説明

車両の排気熱利用暖房装置

【課題】車両の排気熱利用暖房装置において、浄化されていない排気ガスが新気に混入して車室内に流れ込んでしまうことを防止する。
【解決手段】排気熱利用暖房装置は、排気熱を利用して車室内の暖房を行う。第1の新気通路は、車両の外部から導入された新気が通過し、車室内に新気を導入する。熱交換部は、第1の新気通路上に設けられており、内部を通過する新気と排気ガスとの間で熱交換を行う。詳しくは、熱交換部は、触媒の下流側の排気通路上に設けられている。即ち、排気熱利用暖房装置は、触媒によって排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが浄化された後の排気ガスにおける排気熱を利用して暖房を行う。これにより、触媒によって浄化されていない排気ガスが車室内に流れ込んでしまうことを適切に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスの排気熱を利用して、車室内の暖房を行う車両の排気熱利用暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気熱を利用して、車室内の温度などを制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、排気熱との間で熱交換された新気を車室内に導入して暖房を行う技術が記載されている。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2及び3が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開平7−25229号公報
【特許文献2】特開平4−230413号公報
【特許文献3】特開2002−59736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1乃至3に記載された技術においては、排気ガスと熱交換を行う熱交換器が触媒の上流側に設けられていたため、熱交換器の故障などによって排気ガスの漏れが発生した場合に、浄化されていない排気ガスが新気に混入して車室内に流れ込んでしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、浄化されていない排気ガスが混入した新気が車室内に流れ込んでしまうことを防止可能な車両の排気熱利用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、内燃機関から排出される排気ガスの排気熱を利用して、車室内の暖房を行う車両の排気熱利用暖房装置は、前記車両の外部から導入された新気が通過し、前記車室内に前記新気を導入する第1の新気通路と、前記第1の新気通路上に設けられ、前記排気ガスを浄化する触媒の下流側を通過する排気ガスと前記新気との間で熱交換を行う熱交換部と、を備える。
【0007】
上記の車両の排気熱利用暖房装置は、内燃機関から排出される排気ガスの排気熱を利用して、車室内の暖房を行う。第1の新気通路は、車両の外部から導入された新気が通過し、車室内に前記新気を導入する。熱交換部は、第1の新気通路上に設けられており、内部を通過する新気と排気ガスとの間で熱交換を行う。即ち、熱交換部は、排気熱を新気に伝達する。詳しくは、熱交換部は、排気ガスを浄化する触媒の下流側の排気通路上に設けられる。このように、排気熱利用暖房装置は、触媒の下流側を通過する排気ガスと新気との熱交換を行い、熱交換された新気によって車室内の暖房を行う。即ち、排気熱利用暖房装置は、触媒によって排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが浄化された後の排気ガスにおける排気熱を利用して暖房を行う。これにより、熱交換部が設けられた排気通路において排気ガスの漏出などが生じると共に、熱交換部において新気に排気ガスが混入してしまっても、排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが車室内に流れ込んでしまうことを防止することができる。
【0008】
上記の車両の排気熱利用暖房装置の一態様では、前記熱交換部の下流側の前記第1の新気通路上に接続され、前記車両の外部から導入された新気が通過する第2の新気通路と、前記第1の新気通路及び前記第2の新気通路のいずれかから、前記車室内に新気が導入されるように切り替えを行う新気通路切り替え手段と、を備える。
【0009】
この態様では、新気通路切り替え手段は、熱交換部を通過した新気、及び熱交換部を通過していない新気のいずれかを車室内に導入する。例えば、新気通路切り替え手段は、排気ガスが触媒によって十分に浄化されていない状況において、第2の新気通路から車室内に新気を導入することができる。これにより、排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが車室内に流れ込んでしまうことを確実に防止することができる。
【0010】
上記の車両の排気熱利用暖房装置の他の一態様では、前記熱交換部の下流側の前記第1の新気通路上に設けられ、前記新気中の排気ガスの濃度を検出する排気ガス濃度検出手段を更に備え、前記新気通路切り替え手段は、前記排気ガスの濃度に基づいて前記切り替えを実行する。
【0011】
この態様では、新気通路切り替え手段は、新気中の排気ガスの濃度に基づいて車室内に導入する新気の切り替えを実行する。具体的には、排気ガスの濃度が所定値以上の場合には、熱交換部などから排気ガスが混入している可能性が高いため、第2の新気通路から新気を導入する。これによっても、排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが車室内に流れ込んでしまうことを確実に防止することができる。
【0012】
上記の車両の排気熱利用暖房装置の他の一態様では、前記熱交換部の上流側の前記第1の新気通路上に、前記新気を圧送する新気圧送手段を備える。この場合、新気を圧送させることによって、新気の圧力を排気ガスの圧力よりも高い状態に維持する。これにより、車室内に導入する新気への排気ガスの混入を適切に防止することができる。
【0013】
上記の車両の排気熱利用暖房装置の他の一態様では、記熱交換部が設けられた箇所の下流側の排気通路を通過する排気ガスの空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記空燃比に基づいて、前記熱交換部において前記排気ガスの漏れが生じているか否かを判定する漏れ判定手段と、を備える。
【0014】
この態様では、漏れ判定手段は、熱交換部が設置された箇所の下流側の排気通路中を通過する排気ガスの空燃比(A/F)に基づいて、排気ガス中に新気が漏れ出しているか否かを判定することができる。例えば、圧送を制御した際に排気ガスの空燃比が変化した場合には、この空燃比の変化分は排気ガス中に漏れ出した新気に対応するものであると言える。よって、排気ガスの空燃比が変化した場合には、漏れ判定手段は、排気ガス中に新気が漏れ出していると判定することができる。
【0015】
上記の車両の排気熱利用暖房装置において好適には、前記熱交換部の下流側の前記第1の新気通路上に接続され、前記車両の外部から導入された新気が通過する第3の新気通路と、前記第3の新気通路が接続された箇所の下流側の前記第1の新気通路上に設けられたブロアと、前記第1の新気通路を通過する新気の温度に基づいて、前記新気圧送手段による圧送を制御する圧送制御手段と、を備える。
【0016】
この場合、排気熱利用暖房装置は、熱交換部の下流側の第1の新気通路に対して更に新気を供給すると共に、熱交換部を通過させる新気の量を制御することによって、車室内に導入する新気の温度の調整を行う。具体的には、圧送制御手段は、新気の温度が高温である場合には、新気の圧送が抑制されるように制御を行う。即ち、熱交換部を通過した新気の供給量が減少されるように制御を行う。上記の排気熱利用暖房装置によれば、新気への排気ガスの混入を防止しつつ、車室内に導入する新気の温度を適切に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る排気熱利用暖房装置51が適用されたシステムの概略構成を示す図である。なお、図1においては、実線矢印が排気ガスの流れを示し、破線矢印が新気の流れを示している。
【0020】
エンジン(内燃機関)1は、供給される燃料と空気との混合気を燃焼させることによって動力を発生する装置である。例えば、エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどによって構成される。エンジン1における燃焼によって生じた排気ガスは、排気通路2に排出される。排気通路2中には、排気ガスを浄化可能な触媒3が設けられている。触媒3は、排気ガス中のNOxや、SOxや、HCや、COなどを浄化する。例えば、触媒3は、三元触媒やNOx吸蔵還元触媒などによって構成される。
【0021】
排気熱利用暖房装置51は、熱交換器4、新気通路5、及びブロア6を備えている。排気熱利用暖房装置51は、車両に設置され、エンジン1から排出される排気ガスの排気熱を利用して車室内の暖房を行う装置である。
【0022】
熱交換器4は、触媒3の下流側の排気通路2上に設置されている。具体的には、熱交換器4は、新気通路5中に設けられ、内部に新気が通過する。熱交換器4は、内部を通過する新気と、排気通路2内を通過する排気ガスとの間の熱交換を行う。言い換えると、熱交換器4は、新気に対して排気熱を伝達する。このように、熱交換器4は、本発明における熱交換部として機能する。
【0023】
新気通路5は、車両の外部から導入された新気が通過し、車室内に新気を導入するための通路である。また、新気通路5中にはブロア6が設けられている。ブロア6は、熱交換器4で熱交換された後の新気を車室内へ送風する。このように、新気通路5は、本発明における第1の新気通路として機能する。なお、本明細書においては、新気通路5の下流側とは車室側を意味するものとする。
【0024】
ここで、図2を用いて、熱交換器4の一例について説明する。図2は、熱交換器4及び排気通路2の斜視図を示す。図示のように、熱交換器4は、新気が流通する通路4aによって構成される。この通路4aには、新気通路5(破線で示す通路)が接続されており、新気が供給される。また、通路4aは、排気通路2に対してらせん状に巻きついて囲む形状を有している。これにより、通路4aが排気通路2に対して接する面積が大きくなるため、効果的に新気に対して排気熱を伝達することができる。
【0025】
このように、第1実施形態係る排気熱利用暖房装置51は、触媒3の下流側を通過する排気ガスと新気との熱交換を行い、熱交換された新気によって車室内の暖房を行う。即ち、排気熱利用暖房装置51は、触媒3によって排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが浄化された後の排気ガスにおける排気熱を利用して暖房を行う。これにより、熱交換器4が設けられた排気通路2において排気ガスの漏出などが生じると共に、熱交換器4において新気に排気ガスが混入してしまっても、排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが車室内に流れ込んでしまうことを防止することができる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、排気ガスが触媒3によって十分に浄化されているか否かに基づいて、言い換えるとエミッションに基づいて、車室内に導入する新気の切り替えを実行する点で、前述した第1実施形態とは異なる。具体的には、第2実施形態では、排気ガスが十分に浄化されていない場合には、熱交換器4を通過していない新気が導入されるように切り替えを実行する。即ち、エミッションが悪化している場合には、排気熱を利用した車室内の暖房を実行しない。
【0027】
図3は、第2実施形態に係る排気熱利用暖房装置52が適用されたシステムの概略構成を示す図である。第2実施形態に係る排気熱利用暖房装置52は、切り替え弁7と、新気通路8と、コントローラ10とを有する点で、前述した第1実施形態に係る排気熱利用暖房装置51とは構成が異なる。よって、排気熱利用暖房装置51と同一の構成要素に対しては同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図2においては、実線矢印が排気ガスの流れを示し、破線矢印が新気の流れを示し、一点鎖線の矢印が信号の入出力を示している。
【0028】
熱交換器4とブロア6との間の新気通路5中には、新気通路8が切り替え弁7を介して接続されている。新気通路8は、車両の外部から導入された新気が通過し、車室内に新気を導入するための通路である。排気熱利用暖房装置52においては、切り替え弁7を切り替えることによって、熱交換器4を通過した新気、及び新気通路8を通過した新気のうちのいずれかを車室内へ導入することができる。なお、切り替え弁7は、コントローラ10から供給される制御信号S11によって制御される。このように、新気通路8は本発明における第2の新気通路として機能する。
【0029】
コントローラ10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。コントローラ10は、触媒3によって排気ガスが十分に浄化されているか否かを判定し、この判定結果に基づいて、車室内に導入する新気の切り替えを行う。より詳しくは、コントローラ10は、排気ガスが十分に浄化されている場合には、熱交換器4を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御し、排気ガスが十分に浄化されていない場合には、新気通路8を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御する。このように、コントローラ10は、本発明における新気通路切り替え手段として機能する。
【0030】
一例としては、コントローラ10は、エンジン1に設けられたセンサから取得される検出信号S10に基づいて触媒3が暖機しているか否かを判定し、車室内に導入する新気の切り替えを行う。詳しくは、コントローラ10は、取得される検出信号S10に基づいてエンジン状態を検知して、触媒3が暖機しているか否かを判定する。例えば、コントローラ10は、エンジン1の吸気通路上に設けられたエアフロメータ(不図示)から吸入空気量を取得し、取得した吸入空気量から計算される積算吸入空気量に基づいてエンジン状態を検知する。この場合、コントローラ10は、積算吸入空気量が所定値未満である場合、触媒3が暖機していない(暖機前)と判定し、積算吸入空気量が所定値以上である場合、触媒3が暖機している(暖機後)と判定する。
【0031】
そして、コントローラ10は、触媒3が暖機していない場合には、新気通路8を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御し、触媒3が暖機している場合には、熱交換器4を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御する。即ち、触媒3が暖機していない場合には、排気熱を利用した暖房を実行しない。こうする理由は、以下の通りである。触媒3が暖機していない状態では、排気ガスは触媒3によって十分に浄化されない。即ち、エミッションが悪化している傾向にある。そのため、触媒3が暖機していない状態において、漏出した排気ガスが新気に混入してしまった場合には、NOxや、HCや、COなどが車室内に流れ込んでしまうおそれがある。したがって、第2実施形態においては、コントローラ10は、触媒3が暖機していない場合には、新気通路8を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御し、触媒3が暖機している場合には、熱交換器4を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御する。即ち、触媒3が暖機していない状態では、排気熱を利用した暖房の実行を禁止し、触媒3が暖機している状態においてのみ、排気熱を利用した暖房を実行する。
【0032】
このように、第2実施形態に係る排気熱利用暖房装置52では、触媒3の暖機状態に基づいて車室内に導入する新気の切り替えを実行する。これにより、排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが車室内に流れ込んでしまうことを確実に防止することができる。
【0033】
なお、上記では、排気ガスが十分に浄化されているか否かの判定を、触媒3が暖機されているか否かを判定することによって行う実施形態を示したが、これに限定はされない。他の例では、触媒3が暖機されているか否かを判定する代わりに、OT(Over Temperature)増量中であるか否か(即ち、触媒過熱を抑制するために、燃料噴射量を増量することによって空燃比をリッチにするための制御を行っているか否か)を判定することによって、排気ガスが十分に浄化されているか否かの判定を行うことができる。更に他の例では、エミッションデバイスが故障しているか否か(例えば失火しているか否かなど)を判定することも可能である。
【0034】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、新気中の排気ガス濃度に基づいて車室内に導入する新気の切り替えを実行する点で、前述した第2実施形態とは異なる。具体的には、第3実施形態では、新気中の排気ガス濃度が所定値以上の場合には、熱交換器4を通過していない新気が導入されるように切り替えを実行する。即ち、この場合には、排気熱を利用した車室内の暖房を実行しない。
【0035】
図4は、第3実施形態に係る排気熱利用暖房装置53が適用されたシステムの概略構成を示す図である。第3実施形態に係る排気熱利用暖房装置53は、排気ガス濃度センサ11を有し、コントローラ10の代わりにコントローラ12を有する点で、前述した第2実施形態に係る排気熱利用暖房装置52とは構成が異なる。よって、排気熱利用暖房装置52と同一の構成要素に対しては同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図4においては、実線矢印が排気ガスの流れを示し、破線矢印が新気の流れを示し、一点鎖線の矢印が信号の入出力を示している。
【0036】
排気ガス濃度センサ11は、切り替え弁7の下流側を流れる新気中の排気ガス濃度を検出するセンサである。例えば、排気ガス濃度センサ11は、COを検出するCOセンサなどによって構成される。排気ガス濃度センサ11は、検出した排気ガス濃度に対応する検出信号S12をコントローラ12に供給する。なお、排気ガス濃度センサ11は、本発明における排気ガス濃度検出手段として機能する。
【0037】
コントローラ12は、図示しないCPU、ROM及びRAMを備える。コントローラ12は、排気ガス濃度センサ11から検出信号S12を取得する。そして、コントローラ12は、切り替え弁7に対して制御信号S13を供給することによって、切り替え弁7の制御を行う。
【0038】
第3実施形態においては、コントローラ12は、排気ガス濃度センサ11が検出した排気ガス濃度に基づいて、車室内に導入する新気の切り替えを行う。具体的には、コントローラ12は、新気中の排気ガス濃度が所定値以上である場合には、新気通路8を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御し、新気中の排気ガス濃度が所定値未満である場合には、熱交換器4を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御する。即ち、新気中の排気ガス濃度が所定値以上である場合には、排気熱を利用した暖房を実行しない。
【0039】
このような制御を実行する理由は、以下の通りである。新気中の排気ガス濃度が所定値以上である場合には、新気に排気ガスが混入していることを示している。つまり、排気通路2において排気ガスの漏出などが生じ、熱交換器4において排気ガスが新気に混入していることを示している。そのため、新気中の排気ガス濃度が所定値以上である状態においては、熱交換器4を通過した新気を導入することは好ましくないと言える。したがって、第3実施形態においては、コントローラ12は、新気中の排気ガス濃度が所定値以上である場合には、新気通路8を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御し、新気中の排気ガス濃度が所定値未満である場合には、熱交換器4を通過した新気が車室内に導入されるように切り替え弁7を制御する。即ち、新気中の排気ガス濃度が所定値以上である場合には、排気熱を利用した暖房の実行を禁止し、新気中の排気ガス濃度が所定値未満である場合にのみ、排気熱を利用した暖房を実行する。
【0040】
このように、第3実施形態に係る排気熱利用暖房装置53では、新気中の排気ガス濃度に基づいて車室内に導入する新気の切り替えを実行する。これにより、排気ガス中のNOxや、HCや、COなどが車室内に流れ込んでしまうことを確実に防止することができる。
【0041】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、熱交換器4の上流側の新気通路5に設けられたエアポンプによって新気を圧送する点で、前述した第1乃至第3実施形態とは異なる。具体的には、第4実施形態では、エアポンプによって、新気の圧力を排気ガスの圧力よりも高い状態に維持することにより、新気への排気ガスの混入を防止する。
【0042】
図5は、第4実施形態に係る排気熱利用暖房装置54が適用されたシステムの概略構成を示す図である。ここでは、排気熱利用暖房装置54と前述した第1実施形態に係る排気熱利用暖房装置51との違いについて説明する。排気熱利用暖房装置54は、ブロア6を有しないで、エアポンプ14を有する点で、第1実施形態に係る排気熱利用暖房装置51とは構成が異なる。よって、排気熱利用暖房装置51と同一の構成要素に対しては同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図5においては、実線矢印が排気ガスの流れを示し、破線矢印が新気の流れを示している。
【0043】
エアポンプ14は、熱交換器4の上流側の新気通路5に設けられており、供給される新気を圧送する。即ち、エアポンプ14は、本発明における新気圧送手段として機能する。詳しくは、エアポンプ14は、新気の圧力が、少なくとも熱交換器4が設けられた排気通路2中の排気ガスの圧力よりも高くなるように、新気の圧送を行う。これにより、排気通路2において排気ガスの漏出などが生じても、新気の圧力が排気ガスの圧力よりも高いため、排気ガスが新気通路5中に漏れ出す可能性はかなり低いと言える。
【0044】
以上より、第4実施形態に係る排気熱利用暖房装置54によれば、車室内に導入する新気への排気ガスの混入を適切に防止することができる。
【0045】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態では、熱交換器4が設置された箇所の下流側の排気通路2中を通過する排気ガスの空燃比(A/F)に基づいて、排気ガス中に新気が漏れ出しているか否かを判定する点で、前述した第4実施形態とは異なる。即ち、第5実施形態では、熱交換器4の故障などによって、排気ガス中に新気が漏出しているか否かを判定する。
【0046】
図6は、第5実施形態に係る排気熱利用暖房装置55が適用されたシステムの概略構成を示す図である。ここでは、排気熱利用暖房装置55と前述した第4実施形態に係る排気熱利用暖房装置54との違いについて説明する。排気熱利用暖房装置55は、空燃比センサ15、及びコントローラ16を有する点で、第4実施形態に係る排気熱利用暖房装置54とは構成が異なる。よって、排気熱利用暖房装置54と同一の構成要素に対しては同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図6においては、実線矢印が排気ガスの流れを示し、破線矢印が新気の流れを示し、一点鎖線の矢印が信号の入出力を示している。
【0047】
空燃比センサ15は、熱交換器4が設置された箇所の下流側の排気通路2中に設けられている。空燃比センサ15は、熱交換器4が設置された箇所の下流側の排気通路2を通過する排気ガスの空燃比(A/F)を検出する。空燃比センサ15は、検出した空燃比に対応する検出信号S15をコントローラ16に供給する。このように、空燃比センサ15は、本発明における空燃比検出手段として機能する。
【0048】
コントローラ16は、図示しないCPU、ROM及びRAMを備える。第5実施形態では、コントローラ16は、エアポンプ14による圧送を制御したときの排気ガスにおける空燃比の変化に基づいて、排気ガス中に新気が漏れ出しているか否かの判定を実行する。この場合、コントローラ16は、エアポンプ14に対して制御信号S16を供給することによってエアポンプ14を制御し、この際に空燃比センサ15から取得された検出信号S15に基づいて上記の判定を実行する。例えば、コントローラ16は、エアポンプ14に対して、スイッチのオン/オフを切り替える制御を実行する。
【0049】
このようにエアポンプ14による圧送を制御した際に、排気ガスの空燃比が変化した場合には、この空燃比の変化分は、排気ガス中に漏れ出した新気に対応するものであると言える。即ち、排気ガスの空燃比が変化した場合には、排気ガス中に新気が漏れ出していることを示している。したがって、コントローラ16は、エアポンプ14を制御した際に排気ガスの空燃比が変化した場合には新気が漏れ出していると判定し、排気ガスの空燃比が変化していない場合には新気が漏れ出していないと判定する。
【0050】
なお、コントローラ16は、排気ガス中に新気が漏出していると判定した場合には、圧送が継続されるようにエアポンプ14に対して制御を実行することができる。こうするのは、エアポンプ14による圧送を停止した場合には、新気の圧力が排気ガスの圧力よりも低下して、車室内に導入する新気に排気ガスが混入してしまう可能性があるからである。
【0051】
このように、第5実施形態に係る排気熱利用暖房装置55によれば、排気ガスの空燃比に基づいて、排気ガス中に新気が漏れ出しているか否かを適切に判定することができる。これにより、熱交換器4の故障などを適切に判定し、車室内に導入する新気への排気ガスの混入を防止することが可能となる。
【0052】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態では、車室内に導入する新気の温度の調整を行う点で、前述した第4及び第5実施形態とは異なる。具体的には、第6実施形態では、熱交換器4の下流側の新気通路5に対して更に新気を供給すると共に、熱交換器4を通過させる新気の量を制御することによって、車室内に導入する新気の温度の調整を行う。
【0053】
図7は、第6実施形態に係る排気熱利用暖房装置56が適用されたシステムの概略構成を示す図である。ここでは、排気熱利用暖房装置56と前述した第4実施形態に係る排気熱利用暖房装置54との違いについて説明する。排気熱利用暖房装置56は、新気通路18と、ブロア19と、温度センサ20と、コントローラ21と、を有する点で、第4実施形態に係る排気熱利用暖房装置54とは構成が異なる。よって、排気熱利用暖房装置54と同一の構成要素に対しては同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図7においては、実線矢印が排気ガスの流れを示し、破線矢印が新気の流れを示し、一点鎖線の矢印が信号の入出力を示している。
【0054】
新気通路18は、熱交換器4の下流側の新気通路5に接続されている。新気通路18は、車両の外部から導入された新気が通過し、車室内に新気を導入するための通路である。新気通路18は、本発明における第3の新気通路として機能する。
【0055】
ブロア19は、新気通路18が接続された箇所の下流側の新気通路5に設けられている。ブロア19は、供給された新気を車室内に送風する。温度センサ20は、ブロア19が設けられた位置の下流側の新気通路5に設けられている。温度センサ20は、新気の温度を検出し、検出した温度に対応する検出信号S20をコントローラ21に対して供給する。
【0056】
コントローラ21は、図示しないCPU、ROM及びRAMを備える。第6実施形態では、コントローラ21は、新気の温度に基づいて、車室内に導入する新気の温度の調整を行う。この場合、コントローラ21は、温度センサ20から取得された検出信号S20に基づいて、エアポンプ14に対して制御信号S21を供給することによって圧送を制御する。即ち、コントローラ21は、本発明における圧送制御手段として機能する。
【0057】
具体的には、コントローラ21は、温度センサ20が検出した新気の温度が高温(火傷するような温度)である場合には、新気の温度が低下するように車室内に導入する新気の調整を行う。詳しくは、コントローラ21は、熱交換器4を通過した新気の車室内への導入量が少なくなり、新気通路18を通過した新気の車室内への導入量が多くなるように、エアポンプ14に対して制御を行う。この場合、コントローラ21は、エアポンプ14による圧送が抑制されるように制御を行う。言い換えると、コントローラ21は、エアポンプ14を通過する流量を少なくする制御を行う。これにより、ブロア19の作動によって、新気通路18から車室内に導入される新気の量が増加する。
【0058】
なお、コントローラ21は、熱交換器4中の新気の圧力が、熱交換器4が設けられた位置を通過する排気ガスの圧力よりも低くならないように、エアポンプ14による圧送を制御することができる。こうするのは、熱交換器4の故障などが生じた場合に、新気の圧力が排気ガスの圧力よりも低下することによって、新気に排気ガスが混入してしまうことを防止するためである。
【0059】
このように、第6実施形態に係る排気熱利用暖房装置56によれば、新気への排気ガスの混入を防止しつつ、車室内に導入する新気の温度を適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係る排気熱利用暖房装置が適用されたシステムの概略構成を示す図である。
【図2】熱交換器の一例を示す図である。
【図3】第2実施形態に係る排気熱利用暖房装置が適用されたシステムの概略構成を示す図である。
【図4】第3実施形態に係る排気熱利用暖房装置が適用されたシステムの概略構成を示す図である。
【図5】第4実施形態に係る排気熱利用暖房装置が適用されたシステムの概略構成を示す図である。
【図6】第5実施形態に係る排気熱利用暖房装置が適用されたシステムの概略構成を示す図である。
【図7】第6実施形態に係る排気熱利用暖房装置が適用されたシステムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
2 排気通路
3 触媒
4 熱交換器
5、8、18 新気通路
6、19 ブロア
7 切り替え弁
10、12、16、21 コントローラ
11 排気ガス濃度センサ
14 エアポンプ
15 空燃比センサ
20 温度センサ
51、52、53、54、55、56 排気熱利用暖房装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスの排気熱を利用して、車室内の暖房を行う車両の排気熱利用暖房装置であって、
前記車両の外部から導入された新気が通過し、前記車室内に前記新気を導入する第1の新気通路と、
前記第1の新気通路上に設けられ、前記排気ガスを浄化する触媒の下流側を通過する排気ガスと前記新気との間で熱交換を行う熱交換部と、を備えることを特徴とする車両の排気熱利用暖房装置。
【請求項2】
前記熱交換部の下流側の前記第1の新気通路上に接続され、前記車両の外部から導入された新気が通過する第2の新気通路と、
前記第1の新気通路及び前記第2の新気通路のいずれかから、前記車室内に新気が導入されるように切り替えを行う新気通路切り替え手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両の排気熱利用暖房装置。
【請求項3】
前記熱交換部の下流側の前記第1の新気通路上に設けられ、前記新気中の排気ガスの濃度を検出する排気ガス濃度検出手段を更に備え、
前記新気通路切り替え手段は、前記排気ガスの濃度に基づいて前記切り替えを実行することを特徴とする請求項2に記載の車両の排気熱利用暖房装置。
【請求項4】
前記熱交換部の上流側の前記第1の新気通路上に、前記新気を圧送する新気圧送手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両の排気熱利用暖房装置。
【請求項5】
前記熱交換部が設けられた箇所の下流側の排気通路を通過する排気ガスの空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記空燃比に基づいて、前記熱交換部において前記排気ガスの漏れが生じているか否かを判定する漏れ判定手段と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両の排気熱利用暖房装置。
【請求項6】
前記熱交換部の下流側の前記第1の新気通路上に接続され、前記車両の外部から導入された新気が通過する第3の新気通路と、
前記第3の新気通路が接続された箇所の下流側の前記第1の新気通路上に設けられたブロアと、
前記第1の新気通路を通過する新気の温度に基づいて、前記新気圧送手段による圧送を制御する圧送制御手段と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両の排気熱利用暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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