説明

車両の空調装置

【課題】ヒートポンプ方式の冷凍回路を用いつつ暖房能力の向上を図りCOPのさらなる向上を図ることの可能な車両の空調装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ方式の冷凍回路(1)にインジェクション回路(30)を設け、このインジェクション回路に、車室内から車室外に換気される空気から吸熱を行い冷媒の気化を促進させる換気熱交換器(34)を設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置に係り、詳しくは車両に搭載されたヒートポンプ方式の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関により走行する車両において、空調装置は、内燃機関により駆動される圧縮機、車室外に配置した車室外熱交換器(凝縮器)、膨張器、車室内に配置した車室内熱交換器(蒸発器)がそれぞれ管路で連結されて冷凍回路(冷凍サイクル)が構成され、当該冷凍回路を冷媒が相変化しながら還流することで車室内の冷房及び除湿を行うとともに、内燃機関の熱を回収することによって車室内の暖房を行うことが可能に構成されている。
【0003】
ところで、近年、バッテリを搭載し電動モータで走行可能な電気自動車が開発され広く実用化されており、このような電気自動車では、内燃機関の駆動力や熱を空調装置に利用できないことから、電気で圧縮機を作動させて冷房と除湿を行い、電気を用いて暖房を行うようにしている。
このように電気を用いて暖房を行う場合、例えば電気ヒータを用いる方式では、COP(成績係数)が最大1であって電力消費量が大きく、電気自動車の航続距離が短くなるという問題がある。また、例えばヒートポンプ方式の冷凍回路では、COPを1以上にすることが可能であるが、低温の外気から熱を汲み上げる場合には暖房能力やCOPが低下するという問題がある。
【0004】
一方、ヒートポンプ方式において、冷凍回路にガスインジェクションと呼ばれる機構を追加し、冷媒を圧縮機の中間圧領域にバイパスさせることで暖房能力を向上させCOPを向上させることが可能であることが知られている。
当該ガスインジェクションを十分に機能させるためには、冷媒を気化させて圧縮機の中間圧領域に供給する必要があり、例えばガスインジェクション回路の途中に蓄熱槽を設け、液状態或いは気液二相状態の冷媒を加熱して気化させる構成の装置が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−276370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の如くガスインジェクション回路の途中に蓄熱槽を設ける場合、蓄熱槽内の蓄熱材を加熱する必要があり、上記特許文献1では専用の電気ヒータを用いて蓄熱材の加熱を行うようにしている。
しかしながら、上述したように、電気ヒータを用いる場合には電力消費量が大きく、車両の走行中に電気ヒータを使用すると電気自動車の航続距離が短くなるという問題がある。
【0007】
そこで、走行中に極力電気ヒータを使用しないようにするため、バッテリへの充電を行うと同時に車両の停止中に電気ヒータで蓄熱材を加熱し蓄熱しておくことが考えられるが、走行中に必要な十分な蓄熱量を確保するためには、蓄熱材の蓄熱容量を大きくする必要があり、このように蓄熱容量ひいては蓄熱材を大きくすることは車両重量の増加に繋がり、やはり電気自動車の航続距離が短くなるおそれがあり好ましいことではない。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ヒートポンプ方式の冷凍回路を用いつつ暖房能力の向上を図りCOPのさらなる向上を図ることの可能な車両の空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の車両の空調装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に設けられ少なくとも暖房時に該圧縮機で昇圧された冷媒から放熱を行う放熱器と、暖房時には前記放熱器にて放熱し且つ減圧膨張された冷媒への吸熱を行う一方、冷房時には圧縮機で昇圧された冷媒から放熱を行う車室外熱交換器と、車室内に設けられ冷房時及び除湿時に前記放熱器または前記車室外熱交換器にて放熱し且つ減圧膨張された冷媒への吸熱を行う吸熱器とからなる冷凍回路を備え、該冷凍回路は、前記放熱器または前記車室外熱交換器にて放熱した冷媒の一部を膨張弁を介して気化させ前記圧縮機の中間圧領域に供給するインジェクション回路を含み、該インジェクション回路に、車室内から車室外に換気される空気から吸熱を行い冷媒の気化を促進させる換気熱交換器を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の車両の空調装置では、請求項1において、車両はバッテリの電力により走行用電動モータを駆動させて走行する電気自動車またはハイブリッド自動車であって、前記バッテリの電力により作動することを特徴とする。
請求項3の車両の空調装置では、請求項1または2において、車室内から車室外に換気される空気の流れ方向で視て前記換気熱交換器よりも上流側には、前記換気熱交換器による冷媒の気化の促進を補助する気化促進補助手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の車両の空調装置では、請求項3において、前記気化促進補助手段は、車両に搭載された電気部品の排熱源またはハイブリッド自動車の内燃機関の排熱源または電気ヒータであることを特徴とする。
請求項5の車両の空調装置では、請求項3または4において、前記気化促進補助手段は、蓄熱材を含み、該蓄熱材を加熱して蓄熱しておき、該蓄熱した熱で冷媒を昇温させることを特徴とする。
【0011】
請求項6の車両の空調装置では、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記インジェクション回路に、前記換気熱交換器と直列に放熱後の冷媒と熱交換を行う内部熱交換器を設けたことを特徴とする。
請求項7の車両の空調装置では、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記インジェクション回路に、前記換気熱交換器の下流に位置して気液分離器を設け、気化した冷媒のみを前記圧縮機の中間圧領域に供給することを特徴とする。
【0012】
請求項8の車両の空調装置では、請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記インジェクション回路における冷媒の気化の度合いを制御するインジェクション制御手段を備え、前記インジェクション制御手段は、冷房時または車室内の温度が低いときには前記膨張弁を遮断して前記インジェクション回路の使用を停止することを特徴とする。
【0013】
請求項9の車両の空調装置では、請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記インジェクション回路における冷媒の気化の度合いを制御するインジェクション制御手段を備え、前記インジェクション回路は、前記換気熱交換器を迂回するバイパス路を有し、前記インジェクション制御手段は、冷房時または車室内の温度が低いときには前記バイパス路を介して冷媒を前記圧縮機の中間圧領域に供給することを特徴とする。
請求項10の車両の空調装置では、請求項1乃至9のいずれかにおいて、前記インジェクション回路における冷媒の気化の度合いを制御するインジェクション制御手段を備え、車室内から車室外に換気される空気流量を調節する換気ファンを有し、前記インジェクション制御手段は、少なくとも車室内への外気吸入量に応じて前記換気ファンの作動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の車両の空調装置によれば、ヒートポンプ方式の冷凍回路にインジェクション回路を設け、このインジェクション回路に、車室内から車室外に換気される空気から吸熱を行い冷媒の気化を促進させる換気熱交換器を設けるようにしたので、インジェクション回路によって圧縮機の中間圧領域に供給される冷媒の気化を車室外への廃熱を有効に回収して促進するようにできる。
【0015】
これにより、圧縮機の中間圧領域に供給される冷媒を十分に気化させるようにでき、特に暖房時において、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
請求項2の車両の空調装置によれば、車両は電気自動車またはハイブリッド自動車である場合には、圧縮機等を電力で作動させることになるが、インジェクション回路に換気熱交換器を設けて廃熱を回収し、COPのさらなる向上を図ることができるので、バッテリの電力消費を抑えて車両のバッテリによる航続距離の低下を好適に防止することができる。
【0016】
請求項3の車両の空調装置によれば、車室内から車室外に換気される空気の流れ方向で視て換気熱交換器よりも上流側に冷媒の気化の促進を補助する気化促進補助手段を備えることで、圧縮機の中間圧領域に供給される冷媒をより十分に気化させるようにでき、より一層暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
請求項4の車両の空調装置によれば、気化促進補助手段は電気部品の排熱源またはハイブリッド自動車の内燃機関の排熱源または電気ヒータであるので、車室内の空気の温度が低い場合であっても、電気部品の排熱源またはハイブリッド自動車の内燃機関の排熱源または電気ヒータによって車室外に換気される空気を暖めて換気熱交換器による吸熱を増大させ、圧縮機の中間圧領域に供給される冷媒を十分に気化させるようにでき、暖房能力の向上を図ることができる。
【0017】
請求項5の車両の空調装置によれば、蓄熱材を加熱して蓄熱しておき、該蓄熱した熱で冷媒を昇温させることにより、例えば車両が電気自動車である場合において、バッテリへの充電中に蓄熱材を加熱して蓄熱しておき、車両の走行中に該蓄熱した熱で冷媒を昇温させるようにでき、バッテリの電力消費を抑えて車両のバッテリによる航続距離の低下を好適に防止することができる。
請求項6の車両の空調装置によれば、換気熱交換器と直列に放熱後の冷媒と熱交換を行う内部熱交換器を設けたので、圧縮機の中間圧領域に供給される冷媒を十分に気化させるようにでき、暖房能力の向上を図ることができる。
【0018】
請求項7の車両の空調装置によれば、気液分離器の上流に位置して換気熱交換器を設けることにより、気化した冷媒の比率を高めることができ、ひいては圧縮機の中間圧領域に供給する冷媒の量を増やすことができる。
請求項8の車両の空調装置によれば、冷房時または車室内の温度が低いときには膨張弁を遮断してインジェクション回路の使用を停止するので、無駄な圧縮機の動力が必要となることを防止してCOPの悪化を防止することができる。
【0019】
請求項9の車両の空調装置によれば、冷房時または車室内の温度が低いときにはバイパス路を介して冷媒を圧縮機の中間圧領域に供給するので、無駄な圧縮機の動力が必要となることを防止してCOPの悪化を防止しつつ、冷房時においてもインジェクション回路を使用してCOPの向上を図ることができる。
請求項10の車両の空調装置によれば、車室内から車室外に換気される空気流量を調節する換気ファンを備え、外気吸入量に応じて換気ファンの作動を制御するので、例えば外気吸入量に等しい量の空気が確実に換気熱交換器を通るようにでき、換気熱交換器における吸熱を最大限に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例に係る車両の空調装置の概略構成図である。
【図2】第1実施例に係る車両の空調装置の冷房時の状態を示す図である。
【図3】第1実施例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図4】第1実施例に係る車両の空調装置の除湿暖房時の状態を示す図である。
【図5】第1実施例の変形例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図6】第1実施例の変形例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図7】第1実施例の変形例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図8】第1実施例の変形例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図9】第1実施例の変形例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図10】第1実施例の変形例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図11】本発明の第2実施例に係る車両の空調装置の概略構成図である。
【図12】第2実施例に係る車両の空調装置の冷房時の状態を示す図である。
【図13】第2実施例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図14】第2実施例に係る車両の空調装置の除湿暖房時の状態を示す図である。
【図15】第2実施例の変形例に係る車両の空調装置の概略構成図である。
【図16】第2実施例の変形例に係る車両の空調装置の冷房時の状態を示す図である。
【図17】第2実施例の変形例に係る車両の空調装置の暖房時の状態を示す図である。
【図18】第2実施例の変形例に係る車両の空調装置の除湿暖房時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
[第1実施例]
図1乃至図4には、本発明の第1実施例に係る車両の空調装置の概略構成図が示されており、以下これらの図に基づき説明する。
ここに、車両は例えばエンジン(内燃機関)を有さない電気自動車(EV)であって、バッテリの電力で走行用電動モータを作動させて走行するよう構成されており(共に図示せず)、空調装置もバッテリの電力で作動するように構成されている。即ち、本発明の第1実施例に係る車両の空調装置は、暖房にエンジンの熱を利用せずにヒートポンプ方式の冷凍回路を用いることで、冷房と暖房さらには除湿暖房を適宜選択的に実施可能に構成されている。なお、車両はエンジン(内燃機関)と走行用電動モータとを併有する所謂ハイブリッド自動車であってもよい。
【0022】
図1に基本構成を示すように、本発明の第1実施例に係る車両の空調装置は、大きくは、管路2に、冷媒を圧縮し昇圧する電動の圧縮機10と、HVACユニット40の通気ダクト42内に設けられて昇圧した冷媒の熱を車室内に放熱する放熱器12と、暖房時において冷媒を減圧膨張する電磁式の第1膨張弁14と、冷房時には放熱器として暖房時には吸熱器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行う車室外熱交換器16と、冷房時及び除湿暖房時において冷媒を減圧膨張する電磁式の第2膨張弁18と、通気ダクト42内に設けられて冷房時及び除湿暖房時において車室内の熱を冷媒に吸熱する吸熱器20とが順に配管接続されて冷凍回路1が構成されている。
【0023】
そして、管路2には、第1膨張弁14をバイパスするバイパス路4、第1膨張弁14及び車室外熱交換器16をバイパスするバイパス路6、第2膨張弁18及び吸熱器20をバイパスするバイパス路8が設けられており、バイパス路4には冷房時に連通して第1膨張弁14を迂回させて冷媒を流す電磁式の開閉弁22が介装され、バイパス路6には除湿暖房時に連通して冷媒の一部を第1膨張弁14及び車室外熱交換器16を迂回させて流す電磁式の開閉弁24が介装され、バイパス路8には暖房時及び除湿暖房時に連通して冷媒を第2膨張弁18及び吸熱器20を迂回させて流す電磁式の開閉弁26が介装され、管路2のうちバイパス路8の分岐部下流には冷房時に連通して冷媒を第2膨張弁18及び吸熱器20に流す電磁式の開閉弁28が介装されている。
【0024】
さらに、管路2のうち放熱器12と第1膨張弁14との間の部分からは分岐してインジェクション回路30が圧縮機10の中間圧領域まで延びており、このインジェクション回路30には、上流側から順に暖房時及び除湿暖房時に開弁する電磁式の第3膨張弁32、車室内の空気を車室外に排出して換気を行うための換気ダクト44内を通って車室外に流出する空気の熱を暖房時及び除湿暖房時に冷媒に吸熱する換気熱交換器34及び逆止弁36が接続されている。即ち、本発明の第1実施例に係る車両の空調装置では、ヒートポンプ方式の冷凍回路1に換気熱交換器34を含むインジェクション回路30を備えて構成されており、これによりCOP(成績係数)の向上を図ることが可能である。なお、インジェクション回路30の換気熱交換器34の直上流部分と直下流部分にはそれぞれ冷媒の温度を検出するサーミスタ37、38が配設されている。
【0025】
また、同図に示すように、HVACユニット40の通気ダクト42には、吸気する空気を車室内の空気である内気と車室外の空気である外気とで切り換える内外気切換ダンパ45、内気や外気を通気ダクト42に送給するための通気ファン46及び内気や外気の放熱器12への流通度合いを調節するエアミックスダンパ47が設けられている。
また、換気ダクト44には、換気ファン48が設けられている。
【0026】
そして、図示しないもののCPUやメモリからなる電子コントロールユニット(ECU、インジェクション制御手段)が設けられており、当該ECUの入力側には上記サーミスタ37、38等の各種センサ類の他、圧縮機10、通気ファン46、換気ファン48等の起動操作を行う空調起動スイッチ(図示せず)や冷房、暖房、除湿暖房の切換操作を行う空調モード切換スイッチ(図示せず)等の各種スイッチ類が接続され、出力側には上記圧縮機10、第1膨張弁14、第2膨張弁18、第3膨張弁32、開閉弁22〜28、内外気切換ダンパ45、通気ファン46、エアミックスダンパ47及び換気ファン48等の各種デバイス類が接続されている。
以下、このように構成された本発明の第1実施例に係る車両の空調装置の作用について説明する。
【0027】
[冷房時]
図2に冷房時の状態を示すように、冷房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46を起動させ、開閉弁22、28を開弁するとともに開閉弁24、26を閉弁し、第3膨張弁32を閉弁し、エアミックスダンパ47を内気や外気の放熱器12への流通が遮断されるように作動させる。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、放熱器12、バイパス路4、車室外熱交換器16、第2膨張弁18及び吸熱器20を循環し、吸熱器20による吸熱により車室内の冷房が行われる。
【0028】
このように、第3膨張弁32を閉弁してインジェクション回路30を機能させないようにしており、これにより吸熱器20に流入しない一部の冷媒が圧縮機10に戻ることで無駄な圧縮機10の動力が必要となることを防止して冷房能力の悪化を防止することができる。
また、放熱器12では若干の熱漏れがあるものの、内気や外気の放熱器12への流通はエアミックスダンパ47により遮断されているので、車室内への放熱器12からの熱の移動は抑止され、やはり冷房能力の悪化を防止することができる。
【0029】
[暖房時]
図3に暖房時の状態を示すように、暖房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46、換気ファン48を起動させ、開閉弁26を開弁するとともに開閉弁22、24、28を閉弁し、第3膨張弁32については開弁し、エアミックスダンパ47を内気や外気の全てが放熱器12を流通するように作動させる。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、放熱器12、第1膨張弁14、車室外熱交換器16とともにインジェクション回路30を循環し、放熱器12による放熱により車室内の暖房が行われる。
【0030】
この場合、インジェクション回路30の換気熱交換器34により換気ダクト44を経て車室外に流出する車室内の暖かい空気の熱が冷媒に吸熱され、液状或いは気液二相状態の冷媒が加熱されて気化される。詳しくは、サーミスタ37、38により検出される換気熱交換器34の直上流部分と直下流部分との間での冷媒の温度変化量に基づいて第3膨張弁32の開度がECUにより制御され、インジェクション回路30を流れる冷媒が略完全に気化される。例えば、圧縮機10の中間圧領域に供給する冷媒が過熱状態となるよう第3膨張弁32の開度を調節する。
【0031】
これにより、車室外への廃熱を有効に冷媒の気化に利用しながら、十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
この際、換気ダクト44を通過する空気量と通気ダクト42を通過する外気量とが等しくなるよう換気ファン48の作動を通気ファン46の作動及び内外気切換ダンパ45の開度に応じて制御するのがよく、これにより換気ダクト44以外の隙間から外気を吸い込んだり吐き出したりすることを防止して、通気ダクト42からの外気吸入量に等しい量の空気が確実に換気熱交換器34を通るようにでき、換気熱交換器34による吸熱を最大限に行うことができる。
従って、車両が電気自動車(EV)であっても、空調装置によるバッテリの電力消費を抑えるようにでき、車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
なお、車室内から換気される空気の温度が所定温度より低いときには、上記冷房時と同様、第3膨張弁32を閉弁してインジェクション回路30を機能させないようにしてもよい。
【0032】
[除湿暖房時]
図4に除湿暖房時の状態を示すように、除湿暖房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46、換気ファン48を起動させ、開閉弁24、26を開弁するとともに開閉弁22、28を閉弁し、第3膨張弁32については開弁し、エアミックスダンパ47を内気や外気の全てが放熱器12を流通するように作動させる。
この場合、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、放熱器12、第1膨張弁14、車室外熱交換器16とともに第2膨張弁18、吸熱器20及びインジェクション回路30を循環し、放熱器12による放熱により車室内の暖房が行われるとともに吸熱器20による吸熱により車室内の除湿が行われる。
【0033】
これにより、車室内の除湿が行われることで車両のフロントガラス等の窓の曇りを防止しつつ、車室外への廃熱を有効に冷媒の気化に利用しながら十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、ドライバの視界を確保しながら、上記同様、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができ、空調装置によるバッテリの電力消費を抑えて車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
なお、車室内から換気される空気の温度が所定温度より低いときには、やはり上記冷房時と同様、第3膨張弁32を閉弁してインジェクション回路30を機能させないようにしてもよい。
【0034】
[第1実施例の変形例]
図5乃至図10には、本発明の第1実施例の変形例に係る車両の空調装置の概略構成図が暖房時の状態で示されており、以下これらの図に基づき説明する。
図5に示す変形例では、インジェクション回路30の換気熱交換器34の下流側に冷媒を加熱するための電気ヒータ50を設けるようにしている。なお、電気ヒータ50を設けることに伴い、サーミスタ38の位置を電気ヒータ50の下流側に移動している。
【0035】
この場合には、例えば車室内に温度センサ(図示せず)を設け、車室内の空気の温度に応じ、車室内から換気される空気の温度が所定温度より低い場合に電気ヒータ50を作動させ、所定温度以上では電気ヒータ50の作動を停止させる。
このように電気ヒータ50を設け、未だ車室内の空気が十分に暖まっていない場合に当該電気ヒータ50を作動させることで、車室外への廃熱を有効に冷媒の気化に利用できない場合であっても、電気ヒータ50の熱によって十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、暖房能力の向上を図ることができる。
【0036】
図6に示す変形例では、インジェクション回路30の換気熱交換器34の下流側に電気ヒータ50を設けるとともに蓄熱材52を設け、電気ヒータ50で蓄熱材52を加熱し蓄熱することで間接的に冷媒を加熱するようにしている。なお、この場合にもサーミスタ38の位置を蓄熱材52の下流側に移動している。
このように蓄熱材52を設け当該蓄熱材52を電気ヒータ50で加熱し蓄熱するようにすると、バッテリへの充電中、即ち車両の停車中に電気ヒータ50で蓄熱材52に蓄熱しておき、車両の走行中には蓄熱した熱で冷媒を気化させるようにでき、未だ車室内の空気が十分に暖まっておらず、車室外への廃熱を有効に冷媒の気化に利用できない場合であっても、バッテリの電力を使用することなく十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができ、車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
【0037】
図7に示す変形例では、換気ダクト44内に換気ダクト44の上流側に位置して蓄熱材(気化促進補助手段)54を設け、電気ヒータ(気化促進補助手段)50で蓄熱材54を加熱し蓄熱するようにしている。
このように換気ダクト44内に蓄熱材54を設け当該蓄熱材54を電気ヒータ50で加熱し蓄熱するようにすると、上記同様、バッテリへの充電中、即ち車両の停車中に電気ヒータ50で蓄熱材54に蓄熱しておき、車両の走行中には蓄熱した熱で換気ダクト44内の空気を暖めながら換気熱交換器34を介して冷媒を気化させるようにでき、未だ車室内の空気が十分に暖まっていない場合であっても、やはりバッテリの電力を使用することなく十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができ、車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
【0038】
図8に示す変形例では、換気ダクト44内に換気ダクト44の上流側に位置して走行用電動モータを制御するインバータ(電気部品の排熱源、気化促進補助手段)58を設けるようにしている。
このように換気ダクト44内にインバータ58を設けるようにすると、車両の走行中にはインバータ58の発する熱をも有効に冷媒の気化に利用しながら、十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、より一層暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
また、図7の電気ヒータ50や図8のインバータ58に代えて、走行用電動モータの熱を排熱する放熱器(電気部品の排熱源、気化促進補助手段)や、車両がハイブリッド自動車である場合にはエンジンの熱を排熱する放熱器(エンジンの排熱源、気化促進補助手段)を用いるようにしてもよい。また、換気ダクト44内に換気ダクト44の上流側に位置して電気ヒータ50を直接設けるようにしてもよい。
【0039】
図9に示す変形例では、インジェクション回路30の第3膨張弁32と換気熱交換器34との間に換気熱交換器34と直列に内部熱交換器(気化促進補助手段)60を設け、放熱器12から第1膨張弁14に向けて流れる冷媒から吸熱を行うようにしている。ここに、互いの流れは対向流であるのがよい。
このように第3膨張弁32と換気熱交換器34との間に内部熱交換器60を設けるようにすると、内部熱交換器60の吸熱する熱をも有効に冷媒の気化に利用しながら、十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、より一層暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
【0040】
なお、図9に示す変形例に上記図5〜図8に示す変形例の構成を組み合わせるようにしてもよい。
図10に示す変形例では、インジェクション回路30の換気熱交換器34の下流側に気液分離器62を設けるとともに放熱器12と第1膨張弁14との間に電磁式の開閉弁64を設け、気液分離器62により分離した気体状の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給し、液状の冷媒を管路2に戻すようにしている。
【0041】
このように気液分離器62を設け、暖房時には開閉弁64を閉弁するようにすると、全ての冷媒をインジェクション回路30に流して換気熱交換器34での吸熱により気化する冷媒の比率を高めることができ、ひいては圧縮機10の中間圧領域に供給する冷媒の量を増やすようにでき、より一層暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
なお、図10に示す変形例に上記図5〜図8に示す変形例の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0042】
[第2実施例]
図11乃至図14には、本発明の第2実施例に係る車両の空調装置の概略構成図が示されており、以下これらの図に基づき説明する。なお、上記第1実施例との共通部分については説明を省略し、第1実施例と異なる部分について説明する。
図11に基本構成を示すように、本発明の第2実施例に係る車両の空調装置は、圧縮機10の下流側に四方弁70を備えるとともにインジェクション回路30’を備えて冷凍回路1’が構成されている。
【0043】
詳しくは、四方弁70は、冷房時には圧縮機10から吐出された冷媒が放熱器12を通らず、暖房時及び除湿暖房時には圧縮機10から吐出された冷媒が放熱器12を通るよう切換可能に構成されている。なお、車室外熱交換器16での冷媒の流れ方向は冷房時と暖房時で逆になり、管路2は放熱器12と車室外熱交換器16との間の部分から分岐するようにして第1膨張弁14或いは第2膨張弁18に向けて延びており、当該分岐部より放熱器12側及び車室外熱交換器16側にはそれぞれ第1膨張弁14或いは第2膨張弁18への冷媒の流れのみを許容する逆止弁3、5が介装されている。
【0044】
また、インジェクション回路30’には、第3膨張弁32と換気熱交換器34との間の部分から分岐し圧縮機10の中間圧領域にまで延びて換気熱交換器34をバイパスするバイパス路31が設けられており、バイパス路31には冷房時に連通して換気熱交換器34を迂回させて冷媒を直接に圧縮機10の中間圧領域に流す電磁式の開閉弁33が介装され、インジェクション回路30’の換気熱交換器34に向かうバイパス路31の分岐部下流には暖房時及び除湿暖房時に連通して冷媒を換気熱交換器34に流す電磁式の開閉弁35がそれぞれ介装されている。なお、換気熱交換器34とバイパス路31の合流部との間には逆止弁39が介装されている。
【0045】
また、インジェクション回路30’の第3膨張弁32の下流側には換気熱交換器34と直列になるよう内部熱交換器60’が設けられており、管路2を第1膨張弁14或いは第2膨張弁18に向けて流れる冷媒から吸熱を行うようにしているが、内部熱交換器60’についてはなくてもよい。ここに、内部熱交換器60’において互いの流れは対向流であるのがよい。
なお、第2実施例に上記図5〜図8に示す第1実施例の変形例の構成を組み合わせるようにしてもよい。
以下、このように構成された本発明の第2実施例に係る車両の空調装置の作用について説明する。
【0046】
[冷房時]
図12に冷房時の状態を示すように、冷房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46を起動させ、四方弁70を圧縮機10からの冷媒が放熱器12を通らず車室外熱交換器16に向かうように切り換え、開閉弁33を開弁するとともに開閉弁35を閉弁し、第1膨張弁14を閉弁する。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、車室外熱交換器16、第2膨張弁18及び吸熱器20を循環し、吸熱器20による吸熱により車室内の冷房が行われる。
【0047】
また、冷媒はインジェクション回路30’にて第3膨張弁32から内部熱交換器60’にて吸熱しながらバイパス路31を経て圧縮機10の中間圧領域に流れる。
これにより、冷房時であってもCOPの向上を図ることが可能である。
また、開閉弁35を閉弁して冷媒を換気熱交換器34に流さないようにしており、これにより車室外に排気される車室内の空気を冷やす無駄な圧縮機10の動力が必要となることを防止して冷房能力の悪化を防止することができる。
なお、この場合、上記第1実施例の場合と異なり放熱器12では放熱が行われることがないため、第1実施例の場合に増して冷房能力の悪化を防止することができる。
【0048】
[暖房時]
図13に暖房時の状態を示すように、暖房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46、換気ファン48を起動させ、四方弁70を圧縮機10からの冷媒が放熱器12を通って車室外熱交換器16に向かうように切り換え、開閉弁35を開弁するとともに開閉弁33を閉弁し、第2膨張弁18を閉弁する。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、放熱器12、第1膨張弁14、車室外熱交換器16とともにインジェクション回路30’を循環し、放熱器12による放熱により車室内の暖房が行われる。
【0049】
この場合、インジェクション回路30’の換気熱交換器34により換気ダクト44を経て車室外に流出する車室内の暖かい空気の熱が冷媒に吸熱され、内部熱交換器60’の吸熱する熱をも有効に利用しながら、液状或いは気液二相状態の冷媒が加熱されて気化される。詳しくは、サーミスタ37、38により検出される換気熱交換器34の直上流部分と直下流部分との間の温度変化量に基づいて第3膨張弁32の開度がECUにより制御され、インジェクション回路30を流れる冷媒が略完全に気化される。
【0050】
これにより、第1実施例の場合と同様、車室外への廃熱を有効に冷媒の気化に利用しながら、十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
従って、車両が電気自動車(EV)であっても、空調装置によるバッテリの電力消費を抑えるようにでき、車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
なお、車室内から換気される空気の温度が所定温度より低いときには、上記冷房時と同様、開閉弁35を閉弁して冷媒を換気熱交換器34に流さないようにしてもよい。
【0051】
[除湿暖房時]
図14に除湿暖房時の状態を示すように、除湿暖房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46、換気ファン48を起動させ、四方弁70を圧縮機10からの冷媒が放熱器12を通って車室外熱交換器16に向かうように切り換え、開閉弁35を開弁するとともに開閉弁33を閉弁し、第1膨張弁14及び第2膨張弁18については開弁する。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、放熱器12、第1膨張弁14、車室外熱交換器16とともに第2膨張弁18、吸熱器20及びインジェクション回路30’を循環し、放熱器12による放熱により車室内の暖房が行われるとともに吸熱器20による吸熱により車室内の除湿が行われる。
【0052】
これにより、第1実施例の場合と同様、車室内の除湿が行われることで車両のフロントガラス等の窓の曇りを防止しつつ、車室外への廃熱を有効に冷媒の気化に利用しながら十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、ドライバの視界を確保しながら、上記同様、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができ、空調装置によるバッテリの電力消費を抑えて車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
なお、車室内から換気される空気の温度が所定温度より低いときには、やはり上記冷房時と同様、開閉弁35を閉弁して冷媒を換気熱交換器34に流さないようにしてもよい。
【0053】
[第2実施例の変形例]
図15乃至図18には、本発明の第2実施例の変形例に係る車両の空調装置の概略構成図が示されており、以下これらの図に基づき説明する。なお、上記第2実施例との共通部分については説明を省略する。
図15に基本構成を示すように、第2実施例の変形例では、インジェクション回路30”の第3膨張弁32の下流側且つ換気熱交換器34の下流側に位置して気液分離器62’を設け、気液分離器62’により分離した気体状の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給し、液状の冷媒を管路2に戻すように冷凍回路1”を構成している。
【0054】
なお、第2実施例の変形例に上記図5〜図8に示す第1実施例に変形例の構成を組み合わせるようにしてもよい。
以下、このように構成された本発明の第2実施例の変形例に係る車両の空調装置の作用について説明する。
【0055】
[冷房時]
図16に冷房時の状態を示すように、冷房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46を起動させ、四方弁70を圧縮機10からの冷媒が放熱器12を通らず車室外熱交換器16に向かうように切り換え、開閉弁33を開弁するとともに開閉弁35を閉弁し、第1膨張弁14を閉弁する。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、車室外熱交換器16、第2膨張弁18及び吸熱器20を循環し、吸熱器20による吸熱により車室内の冷房が行われる。
【0056】
また、インジェクション回路30”にて気液分離器62’によって気化した冷媒のみが分離して確実に圧縮機10の中間圧領域に供給される。
これにより、冷房時であってもCOPのさらなる向上を図ることが可能である。
この場合にも、開閉弁35を閉弁して冷媒を換気熱交換器34に流さないようにしており、冷房能力の悪化を防止することができ、また、放熱器12では放熱が行われることがないため、第1実施例の場合に増して冷房能力の悪化を防止することができる。
【0057】
[暖房時]
図17に暖房時の状態を示すように、暖房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46、換気ファン48を起動させ、四方弁70を圧縮機10からの冷媒が放熱器12を通って車室外熱交換器16に向かうように切り換え、開閉弁35を開弁するとともに開閉弁33を閉弁し、第2膨張弁18を閉弁する。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、放熱器12、第1膨張弁14、車室外熱交換器16とともにインジェクション回路30”を循環し、放熱器12による放熱により車室内の暖房が行われる。
【0058】
このように気液分離器62’を設けるようにすると、全ての冷媒をインジェクション回路30”に流して換気熱交換器34での吸熱により気化する冷媒の比率を高めることができ、ひいては圧縮機10の中間圧領域に供給する冷媒の量を増やすようにでき、より一層暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができ、空調装置によるバッテリの電力消費を抑えて車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
【0059】
[除湿暖房時]
図18に除湿暖房時の状態を示すように、除湿暖房時には、ECUは圧縮機10、通気ファン46、換気ファン48を起動させ、四方弁70を圧縮機10からの冷媒が放熱器12を通って車室外熱交換器16に向かうように切り換え、開閉弁35を開弁するとともに開閉弁33を閉弁し、第1膨張弁14及び第2膨張弁18については開弁する。
これより、冷媒は、図中太線で示すように圧縮機10、放熱器12、第1膨張弁14、車室外熱交換器16とともに第2膨張弁18、吸熱器20及びインジェクション回路30”を循環し、放熱器12による放熱により車室内の暖房が行われるとともに吸熱器20による吸熱により車室内の除湿が行われる。
【0060】
これにより、ドライバの視界を確保しながら、上記同様、より一層暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができ、空調装置によるバッテリの電力消費を抑えて車両の航続距離の低下を好適に防止することができる。
以上説明したように、本発明に係る車両の空調装置によれば、ヒートポンプ方式の冷凍回路1、1’、1”にインジェクション回路30、30’、30”を備え、換気熱交換器34により換気ダクト44を経て車室外に流出する車室内の暖かい空気の熱を冷媒に吸熱するようにしているので、車室外への廃熱を有効に冷媒の気化に利用しながら、インジェクション回路30、30’、30”において十分に気化した状態の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにでき、暖房能力の向上を図り、COPのさらなる向上を図ることができる。
【0061】
以上で本発明に係る車両の空調装置の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、換気ダクト44に換気ファン48を設けるようにしているが、換気ファン48はなくてもよい。
また、換気ダクト44については、HVACユニット40と一体に設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、インジェクション回路30、30’、30”において冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給するようにしているが、圧縮機を2機設けた2段圧縮方式で冷凍回路を構成する場合には、2機の圧縮機間に冷媒を供給するようインジェクション回路を構成すればよい。
【0062】
また、上記実施形態では、圧縮機10の中間圧領域に供給する冷媒が過熱状態となるように第3膨張弁32の開度を調節するようにしたが、圧縮機10から吐出される冷媒の温度を検出し、この温度が一定温度以下となるように第3膨張弁32の開度を調節するようにし、多少の液状の冷媒を圧縮機10の中間圧領域に供給(液インジェクション)するようにしてもよい。
また、デシカント等の除湿装置をHVACユニット40内に備えるようにした場合には、放熱器12と吸熱器20とを兼用し、これら放熱器12と吸熱器20とを一つの車室内熱交換機で構成するようにしてもよい。
【0063】
また、気液分離器62、62’自体を気化促進補助手段で暖めるようにしてもよい。例えば、インバータを気液分離器62、62’内に設けるようにしてもよい。
また、圧縮機10の比較的低圧の中間圧領域と比較的高圧の中間圧領域とを選択可能にインジェクション回路を構成してもよい。例えば、車室内の温度が低い場合には比較的低圧の中間圧領域へ冷媒を供給し、高い場合には比較的高圧の中間圧領域へ冷媒を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、1’、1” 冷凍回路
2 管路
10 圧縮機
12 放熱器
14 第1膨張弁
16 車室外熱交換器
18 第2膨張弁
20 吸熱器
30、30’、30” インジェクション回路
32 第3膨張弁
34 換気熱交換器
37、38 サーミスタ(冷媒温度変化検出手段)
40 HVACユニット
44 換気ダクト
48 換気ファン
50 電気ヒータ(気化促進補助手段)
52、54 蓄熱材(気化促進補助手段)
58 インバータ(気化促進補助手段)
60、60’ 内部熱交換器
62、62’ 気液分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に設けられ少なくとも暖房時に該圧縮機で昇圧された冷媒から放熱を行う放熱器と、暖房時には前記放熱器にて放熱し且つ減圧膨張された冷媒への吸熱を行う一方、冷房時には圧縮機で昇圧された冷媒から放熱を行う車室外熱交換器と、車室内に設けられ冷房時及び除湿時に前記放熱器または前記車室外熱交換器にて放熱し且つ減圧膨張された冷媒への吸熱を行う吸熱器とからなる冷凍回路を備え、
該冷凍回路は、前記放熱器または前記車室外熱交換器にて放熱した冷媒の一部を膨張弁を介して気化させ前記圧縮機の中間圧領域に供給するインジェクション回路を含み、
該インジェクション回路に、車室内から車室外に換気される空気から吸熱を行い冷媒の気化を促進させる換気熱交換器を設けたことを特徴とする車両の空調装置。
【請求項2】
車両はバッテリの電力により走行用電動モータを駆動させて走行する電気自動車またはハイブリッド自動車であって、前記バッテリの電力により作動することを特徴とする、請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項3】
車室内から車室外に換気される空気の流れ方向で視て前記換気熱交換器よりも上流側には、前記換気熱交換器による冷媒の気化の促進を補助する気化促進補助手段を備えたことを特徴とする、請求項1または2記載の車両の空調装置。
【請求項4】
前記気化促進補助手段は、車両に搭載された電気部品の排熱源または前記ハイブリッド自動車の内燃機関の排熱源または電気ヒータであることを特徴とする、請求項3記載の車両の空調装置。
【請求項5】
前記気化促進補助手段は、蓄熱材を含み、該蓄熱材を加熱して蓄熱しておき、該蓄熱した熱で冷媒を昇温させることを特徴とする、請求項3または4記載の車両の空調装置。
【請求項6】
前記インジェクション回路に、前記換気熱交換器と直列に放熱後の冷媒と熱交換を行う内部熱交換器を設けたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか記載の車両の空調装置。
【請求項7】
前記インジェクション回路に、前記換気熱交換器の下流に位置して気液分離器を設け、気化した冷媒のみを前記圧縮機の中間圧領域に供給することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか記載の車両の空調装置。
【請求項8】
前記インジェクション回路における冷媒の気化の度合いを制御するインジェクション制御手段を備え、
前記インジェクション制御手段は、冷房時または車室内の温度が低いときには前記膨張弁を遮断して前記インジェクション回路の使用を停止することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか記載の車両の空調装置。
【請求項9】
前記インジェクション回路における冷媒の気化の度合いを制御するインジェクション制御手段を備え、
前記インジェクション回路は、前記換気熱交換器を迂回するバイパス路を有し、
前記インジェクション制御手段は、冷房時または車室内の温度が低いときには前記バイパス路を介して冷媒を前記圧縮機の中間圧領域に供給することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか記載の車両の空調装置。
【請求項10】
前記インジェクション回路における冷媒の気化の度合いを制御するインジェクション制御手段を備え、
車室内から車室外に換気される空気流量を調節する換気ファンを有し、
前記インジェクション制御手段は、少なくとも車室内への外気吸入量に応じて前記換気ファンの作動を制御することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか記載の車両の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−152808(P2011−152808A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13709(P2010−13709)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】