説明

車両の方向転換装置

【課題】設置や動作に要するスペースが小さくて済み、又、簡単な機構によって動作する車両の方向転換装置を提供することを課題とする。
【解決手段】車両を搭載し床面に対して移動可能に構成した矩形のパレットの、短辺の一端部にガイド部材を備える。このガイド部材が係合するガイド溝をパレットの短辺と平行になるように形成し、パレットを駆動装置により旋回駆動する。パレットはガイド部材がガイド溝に沿って移動するとともに、ガイド部材を中心として旋回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を搭載して方向転換を行う装置に関するものである。例えば、機械式立体駐車場の入口付近に設けて車両の方向転換を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式立体駐車場は、平面の駐車場を確保するのが困難な土地環境において、空間を有効利用して立体的に車両を格納するようにした駐車設備であって、主に都市部などの建造物の密集地において広く用いられている。この機械式立体駐車装置の一般的な構成は、車両を格納する駐車室を地上または地下に立体的に配置するとともに、当該設備の一部に外部から車両が進入又は退出して利用者が乗降を行う入出庫室を備え、この入出庫室と各駐車室との間を移送装置を用いて車両の搬送を行ない、車両を駐車室に搬入又は搬出する構成が用いられる。
【0003】
上記したように機械式立体駐車装置は、敷地スペースが小さい場所に建設されることが多いため、入出庫室の前面に大きな敷地を確保することが困難なことが多く、入出庫室への車両の進入が容易でない立地条件となることも少なくない。このような場合に従来から、入出庫室前方の床面に旋回装置を備え、この旋回装置に車両を載せて入出庫室に車両を正対する向きに旋回させ、車両が容易に入出庫室へ進入できるようにしている。
【0004】
通常一般的に用いられる旋回装置は、床面と同一平面内で回転可能な回転円盤を用い、この回転円盤の中心付近に車両を停止させて旋回を行うものであって、回転円盤の旋回中心が入出庫室の中心線延長上になるように設置される。このようにすることによって、旋回後の車両は直進で入出庫室に進入することができる。しかしながら、このような旋回装置は、車両が旋回するのに十分なスペースを要し、立地条件によっては旋回装置の旋回中心が入出庫室の中心線延長上となるように設置できない場合がある。そこで、この問題点を解決するために、回転円盤上で車両が左右方向にスライドできるようにした旋回装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような旋回装置は、旋回装置の旋回中心が入出庫室の中心線から偏芯して設置されている場合において、車両が載った回転円盤を旋回させて車両の方向転換を行い、次いでこの旋回装置に備えた横行装置等により車両を横方向に移動させて、車両の中心を入出庫室の中心線延長上に一致させるようにしている。
【特許文献1】特開昭63−44083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような旋回装置は、車両が旋回する動作のみならず横方向にスライドする動作をも行うため、機構が複雑であるとともに装置が大型化し、このために製作や施工に要する費用及び保守に要する費用が高額になる。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、設置や動作に要するスペースが小さくて済み、又、簡単な機構によって動作する車両の方向転換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成は、車両を搭載し床面に対して移動可能な矩形のパレットと、該パレットの短辺の一端部に備えたガイド部材と、該ガイド部材が係合するガイド溝と、前記パレットを旋回駆動する駆動装置とを備え、前記ガイド溝が前記パレットの短辺と平行に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、パレットの短辺の端部にガイド部材を備え、このガイド部材に係合するガイド溝をパレットの短辺と平行に形成している。この構成により、パレットが駆動装置により駆動されることによりパレットは、ガイド部材がガイド溝に沿って移動するとともにガイド部材を中心として旋回を行うので、旋回中にパレットがガイド部材位置から突出することがない。したがって、障害物等があってもこれに近接して設置が可能であり、旋回に要するスペースも少ない。また、車両を旋回及び横行する機構を別々に備える必要がないので簡単な機構で構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。図2、図3及び図4はそれぞれ本発明の方向転換装置9を示した平面図、正面図及び側面図である。各図において10は車両11を搭載する矩形のパレットであり、後述するが、このパレットが旋回することにより搭載した車両の方向転換を行う。このパレット10の下面には、例えばボールトランスファー等のように、鋼球を介して荷重を移動方向自在に支持する複数の転動体12を固着しており、パレット10は床面上を旋回あるいは移動可能に構成されている。
【0009】
パレット10の短辺の一端部には、パレット10の下面から下方に向けてガイド部材であるガイドピン13が突設されるとともに、床面にはこのガイドピン13が係合するガイド溝14が形成されている。ガイドピン13は、軸状のものであっても良く、また、抵抗を低減するためにカムフォロアのようなローラ状のものであっても良い。ガイド溝14は図の状態において、ガイドピン13の直下部付近からパレット10の短辺の他端をやや過ぎた辺りまでこの短辺と平行して形成されており、ガイドピン13はガイド溝14に沿って移動するように動きが拘束されている。
【0010】
前記ガイドピン13からパレット10の中央部に寄った位置には、パレット10の下面から下方に向けてリンクピン15を突設しており、一方このリンクピン15の横方向にやや離隔した位置には、床面から上方に向けて固定ピン16を突設している。そして、このリンクピン15と固定ピン16には、それぞれに回動可能に連結バー17を枢着して互いに連結されており、リンクピン15は固定ピン16を中心とした円周に沿って移動するように動きが拘束されている。
【0011】
次に、前記ガイド溝14の下部には、駆動装置18を設けている。この駆動装置18は、2枚の駆動スプロケット19を備えた電動機20と2枚の従動側スプロケット21を、それぞれパレット10の両外側の位置に配設し、両スプロケット間に2本のチェーン22をガイド溝14と平行に架け渡した構成としている。この両チェーン22間には、牽引金具23が取り付けられており、この牽引金具23はパレット10のガイドピン13の下部と係合している。このように構成した駆動装置18は、電動機20を駆動することによりチェーン22に装着した牽引金具23がガイド溝14の長さの範囲内で往復移動するように制御され、このようにすることにより、パレット10のガイドピン13はガイド溝14に沿って左右に牽引される。
【0012】
図1は、上記の構成におけるパレット10の動作を示した図である。図においてパレット10は、図の上下方向がパレット10の長手方向となるように停止しており、このときにパレット10のガイドピン13は、パレット10の左上端に位置している。そして、駆動装置18の牽引金具23は、ガイドピン13の直下でガイドピン13の下部に係合して停止している。次に、駆動装置18の電動機20を駆動して牽引金具23を図の右方向に移動させると、これにともなって牽引金具23に係合したガイドピン13がガイド溝14に沿って移動する。このときにパレット10のリンクピン15は、固定ピン16を中心とする円周上を移動するように動きを拘束されているので、パレット10は図中の二点鎖線で示すように、ガイドピン13の移動にしたがってガイドピン13を中心として図の時計回り方向に旋回する。そして、ガイドピン13がガイド溝14の右端位置に達すると、パレット10は旋回開始前の状態から90度旋回した状態となり、この位置で駆動装置18の電動機20を停止する。次いで、この状態から初期の状態に戻すには、駆動装置18の電動機20を反対方向に駆動し、ガイドピン13を左方向に移動するように牽引することで、パレット10は上記と反対の軌跡で初期の状態へと旋回移動する。
【0013】
このような構成においては、前記固定ピン16、ガイドピン13の位置及び連結バー17の長さを変更することにより、旋回後のパレット10の停止位置や旋回する軌跡を変えることができる。例えば、図5においては、固定ピン16及びガイドピン13の位置を上記の例に比して図の右方下側に設定した例であり、この場合には図におけるパレット10の下端部の軌跡は、上記の例に比して小さくなるとともに、旋回後の停止位置は右方に寄った位置となる。このように、固定ピン16、ガイドピン13の位置及び連結バー17の長さを適切に設定することにより、パレット10を設置する地形的又は場所的条件に適合させた旋回が行われるようにすることができる。
【0014】
また、前記の例においては、チェーン22によってガイドピン13を牽引してパレット10を旋回するように駆動したが、パレット10を旋回駆動する手段はこれに限られず、例えば図6に示すように、パレット10下面から突設したピン24と床面から突設したピン25を設け、この両ピン24、25間に流体シリンダ26を介設して連結し、流体シリンダ26を伸縮させることでパレット10の旋回を行うように構成することもできる。
【0015】
以上の如く構成された方向転換装置9の具体的な設置の態様を以下に説明する。図5は、機械式立体駐車装置30の入出庫階を示した平面図である。機械式立体駐車装置30の入出庫室31は、地上や地下に設けられた駐車室との間で車両の移送を行う移送装置34を停止させ、この移送装置34上に車両を乗り降りさせるスペースであって、図においては、別の建築物等に隣接して設けられている。この入出庫室31の入出庫口33の前方には初期の状態において、車両が入出庫口33に進入する方向(矢印A)に対してパレット10の向きが直角となるように方向転換装置9が設置されている。
【0016】
このような態様において、車両は矢印B方向から進入してパレット10上に乗り込み停止する。この後、駆動装置を駆動してパレット10の旋回を開始する。パレット10は、矢印Cの方向に90度旋回した後停止し、車両が矢印A方向に移動して入出庫口33に進入する。以上の一連の動作においては、パレット10の前端の左端部が入出庫室31側に向けて直線的にガイドされて移動するので、パレット10は別の建築物との境界となる壁32の側に突出することなくコンパクトに旋回する。したがって、パレット10を壁32と極めて近接した位置に設置することができ、図7の如く入出庫口33が壁32に隣接している場合であっても、車両を壁32に近接した位置に方向転換させることができる。
【0017】
次に、図7により方向転換装置9の別の設置態様を説明する。図においてはT字形の車両通路に方向転換装置9を設置した例であり、矢印D方向から走行してきた車両が矢印E方向に走行する場合に、自走によっては車両の内輪差により曲がれないか、あるいは切り返しが必要な通路形状の場合の例である。このような条件のときに、図に示す如く通路の交差部に本発明の方向転換装置9を設置すれば、矢印D方向からパレット10に乗り込んだ車両を矢印F方向に旋回させることによって、容易に車両を矢印E方向に方向転換させることができる。また、この場合にも前記の場合と同様に、パレット10を壁35側に近接して設置することができるので、特に矢印E方向の通路の幅が狭い場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】方向転換装置の動作を示す説明図
【図2】方向転換装置の平面図
【図3】方向転換装置の正面図
【図4】方向転換装置の側面図
【図5】方向転換装置の動作を示す説明図
【図6】方向転換装置の動作を示す説明図
【図7】具体的な設置例を示す説明図
【図8】具体的な設置例を示す説明図
【符号の説明】
【0019】
9 方向転換装置
10 パレット
11 車両
12 転動体
13 ガイドピン
14 ガイド溝
15 リンクピン
16 固定ピン
17 連結バー
18 駆動装置
19 駆動スプロケット
20 電動機
21 従動側スプロケット
22 チェーン
23 牽引金具
24 ピン
25 ピン
26 流体シリンダ
30 機械式立体駐車装置
31 入出庫室
32 壁
33 入出庫口
34 移送装置
35 壁
A、B、C、D、E、F 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を搭載し床面に対して移動可能な矩形のパレットと、該パレットの短辺の一端部に備えたガイド部材と、該ガイド部材が係合するガイド溝と、前記パレットを旋回駆動する駆動装置とを備え、前記ガイド溝が前記パレットの短辺と平行に形成されていることを特徴とする車両の方向転換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−111312(P2008−111312A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296228(P2006−296228)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000228523)日本ケーブル株式会社 (96)
【Fターム(参考)】