスを保護することもできる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、大型の荷物が荷室内に収納されていた場合であっても、車両走行時に、上記荷物の移動に伴ってこれがコントロールユニットに接触することをヒンジアームによって防止することができる。これにより、上記荷物との接触に起因するコントロールユニットの破損を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の後部荷室構造を示す図であって、トランクリッドの開状態を示す斜視図。
【図2】トランクリッドの開状態において、コントロールユニットの位置で車両後部を車幅方向に切断した断面図。
【図3】トランクリッドの開状態において、サイドトリムを取り外した状態を示す斜視図。
【図4】車両の後部荷室構造を示す側面図。
【図5】トランクリッドの閉状態において、コントロールユニットの位置で車両後部を車幅方向に切断した断面図。
【図6】ヒンジアームとコントロールユニットとの位置関係を説明するための要部拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の後部荷室構造を示す図であって、トランクリッドの開状態を示す斜視図である。図1に示す車両の後部には、荷室としてのトランクルーム1が配設され、リヤウインド2や、車両後端部のリヤバンパー3等により、トランクルーム1の開口部4が形成されている。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。
【0018】
また、車両後部には、上述した開口部4を開閉するトランクリッド5が配設され、このトランクリッド5が、後述する左右一対のヒンジアーム6を介して車体に支持されている。
【0019】
トランクリッド5の下部の車幅方向中央部には、公知のラッチ(図示せず)が配設される一方、車体側には、このラッチと係合可能なストライカ7が配設されており、上記ラッチがストライカ7と係合することにより、トランクリッド5の閉状態が保持されるようになっている。
【0020】
また、車両後部には、図2に示すように、トランクルーム1の下方においてフロアパネル8が配設されており、その車幅方向両端部下面には、車両前後方向に延びる断面略ハット状のリヤサイドフレーム9が配設されている。車両後部下部では、フロアパネル8の底面に上述したリヤサイドフレーム9が接合されることにより、車両前後方向に延びる左右一対の閉断面が形成されている。
【0021】
さらに、フロアパネル8の上方側には、その車幅方向両側において車両前後方向に延びる一対のトレイ10が配設され、この一対のトレイ10の間にフロアマット11が配設されている。トランクルーム1では、これら左右一対のトレイ10とフロアマット11とにより、トランクルーム1の床面が形成されている。なお、図中において矢印(IN)は車体内方、矢印(OUT)は車体外方を示す。
【0022】
また、トランクルーム1の前部上方には、リヤウインド2の下方において車幅方向に延びるリヤパッケージトレイ12が配設され、その上面がリヤパッケージトリム13によって覆われている。
【0023】
そして、トランクルーム1の側方には、後部車体を構成するインナパネル14、アウタパネル15が配設され、インナパネル14よりも車幅方向内側には、トランクルーム1の側部(インナパネル14)とヒンジアーム6の車幅方向内側部とを覆う合成樹脂製のサイドトリム16が配設されている。
【0024】
また、トランクルーム1の側部には、図2〜図5に示すように、車両後部に搭載された各種補機を制御するためのコントロールユニットとしてボディコントロールモジュール(以下、BCMという。)17が配設されており、本実施形態では、このBCM17が、インナパネル14とサイドトリム16との間の空間に配置されている。
【0025】
BCM17は、図3に示すように、車両の後輪W(図1、図3、図4参照)を覆うホイールハウス18の車両後方上部に配設され、ボルト、ナット等の締結部材19によって脚部20aがインナパネル14に締結されたブラケット20に固定されている。
【0026】
また、BCM17には、複数本のハーネス21、21、…が接続されており、BCM17は、このハーネス21、21、…を介して車両後部に配設される各種補機に電気的に接続されている。
【0027】
ここで、車両後部に配設される補機としては、例えば、上述したトランクリッド5のラッチや、車両後端部両側に配設されたテールランプ22、22(図1、図1、図3、図4参照)に接続される他、車種によっては、車両後方の走行環境を認識するためのカメラや、送信電波に対する反射波を検出して障害物を認識するレーダ装置等に接続される。なお、複数本のハーネス21、21、…のうち1本は、図1〜図3、図5に示すように、ヒンジアーム6に沿って配索されており、このワイヤハーネス21は、トランクリッド5のラッチに接続されている。
【0028】
ところで、上述したリヤパッケージトレイ12には、図4に示す揺動軸23が取付けられており、ヒンジアーム6は、その前端部61が揺動軸23に軸支されることによって、トランクルーム1に揺動可能に配設されている。
【0029】
また、ヒンジアーム6は、上述したように前端部61が揺動軸23に軸支される一方、後端部62がトランクリッド5に固定されており、その中間部63は、大きく下方に突出した湾曲形状をなしている。
【0030】
ここで、トランクリッド5は、図1〜図4に示すように、主にインナパネル51と、アウタパネル52と、インナパネル51のトランクルーム1側の面を覆うトリム53とにより構成されている。そして、インナパネル51の前端部両側には、上述した一対のヒンジアーム6、6の後端部62、62が取付けられている。
【0031】
本実施形態では、ヒンジアーム6の揺動軸23を支点とした所定の揺動により、トランクリッド5の開口部4を開閉することができるようになっている。なお、図4では、トランクリッド5を全開した状態を二点鎖線で示している。
【0032】
また、ヒンジアーム6では、その中間部63を湾曲形状とすることにより、トランクリッド5の開閉時、ヒンジアーム6と、車体側のリヤウインド2及びリヤパッケージトレイ12、リヤパッケージトリム13との干渉を回避しながらヒンジアーム6を回動させることができるようになっている。これにより、トランクリッド5の開度を十分に確保することが可能になっている。
【0033】
また、トランクリッド5を閉じる時には、トランクリッド5側のラッチと車体側のストライカ7とを係合させることで、上述したようにトランクリッド5の閉状態が保持されるようになっている。一方、トランクリッド5の閉状態が保持された状態で、上記ラッチがBCM17から所定の制御信号を受信すると、上記係合状態が解除されるようになっており、この係合状態の解除により、ヒンジアーム6の揺動が可能になって、トランクリッド5を開くことができるようになっている。
【0034】
ところで、本実施形態では、上述したBCM17が、図4〜図6に示すように、トランクリッド5を閉じた状態のヒンジアーム6の車幅方向外側に配置され、該ヒンジアーム6の車幅方向外側部に対向している。
【0035】
そして、BCM17は、図6に示すように、トランクリッド5を閉じた状態において、ヒンジアーム6の前後両端部61、62を結ぶ仮想線L、及び中間部63により囲まれた領域A(図6中網掛け部の領域)と側面視で重複するように配置されている。
【0036】
一方、トランクリッド5を全開した状態では、図2〜図4に示すように、BCM17が、ヒンジアーム6に対して下方側に位置するようになっており、換言すれば、ヒンジアーム6が、BCM17の上方側に位置するようになっている。
【0037】
また、ヒンジアーム6の内側を覆うサイドトリム16は、揺動するヒンジアーム6との干渉を回避するために、図1、図2、図5に示すような開口部16aを有すると共に、ヒンジアーム6の揺動範囲と対応する位置には、他よりも車幅方向内側に突出する突出部16bが形成されている。
【0038】
このように、本実施形態では、トランクリッド5を閉じた状態のヒンジアーム6の車幅方向外側にBCM17を配置し、これをヒンジアーム6の車幅方向外側部に対向させたことで、例えば、図2、図5にて二点鎖線で示すように、スーツケース等の大型の荷物X、Yがトランクルーム1内に収納されていた場合であっても、車両走行時に、荷物X、Yの移動に伴ってこれがBCM17に接触することをヒンジアーム6によって防止することができる。これにより、荷物X、Yとの接触に起因するBCM17の破損を確実に防止することができる。
【0039】
そして、元々トランクリッド5を開閉するために配設されたヒンジアーム6を利用してBCM17の破損を防止するようにしているため、BCM17を保護するための部材が不要となり、コスト及び車体重量の増加を防止できるという効果も奏する。
【0040】
また、トランクリッド5を閉じた状態において、ヒンジアーム6の前後両端部61、62を結ぶ仮想線L、及び中間部63により囲まれた領域Aと側面視で重複するようにBCM17を配置したことで、荷物X、YがBCM17に接触することを確実に防止でき、その結果、BCM17の破損をより確実に防止することができる。
【0041】
また、トランクリッド5を全開した状態において、ヒンジアーム6が、BCM17に対して上方側に位置することで、開口部4を通じて車外からBCM17にアクセスする際、BCM17へのアクセスがヒンジアーム6によって阻害されることを防止できる。このため、BCM17の着脱作業及びメンテナンス作業を容易にすることができる。
【0042】
また、トランクルーム1内に、その側部とヒンジアーム6の車幅方向内側部とを覆うサイドトリム16を配設したことで、トランクルーム1の見栄えを向上させることができると共に、荷物X、Y等が、BCM17に接続されたハーネス21、21、…と接触することを防止でき、その結果、ハーネス21を確実に保護することができる。また、サイドトリム16を配設することで、塵埃、雨水等の異物の侵入を防止することができるため、車両後部の各種補機への通電、及び信号の送受信が阻害されることを防止できるという効果も奏する。
【0043】
また、トランクリッド5を閉じた状態のヒンジアーム6の車幅方向外側部と対向する位置にBCM17を配置したことで、図1、図2、図5に示すように、トランクルーム1の側部下側では、サイドトリム16の車幅方向内側への突出量を抑制できるという効果も奏する。従って、トランクルーム1の使い勝手がサイドトリム16によって阻害されることを防止できる。
【0044】
なお、上述した実施形態では、BCM17に複数本のハーネス21、21、…が接続される構成となっているが、本発明では、BCM17に複数本のハーネスが接続されることに必ずしも限定されない。
また、本発明は、トランクリッド5のラッチをBCM17で制御することに必ずしも限定されない。
【0045】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、後部荷室は、トランクルーム1に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…トランクルーム
4…開口部
5…トランクリッド
6…ヒンジアーム
16…サイドトリム
17…ボディコントロールモジュール(BCM)
63…中間部
A…領域
L…仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部荷室に揺動可能に配設された一対のヒンジアームを介して車体に支持されると共に、
該ヒンジアームの揺動により上記後部荷室の開口部を開閉するトランクリッドを備えた車両の後部荷室構造であって、
上記後部荷室の側部には、車両のコントロールユニットを配置しており、
該コントロールユニットを、上記トランクリッドを閉じた状態の上記ヒンジアームの車幅方向外側に配置し、
該ヒンジアームの車幅方向外側部に対向させた
車両の後部荷室構造。
【請求項2】
上記ヒンジアームは、その中間部を突出させた湾曲形状をなしており、
上記コントロールユニットを、上記トランクリッドを閉じた状態において、上記ヒンジアームの両端部を結ぶ仮想線、及び上記中間部により囲まれた領域と側面視で重複するように配置した
請求項1記載の車両の後部荷室構造。
【請求項3】
上記ヒンジアームは、上記トランクリッドを全開した状態では、上記コントロールユニットに対して上方側に位置する
請求項1または2記載の車両の後部荷室構造。
【請求項4】
上記後部荷室内に、上記ヒンジアームの車幅方向内側部と上記後部荷室の側部とを覆うサイドトリムを配設した
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の後部荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67210(P2013−67210A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205467(P2011−205467)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】