説明

車両の後部車体構造

【課題】簡単な構造で、後方からの衝撃荷重を車両のフレーム構造に効果的に伝達することができる車両の後部車体構造を提供する。
【解決手段】車両の後部車体構造は、車両後部に前後方向に延在する一対のリアサイドフレーム16と、車幅方向に延びると共にその両端部がリアサイドフレーム16にそれぞれ連結され、且つ車体後方を向いた後方面20Aの車幅方向中央部が両端部に比べてより後方に位置するように湾曲したバンパーレイン20と、バンパーレイン20に沿ってバンパーレイン20を後部から覆うバンパーカバー12と、を有し、バンパーカバー12の車幅方向略中央部に取り付けられ、バンパーカバー12の後方面から後方に突出する突出部24と、突出部24とバンパーレイン20との間に設けられ、突出部24が受ける後方からの衝突荷重をバンパーレイン20に伝達する荷重伝達部材26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部車体構造に関し、特に衝突等によって後方から受けた力を吸収するための車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、後方からの衝突荷重を吸収するための構造として、例えば特許文献1に記載のバンパービームの構造が知られている。この特許文献1に記載の構造では、車両の前後方向に延びる一対のリアサイドフレームの後端に、車幅方向に延びるバンパーレインが固定されており、バンパーレインのライセンスプレートに対応する位置の左右上下に、サイドサポート、アッパーサポート、及びロアーサポートを設けている。このバンパーレインは、樹脂製のバンパーカバーで覆われており、このバンパーカバーにはライセンスプレートが取り付けられる。
【0003】
このような構造のバンパーレインでは、後方からの衝突荷重をバンパーカバーを介してバンパーレインのサイドサポート、アッパーサポート、及びロアーサポートで受ける。これにより、後方からの衝突荷重に対して、車両の後部車体構造の変形を最小のものとするとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−96563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構造のバンパーレインにおいては、バンパーレインにサイドサポート、アッパーサポート、及びロアサポートを形成し、結合しなくてはならないため、製造工程が複雑となり、コスト高になる。また、バンパーレインは、通常リアサイドフレームに溶接等で取り付けられているため、このようなサポートを有する構造のバンパーレインを、既存の車両に採用して取り付けることは難しい。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構造で、後方からの衝突荷重を車両のフレーム構造に確実に伝達することができる車両の後部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の車両の後部車体構造は、車両の後部に前後方向に延在する一対のリアサイドフレームと、車幅方向に延びると共にその両端部がリアサイドフレームにそれぞれ連結され、且つ車体後方を向いた後方面の車幅方向中央部が両端部に比べてより後方に位置するように湾曲したバンパーレインと、バンパーレインに沿ってバンパーレインを後部から覆うバンパーカバーと、を有する車両の後部車体構造において、バンパーカバーの車幅方向略中央部に取り付けられ、バンパーカバーの後方面から後方に突出する突出部と、突出部とバンパーレインとの間に設けられ、突出部が受ける後方からの衝突荷重をバンパーレインに伝達する荷重伝達部材と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、後方からの衝突荷重がバンパーカバーから後方に突出している突出部で受け止められると、この衝突荷重は、荷重伝達部材を介してバンパーレインに伝達される。バンパーレインに伝達された衝突荷重は、車両の前後方向に延びる一対のリアサイドフレームに伝達され、これらのフレーム構造によって衝突荷重が吸収される。
【0009】
バンパーカバーに突出部及び荷重伝達部材が設けられているので、突出部からバンパーレインまで、ひいてはリアサイドフレームまでの荷重伝達経路が確立され、突出部が受けた荷重をバンパーレインに確実に伝達することができる。
また、突出部がバンパーカバーから後方に突出しているので、後方からの衝突荷重を突出部で受けやすい。したがって、後方からの衝突荷重を、突出部及び荷重伝達部材を介してバンパーレインに確実に伝達することができ、後方からの衝突荷重の吸収を効率よく行うことができる。また、このとき、突出部がバンパーカバーの車幅方向略中央部に取り付けられているので、突出部が受けた衝突荷重を、車両の前後方向に延びる一対のリアサイドフレームに分散して伝達することができる。さらに、バンパーレインは、後方面の車幅方向中央部が両端部よりも後方に位置するように湾曲しているので、突出部が車幅方向略中央部に設けられることにより、後方からの衝突荷重を湾曲したバンパーレインの車幅方向略中央部で受けることができる。したがって、バンパーレインで衝突荷重を効率よく吸収することができ、バンパーレインの変形を防止または最小限に抑制することができる。
【0010】
また、突出部がバンパーカバーに取り付けられているので、バンパーレインの構造を複雑にすることなく、簡単な構造で後方からの衝突荷重に対応することができる。したがって、既存の車両にも突出部及び荷重伝達部材を取り付けて、後方からの衝突荷重を確実にバンパーレイン及びリアサイドフレームに伝達することが可能となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、荷重伝達部材は、突出部とバンパーカバーとの間に配置される第1荷重伝達部材と、バンパーカバーとバンパーレインとの間に配置される第2荷重伝達部材と、を備える。
このように構成された本発明においては、第1荷重伝達部材が突出部とバンパーカバーとの間に、また第2荷重伝達部材がバンパーカバーとバンパーレインとの間に配置されているので、突出部が受けた衝突荷重が第1荷重伝達部材を介してバンパーカバーに伝達され、バンパーカバーが受けた衝突荷重が第2荷重伝達部材を介してバンパーレインに伝達される。
【0012】
第1荷重伝達部材及び第2荷重伝達部材が設けられているので、突出部とバンパーレインとの間にバンパーカバーが配置されていても、突出部が受けた衝突荷重を確実にバンパーレインに伝達することができる。また、第1荷重伝達部材及び第2荷重伝達部材を有することにより、例えば、バンパーカバーとバンパーレインとの間に隙間がある場合にも、突出部からの衝突荷重をバンパーレインに伝達することができる。したがって、既存の設計の車両にも、バンパーカバーの形状を変更することなく突出部及び荷重伝達部材を配置することができ、突出部からの衝突荷重をバンパーカバーを介してバンパーレインに伝達することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、車両の後部開口部を開閉可能に覆う開閉体を更に備え、開閉体は、外側部分を構成するアウターパネルを有し、突出部の後方端は、アウターパネルより後方に突出する。
このように構成された本発明においては、突出部の後方端が、アウターパネルより後方に突出しているので、後方からの衝突に際しては、突出部がアウターパネルよりも先に衝突荷重を受けることができる。したがって、後方からの衝突荷重を突出部からバンパーレインに確実に伝達することができ、衝突荷重によるアウターパネル及び開閉体の変形を防止または最小限に抑制することができる。したがって、修理の際には、バンパーカバーのみを交換すればよい場合があり、修理費を削減することができる。また、後方からの衝突によってアウターパネルや開閉体が変形して、開閉体が開かなくなる等の不具合の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、突出部は、ライセンスプレートの車幅方向両側に一対設けられる。
このように構成された本発明においては、突出部がライセンスプレートの車幅方向両側に一対設けられるので、ライセンスプレートの配置を阻害することなく突出部をバンパーカバーの車幅方向略中央部に配置することができる。また、突出部がライセンスプレートの両側に配置されるので、車両の外観を損なうこともない。
【0015】
本発明において、好ましくは、突出部は、ライセンスプレートの車幅方向両側に一対設けられ、該一対の突出部は、連結部によって互いに連結され、連結部は、バンパーカバーとライセンスプレートの間に配置される。
このように構成された本発明においては、突出部がライセンスプレートの車幅方向両側に一対設けられているので、ライセンスプレートの配置を阻害することなく突出部をバンパーカバーの車幅方向略中央部に配置することができる。また突出部がライセンスプレートの両側に配置されるので、車両の外観を損なうこともない。また、一対の突出部が連結部で連結されているので、突出部のバンパーカバーへの取り付け作業を容易にすることができる。更に、連結部がバンパーカバーとライセンスプレートの間に配置されるので、連結部がライセンスプレートによって覆われ、車両の外観を損なうことなく突出部を取り付けることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、突出部は、バンパーカバーに取り付けられるための取付部を有し、取付部は、バンパーカバーとライセンスプレートの間に配置される。
このように構成された本発明においては、取付部がバンパーカバーとライセンスプレートとの間に配置されるので、取付部がライセンスプレートによって覆われ、車両の外観を損なうことなく突出部を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による車両の全体を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による車両の後部フレーム構造を示す底断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った側断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による突出部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態による車両の突出部を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態による車両の後部フレーム構造を示す底断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った側断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、第2実施形態以降では、第1実施形態と同様の構成には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による車両の後部車体構造について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による車両1の全体を概略的に示す斜視図であり、車両1を後方から見た図である。車両1の後部には、荷室2が設けられ、この荷室2には、車両1の後部からアクセス可能なように、開口部4が設けられている。開口部4には、開口部4を開閉可能に覆うように、開閉体としてのリフトゲート6が取り付けられている。リフトゲート6は、上端を中心に上下方向に回動可能である。リフトゲート6は、アウターパネル8及びインナーパネル(図示せず)を互いに対向させて構成され、これらのアウターパネル8及びインナーーパネルは、上部にリアウィンドウ10を支持している。
【0020】
リフトゲート6の下方には、バンパーカバー12が取り付けられている。バンパーカバー12は、車幅方向に沿って延びている。また、バンパーカバー12の車幅方向略中央には、平坦面13が形成されており、この平坦面13には、ライセンスプレート14が取り付けられている。また、平坦面13上端とバンパーカバー12の外面との間には、平坦面13に直角に延びる段差面15(図3)が形成されている。
【0021】
図2は、本発明の第1実施形態による車両1の後部フレーム構造を下方から示す底断面図である。また、図3は、図2のIII−III線に沿った側断面図である。車両1は、車両1の車幅方向両側に、前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム16と、リアサイドフレーム16の後端に設けられたクラッシュカン18と、車幅方向に沿って延び、両端がクラッシュカン18に溶接等により固定されることによりクラッシュカン18を介してリアサイドフレーム16に連結されたバンパーレイン20と、を備える。
【0022】
リアサイドフレーム16、クラッシュカン18、及びバンパーレイン20は、閉断面を有し、車両1が衝突等によって受ける荷重を吸収し、車両1の変形を抑制するフレーム構造体を構成している。また、リアサイドフレーム16、クラッシュカン18、及びバンパーレイン20は、図3に示すように、ライセンスプレート14が配置される高さに位置しており、バンパーカバー12は、バンパーレイン20を覆うように、バンパーレイン20の後面に沿って車幅方向に延びる。ここで、バンパーレイン20の後方面20Aは、車幅方向中央部が、両端部よりも後方に位置し、後方に凸状に湾曲した形状となっている。また、バンパーカバー12は、バンパーレイン20の後方面20Aに沿った形状となっているので、同様に後方に凸状に湾曲した形状となっている。
【0023】
図2及び3に示すように、バンパーカバー12には、本発明に係る衝突吸収装置22が設けられている。
衝撃吸収装置22は、バンパーカバー12に取り付けられた突出部24と、突出部24とバンパーレイン20との間に配置された荷重伝達部材26とを備える。
【0024】
図4は、本発明の第1実施形態による突出部24の斜視図である。突出部24は、一対設けられ、図1及び図2に示すように、バンパーカバー12の車幅方向略中央部において、ライセンスプレート14の車幅方向両側に隣接してそれぞれ配置されている。突出部24は、後方に向かって凸に形成されており、車幅方向両側に、突出部24をバンパーカバー12に取り付けるための取付部28が形成されている。
【0025】
突出部24は、平坦な上面30と、後方に向かって凸状に且つ上下方向に円弧状に湾曲する湾曲面32と、平坦な一対の略三角形状の側面34とで構成される。突出部24がバンパーカバー12に取り付けられると、突出部24とバンパーカバー12との間には、略三角柱形状の空間36(図2及び図3)が形成される。
取付部28には、少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の取付孔38がそれぞれ形成されており、これらの取付孔38にねじ40(図2)を挿入することにより、突出部24がバンパーカバー12の平坦面13に取り付けられる。
【0026】
突出部24がバンパーカバー12に取り付けられた状態では、取付部28のうち、車幅方向内側にある取付部28は、ライセンスプレート14とバンパーカバー12との間に配置される。このような配置により、車幅方向内側にある取付部28は、ライセンスプレート14によって覆われる。
また、バンパーカバー12の段差面15には、ライセンスプレート14を上方から照射するためのライト42(図2)が設けられている。取付部28の厚みやバンパーカバー12への取付手段、取り付け位置等は、突出部24の取付部28がライセンスプレート14とバンパーカバー12との間に配置されたとき、ライセンスプレート14の表面がライト42よりも車両1の前方側に位置して、ライセンスプレート14の表面がライト42によって照射されるように設定される。
【0027】
また、バンパーカバー12の平坦面13は、下端が上端よりも車両1の後方に位置する傾斜面となっている。突出部24がバンパーカバー12に取り付けられると、突出部24の上面30は、段差部15に沿って配置され、突出部24の上端はバンパーカバー12の外面とほぼ同じ位置に配置される。一方、突出部24の湾曲面32は、バンパーカバー12から後方に突出し、したがって、この湾曲面32は、図3に示すように、上下方向略中央部がバンパーカバー12よりも後方に位置し、リフトゲート6のアウターパネル8よりも後方に位置する。したがって、突出部24の湾曲面32の上下方向略中央部が、車両1において最も後方に位置することとなる。
【0028】
荷重伝達部材26は、突出部24とバンパーカバー12との間に配置される第1荷重伝達部材44と、バンパーカバー12とバンパーレイン20との間に配置される第2荷重伝達部材46とを備える。第1荷重伝達部材44及び第2荷重伝達部材46は、共に、例えば発泡体、弾性体等の衝撃吸収材料で構成されている。
【0029】
第1荷重伝達部材44は、突出部24の空間36の形状に対応した、側断面が略三角形のくさび形状に形成され、空間36内を埋めるように配置されている。したがって、第1荷重伝達部材44の後面は、突出部24の内面に接触し、前面は、バンパーカバー12の平坦面13の外面に接触している。第1荷重伝達部材44は、空間36内に嵌め込むように収容するのみでもよいが、突出部24の内面やバンパーカバー12の平坦面13に接着剤で接着してもよい。
第2荷重伝達部材46は、下方側の底辺が上方側の底辺より長い略台形、または下方側に底辺を有する略三角形の側断面形状を有し、車両の前方側の面がバンパーレイン20の後方面20Aに接着剤等にで接着されている。これにより、第2荷重伝達部材46は、バンパーレイン20に取り付けられる。第2荷重伝達部材46がバンパーレイン20に取り付けられた状態では、第2荷重伝達部材46の後方側の面は、バンパーカバー12の内面(前方側の面)に接触している。また、バンパーレイン20及び第2荷重伝達部材46の前方側の面は、リアサイドフレーム16の延びる方向に対してほぼ垂直に配置される。
【0030】
このような車両1の後部車体構造においては、後方からの衝突があった場合、最も後方に位置する突出部24の湾曲面32が、衝突荷重を受ける。突出部24が受けた衝突荷重は、突出部24及び空間36内の第1荷重伝達部材44が変形することによっていくらか吸収されながら、第1荷重伝達部材44及び突出部24の取付部28を介して、バンパーカバー12に伝達される。
【0031】
バンパーカバー12に伝達された荷重は、第2荷重伝達部材46に伝達され、第2荷重伝達部材46において更にいくらか荷重が吸収される。第1荷重伝達部材44及び第2荷重伝達部材46で吸収しきれなかった荷重は、バンパーレイン20に伝達され、このバンパーレイン20から、最終的に、クラッシュカン18及びリアサイドフレーム16に伝達され、吸収される。
このように、本実施形態での後部車体構造においては、突出部24及び第1荷重伝達部材44から、バンパーカバー12、第2荷重伝達部材46、バンパーレイン20、左右一対のクラッシュカン18及びリアサイドフレーム16まで、荷重の伝達経路が確立される。
【0032】
このように構成された本実施形態によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
バンパーカバー12に突出部24及び荷重伝達部材26を設けたので、突出部24からバンパーレイン20まで、ひいてはリアサイドフレーム16までの荷重伝達経路を確立することができる。したがって、後方からの衝突時に、突出部24で受けた衝突荷重を、バンパーレイン20を含むフレーム構造体に確実に伝達することができる。
【0033】
突出部24の湾曲面32が車両1の最も後方に、即ちリフトゲート6のアウターパネル8やバンパーカバー12よりも後方に位置するので、後方からの衝突時、突出部24によって最初に衝突荷重を受けることができる。したがって、衝突荷重をバンパーレイン20に確実に伝達することができる。また、衝突荷重を突出部24によって最初に受けてバンパーレイン20に伝達できるので、リフトゲート6やその他の車体部品への荷重伝達が少なくなり、リフトゲート6等の変形を防止または最小限に抑制することができる。したがって、車両1の修理を行う場合、衝突によって変形した突出部24及び/又はバンパーカバー12のみを交換、修理すればよいから、修理費用を削減することができる。また、リフトゲート6の変形を防止または最小限に抑制することができるから、衝突によってリフトゲート6が開かなくなる等の不具合の発生を防止することができる。
【0034】
突出部24がバンパーカバー12の車幅方向略中央部に取り付けられているので、突出部24が受けた衝突荷重を、左右一対のリアサイドフレーム18に分散して伝達することができる。したがって、各リアサイドフレーム18に伝達される荷重が小さくなり、各フレームの変形を最小限に抑制しながら衝突荷重を効率よく吸収することができる。
【0035】
バンパーレイン20の後方面20Aは、車幅方向略中央部が両端部よりも後方に位置するように湾曲している。したがって、突出部24からの衝突荷重をバンパーレイン20の車幅方向略中央部で受けることにより、荷重をより効率的に吸収しやすく、これにより、クラッシュカン18及びリアサイドフレーム16への影響を最小限にとどめることができる。また、バンパーカバー12は、バンパーレイン20の形状に沿って、車幅方攻略中央部が両端部よりも車両1の後方側に位置するように湾曲している。突出部24を、バンパーカバー12において最も後方である車幅方向略中央部に設けることにより、突出部24の後方への突出量を最小限に抑えつつ突出部24を車両1の最後端に位置させることができる。突出部24の突出量を最小限に抑えることができるので、コスト削減、重量の軽減に繋がるとともに車両1の外観を損ねることがない。
【0036】
突出部24をライセンスプレート14の車幅方向両側に一対設けたので、車両1の外観を損なうことなく、衝突荷重吸収の機能を果たすことができる。
また、車幅方向内側の取付部28が、ライセンスプレート14に覆われているので、ライセンスプレート14周りの車両1の外観を損なうことなく突出部24を配置することができる。
【0037】
荷重伝達部材26が設けられているので、衝突荷重をバンパーレイン20に伝達すると共に、衝突荷重の一部を吸収することができる。これは特に、軽衝突の場合等では、バンパーレイン20に荷重が伝達される前に、突出部24及び荷重伝達部材26で荷重の全てを吸収できる場合があり、車両1の損傷を最小限に抑制して、修理、交換費用を最小限に抑えることができるから、有利である。
【0038】
荷重伝達部材26が、第1荷重伝達部材44及び第2荷重伝達部材46を有しているので、突出部24とバンパーレイン20の間にバンパーカバー12が配置されている場合でも、第1荷重伝達部材44を突出部24とバンパーカバー12との間に、また第2荷重伝達部材46をバンパーカバー12とバンパーレイン20との間に配置することにより、突出部24が受けた荷重を確実にバンパーレイン20に伝達することができる。したがって、バンパーカバー12とバンパーレイン20との間に隙間が存在している場合でも、衝突吸収装置22を取り付けて、衝突荷重を良好に吸収することができる。また、既存の車両にも、バンパーカバー12の設計変更をすることなく、衝突吸収装置22を取り付けることができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による車両の後部車体構造について説明する。図5は、本発明の第2実施形態による車両50の衝突吸収装置52の突出部54を示す斜視図である。図6は、本発明の第2実施形態による車両50を下方から見た底断面図である。図7は、図6のVII−VII線に沿った側断面図である。図8は、図6のVIII−VIII線に沿った側断面図である。
【0040】
これらの図5乃至図8に示すように、本発明の第2実施形態による車両50の衝突吸収装置52は、バンパーカバー12に取り付けられる突出部54と、突出部54とバンパーレイン20との間に配置される荷重伝達部材56と、を備えている。
突出部54は、図5に示すように、ライセンスプレート14の車幅方向両側(左右)に配置されるように一対設けられている。各突出部54は、上面58、下面60、後方面62、及び側面64を備え、下面60は、後方面62から連続的に形成された湾曲面となっている。第1実施形態の突出部24と同様に、突出部54の内側には空間68(図7)が形成されている。
【0041】
一対の突出部54の間には、これらの突出部54を互いに連結する連結部70が形成されている。連結部70は、矩形状の板状に形成されており、突出部54をバンパーカバー12に取り付けたとき、ライセンスプレート14とバンパーカバー12との間に配置される。したがって、連結部70は、突出部54が車両50に取り付けられたとき、ほぼ全面がライセンスプレート14に覆われる。連結部70は、その四隅に、突出部54をバンパーカバー12に取り付けるための取付孔72を有する。これらの取付孔72にねじ74(図6及び図8)を通して連結部70をバンパーカバー12の平坦部13に固定することにより、突出部54をバンパーカバー12に取り付ける。したがって、連結部70は、一対の突出部54を連結するための部材であると同時に、突出部54をバンパーカバー12に取り付けるための取付部としても機能する。なお、突出部54をバンパーカバー12に取り付ける際には、ライセンスプレート14がライト42よりも車両50の前方側に位置するようにする必要があることは、第1実施形態と同様である。
【0042】
突出部54をバンパーカバー12に取り付けた状態では、図6及び図7に示すように、突出部54の上面58は、バンパーカバー12の段差部15に沿って配置され、後面62の上端は、バンパーカバー12と前後方向に関してほぼ同じ位置に位置している。平坦面13は、下端が上端よりも後方に傾斜した傾斜面となっているので、ここに取り付けられた突出部54もまた斜めに取り付けられ、突出部54の後方面62は、平坦面13の傾斜面にほぼ平行に斜めに傾斜し、バンパーカバー12の後端よりも後方に突出する。したがって、突出部54の後方面62は、リフトゲート6のアウターパネル8よりも後方に位置し、車両50の最後端に位置することとなる。
【0043】
荷重伝達部材56は、第1実施形態の荷重伝達部材26と同様に第1荷重伝達部材76と第2荷重伝達部材78とを備える。第1荷重伝達部材76は、突出部54の空間68内に収容され、第2荷重伝達部材78は、バンパーレイン20の後方面20Aに取り付けられる。
【0044】
以上のような構成の第2実施形態によれば、第1実施形態の衝突吸収装置22と同様に、突出部54が後方からの衝突荷重を受けて、これをバンパーレイン20に伝達する。
このような第2実施形態によれば、第1実施形態の衝突吸収装置22と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
【0045】
一対の突出部54が連結部70で連結されているので、部品点数を低減することができ、修理、交換等のメンテナンスを容易にすることができる。また、連結部70をバンパーカバー12に取り付けることによって、一対の突出部54を一度に取り付けることができるので、突出部54の取付作業を容易に行うことができる。
【0046】
連結部70がライセンスプレート14とバンパーカバー12との間に配置されるので、連結部70、及び連結部70に取り付けられるねじ74がライセンスプレート14によって覆われるから、車両50の外観を損なうことがない。
【0047】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、例えば、突出部の数及び形状等は、車両の形状や仕様等を勘案して任意に選択することができる。したがって、例えば、突出部を車両の車幅方向略中央部に1つ設けてもよく、また、車両の車幅方向略中央部に3つ以上設けてもよい。また、突出部の配置も、後方からの衝突荷重を効率よくバンパーレインに伝達できるように、車両の車幅方向略中央部に配置すればよく、したがって、突出部を必ずしもライセンスプレートに隣接して配置する必要はない。
【0048】
突出部の取付構造は、ボルト止めによるものに限らず、例えば接着、溶接等の適宜の固定手段によってバンパーカバーに固定してよい。また、突出部の取付部に形成された取付孔を、ライセンスプレートをバンパーカバーに取り付けるのに利用してもよい。この場合には、ライセンスプレートに、突出部の取付孔の位置に対応する孔を形成しておき、ボルトを突出部の取付孔とライセンスプレートの孔の両方に貫通させて、ライセンスプレートと突出部を共通のボルトでバンパーカバーに取り付ければよい。
【0049】
取付部は、第1実施形態では、車幅方向内側の取付部の全部が、また第2実施形態ではその全部が、ライセンスプレートとバンパーカバーの間に配置されていたが、取付部の配置は、少なくとも1部がライセンスプレートとバンパーカバーの間に配置されていればよい。また、取付部は、ライセンスプレートとバンパーカバーとの間に配置されるものに限らず、ライセンスプレートに覆われず、外部から視認可能な位置に配置されていてもよい。
【0050】
荷重伝達部材の数、形状等の構成は、前述の実施形態のものに限らず、任意の形状を採用することができる。例えば、第2実施形態における第2荷重伝達部材は、突出部の取付位置に対応してバンパーカバーの車幅方向略中央部に一対設けられていたが、これに限らず、一対の第2荷重伝達部材を連続させた、1つの荷重伝達部材として構成してもよい。
また、第2荷重伝達部材は、バンパーレインに固定されるものでなくてもよく、例えばバンパーカバーの裏側に接着、ねじ止め等によって固定されていてもよい。
【0051】
荷重伝達部材は、第1荷重伝達部材及び第2荷重伝達部材に分割されるものに限らず、例えば突出部とバンパーカバーとの間のみ、またはバンパーカバーとバンパーレインとの間のみに1つの荷重伝達部材が設けられていてもよい。または、バンパーカバーに孔を設け、この孔を貫通して、突出部とバンパーレインとの間の隙間を埋めるように荷重伝達部材を設けてもよい。要するに、荷重伝達部材は、突出部とバンパーレインとの間に設けられ、突出部が受ける荷重をバンパーレインに伝達することができる構成であればよい。
【符号の説明】
【0052】
1,50 車両
6 リフトゲート
8 アウターパネル
12 バンパーカバー
14 ライセンスプレート
16 リアサイドフレーム
20 バンパーレイン
22,52 衝突吸収装置
24,54 突出部
28 取付部
26,56 荷重伝達部材
44,76 第1荷重伝達部材
46,78 第2荷重伝達部材
70 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に前後方向に延在する一対のリアサイドフレームと、車幅方向に延びると共にその両端部が上記リアサイドフレームにそれぞれ連結され、且つ車体後方を向いた後方面の車幅方向中央部が両端部に比べてより後方に位置するように湾曲したバンパーレインと、上記バンパーレインに沿って上記バンパーレインを後部から覆うバンパーカバーと、を有する車両の後部車体構造において、
上記バンパーカバーの車幅方向略中央部に取り付けられ、上記バンパーカバーの後方面から後方に突出する突出部と、
上記突出部と上記バンパーレインとの間に設けられ、上記突出部が受ける後方からの衝突荷重を上記バンパーレインに伝達する荷重伝達部材と、を備えることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記荷重伝達部材は、上記突出部と上記バンパーカバーとの間に配置される第1荷重伝達部材と、上記バンパーカバーと上記バンパーレインとの間に配置される第2荷重伝達部材と、を備える、請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
車両の後部開口部を開閉可能に覆う開閉体を更に備え、上記開閉体は、外側部分を構成するアウターパネルを有し、上記突出部の後方端は、上記アウターパネルより後方に突出する、請求項1又は2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
上記突出部は、ライセンスプレートの車幅方向両側に一対設けられる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記突出部は、ライセンスプレートの車幅方向両側に一対設けられ、該一対の突出部は、連結部によって互いに連結され、上記連結部は、上記バンパーカバーと上記ライセンスプレートの間に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
上記突出部は、上記バンパーカバーに取り付けられるための取付部を有し、上記取付部は、上記バンパーカバーとライセンスプレートの間に配置される、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264957(P2010−264957A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120082(P2009−120082)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)